EUと日本のダブル修士号取得プログラムへの

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理学部国際交流センター長
小林 芳郎教授
今年9月から3名の留学生を
受け入れ予定
―プロジェクトの名称にEdu-Neuroという言葉が冠され
ているように、対象が神経科学分野に指定されていますが、
EUと日本のダブル修士号取得プログラムへの
現状と今後 ― Edu-Neuroへの取り組みとは
これにはどのような背景があったのでしょうか。
日本も EU も超高齢化社会を迎え、アルツハイマー病
をはじめとする神経変性疾患は各国で喫緊の克服課題と
なっており、神経科学を専門とする若い科学者がますま
す必要とされています。一方で神経科学は多分野にまた
がっており、個々の研究室でカバーできる範囲は限られ
ているのが実情です。このような背景がこのプロジェク
理学研究科は昨年 10 月から、日本と EU が連携する修士課程を対象とした学生交流プロジェクト(Edu-Neuro EU-JP)
に参画しています。本学とEU の参画大学の両大学院に学び、双方の課程で修士号が取得できるというこのプログラムについて、
これまでの経緯と今後の方向性を理学部国際交流センター長の小林芳郎教授(副理学部長)にうかがいました。
トが採択された大きな要因だと言えます。
日本側3大学と EU 側4大学からプロジェクトに参加
する教員は総勢 21 名にのぼり、いずれも神経科学分野
の特色ある研究者です。派遣学生はそれぞれの大学院で
1 年ずつ学修することによって神経科学の複数の分野を
学ぶことができ、最終的に両方の大学院から修士号を取
EU 4カ国・4大学の
修士課程と交流
―プロジェクトに参加する学生には奨学金などの公的支
得できるのです。また、相手国でインターンシップを体
援が用意されているそうですね。
験し、単位に加算することも可能です。参加する教員も
このプロジェクトでは、平成 25 年 10 月からの4年間に
期間内に何度か相手国へ赴き、派遣学生の状況を確認し
日本側から 20 名(本学と東北大から各7名、京都府立医
たり、講義を行ったり、プログラムの調整を重ねていく
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―まず、Edu-Neuro EU-JP とは、どのようなプログラム
大から6名)の学生派遣が認められています。EU 4大学か
ことになるでしょう。このプロジェクトを通じて、神経
なのでしょうか。
らも4年間で計 20 名が派遣される協定です。
科学の分野で将来を担う博士号取得者を多数輩出するこ
増尾教授、曽根准教授に、生物学専攻の松本紋子講師
Edu-Neuro EU-JP とは、
日本政府が欧州連合(EU)と
日本側の派遣学生に対しては、独立行政法人日本学生支
とが期待されます。
を加えた3名にご参加いただいています。各先生が EU
実施する教育連携プログラムであり、
日本の2つ以上の大学
援機構(JASSO)が実施する「海外留学支援制度(短期
―すでにこのプロジェクトにおいて、東邦大学から1名の
からの派遣学生を1年間にわたって受け入れるには、そ
と欧州の2つ以上の大学が共同で行う学生交流プロジェクト
派遣)
」から奨学金が支給され、あわせて文部科学省が実
学生が派遣されているとのことですが。
れぞれ1名ずつが精いっぱいですから、本学が同時期に
(ICI ECP / Industrialised Countries Instrument
施する「大学の世界展開力強化事業」から旅費および事務
生物分子科学専攻の曽根雅紀准教授の研究室に所属す
受け入れる留学生は3名までです。今年9月以降の受け
Education Co-operation Programme)
の一つです。東
経費等が支給されます。また、渡航先の宿泊施設などにつ
る博士前期課程 2 年の古賀千貴さんが、昨年 12 月から
入れを前提に、現在 EU 側ではマーストリヒト大学で 3
邦大学が昨年 10 月から参画している Edu-Neuro EU-JP
いても、受け入れ大学からの手配の支援を受けることができ
ケルン大学のコルシン教授のもとに派遣されており、ゼ
名、リール第1大学で2名の学生が東邦大学での学修を
は、神経科学分野における交流プログラムで、大学院理学
ます。学修・研究の際のコミュニケーション言語は、各大学
ブラフィッシュなどを試料とした神経科学の研究に取り
希望していると聞いています。この中から3名に絞って
研究科の学生が修士課程(博士前期課程)の2年間のうち
とも英語をツールとすることが了解事項となっています。
組んでいます。曽根研究室で取り組んだ研究に最も近い
もらうよう、
先方で調整していただいているところです。
1 年間を、オランダ・フランス・ドイツ・ベルギーの4大学
環境であることを理由に、古賀さん自身がケルン大学を
EU から派遣される留学生の当地の滞在に関しては、
の大学院の一つで過ごし、派遣先の大学院と本学大学院に
選択したのです。現在、このプロジェクトの中で研修に
経費の軽減と生活習慣にいち早く馴染んでもらうため、
それぞれ研究論文を提出することにより、両方の大学院で
参加している学生は古賀さんのみで、その他の大学間の
留学生同士でルームシェアできるような賃貸住居を選定
修士号の取得をめざすというものです。
派遣は今年の9月以降に本格化する予定です。古賀さん
する計画です。
日本側の参画大学は本学と東北大学、そして京都府立医
はこの取り組みの先駆者であり、彼の学修の成果には非
―プロジェクトはあと3年間継続して行われます。参加を
科大学の3大学で、EU 側はオランダのマーストリヒト大学、
常に期待と注目が集まっています。ケルン大学では学生
希望する東邦大生にとっては、逃したくないチャンスだと言
フランスのリール第1大学、ベルギーのルーヴェン・カトリッ
寮が用意され、整備された環境で毎日を送っているよう
えますね。
ク大学、ドイツのケルン大学の4大学です。いずれの修士課
ですが、コミュニケーションに必要な英語では少々苦心
学生にとっては、本格的な勉学と海外生活体験を重ね
程にも神経科学を専攻する分野が充実しており、
教授間レベ
しているとも聞いています。留学先での苦労は将来の大
るまたとないチャンスだと思います。現在博士前期課程
ルでは以前から相互に交流を重ねてきた実績があります。リ
きな財産になりますから、ぜひ頑張ってほしいと願って
1 年の学生や理学部の3・4年生は、この絶好の機会の
ール第1大学のサルゼ教授と研究上の交流があった本学大
います。
対象となるわけですから、ぜひ積極的にチャレンジして
学院理学研究科生物学専攻の増尾好則教授が、
サルゼ教授
▶関連記事:P10 私の学習改革(古賀千貴さん)
ほしいですね。また、受け入れ側の研究室に所属する学
から打診されたことをきっかけに、このプロジェクトへの参画
生にとっても異文化交流の格好の体験となるはずです。
が学内で検討され、東北大、京都府立医大とも協調しなが
―東邦大学からプロジェクトに参加している先生方をご
多くの人達にこのプロジェクトの今後に注目していただ
ら参画を申請し、昨年夏に文部科学省に採択されました。
紹介ください。
くことを期待しています。
2 TOHONOW 2014.June
June.2014
TOHONOW 3