ECコンサルが語る最新トレンド第17回 アメリカの

ネット販売を取り巻く環境は
∼深読み、先読み、斜め読み∼
日進月歩で変化を遂げて
ECコンサルが語る最新トレンド
第 17 回
います。当コーナーでは急
変するEC業界についてネ
ット販売事業者の売り上げ
拡大支援を行う企業のコン
サルタントが毎回、旬なトピ
ックを選んで紐解きます。
アメリカの“ソーシャル”活用事情
こんにちは。ネットショップ支援を手がける「株式会
アにはそぐわないような、個人的な話題やニッチな領域
社いつも.
」で主任経営コンサルタントを務めておりま
についてはブログやユーチューブなどの“小さな”
(匿
す高木修です。前回はアメリカで開催された世界最大の
名性を担保できる)メディアとの相性が良いと言えます。
ネットショップのカンファレンスとエキシビションであ
こうした点を踏まえ、ソーシャルを活用する際には取
る「IRCE2014」についてご説明しましたが、今回も引
り扱う商材に合わせて以下の2点を考慮する必要があり
き続き「IRCE2014」で聴講した講演の中から印象に残
ます。①パブリックor匿名かを選択する②自社の客層が
った内容についてご説明したいと思います。それはずば
いるメディアを選ぶ─。②について言えばFBはビジ
り「ソーシャル活用」です。ソーシャルメディアを使う
ネスマンのユーザーが多いと言われておりますので、
理由はさまざまにあるでしょうが、その1つとして“大
BtoB商材が向いていると言えます。どのプラットフォ
手への対抗策”という側面があります。
ームを使うべきか戦略を練ったほうが良いでしょう。
アメリカではこれまでアマゾンや通販企業などがリス
ティングやSEOなどウェブ広告に力を入れていました
短尺の動画でスマホユーザーを獲得
が、昨今ではそこに大手小売チェーンも広告費を投下し
それでは、実際にソーシャルをうまく使っているケー
て出稿するようになっています。大手チェーンの場合、
スをご紹介します。
リアルとネットの在庫連動や会員一元化などいわゆるオ
1つ目はPetbrosiaという企業です。ペットフードを
ムニチャネル化への投資が一段落した後で認知拡大や販
ネット販売している会社ですが、2011年創業で2014年に
促を行うべく広告出稿を仕掛けているという状況です。
は年商を20億円まで伸ばしています。同社はFBやツイ
その結果、前回お伝えしたとおり、2013年は小売りチェ
ッター、ピンタレスト、グーグル+など多くのメディア
ーンがEC売上高を大きく伸ばしています。
を活用していますが、FBを見ますと、先ほどお伝えし
そのため、中堅規模のネットショップが広告を打とう
たFBと相性の良い三大コンテンツの1つである「ペッ
にも大手小売チェーンなどによって枠が抑えられてしま
ト」の画像を多く掲載しているのが特徴です。
っています。では資本力で大手に劣るネットショップは
2つ目もペットフード屋さんで「PetFlow.com」とい
手をこまねいているかというとそうでもありません。実
うECサイトを運営しています。実は1年前の当コーナ
際、創業数年で50億円規模の売り上げを出している企業
ーでもこの「PetFlow」のEC活用法をご紹介しています。
もあります。そうした企業が利用しているツールがソー
その際はPetbrosiaと同じように、FBで動物の画像を投
シャルメディアです。
稿してユーザーを集めているという事例でしたが、1年
商材によってメディアを使い分ける
が経ってさらに進化し、スマートフォンユーザーを意識
した展開を行っているのです。
ソーシャル活用事例をご紹介する前に、少し整理をし
スマホを攻略する上でキーワードになるのが「暇つぶ
ておきます。
し」です。そして一度に閲覧している時間は2分以内で
ソーシャルメディアには相性の良いコンテンツがある
す。つまりスマホの利用状況は「2分以内の暇つぶし」
というのをご存知でしょうか。例えばフェイスブック
ということができます。そこでPetFlowですが、一年前
(FB)の3大「いいね!」訴求コンテンツは「食べ物」
「子
はFBに静止画を掲載していただけでしたが、今は動画
供」「ペット」です。こうしたコンテンツがタイムライ
をアップしています。動画をクリックすると自社のブロ
ン上に流れていると、「いいね!」が押されやすいです。
グに飛ばされ、動画を視聴できる仕組みです。そこで流
一方で、FBのような“大きな”(パブリックな)メディ
れる動画はほぼ2分以内です。要するにスマホユーザー
16 ネット販売 VOL.15 No.9
が暇つぶしで閲覧できる短い尺の動物動画を発信してい
るわけです。短尺であるため見ている側も飽きず「いい
ね!」も押されやすくなります。おそらく、これまでは
ペットのユニークな静止画像で顧客を集めてきました
が、動画を使うことでさらに広いユーザー層にリーチす
るのが狙いだと思われます。
完成品だけでなく調理する“過程”を見せる
一方、Sephoraという化粧品メーカーでは、ネット上
の掲示板をうまく使っています。毎週金曜日にManiさ
んという人が自分のネイルを披露します。すると、それ
に反応してユーザーが自分たちのネイルを見せ、場が盛
り上がるのです。これはFBのようなオープンで“大き
な”メディアではなく、
“小さな”場としての掲示板だ
からこそ成り立っているケースと言えるでしょう。つま
りFBでは単に自分の趣味嗜好をダイレクトにアップす
れば良いというわけではないということです。場を選ぶ
のがやはり重要になります。
では、最後にアイスクリームを販売しているJeni sの
Jeni sでは「タンブラー」を使い、調理している“過程”を発信
事例です。Jeni sは卸・直営店・オンラインショップを
3つ目としては「影響力のある人に積極的にアプロー
展開していますが、ソーシャルメディア活用においては
チ」。今は“インフルエンサー”と呼ばれるクチコミの
「タンブラー」をうまく使っています。タンブラーは個
拡散力を持っている人たちがどんどん専門性を高めてい
人がブログのように自由に画像やテキストを投稿したり
ってます。ですからより早く自社の商材に合った専門家
SNSのように誰かとつながることができるツールです。
を見つけて商品を紹介することが求められます。4つ目
Jeni sのタンブラー活用法で特徴的なのは、作ってい
は「共有したい場を作ることが重要」。つまり、ユーザ
る過程をアップしている点です。もちろん完成した商品
ー同士がその情報を共有したくなるよう情報を発信して
も掲載していますが、こればかりですと、単なる宣伝っ
いくべきです。仮にFBでユーザーの反応が悪くても、
ぽくなってしまい、ユーザーに共感・共有されにくいと
ブログなどの別の場所ではうまくいくこともあります。
いう問題があります。このあたりは個人が食べ物の画像
そこは諦めずに盛り上がる場所を作ってください。
をアップする場合とは見る側の受け取り方が微妙に異な
以上がソーシャルの成功ポイントになります。今回ご
ってきます。そこでJeni sではアイスクリームを制作し
紹介した事例などを参考にうまくソーシャルメディアを
ている過程をタンブラーを使って画像や動画で発信する
使いこなしてもらい、事業の拡大につなげていただけれ
ことで、自分たちが作り出している“味”に“物語性”
ばと思います。
を付加しているわけです。
筆者プロフィール
ソーシャルを活用する4つのポイント
これまでの事例を踏まえ、ソーシャルの“成功ポイン
ト”をまとめてみます。
1つ目は「顧客は暇つぶし、エンターテイメントを求
めている」。これは先述したスマホの利用理由と重なり
ます。2つ目が「店舗で発信する情報と顧客が発信する
情報のどちらも重要」。つまり自社が出す情報だけでな
く、顧客がその情報を紹介しやすくすることが大事で
す。そのためにはハッシュタグなどをうまく使うことも
高木修(たかぎ・おさむ)
2000年船井総合研究所にて、
初代ウェブマスターに就任。
2002年ベンチャー企業を立
ち 上 げ、 月 商3000万 円 を 達
成。2004年 上 場 コ ン サ ル テ
ィング会社である日本エル・
シー・エーにてウェブマーケ
ティング事業部を立ち上げ、
1年で50名を率いるマネージ
ャ ー に 就 任。2010年 株 式 会
社いつもに参画、事業部長に
就任。コンサルタントとして、
年間100回の講演開催。
効果的でしょう。
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「読者限定コンテンツ」は「http://nethanbai.co.jp」にて
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