GISフォーラム2014in沖縄

GISフォーラム2014in沖縄
2014年12月5日(金)
沖縄県立博物館・美術館
京都の歴史GIS:
デジタル・ヒューマニティーズの新たな展開
矢野桂司
立命館大学文学部地理学教室
立命館大学アート・リサーチセンター
[email protected]
本日の講演概要
近年、情報科学と人文科学が連携した新
たな学問領域として、デジタル人文学(DH:
Digital Humanities)が注目されている。ここで
は、 DHの観点から、コンピュータ上に再現さ
れた歴史都市京都の時空間、バーチャル京
都を通して、歴史都市京都の景観の変遷を見
ていくことにする。その結果、デジタル地図を
最大限に活用したデジタル人文学を実践して
みたい。
GIS・GIScの動向
•
•
•
•
•
GISystem → GIScience → GIS(Study, Service, Security,・・・)
ビッグデータ、オープンデータ
ロケーションサービス
ボランタリーなGIS
学問の進化
Trans-disciplinary
既存の学問体系の枠組みが崩れ、新しい学問体
系が生じる
Cross-disciplinary
複数の学問体系に及ぶ新しい専門分野が生じる
Inter-disciplinary
複数の学問体系の共同作業により、新たな知を
共有する
Multi-disciplinary
複数の学問体系が共同で研究を行う
• 産学官連携と人材育成
赤司秀明(1997)
デジタル・ヒューマニティーズ(DH)
(デジタル人文学)とは?
・GIS・デジタル化されたあるいはボーン・デジタルな資料に立脚し
ている。
・コンピューティングによるツール(データ可視化、情報検索、データ
・マイニング、統計、テキストマイニング、デジタルマッピング)やデ
ジタル出版によって提供されるツールを用いる。
・伝統的な人文学(歴史学、哲学、言語学、文学、芸術学、考古学
など)や社会科学の方法論を混ぜ合わせる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Digital_humanities
文部科学省21世紀COEプログラム( 2002-2006年度)
文部科学省共同利用・共同研究拠点( 2014-2019年度)
「京都アート・エンターテインメント創成研究」 「日本文化資源デジタル・アーカイブ研究拠点」
文部科学省グローバルCOEプログラム( 2007-2011年度)
「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」
Research Activities
新たな日本文化研究
全国共同利用・共同研究拠点
デジタル・ヒューマニティーズ拠点
京都アート・
大学院・文学研究科
文化情報学専修大学院
国際展開
日本文化の
デジタル・ミュージアム
エンターテインメ
文理融合・連携
ント創成研究
共同プロジェクト
デジタル人文学
バーチャル京都
デジタルアーカイブ
地理情報システム
1998
アート・リサーチセンター
2002
21st Century COE
Research Frontier
Open research
2012 2014
2007
Global COE
Digital
Museum
文部科学省(MEXT)
Year
全国共同利用・共同
研究拠点
本日の講演内容
• バーチャル京都とは
• 現在のバーチャル京都
– 京町家、近代建築、・・・
• 過去のバーチャル京都
– 昭和、昭和初期、明治・大正、江戸、平安京
• 未来のバーチャル京都
– 新景観政策、景観シミュレーション
• バーチャル・ミュージアム
– 祇園祭
未来
現在
昭和
大正
明治
江戸
京都バーチャル時・空間
平安
バーチャル京都の目的
日本の歴史都市京都の時・
空間をバーチャルに自由自在
に動きまわることのできる
4次元GIS京都バーチャル時・空間
を構築すること。
バーチャル京都関連
書籍
Yano, K., Nakaya, T. and
Isoda, Y. eds. (2007):
Virtual Kyoto:
Exploring the Past,
Present and Future of
Kyoto.
Nakanishiya Shuppan
Web
Yano, K., Nakaya, T.,
Kawasumi, T. and Tanaka,
S. eds. (2011):
Historical GIS of Kyoto. http://www.geo.lt.ritsumei.ac.jp/webgis/ritscoe.html
Nakanishiya Shuppan
Internet Explore 対応(プラグインが必要)
MapCubeTMとは?
住宅地図
空中写真
Data
LIDAR Data
3D City Model Automatic Generation System
Photo-realistic 3D City Model
(MapCubeTM)
-
京町家
京町家
戦前に竣工した日本建築の職住兼用もしくは
住宅専用家屋
平安時代中期に起源を持ち、現在の形の基礎
は江戸時代中期に形成。
その後、部分的変化が加わり、大正末期から
昭和初期に完成。
16
17
T
田中覚研究室と共同
京町家の間取図
⑫紅殻(べんがら)
京町家専門店 エステイト 信 HP
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/est-shin/kyoumatiya013.htm
2010年10月21日
京都新聞夕刊
第Ⅰ・Ⅱ期京町家まちづくり調査
■
第Ⅰ期調査(1995~1998年度)
28,696軒の京町家を確認
・平成7,8年度市民調査
「木の文化都市:京都の伝統的都市居住の作法と様式に関する研究」
・平成10年度京都市「京町家まちづくり調査」
■ 第Ⅱ期調査(2003~2004年度)
22,325軒の京町家を確認
・平成15年8月立命館大学地理学教室
・平成16年2月京都市※および立命館大学地理学教室
・平成16年8月立命館大学地理学教室(調査終了)
第Ⅲ期京町家まちづくり調査
■
第Ⅲ期調査(2008~2009年度)
47,735軒の京町家を確認
調査主体
京都市
財団法人京都市 景観・まちづくりセンター
立命館大学
調査対象
昭和25年以前に伝統工法で建築された住宅すべてを京町家とする。
都心4区に加え,昭和初期に開発された地域や旧街道筋に現存する京町家
約56,000軒を調査する。
調査対象地域は学区単位で全学区回る中心部のパターン、
旧街道筋のみを回る周辺部のパターンに2分される。
第Ⅰ・Ⅱ期調査
第Ⅲ期調査
大正元(1912)年正式2万(20000分の1)
第Ⅲ期京町家調査範囲
◆都心4区(前回調査エリア□)
(上京・中京・下京・ 東山区)
+
◆昭和初期(戦前)に
開発された地域
+
◆旧街道筋(ー)
※戦前認可区画整理の地域は除く
調査期間<平成20・21年度>
平成20(2008)年10月開始
平成22(2010)年3月完了
京町家GISデータベース
の構築過程
第Ⅱ期調査
紙媒体の地図・調査シート
↓
第Ⅲ期調査
PDA・デジタルカメラ
調査シート(バックアップ)
入力ミスの削減や大幅な
時間の短縮が可能となる.
Photofieldの導入により,
精度の向上が図られる.
第Ⅲ期 調査項目
紙地図と手書きの調査結果を収めた91冊の地区別のファイル
5万枚以上の紙地図と10万枚の調査シート
京町家データベース(Filemaker)
<GIS>京町家ポイントデータ
<GIS>京町家建物ポリゴンデータ
Zenrin TownMapⅡの建物ポリゴン
第Ⅲ期京町家まちづくり調査
基本マップ
<GIS>京町家ポイントデータ
<構造>
●本二階:33,747軒
●中二階: 6,829軒
●三階建:
236軒
●平屋建: 6,912軒
滅失した京町家の土地利用 (第Ⅰ・Ⅱ期調査範囲)
First survey (34,279)
1
2
3
4
5
6
7
8
Total
Second survey (30,348)
-11.5%
Third survey (27,796)
-8.4%
1
2
3
4
5
6
7
8
Total
First -> Second
Low-rise Residential Housing
Apartments
Office/Comercial Buildings
Covered Parking Lots
Open Parking Lots
Open Space
Others
Unknown
Second -> Third
Low-rise Residential Housing
Apartments
Office/Comercial Buildings
Covered Parking Lots
Open Parking Lots
Open Space
Others
Unknown
2,101
53.4%
301
7.7%
410
10.4%
13
0.3%
542
13.8%
316
8.0%
117
3.0%
131
3.3%
3,931
100.0%
1,198
46.9%
354
13.9%
120
4.7%
1
0.0%
443
17.4%
258
10.1%
137
5.4%
41
1.6%
2,552
100.0%
第Ⅱ期調査2003-2004
第Ⅰ期調査1995-1998
34,279
-11.5%
3,931 Loss
第Ⅲ期調査2008-2009
30,348
-8.4%
2,552 Loss
27,796
良好な通り景観
最近の京都市の施策
• 京都市伝統的な木造建築物の保存及び活用に関する条例
– http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000150629.html
• 「歴史都市京都における密集市街地対策等の取組方針」及び
「京都市細街路対策指針」の策定
– http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000102185.html
•
京都市地域連携型空き家流通促進事業
– http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000124125.html
• まちの匠の知恵を活かした京都型耐震リフォーム支援補助金
– http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000120528.html
• 京都を彩る建物や庭園 選定及び認定制度
– http://www.city.kyoto.jp/irodoru/seido.html
京町家の3次元VRモデル
自動生成プログラム
自動生成プログラムの手順
Procedure
1) Getting the following data fromGIS;
•Centroid of house shape
•Vertexes of house shape
•Distances from street edge
front-right vertex
center
m
n
front-left vertex
2) Identifying
•Nearest vertex from street edge
•Line of frontage
3) Calculating
•Normal direction
•Length of frontage
•Length of depth
4) Identifying
•Type of Kyo-machya
中二階
3つのパートに分割
総二階
総二階
中二階
3階建
平屋
1995-1998
2003-2004
2008-2009
1995-1998
2003-2004
2008-2009
近代建築物
京の近代建築
近代建築とは
明治開国以降,近代国家成立の過程で,産業的
には殖産興業から近代産業へ,社会・文化的には
モダニズム(近代性)が浸透していくかたちで,
西洋近代化が加速的に進展した。日本建築も,そ
うした西洋の様式を取り入れたものが建設されて
きたが,一連の建築物や構造物を「近代建築」と
呼称される。
時期的な定義としては,幕末の1860年代から第
二次大戦終了の1945年迄の約85年間に日本国内に
建てられた洋風の建築を指す。
50
背景:旧第一勧業銀行京都支店建替前(明治39 年)
赤レンガづくりと鉄筋コンクリート構造
20世紀初頭の近代建築住宅
近代建築データベースのソース
① 京都市文化財保護課編,2006年,
「京都市の近代化遺産 〈近代建築編〉」
② 京都市文化財保護課編,2005年,
「京都市の近代化遺産 〈産業遺産編〉」
③ 日本建築学会編,1983年,
「日本近代建築総覧(新版)」
④ 国・府・市の指定文化財等
GISデータベースの概要
外部の写真ファイル
にハイパーリンク
近代建築の空間的分布
用途別の分布
近代建築の現況について
用途分類
現存
解体
不明
未確認
合 計
金融・商業
348
112
9
2
471
医 療
57
11
2
0
70
宗教・教育・
文化・劇場
259
52
1
23
335
行政・軍事
30
6
0
0
36
住 宅
673
156
19
12
860
工業・窯業・
醸造
76
25
1
46
148
公 園
23
0
0
0
23
道路・鉄道・
橋梁
上下水道・電
力
136
10
0
19
165
30
4
0
7
41
合 計
1632
376
32
109
2149
存続率(不明・未確認除く)は、金
融・商業および工業等で約75%、
医療~住宅で81~83%である。
近代建築の3次元VRモデル(1)
東華菜舘(旧矢尾政)
W.M.ヴォーリズ設計
in 1926(大正15年)
By Ritsumeikan University
CAD CENTER
京都市庁舎
レストラン菊水(旧菊水館)
京都市営繕課設計
松村次郎(上田工務店)設計
in 1927(昭和2年) in 1926(大正15年)
近代建築の3次元VRモデル(2)
東京三菱銀行京都支店
(旧三菱銀行京都支店)
桜井小太郎設計
in 1925(大正14年)
北國銀行京都支店
(山口銀行京都支店)
辰野片岡建築事務所設計
in 1916(大正5年)
By Ritsumeikan University
CAD CENTER
南座
白波瀬直次郎設計
in 1929(昭和4年)