マンスリークリア型カードショッピング債権 ABL

14-S-0175
2015 年 2 月 24 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
<資産証券化商品>
マンスリークリア型カードショッピング債権 ABL<NLS> 15-02
【新規】
ABL格付
J−3
■格付事由
1.スキームの概要
(1) オリジネーターは、保有する翌月一括払いのカードショッピング債権いわゆるマンスリークリア債権を地銀
共同ファンディング株式会社(SPC)に譲渡する。譲渡に際し、オリジネーターは動産及び債権の譲渡の対
抗要件に関する民法の特例等に関する法律第 4 条第 1 項に定める登記により第三者対抗要件を具備する。
(2) SPC は、マンスリークリア債権プールを責任財産として、ABL の借入によって資金調達を行い、調達した金
銭を当初買取代金としてオリジネーターへ支払う。なお、マンスリークリア債権の買取債権の額面金額総額
と当初買取代金の差額は、「留保代金」として実質的な劣後を形成する。
(3) オリジネーターは、ABL 返済日に、その時点で原債務者からの回収の有無を問わず、原債務者がオリジネー
ターに支払いをなすべき日(回収日)における回収されるべき金額の総額から関連する留保代金の金額を控
除した金額(立替払金)を、SPC の口座に振込指定することにより、全額支払う。
(4) SPC が立替払金により ABL を返済した後、オリジネーターが SPC に対して負担する回収金の引渡債務と、
SPC がオリジネーターに対して負担する立替払金返還債務とは対当額にて相殺され、その差額が双方の間で
精算される。但し、SPC の責任財産中の資金が差額の支払いに不足する場合は、SPC は金融機関から借入を
行ってかかる支払いを行う。
(5) 本件では現金準備金勘定、バックアップサービサーは設置されていない。
2.仕組み上の主たるリスクの存在
(1) 対象債権の概要
原債権は、オリジネーターが発行する各種カードの会員が、前月 1 日から前月末日までにオリジネーター
の加盟店等において、同カードを利用し、翌月一括払いを選択して購入した商品または提供を受けた役務の
代金の請求権として発生する。
オリジネーターは債権譲渡基本契約において、裏付資産となる対象債権には無効、取消、解除、相殺、免
除、時効その他対象債権の全部または一部を不存在もしくは消滅せしめまたは回収日に原債務者が履行を拒
みうる何らかの事由が存在しないこと等を、表明し、保証している。オリジネーターのかかる事実表明に関
し、いずれかの違反があった場合、SPC は対象債権の買取りをオリジネーターに通知の上解除することがで
き、オリジネーターおよび SPC は当該対象債権の買取りについて原状回復することとなっている。
(2) 信用リスク
オリジネーターが保有するマンスリークリア債権の債務者について、破産・支払遅延等が発生することに
より、債権の回収が予定通り行われないリスクがある。このリスクに対しては、譲渡対象債権の債務者の信
用力等にもとづき必要劣後比率相当の留保代金を設けることにより手当てする。
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(3) コミングリングリスク
対象債権は 1 回払いの債権であるため、オリジネーターが倒産した場合、回収金の損失(コミングリン
グ・ロス)は最大で、当該債権回収期間における回収額全額となる。このため、本件における ABL の格付
は、オリジネーターの信用力が上限となる。
3.格付評価のポイント
(1) 損失、キャッシュ・フロー及び感応度の分析
信用リスクに関する必要劣後は、小口多数アプローチ(大数アプローチ)をベースにしたストレステスト
に基づき決定している。対象債権と本 ABL がともに期間 1 ヶ月未満の短期であることを考慮し、ヒストリ
カルデータをもとに 1 ヶ月延滞率(本件の実質的なデフォルト率)のベースケースおよびストレス水準を決
定し、ストレステストを行って対象となる証券化期間中に想定される延滞金額を求める。
東日本大震災の影響で 1 ヶ月延滞率は一時的に上昇したものの、その後は低位で推移しており、ベースケ
ースの 1 ヶ月延滞率は 2.07%とした。1ヶ月延滞率の一時的な上昇リスクを織り込んだストレステストの結
果、必要劣後比率については「6.3%」とすることにより、各月の ABL が「J-3」格相当のリスクの範囲内で
元本返済を行うのに十分な水準であると判断される。本件で実際に設定された信用補完水準は、かかる必要
劣後以上の水準にある。
(2) その他の論点
①
オリジネーターから SPC への譲渡は真正な譲渡を構成すると考えられる。
② 本件の回収金口座は、一定の水準以上の短期格付またはこれと同程度の長期格付を JCR から付与されて
いる金融機関に開設されている。
③
関係当事者の本件運営にかかる事務遂行能力に現時点で懸念すべき点はみられない。
本 ABL の元本返済に関するリスクについては、優先劣後構造及び法的手当てによって、
「J-3」と評価で
きる水準まで縮減されていると考えられ、本 ABL の格付を「J-3」と評価した。
【スキーム図】
ABL投資家
ABL元本返済
ABL実行
カードショッピング
債権譲渡
カードショッピング債権
カード会員
(原債務者)
支払い
当初買取代金
立替払金の支払い
オリジネーター
地銀共同ファンディング
(ABL借主兼譲受人)
劣後代金支払い
(担当)荘司 秀行・中川
哲也
■格付対象
【新規】
対象
マンスリークリア型カードショッピ
ング債権 ABL<NLS> 15-02
ABL 実行金額
劣後比率
3,500,000,000 円
32.23%
2/4
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最終返済日
利率
格付
2015 年 3 月 13 日
TIBOR+0.63%
J-3
<発行の概要に関する情報>
ABL 実行日
返済方法
流動性・信用補完措置
2015 年 2 月 24 日
満期一括返済
優先劣後構造
※劣後比率:32.23%(劣後金額/債権総額)
上記格付はバーゼルⅡに関連して金融庁が発表した『証券化取引における格付の公表要件』を満たしている。
<ストラクチャー、関係者に関する情報>
オリジネーター
宮城県所在の大規模その他金融業
SPC
地銀共同ファンディング株式会社
アレンジャー
株式会社七十七銀行
<裏付資産に関する情報>
裏付資産の概要
オリジネーターの発行するクレジットカードのカード会員 (原債務者)が当該クレジットカードを利
用してオリジネーターの加盟店において、商品を購入しまたは役務、権利その他サービスの提供を
受け、当該原債務者が支払うべき代金につき、オリジネーターと原債務者との間で成立した立替払
契約に基づくオリジネーターによる立替払いに関連して発生するオリジネーターの原債務者に対す
る立替金請求権。または、提携カード会社が加盟店等から譲受け、原債務者に対して保有するカー
ド利用代金支払請求権を、提携カード会社とオリジネーターとの間の債権譲渡契約に基づきオリジ
ネーターに譲渡することによりオリジネーターが取得したカード利用代金支払請求権。
新規のカード入会申込みに対する審査は、申込書のチェック・社内の情報検索・信用情報照会
(CIC)を行ったうえで、本人への電話確認を実施し、決裁者がカード発行の決裁と与信ランクの決
定を行う。
裏付資産発生の概要
途上与信については、会員ごとのリスク強度判定とリスク会員の早期発見・早期対応を主眼とした
体制強化がなされている。
また、改正貸金業法・改正割賦販売法に対応した社内体制の整備とシステム開発を、法施行のスケ
ジュールにあわせ順次実施している。
裏付資産プールの属性
債権残高:5,164,345,272 円
きわめて金額分散の利いた債権プールである。
原債務者について死亡、支払不能、支払の停止、私的整理開始の申出、または破産手続開始、会社
更生手続開始、特別清算開始もしくは民事再生手続開始の申立、または解散の決議の事由が存在せ
ず、また存在する懸念がないこと。
適格要件(抜粋)
支払方法は翌月 1 回払いであり、支払日が会員規約により毎月 27 日と定められていること。
対象債権は、オリジネーターにおいて新規取扱停止加盟店とされる加盟店に係る対象債権ではない
こと。
債権譲渡基本契約締結日以前において、分割支払金の支払いについて、1 回でも 1 ヶ月超の債務不
履行が生じた履歴がないこと。
予定キャッシュフロー
加重平均金利
1 ヵ月以内:100.00%
0.00%
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 2 月 24 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:荘司 秀行
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準については、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格
付の種類と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)のストラク
チャード・ファイナンス「格付の方法」のページに、「割賦債権・カードショッピングクレジット債権」(2014 年 6
月 2 日)の信用格付の方法として掲載している。回収金口座や倒産隔離など他の付随的な論点についても上記のペ
ージで格付方法を開示している。
5. 格付関係者:
(オリジネーター等)
(アレンジャー)
(SPC)
宮城県所在の大規模その他金融業(ビジネス上の理由により非公表:オリジネータ
ーを取り巻く競合状況が厳しいため不測の影響に対して配慮したもの)
株式会社七十七銀行
地銀共同ファンディング株式会社
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6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。JCR は、格付付与にあたって必要と判断する情報の提供を発行者、オ
リジネーターまたはアレンジャーから受けているが、その全ては開示されていない。本件信用格付は、資産証券化
商品の信用リスクに関する意見であって、価格変動リスク、流動性リスクその他のリスクについて述べるものでは
ない。また、提供を受けたデータの信頼性について、JCR が保証するものではない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
① 格付対象商品および裏付資産に関する、オリジネーターおよびアレンジャーから入手した証券化対象債権プ
ールの明細データ、ヒストリカルデータ、パフォーマンスデータ、証券化関連契約書類
② 裏付資産に関する、中立的な機関から公表された中立性・信頼性の認められる公開情報
③ オリジネーターに関する、当該者が対外公表を行っている情報
④ その他、オリジネーターに関し、当該者から書面ないし面談にて入手した情報
なお、①についてはオリジネーターが証券化関連契約書類上で情報の正確性に関する表明保証を行っている。
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が
求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. 資産証券化商品の情報開示にかかる働きかけ:
(1) 情報項目の整理と公表
JCR は、資産証券化商品の信用格付について、第三者が独立した立場で妥当性を検証できるよう、裏付資産の種
類別に、第三者が当該信用格付の妥当性を評価するために重要と認められる情報の項目をあらかじめ整理してホー
ムページ上で公表している。
(2) 情報開示にかかる働きかけの内容及びその結果の公表
JCR は、本資産証券化商品の格付関係者に対し、当該資産証券化商品に関する情報(上記の情報項目を含む。)の
開示を働きかけた。
働きかけの結果、格付関係者が公表に同意した情報の項目について、JCR は、格付関係者の委任を受け、格付関
係者に代わりここで当該情報を公表する(上記格付事由及び格付対象を参照)。なお、公表に対して同意を得られて
いない情報の項目については、上記格付事由および格付対象の箇所で未公表と表示している。
10. 資産証券化商品についての損失、キャッシュフローおよび感応度の分析:
格付事由参照。
11. 資産証券化商品の記号について:
本件信用格付の対象となる事項は資産証券化商品の信用状態に関する評価である。本件信用格付は裏付けとなる
資産のキャッシュフローに着眼した枠組みで付与された格付であって、資産証券化商品に関し、元本が最終返済日
までに全額返済されることの確実性に対するものであり、ゴーイングコンサーンとしての債務者の信用力を示す発
行体格付とは異なる観点から付与されている。
12. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、または
その他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的
確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当
該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭
的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のい
かんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であって、
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ありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として発行体よ
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■用語解説
予備格付:予備格付とは、格付対象の重要な発行条件が確定していない段階で予備的な評価として付与する格付です。発行条件が確定した場合には
当該条件を確認し改めて格付を付与しますが、発行条件の内容等によっては、当該格付の水準は予備格付の水準と異なることがあります。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラス
に登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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