14-I-0076 2015 年 2 月 13 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 インド共和国 (証券コード:−) 【見通し変更】 外貨建長期発行体格付 BBB+ 格付の見通し ネガティブ 自国通貨建長期発行体格付 BBB+ 格付の見通し ネガティブ → 安定的 → 安定的 ■格付事由 (1) 格付は、インド経済が有する高い成長ポテンシャル、政治の安定性などを主に反映している。他方、財政 ポジション改善の必要性、インフラの脆弱性などが格付の主な制約要因となっている。格付の見通しはネ ガティブから安定的に変更した。中間層の台頭を背景とする 2000 年代後半の内需主導による高成長は、 インフレ圧力の増大、原油等の輸入増を主因とする経常赤字の急激な拡大を招いた。しかし、インド準備 銀行(中銀)による利上げの効果に加え、原油価格急落の影響もあって、インフレ圧力は足元で大きく沈 静化、経常赤字についても歴史的高水準に達した 12 年度に比べ半減している。14 年 5 月の総選挙におけ るインド人民党(BJP)の圧勝により誕生したモディ政権は、極めて強固な政治基盤に支えられており、 今後、インフラ整備、規制緩和による外国からの直接投資の拡大など構造改革の推進が期待される。また、 インフレ抑制を重視する保守的金融政策が維持されてきたこともあり、インドのマクロ経済のバランスが 今後大きく損なわれる可能性は低下していると考えられる。 (2) インドは南アジアのインド亜大陸を占める連邦共和国で世界第 2 位の人口規模を有する。12 年度以降、 4%台の低成長を続けてきたインド経済は、14 年度に入りやや回復の兆しを見せ始め、14 年 4-6 月期以降、 成長率は 5%台(GDP は 04/05 年度基準ベース)を維持している。利上げ効果と原油価格下落の影響から インフレ率が大きく低下し、中銀は 15 年 1 月に利下げに転じた。このため経済は、今後、緩やかな回復 傾向を続けると予測される。中長期的には、①中間層の台頭による個人消費の拡大②長期的に高水準に維 持される生産年齢人口(15 歳∼64 歳)比率−など経済成長を支える要因が存在するものの、対外バラン スの悪化を伴わない持続的高成長の実現には、財政ポジションの改善、規制緩和による投資促進、脆弱な インフラの改善など構造改革の着実な推進が必要となる。 (3) インドでは内需の拡大と油価の高騰を背景に原油を始めとする輸入が急激に増加し、2000 年代後半以降、 貿易赤字が増加。結果として、経常赤字も GDP 比で 06 年度の 1.1%から 12 年度の 4.9%に大幅な上昇を 余儀なくされた。しかし、内需鈍化に伴う輸入の減少に加え、政府による金輸入抑制措置の効果もあり同 比率は 13 年度に 1.9%に低下した。今後、景気回復に伴い、経常赤字は再び増加傾向になると見られる ものの、規律ある財政政策やインフレ抑制重視の保守的金融政策が堅持されれば、同赤字の GDP 比率は 管理可能な水準に維持される可能性が高まると考えられる。他方、政府による慎重な対外債務管理により 対外債務の水準は GDP 比で 25%程度と低水準に維持されている。外貨準備高は、経常赤字の拡大を背景 に 11 年半ば以降、減少傾向となり、06 年 3 月末に 7 倍を超えていた外貨準備/短期対外債務倍率が 13 年 6 月末には 2.6 倍にまで低下したが、その後は緩やかな上昇に転じている。とは言え、JCR は今後、量 的緩和を終了した米国による利上げが資本収支におよぼす影響を含め国際収支の動向を注視してゆく。 (4) 財政赤字の継続によりインドの公的債務残高は一貫して増加傾向にある。GDP 比では 14 年 3 月末現在 51%と比較的低位に留まるが、金利水準が高いことから公的債務残高の増加により利払い費用が増加傾向 にあり、借入金を除く歳入総額に対するその比率は、13 年度の 36.9%(実績見込みベース)に上昇、財 政の硬直化を招いている。14 年度財政予算で政府は財政赤字を GDP 比で前年度の 4.6%(実績見込み) 1/3 http://www.jcr.co.jp から 4.1%に緩やかに低下させる計画である。政府は中期的にも財政赤字の GDP 比率を緩やかに低下させ ていく方針である。政府は 14 年 10 月、ディーゼル燃料への補助金を撤廃したが、JCR は、今後とも一層 の補助金改革や GST(Goods and Service Tax)導入を始めとする財政改革の進捗を注視する。 (5) 金融システムについては、関連法制の整備により不良債権処理が着実に進行し、指定商業銀行の不良債権 比率が 2000 年代に大きく低下した。ただし、近年は、経済の減速を背景に緩やかな上昇傾向となってお り、同比率はグロスベースで 14 年 9 月末現在 4.5%(ネットベース 2.5%)に上昇している。加えて、リ ーマンショック後に条件緩和債権を正常債権に分類する措置が導入されたが、近年の景気減速下で条件緩 和債権が公共部門銀行(Public Sector Bank(PSB))を中心に増加、これを不良債権に含めると同比率は 14 年 9 月末現在 10.7%に達する。指定商業銀行の自己資本比率(BIS II ベース)は、14 年 9 月末現在 12.8%と比較的高水準に維持されているが、条件緩和債権問題もあって政府は PSB への増資を計画してお り、JCR は今後の進捗を注視する。他方、指定商業銀行の貸出残高は増加傾向にあるが、GDP 比では 64%(14 年 3 月末)と低水準に止まる。金融仲介機能を通じて資本形成を下支えする金融システムの健 全な発展は、インド経済の発展にとって今後よりその重要性を増していくと考えられる。 (担当)田村 喜彦・利根川 浩司 ■格付対象 発行体:インド共和国(Republic of India) 【見通し変更】 対象 外貨建長期発行体格付 自国通貨建長期発行体格付 格付 見通し BBB+ BBB+ 安定的 安定的 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 2 月 6 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本 主任格付アナリスト:田村 喜彦 幸一 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」 (2014 年 11 月 7 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) インド共和国(Republic of India) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明 ・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 発行体または中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を 満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. 非依頼格付について: 本件信用格付は格付関係者からの依頼に基づかない信用格付である。国に対する信用格付である場合を除き、依 2/3 http://www.jcr.co.jp 頼に基づく格付と区別するため格付記号の後に「p」を表示している。格付関係者からは、信用評価に重要な影響を及 ぼす非公表情報を入手している。 10. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp
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