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ニッセイ基礎研究所
2015 年 2 月 5 日
Jリートは3年連続で大幅高。オフ
ィス市場は需要の拡大が継続
不動産クォータリー・レビュー2014 年第 4 四半期
金融研究部 不動産投資チーム 主任研究員
岩佐 浩人
[email protected]
要 旨

前期までの実質GDP成長率が予想外の2期連続マイナスとなり、政府は 2015 年 10 月の消費増税を延
期し、日銀は追加金融緩和を決定するなど、経済・金融環境は大きく変動した。足もとでは企業の生産
活動が回復し、雇用指標はさらに改善している。一方、住宅市場は冷え込んでおり、2014 年の新設住
宅着工戸数は5年ぶりに減少、首都圏のマンション新規発売戸数は 3 年ぶりに減少、中古マンション成
約件数も減少している。こうしたなか、金融緩和などを背景に地価の上昇は3大都市圏から地方圏へ広
がっている。

東京オフィス市場は、オフィス需要が拡大し空室率が大きく低下している。賃料もビル間で勢いに差が
見られるものの、総じて上昇局面にある。東京都区部のマンション賃料は緩やかに上昇している。2014
年の訪日外国人客数は 1,341 万人と前年比 29%増加し、ホテルの客室稼働率は年間を通じて高水準
を維持している。物流施設市場は、空室率が低位で安定している。

2014 年の J-REIT 市場は 25.3%上昇し、3年連続で大幅高となった。新規の不動産取得額は 1.6 兆円、
市場規模は 49 銘柄・10.5 兆円に拡大した。不動産投資市場は、2 年連続で4兆円を超えて活発な取引
が行われている。
東京のオフィス市場
(Aクラスビルの賃料と空室率)
50,000
(円/月坪)
14%
45,000
12%
40,000
10%
35,000
8%
30,573円
6%
30,000
25,000
4.0%
4%
賃料/月・坪(共益費除く)
2014 Q3
2014 Q1
2013 Q3
2013 Q1
2012 Q3
2012 Q1
2011 Q3
2011 Q1
2010 Q3
2010 Q1
2009 Q3
2009 Q1
2008 Q3
2008 Q1
2007 Q3
2007 Q1
2006 Q3
2006 Q1
2005 Q3
2005 Q1
2004 Q3
2004 Q1
2003 Q3
2003 Q1
2002 Q3
2002 Q1
2001 Q3
0%
2001 Q1
15,000
2000 Q3
2%
2000 Q1
20,000
空室率(期末、右目盛)
(注)Aクラスビルは、エリア、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)、設備のガイドラインを基に、個別
ビル単位で立地・建物特性を重視し三幸エステートが選定している。
(出所)空室率:三幸エステート、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所
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1. 経済動向と住宅市場
前期までの実質 GDP 成長率が予想外の2期連続マイナスとなり、政府は 2015 年 10 月に予定して
いた消費税引き上げを延期し、日銀はデフレ脱却をより明確にするため追加の金融緩和を決定するな
ど、経済・金融環境が大きく変動した。こうしたなか、足もとでは企業の生産活動が輸出を中心に回
復し、雇用指標も着実な改善を示している。2014 年 12 月の完全失業率は前月比 0.1%低下の 3.4%、
有効求人倍率は 1.15 倍となり約 23 年ぶりの高水準となった(図表-1)。
ニッセイ基礎研究所は、昨年 12 月に 2014 年度から 2016 年度の経済見通しの改定を行った。実質
GDP 成長率は 2014 年度▲0.7%、2015 年度 1.6%、2016 年度 1.8%を予想している(図表-2)1。今
年度のマイナス成長は不可避であるものの、消費増税の影響が一巡し円安や原油安のプラス効果が発
現する 2015 年以降は、潜在成長率を上回る高めの成長を見込んでいる。
図表-1 完全失業率と有効求人倍率
3.0
1.4
3.5
1.2
完 4.0
全
失
業 4.5
率
(
%
) 5.0
1.0 有
効
求
0.8 人
倍
率
0.6
改
善
悪
化
5.5
0.4
完全失業率
14.1
13.1
12.1
11.1
10.1
09.1
08.1
07.1
06.1
05.1
04.1
03.1
02.1
01.1
0.2
00.1
6.0
有効求人倍率
(出所)総務省統計局「労働力調査、厚生労働省「一般職業紹介状況」
図表-2 実質 GDP 成長率の推移(年度)
(前年比)
4%
実質GDP成長率の推移(年度)
3.4%
2.1%
3%
0.4%
2%
予測
1.0%
1.6%
1.8%
▲0.7%
1%
0%
▲1%
▲2%
2010
2011
民間消費
2012
設備投資
2013
公的需要
2014
外需
2015
その他
2016
(年度)
(出所)内閣府経済社会総合研究所「四半期別GDP速報」(2014年12月)を基にニッセイ基礎研究所が作成
1
斎藤太郎『2014~2016 年度経済見通し~14 年 7-9 月期 GDP2次速報後改定』ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・
レター、2014 年 12 月 8 日
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一方、住宅市場は新設着工、販売、取引ともに冷え込みが続く。2014 年 12 月の新設住宅着工戸数
は、前年比▲14.7%の 76,416 戸となり 10 カ月連続で減少した。2014 年全体でも消費増税の影響か
ら持ち家を中心に減少し、前年比▲9.0%の約 89.2 万戸と5年ぶりに減少した(図表-3)。2014 年の
首都圏のマンション新規発売戸数は前年比▲20.5%の 44,913 戸となり、3 年ぶりに減少した。不動産
経済研究所は、2015 年の供給数を横ばいの 4.5 万戸を予想している(図表-4)。東日本不動産流通機
構(レインズ)がまとめた 2014 年第 4 四半期の首都圏中古マンションの成約件数は 7,982 件(前年
同期比▲12.2%)、2014 年全体でも 3 万 3,798 件(前年比▲7.2%)となり取引が減少した(図表-5)。
今後は、フラット 35Sの金利引下げや住宅エコポイント制度の復活、贈与税の非課税枠拡大などの政
策支援によって、住宅市場がどの程度まで回復するか注目される。
また、日本不動産研究所が発表した 2014 年 11 月の住宅価格指数(首都圏の中古マンション)2は、
前月比で3カ月連続の上昇、前年比では 18 カ月連続の上昇となった(図表-6)。
図表-3 新設住宅着工戸数(全国、年間)
(万戸)
(%)
200
50
180
40
160
30
140
20
120
10
100
0
80
-10
60
-20
40
-30
20
-40
0
-50
79
81
83
85
87
89
91
93
95
97
新設住宅着工戸数
99
01
03
05
07
09
11
13
前年比(右目盛)
(出所)国土交通省「建築着工統計調査報告書」
図表-4 首都圏のマンション新規発売戸数(年間)
(万戸)
100%
9
80%
8
60%
7
40%
6
20%
5
0%
4
-20%
3
-40%
2
-60%
1
-80%
0
-100%
82年
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15予
10
新規発売戸数
前年比(%)
(注)2015年は予測
(出所)不動産経済研究所
2
日本不動産研究所は、東京証券取引所発表の「東証住宅価格指数」を引き継いで「不動研住宅価格指数」の公表を開始
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図表-5 首都圏の中古マンション成約件数(年間)
40,000
20%
成約件数(左)
前年比(右)
35,000
10%
30,000
0%
25,000
-10%
20,000
-20%
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(出所)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
図表-6 不動研住宅価格指数(首都圏の中古マンション)
95
10%
前年比
85
0%
80
-5%
75
-10%
70
-15%
14.1
13.1
12.1
11.1
10.1
09.1
08.1
07.1
06.1
05.1
04.1
03.1
前年比
5%
02.1
住宅価格指数
住宅価格指数
90
(出所)日本不動産研究所「不動研住宅価格指数」
2. 地価動向
金融緩和などを背景に商業用不動産への投資意欲は依然強く、利便性の高い地区ではマンション需
要が拡大し、地価の上昇は3大都市圏から地方圏(中核都市)へと広がっている。国土交通省が発表
する「LOOK レポート(平成 26 年第3四半期)」によると、前期から上昇した地区の比率は、東京
圏で 89%、大阪圏で 77%、名古屋圏で 100%、地方圏で 69%、全体で 83%となり、下落地区は調査
以来はじめてゼロとなった(図表-7)。
野村不動産アーバンネットによると、2015 年 1 月 1 日時点の首都圏住宅地価格の変動率は、7四
半期連続プラスの前期比 0.9%(年間 2.0%)の上昇となった。地域別の年間変動率は、東京都区部
4.2%、東京都下 2.5%、神奈川 0.9%、埼玉 4.5%、千葉▲2.4%となった(図表-8)
。
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図表-7 全国の地価上昇・下落地区の推移
100%
90%
-12%以下
80%
-12%~-9%
70%
-9%~-6%
60%
-6%~-3%
50%
-3%~0%
40%
0%
30%
0%~+3%
20%
+3%~+6%
10%
+6%以上
2Q14
4Q13
2Q13
4Q12
2Q12
4Q11
2Q11
4Q10
2Q10
4Q09
2Q09
4Q08
2Q08
4Q07
0%
(出所)国土交通省「地価LOOKレポート」
図表-8 首都圏の住宅地価(変動率、前期比)
3. 不動産サブセクターの動向
①オフィス
東京のオフィス市場は、オフィス需要が拡大し空室率が大きく低下している3。三幸エステートに
よると、2014 年 12 月末の都心5区空室率は、大規模ビルで 5 年ぶりの3%台となる 3.99%(前期
4.51%)、全体で 4.73%(前期 5.24%)に低下した。他の主要都市についても空室率は軒並み低下
している。三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で開発した成約賃料データに基づくオフィス
レント・インデックス4によると、2014 年第 4 四半期の東京都心部オフィス賃料は、A クラスビル5が
2期連続上昇の 30,573 円(前期比 0.8%)(図表-9)、Bクラスビル6が前期比 1.9%下落の 17,132
円となった。競争力の高いビルとそうでないビルとの間で回復の勢いに差が見られるものの、オフィ
3
4
5
6
竹内一雅『需要増加が続く東京のオフィス市場~今後のオフィス面積拡張意欲の低下が懸念材料』ニッセイ基礎研究所、
基礎研レポート、2014 年 12 月 22 日
三幸エステート株式会社『オフィスレント・インデックス』
延床面積 10,000 坪以上、基準階貸室面積 300 坪以上、築年数 15 年以内
基準階貸室面積 200 坪以上でAクラスに該当しないビル(築年数経過でAクラスの対象外となったビルを含む)。標準的なB
クラスビルは、基準階面積 450 坪、築年数 16 年、最寄り駅からの距離 3 分
5|
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ス賃料は総じて上昇局面にあると言える。森ビルの調査によると、2015 年の東京 23 区大規模ビルの
供給量は前年比 26%増加する見通しである。供給を上回る需要が生まれるかどうか今後の需給バラ
ンスが注目される。
図表-9 都心部Aクラスビルの賃料と空室率
50,000
(円/月坪)
14%
45,000
12%
40,000
10%
35,000
8%
30,573円
6%
30,000
25,000
4.0%
4%
賃料/月・坪(共益費除く)
2014 Q3
2014 Q1
2013 Q3
2013 Q1
2012 Q3
2012 Q1
2011 Q3
2011 Q1
2010 Q3
2010 Q1
2009 Q3
2009 Q1
2008 Q3
2008 Q1
2007 Q3
2007 Q1
2006 Q3
2006 Q1
2005 Q3
2005 Q1
2004 Q3
2004 Q1
2003 Q3
2003 Q1
2002 Q3
2002 Q1
2001 Q3
0%
2001 Q1
15,000
2000 Q3
2%
2000 Q1
20,000
空室率(期末、右目盛)
(注)Aクラスビルは、エリア、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)、設備のガイドラインを基に、個別
ビル単位で立地・建物特性を重視し三幸エステートが選定している。
(出所)空室率:三幸エステート、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所
②賃貸マンション
東京都区部の中古マンション賃料は、いずれのタイプも前期比でプラスとなった(図表-10)。
前年比でもワンルームが 1.3%、ディンクスタイプが 0.8%、ファミリータイプが 0.1%上昇してお
り、賃貸マンション賃料は緩やかな上昇が継続している7。また、東京都心部の高級賃貸マンション
についても、空室率の低下に伴い賃料が上昇し 12 月末は前年比 10.8%上昇した(図表-11)
。
図表-10 東京都区部のタイプ別マンション賃料
112
110
108
106
104
102
100
98
05.12
06.4
06.8
06.12
07.4
07.8
07.12
08.4
08.8
08.12
09.4
09.8
09.12
10.4
10.8
10.12
11.4
11.8
11.12
12.4
12.8
12.12
13.4
13.8
13.12
14.4
14.8
14.12
96
ワンルーム
DK型
ファミリー
全タイプ計
(注)2005年1月を100とする指数
(出所)IPD・リクルート住宅指数
7
J-REIT の開示資料によると、住宅 REIT 主要7社(H26 年下期)の賃料単価変動率は、平均▲0.1%と微減するものの、下落
率は概ね縮小傾向にある。
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図表-11 高級賃貸マンションの賃料と空室率
空室率
(円/月坪)
14%
19,000
空室率
4Q 2014
2Q 2014
4Q 2013
2Q 2013
4Q 2012
2Q 2012
4Q 2011
2Q 2011
4Q 2010
2Q 2010
4Q 2009
2Q 2009
4Q 2008
2Q 2008
4Q 2007
2Q 2007
4Q 2006
2Q 2006
4Q 2005
2Q 2005
4Q 2004
13,000
2Q 2004
2%
4Q 2003
14,000
2Q 2003
4%
4Q 2002
15,000
2Q 2002
6%
4Q 2001
16,000
2Q 2001
8%
4Q 2000
17,000
2Q 2000
10%
4Q 1999
18,000
2Q 1999
12%
賃料(右目盛)
(注)期間中にケンコーポレーションで契約されたうち、賃料が30万円/月または専有面積が30坪以上のもの
(出所)ケン不動産投資顧問
③商業施設・ホテル・物流施設
商業販売統計によると、2014 年 12 月の大型小売店販売額は前年比 0.7%(既存店は 0.1%)とな
り、6 ケ月連続で増加した。業態別(既存店)では、百貨店が前年比 0.6%、スーパーが▲0.2%、
コンビニエンスストアが 0.9%となった(図表-12)
。2014 年全体(既存店)では、株高による資産
効果や外国人向けの免税品売上が好調な百貨店が 2.0%増と3年連続でプラスとなり、スーパー、
コンビニエンスストアもそれぞれ 0.3%、0.7%とプラスに転じた。
図表-12 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの売上高(既存店、前年比)
前年同月比(%)
30
(既存店ベース)
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
百貨店
スーパー
14.8
14.12
14.4
13.12
13.8
13.4
12.12
12.8
12.4
11.12
11.8
11.4
10.12
10.8
10.4
09.12
09.8
09.4
08.12
08.8
08.4
07.12
-20
コンビニエンスストア
(出所)経済産業省「商業動態統計」
全国 61 都市のホテル客室稼働率(2014 年 12 月)は 75.4%で前年同月比 2.3%上昇し、年間を
通じても高稼働を維持している(図表-13)
。2014 年の訪日外国人客数は、円安や東南アジアのビ
ザ発給要件の大幅緩和、消費税免税制度の拡充、訪日プロモーションの効果などを背景に、前年比
29%増の 1,341 万人となり2年連続で過去最高を更新した。2015 年は 1,500 万人が予想されてい
る。国・エリア別にみると、台湾、韓国、中国の順に多く全体の 60%を占め、前年からの増加率
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では中国からの訪日数が 83%増加した(図表-14、15)。また、2014 年の訪日外国人の旅行消費額
は前年比 43%増加の約 2 兆円となり、国内消費を下支えする効果をもたらしている。
図表-13 ホテル客室稼働率の暦年月次ベース(全国)
全国平均客室稼働率
90%
85%
80%
75%
70%
65%
60%
55%
50%
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2009年
2012年
7月
8月
9月
10月
11月
2010年
2013年
12月
2011年
2014年
(出所)オータパブリケイションズ「週刊ホテルレストラン」を基にニッセイ基礎研究所が作成
図表-14 訪日外国人客数(年間)
(万人)
1,600
1,500
1,341
1,400
1,200
1,036
1,000
600
861
835 835
800
477 524 521
614
673
733
679
836
622
400
200
2015(予)
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
0
(出所)日本政府観光局(JNTO)
図表-15 国・地域別の訪日外客数(2014 年)
300
100%
総数(万人)
前年比
250
80%
200
総
数
( 150
万
人
) 100
60%
40%
前
年
比
(
%
)
20%
50
ロシア
インド
ベトナム
ドイツ
インドネシア
フランス
カナダ
フィリピン
英国
シンガポール
マレーシア
豪州
タイ
米国
香港
中国
韓国
0%
台湾
0
(出所)日本政府観光局(JNTO)
8|
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シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の 2014 年第 4
四半期空室率は前期比 1.1%低下の 3.8%、近畿圏は前期比横ばいの 0.4%となった(図表-16)。
企業の物流機能の効率化や電子商取引の拡大などを背景に先進的物流施設に対する需要は旺盛で
空室率は低位で安定している8。ただし、2015 年の首都圏の新規供給は前年比 40%増加し過去最高
となり、2016 年も高水準の供給が予定されるため、2016 年中に空室率が 10%を超える状況も考
えられる。一五不動産情報サービスによると、2014 年 10 月の東京圏の募集賃料は前期比 0.3%上
昇の 4,000 円/坪で、概ね横ばいで推移している9。
図表-16 大型マルチテナント型物流施設の空室率
空室率
35%
首都圏
30%
近畿圏
25%
20%
15%
10%
5%
14.6
14.12
13.6
13.12
12.6
12.12
11.6
11.12
10.6
10.12
09.6
09.12
08.6
08.12
07.6
07.12
04.6
04.12
05.6
05.12
0%
(出所)CBRE
4. J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場
2014 年第4四半期の東証 REIT 指数(配当除き)は、10 月末の日銀による追加金融緩和を受けた長
期金利の低下や円安・株高の流れを好感し、9 月末比 13.6%上昇した。
セクター別では、オフィスが 10.9%、
住宅が 25.5%、商業・物流等が 12.2%となり、相対的に分配金利回りの高い住宅セクターが市場を牽引
した(図表-17)
。
12 月末時点における市場全体の分配金利回りは 3.0%
(対 10 年国債スプレッド 2.7%)、
NAV 倍率は 1.6 倍、市場時価総額は 10.5 兆円に拡大し 10 兆円の大台を突破した。
2014 年の市場動向を振り返ると、東証 REIT 指数は 25.3%上昇し、
2012 年の 33.6%、2013 年の 35.9%
に続いて3年連続で大幅高となった。とりわけ、日銀が 10 月 31 日に J-REIT の年間取得額を従来の 300
億円から 900 億円に増額する追加緩和を発表すると上昇に弾みがつき、配当込みベースの東証 REIT 指
数は、リーマン・ショック前に付けた史上最高値(2007 年 5 月)を7年半ぶりに更新した。
J-REIT による物件取得額は約 1.6 兆円となり、前年から大幅に減少(▲30%)したものの、2013 年、
2006 年に次ぐ金額を確保した。新たに取得した不動産の内訳は、オフィス(7,671 億円、占率 48%)や
住宅(2,923 億円、18%)が中心であったものの、ヘルスケア特化型 REIT の誕生や初の海外不動産投
資の実現など、新たな動きもみられた(図表-18)。また、上場銘柄数は6社増加の 49 社、市場全体の
運用不動産は 12.6 兆円となり、いずれも過去最高となった。デット資金の調達環境も良好で、投資法人
債の発行条件は、期間が平均 8.0 年、利率が平均 0.78%となり、金融コストの低下が分配金の増加に寄
8
9
CBRE によると、今年6月までに完成する施設はスペースの6割が内定している。(日本経済新聞 2015 年 1 月 23 日)
なお、J-REIT が所有する先進物流施設では、継続賃料が上昇している。GLP 投資法人(2014 年 8 月期)の増額改定(全体
の 80%)における上昇率はプラス 2.6%、日本プロロジスリート投資法人(2014 年 11 月期)の改定率はプラス 4.1%である。
9|
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与している。(図表-19)。
不動産投資市場は、引き続き私募 REIT や海外投資家を中心に活発な取引が行われている。日経不動
産マーケット情報の調査によると、2014 年の売買高は前年に続き4兆円を超えて、1,000 億円を超える
大型取引は 6 件を数え、一部の優良物件の取引利回りは 2%台に低下している。
図表-17 東証 REIT 指数(配当除き、2013 年 12 月末=100)
150
140
130
120
110
100
90
80
東証REIT指数
オフィス指数
住宅指数
14.12
14.11
14.9
14.10
14.8
14.7
14.6
14.5
14.4
14.3
14.2
14.1
13.12
13.11
13.9
13.10
13.8
13.7
13.6
13.5
13.4
13.3
13.2
13.1
12.12
70
商業・物流等指数
(出所)東京証券取引所
図表-18 J-REIT による物件取得額(用途別)
25,000
底地・ヘルスケア等
ホテル
物流施設
商業施設
住宅
オフィス
取得額(億円)
20,000
15,000
10,000
5,000
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(注)引渡しベース。ただし、新規上場以前の取得物件は上場日に取得したと想定。出資証券を除く
(出所)開示データをもとにニッセイ基礎研究所が作成
図表-19 2014 年のJ-REIT 市場(まとめ)
項目
2013年
2014年
昨年比
東証REIT指数(配当除き)
1,515pt
1,898pt
+25%
3年連続上昇
東証REIT指数(配当込み)
2,524pt
3,274pt
+30%
最高値(07/5)を更新
上場銘柄数
備考
43社
49社
+6社
過去最高
市場時価総額
7.6兆円
10.6兆円
+39%
過去最高
運用不動産額
11.2兆円
12.7兆円
+13%
過去最高
物件の新規取得額
2.3兆円
1.6兆円
▲30%
2013年、2006年に次ぐ水準
エクイティ調達額
1.1兆円
0.8兆円
▲30%
1,083億円
1,496億円
+38%
投資法人債発行額
発行条件(期間8.0年、利率0.78%)
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありませ
ん。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもあり
ません。
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