1章 オペレーティングシステム

1章 オペレーティングシステム
この章では代表的な OS である Windows について、各バージョンの比較、インストール方
法、各種の機能、ツール、コントロールパネルの使い方などを学習します。
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1-1 Windows の種類
Microsoft 社が開発した Windows は現在最も広く普及している OS で、マルチウィンドウ
表示とマルチタスク機能を搭載しています。
1-1-1 一般的な OS の機能
 マルチタスク
1 台のコンピューター上で、同時に複数の作業(タスク)を処理する OS の機能です。マル
チタスクでは複数のアプリケーションソフト(たとえばワープロソフトと通信ソフト)が
同時に動作します。これは、人間の行う操作、あるいは周辺装置の処理速度が CPU に比べ
て遅いため、個々の処理で CPU を独占しているかのように処理を進めることができるから
です。Windows は初期のバージョンからマルチタスク OS です。
 マルチプロセッサ(マルチコア)対応
CPU(コア)を複数個搭載した構成を、マルチプロセッサ(マルチコア)構成と呼びます。
マルチプロセッサ(マルチコア)としてマシンを構成するためには、ハードウェアと OS の
両方がマルチプロセッサ(マルチコア)構成をサポートする必要があります。
ハードウェアとは、チップセット、CPU、マザーボードなどがそれに該当します。
マルチプロセッサ(マルチコア)対応のアプリケーションでは処理速度が向上するととも
に、対応していないアプリケーションでも複数のアプリケーションを同時に利用する場合
などは、シングルプロセッサ(コア)に比べて処理速度の低下が少ないなどのメリットが
あります。
 32bitOS と 64bitOS
32bitCPU に対応した OS は、32bitOS、x86 版と呼ばれています。また、64bitCPU に対
応した OS は、64bitOS、x64 版などと呼ばれます。
64bit 版 Windows を利用する最大のメリットは、4GByte 以上の物理メモリーを、
(特別の
仕組みを使用しないで)利用できるという点にあります。一方、32bit 版では最大 4GByte
を超えることはできません。
また、64bit 対応のアプリケーションに関しても、広大なユーザーメモリー空間を使用する
ことが可能になります。
32bit アプリケーションでは、ユーザーのプロセス空間は最大でも 2GByte しかありません
が、
64bit 対応のアプリケーションではユーザー空間は 8TByte(32bit 版の場合の 4000 倍)
にまで拡大されています。
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1-1-2 Windows の歴史
1993 年に発表された Windows 3.1 までは MS-DOS の上で動作していましたが、1995 年の
Windows 95 からは独立した OS となりました。
Windows の初期のバージョンから、Windows Me までは、MS-DOS と同じファイルシステ
ムである FAT を使用していますが、
企業向け OS としてスタートした Windows NT は、
FAT
とまったく異なる新しいファイルシステム NTFS を採用しました。Windows の現行バージ
ョンも NTFS を使用しています。
現在(2013 年 10 月)は、Windows XP、Windows Vista、Windows 7、Windows 8 が現
行バージョンですが、
XP は 2014 年 4 月で製品サポートが終了することが決定しています。
図 1-1
Windows ロードマップ
Windows 2000 まで
図 1-2
Windows ロードマップ
Windows 2000 以降
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1-1-3 Windows のバージョンとエディション
 Windows XP
2001 年に発表されたバージョンで、2008 年に販売が終了され、2014 年 4 月に製品サポー
トが終了される予定です。
後継の Windows Vista の出荷初期に、動作が遅いという致命的な欠点があったため、Vista
の登場後も XP を使用するユーザーが多く、歴代 Windows の中で最も長く愛用されたバー
ジョンと言えるでしょう。
エディション
特徴
Windows XP
家庭向け製品で、基本的機能のみサポートされ、ビジネス向けのド
Home
メイン参加機能はありません。
Windows XP
企業向け製品で、マルチプロセッサ対応、ドメイン参加機能、リモ
Professional
ートデスクトップ機能、ダイナミックディスクなどの機能が使用で
きます。
Windows XP
省略して MCE と呼ばれます。Professional の機能に、テレビ、デ
Media Center
ジタルオーディオなどの AV が付加されました。
Windows XP
AMD による x86 アーキテクチャの 64bit 拡張に対応した Windows
x64 Professional
Server 2003 を基に開発されたクライアント向けのエディションで
す。OEM 版※と DSP 版※のみが提供されました。
図 1-3
Windows XP の主なエディション
※OEM 版:PC にプレインストールして出荷される形式で、OS 起動時に PC メーカーのロ
ゴが表示されるなど、若干のカスタマイズが行われています。
※DSP 版:パーツとセットで販売(バンドル)される形式で、内容は通常パッケージと代
わりません。
Windows XP Home / Professional
CPU
233 MHz(最少)
300 MHz 以上(推奨)
RAM
64 MB(最少)
128MB 以上(推奨)
必 要 デ ィ ス 1.5GB(最少)
ク容量
2GB 以上(推奨)
その他
VGA 以上のグラフィック
図 1-4
Windows XP のハードウェア要件
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第1章 チェック問題
Q1. 次の Windows のバージョンに関する記述のうち誤りはどれでしょう。
A. Windows の OEM 版は、PC にプレインストールして出荷される形式で、OS 起動時に
PC メーカーのロゴが表示されるなど、若干のカスタマイズが行われています。
B. Windows Vista の Windows Aero は、3D 化されたウィンドウを半透明表示するなどの
特徴を持ったインターフェースです。
C. Windows 7 では、すべてのエディションでドメインに参加できます。
D. Windows 7 Starter は、CPU やメモリーなどのハードウェア性能が低いコンピュータ
ーを想定して、Windows Aero が省かれています。
Q2. 次の Windows の機能に関する記述のうち、誤りはどれでしょう。
A. サイドバーは、画面の端片側に表示されるウィンドウで、ガジェットを配置して使用し
ます。Windows Vista で導入され Windows 7 にも継承されました。
B. ガジェットは、用途を限定した小さなアプリケーションで、Web サービスに接続して、
気象情報、最新ニュース、交通情報、インターネットラジオ、などを配信するものがあ
ります。
C. マザーボードの TMP を利用してディスクドライブ全体を暗号化する機能は、
BitLocker
です。
D. シャドウコピーは、Windows Vista から採用された、ユーザーファイルを自動的にバ
ックアップする仕組みです。また、Windows 2003 以降のサーバーOS で使用できる、
共有リソースに存在するファイルのコピー(スナップショット)を定期的に作成する機
能もシャドウコピーと呼ばれています。
Q3. 次の Windows の機能に関する記述のうち、誤りはどれでしょう。
A. レディブーストは、USB メモリーやメモリーカードなどのフラッシュメモリードライ
ブをメモリーキャッシュとして利用し、システムの速度を向上させる仕組みです。
B. Windows 7 の Windows ディフェンダーは、スパイウェア、アドウェア、コンピュータ
ーウイルスなどの好ましくないソフトウェアをネットワークの入り口でブロックする
仕組みです。
C. Windows Vista の Windows ファイアウォールは、外部から内部への通信と、内部から
外部への通信を制御します。
D. Windows のイベントログには、アプリケーションログ、セキュリティログ、システム
ログの 3 種類があり、さらに、Windows Vista 以降では、セットアップログと
ForwardedEvents ログが追加されました。
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Q4. 次の Windows のアップグレードに関する記述のうち、誤りはどれでしょう。
A. Windows 転送ツールは、他の PC で動作する Windows からファイル、ユーザーアカウ
ント、お気に入り、電子メールなどを転送するための仕組みです。
B. Windows 転送ツールを使用すると、Windows7 に、Windows XP、Windows Vista、
Windows 7 で動作する他の PC からファイルや設定を転送できます。
C. 既に Windows がインストールされている PC で、既存のアプリケーションの設定や、
ユーザー設定をそのまま引き継いで、新しい Windows のバージョンにアップグレード
することをインプレースアップグレードといいます。
D. 既存の PC に Windows 7 をインストールする場合、元の OS が Windows XP 以降であ
ればバージョンとエディションに関わらず、アップグレードインストールが可能です。
Q5. 次の Windows のインストールに関する記述のうち、誤りはどれでしょう。
A. インストール済みの OS、プログラム、データを完全に消去してからインストールした
り、インストールした場所とは別の記憶領域に、新たにインストールを行うことをク
リアインストールといいます。
B. Windows の応答ファイルを使用すると、言語や地域の設定など、セットアップに入力
する内容を自動的に処理できます。
C. WSIM(Windows System Image Manager)は、Windows をインストール済みのマス
ターコンピューターの設定を複製して、インストールイメージを作成するツールです。
D. 1 台のコンピューターに複数の OS をインストールして、ブート時に OS を選択できる
ようにすることをマルチブート構成といいます。
Q6. 次の Windows のディスク管理に関する記述のうち、誤りはどれでしょう。
A. ハードディスクを分割してドライブを割り当てる場合、分割された領域をパーティシ
ョンといいます。
B. OS をインストールして起動させるためのパーティションは、基本パーティションでな
ければなりません。
C. Windows 2000 以降の Windows で採用されているファイルシステムは NTFS で、ファ
イルやディレクトリ毎に、ユーザーやグループに対してアクセス権を設定できるのが
特徴です。
D. Microsoft 社が開発した、USB メモリーやメモリーカードなどのリムーバブルメディ
ア向けのファイルシステムを FAT といいます。
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第1章 チェック問題 解答・解説
A1.
正解 C
解説
Windows 7 でドメインに参加できるエディションは、Professional、Ultimate、Enterprise
です。Starter と Home Premium はドメインに参加できません。
A2.
正解 A
解説
サイドバーは、画面の端片側に表示されるウィンドウで、ガジェットを配置して使用しま
す。Windows Vista で導入されましたが、Windows 7 と Windows 8 では無くなりました。
A3.
正解 B
解説
Windows 7 の Windows ディフェンダーは、スパイウェア、アドウェア、などの好ましくな
いソフトウェアをネットワークの入り口でブロックする仕組みです。コンピューターウイ
ルスは対象ではありません。
A4.
正解 D
解説
Windows 7 は、Windows XP に対してアップグレードパスが設定されていません。また、
Windows Vista に対してもアップグレードパスが設定されているエディションと設定され
ていないエディションがあります。
A5.
正解 C
解説
WSIM(Windows System Image Manager)は、応答ファイルを自動的に作成するための
ツールです。
Windows をインストール済みのマスターコンピューターの設定を複製して、インストール
イメージを作成するツールは sysprep です。
A6.
正解 D
解説
Microsoft 社が開発した、USB メモリーやメモリーカードなどのリムーバブルメディア向
けのファイルシステムを exFAT といいます。
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