フィンランド北部電力 (証券コード:−)

14-I-0070
2015 年 1 月 21 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
フィンランド北部電力
(証券コード:−)
【変更】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
AA
ネガティブ
→
→
AA−
安定的
■格付事由
(1) フィンランド北部電力(PVO)は、フィンランド国内に 31 の水力・原子力・火力発電所(発電容量合計
約 3,200MW)を有し、22 の株主に原価で卸売電する卸電気事業者。当社の格付は、
「マンカラ」と呼ばれ
るフィンランド独自の発電事業の共同投資型ビジネスモデル、全国の電力消費量の 18%(13 年)を発電
する主要な電力源としての役割、1943 年以来の長期に亘り電力を安定的に供給してきた実績、並びに、
低い発電コストに支えられている。当社の株主は、受電の有無にかかわらず、出資比率に応じて、当社の
債務弁済費用を含む発電所の建設・運営にかかる固定費を支払うことが定款で定められている。PVO の
供給電力の 55%(13 年実績)は、当社が 59%を所有するフィンランド産業電力(TVO)の原子力発電所
2 基(出力合計 1,760MW、うち PVO の持ち分 1,000MW)から受電している。TVO は 05 年以来、新型の
欧州加圧水型炉(EPR)を採用した原子力発電所オルキルオト 3 号機(OL3、出力 1,600MW)を建設して
おり、PVO もその 60%(960MW 相当)を出資している。OL3 の運転開始見込みは、当初の 09 年から延
期が相次いだが、建設は進んでおり、TVO は 14 年 9 月に「コントラクターによると 18 年後半」と公表
した。OL3 の建設費用は工期延長により大幅に増加しており、現在当社は追加費用負担をめぐりコント
ラクターとの間で係争中となっている。現在の訴額を考慮すると、仮に仲裁に勝訴したとしても、同機の
稼働後には TVO から相当量受電する PVO の平均発電コストも大きく引き上がることは避けられない。北
欧の電力価格の見通しが弱含む中、相対的な価格優位性の低下が視野に入ってきたことを受け、JCR は今
般、当社の格付を 1 ノッチ引き下げた。格付の見通しは「安定的」である。相対的に価格優位性が低下す
るとはいえ、現在の先物価格を前提とすると、TVO が係争中の仲裁に完全敗訴しない限り、PVO の発電
費用が市場価格を長期に亘り継続的に大きく上回る可能性は低いと見られる。また、主要株主による取締
役の派遣に見られるように、株主による当社へのコミットメントは依然として強固である。JCR は引き続
き、OL3 の建設状況・係争結果を踏まえた当社の発電コストの見通しや、電力市場価格の動向を注視し、
必要に応じ格付に反映させていく。
(2) PVO は、フィンランドの事業法人や地方自治体などが、1943 年に共同で設立した民間の発電事業者。総
資産は 26 億ユーロ(13/12 期末時点)
、売上高は 7.2 億ユーロ(13/12 期)に上る。株主は現在、22
法人・自治体に亘っており、業態別に見ると、紙パルプ等の製造業(68%)、エネルギー業(22%)、地方
自治体(4.0%)が占めている。また、上位 4 社(UPM-Kymmene Oyj(43%所有)、 Stora Enso Oyj
(15%)
、Kymppivoima Oy(9%)
、EPV Energia Oy(7%)
)が、全体の 74%を占めている。当社の取
締役は全て、主要株主の代表で占められている。PVO グループの年間発電量は 15TWh(13 年実
績)と、フィンランドの電力消費量の 18%に上る。当社は現在、子会社も含めて、フィンランド国
内 20 ヶ所に 31 の水力・原子力・火力発電所を有している。当社の発電容量は合計 3,197MW(13 年末)
に達しており、内訳は原子力 31%、水力 14%、火力 55%となっている。ただし、13 年の発電実績は、原
子力 55%、水力 10%、火力 35%と、当社が 59%を所有する TVO の操業する原子力への依存度が高い。
TVO は、現在、同国オルキルオト地区にて、EPR 型の原子力発電所一基(オルキルオト原子力発電所
第 3 号機、出力 1,600MW(PVO の持ち分 960MW))を建設中のほか、将来さらに一基増設する準備
も進めている。3 号機の稼働後には、PVO の発電源に占める原子力の比重がより一層高まる。
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(3) PVO は、「マンカラ」と呼ばれるフィンランド独自の発電事業の共同投資型ビジネスモデルに基づき事業
を行っている。具体的には、株主は、出資比率に応じ、発電電力を原価で受電する権利を有する一方、月
次にて、受電の有無にかかわらず固定費(操業・維持・管理費、発電量に関わらない租税負担、保険料、
債務費、減価償却費等)を、並びに、受電した場合には変動費(燃料費や発電量に伴う租税負担等)を、
決められた期日(通常は翌月)までに、支払うことが定款で規定されている。仮に、支払いが期日までに
行われない場合には、当社は当該株主に対する電力供給を直ちに差し止め、同電力を市場価格で他の株主
にまたは市場で販売することが認められている。当社の発電電力の平均売電価格は 30 ユーロ/MWh 前後
であり、北欧の統合電力市場ノルドプールにおけるベース価格(38 ユーロ/MWh(13 年平均)
、30 ユーロ
/MWh(14 年平均)
)及びフィンランド地域での市場価格(41 ユーロ/MWh(13 年平均)
、36 ユーロ/MWh
(14 年平均)
)に比し、競争力を有する。
(4) PVO の発電事業は、建設期間中は発電設備にかかる建設費を元加し、運転開始後には株主に対し発電電
力を原価で供給し資金を回収する「マンカラ」モデルで事業を行っており、PVO の発電事業にかかる毎
期の純利益は毎期ゼロとすることが税務当局により認められている。資本集約型産業である発電事業者と
して PVO グループの流動性・借換リスクは小さくないが、当社はグループとして、長期債務の今後 12 ヵ
月以内の返済額を継続的に全体の 25%以下に抑えると共に、親会社単体でもリボルビング ・クレジッ
ト・ファシリティを 3 億ユーロ未引出しで確保しており、これは年間の債務償還額を大きく上回る
水準となっている。
(担当)仲川 聡・佐伯 春奈
■格付対象
発行体:フィンランド北部電力(Pohjolan Voima Oy)
【変更】
対象
外貨建長期発行体格付
格付
見通し
AA-
安定的
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格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 1 月 19 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:仲川 聡
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「コーポレート等の信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)、
「電力」
(2011 年 7 月 13 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
フィンランド北部電力(Pohjolan Voima Oy)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp