引張負荷時の織物 CFRP の電気抵抗変化

引張負荷時の織物 CFRP の電気抵抗変化
Electrical Resistance Change of Woven-fabric CFRP Under Tensile Loading
〇西尾 勇佑
轟 章
YUSUKE NISHIO
AKIRA TODOROKI
水谷 義弘
鈴木 良郎
YOSHIHIRO MIZUTANI
YOSHIRO SUZUKI
東京工業大学 機械物理工学専攻
Dept. of Mechanical Sciences and Engineering, Tokyo Institute of Technology
概
要
本研究は織物CFRPを有する構造に対してCFRP の電気特性を利用したヘルスモニタリングを適用す
ることを目的とする.損傷を発生しない低い荷重レベルの準静的負荷に伴う織物 CFRP の電気抵抗変
化に対する繊維配向角および積層数の影響について実験的に調査した.±45 度方向に 6 プライ積層され
た積層板において±45 度層のせん断塑性変形に伴う顕著な電気抵抗減少が発生することを示し,電気抵
抗変化メカニズムについて議論した.
KEYWORDS : Structural Health Monitoring, Woven-fabric CFRP, Electrical Resistance Change.
1.緒 言
軽量かつ高剛性・高強度を有する織物 CFRP 材は,形状自由度が高く複雑形状表面に対する適応性が高い
という利点がある.そのため,実機の CFRP 積層構造では構造表面の保護や表面層のはく離を防ぐために最
外層に配されることが多い.また,サンドイッチ構造のスキン材(一方向 CFRP)‐コア材(GFRP)間に
挿入することで層間せん断強度の向上を図る例もある(図1参照)
.
構造ヘルスモニタリング技術は稼働中構造物の健全性をリアルタイムで評価することで,検査の省力化や
経年劣化に対する余寿命予測を効率化する手法として近年注目を集めている.CFRP 構造物に対してのモニ
タリング技術として,これまでに炭素繊維の導電性を利用した自己センシング技術が提案されており,同時
にその知見として,さまざまな CFRP 積層構造および損傷形態に関する電気抵抗変化メカニズムが調査され
ている[1-7].構造表面に配された織物 CFRP と一方向 CFRP からなるサンドイッチ構造梁状の試験片に対し
ては,一方向 CFRP のみからなる梁状試験片と同程度の精度ではく離き裂を同定できることが実験的,解析
的に示されている[8].一方,図1のような±45 度方向の織物 CFRP が構造内部に挿入された積層構造では,
層間はく離等の損傷を引き起こさない低負荷の疲労試験のサイクル初期において,層間の織物 CFRP の電気
抵抗減少が実験的に観測される.既往の研究において,±45 度層を有する8層 CFRP 擬似等方積層板
[0/±45/90]S とアングルプライ
積層板[±45]2S の繰返し負荷試
験で,引張負荷を受けた±45
CFRP fabric
GFRP core
Unidirectional CFRP
度層が面内せん断により塑性
変形し,寸法縮小に伴って板
厚方向導電率が見かけ上増加
するために電気抵抗減少を引
Unidirectional
CFRP
CFRP fabric
(Interface)
GFRP core
CFRP
fabric
CFRP fabric
(Surface)
Fig. 1 Sandwich structure reinforced by interlaminar woven-fabric CFRP
き起こすことが報告されている[7].電気的に面内方向に等方性である織物 CFRP のうち,±45 度方向に積層
された積層板についても擬似等方積層板やアングルプライ積層板と同様の結果を示すと推測される.しかし
ながら,これまでに一方向 CFRP の電気特性については広く研究されているのに対し,経糸と横糸で構成さ
れ,複雑な変形挙動をとる織物 CFRP 単体の電気特性が研究された例はなく,詳細は不明である.そこで本
研究では,表面や構造内部に織物 CFRP 材が配された CFRP 積層構造に対して電気抵抗変化によるモニタリ
ングを適用することを目的として,損傷を生じない低い荷重レベルの繰返し負荷を受ける織物 CFRP 材の電
気抵抗変化挙動について調査した.
2.試験片
使用した CFRP は東邦テナックス製 3K 平織りプリプレグである.表1に示す繊維配向角と積層数を変え
た4種類の積層板を作製した.以降,繊維が試験片に対して 0 度方向(長手方向)
,90 度方向(幅方向)に
なるように6プライ積層したものを[(0, 90)]6,±45 度方向に1プライ積層したものを[(±45)]と表記する.
250×200 mm の平板を 85°C で2時間のプリキュア,135°C で3時間の加熱硬化を 0.7MPa の加圧力の下で成
形した.成形後,平板から図2に示す 230×25 mm の短冊形試験片を作製した.試験片表面には幅 5mm の電
極を銅めっきにより4箇所配置した[9].表1に試験実施前の電気抵抗値を試験片寸法で規格化した導電率を
示す.[(0, 90)]積層板と[(±45)]積層板でおおよそ等しく,電気的に面内方向に等方性であることが示された.
3.試験方法
試験条件を表2に示す.最大荷重を引張破断応力の約 30%とし,30 サイクルの負荷‐完全除荷試験を実
施した.引張破断応力は予め同一形状の試験片にて引張破断試験より算出した.負荷除荷試験はオートグラ
フ(AG-1kN,Shimadzu)により,表2に示す荷重速度で単軸引張をし,試験片表面中央部に配置した3軸
ひずみゲージにより3方向のひずみをデータロガー(PCD-400A,Kyowa)により測定した.電気抵抗は4
電極法を用いて,LCR メータ(ハイテスタ 3532-50,Hioki)にて交流電流 450 Hz,30 mA を負荷してイン
ピーダンスを測定した.450Hz では位相角は 0°であるため,インピーダンスは電気抵抗とみなした.最大荷
重時に 3 秒,無負荷時に 30 秒試験を止めるようにプログラムし,電気抵抗値および残留ひずみの測定を実
施した.試験中は各電極間に K 熱電対(NR-250, Keyence)を設置し,試験片の温度変化を測定した.
4.試験結果および考察
図3に各試験片についてサイクル数に対する無負荷時の電気抵抗変化 ΔR/R0,図4に電気抵抗変化率と残
50
0°
Table 2 Test conditions of the cyclic loading test
Maximum St. Dev., Tensile rate,
Laminates
stress, MPa
MPa
mm/min
[(0, 90)]6
834
4.46
0.6
[(±45)]6
170
4.23
0.3
[(0, 90)]
233
30.3
0.2
[(±45)]
96
4.70
0.2
15
100
230
Thermocouple
Woven-fabric
CFRP
25
Table 1 Configuration of the tensile specimens and
measured initial electrical conductivity (Unit: S/m)
Laminates
Thickness
Ave.
St. Dev.
[(0,90)]6
1.16
1.55×104
196
[(±45)]6
1.16
1.46×104
107
[(0, 90)]
0.24
1.35×104
607
[(±45)]
0.26
1.39×104
752
5 5 20 5 Strain gauge Copper electrode
GFRP Tab
Unit:mm
Fig. 2 Schematic of the tensile specimen and the cyclic
loading specimen.
留縦ひずみの関係を示す.◆印は[(±45)]6 積層板,▲印は[(0, 90)]6 積層板,◇印は[(±45)]積層板,△印は[(0, 90)]
積層板の結果である.図4(b)中の[(0, 90)]6 積層板および[(0, 90)]積層板において取得した長手方向ひずみ
は試験セットアップの手違いがあったため,それぞれ3サイクル目の残留ひずみを基準としている.電気抵
抗変化は試験直前 60 秒間の電気抵抗値の平均値を基準抵抗 R0 とした.いずれの試験片においても試験後の
試験片側面の観察結果では損傷は認められなかった.したがって,これらの電気抵抗変化は目視可能な損傷
に起因するものではない.また,K 熱電対により測定した試験中の試験片温度変化 ΔT は最大 0.5°C 程度で
あった.8層の擬似等方積層板では温度変化に対する電気抵抗変化率は線形であり,式(1)の関係が得ら
れている[7].
R R0  6.0  10 4 T
(1)
本実験では織物 CFRP を使用したため厳密には異なるが,ΔT= 0.5°C の場合について概算すると電気抵抗
変化率は測定器の測定確度に対して十分に小さいと予想されることから結果の温度補償は行っていない.
4・1 [(±45)]6 積層板における電気抵抗減少
はじめに,[(±45)]6 積層板でのみサイクル数の増大に伴い,他の試験片とは異なる大きな電気抵抗減少が
見られた.これは擬似等方積層板[0/±45/90]S およびアングルプライ積層板 [±45]2S で見られる電気抵抗減少
[7]と非常に類似している.文献[7]と同様にこの電気抵抗変化メカニズムについて考察する.図4に[(±45)]6
積層板の電気抵抗変化率と残留縦ひずみの関係を示す.一般的に正の残留ひずみが累積する場合は電極間距
離が増大するため,電気抵抗は増加する.ここで,まず,ピエゾ抵抗変化による説明を考える.一方向 CFRP
の2軸負荷時のピエゾ抵抗変化[8]から電気抵抗変化と面内ひずみに関して次式が得られている.添字 L お
よび T は一方向 CFRP の繊維方向および直交方向を表す.
R R L 
 L 
 2.49 0.43

  K  , K  

 0.42 2.38
 T 
R R T 
(2)
同様に織物 CFRP についての K マトリクスを導出する.織物 CFRP の場合,0 度,±45 度,90 度方向の負荷
に対して,それぞれ直交する軸に関して力学的および電気的等方性であり(3)式のように簡略化できる.
K
1  k11  k12 2  k11  k12 


1   2  k12  k11  k12  k11 2 
(3)
となる.ここで面内方向のポアソン比 ν,試験片長手方向に引張負荷を加えた場合の長手方向の電気抵抗変
0.2
◆ [(±45)]6
(R 0 = 63.6 mΩ)
ΔR/R0, %
0
-0.2
▲ [(0, 90)] 6
(R
0 = 65.2 mΩ)
0-90_1
-0.4
◇ [(±45)]
(R 0 = 372 mΩ)
45_1
-0.6
△ [(0, 90)]
(R 0 = 357 mΩ)
-0.8
0
5
10
15
20
25
30
Number of cycles
Fig. 3 Electrical resistance change ΔR/R0 with regard to the number of cycles.
0.2
0.1
[(0, 90)]6
ΔR/R0, %
ΔR/R0, %
0
-0.2
-0.4
[(±45)]6
y = -0.0035x + 0.4387
R² = 0.9799
-0.6
100
200
300
0
-0.05
y = 0.0004x + 0.0289
R² = 0.7778
-0.1
-150
-0.8
0
[(±45)]
0.05
400
-100
-50
[(0, 90)]
0
50
Logitudinal strain, μ
Logitudinal strain, μ
(a)[(±45)]6 laminate
(b)[(0, 90)]6, [(0, 90)] and [(±45)] laminates
Fig. 4 Electrical resistance change with regard to the measured residual strain of the longitudinal direction.
化に対するゲージ率 k11,試験片長手方向に引張負荷を加えた場合の幅方向の電気抵抗変化に対するゲージ
率 k12 である.[(±45)]6 積層板では上述の力学的および電気的な等方性より,K マトリクスは対称行列となる
はずである.そのためには k11= k12 となる必要があり,最終的に K マトリクスは(4)式として得られる.
k
K   11
0
0
k11 
(4)
(4)式は,負荷方向の電気抵抗変化に負荷とは直交する方向のひずみは影響しないことを意味している.
しかしながら,実際には繊維が配向される方向と負荷方向が完全に一致することはなく,また繊維のうねり
によって対角項の影響が存在する.仮に本実験において [(±45)]6 積層板の電気抵抗変化減少が(4)式にし
たがうとする.試験片長手方向の残留ひずみ 200μ に対して,45 度傾いた繊維方向ひずみ εL はひずみゲージ
により実測した値の半値より約-30μ であった.また,[(0, 90)]6 積層板の結果から k11 は約 1.0 と実測され,
(ΔR/R)L= -30μ と得られる.実際の電気抵抗変化は(ΔR/R)L= 約-2000μ 程度であるため,この電気抵抗減少は
アングルプライ積層板と同様に面内のピエゾ抵抗変化では説明できない.
アングルプライ積層板では試験片端部で下層に電流が板厚方向に流れることが解析的に示されている.そ
のため,板厚方向の導電率変化が電気抵抗変化において支配的となり,板厚方向の寸法縮小による見かけの
導電率変化が電気抵抗減少の要因であるとされている[7].解析的な検証はしていないが[(±45)]6 積層板にお
いても電流はまず電極に接触した繊維内を流れ,端部で下層へ流れると考えられる.また,プライ同士の接
触状態はアングルプライ積層板とは異なるものの,板厚方向の寸法縮小に伴い,プライ同士の接触状態が良
好になり板厚方向導電率が上昇すると思われる.一般的に層間樹脂層の存在により,織物 CFRP 積層板の板
厚方向導電率は一方向 CFRP 積層板のそれよりも小さいが,織物材では層同士の接触だけではなく,層内で
経糸繊維と横糸繊維の接触状態が良好になると考えられる.このため見かけ上の導電率が増加し,電気抵抗
が減少したと考えられる.
4・2 繊維配向角および積層数の影響
まず,[(0, 90)]6 積層板および[(0, 90)]積層板の結果について考察する.図4(b)より [(0, 90)]6 積層板お
よび[(0, 90)]積層板では,3サイクル目以降で累積する長手方向の残留ひずみの変化に伴う顕著な電気抵抗
変化は生じていない.これらの積層板と[(±45)]6 積層板との違いは繊維配向角である.一般にアングルプラ
イ積層板のような繊維配向角が大きい積層板では,単純引張時の応力‐ひずみ曲線で非線形挙動を示す.ま
た,繊維配向角が 20 度以上の場合,除荷した場合でも残留ひずみが残ることが指摘されている[10].図5に
各試験片の1サイクル目および2サイクル目の長手方向ひずみに対する電気抵抗変化を示す.それぞれ6プ
ライの積層板の結果において全体的にばらつきが大きいのは繊維のミスアライメントの影響であり[2],織物
CFRP の場合は繊維のうねりの影響も含まれる.
図5において [(±45)]6 積層板と[(±45)]積層板において負荷時と除荷時で大きく電気抵抗変化の経路が異な
る.これは±45 度層のせん断塑性変形による非線形変形の影響である.また,[(±45)]6 積層板(図5(a)
)
において1サイクル目,2サイクル目共に長手方向ひずみが約 3000μ までの範囲で ΔR/R0 が負を示している
(図中の楕円で囲まれた領域)
.[(0, 90)]6 積層板の1サイクル目の初期(約 800μ まで)においても ΔR/R0<0
を示している点が存在するが,ひずみの増大に伴って最終的に ΔR/R0>0 を示している.また,前後のデータ
を比較するとミスアライメントによるばらつきが原因である可能性が高い.[(0, 90)]積層板における電気抵
抗変化のループについても引張方向と繊維方向が完全に一致していないことに起因していると考えられる.
次に±45 度層を有する[(±45)]積層板について考察する.図3および図4より,[(±45)]積層板では圧縮ひず
みが累積し,それに伴いわずかに電気抵抗減少が見られる.また,図6より幅方向にも圧縮ひずみが生じて
いる.この原因については今のところ不明であるが,この電気抵抗減少が電極間距離の縮小によるものとし
て考える.一般に電気抵抗 R と織物 CFRP の面内方向導電率 σ,電極間距離 L,断面積 A には式(5)およ
び式(6)の関係がある.
R  L  A
(5)
R R      L L  A A
(6)
ここで,微小変形であるため導電率変化および板厚方向の寸法縮小は無視できるものとし,ΔL/L および
ΔA/A をそれぞれ長手方向,幅方向残留ひずみ ε1,ε2 とする.図6より ΔL/L= ε1= -120μ および ΔA/A=ε2= -55μ
とすると ΔR/R= -175μ となり,この値は図4の約-200μ とよく一致しているが,ε1= -50μ のサイクル中盤では
この原理では説明できない.したがって長手方向および幅方向に圧縮ひずみが残留することが±45 度層の非
線形性に起因する可能性を含め,別の要因についても引き続き調査をする.
一方で,仮に[(±45)]6 積層板と同様に正の残留ひずみが生じる場合において,わずかな電気抵抗減少が存
在する可能性があることを示す.[(±45)]積層板が[(±45)]6 積層板と異なる点は積層数のみである.ここで,
[(±45)]6 積層板と[(±45)]積層板の板厚方向導電率について考える.一般に織物 CFRP を複数プライ積層した積
層板の板厚方向導電率は層間の接触抵抗を含んだ不均一導電率を均一とみなして扱われている.また,一方
向 CFRP の繊維方向導電率は,板厚方向導電率に対して 103~105 程度大きいことが報告されており[5],これ
0.5
1st cycle
0.1
0.05
0
0.3
0.2
0.1
0
0.15
0.1
1000
2000
3000
4000
5000
0
Longitudinal strain, μ
ΔR/R0, %
0.05
0
-0.05
ΔR/R0 < 0
-0.15
0
1000
2000
3000
4000
Longitudinal strain, μ
3000
4000
0
5000
5000
0.4
0.35
0.3
0.25
500
1000
1500
2000
2500
0
0.2
0.1
0.05
0
-0.05
0.15
0.1
3000
4000
Longitudinal strain, μ
5000
0.2
0.15
0.1
0.05
0
2000
1500
2nd cycle
0.25
0.05
1000
1000
0.3
2nd cycle
0.2
0.15
500
Longitudinal strain, μ
0.25
2nd cycle
0
0.1
0.05
Longitudinal strain, μ
ΔR/R0, %
2nd cycle
-0.1
2000
Longitudinal strain, μ
0.15
0.1
1000
0.15
-0.05
ΔR/R0, %
0
0
-0.2
0.2
0
-0.1
ΔR/R0 < 0
-0.1
1st cycle
0.25
0.05
-0.05
ΔR/R0, %
0.3
1st cycle
0.2
ΔR/R0, %
ΔR/R0, %
ΔR/R0, %
0.25
1st cycle
0.4
ΔR/R0, %
0.2
0.15
0
0
500
1000
1500
2000
Longitudinal strain, μ
2500
0
500
1000
1500
Longitudinal strain, μ
(a)[(±45)]6
(b)[(0, 90)]6
(c)[(±45)]
(d)[(0, 90)]
Fig. 5 Electrical resistance change behavior during 1st and 2nd cycle with regard to the applied longitudinal strain.
Lateral strain, μ
0
-10
-20
-30
-40
y = 0.1902x - 38.756
R² = 0.5768
[(±45)]
-50
-60
-70
-150
-100
-50
0
50
Logitudinal strain, μ
Fig. 6 Residual longitudinal strain and
lateral strain of [(±45)] laminate.
Fig. 7 Schematic of woven-fabric CFRP under tensile loading and
effect to the electrical conductivity of the through-thickness direction.
は複数プライの織物 CFRP にも当てはまる.一方,1プライの板厚方向導電率を実測することは困難である
が,図7のように面外方向にうねった繊維により,板厚方向導電率は面内方向導電率とおおよそ等しいと考
えることができる.これら2種類の積層板が引張負荷を受けた場合,繊維のうねりが伸ばされるために経糸
と横糸の間隔が密になる.また,[(±45)]6 積層板では板厚方向の寸法縮小によりプライ同士の間隔が密にな
り,両者の板厚方向導電率に変化が生じると考えられる.このとき繊維同士およびプライ同士の接触数増加
は[(±45)]6 積層板の板厚方向導電率に対しては大きく寄与するが,
[(±45)]積層板に対して与える影響は本来の
板厚方向導電率が大きいために,相対的に小さいと考えられる.したがって, [(±45)]積層板では±45 度層の
せん断塑性変形に伴う電気抵抗減少が生じるが[(±45)]6 積層板ほど顕著に現れないと考えられる.
5.結 言
繊維配向角および積層数の異なる4種類の平織り CFRP 積層板に対し,損傷を引き起こさない程度の低い
荷重レベルの繰返し引張負荷に伴う電気抵抗変化挙動を実験的に調査した.得られた知見を以下に示す.
(1)[(±45)]6 積層板で残留ひずみに対して顕著な電気抵抗減少が存在することを示した.これはアングル
プライ積層板と同様の±45 層のせん断塑性変形に伴う板厚方向導電率の増加によるものである.これ
は[(0, 90)]6 積層板および[(0, 90)]積層板では見られない.
(2)[(±45)]積層板で長手方向と幅方向に残留する圧縮ひずみが生じ,わずかに電気抵抗減少が見られた.
両者の関係については不明であり,引き続き原因の究明をする.一方で,[(±45)]6 積層板と同様に正
の残留ひずみが生じる場合において,面内の引張負荷が板厚方向の導電率変化に与える影響度がプラ
イ数により異なるが,[(±45)]積層板でも電気抵抗減少がわずかに生じる可能性があることを示した.
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
参考文献
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