2月例会資料 - ISACA東京支部

ISACA東京支部2月例会
日本航空経営に対する ITの貢献
2015年2月24日
日本航空㈱ 常勤監査役
JSUG常任理事
鈴鹿 靖史
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目次
1.
JALグループの現況
2.
JALグループ再生への歩み
3.
JALグループの経営改革
4.
整備管理統合システム
5.
新たな ITシステムの貢献
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JALグループの現況
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設立 : 1951年8月1日
(日本航空株式会社法制定)
2010年1月
会社更生手続き申し立て
2010年11月
更生計画認可決定
2011年3月
会社更生手続きの終結
2012年9月
東京証券取引所第1部 再上場
従業員数: 9,945人 (2014年3月31日現在)
連結従業員数: 31,472人 (2014年3月31日現在)
事業内容:
定期航空運送事業及び不定期航空運送事業
航空機使用事業
その他附帯する又は関連する一切の事業
2014年3月期連結業績:
連結売上高 13,093億円
営業利益
1,667億円 (営業利益率 12.7%)
JALグループ使用航空機数:
(2014年3月31日現在)
ボーイング787
ボーイング777
ボーイング767
ボーイング 737
エンブラエル 170
ボンバルディアCRJ200
ボンバルディアDHC8
サーブ340B
3
15機
46機
47機
63機
15機
9機
16機
11機
合計 222機
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JALグループの現況
路線数 (2014年4月1日現在)
国際線
51
364
JALグループ路線数
JALグループ路線数(コードシェア含)
4
国内線
113
128
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JALグループの現況
破綻前
JALグループの変遷
破綻後
2006年度 2007年度 2008年度 2011年度 2012年度 2013年度
営業収益
23,019億
22,304億
19,511億
12,048億
12,388億
13,093億
営業利益
229億
900億
△508億
2,049億
1,952億
1,667億
営業利益率
1.0%
4.0%
△2.6%
17.0%
15.8%
12.7%
4,398万
1,347万
4,190万
1,337万
4,115万
1,170万
2,897万
684万
3,002万
752万
3,122万
772万
64.0%
71.1%
63.4%
71.8%
63.7%
65.6%
62.7%
70.4%
63.1%
76.1%
64.0%
76.5%
有償旅客数 国内線
国際線
有償座席利用率 国内線
国際線
連結対象グループ会社
連結従業員数(各年度末)
120社
51,497人
49,200人
5
47,526人
60社
30,875人
30,882人
31,472人
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JALグループ再生への歩み
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JALグループ再生への歩み
2010年1月
会社更生法に基づく更生手続き開始の申し立て。企業再生支援機構が
支援決定。裁判所が更生手続き開始決定。
2010年2月
会長に稲盛和夫、社長に大西賢が就任。
2010年11月
日本航空の更生計画について、東京地方裁判所が認可。
2010年12月
株式・債権等の権利変更を実施
①日本航空の資本金2,510億円は100%減資。
②企業再生支援機構が日本航空に対し、3,500億円を出資。
③金融機関は、総額5,215億円の債権放棄を実施。
2011年3月
東京地方裁判所が日本航空の更生手続き終結を決定。
2012年2月
名誉会長に稲盛和夫、会長に大西賢、社長に植木義晴が就任。
2012年9月
日本航空が東京証券取引所第一部へ上場。(売出価格1株 3,790円)
企業再生支援機構が保有する全株式を売却し、機構による支援完了。
(株式の売却総額は、6,633億円 → 返納)
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JALグループ再生への歩み
更生計画のスキーム
<再生のための措置>
・企業再生支援機構による出資 3,500億円
・債権放棄の実施 5,215億円
・既存株式の100%減資
<再生のための取り組み>
・事業規模の縮小
国際線4割減、国内線3割減、機材数を3割削減、運航機種数の削減、貨物専用機の
運航休止
・人員削減 (約48,000人→32,000人)
・人件費削減 (約2割)
・企業年金削減 (現役約5割、OB約3割の削減)
・子会社の売却等 (120社→60社)
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JALグループの経営改革
JALグループ中期経営目標 (2012年度~2016年度)
~この中期目標を達成しなければ、JALグループの真の再生はない~
1.安全運航はJALグループの存立基盤であり、社会的責務であることを認識し、
輸送分野における安全のリーディングカンパニーとして、安全運航を堅持する。
2.お客さまが常に新鮮な感動を得られるような最高のサービスをご提供し、2016
年度までに「顧客満足No.1」を達成する。
3.景気変動やイベントリスクを吸収しうる収益力、財務基盤として、「5年連続
営業利益率10%以上、2016年度末自己資本率50%以上」を達成する。
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JALグループの経営改革
日本航空再生の2本の柱
JALフィロソフィ(稲盛哲学)
部門別採算制度(アメーバ経営)の導入
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JALグループの経営改革
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JALフィロソフィ
一人ひとりの意識を変えていくことが必要と考え、JALのサービスや商品に携わる全員が
持つべき意識・価値観・考え方として、「JALフィロソフィ」を策定。
第1部 すばらしい人生を送るために
第1章 成功方程式(人生・仕事の方程式)
第2章 正しい考え方をもつ
第3章 熱意をもって地味な努力を続ける
第4章 能力は必ず進歩する
第2部 すばらしいJALとなるために
第1章 一人ひとりがJAL
第2章 採算意識を高める
第3章 心をひとつにする
第4章 燃える集団になる
第5章 常に創造する
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JALグループの経営改革
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稲盛和夫
「会社の経営とは、操縦席で、航空機の操縦をするようなものである。
様々なコックピットの計器から、正しいデータがタイムリーに読み取れ
なければ、正しい経営判断は出来ない。」
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部門別採算制度(アメーバ経営)の導入
社内の他部署に提供される全てのサービスを取引対象として、部署間で売買された
と見なす管理会計の仕組み。
部門毎に毎月採算表を作り、各部門自らが
主体的に採算を良くするための工夫を行う。
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JALグループの経営改革
部門別採算制度(アメーバ経営)とは
本部、部、課という小さな部門(アメーバ)ごとに採算表を作り、それぞれの部門が
売上を最大に、経費を最小にして、利益を得る為に自主的に知恵を絞るという考え方
毎月下旬に、前月の実績、今月の予定、翌月の見通し、その他の課題について、
部門を超えて議論
経営数字の見える化、高まるスピード感
すべての部門の経営参画意識が格段に高まる
その為には、細かな数字を高速で取りまとめることが必要
(新たなITシステムの導入)
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日本航空のITシステム
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整備管理統合システム
部門別採算制度導入における整備部門の収支の考え方
(例)
・路線統括本部から、各フライト(機種、飛行時間)に応じ、協力対価が支払われる
・整備が整備期間を短縮して、飛行時間を増やせば、協力対価が増える
⇒ 整備部門の収入が増加
・機材故障が増えて整備費用が増えれば、整備部門の支出が増加
・整備に関わる費用を減らせば、整備部門の支出が減少
・整備受託収入が増えれば、整備部門の収入が増加
毎月、収入と収支の詳細を即座に把握することが必要
⇒ 導入していたERP(整備管理統合システム)が効果を発揮
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整備管理統合システム
JAL新整備業務管理システム
“JAL Mighty”
(JAL Maintenance Innovation by Globally Harmonized TechnologY)
現行システム(約100)
JAL Mighty導入後
約40のシステム
教育・資格管理分野
PDS,LMS等
生産管理システム
AMCS,ECCS,EDR,
SO-NET2,MAJIC等
品質管理システム
MINS等
補給管理システム
MICS,PROMIS等
技術管理システム
要目管理システム等
その他
CWCS等
その他
2007年5月
Wave 1
JAL Mighty
2008年11月
Wave 2
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その他
整備管理統合システム
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整備管理統合システム
JAL Mighty導入効果
・統合システムとなった為、人間インターフェースが無くなり、整備要目や整備士の
資格管理等におけるヒューマンエラーが減少 ⇒ 安全性の向上
・データの一元管理により、部品在庫状況が見える化された為、余分な発注が
抑えられ、部品在庫が削減 ⇒ 整備コスト削減、営業利益率向上
・整備部門のコストのリアルタイムでの見える化により、整備コストの把握が容易
となり、コスト削減が実現 ⇒ 整備コスト削減、営業利益率向上
・JALグループ会社の中で、最も早く部門別採算制度(アメーバ経営)を導入
整備部門の中の、小さな部門(アメーバ)毎にJAL Mightyのデータをもとに
採算表を作成
⇒ 各部門が、採算を良くするための創意工夫を自ら実行
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日経新聞
(2014年5月6日)
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新たな ITシステムの貢献
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日本航空Webサイト: 国内線航空券の年間販売額約5,000億円のうち、50%を超える売り上げ
→24時間、365日、顧客との接点となる重要な旗艦店舗
毎月約2億ページビュー (年間約50億ページビュー)
→サイトの閲覧、検索、購買など日々大量のデータが蓄積
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Web販売部1to1マーケティンググループ(8名)の試み
個別の顧客を分析する為、Webサイトのアクセスログデータの収集・分析の仕組みを構築
訪問者の行動データを回帰分析
「女子旅@海外」ケース
過去に「女子旅@海外」を購入した1万人程度の顧客の行動を分析
約130の要素から、23の特有の要素(行動傾向)を特定
(例)「女子旅@海外」の購入者は、ほとんどスマホからアクセスして
いる。
→「女性は、カフェなどに集まって、みんなでスマホを見ながら旅行の
相談をするのでは」
同様の行動傾向があるものの、これまで海外ツアー商品を購入した
ことがない訪問者に対して、自社サイト内のバナーで「女子旅@
海外」を薦めたところ、通常に比べて10倍というコンバージョン
(購買)率を達成
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新たな ITシステムの貢献
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今年度のビッグデータを活用した取り組みの1例
過去、年末年始に国際線を利用したことのある方と、8月1日~10月7日の間に今年度の
年末年始の海外旅行の検索をしたものの、未購入の方(計約40万人)へ、「年末年始
海外ダイナミックパッケージ」の特集バナーを推奨。
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Web販売部(営業部門)が、ビッグデータ分析と顧客サービスの兼任体制であるため、
データ分析だけでなく、マーケティング施策の実行、検証を行う
目的は、データ活用そのものではなく、ビジネス上の目的(売上増など)を達成するための
アプローチのひとつとして、データ活用がある。
よって、データ分析を行う者は、ビジネス部門と一体となって、充分に実際のビジネスを
踏まえたうえで分析を行い、施策実行、検証というPDCAを回すことが重要。
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新たな ITシステムの貢献
客室乗務員、運航乗務員全員に個人端末を配布
様々な情報をリアルタイムで伝達可能
・マニュアルの印刷、配布費用大幅削減
・大雪の際の交通機関の運行情報をリアルタイムで伝えることにより、乗員
各自が判断して、各空港に定刻までに参集
整備員が個人端末を持って機側へ
・機側で最新のマニュアルを参照
・損傷個所の写真を技術部門へ送付
空港スタッフのスマートウォッチ活用
スマートウォッチを装着するスタッフ
・スタッフの所在・配置状況をコントローラーがリアルタイムで把握
・業務に必要な情報の入手・共有
お客さまへの情報伝達等、ITの活躍場面は無限!
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新たな ITシステムの貢献
航空機整備、貨物搭降載業務にウェアラブルデバイスを導入
日本航空とNRI(野村総合研究所)は、2014年5月1日より、米国ホノルル空港にてGoogle Glass ※1 (Google Glass は、現在、
米国内でのみ試験運用を行っている段階のため、本実証実験も、米国内で実施しています。)をはじめとした、ウェアラブルデバ
イス(頭や手などに装着するカメラやセンサーなどの小型装置)を活用し、先進的な業務スタイルの追求を目的とした実証実験を
開始しました。
航空機の整備作業や貨物の搭降載作業を、効率的にかつ確実に実施可能とするシステムの導入を目指し、眼鏡型のGoogle
Glassなどを用いて、ホノルル空港での各業務の中で実証実験を行います。また、その他のウェアラブルデバイス※2の活用も検
討していきます。
※1:眼鏡型のディスプレイで、インターネ
ットやコンピューターにアクセス
できるウェアラブルデバイス。
※2:手に装着し、眼鏡型ウェアラブル
デバイスなどと連動するウェアラブル
デバイス。
Google Glassを装着した整備士
Google Glass
具体的には、ウェアラブルデバイスの持つ、カメラ機能や情報伝達機能を活かし、
JAL本社スタッフが遠隔地にいる実務スタッフへの後方支援を行うと同時に、スタッ
フにハンズフリー環境を提供することで、現場作業の効率性の向上や負担軽減を
図ります。NRIは、企業と共同で新サービスの創出を目指す「NRI未来ガレージ」の
一環として参画し、実際の空港の現場に必要なユーザーインターフェースの最適化
などを進め、JALのより安全な運航管理業務とサービスの実現を目指します。
グローブ型ウェアラブルシステム(イメージ)
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新たな ITシステムの貢献
ITがエアラインビジネスを変える
Information Technology から Innovation Technology へ
販売では・・・
代理店を通さず、直接チケット、旅行を購入 (国内線では、直販が5割を超える)
ダイナミックパッケージ (航空券、ホテルを自由に選択可能)の拡大
整備では・・・
航空機に搭載されたソフトウェアの更新は、指揮室からリモートで実施
エンジンの各種パラメーター(温度、圧力等)の情報をエンジンメーカーが常時監視
運航中の航空機の異常を自動で地上にダウンロード
提携では・・・
異なる業種の提携が進展 (イオン、ビックカメラ、Ponta等)
(将来は・・・)
人生をより豊かにするために、エアラインビジネスがある
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ご清聴ありがとうございました
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