『出る順宅建ウォーク問』差し替えのお願い(PDF

LEC東京リーガルマインド
複写・頒布を禁じます
2015『合格テキスト及びウォーク問』差し替えのお願い
平成 26 年 12 月 22 日
『 出る順宅建合格テキスト』及び
『出る順宅建ウォーク問』 のご利用の皆様
不動産鑑定評価基準の改正により「2015 出る順宅建合格テキスト③法令上の制
限・税その他」及び「2015 出る順宅建ウォーク問③法令上の制限・税・その他」
の記載に訂正箇所があります。改正が多岐にわたるため、改正に合わせ書き換え
データを作成しました。改正該当部分(出る順テキスト第8章不動産鑑定評価基
準P359~P385、ウォーク問 問 153~問 157)に関して以下のデータと差し替え
をお願いします。
株式会社東京リーガルマインド
宅建試験部
第
ふ
8
B
ここも
出る
章
ランク
ど う さ ん か ん て い ひょう
か
き
じゅん
不動産鑑定評価基準
学習のポイント
学習項目
'05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
第
1 不動産の鑑定評価
とは
5 鑑定評価の方式
★
★
★
★
★
★
★
8
不動産鑑定評価基準
3 不動産の価格に関
する諸原則
4 鑑定評価の基本的
事項
★
章
★
2 価格を形成する要因
★
「不動産鑑定評価基準」は,過去10年間で5回出題されています。不動産鑑定
評価基準は以下の表にあるとおり,さまざまな規定が置かれています。内容は
複雑で,かつ,難しい問題が出題されることもあります。ただ,以下の表のう
ち「総論第7章 鑑定評価の方式」に関してはよく出題されているので5で説明
します。その大まかな内容については理解しておきましょう。
【不動産鑑定評価基準全体】
総論
各論
第1章 不動産の鑑定評価に関する
基本的考察
第6章 地域分析及び個別分析 第1章 価格に関する鑑定評価
第2章 不動産の種別及び類型
第7章 鑑定評価の方式
第3章 不動産の価格を形成する要因 第8章 鑑定評価の手順
第4章 不動産の価格に関する諸原則 第9章 鑑定評価報告書
第5章 鑑定評価の基本的事項
第2章 賃料に関する鑑定評価
第3章 証券化対象不動産の
価格に関する鑑定評価
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
359
誰もが納得できる不動産価格の求め方
宅建士が仕事で
経験する
相 談 事 例
鑑定評価の手法の適用
Aは,価格を求める鑑定評価の基本的な手法としては,①原価法,
②取引事例比較法,③収益還元法の3つの手法があることを知りまし
た。そして,Aは不動産の価格を求める鑑定評価においてはこの3つ
の手法をどのように適用していくのか疑問に思いました。そこでAは,
3つの手法をどのように適用していくのかについて,知り合いの不動
産業者に勤務する宅建士に質問することにしました。
仕事に
必要!
不動産の価格を求める鑑定評価においてはこの3つの手法をど
のように適用していくのでしょうか。
不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の業務です。しかし,宅建士
は物件の価格の査定や不動産の有効活用のアドバイスを行うこと
があります。そこで,不動産の鑑定評価方法について理解してお
く必要があります。
では,3つの手法をどのように適用していくのかについて不動
産鑑定評価基準はどのような規定を用意しているのか確認してみ
ましょう。
宅建士が仕事で使う基準
<不動産鑑定評価基準総論>
総論
第8章 鑑定評価の手順
第7節 鑑定評価の手法の適用
鑑定評価の手法の適用に当たっては,鑑定評価の手法を当該案件に即して
適切に適用すべきである。この場合,地域分析及び個別分析により把握した
対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適
用すべきであり,対象不動産の種類,所在地の実情,資料の信頼性等により
複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても,その考え方をできる
だけ参酌するように努めるべきである。
360
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法には,原価法,取引事
例比較法および収益還元法の3手法があります。それぞれ一長一短があ
るため,どれか1つの手法だけで鑑定評価するよりも,複数の鑑定評価
の手法を適用した方がより正確で説得力のある鑑定評価を行うことがで
きます。そのため,
複数の鑑定評価の手法を適用すべきとされています
(不
動産鑑定評価基準総論8章7節)
。
宅建士に対する相談への回答
価格を求める鑑定評価の手法(原価法、取引事例比較法および収益還元
法に大別される。)の適用に当たっては,複数の鑑定評価の手法を適用す
べきとされています。
不動産鑑定評価基準については,他にも,不動産の価格の種類などの
第
検討すべき事項もあります。
章
それでは,不動産鑑定評価基準について,次のページから詳しく見て
8
不動産鑑定評価基準
いきましょう。
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
361
ふ
1
ど う さ ん
か ん て い ひょう か
不動産の鑑定評価とは
ふ どうさんかんていひょう か
き じゅん
(1)不動産鑑定評価基準
不動産は,いうまでもなく重要な財産ですが,それがいったいどのような価
値をもつかは必ずしも明らかなものではありません。
実際の取引価格を調べたとしても,その価格は取引にかかわる当事者の個別
きゃっかんてき
的な事情に左右されており,そこから客観的にはいくらかを見出すことは一般
的には難しいものです。
そう ば
また,だいたいの相場が分かったとしても,それはあくまで相場であって,
具体的な不動産が客観的にはいくらになるかは,なかなか分かりません。
けいざい か
ち
り ろんてき
そこで,不動産の経済価値,つまり価格を,誰もが納得できるように理論的
にきちんと明らかにすることが必要となります。このように,ある不動産の経
か へいがく
(価格)
で表示することを不動産の鑑定評価とい
済価値を判定し,それを貨幣額
います。
みちび
いくら理論的に不動産の価格を導いたとしても,その理論が好き勝手なもの
ふ どう さん かん
でよいとすると,その価格は客観的なものになりません。そこで,
「不動産鑑
ていひょう か
き じゅん
定評価基準」
という鑑定評価の理論的な基準が定められ,不動産の鑑定評価は,
これに従ってすべきものとされています。
(2)鑑定評価の手順
て じゅん
不動産の鑑定評価は,次のような手順で行われます。
まず,
どの不動産を鑑定評価するか明確にしなければなりません。たとえば,
Aという建物を鑑定評価しようとしているのに,その隣のBという建物を鑑定
評価するのだと誤解していたのでは,正しい評価をすることはできません。こ
の鑑定評価の対象となる不動産を対象不動産といいます。
362
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
しゅうしゅう
次に必要な資料を十分に収集してそれを整理する必要があります。
第
章
8
く し
さまざまな方法を駆使することによって,具体的な不動産の価格が求められる
のです。
か
2
か く
け い せ い
よ う い ん
価格を形成する要因
(1)価格形成要因とは
不動産の価格は,どのような要因により決まるのでしょうか。
こうよう
不動産の価値は,その不動産が,①どんな使い方ができるものか
(効用),②
そうたいてき き しょうせい
どれくらい数が少ないものか
(相対的稀少性),③どれくらい人々が必要として
ゆうこうじゅよう
によって生じます。
いるか
(有効需要)
これらは,一般経済社会や,その不動産の存在する地域や,その不動産自体
えいきょう
の状況によって,影響を受けます。つまり,こういった状況がどのようなもの
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
363
不動産鑑定評価基準
ぶんせき
さらに,集めて整理した資料を分析して,不動産鑑定評価基準に定められた
であるかが不動産の価格を形成するのです。この不動産の価格を形成する要因
か かく けい せい よう いん
を,価格形成要因といいます。
かんてん
不動産の鑑定評価を行うにあたっては,価格形成要因を市場参加者の観点か
すい い
どうこう
ら明確に把握し,それに加え,過去からの推移,現在の動向,それぞれの要因
間の相互関係を十分に分析して,それらが不動産の効用などにどのような影響
を与えるか判定することが必要です。
(2)価格形成要因の分類
価格形成要因は,一般的要因,地域要因,個別的要因の3つに分けられます。
(a)
一般的要因
人々の生活様式が変われば,不動産の価格は影響を受けるでしょう。たとえ
ば,
「一戸建てを持つ」
ということにこだわることなく,
「マンションがいい」
と
いう人が増えれば,一戸建てとマンションの価格は影響を受けることになりま
す。
このように,不動産の価格は一般経済社会の状況に影響を受けます。この一
般経済社会における不動産のあり方およびその価格水準に影響を与える要因
いっ ぱん てき よう いん
を,一般的要因といいます。
き しょう
この一般的要因は,①気象の状態などの自然的要因,②生活様式の状態など
の社会的要因,③物価などの経済的要因,④税制などの行政的要因に分けられ
ます。
(b)
地域要因
不動産の価格は,対象不動産がどんな地域にあるかによっても,影響を受け
はん か がい
ます。たとえば,同じ100m2の土地であっても,繁華街にあるのと,山林にあ
るのではその価格が違ってきます。
よう と
このように,不動産は,その存在する地域によって,そのあるべき用途が決
まってくるため,どの地域にあるかによって,価格が影響を受けます。不動産
鑑定評価基準では,不動産が不動産の用途に関して区分されるが,この分類を
しゅ べつ
不動産の種別といいます。
364
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
【不動産の種別】
たく ち ち いき
宅地地域
居住,商業活動,工業生産活動等の用に供さ
れる建物,構築物等の敷地の用に供されるこ
とが,自然的,社会的,経済的および行政的
観点からみて合理的と判断される地域
地域の種別
のう ち ち いき
農地地域
農業生産活動のうち耕作の用に供されること
が,自然的,社会的,経済的および行政的観
点からみて合理的と判断される地域
りん ち ち いき
第
不動産の種別
林地地域
林業生産活動のうち木竹または特用林産物の
生育の用に供されることが,自然的,社会
的,経済的および行政的観点からみて合理的
と判断される地域
たく ち
章
宅地:宅地地域内にある土地
8
不動産鑑定評価基準
土地の種別
のう ち
農地:農地地域内にある土地
りん ち
林地:林地地域内にある土地
み こみ ち
見込地:宅地地域,農地地域,林地地域等の相
互間において,
ある種別の地域から他の種別の
地域へと転換しつつある地域の内にある土地
い こう ち
移行地:宅地地域,農地地域等の内にあっ
て,細分されたある種別の地域からその地域
内の他の種別の地域へと移行しつつある地域
の内にある土地
この不動産の種別によって分類される地域に,それぞれ不動産の価格に影響
ち いき よう いん
を与える要因があると考えるのです。この要因を地域要因といいます。
(c)
個別的要因
とくちょう
さらに,不動産の価格は不動産自体がどのような特徴をもっているかによっ
ても影響を受けます。たとえば,どれくらいの面積なのか,上下水道などは整
こ べつ てき
備されているのか,などによって,価格は違ってくるのです。これを個別的
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
365
よう いん
要因といいます。
不動産の特徴は,その存在する地域によって,変わってくるため,不動産の
種別のうち,土地の種別
(地域の種別に応じて分類される土地の区分)
によって
異なる個別的要因が考慮されることとなります。
また,対象不動産にどんな権利が設定されているか,どんな建物が建ってい
るかなどの実際の使われ方によっても,異なる個別的要因が考慮されることと
るい けい
なります。このような不動産の使われ方による分類を不動産の類型といいま
す。
【不動産の類型】
更地
建付地
宅地の類型
借地権
底地
区分地上権
不動産
の類型
自用の建物およびその敷地
建物および
その敷地の
類型 貸家およびその敷地
借地権付建物
区分所有建物およびその敷地
366
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
反復
チェック
宅建士への合格ステップ
制限・税・他
C 価格形成要因··············································· 96 /117
ランク
(1)価格形成要因とは,不動産の効用および相対的稀少性ならびに不動産に対
する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。
(2)価格形成要因は,次の3つに分けられる。
①一般的要因とは,一般経済社会における不動産のあり方およびその価格水準
に影響を与える要因をいう。
②地域要因とは,一般的要因の相関結合によって規模,構成の内容,機能等に
わたる各地域の特性を形成し,その地域に属する不動産の価格の形成に全般
的な影響を与える要因をいう。
③個別的要因とは,不動産に個別性を生じさせ,その価格を個別的に形成する
要因をいう。
第
章
8
不動産鑑定評価基準
宅建試験に
「出る!」
問題
不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与え
る要因を価格形成要因といい,一般的要因,地域要因及び個別的要因に分けられる。
(2010-25-2)
解答:〇
(上記合格ステップ参照)
問153…
(2)
ウォーク問
ふ
3
ど う さ ん
か
か く
か ん
し ょ げ ん そ く
不動産の価格に関する諸原則
(1)価格形成要因と不動産の価格の法則性
不動産の価格は,
価格形成要因の相互作用によって形成されます。そのため,
ほうそくせい
価格形成要因と価格との間には一定の法則性があるといえます。つまり,価格
形成要因がどのようなものであるかということを考えると,価格がどうなって
いるかが分かるということです。このような原則について,不動産鑑定評価基
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
367
だいたい
きんこう
準では最有効使用の原則の他に,需要と供給の原則,代替の原則,均衡の原則,
き
よ
さい ゆう こう し よう
てき ごう
寄与の原則,適合の原則などが挙げられています。ここでは最有効使用の原
則について述べましょう。
さいゆうこう し よう
(2)最有効使用の原則
たとえば,繁華街にあるAという土地が木造2階建ての店舗として利用され
ている場合を考えてみましょう。もし,そこにデパートを建てたとすれば,そ
の土地からより多くの収入が得られるかもしれません。そこにデパートを建て
ることができるのであれば,現在のA地は最もうまく利用されているとはいえ
ないのです。このような状態は,
「対象不動産は最有効使用の状態にない」
とい
うことができます。
では,この場合,A地の価格はどうなるでしょうか。客観的にはデパートを
建てることが最も有効に活用しているといえるのであれば,その価格はデパー
トを建てた場合の価格によって決まるでしょう。木造2階建ての店舗用の土地
としての価格では決まらないのです。つまり,不動産の価格は,その不動産が
最もうまく利用されている時の価値で決まるのです。
さい ゆう こう し よう
これを最有効使用の原則といいます。つまり,最有効使用の原則とは,不
動産の価格は,その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用
(最有効使用)
を前提として把握される価格を標準として形成されるということ
です。
宅建士への合格ステップ
反復
チェック
制限・税・他
C 最有効使用の原則···································· 97 /117
ランク
最有効使用の原則とは,不動産の価格は,その不動産の効用が最高度に発揮さ
れる可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成される
という原則をいう。
368
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
宅建試験に
「出る!」
問題
不動産の価格は,その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を
前提として把握される価格を標準として形成されるが,これを最有効使用の原則と
いう。(1995-33-1)
解答:〇
(上記合格ステップ参照)
ウォーク問
問154…
(1)
か ん て い ひょう か
4
き
ほ ん て き
じ
こ う
鑑定評価の基本的事項
(1)価格の種類
第
たとえば,ある土地A地の価格を求める場合を考えてみましょう。通常は,
8
ことになるでしょう。
不動産鑑定評価基準
りん ち
じ ぬし
しかし,そのA地の隣地,B地の地主が自分の土地をより広くするため,B
地とA地を併合しようとする場合は,どうでしょうか。一般に売りに出す場合
と価格は異なるものになるでしょう。
このように不動産の価格はどのような価格を求めるかによって考えるべき点
が違ってきます。
「不動産鑑定基準」
には,4つの価格の種類があるので,それ
ぞれを順に見ていきましょう。
(2)各種の価格
(a)
正常価格
現実の社会経済情勢の下で,
合理的と考えられる取引がされているところ
(市
せい じょう か かく
場)での価格を,正常価格といいます。売り急ぎなどがされている市場は合理
的なものとはいえません。この価格が成立するためには,対象不動産が一般的
し じょうせい
に取引されるものであることが必要です
(市場性)。
(b)
限定価格
へい ごう
ぶん かつ
げん てい か
他の不動産との併合や,不動産の一部の分割などの場合の価格を,限定価
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
369
章
このA地を一般的に売りに出したらいくらになるか考えて,その価格を求める
かく
格といいます。隣地の併合の場合や,土地を借りて建物を所有している借地
権者がその土地の所有権
(底地)
の取得をしようとする場合などには,正常価格
とは異なる価格となるのです。
(c)
特定価格
は たん
会社の経営が破綻し,経営を再建する場合には,その資産を鑑定評価したり,
売却したりすることになります。このような場合には,経営の再建が可能な時
期に売却する必要が生じるなど,正常価格とは異なる価格となります。このよ
とく てい か かく
うな場合の価格を特定価格といいます。
(d)
特殊価格
こくほう
じゅうようぶん か ざい
国宝や重要文化財などの建築物は売却されることはありません(市場性を有
とく しゅ か かく
しない)が,その価格が求められることがあります。この価格を特殊価格とい
います。
宅建士が仕事で使う基準
<不動産鑑定評価基準総論>
総論
第5章 鑑定評価の基本的事項
第3節 鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定
Ⅰ 価格
不動産の鑑定評価によって求める価格は,基本的には正常価格であるが,鑑定評価の
依頼目的に対応した条件により限定価格,特定価格又は特殊価格を求める場合があるの
で,依頼目的に対応した条件を踏まえて価格の種類を適切に判断し,明確にすべきであ
る。なお,評価目的に応じ,特定価格として求めなければならない場合があることに留
意しなければならない。
1.正常価格
正常価格とは,市場性を有する不動産について,現実の社会経済情勢の下で合理的と
考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をい
う。この場合において,現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市
場とは,以下の条件を満たす市場をいう。
(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し,参入,退出が自由であること。
…(略)…
(2)取引形態が,市場参加者が制約されたり,売り急ぎ,買い進み等を誘引したりす
るような特別なものではないこと。
(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。
370
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
2.限定価格
限定価格とは,市場性を有する不動産について,不動産と取得する他の不動産との併
合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下にお
いて形成されるであろう市場価値と乖離することにより,市場が相対的に限定される場
合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。
…(略)…
3.特定価格
特定価格とは,市場性を有する不動産について,法令等による社会的要請を背景とす
る鑑定評価目的の下で,正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格
と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合
における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
…(略)…
4.特殊価格
特殊価格とは,文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について,その利用現況
等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
第
章
8
反復
チェック
制限・税・他
B 不動産の価格の種類 ······························ 98 /117
ランク
(1)正常価格とは,市場性を有する不動産について,現実の社会経済情勢の下で合
理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示
する適正な価格をいう。
(2)限定価格とは,市場性を有する不動産について,不動産と取得する他の不動産
との併合または不動産の一部を取得する際の分割等に基づき,正常価格と同一
の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより,
市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく
市場価値を適正に表示する価格をいう。
(3)特定価格とは,市場性を有する不動産について,法令等による社会的要請を背
景とする鑑定評価目的の下で,正常価格の前提となる諸条件を満たさないこ
とにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値
と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価
格をいう。
(4)特殊価格とは,文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について,そ
の利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
371
不動産鑑定評価基準
宅建士への合格ステップ
宅建試験に
「出る!」
問題
正常価格とは,市場性を有する不動産について,現実の社会経済情勢の下で合理的
と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価
格をいう。
(2010-25-3)
解答:〇
(上記合格ステップ(1)参照)
ウォーク問
問153…
(3)
問154…
(2)
問155… (3)
か ん て い ひょう か
5
ほ う し き
鑑定評価の方式
(1)鑑定評価の方式の種類
不動産の鑑定評価の方式には,原価方式,比較方式および収益方式の3方式
があります。このそれぞれの方式の考え方を中心とした不動産の価格を求める
げん か ほう
とり ひき じ れい ひ かく ほう
しゅう えき かん げん ほう
手法は, 原 価 法, 取 引 事 例 比 較 法 および 収 益 還 元 法 と呼ばれます。それぞ
し さん か かく
れの鑑定評価の手法の適用により求められた価格を試算価格といいます。
不動産の価格を鑑定評価する場合には,複数の鑑定評価の手法を適用すべき
とされます。そして,それぞれの手法によって求められた試算価格が適切かど
さいぎん み
うか再吟味し,それがどれぐらい説得力があるか判断を行って,鑑定評価の最
終判断である鑑定評価額を決定することとなります。
宅建士への合格ステップ
反復
チェック
制限・税・他
B 鑑定評価の手法の適用 ························ 99 /117
ランク
(1)不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は,原価法,取引事例比較法
および収益還元法に大別される。
(2)鑑定評価の手法の適用に当たっては,複数の鑑定評価の手法を適用すべきで
ある。そして,対象不動産の種類,所在地の実情,資料の信頼性等により複数
の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても,その考え方をできるだけ参
酌するように努めるべきである。
372
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
宅建試験に
「出る!」
問題
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は,原価法,取引事例比較法及び収
益還元法に大別され,鑑定評価に当たっては,原則として案件に応じてこれらの手法
のうちいずれか一つを選択して適用すべきこととされている。
(2008-29- 1改題)
解答:×
(上記合格ステップ(2)参照)
ウォーク問
問155…
(1)
問157…
(1)
【鑑定評価の流れ】
対象不動産の確認
資料の検討など
第
取引事例比較法
8
不動産鑑定評価基準
原価法
章
鑑定評価の手法の適用
収益還元法
試算価格の算定
積算価格
比準価格
収益価格
鑑定評価額の決定
以下では,
これらの3手法がそれぞれどのようなものであるか見ていきます。
りゅう い
ふ
その前に試算価格を求める場合に一般的に留意すべき主な事項について触れて
おきましょう。
(a)
事例の収集および選択
このような鑑定評価の方式を使って,不動産の価格を求めるには,やはり必
要な資料を十分に集め,その集めた資料のなかで適切なものだけを選択しなけ
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
373
とう き てきとりひき
ればなりません。例えば,投機的取引と認められる事例などは,不適切な資料
として鑑定評価のための資料として用いることができません。
このような資料の収集においては,他の不動産に関する建設事例,取引事例,
収益事例が収集されます。
また,これらの取引事例等は,対象不動産が属する地域で,ある特定の用途
きん りん ち いき
に供されることを中心として地域的にまとまりのあるところ(近隣地域),ま
たは対象不動産と代替関係があるために価格の形成に相互に影響を与えるもの
どう いつ じゅ きゅう けん
るい じ
ち
があるところで,近隣地域と似た特性を有する地域( 同一需給圏内の類似地
いき
域)に存する不動産から選択するものとされます。
だいたい
きょう
また,類似地域以外であっても,同一需給圏内には,対象不動産と代替,競
そう
争等の関係が成立している不動産
(同一需給圏内の代替競争不動産)があり,こ
の資料を選択することもできます。
【近隣地域・同一需給圏・類似地域】
近隣地域
対象不動産の属する用途的地域であって,より大きな規模と内容と
を持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって居住,商業活
動,工業生産活動等人の生活と活動とに関して,ある特定の用途に
供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域 ※
※ 宅地,農地など,地域を用途的観点から区分したものを用途的
地域という。近隣地域は対象不動産が属する用途的地域であり,
そ
の価格形成に直接影響を与える特性をもつ。
類似地域
近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域
同一需給圏
374
一般に対象不動産と代替関係が成立して,その価格の形成について
相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域 ※
※ 近隣地域を含み,類似地域などの存する範囲を規定するもので
ある。
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
【近隣地域と同一需給圏内の類似地域】
代替競争不動産 同一需給圏
対象不動産
代替,競争等の関係
近隣地域
代替,競争等の関係
類似地域
(b)
事情補正
資料として収集された取引事例等には,その事例の取引での特殊な事情が影
章
じ じょう ほ せい
8
(c)
時点修正
資料として収集された取引事例等の取引時点と,対象不動産の価格を求めよ
うとしている時点(価格時点)では,価格水準が異なることがあるため,これを
じ てん しゅう せい
価格時点の価格等に修正しなければなりません。この修正を時点修正といいま
す。
375
不動産鑑定評価基準
を適切に補正しなければなりません。この補正を事情補正といいます。
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
第
響している場合があります。対象不動産の鑑定評価を行う場合には,この影響
反復
チェック
宅建士への合格ステップ
C 試算価格を求める場合の
ランク
制限・税・他
一般的 留 意事項··············································· 100 /117
(1)鑑定評価をする際に必要な資料は,次のいずれかの不動産の取引事例等を選
択する。
①近隣地域に存する不動産
②同一需給圏内の類似地域等に存する不動産
③同一需給圏内の代替競争不動産
(2)事情補正とは,取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み,価格等に影響を
及ぼしているときに,適切に補正することをいう。
(3)時点修正とは,取引事例等に係る取引等の時点が価格時点と異なり,その間に
価格水準に変動があると認められる場合に,当該取引事例等の価格等を価格時
点の価格等に修正することをいう。
宅建試験に
「出る!」
問題
取引事例に係る取引が特殊な事情を含み,これが当該取引事例に係る価格等に影響
を及ぼしているときは,適切に補正しなければならない。
(2010-25-4)
解答:〇
(上記合格ステップ(2)参照)
問153…
(4)
問154…
(4)
ウォーク問
げん か ほう
(2)原価法
同じ程度の不動産を作るとしたら,いくらぐらいかかるだろうかと計算して
げん か ほう
せきさん か かく
みる方法が原価法です。この手法による試算価格を積算価格といいます。
原価法は,対象不動産が①建物,または②建物およびその敷地である場合に,
さいちょうたつげん か
げん か しゅうせい
の把握および
「減価修正」を適切に行うことができるとき
後述する
「再調達原価」
に有効であり,対象不動産が土地のみである場合においても,再調達原価を適
切に求めることができるときはこの手法を適用することができます。
376
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
【原価法】
再調達原価
土地の取得原価など
建設費など
減価額
試算価格(積算価格)
(a)
再調達原価
原価法では,たとえば,建物およびその敷地の価格を求める場合,まず,他
の建設事例などの資料を集めて,現在これと同じ土地を取得し,同じ建物を建
てると,いくらかかるのかということを調べて,このコストを求めます。これ
(価格時点)
に,再
総額をいいいます。これは,価格を求めようとしている時点
び建築
(再調達)
したらいくらかかるのかということであって,実際にその建物
を建てた時にいくらかかったのかということではありません。なお,価格時点
へんせん
において建設資材,工法等の変遷により対象不動産の再調達原価を求めること
お
か
が困難な場合には,同じような有用性をもつものに置き換えて求めた原価(置
換原価)
を再調達原価とみなして,鑑定評価をします。
うけおい
再調達原価を求める場合には,建設請負で,請負人が発注者に対してすぐに
そ ざい
使える状態にして引き渡す通常の場合を想定し,素材となる土地の取得原価な
どに,そのときに支払う建設費などを加算し求めるものとされます。なお,土
地についての原価法の適用において,宅地造成直後と価格時点とを比較し公共
施設の整備等による環境の変化が価格水準に影響を与えていると客観的に認め
じゅくせい ど
られる場合は,熟成度として地域要因の変化の程度に応じた増加額を加算でき
ます。
(b)
減価修正
しゅうせい
次に,この再調達原価から,必要な価格の修正をします。建物は,一般的に,
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
377
8
不動産鑑定評価基準
そうがく
章
そうてい
点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の
第
さい ちょう たつ げん か
を再調達原価といいます。すなわち,再調達原価とは,対象不動産を価格時
ろうきゅう か
老朽化や新しい建築方法の開発,ライフスタイルの変化などにより価値が下が
さ てい
減価しているところがあれば,
ります。
そこで,
このような点につき査定を行い,
げん か しゅう せい
再調達原価から,
その分を差し引く
(控除)
のです。これを減価修正といいます。
なお,原価法において,対象不動産の再調達原価から控除すべき減価額を求め
たいよう
かんさつ
る方法には,耐用年数に基づく方法と観察減価法があり,原則としてこれらを
併用するものとされます。
宅建士が仕事で使う基準
<不動産鑑定評価基準総論>
総論
第7章 鑑定評価の方式
第1節 鑑定を求める鑑定評価の手法
Ⅱ 原価法
1.意義
原価法は,価格時点における対象不動産の再調達原価を求め,この再調達原価につい
て減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価
格を積算価格という。
)
。
原価法は,対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において,再調達原価
の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり,対象不動産が土地の
みである場合においても,再調達原価を適切に求めることができるときはこの手法を適
用することができる。
宅建士への合格ステップ
反復
チェック
制限・税・他
A 原価法 ······························································· 101/117
ランク
(1)原価法は,価格時点における対象不動産の再調達原価を求め,この再調達原
価について減価修正を行って,対象不動産の試算価格を求める手法である。
この手法による試算価格を積算価格という。
(2)再調達原価とは,対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場
合に必要とされる適正な原価の総額をいう。
378
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
宅建試験に
「出る!」
問題
原価法は,求めた再調達原価について減価修正を行って対象物件の価格を求める手
法であるが,建設費の把握が可能な建物のみに適用でき,土地には適用できない。
(2010-25-1)
解答:×
(上記合格ステップ(1)参照)
問153…
(1)
ウォーク問
とりひき じ れい ひ かくほう
(3)取引事例比較法
ひ かく
不動産の価格は,いくつかの売買の例を探して,これらの売買価格と比較を
し,対象不動産を売買するとしたらいくらで取引されるのだろうかと考えるこ
とによっても求めることができるでしょう。この手法を取引事例比較法といい
ひ じゅん か かく
第
ます。この手法による試算価格を比準価格といいます。
【取引事例比較法】
A
B
取引事例1
A
B
A
取引事例2
B
取引事例3
収集
選択
事情補正・時点修正
地域要因・個別的要因の比較
試算価格
(比準価格)
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
8
不動産鑑定評価基準
場合などに有効です。
章
この手法は,対象不動産の近くなどでよく似た不動産の取引が行われている
379
取引事例比較法は,まず,多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行
います。この事例は,取引事情が正常なもの,または正常なものに補正できる
ものを収集,
選択しなければなりません。投機的取引の事例は選択できません。
そして,これらの取引事例の取引価格に,必要に応じて事情補正および時点
修正を行います。地域要因の比較および個別的要因の比較も行います。なお,
取引事例比較法における取引事例は,近隣地域または同一需給圏内の類似地域
に存する不動産に係るものでなければなりませんが,必要やむを得ない場合に
は,近隣地域の周辺の地域に係るものからも選択できます。
このようにして求められたいくつかの取引事例の価格を比較考量し,対象不
動産の試算価格を求めるのです。
宅建士が仕事で使う基準
<不動産鑑定評価基準総論>
総論
第7章 鑑定評価の方式
第1節 鑑定を求める鑑定評価の手法
Ⅲ 取引事例比較法
1.意義
取引事例比較法は,まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い,これら
に係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い,かつ,地域要因の比較及
び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し,これによって対象不動産の
試算価格を求める手法である
(この手法による試算価格を比準価格という。
)。
取引事例比較法は,近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等において対象不動産
と類似の不動産の取引が行われている場合又は同一需給圏内の代替競争不動産の取引が
行われている場合に有効である。
380
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
反復
チェック
宅建士への合格ステップ
制限・税・他
A 取引事例比較法 ········································· 102 /117
ランク
取引事例比較法とは,まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を
行い,これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正および時点修正を行い,か
つ,地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考
量し,これによって対象不動産の試算価格を求める手法をいう。
この手法による試算価格を比準価格という。
宅建試験に
「出る!」
問題
章
8
問157…
(2)
しゅうえきかんげんほう
(4)収益還元法
収益還元法は,対象不動産からどれくらい利益をあげることができるかとい
しゅうえき か かく
う点から試算価格を求める手法です。この手法による試算価格を収益価格とい
います。対象不動産が今後何年かにわたって生み出す利益の合計が現在の価値
にすると,どれくらいになるかを算定するのです。
つきづき
けん り きん
こうしんりょう
建物を賃貸した場合を考えると,家主には月々の家賃の他,権利金や更新料
そうしゅうえき
などの収入が生じます。これらの収入の合計を総収益といいます。また,こう
こう そ こう か
した賃貸業を続けていくには,建物の維持管理費や固定資産税等の公租公課な
ど,さまざまな費用がかかります。これらの費用の合計を総費用といいます。
収益還元法では,この総収益から総費用を控除した純収益の現在価値の総和が
求められます。
収益価格を求める方法には,直接還元法とDCF(DiscountedCash Flow)法
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
381
不動産鑑定評価基準
ウォーク問
第
取引事例比較法とは,まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い,こ
れらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い,かつ,地域要因
の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し,これによって
対象不動産の試算価格を求める手法である。
(2001-29-2)
解答:〇
(上記合格ステップ参照)
かんげん り まわ
があり,一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法を直接還元法,連
続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を,その発生時期に応じて現
在価値に割り引き,それぞれを合計する方法をDCF法といいます。
なお,
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては,
DCF法を適用しなければなりません。この場合において,あわせて直接還元
法を適用することにより検証を行うことが適切です。
【収益還元法】
①各期の純収益を求める
純収益
賃料など
維持管理費など
総費用
総収益
②各期の純収益を現在価値に割り引く
割引率による割引分
+
復帰価格
+…+
最終年の純収益
+
3年めの純収益
2年めの純収益
1年めの純収益
+
最終還元利回り
による還元分
※ この図は,収益価格を求める方法の1つであるDCF法による。
DCF法では,各期の収益の総和に,期間が満了した時点での
対象不動産の価格(復帰価格)を加えたものを収益価格と
する。各収益を現在価値に割り引く場合には,割引率が用い
られ,復帰価格を求める場合には,最終還元利回りが用いら
れる。
この他,収益還元法には,一期間の純収益を還元利回りに
よって還元する直接還元法がある。
382
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
ちんたいよう
収益還元法は,賃貸用不動産や賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を
求める場合に特に有効です。文化財の指定を受けた建造物など一般に取引され
ない不動産以外のものであれば,自用の不動産であっても賃貸を想定すること
によって適用することができます。
市場での土地の取引価格の上昇が著しいときには,その価格と収益価格は大
きくずれたものとなります。そのため,先走りがちな取引価格が適正か否かを
験証する手段として,収益還元法は活用されるべきものです。
宅建士が仕事で使う基準
<不動産鑑定評価基準総論>
総論
第7章 鑑定評価の方式
第1節 鑑定を求める鑑定評価の手法
Ⅳ 収益還元法
第
1.意義
算価格を収益価格という。
)。
収益還元法は,賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める
場合に特に有効である。
また,不動産の価格は,一般に当該不動産の収益性を反映して形成されるものであり,
収益は,不動産の経済価値の本質を形成するものである。したがって,この手法は,文
化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的
にすべて適用すべきものであり,自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適
用されるものである。
なお,市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは,取引価格と収益価格と
の乖離が増大するものであるので,先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段とし
て,この手法が活用されるべきである。
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
383
8
不動産鑑定評価基準
総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試
章
収益還元法は,対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の
反復
チェック
宅建士への合格ステップ
制限・税・他
A 収 益還元法 ···················································· 103 /117
ランク
(1)収益還元法とは,対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の
現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法を
いう。
この手法による試算価格を収益価格という。
(2)収益還元法は,賃貸用不動産,賃貸以外の事業の用に供する不動産の価
格を求める場合に,特に有効である。
文化財に指定されている建造物等以外のものには基本的にすべて適用すべき
ものであり,自用の不動産といえども,賃貸を想定することにより適用さ
れる。
(3)市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは,取引価格と収益価格と
の乖離が増大するものであるので,先走りがちな取引価格に対する有力な験
証手段として,この手法が活用されるべきである。
宅建試験に
「出る!」
問題
収益還元法は,対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値
の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であることから,賃
貸用不動産の価格を求める場合に有効であり,自用の不動産には適用すべきでない。
(2008-29-4改題)
解答:×
(上記合格ステップ(2)参照)
ウォーク問
問155…
(4)
問157…
(3)
(5)賃料を求める鑑定評価の手法
賃料といって普通に思いつくのは月々支払いをする賃料です。この各支払時
期に支払われる賃料を支払賃料といいます。
しかし,借主が貸主に支払うのは,月々の賃料だけではなく,権利金や保証
せいそう ひ
れいだんぼう ひ
金のような金銭の支払いがされる場合もあります。また,清掃費,冷暖房費な
めいもく
どがいわゆる付加使用料,共益費等の名目で支払われる場合もありますが,こ
384
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
れらのうちには実質的な賃料としての性格をもつものもあります。このような
その種類を問わず,賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正な
じっしつちんりょう
すべての経済的対価を実質賃料といいます。
なお,賃料を求める鑑定評価の手法には,新たに不動産を賃貸借する場合の
せきさん
賃料
(新規賃料)
を求める場合として,積算法,賃貸事例比較法,収益分析法な
どがあります。また,賃貸借を継続しようとする特定の当事者間の賃料(継続
さ がくはいぶん
賃料)を求める場合として,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比
較法などがあります。
第
章
8
不動産鑑定評価基準
2015年版出る順宅建合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
385
●第 2 編 税・価格
不動産鑑定評価基準
問
❶
153
不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,不動産鑑定評
価基準によれば,誤っているものはどれか。
原価法は,求めた再調達原価について減価修正を行って対象物件の
価格を求める手法であるが,建設費の把握が可能な建物のみに適用でき,
土地には適用できない。
❷
不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三
者に影響を与える要因を価格形成要因といい,一般的要因,地域要因及
び個別的要因に分けられる。
❸
正常価格とは,市場性を有する不動産について,現実の社会経済情
勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市
場価値を表示する適正な価格をいう。
❹
取引事例に係る取引が特殊な事情を含み,これが当該取引事例に係
る価格等に影響を及ぼしているときは,適切に補正しなければならない。
(本試験 2010 年問 25 出題)
正解
チェック
欄
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
323
正解肢
1
出る順宅建
合格者正解率
不合格者正解率
90.8% 76.8%
3
受験者正解率 85.7%
❶ 誤 原価法は土地にも適用可能。
原価法は,対象不動産が建物または建物およびその敷地である
ステップ
101
場合において,再調達原価の把握および減価修正を適切に行うこ
とができるときに有効であり,対象不動産が土地のみである場合
においても,再調達原価を適切に求めることができるときはこの
手法を適用することができる(不動産鑑定評価基準総論7章1節
Ⅱ1)。よって,本肢は誤りであり,本問の正解肢となる。
❷ 正 不動産の価格を形成する要因とは,不動産の効用および
ステップ
96
相対的稀少性ならびに不動産に対する有効需要の三者に影響を与
える要因をいう。そして,価格形成要因は,一般的要因,地域要
因および個別的要因に分けられる(不動産鑑定評価基準総論3
章)。よって,本肢は正しい。
☆❸ 正 正常価格とは,市場性を有する不動産について,合理的
ステップ
98
な市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をい
う(不動産鑑定評価基準総論5章3節Ⅰ1)。よって,本肢は正
しい。
☆❹ 正 取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み,これが当
該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしているときは適切に補
ステップ
100
正しなければならない。(不動産鑑定評価基準総論7章1節Ⅰ
3)。よって,本肢は正しい。
324
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
●第 2 編 税・価格
不動産鑑定評価基準
問
❶
154
不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,正しいものは
どれか。
不動産の価格は,その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に
最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが,
これを最有効使用の原則という。
❷
不動産の性格により一般的に市場性を有しない不動産の経済価値を
適正に表示した価格を限定価格という。
❸
対象不動産の属する地域であって,居住,商業活動等人の生活と活
動とに関し,ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまと
まりを示している地域を同一需給圏という。
❹
取引事例等にかかる取引等の時点が価格時点と異なり,その間に価
格水準に変動があると認められる場合に,当該取引事例等の価格等を価
格時点の価格等に修正することを事情補正という。
(本試験 1995 年問 33 改題)
正解
チェック
欄
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
325
正解肢
1
出る順宅建
合格者正解率
不合格者正解率
3
受験者正解率
☆❶ 正 最有効使用の原則とは,不動産の価格は,その不動産の
ステップ
97
効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)
を前提として把握される価格を標準として形成されるという法則
性をいう(不動産鑑定評価基準総論4章Ⅳ)。よって,本肢は正
しく,本問の正解肢となる。
☆❷ 誤 限定価格ではなく,特殊価格。
ステップ
98
限定価格とは,市場性を有する不動産について,不動産と取得
する他の不動産との併合または不動産の一部を取得する際の分割
等に基づき正常価格と同一の市場概念のもとにおいて形成される
であろう市場価値と乖離することにより,市場が相対的に限定さ
れる場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適
正に表示する価格をいう(不動産鑑定評価基準総論5章3節Ⅰ
2)。よって,本肢は誤り。なお,本肢の記述は,特殊価格に関
するものである。
❸ 誤 同一需給圏ではなく,近隣地域。
同一需給圏とは,一般に対象不動産と代替関係が成立して,そ
の価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の
不動産の存する圏域をいう(不動産鑑定評価基準総論6章1節Ⅱ
1⑵)。本肢の記述は,近隣地域に関するものである(不動産鑑
定評価基準総論6章1節Ⅱ1⑴①)。よって,本肢は誤り。
❹ 誤 事情補正ではなく,時点修正。
事情補正とは,取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み,
ステップ
100
これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしているときに
適切に補正することをいう(不動産鑑定評価基準総論7章1節Ⅰ
3)。本肢の記述は,時点修正に関するものである(不動産鑑定
評価基準総論7章1節Ⅰ4)。よって,本肢は誤り。
326
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
●第 2 編 税・価格
不動産鑑定評価基準
問
❶
155
不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,不動産鑑定評
価基準によれば,正しいものはどれか。
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は,原価法,取引事
例比較法及び収益還元法に大別され,鑑定評価に当たっては,原則とし
て案件に応じてこれらの手法のうちいずれか一つを選択して適用すべき
こととされている。
❷
土地についての原価法の適用において,宅地造成直後と価格時点と
を比べ,公共施設等の整備等による環境の変化が価格水準に影響を与え
ていると客観的に認められる場合には,地域要因の変化の程度に応じた
増加額を熟成度として加算できる。
❸
特殊価格とは,市場性を有する不動産について,法令等による社会
的要請を背景とする鑑定評価目的の下で,正常価格の前提となる諸条件
を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成さ
れるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済
価値を適正に表示する価格をいう。
❹
収益還元法は,対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純
収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求め
る手法であることから,賃貸用不動産の価格を求める場合に有効であり,
自用の不動産には適用すべきでない。
(本試験 2008 年問 29 改題)
正解
チェック
欄
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
327
正解肢
2
出る順宅建
合格者正解率
不合格者正解率
61.8% 35.5%
3
受験者正解率 52.2%
☆❶ 誤 複数の鑑定評価の手法を適用すべきである。
ステップ
99
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は,原価法,取
引事例比較法および収益還元法に大別され,鑑定評価に当たって
は,原則として,地域分析および個別分析により把握した対象不
動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法
を適用すべきである(不動産鑑定評価基準総論7章1節,8章7
節)。よって,本肢は誤り
❷ 正 土地についての原価法の適用において,宅地造成直後の
対象地の地域要因と価格時点における対象地の地域要因とを比較
し,公共施設,利便施設等の整備および住宅等の建設等により,
社会的,経済的環境の変化が価格水準に影響を与えていると客観
的に認められる場合には,地域要因の変化の程度に応じた増加額
を熟成度として加算することができる(不動産鑑定評価基準総論7
章1節Ⅱ2(2)①)。よって,
本肢は正しく,
本問の正解肢となる。
☆❸ 誤 特殊価格ではなく,特定価格。
ステップ
98
特殊価格とは,文化財等の一般的に市場性を有しない不動産に
ついて,その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に
表示する価格をいう(不動産鑑定評価基準総論5章3節Ⅰ4)。
よって,本肢は誤り。なお,本肢の記述は,特定価格に関するも
のである。
☆❹ 誤 自用の不動産にも適用すべきである。
収益還元法は,対象不動産が将来生み出すであろうと期待され
ステップ
103
る純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算
価格を求める手法である。そして,この手法は,文化財の指定を
受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものに
は基本的にすべて適用すべきものであり,自用の不動産といえど
も賃貸を想定することにより適用されるものである(不動産鑑定
評価基準総論7章1節Ⅳ1)。よって,本肢は誤り。
328
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
●第 2 編 税・価格
不動産鑑定評価基準
問
❶
156
不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,不動産鑑定評
価基準によれば,誤っているものはどれか。
不動産の価格を形成する要因とは,不動産の効用及び相対的稀少性
並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。不動
産の鑑定評価を行うに当たっては,不動産の価格を形成する要因を明確
に把握し,かつ,その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に
分析すること等が必要である。
❷
不動産の鑑定評価における各手法の適用に当たって必要とされる事
例は,鑑定評価の各手法に即応し,適切にして合理的な計画に基づき,
豊富に秩序正しく収集,選択されるべきであり,例えば,投機的取引と
認められる事例は用いることができない。
❸
取引事例比較法においては,時点修正が可能である等の要件をすべ
て満たした取引事例について,近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に
存する不動産に係るもののうちから選択するものとするが,必要やむを
得ない場合においては,近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るも
ののうちから選択することができる。
❹
原価法における減価修正の方法としては,耐用年数に基づく方法と,
観察減価法の二つの方法があるが,これらを併用することはできない。
(本試験 2012 年問 25 出題)
正解
チェック
欄
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
329
正解肢
4
不合格者正解率
85.0% 70.4%
受験者正解率 80.0%
❶ 正 不動産の価格を形成する要因とは,不動産の効用および
相対的希少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与え
る要因をいう。不動産の鑑定評価を行うにあたっては,不動産の
価格を形成する要因を明確に把握し,かつ,その推移および動向
並びに諸要因間の相互関係を十分に分析することなどが必要であ
る(不動産鑑定評価基準総論3章)。よって,本肢は正しい。
❷ 正 不動産の鑑定評価における各手法の適用にあたって必要
とされる事例は,鑑定評価の各手法に即応し,適切にして合理的
な計画に基づき,豊富に秩序正しく収集,選択されるべきであり,
例えば,投機的取引と認められる事例は用いることができない(不
動産鑑定評価基準総論7章1節Ⅰ2)。よって,本肢は正しい。
❸ 正 取引事例比較法においては,時点修正が可能であるなど
の要件をすべて満たした取引事例について,近隣地域または同一
需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択す
るものとするが,必要やむを得ない場合においては,近隣地域の
周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから選択することが
できる(不動産鑑定評価基準総論7章1節Ⅲ2(1))。よって,
本肢は正しい。
❹ 誤 併用することができる。
原価法における減価修正の方法としては,耐用年数に基づく方
法と,観察減価法の2つの方法があるが,かかる2つの方法は,
これらを併用するものとする(不動産鑑定評価基準総論7章1節
Ⅱ3(2))。よって,本肢は誤りであり,本問の正解肢となる。
330
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他
出る順宅建
合格者正解率
3
●第 2 編 税・価格
不動産鑑定評価基準
問
❶
157
不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち,正しいものは
どれか。
不動産の価格を求める鑑定評価の手法は,原価法,取引事例比較法
及び収益還元法に大別されるが,鑑定評価に当たっては,案件に即して
これらの三手法のいずれか1つを適用することが原則である。
❷
取引事例比較法とは,まず多数の取引事例を収集して適切な事例の
選択を行い,これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修
正を行い,かつ,地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求めら
れた価格を比較考量し,これによって対象不動産の試算価格を求める手
法である。
❸
収益還元法は,文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を
有しない不動産も含め基本的にすべての不動産に適用すべきものであり,
自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものであ
る。
❹
賃料の鑑定評価において,支払賃料とは,賃料の種類の如何を問わ
ず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経
済的対価をいい,純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必
要とされる諸経費等から成り立つものである。
(本試験 2001 年問 29 改題)
正解
チェック
欄
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331
正解肢
2
出る順宅建
合格者正解率
不合格者正解率
87.9% 74.0%
3
受験者正解率 79.9%
☆❶ 誤 複数の鑑定評価の手法を適用すべきである。
ステップ
99
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は,原価法,取
引事例比較法および収益還元法に大別され,鑑定評価に当たって
は,原則として,地域分析および個別分析により把握した対象不
動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法
を適用すべきである(不動産鑑定評価基準総論7章1節,8章7
節)。よって,本肢は誤り。
☆❷ 正 取引事例比較法とは,まず多数の取引事例を収集して適
切な事例の選択を行い,これらに係る取引価格に必要に応じて事情
ステップ
102
補正および時点修正を行い,かつ,地域要因の比較および個別的
要因の比較を行って求められた価格を比較考量し,これによって対
象不動産の試算価格を求める手法である(不動産鑑定評価基準総
論7章1節Ⅲ1)。よって,本肢は正しく,本問の正解肢となる。
☆❸ 誤 市場性を有しない不動産も含めるのではない。
収益還元法は,文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場
ステップ
103
性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきも
のとされている(不動産鑑定評価基準総論7章1節Ⅳ1)。よっ
て,「市場性を有しない不動産も含め」とする本肢は誤り。なお,
「自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用される」
という点については正しい。
❹ 誤 支払賃料ではない。
支払賃料とは,各支払時期に支払われる賃料をいい,契約にあ
たって,権利金,敷金,保証金などの一時金が授受される場合に
おいては,当該一時金の運用益および償却額とあわせて実質賃料
を構成するものである(不動産鑑定評価基準総論7章2節Ⅰ1)。
よって,本肢は誤り。なお,本肢は実質賃料に関する記述である。
332
LEC東京リーガルマインド 2015年版出る順宅建ウォーク問過去問題集③法令上の制限・税・その他