Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
洋上風力エネルギー賦存量の推定とその技術的課題
Author(s)
大澤, 輝夫
Citation
環境技術, 41(9): 550-555
Issue date
2012-09
Resource Type
Journal Article / 学術雑誌論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002160
Create Date: 2015-02-01
2
2
環境技術
風調庭技術
洋上風力エネルギー賦存量の推定と
その技術的課題
大津輝夫・
キーワード :洋仁風}
J
, 風況,メソ気象モデル
要
得が. 日本沿岸においては喫緊の課題となってい
ヒ
"
"
田
ようやく日本でも
る.本稿では,そうした洋上風力エネルギー賦存
洋上風力エネルギーの開発の機運が高まってき
量を推定する際に基礎となる海仁風況推定手法を
た
紹介するとともに.現時点におけるそれらの技術
l
孜州に遅れること十数年
洋上では現場において風車ハブ高度の風速
l
!
J
することが非常に困難であるため。人工
を観 i
│衛星によるリモートセンシングや数値モデルに
的課題について述べる
2 海上風況推定手法の比較
よるシミュレーションによって洋上風力エネル
海上風況を推定する手法を考える際には.外洋
ギーを正確に推定する技術の獲得が喫緊の課題
となっている
と沿岸と大きく 2つの海域に分けて考えると考え
本稿では。洋上風力エネルギー
賦存置を推定する際に必要となる海上風況の推
やすい 1) 本稿では .海岸線から数十 k
m(
50km程
定手法を紹介するとともに.現時点におけるそ
度)を境に.それより岸に近い側を沿岸.遠い側
れらの技術的課題について述べる.
を外洋として話を進める
図 1に.沿岸,外洋それぞれの海域において有
望な海上風況推定手法を示す
1,は じ め に
外洋は比較的風況
が一機であるため.そこでの風速推定には空間解
一般に洋上ウインドフアーム (WF) の建設コ
mからlOk
mのオーダーの手法が用いられ
像度が 1k
ストは陸上に比べて割高であり,また規模も大規
る.衛星に搭載されたマイクロ波放射計・散乱計
模になるため.事業リスクは増大する.そのため,
や.気象機関が格子点値として公開している客観
W F建設予定海域において風力エネルギー(発電
解析値がその代表的な手法となる
!
I
Jち現場の海
量)を如何に正確に推定できるか, !
しては.陸上地形の影響を受けて局所的に風況が
上風を如何に正確に把握できるかが事業成功の鍵
大きく変化するため,そこでの風速推定には 1
0
0
を握っている
海上風況の推定には, W F開発予
一方沿岸に関
m から 1k
m程度のオーダーの空間解像度が必要と
定地に風況観測鉄塔を設置して現場データを得る
なる
ことが最も望ましいが,鉄塔を建設するだけでも
よる数値シミュレーションや,衛星搭載の合成開
数億から十数億円のコストがかかると言われる
口 レ ー ダ ー (SAR
:Synthetic Aperture Radar)
ま た 大 水 深 海 域 (50m以上)での浮体式洋上
によるリモートセンシングが挙げられる.
代表的な手法としては.メソ気象モデルに
以上 4つの手法を 表 1にまとめる以下の節で,
W Fまでを検討対象に含めるのなら,現場海域に
若底式の鉄事停を設置することは . もはや不可能と
各手法について詳細を述べる
なる
こうして.現場観 i
)
!
l
J
値のない海域において洋ヒ
2
,
1 散乱計 ・放射計
表 11ドの第 l列目に示される散乱計 ・放射計
風プJ
エネルギー賦存量を正確に推定する技術の獲
は.共に極軌道衛星に搭載されるマイクロ波セン
O
f
f
s
h
o
r
eWindR
e
s
o
u
r
c
eAssessmenta
n
di
t
sT
e
c
h
n
i
c
a
lC
h
a
l
l
e
n
g
e
s
*神戸大学大学院海事科学研究科 T
eruoOHSAWA
-550一
Vo
.
l
41 No.9
2
3
(
201
2)
10m-100m
100m-1km
1km-10km
:
-100km
数 10km-
海岸線
│有望な手法 │
・.
・,・
・
-合成関口レーダー
.メソ気象モデル
-マイクロ波散乱計・放射百十
.客観解析値
陸上風車
│対象風車 │
着底式浮上風車
浮体式
洋上風車
図 1 外洋及び沿岸海域における有望な海上風況推定手法
表 1 海上風況推定手法の比較
客観解析似
メソ気象モ デ ル
手法
散乱計/欣射計
種類
衛星観測
~ ,. tr.
半日
3-6時間i
,
百.
t
i
:
+観 i
J
!
i
J
合成│井I
nレー ダー
ブイ/マスト
衛星観 i
P
.
l
J
観測
分~ 時 '~J
数十回/年
i
f
i小 12.5km
1J~小 5 k
m
員立小数百 m
最小卜数 m
'~i lË点
風速推定高度
10m
.
:
fu
i
j
10m. 気 J
10m. モデ ル府
10m
数 m-数白 m
推定精度
O
0-ム
取扱難易度
ぺ1
時間解像度
空間解像度
日
乙
〉
。
難
秒、 時間
ム
草
花
。
易
サ ー で あ る 同 一 海 域 を お よ そ 1L
I2I
口│観測し
ニン ・オブコフ相似則を使う手法も考えられる
5km. 通常は 25km (0.
25度)
空間解像度は最小で、 12.
が 3) 風車ハブ高度が接地境界層より高くな って
で一般に公開されている。散乱計がセンサーから
いる現状においては.理論的には後に述べるメソ
マイクロ波を地表に向けて射出し,その後方散乱
気象モデルから計算された鉛直プロファイルを利
を受信する能動型センサーであるのに対して.放
用する方法 4 が最も精度が高いと考えられる
射計は地表からのマイクロ波放射 (
地球放射はエ
散乱計・放射計は.年聞を通じた風力エネルギーを
ネルギーの大部分を赤外領域に持つが.マイクロ
推定する上で 1日 2回という時間解像度の低さが
1m)にも微弱ながらエネルギー
問題視されることもあるが,通過時刻の異なる複
波領域 (O.l mm~
を有する ) を計測する受動型センサーである.前
数の散乱計・放射計のデータを合わせて使うこと
者 の 代 表 的 な も の に は . QuikSCAT衛 星 /
により .この問題は今後解決されると考えられる.
SeaWinds. METOP衛星 IASCAT. 後者の代表
的なものには DMPS衛星 I
SSM/
I
. Aqua衛昼 /
2
.2 客観解析値
AMSR-Eなどがある
計 ・放射計と同様に 主 として外洋の風況調査に用
風速の推定精度はいずれ
表 1中の第 2列目は客観解析値であり
も. 二 乗 平 均 平 方 根 誤 差 (
RMSE:RootMean
いられる
s程度である
SquareError)で見て 1~ 2m/
働させている数値解析予報システムの中で
l
衛星観測で得られる風速は海面上 10mの高さの
散乱
客観解析値とは,気象機関が現業で稼
数値
予報値に観測値を同化して得られるものである.
推定風速値であるため.風車ハブ高度 ( 60m ~
円本沿岸で空間解像度が最も高いものは気象庁メ
l m) の風速を知るには.何らかの風速鉛直プ
ソ客観解析値 (5km格子)であり.データは気象
ロファイルを仮定して高度補正を行う必要があ
業務支援センターより入手できる
る 高度補正を行うには.経験式を使う手法やモ
値にはその作成段階において散乱計 ・放射計によ
∞
- 55
1一
メソ客観解析
2
4
環境技術
る衛星観測値もデータ同化されているが,実際の
ロ波を射出して後方散乱を計測するという点で散
洋上のブイで検証してみると ,風速の推定精度は
乱計とほぼ同様の測定原理に基づいている.代表
衛星観測値には及ばない . しかし時間解像度が 3
エネルギー推定においては ,瞬時の推定精度の悪
的な SARとしては.RADARSAT-l&2
衛星 /
SAR
.
ERS-l&2衛星/AMI. ENVISAT衛星/ASAR.
PALSAR
. TerraSAR-X衛星 /SAR
ALOS衛星 /
さをカバーできる可能性がある
等がある.
~6 時間と衛星観測よりは良いため.年間の風力
客観解析値の風速は.地表面 OOm高度)以外
散乱計との違いは,センサーが実開口ではなく
は指定気圧面で得られるため,衛星観測値同様,
合成開口である点にあり。 SARは得られる画像
風車ハブ高度の風速推定には何らかの高度補正
の杢問解像度が最小で、数十 m と非常に高いのが特
(あるいは補間)が必要となる.これまでには.
徴である
北海の気象観測マストで求められた高度補正式を
に威力を発揮する
用いて気象庁メソ客観解析値を高度補正して 6
0
デルよりは良いが.風況が複雑な海域においては
それ故,沿岸海域の複雑な風況の推定
風速の推定精度はメソ気象モ
m高度の風況マ ップが作成された例 5 がある
2m/sを超える場合もある i1。散乱計や放射計の
衛星観測値と比較した先行研究 61 によれば。メ
ように風速値としてのプロダクトが公開されてい
ソ客観解析値には海岸線に近付ーく程風速が弱くな
る訳ではないので. SAR画像のデジタル値から
頃向カfあることカfわカ、っている
るf
風速値への変換はユーザー側で行う必要がある.
2.
3 メソ気象モデル
表 1中の第 3手J
I目はメソ気象モデルによる数値
また風速への変換の際に風向の情報が必要となる
ため,外部入力として風向情報を用意しておかな
シミュレーションである.メソ気象モデルとは.
ければならない 8
さらに.特定海域を含むシー
数百 m~ 数十 km の空間解像度で、メソスケール(数
ン数が限られるため ,瞬時としての風速場は正し
km~ 千 km) の気象現象をシミュレートする数値流
くても.年聞を通じた風力エネルギー賦存量の推
体力学モデルである.基礎となる力学部分は ,運
定においては誤差が大きくなる可能性がある
動方程式,連続の式,熱ブJ
学の式.気体の状態方
こう したことから,合成開口レーダーを単独で風
91
ー
程式等からなり,それに加えて雲微物理過程や積
)
Jエネルギー賦存量の推定に用いるのではなく.
雲過程.放射過程,大気境界層過程.地表面過程等
専らメソ気象モデルの検証 -改善に用いるという
のあらゆる大気物理過程が組み込まれている
試みもなされている 1
01
ー
メソ気象モデルを風況シミュレーションに用い
る場合には,任意の領域.期間.解像度等を自由
に設定できるという大きなメリットがある.その
3
. メソ気象モデルによる海上風推定
3
.
1 手法としての有望性と問題点
ため,陸上地形や海岸形状の影響を大きく受ける
前章から推察されるように.現時点において沿
沿岸海域の風況を高い時間空閥解像度で推定した
い場合には特に威力を発揮する.時間の出力間隔
岸海域の海上風況を推定する場合には ,メソ気象
モデルを朋いる手法が最も有望で、あると考えられ
が任意であるため.例えば 1時間間隔で風速値を
る 実際に .これまでに行われている日本沿岸の
出力すれば現場海域の風速口変化をも考慮するこ
洋上風力エネルギー賦存量の推定においては数多
とができ
れば.風車ハブ高度の風速値も直接的に得ること
くの研究 ・報告例においてメソ気象モデルのシ
ミュレーション結果が用いられている 11-14)ー
が可能になる.ただ.本手法はあくまで数値シミュ
しかしここで忘れてはならないのは,メソ気
レーションであ るため,推定精度の面では衛星観
象モデルの海上風速推定精度は未だ十分に検証さ
測値には及ばず, また取扱いにおいて専門的な技
れたものではない点である
術が必要となる等の欠点がある
る海上の現場観測値は陸上に比べて圧倒的に不足
2
.
4 合成開口レーダー
表 1中の第 4J
I
J日に示した合成開口レーダー
るのは容易ではない
(SAR)による風速推定は,極軌道衛星からマイク
歩によって近年メソ気象モデルの長期計算が比較
また鉛直層を大気境界層下部で密に取
モデルの検証に使え
しているため,計算された海上風の精度を検証す
-552一
それ故.コンピュータの進
Vo
.
l
4
1 N
o
.9
25
(
2012)
的容易に行えるようにはなってきてはいるが.出
ことである
白浜や伊勢湾で、はバイアス(年平均
RMSE
力される風速値を鵜呑みにしてはならない実際,
風速誤差) は平均風速の:t1O%近くあり.
衛星観測との比較においてもメソ気象モデルから
は40%を超えている 一方で、.北海沿岸で、はバイア
出力される年平均風速場は巨視的に見て異なる部
スは:t 5%以内.
分が数多くある 15)
いる.この理由としてはまず.北海沿岸の場合,
RMSEは20%以 下 に 収 ま っ て
3.
2 海上風速推定精度
地形が平坦で風況も比較的単純であるために,メ
ソ気象モデルによる気象場の再現性が高いことが
そうした現状を踏まえ重要なことは.数少ない
海上の現場観測値を使ってメソ気象モデルの風速
考えられる
推定精度の検証例を丁寧に積み上げていくことで
は高層気象観測網が密なことから.初期値 ・境界
ある .表 2及 び図 2は著者らが過去に行ったメソ
値 ・同化値としてメソ気象モデルに入力する客観
気象モデルによる海上風速推定精度をまとめたも
解析値の精度がそもそも高いということがある
のである 15叫
ここでは
白浜海洋鉄塔(和歌山
MT局海洋鉄塔
もうひとつの理由としては,欧州、│で
風力エネルギー密度が風速の
3乗に比例するこ
(
愛知県). KEOブ
とを考えれば. 日本沿岸において年平均風速の誤
ornsRev洋上 W F気象マス
イ(関東南東沖). H
差が:t1O%を超えるという事実は,風力エネル
ト(デンマーク ).Egmond aan Zee洋上 W F気
ギー賦存量 (
発電量)の推定誤差が 3割近くある
.2.
3気象マスト (ド
象マスト(オランダ). FINO-1
ことを意味する.洋上風力開発の風況調査として
県).伊勢湾
イツ )で検証された計算結果を比較している 図 2
は明らかに不十分である
からわかることは,メソ気象モデルを使って同
度 を 目 標 と す べ き で あ ろ う か ? 再 び図
では一体どの程度の精
2に戻
様なシミュレーションを行ったとしても. 日本沿
か 地 形 影 響 の 少 な い 太 平 洋 上 に 位 置 す る KEO
岸と欧州北海沿岸では大きく精度が異なるという
ブイでの精度に注目してみる
KEOのバイアス
表 2 メソ気象モデルによる海上風速推定精度に関する研究例
離岸距離観測高度モデル検証期間 年平均風速
(
m/
s
)
観測点
白浜海洋鉄塔 (
和歌山県)
2k
m
23m
4k
m
18m
伊 勢 湾 MT局海洋鉄塔 (
愛知県)
関東南東沖)
KEOプイ(
7m
5k
m以上
デンマーク )
2
0
k
m 1
5-62m
H
o
r
n
sRev気象マスト (
0 80m
FINO-1気象マスト (ドイツ )
4
5
k
m 4
Egmonda
a
nZ
e
e気象マスト (
オランダ)
1
5
k
m
70m
.2
.3気象マスト (ドイツ )
3
0-7
0
k
m 1 m付近
FINO-l
∞
同
∞
WRF
MM5
WRF
MM5
WRF
MM5
WRF
1
0
5
心6
心3
1月
l年
年
1'
l年
%)
平問風速で規格化した RMSE (
10
15
1
0
20
0
.
6
0
.
9 0
.
0
0
.
5
1
.
0
30
局海洋鉄塔(愛知県)
伊鰐湾 MT
KEOブイ (
関 東 南 東 沖)
H
o
r
n
sRev気象マスト (
デンマ -7)
FINO-l気象マスト (
ドイツ)
EgmondaanZ
ee気象マス ト(
オランラf)
FINO-l気象マスト (
ドイツ)
FI
NO-2気象マスト(ドイツ)
FJ
NO-3気象マスト (
ドイツ)
0
.
0
0.
3
バイアス (m/
s)
1
.
5
RMSE(m/s)
図 2 表 2に示された既存研究かう得うれたメソ気象モデルの海上風速推定精度
(
左)
パイアス
(
右)
二乗平均平方根誤差
-5
5
3一
1
6)
1
7)
1
5)
1
7)
1
8)
1
9)
2
0)
5
.
5
.
9
9
8
.
7
9
1
0.
35
9
.
36
9
.
4
7
約1
0
白浜海洋絵 I
普(
和歌山県)
{
)
.
9
昏号
∞
l年
l年
l年
平均風速で規格化したバイアス(¥)
1
5
参考文献
(
RMSE)
.
40
50
60
2
6
環境技術
は -3%程度。 RMSEは30%代前半である
客
わされる大スケールの気象場の変化傾向から外れ
観解析値の質の問題により北海沿岸に比べると
てしまわないように.大スケールの変化傾向を計
RMSEは悪いものの.バイアスに関しては遜色
算値の中に取り込む手法である
汎用的なメソ気
ない.風力エネルギー賦存 l
i
iの推定においては
象モデルである MM5
や WRFでは.時開発展の
RMSEよりもバイアスの万が重要であることか
方程式の中に人工的な項を付加することにより客
ら16
今後当面は, 日本の沿岸海域においても欧
観解析値の変化傾向を格子点毎に取り込む手法が
州並みのバイアス:t 5 %以内が一つの達成日標
実装されている.一般に 4次元データ同化をかけ
になるであろう
風力エネルギー!依存量で言えば
ると風速の推定精度は上がる一方で、.高周波の
変動成分が平滑化されてしまう傾向がある 231 ま
およそ:t15%以内の推定精度である
た,空間解像度の低い客観解析値を 4次元データ
3
.
3 技術的課題
日本沿岸においてメソ気象モデルの海上風計算
同化に用いた場合.メソ気象モデルでは海上格子
精度が悪い理由として.拝観解析イ直の質の問題以
であっても客観解析値側が陸上格子となっている
外にも.いくつかの問題が既に見つかっている .
場合があり ,そのような場合には計算風速が極端
まず lつ闘は.メソ気象モデルの下面境界条件と
に弱められてしまう.その典型例が, 図 2に示さ
円本付近に
0%を超える大きな負の
れる伊勢湾 MT局の -1
海面上での大気安定
バイアスである. 4次元データ同化のかけ方につ
して外部入力される j
毎回出度である
は暖流や寒流が流れており
度は大きく異なる
地表面粗度が風速の鉛直プロ
いては今後検討の余地が十分にある.
4つ甘の問題は,海面上の風速の鉛直プロファ
ファイルに大きく影響する陸面と違い。海面上で
は大気安定度が鉛直プロファイルを支配する大き
な要因となる
海面温度の誤差が 2tあると 10m
イルに関するものである
鉛直プロファイルは大
気安定度に依存して大きく変化するが.気象マス
高度の風力エネルギー帝度の推定誤差は約 10%に
トの観測データで検証してみると.メソ気象モデ
なり. 4tでは約 25%となる 21
面温度は変わりやすいため実現は容易ではない
ルで計算された鉛直プロファイルの再現性は卜分
とは 言い難い 18.24 全体的な傾向として,接地境
が.メソ 気象モデルによる海上風速推定精度を向
界層│村の鉛直シアーが過小評価される傾向があ
海岸線近傍の海
上させるためには.高精度な海面温度の入力が必
る
須の方向性となる.
接的に求めることができるので,風力エネルギー
メソ気象モデルで、は風車ハブ高度の風速を直
2つ日は.陸上地形の影響t
である メソ気象モ
デル WRFによって計算された風速を気象庁ウイ
賦存註の推定という視点からすれば。この問題は
ンドプロファイラの観測風速を mいて検証した研
高
度
}
!
f
t
l
速しか得られない衛星観測値やブイ等の観
究221 に よ れ ば . 検 証 し た 全 て の 地 点 に お い て
測値を高度補正する際には鉛直プロファイルが必
WRF計算風速が大気境界層内で過大になる傾向
があることが明らかになった • i
.
f
I
J
:
N
!
三線に近い白浜
海洋鉄塔で風速が +10%以上も過大評価される
要となるし.また近年大型化している風車プレー
二次的な問題であるかもしれない. しかし 10m
ドの下端から上端までの風速情報が必要な場合に
は.メソ気象モデルから計算される鉛直プロファ
(
図 2)のは この事実が関連しているものと考え
イルに頼らざるを得ないしたがって,今後一屑.
られる
海上気象マストの観測値を用いて,風速鉛直プロ
この過大評価傾向は大気境界層スキーム
の選択に依存せず, また海から吹く胤に対しては
ファイルの高精度化に努めていく必要がある。
緩和されることから.モデル内の陸上地形条件に
何らかの原因があるものと考えられる
4.お わ り に
今後.地
本稿では.外洋海域と沿岸海域での洋上風力エ
表面粗度の検討を行い。改善につなげていく必要
ネルギー賦存量(海上風況)の推定手法について
性がある.
3つ目は. 4次元データ同化の問題である. 4
述べてきた
次元データ同化とは . メソ気象モデル内で計算さ
乱計・放射計,客観解析値を組み合わせることで
れた気象場の変化傾向が.手写観解析値によって表
今後.精度の高い手法が確立することが見込まれ
-554ー
外洋に関しては.複数の衛星搭載散
Vo
.
l
41 N
o
.9
る
2
7
(
2
01
2
)
一方沿岸海域に関しては , メソ気象モデルを
1
0)丹羽亮介,大津純夫.的田進.香西克俊
竹山優子,合
成関口レーダー画像を用いたメソ気象モデル WRFによ
1回 風 工 学 シ ン ポ 論 文 集 2
0
3
る沿岸海上風速分布.第 2
用いて数値シミュレーションを行う方法が最も有
望であると考えられる
衛星観測に比べれば推定
精度は劣るものの,高時間空間解像度の風況デー
タを多量にかつ均質に得られる点は,風力エネル
ギー賦存量の推定においてその欠点を補って余り
ある. しかしその一方で.メソ気象モデルの海上
風計算精度が明らかになるにつれ.多くの技術的
課題が残されていることも明らかになってきた
今後はこうした課題をひとつひとつ克服し,年平
均 風 速 で :!:5%以 内 . 年 平 均 風 力 エ ネ ル ギ ー 密
5%以 内 を 一 つ の 目 標 に し て . メ ソ 気 象
度で:!:1
モデルによる数値シミュレーション手法の改善を
目指していく必要があると考えている.
参考文献
1)大 i
事輝夫.海上風推定手法に関する研究レビュー
同風力エネ利用シンポ予稿集 21
5
21
8.
2 5
∞
第2
7
2)鳥 羽 良 明 。 大 気
海洋の相互作用. 東京大学 l
H版
3
3
6
p
.1
9
9
6
.
3)Ohsawa.T
.
.A
.K
a
t
a
o
k
a
.D
. Heinemann. B
.L
a
n
g
e
.A
P
e
n
a
.C.B
. Hasager:D
e
r
i
v
a
t
i
o
nanda
p
p
l
i
c
a
t
i
o
no
fan
e
m
p
i
r
i
c
a
le
q
u
a
t
i
o
nt
oe
s
t
i
m
a
l
eh
l
l
b
h
e
i
g
h
twinds
p
e
e
d
41
froms
e
as
l
l
r
f
a
c
ewinds
p
e
e
d
.P
r
o
c
.o
fEOW2
0
0
7
.P0.
8p.2 7
4)蛍内伸樹.大 t
事輝夫.嶋田進 香西克俊。 Ql
Ii
kSCAT海
∞
兄データベースの作成.風 }
J
上風データに基づく海上風 i
エネルギ一。 3
5.(
3)
.1
6
.2
0
1
1
5)大 i
事輝夫。片岡顕 D
e
t
l
e
vHeinemann 日本列島周辺
海域における風車ハプ高度での年苧均風速分布に│測する
8阿 風 力 エ ネ 利 用 シ ン ポ 予 稿 集 3
9
3
3
9
6
研究.者'12
∞
2 6
6)大浮輝夫.:.lli内伸樹.嶋田進.香西克俊
円本周辺海域
の洋上j
鼠 況 マ ッ プ に 関 す る 研 究 風J
Jエネルギー .33.
(
2)
∞
9
2
9
7
.2 9
.
.T
.Ohsawa.S
.S
h
i
m
a
d
a
.Y
.Takeyama.C
.B
7)K
o
z
a
i
.K
H
a
s
a
g
e
r
.M.Badger:Comparisono
fE
n
v
i
s
a
t ASARestimated offshore wind r
e
s
O
l
l
r
c
e maps around
Shirahamaw
i
t
ht
h
o
s
efromm
e
s
o
s
c
a
l
em
o
d
e
l
sMM5and
WRF.P
r
o
c
.o
fEOW2 9
.P
O
.
1
31
.7
p
.2 9
.Ohsawa.K
.K
o
z
a
i
.C
.B
.H
a
s
a
g
e
r
.M
8)Takeyama.Y
.
.T
Badger E
f
f
e
c
t
i
v
e
n
e
s
so
fWRF wind d
i
r
e
c
t
i
o
nf
o
r
r
e
t
r
i
e
v
i
n
gc
o
a
s
t
a
ls
e
as
u
r
f
a
c
e wind from S
y
n
t
h
e
t
i
c
A
p
e
r
t
u
r
eR
a
d
a
r
.WindE
n
e
r
g
y
.2
01
2
.(
i
np
r
e
s
s)
9)K
o
z
a
i
.K
.
.T
. Ohsawa. R.T
a
k
a
h
a
s
h
i
.Y
. Takeyama
E
s
t
i
m
a
t
i
o
n method f
o
ro
f
f
s
h
o
r
e wind energy u
s
i
n
g
s
y
n
t
h
e
t
i
ca
p
e
r
t
u
r
er
a
d
a
randW
e
i
b
l
l
l
lp
a
r
a
m
e
t
e
r
s
.P
r
o
c
4
1
9
4
2
3
.2 9
o
f1
9th ISOPE.
∞
∞
∞
2
0
8.
2
0
1
0
1
1)嶋田進,大滞輝夫,橋本篤,深尾一仁 安 田 孝 志 伊 勢
湾における洋上風力発電の可能性に附する検討 風 }
Jエ
ネルギー 2
9.(
2)
.9
2
9
7
.2 5
1
2
) 山口敦.石原孟.メソスケールモデルと地理情報システ
ムを利用した関東地 }
J沿岸域における洋上風 }
Jエネルギ
ー賦存訟の評価 日本風工学会論文集 1
11
.
6
3
7
5
.2 7
忠実現に
1
3)比江島慎二 .瀬戸内海洋上ウインドファーム構 f
向けての風 }
J発電賦存長;の試算. l
r本風工学会論文集
∞
∞
∞
1
1
8.1
9
.
2 9
2年度再生可能エネルギー導入ポテンシャ
1
4)環境省.平成 2
ル調査報告書 2
8
7
p
.2
0
1
1
1
5)Ohsawa. T
.
.N
.T
s
u
b
o
l
l
c
h
i
.R
. Niwa.]
. Tanemoto.S
Shimada. Y
. Takeyama:C
h
a
r
a
c
t
e
r
i
s
t
i
c
so
fo
f
f
s
h
o
r
e
windspeeds
i
m
l
l
l
a
t
e
dw
i
t
h WRFi
nt
h
es
e
a
sa
r
o
l
l
n
d
J
a
p
a
n
.P
r
o
c.
o
fEOW2
0
11
.P0.
37
4
.9
p
.2
0
1
1
.Ohsawa:Accuracyandc
h
a
r
a
c
t
e
r
i
s
t
i
c
so
f
1
6
)S
h
i
m
a
d
a
.S
.
.T
.7.2
1o
f
f
s
h
o
r
ewinds
p
e
e
d
ss
i
m
l
l
l
a
t
e
dbyWRF.SOLA
2
4
.
2
0
1
1
1
7
)O
hsawa.T
.
.A
.H
a
s
h
i
m
o
t
o
.S
.S
h
i
m
a
d
a
.]
.Y
o
s
h
i
n
o
.T
.De
P
a
l
l
s
.D
.Heinemann.B
.Lange:E
v
a
l
u
a
t
i
o
no
fo
f
f
s
h
o
r
e
winds
i
m
u
l
a
t
i
o
n
sw
i
t
hMM5i
nt
h
ej
a
p
a
n
e
s
eandD
a
n
i
s
h
c
o
a
s
t
a
lw
a
t
e
r
s
.P
r
o
c
.o
fEWEC2 7
.BL3.
l0
3
.9p2 7
1
8)嶋 田 進 大 津 純 犬 古 野 純 . 小 林 智 尚 G
.S
t
e
i
n
f
e
l
d
.]
.
Tambke.D
.Heinemann 洋上気象観測鉄塔 FINOIにお
けるメソ気象モデル WRFの風速鉛 l
直プロファイルの精
度 検 証 . 太 陽iI風 力 エ ネ ル ギ ー 講 演 論 文 集 . 21
9
2
2
2
.
2
0
1
1
羊l
二j
孔}
J
1
9
)竹本兵大,欧州での実績分析に基づくrI本での i
∞
守
∞
発電導入可能性の検討.神戸大学大学院海事科学研究科
修上論文 6
1
p
.2
0
1
0
2
0)Ohsawa.T
.
.S
.S
h
i
m
a
d
a
.D.Heinemann.G
.S
t
e
i
n
f
e
l
d
.M
.Bremen:O
f
f
s
h
o
r
ewindr
e
s
o
u
r
c
e
S
c
h
m
i
d
t
.]
.Tambke.L
mapsi
nGermanc
o
a
s
t
a
l watersbasedonmesoscale
models
i
m
u
l
a
t
i
o
n
.WindEnergy.
2
0
1
2
.(
i
np
r
e
p
a
r
a
t
i
o
n
)
2
1)Shimada.S
.
.T
.Ohsawa.G
.S
t
e
i
n
f
e
l
d
.D
.Heinemann:
E
f
f
e
c
t
so
faccuracyo
fs
e
as
u
r
f
a
c
e temperatureon
o
f
f
s
h
o
r
ewind r
e
s
O
l
l
r
c
ea
s
s
e
s
s
m
e
n
tl
Is
i
n
gam
e
s
o
s
c
a
l
e
.
lj
O
l
l
r
n
a
lo
fA
p
p
l
i
e
dM
e
t
e
o
r
o
l
o
g
yandC
l
i
m
a
t
o
l
o
g
y
mode
2
0
11
.(
s
l
l
b
m
i
t
t
e
d)
2
2)Shimada. S
.
.T
. Ohsawa. S
. Chikaoka. K
. Kozai
Accuracyo
ft
h
ewi
nds
p
e
e
dp
r
o
f
i
l
ei
nt
h
el
o
w
e
rPBLa
s
s
i
m
l
l
l
a
t
e
dbyt
h
eWRFmode
.
lSOLA
.7.1
0
9
1
1
2
.2
0
1
1
.
.S
.S
h
i
m
a
d
a
.]
.Tambke.B
.Lange:A s
t
l
l
d
y
2
3)Ohsawa.T
on e
f
f
e
c
t
i
v
el
Is
ageo
fmesoscalemodel f
o
ra
c
c
u
r
a
t
e
o
f
f
s
h
o
r
ewinds
i
m
u
l
a
t
i
o
n
.P
r
o
c
.o
fEOW2
0
0
9
.P
O
.1
42
I
O
p
.
2 9
2
4)大 滞 輝 夫 安 田 孝 志 洋 上 ウ イ ン ド フ ァ ー ム HornsRev
におけるメソ気象モデル MM5の風況計算精度,第 2
6回
風力エネ利用シンポ予稿集. 2
9
5
2
9
8
.2 4
-555一
∞
∞