資料3 農村活性化の推進 Ⅰ 農村の現状 Ⅱ 現行ビジョンにおける施策の推進状況 Ⅲ 集落活性化のケーススタディ Ⅰ 農村の現状 ①県下の農業集落は 3,747集落ある。そのうち、傾斜地など生産条件が不利である集 落(中山間直接支払対象集落)は859集落(集落数割合23%)あり、阪神間から比 較的遠い地域に多い。 ②集落の規模は、この10年、全体として小規模化が進行している。(75戸以上の比較 的大規模な集落の数が減少し、一方で、小規模な集落数は増加) 農業集落数 3,747 集落 農業集落数 (H22 農業センサス) 中山間直払 対象集落数 859 集落 地域別の中山間地域等直接支払 制度対象集落数(楽農生活室調べ) 農家戸数別集落数の推移 (H12・H22 農業センサス) 1 ③ 集落の経営耕地面積が10ha未満の小規模の集落が、全集落の半数近くに及んでお り、単独集落では、集落営農を組織化するスケールメリットが得にくい。 ④高齢化率(65歳以上の割合)は、この10年で各地域とも5ポイント以上上昇している ⑤通勤圏内である大都市から1時間圏内が1240集落、都市農村交流が可能な大都市か ら2時間圏内が2792集落ある。 全集落数 3,747 集落 経営耕地面積別集落数 (H22 農業センサス) 地域別高齢化率(65 歳以上) の推移(H12・H22 国勢調査 ) 大都市までの移動時間別 集落数(楽農生活調べ) 2 ⑥集落内の寄合回数は、月1回未満である集落が半数近く(1433集落)あり、うち開催 していない集落も257集落あるなど集落の活力低下により、集落営農の組織化数は、 全県の約1/3にとどまっている ⑦主業農家(農家所得の50%以上が農業所得)が存在しない集落が大半を占める状況 にあるなど、農業の担い手が零細な兼業農家である集落が多い。 寄合回数別集落数 (H22 農業センサス) 集落営農組織化集落数 (農業経営課調べ) 集落内の主業農家人数の分布状況 (H22 農業センサス) 3 Ⅱ 現行ビジョンにおける施策の推進状況 ビジョン策定時の状況 1 集落営農組織化集落数は、目標に対し順調 に増加、新規就農者も概ね計画どおり進捗 2 大規模集落数が減少する一方で、小規模集 落が増加し、集落の規模縮小が進展 3 農業従事を主とする主業農家が存在しない 集落数は、ほぼ横ばいで推移 4 農村人口は減少傾向にあり、農村における 高齢化は着実に進行 5 特に地理的条件が悪く、農業の生産条件が 不利な中山間地域は、過疎化や高齢化が 著しく、集落機能が低下 めざす姿 これまでの推進方向 1 担い手への団地化した農地の利用集積が進 み、担い手の農業経営が安定している 2 集落営農組織が農業経営を通じて地域農業の 活性化や農地保全に取り組んでいる 3 耕作放棄地対策等により、中山間地をはじめと する農山漁村の農地が適切に保全されている 4 集落間の連携や都市と農村の交流などが進 み、活力の低下した集落が活性化している H12 H17 【産業施策】 1 集落営農組織や大規模個別経営体など地域農業を 牽引する「中心経営体」を育成 2 農産物加工、女性起業の支援等を通じた6次産業化 や特産品づくりなど高付加価値農業を推進 【地域施策】 3 農村生活に必要な生活排水処理施設や集落道路等 のインフラを整備 4 集落活動を牽引するリーダーの育成 5 地域ぐるみでの農地や水路の維持管理や農村環境 の保全活動を推進 6 中山間地域における農業生産条件の不利を補正し、 農業生産力の維持・増大を推進 H22 H25 集落営農組織化数 − 617 973 1040 新規就農者数 − 62人 187人 291人 143万人 139万人 131万人 - 20.7% 23.3% 26.8% - 346 - 469 - 大規模集落数(農家戸数100戸以上) 1123 - 1084 - 主業農家が存在しない集落数 1620 1618 1595 - ※1 農村人口 指 ※2 標 農村の高齢化率 小規模集落数(農家戸数25戸未満) ※1 国勢調査における人口集中地区(DID)以外の地区を農村とした ※2 農村人口のうち、65歳以上の割合 4 【講じた措置】 H23 H24 H25 H26 【地域農業を牽引する「中心経営体」の育成】 企業的経営感覚に富んだ農業経営体の育成(ひょうごMBA塾)(H22∼26) 新規就農希望者の先進農家等のもとで実践的な研修実施(H22∼) 農地利用集積円滑化事業による農地等の利用集積(H21∼) 産 人・農地プラン作成支援(H24∼) 業 農地中間管理事業(H26∼) 施 策 【農業の高度化】 「農業・農村」と「市場・食品・加工・販売・消費」を結びつけ、県下各地に特色ある産地・品目を育成(H24∼) 6次産業化を支援する専門家派遣(H26∼) 農業者等と異業種の連携による新商品等の開発支援(H26∼) 女性農業者による加工品開発・販路拡大などの取組を支援 【農村の定住条件(インフラ)整備】 農業集落における生活排水処理施設等を整備 集落道路、集会場、特産品加工施設等の農村生活環境の整備支援 【地域の主体的な取組の推進】 地域資源を生かした取組を実施できるリーダー人材の育成(H23∼) 地 農業者等の組織が農地維持のために行う地域活動や、地域住民を含む組織が行う農村地域資源の質的向上を図る共同活動を支援(H19∼) 域 【多様な主体による活性化支援】 施 農村ボランティア事務局を設置し、農作業等支援を行う農村ボランティアを育成し、ふるさとむら活動を支援(H9∼) 策 都市農村交流に取り組む農業者グループや企業等の活動費支援(H15∼) 多自然地域での地域住民、NPO等による都市農村交流拠点施設整備を支援(H17∼H25) 地域おこし協力隊(都市住民など地域外の人材を地域社会の新たな担い手として受け入れ、地域力を維持強化)(H21∼) 地域資源を生かした食・農業体験交流等の促進(H26∼) 【中山間地域等への特別対策】 中山間地域等直接支払交付金制度(H12∼) 5 農 村 活 性 化 対 策 の 考 え 方 【産業政策】 1 地域農業を牽引する「中心経営体」の育成 認定農業者等の経営体の育成 【地域政策】 3 農村の定住条件(インフラ)整備 生活排水処理施設や集落道路等、農村生活環境の整備 集落営農等による地域営農活動の維持・拡大 農業経営を担う法人の育成・支援 新規就農者の育成・確保 4 地域の主体的な取組の推進 集落活動を牽引するリーダーの育成 多様な主体の参画による集落活動の促進 等 人・農地プランの作成推進 農地中間管理機構による農地の集積・集約化 等 5 多様な主体による活性化支援 農村ボランティアの育成 2 農業の高度化 農村と企業等との連携促進 農産物の特産品化と生産力強化 地域おこし協力隊による支援 等 6次産業化の促進 6 中山間地域等への特別対策 女性起業活動の促進 等 交付金による農業生産条件の不利性の補正 農業と農村の持続的な発展 ○農業と農業に関連した地域ビジネスの展開 (農村の所得向上、雇用の創出 ⇒ 青壮年層の定住化) ○農村コミュニティの活性化・活力の維持 ○良質な食料の安定供給 ○多面的機能の十分な発揮 6 1 地域農業を牽引する「中心経営体」の育成 [講じた主な施策] ① 認定農業者等の経営体の育成 ② 集落営農等による地域営農活動の維持・拡大 ③ 農業経営を担う法人の育成・支援 ④ 新規就農者の育成・確保 ⑤ 人・農地プランの作成推進(H24∼) ⑥ 農地中間管理機構による農地の集積・集約化(H26∼) 等 ① 認定農業者等の経営体の育成 ア 新規就農者をはじめ意欲ある農業者を認定農業者へ誘導 イ 認定農業者の経営改善ソフトを用いた自己チェック、中小企業診断士等による経営改善の 支援、6次産業化などによる所得の向上等の支援を実施 ② 集落営農等による地域営農活動の維持・拡大 小規模兼業農家が多い本県農業の特性を踏まえ、兼業農家や定年退職者が参画し、地域ぐる みで集落の守り手となる集落営農の組織化を推進 7 ③ 農業経営を担う法人の育成・支援 ア 認定農業者に対しては、専門家による経営診断や指導・助言を受ける取組を推進 イ 集落営農組織に対しては、法人設立の手続きや課題整理等の個別指導など、円滑な法人化 に向けた支援を実施 ④ 新規就農者の育成・支援 ア 先進農家・農業法人等のもとでの技術・経営等の研修支援 イ 地域の農業経営士等による総合的なサポート活動による定着支援 ウ 若手農業者と認定農業者による新たな農業ビジネスプランの取組支援 エ 早期の経営安定や生活安定のための経費支援 ⑤ 人・農地プランの作成推進 ○ 人・農地プランの地域別カバー率 (平成 26 年 10 月末現在) 集落・地域の関係者による徹底した話合いにより、 今後の中心となる経営体やその経営体にどのよ うにして農地を集めるかなど、中心となる経営体 とそれ以外の農業者を含めた地域農業のあり方 等を定めた「人・農地プラン」の作成を推進 策定数 神戸 阪神 東播磨 北播磨 中播磨 西播磨 但馬 丹波 淡路 合計 36 6 15 115 35 34 19 8 44 312 策定 集落数 176 8 97 118 54 89 84 226 46 898 農地のある 全農業集落数 182 176 199 501 350 585 733 478 473 3,677 カバー率 97% 5% 49% 24% 15% 15% 11% 47% 10% 24% 8 ⑥ 農地中間管理機構※による農地の集積・集約化 ア 農地の集積・集約を推進するため、平成 26 年4月 に兵庫みどり公社を「農地中間管理機構」に指定 イ 4月と6月に借受希望者を募集し、順次、農地の 貸付を実施 ※農地中間管理事業推進法に基づき、農地所有者と農業 経営体の間に立ち、農地の借受け、貸付けを行う組織 [取組の評価] 【農地中間管理事業の取組状況】 1 農地借受希望者の募集(4月及び6月) (1)応募経営体数:336 経営体 (2)借受希望面積:約 8,400ha 2 借受・貸付の状況(12 月現在) (1)借受面積:273.9ha (2)貸付面積:273.9ha (3)マッチング推進中:約 1,200ha ① 平成 24 年度から開始した人・農地プラン作成の進捗は、現状 24%の集落カバー率にとど まる ② 平成 25 年 3 月末までに 1040 の集落営農が組織化されているが、高齢化やリーダーの不足 により伸びが鈍化しており、組織化数の目標に向けて加速化が必要 ③ 既存の集落営農間の連携による広域化が5件誕生しており、小規模集落が他の集落営農に 参加する事例も見られた ④ 「中心経営体」の経営面積は増加傾向にあるが、農地が数カ所に分散している状況 ⑤ 自ら原材料を調達しようとする食品企業や、雇用調整を図る建設業など農業に参入する企 業が増加傾向にある ⑥ 新規就農者は、平成 24 年から増加傾向にある。毎年約 300 人が就農しており、雇用によ る就農者が大幅に増加している 9 2 農業の高度化 [講じた主な施策] ① 農産物の特産品化と生産力強化 ② 6次産業化の促進 ③ 女性起業活動の促進 ① 農産物の特産品化と生産力強化 県下 13 箇所の農業改良普及センターが、それぞれ中心となって、各地域の農業・農村の将来 像を描いてテーマを設定し、「農業・農村」と「市場・食品加工・販売・消費」を強く結び つける仕組みをつくり、県下各地に特色ある産地・品目を育成 【取組事例】 企業と連携した「もも」等の特産品化と地域活性化(H24∼)(光都農業改良普及センター) 佐用地域において、小規模集落と企業との連携による、もも等の植栽をはじめとする援農や交流、 ももパウダー等の加工品開発を進めている。現在、豊福、乙大木谷地区で取組が先行しているが、 これをモデルとし、今後、オーナー制や生産物の買取りのしくみ等を含む新たな地域ビジネスへの 発展をめざしている。 10 ② 6次産業化の促進 ア 6次産業化の指導相談窓口をひょうごの美味し風土拡大協議会に設置 イ 各分野の専門家である「6次産業化プランナ−」等を派遣し、計画構想段階から認定後の フォローアップまで総合的な支援 ウ 事業計画の認定を目指す農林漁業者に対して、新商品の開発や新サービスの提供等に係る 経費の一部を支援 ③ 女性起業活動の促進 加工品開発や販路拡大などにより、女性農業者の起業化を推進するため、以下の取組を実施 ア 農林水産物加工品のコンクールの開催、県域の研修会開催等 イ 各農業改良普及センターにおいて、商品開発や経営計画樹立に関する相談活動、加工技術 に関する研修会の開催、商談会への参加支援等 11 [取組の評価] ① 特産品づくりでは、食品製造業者と業務・資本提携し、6次産業化に発展した事例もある が、実需者との取引が単発に終わった事例や、産地全体へと取組が拡大していない事例が あり、今後、地域での面的な広がりと定着化が必要 ② 「六次産業化・地産地消法」に基づく計画認定については、現在 93 の計画が認定されて いるが、集落営農組織での取組は 2 件に止まっている ③ 女性による起業件数は平成 25 年度末で 314 件となり、年々増加しているが、売上 300 万 円未満の起業者が 45%を占めており、売上の向上や取組継続への支援が必要 12 3 農村の定住条件(インフラ)整備 [講じた主な施策] 生活排水処理施設や集落道路等、農村における生活環境を整備 農業集落排水処理率の推移 [取組の評価] ① 生活排水処理施設は既に 100%整備済であり、現在は、その改修・更新を進めている状況 ② 農村集落の安全・安心や活性化をより一層進めるため、今後とも集落道路、防火水槽、集 会場等の整備を推進 13 4 集落活動の活性化支援 [講じた主な施策] ① 集落活動を牽引するリーダーの育成 ② 多様な主体の参加による集落活動の促進 等 ① 集落活動を牽引するリーダーの育成 地域の活性化に関する講義や現場でのフィールドワーク等を通じて、地域資源を生かした取 組を実施できるリーダー人材を育成 科 目 専門科目 先進地視察 講 座 内 容 ・ 交流による多自然地域の活性化 ・ 農産物直売を通した地域活性化 ・ 地産地消によるメニュー開発 ・ 6次産業化による集落活性化 ・ 集落ビジネス ・ 地域再生の現場 ・ 直売所視察、フィールドワーク、意見交換 ② 多様な主体の参加による集落活動の促進 非農家等を含めた地域ぐるみによる農地・水路等の維持管理や農村環境保全活動を推進する ため、多面的機能支払交付金を活用し、活動組織向けの研修会やフォーラムの開催、ホーム ページ等による情報発信等を実施 14 [取組の評価] ① 育成した地域リーダーが、生産意欲を失った生産者をまとめ上げ、都市部アンテナショッ プへ農産物を出品した事例や、研修により得た知識を生かし、地域の特産品を利用して新 メニューを開発した事例などが誕生している ② 集落へのアンケート調査の結果によると、非農家の集落活動への参加によって、非農家の 農業に対する理解や地域の農業を地域で守るという意識の醸成等につながっていること がわかり、また、集落のコミュニティが向上したとの回答が半数近く見られた ③ 一方で、過疎化・高齢化が進む中山間地域等においては、活動リーダーの不在等により多 面的機能支払交付金を活用できていない集落もある 15 5 外部力導入による活性化支援 [講じた主な施策] ① 農村ボランティアの育成 ② 農村と企業等との連携促進 ③ 地域おこし協力隊の派遣(総務省・各市町) 等 ① 農村ボランティアの育成 楽農生活センターにふるさとむら※の活動を支援する事務局を設置し、農村ボランティアを希 望する都市住民の募集、登録をするとともに、ボランティアの研修会を開催 ※農村ボランティアを受け入れて活性化に取り組む集落等 ② 農村と企業等との連携促進の取組(H23∼) 中山間地域の農山村において、企業の人材、知識、資金等を活用した社会貢献(CSR)活 動や社員研修、ビジネスの展開等を推進するため、企業と農山村のマッチングを推進 ③ 地域おこし協力隊の派遣 地域おこし活動の支援や農林漁業の応援、住民の生活支援など「地域協力活動」に従事して もらい、あわせてその定住・定着を図りながら、地域の活性化を推進 16 [取組の評価] ① 農村ボランティアは、農作物栽培に係る農作業や草刈り・水路清掃等の保全活動に加え、 収穫祭や地域イベントへの参画等多様な活動において活躍している(H25:延べ 4,517 人・ 日)。しかし、登録数については、H25 年度は年間増加目標 200 人に対して 160 人に止ま っており、比較的時間的余裕のある定年退職後の世代や大学生などターゲットを絞った広 報を強化し、農村ボランティアの確保が必要 ② ふるさとむらについては、新たに取組を開始する地域がある一方、都市部からの距離が遠 いため、農村ボランティアが思うように集まらない等の理由により、取組を取りやめる地 域もある 年 農村ボランティア (人) ふるさとむら (集落) 度 H20 年間登録者数 累 計 取組集落増減 累 計 H21 H22 H23 H24 H25 142 236 200 258 181 160 2,172 2,408 2,608 2,866 3,047 3,207 40 2 1 0 2 △ 2 40 42 43 43 45 43 17 ③ 企業と農山村の連携については、平成 26 年 12 月現在までに 7 件の協定が締結できたほか、 協定締結への動きが 3 件進みつつある。 企業と連携した集落では、企業側のノウハウを生かした地域農産物の新商品開発や企業の 工場・店舗等を活用した販売拡大等により農村活性化が図られている。 ④ 地域おこし協力隊は、淡路地域で積極的に設置され、都市農村交流や地域特産物の6次産 業化などの場面で活躍しており、地域活性化に大きく貢献している。 この動きにならって、他市町においても地域おこし協力隊の設置が進み始めている。 【地域おこし協力隊の設置状況】 市町名 加西市 多可町 朝来市 養父市 新温泉町 豊岡市 1 設置数(H25 末) H26 募集数 佐用町 2 1 8 2 2 2 香美町 丹波市 淡路市 1 2 9 2 1 洲本市 南あわじ市 5 5 2 18 6 中山間地域等への特別対策 [講じた主な施策] 中山間地域等直接支払交付金による農業生産条件の不利性の補正 農業生産条件が不利な中山間地域等において、農地の耕作放棄を防止し、農業生産力とともに その多面的機能を継続的に維持していくため、棚田等における適正な農業生産活動等に対して 中山間地域等直接支払交付金を交付(交付単価:21 千円/10a 等) 中山間地域等直接支払制度 取組状況(H25 年度実績) 県民局 阪神北 北播磨 中播磨 西播磨 但馬 丹波 淡路 計 交付面積 194ha 408ha 117ha 569ha 1,629ha 156ha 2,088ha 5,162ha 交付金額 35 百万円 64 百万円 23 百万円 108 百万円 301 百万円 28 百万円 309 百万円 950 百万円 [取組の評価] ① 本交付金の活用によって、耕作放棄地の発生防止はもとより、集落での話し合いが活発化 し、集落間の連携が実現し、新たな特産品づくりに成功した事例が見られた ② 一方、対象農用地が存在するにも関わらず、高齢化等による人材不足などの理由で取り組 めていない集落があり、このような集落において取組を拡大する必要がある 19 Ⅲ 集落活性化のケーススタディ ○ケース設定の考え方 県内に実在する集落を想定し、実現可能性のある集落活性化の一例を提示。 ○集落活性化の基本シナリオ 農業や農業関連の地域ビジネスによって集落内の総生産が大きくなり、住民 の所得や就業機会が拡大するとともに、集落の定住人口が維持され、コミュニ ティが活発化するといった姿を基本とする。 ※集落活性化については、産業、医療、福祉、教育、交通など課題が多岐に わたり、分野を超えた総合的な取組が求められるケースが多いが、ここで は、農業や農業関連ビジネスを基軸とした取組を中心に議論することとし た。 20 集落における各構成員の位置づけ(イメージ) ① 農地利用(農業生産)の面から見ると、 「中心経営体」が相当部分を担っている ② 集落構成(集落運営)の面から見ると、むしろ、 「中心経営体」以外の者が大半を占める 「中心経営体」 ・大規模個別経営体 ・集落営農組織 「中心経営体」以外 の販売農家 自給的農家 土地持ち 非農家 非農家 21 ○設定した具体のケース ケース1 一定規模の集落が、集落営農組織を設立し、集落内の人材や農地等をフル活用 して、付加価値の高い農産物の生産や、農産加工等の6次産業化を図る。 ケース2 核となる人材の不在等から集落営農が難しい集落が、集落外の大規模農家と連 携することによって、農業生産活動の維持を図る。(農業生産の大半は地域外 の大規模農家が担うが、集落内の農家も、草刈り等の共同活動や自給的営農な どを通じて、農業とのかかわりを保っている。) ケース3 集落内の農地が少なく、単独ではスケールを生かした効率的な農業生産が難し い小規模な集落が、他の集落と連合することによって、地域内の人材や農地等 をフル活用し、付加価値の高い農産物の生産や農産加工等の6次産業化を図る。 ケース4 傾斜地が多いなどから、スケールを生かした効率的な農業生産が難しく、また 集落内の人材等が十分でない集落が、地域外の企業等と連携することによって、 付加価値の高い農産物の生産や、農産加工等の6次産業化を図る。 ケース5 スケールを生かした効率的な農業生産は難しいが、際立つ自然環境の良さや、 地域の特産品といった資源を持つ集落に、その資源に魅力を感じる者が移住し、 環境を生かした付加価値の高い農作物の生産や、農家民宿などの6次産業化に 取り組んでいる。そして、集落の農家もこれに触発され、行動を始めている。 22 ケース1 一定規模の集落が、集落営農組織を設立し、集落内の人材や農地等をフル活 用して、付加価値の高い農産物の生産や農産加工等の6次産業化を図る。 (1)想定する集落の条件 ① 集落の戸数は 100 戸(人口 400 人)程度と大規模である。 ② 集落の農地は 50ha 程度と大きく、生産条件は良好で、スケールメリットを生かすこ とが可能である。 ③ 都市部から 1 時間以内の近距離圏にあり、他産業への就業機会に恵まれていることか ら、兼業農家が大半を占めており、近年、離農希望者が増加傾向にある。 ④ しかし、少数ではあるが、核となる農家がいる。 ⑤ その他にも、女性や若者など、人材が豊富である。 ⑥ 都市部から近距離圏にあることから、日帰り観光客の誘引が可能である。 23 (2)集落活性化の姿と実現へのポイント(たたき台) [集落活性化の姿の例] ① 集落内の意欲的な農家を中心に集落営農が組織され、スケールメリットを生かした大規 模な水稲栽培が行われているほか、新たな作物が導入され、農業生産が増大している。 ② 兼業農家も休日にオペレーターなどで農作業に従事したり、自給的農家や高齢農家が、 農産物を直売所に出荷したりするなど、集落内の多様な人材が、多様な形で農業生産に 関わっている。 ③ 女性を中心に、農産加工やレストラン等、6次産業化も展開され、集落内の総生産が拡 大し、新たな雇用も生まれている。 [実現へのポイント] ① 集落内の多様な人材をまとめ上げるため、集落内の兼業農家や集落出身者の中から企 業等で労務管理に携わった者を集落営農の経営に取り込む ② 地域の活性化への機運を共有化するため、祭りや地域ぐるみでの農地維持管理等の共 同活動等を通じて集落構成員間のつながりを強化 ③ 集落として、農業生産以外にも多様な事業に積極的に取組むことにより、集落内の人 材が活躍する場面を創出 24 【集落内の多様な人材活用の事例】 きすみの営農(小野市)では、農業従事者の高齢化に よる担い手不足を解消するため、地域に広く呼びかけて 人材の掘り起こしを行った。 その結果、農業未経験であった若手女性が大型機械の オペレーターとして活躍している(現在7名)。 また、新たな作物として導入したそばを活用し、そば 屋「ぷらっときすみの」を開店、企業を定年退職した高 齢者が運営を行うなど、集落内の多様な人材が活躍して いる。 地域から女性オペレーターが誕生 【集落営農における新規品目の導入の事例】 (株)アグリ香寺(姫路市)は、これまで、水稲・麦・大豆・そば等の土地利用型営農 を中心に展開してきたが、新たな作物として、栽培管理が容易で、一斉収穫・出荷が可 能、かつ、洋菓子などの原料として人気のある作物としてカボチャを導入。現在、カボ チャペーストや粉末の商品化に取り組んでいる。また、平成 26 年5月にはカボチャを使 用した焼酎の販売を開始した。 25 ケース2 核となる人材の不在等から集落営農が難しい集落が、集落外の大規模農家と 連携することによって、農業生産活動の維持を図る。 (農業生産の大半は集落 外の大規模農家が担うが、集落内の農家も、草刈り等の共同活動や自給的営 農などを通じて、農業とのかかわりを保っている。 ) (1)想定する集落の条件 ① 集落の戸数は、40 戸(140 人)程度と中規模である。 ② 集落の農地は 30ha 程度であり、生産条件は良好で、スケールメリットを生かすことが 可能である。 ③ 都市部から 1 時間以内の近距離圏にあり、他産業への就業機会に恵まれていることか ら、兼業農家が大半を占めている。 ④ 集落内に核となる農家が不在で、今後も集落内からの誕生は見込まれない。 ⑤ 近隣には、経営面積 100ha 規模の大規模農家が存在しており、すでに集落内の一部の 農地は、この大規模農家によって利用されている。 26 (2)集落活性化の姿と実現へのポイント(たたき台) [集落活性化の姿の例] ① 集落の大半の農地が集落外の大規模農家に集積・集約化され、効率的な水稲栽培が展開 されている。 ② 集落の構成員は、草刈りや水路の管理等を共同作業で実施するほか、自給的農家として の営農や大規模農家に雇用されるなど、農業との関わりを保っている。 ③ 少数であるが、集落内から意欲のある農家が生まれつつある。 [実現へのポイント] ① 地域ぐるみの農地維持管理等の共同活動を通じて、集落と農業との関わりを維持する とともに、集落構成員のつながりを強化することにより、個々の農地所有者ではなく、 集落全体で大規模農家への農地提供の方針を決定する ② 集落と大規模農家が定期的に話し合いの場を持ち、農地や農業用水の管理についての 問題点(作業範囲、賦課金・水利費等の費用負担等)を共有し、相互の役割分担を明 確化 27 ケース3 集落内の農地が少なく、単独ではスケールを生かした効率的な農業生産が難 しい小規模な集落が、他の集落と連合することによって、地域内の人材や農 地等をフル活用し、付加価値の高い農産物の生産や、農産加工等の6次産業 化を図る。 (1)想定する集落の条件 ① 集落の規模は、戸数が 20 戸(人口 70 人)程度と小規模である。 ② 周辺には、同規模の小規模集落が2つある。 ③ 集落の農地は、いずれも、傾斜地が多く、面積は 10ha 程度と小規模であり、効率的 な水稲栽培には向いていない。 ④ 都市部から 1 時間以上 2 時間以内の中距離圏にあり、他産業への就業機会は限られて いることから、青壮年層は極めて少ない。 ⑤ 都市部から中距離圏にあることから、日帰り観光客の誘引は可能である。 28 (2)集落活性化の姿と実現へのポイント(たたき台) [集落活性化の姿の例] ① 3つの集落が連合することにより、連合型の集落営農によって、水稲だけでなく、少面 積ながらも、黒大豆などの特産物の生産に取り組んでいる。 ② 連合した各集落の構成員が、特産物の栽培から収穫までの作業工程のいずれかを担うな ど農業生産に関わっている。 ③ 特産物を生かしたイベントなどにより観光客を誘引し、地域内の女性が中心となって、 観光客をターゲットとした農産加工やレストラン等の6次産業化が展開されている。 [実現へのポイント] ① 複数の集落が集落活性化の気運を共有して結束を固めるために、都市住民には知られ ていない地域特産物の発掘や特産物を活用した祭りなどイベント等を開催する。 ② 中山間直接支払制度やその他の補助制度等を有効に活用し、集落連合体の事業資金を 確保する。 ③ 農村ボランティアや企業の CSR との連携に取り組み、これを通じて都市住民の価値観 に触れることにより、農産物加工や6次産業化など新たな取組への意欲の醸成を図る。 29 【複数の集落の連合による共同の取組の事例】 淡路市生田地区では、地域内の3つの集落が連合し、中 山間地域等直接支払交付金を3集落の共有の財源として管 理し、また、多面的機能支払交付金や県民交流広場事業(県 単独事業)を活用することにより、共同で様々な事業を行 っている。 例えば、平成 23 年には、地元産のそばを提供する「そば カフェ生田村」を整備し、地域の住民 15 名がスタッフとし て働いている。 また、平成 24 年には、「生田村水車公園」を整備し、新 地域で栽培されたそばを販売する 「そばカフェ生田村」 たな名所として年間約 1 万人の観光客が訪れている。 ・中山間地域等直接支払交付金:交付金額 ・多面的機能支払交付金 :交付金額 約 2,000 万円/年(交付開始 約 1,000 万円/年(交付開始 H20 年) H19 年) 30 ケース4 傾斜地が多いなどから、スケールを生かした効率的な農業生産が難しく、ま た集落内の人材等が十分でない集落が、地域外の企業等と連携することによ って、付加価値の高い農産物の生産や農産加工等の6次産業化を図る。 (1)想定する集落の条件 ① 集落の戸数は 40 戸(人口 140 人)程度と中規模である。 ② 集落内の農地面積は 20ha と中規模であり、また、傾斜地が多いことから、スケール メリットを生かした効率的な水稲栽培には向いていない。 ③ 都市部から 2 時間以上の遠距離圏にあり、他産業への就業機会は限られていることか ら、青壮年層は少ない。 ④ 意欲のある農家は、少数ながら存在するが、新たな投資に必要な資金や販路の確保は 十分でない。 ⑤ 都市部から遠距離圏にあり、日帰り観光客の誘引は困難だが、近隣にインターチェン ジがあるなど、農産物の輸送条件は悪くない。 31 (2)集落活性化の姿と実現へのポイント(たたき台) [集落活性化の姿の例] ① 県産の農産物を求めている食品企業と連携し、意欲ある農家を中心に、企業のニーズに 合わせた農産物の生産が展開されている。また、加工や販売なども含めた高付加価値型 農業生産が展開され、新たな販売ルートが創出されている。 ② 企業の資本力を導入して施設園芸等の収益性の高い農業が定着、拡大し、集落に新たな 雇用が生まれることによって、集落にとどまる若者や UJI ターンで戻ってくる若者が誕 生している。 [実現へのポイント] ① 集落において、企業との連携への意欲が醸成される。また、集落と企業の交流の場な どマッチング機会が頻繁に創出される。 ② 集落と企業が対等なパートナーシップを構築し、双方の資源、人材を生かしながら、 地域の発展をめざす意識が共有される。 ③ 農業の高度化に向けて、企業の資金や経営ノウハウが効果的に発揮される。 32 【集落が外部企業と連携した事例】 集落営農組織である(株)ささ営農(たつの市)は、 兵庫県食品産業協会から、ペースト加工用に県内産バ ジルを求める神戸市内の食品会社を紹介されたことを 契機に、平成 15 年から契約栽培を開始した。 その後、平成 25 年には、この企業と技術供与・業務 資本提携に合意し、15%の出資を受けた。人材交流に よって習得した加工品の製造技術や、提携企業の製品 たつの市産バジルを活用したバジルペースト 開発のノウハウを活用し、現地でバジルのペースト加 工を行う工場を平成 26 年から操業している。 33 ケース5 スケールを生かした効率的な農業生産は難しいが、際立つ自然環境の良さや、 地域の特産品といった資源を持つ集落に、その資源に魅力を感じる者が移住 し、環境を生かした付加価値の高い農作物の生産や、農家民宿などの6次産 業化に取り組んでいる。そして、集落の農家もこれに触発され、行動を始め ている。 (1)想定する集落の条件 ① 集落の戸数は 20 戸(人口 40 人)程度と小規模である。 ② 集落内の農地面積は 10ha 程度と小規模であり、また、傾斜地が多いことから、効率 的な水稲栽培には向いていない。 ③ 都市部から 2 時間以上の遠距離圏にあり、他産業への就業機会は限られていることか ら、青壮年層は極めて少なく、集落全体の活力は相当低下しているが、青壮年層は集 落の将来について問題意識を持っている。 ④ 標高の高い大河川の源流部に位置し、きれいな水と澄んだ空気、農村の美しい風景な ど、自然環境に恵まれている。 ⑤ 都市部から遠距離圏にあり、日帰り観光客の誘引は困難であるが、比較的近くにイン ターチェンジもあり、交通アクセスは悪くない。 34 [集落活性化の姿の例] ① 都会から相次いで2組の家族が移住した。一組は、良好な自然環境を生かして有機農業 を行い、それを付加価値として、都市部の消費者に農産物をインターネット販売してい る。 ② もう一組は、良好な自然環境をセールスポイントにして農家民宿を運営し、自家栽培し た農作物を宿泊客に提供している。 ③ 集落の中に、移住者の取組に共感し、ともに有機農作物の生産・販売活動を行う者や、 農家民宿に食材を提供する者が現れてきている。 ④ また、移住者の成功を知った者から、集落への移住を希望する声が寄せられている。 [実現へのポイント] ① 定住者が減少し、過疎化することの危機感を集落全体で共有する ② 集落に関心を持つ移住者を求めて、集落の自然環境など地域のセールスポイントを積 極的に情報発信 ③ 集落が、移住者に関心を持ち、日常の相談に乗るなどの関わりを積極的に持つことに より、移住者が早期に集落に溶け込む 35
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