生化学Ⅲ 第6回 生化学ⅢSBO-9 遺伝子の複製・変異・修復-2 遺伝子の変異(突然変異)について説明できる Mutaiton 今回のSBOs 遺伝子の変異(突然変異)について説明 できる DNAの修復の過程について説明できる SBO-9小テスト-1 突然変異によって、ある遺伝子の機能が失われること や、変化することがある。 SBO-9課題(予習&復習) 遺伝子の突然変異に関連する基本的な用語の意味につ いて確認し、ノートにまとめること。 DNAの突然変異(挿入、欠失、点突然変異、ミス Yes No センス突然変異、ナンセンス突然変異、フレー ムシフト突然変異、非表現型突然変異)、染色体 の突然変異(欠失、重複、転座、逆位)、ピリミ ジン二量体(チミン二量体)、遺伝病 SBO-9課題(予習&復習)-2 遺伝学に関する歴史上重要な研究(研究者・実験方 法・研究結果・定説など)について確認し、ノートに まとめること。 染色体と遺伝子の変異 突然変異は、染色体の変異と遺伝子の変異に大 別される。 染色体の異常 ギャロッド(A.Garrod)の研究 遺伝子の異常 ビードルとテータム(G.Beadle&E.Tatum)の研究 突然変異(mutation) 変異と多型 遺伝子多型と遺伝子変異は出現頻度で区別する 生物集団における 変異の出現頻度 名称 1%以上 遺伝子多型 1%未満 遺伝子変異 突然変異は遺伝子や染色体の置換、欠失、挿入、組換 え、重複などによって引き起こされる。 突然変異体(mutant) 突然変異によって形質が変化した個体を変異体 (mutant)という。 遺伝子の変異と形質 遺伝子の突然変異 DNA塩基配列の変化は、遺伝情報の変化であり、 結果として個体の形質に変化を及ぼすことがあ る。 突然変異は特定の疾患原因になることがある(遺 伝病・遺伝子疾患) ショウジョウバエは遺伝子研究の実験動物として広く用いられ ており、多くの変異体が知られている。野生型(左)に対して、 羽の短い変異、羽がカールした変異、体色が白い個体、その他 が知られている。これらは全て特定の遺伝子変異による。 遺伝子と進化 変異の利用 変異(変異体)は、遺伝子機能の解明に役立つ。 ある遺伝子の変異により細胞形態が変化した→形態形成に関与 する遺伝子 遺伝子や染色体の異常の種類 世代を重ねながら、染色体(遺伝子)に生じた変 異が蓄積することにより、生物が進化する。 染色体 複製 染色体異常 染色体数や染色体乗換えの異常 遺伝子増幅 遺伝子あるいはその一部が増幅 遺伝子欠損 遺伝子あるいはその一部が欠損 遺伝子の突然 遺伝子のDNA塩基配列が変化 変異 遺伝子の増幅 遺伝子欠損 特定の短い塩基配列が連続する配列を反復配列 と呼ぶ。正常な働きを持つ遺伝子(染色体)にも 存在するが、増幅によって、遺伝子の働きに影 響が及ぶことがある。 ABC 遺伝子A 遺伝子B 遺伝子C 正常な遺伝子 部分欠損 完全な欠損 配列の挿入 遺伝子欠損 遺伝子の突然変異(塩基置換) 遺伝子の一部あるいは全体が失われたり、遺伝 子に新たな塩基配列が入ることにより、遺伝子 の機能が変化したり、失われる。遺伝子以外の 領域に生じた変異も影響することがある。 摂南大 摂大 あれ、 文字が足らない よ! DNA複製時のエラーや紫外線などによる損傷によ り、DNAの塩基配列に変異が生じることがある。 Panasonic Panasomic あれ、 字が違うよ! ぱちもん? p460図37-31塩基置換 ピリミジン同士 ピリミジンからプリン ミスセンス変異 塩基配列の変異により、アミノ酸配列が変わる プリンからピリミジン ペプチド mRNA Ser Lys Thr UCU AAA ACA プリン同士 ↓AがCに変換 ナンセンス変異 塩基配列が変異して終止コドンになる ペプチド mRNA Ser Lys Thr UCU AAA ACA Ser Gln Thr UCU CAA ACA サイレント変異 塩基配列が変異してもアミノ酸配列が変化しな い(コード領域外の変異も含む) ペプチド mRNA Ser Lys Thr UCU AAA ACA ↓AがGに変換 ↓AがUに変換 Ser UCU UAA ACA Ser Lys Thr UCU AAG ACA Stopcodon フレームシフト変異 新たな塩基が入ったり、塩基が欠落することに よって、フレーム(読み枠)がずれる ペプチド mRNA Ser Lys Thr UCU AAA ACA サプレッサー変異 ある変異によって遺伝子の働きが変わるのを、 別の変異が打ち消す Ser ペプチド UCU mRNA UCU Gln Asn UCU CAA AAC DNA5'-CTTATTGGTCATACT-3' RNA5'-CUUAUUGGUCAUACU-3' タンパク質N-LIGHT-C DNAの2番目の塩基TがGに変わると DNA5'-CGTATTGGTCATACT-3' RNA5'-CGUAUUGGUCAUACU-3' タンパク質N-RIGHT-C AAA ACA Ser UAA ACA ↓AがCに変換 Tyr Thr UCU UAC ACA 翻訳領域以外の変異の影響 DNA塩基配列の変化の影響 DNAの塩基配列が変わると、その情報をもとに合成され るRNAの塩基配列も変わる。RNAの塩基配列はタンパク 質を合成する際のアミノ酸の配列情報となる。 Thr ↓AがUに変換(ナンセンス変異) ↓Cが入る Ser Lys 遺伝子の発現制御やDNA複製に関与する領域に変異が生 じ、形質に影響を及ぼすことがある。 転写開始点 5 転写終結点 コード領域 プロモーター 3 転写される領域 非翻訳領域 (非コード領域) 翻訳領域 非翻訳領域 (非コード領域) ヌクレオチドの修飾による変異 ヌクレオチドの修飾は変異を引きおこす要因である。 加水分解による脱プリン反応と脱アミノ反応 DNAに重大な損傷を与える化学反応で頻度が高い。 脱アミノ反応による塩基の変化 もとのDNA塩基 脱アミノにより 生じるDNA塩基 アデニン ヒポキサンチン グアニン キサンチン シトシン ウラシル チミン 脱アミノしない チミン・ダイマー形成 紫外線の照射を受けた細胞のDNAの隣り合ったピリミジ ン塩基(CまたはT)の間に形成される。 DNAの脱アミノ反応 DNAのメチル化によって生じた5-メチルシトシン(メチ ル化C)は、脱アミノ反応によってチミンに変わる 脱プリン反応による変異 脱プリン反応をおこしたDNA鎖を鋳型にして合成されたDNAは、 ヌクレオチドが1対少なくなる。 シトシンの脱アミノ反応による変異 Cが脱アミノ反応でUになったDNA鎖を鋳型にして合成されたDNA が変異する 生化学ⅢSBO-10 DNAの修復の過程について説明できる DNARepair シトシンまたはチミン SBO-10課題(予習&復習) DNA修復に関連する基本的な用語の意味について確認し、 ノートにまとめること。 SBO-10小テスト-1 生物には様々な要因で生じたDNAの傷害を修復する仕組 みが備わっている。 塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、ミス マッチ修復、光回復酵素(DNAフォトリアーゼ)、 アプリニック部位、アピリミジニック部位、エ Yes No ンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、相同 組換え、p53、アポトーシス 塩基除去修復 脱アミノされたシトシンを除去する。 ヌクレオチド除去修復-1 損傷カ所を含むDNA鎖を切断除去する。 ヌクレオチド除去修復-2 一本鎖DNAを鋳型にしてギャップ部分に相補的なDNA鎖 を合成する。 二本鎖DNAの切断を修復する仕組み 非相同末端連結と、相同組換えによる修復がある 非相同末端連結による修復機構 Kuタンパク質が末端の認識に必要 相同組換えによる修復機構 DNA複製直後で2つの姉妹染色体が結合しているとき 複製時に生じた誤りを修復する仕組み 新生鎖のミスマッチ部分から近くのニックまでを分解修復 DNAフォトリアーゼによる修復 アポトーシス(細胞のプログラム死) 原核生物と真核生物に存在するが、ヒトには存在しない 細胞が急速に縮小し、クロマチンの凝縮、核の断片化、 細胞の断片化が起こり、アポトーシス小体が形成され る。マクロファージなどがアポトーシス小体を貪食す る。 ピリミジン塩基 回裂反応 (シトシン、チミン) DNAフォトリアーゼ +可視光 DNA修復とp53 ピリミジン二量体 紫外線 架橋反応 シクロブタン型架橋結合 (シトシン二量体、チミン二量体) G1チェックポイントでDNA損傷があるとp53が細胞周期 を停止し、そのままDNAが修復されなければp53がアポ トーシスを誘導する。
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