建−2 積雪寒冷地のユニバーサルデザインについて 北海道開発局 営繕部建築課 ○澤田 祥臣 星野 達弥 森廣 和幸 1.はじめに 官庁営繕においては、従来から障害者に対するバリアフリー化庁舎に取り組んでき た 。し か し 、国 際 連 合 の 国 際 障 害 者 年 行 動 計 画 の 中 で“ ノ ー マ ラ イ ゼ ー シ ョ ン ※ 1 ”が 提起され、わが国でも、本格的な少子高齢社会を迎えるなか、豊かで活力ある社会を 保つために、高齢者や障害者を含めたすべての人々が社会活動に参加できるよう、使 い や す く 、分 か り や す い 建 物 を デ ザ イ ン す る こ と が 重 要 な 課 題 と さ れ る よ う に な っ た 。 こ の よ う な 中 、 「 バ リ ア フ リ ー 」 や 「 ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン ( 以 下 「 UD 」 と 呼 ぶ ) 」 の認知の広がりを背景として、国においてはハートビル法や交通バリアフリー法が制 定され、先進的な地方自治体においても独自の条例が制定されるなど、法制度の整備 も 進 め ら れ て い る 。 し か し 、 地 域 特 有 の 条 件 を 加 味 し た 建 物 の UD に つ い て の ガ イ ド ラインは少ない状況にある。 ※ 1 :「 わ れ わ れ の 社 会 は 、 障 害 の な い 人 、 障 害 の あ る 人 を は じ め と し て さ ま ざ ま な 特 質 を も っ た 人 々 の 集 ま り で あ り 、そ の さ ま ざ ま な 場 に お い て も 障 害 の あ る 人 と 障 害 の な い 人 と が と も に 存 在 す る こ と が ノ ー マ ル な 状 態 で あ る 。」 と い う 概 念 。 2.研究の目的と方法 本 報 告 は 、 建 物 に お け る UD に つ い て の あ り 方 を 整 理 し 、 北 海 道 の 特 徴 で あ る 積 雪 寒冷地の特性と施設整備における問題点を、道内にある官公庁施設について、降雪の 前後で現地調査を行い整理した。また、障害者関係のリハビリテーションや交流等を 推進している関係者からのヒアリングを行い、積雪寒冷地に 対応策 お け る 施 設 の UD に 関 し て の 基 本 的 な あ り 方 を 考 察 し 、 今 後 の施設整備の留意点と方向性を提案するものである。 対応できる人 3.建築におけるユニバーサルデザイン 対応困難な人 バリア 3-1ユニバーサルデザインとバリアフリー 高齢の人 障害のある人 子供 一時的困難な人 特別扱い ふつう 図 ―1 バリアフリーの概 念 UD を 検 討 す る 際 、バ リ ア フ リ ー と 混 同 さ れ る 場 合 が あ る 。 双方ともに、何らかの障害を抱える人々が社会で出会う様々な 障壁の除去・低減を目指したものであるが、両者の大きな違い 対応できる人 対応困難な人 は 、 バ リ ア フ リ ー が 「特 定 の 障 害 」を 想 定 し 、 そ の 対 応 策 を 行 う の に 対 し ( 図 ― 1 )、 UD は 障 害 の 種 類 を 特 定 し な い で 、 当 た り 誰もが使 えるように あたりまえ 前 に 接 す る こ と で あ る( 図 ― 2 )。身 体 能 力 の 差 や 体 格 ・ 性 別 ・ 年 齢・国 籍 な ど に 関 わ ら ず 、よ り 多 く の 人 々 が 利 用 で き る 製 品・ 図 ―2 UDの概 念 建 物 ・ 環 境 の 創 造 を 目 的 と す る こ と が UD の 基 本 精 神 で あ る 。 Yoshiomi Sawada , Tatsuya Hoshino , Kazuyuki Morihiro 3-2建物のユニバーサルデザイン 建物のUDを実現 利用者のタイプ するためには、図- 3に示すようにすべ ての利用者の行動特 性( 人 の 動 作 や 能 力 ) に有効であるような 主な症状、状態 高齢者 手や指による操作が不可能 届かない 操作のしやすさ 移動 肢体不自由者 介助が必要 自動化 移動 一時的不自由者 歩行困難(車椅子使用) 手すり 移動 子供を抱いた親 歩行困難(杖の利用) 機械化(EV等) 移動 床段差の解消 移動 適度な広さ 生活 休憩場所 移動 触覚誘導(点字表示) 情報 分りやすさ 情報 色彩計画・照明計画 共通 音声誘導 情報 ソフトでの対応(人的対応) 情報 日本語で判断できない ピクトグラフ・図 情報 文化の違い トイレ・椅子 生活 ベビーカーと親 デザインを考えるこ 窮屈で入れない 子供 すべての人 とが基本となる。従 って、UDの7原則 ユニバーサルデザインの着眼点 疲れやすい 荷物を持った人 視覚による状況認識が困難 妊婦 2) に対応した施設整 聴覚による状況認識が困難 視覚不自由者 備として、以下の 3 音声により意思を伝えにくい 聴覚・言語不自由者 つの観点が設計上特 生活行動に制限 内部機能障害者 に必要となる。 判断力・理解力が弱い傾向にある 知的障害者 ①1種類のデザイ 対人関係が苦手 精神障害者 ンで、すべての人 に対応できる形状 外国人 ②利用者別に柔軟 図 ―3 ユニバーサルデザインの視 点 1 ) に変化し対応でき る形状 ③利用者別の能力に応じて選択可能な複数の形状 3-3建築空間における領域の構成 建 物 に お け る 空 間 構 成 は 、外 部 空 間 と 建 築 空 間 に 分 け ら れ 、更 に 建 築 空 間 は 、空 間 の使われ方や諸設備等の役割によって,その領域が図-4に示す様に大別される。 ①移動空間:人やもの 官庁施設 道 路 外部空間 が動く空間であり、建 建築空間 移動空間 通路 車寄せ、玄関 廊下 ホール エレベーター エスカレーター 階段 物の各室までの連絡空 廊下 ホール 間。すべての人ができ る限り同じ動線で移動 情報装置 駐車場 情報機器 聴覚情報サイン 触覚情報サイン 視覚情報サイン トイレ 湯沸 受付 生活空間 諸室 できるように計画する ことが前提となるが、 すべての移動空間が安 図 ―4 建 物 における空 間 構 成 全で快適な連続性を保 つことが重要となる。 ②生活空間:建物の内部に設けられた室内空間。その目的とそれを達成する設備が備 わっている。すべての人の動作を考え、その目的を安全でスムーズに達成できるデザ インにすることが重要となる。 ③情報装置:移動空間と生活空間のスムーズな連携を支援する装置。すべての人に同 質の情報が伝わるように配慮しなければならない。そのためには、五感で伝えられる ことのできる情報伝達手法を考慮する必要がある。また、複雑で多量の情報が氾濫す ることを避け、最小限の情報をわかりやすく伝えることが重要となる。 4.積雪寒冷地のユニバーサルデザイン 4-1積雪寒冷地域の地域特性 積雪寒冷地域では、雪や寒さにより引き起こされる各種の問題点がある。しかし、 これらは積雪寒冷地域の全ての地域において同様に発生するのではなく、地域の気象 特 性 で あ る 積 雪 量 や 吹 雪 の 発 生 頻 度 、根 雪 期 間 の 長 さ や 真 冬 日 ※ 2 の 日 数 等 に よ り そ の 障 害 の 発 生 形 態 や 頻 度 は 大 き く 異 な る 。 し た が っ て 、 積 雪 寒 冷 地 域 に お け る UD を 考 える際に、その施設の立地する場所にけるこれらの特性が1年間にどの程度発生する か を 把 握 す る 必 要 が あ る 。北 海 道 の 各 市 町 村 に お け る 上 記 特 性 の 発 生 状 況 を 図 - 5~ 8 に示す。このように地域によりその発生状況は大きく異なり、さらにはこれら特性が 複合的に起こることに留意する必要がある。※2:日最高気温が0℃以下の日 根雪期間 (2年再現期待値) 地吹雪 (2年再現期待値) 1日未満 1日~5日未満 5日以上 図 ―5 地 吹 雪 の発 生 日 数 による区 分 120日未満 120日~140日未満 140日以上 図 ―6 根 雪 期 間 による区 分 真冬日 (2年再現期待値) 10日未満 10日~20日未満 20日以上 積雪20cm (2年再現期待値) 20日未満 20日~40日未満 40日以上 図 ―7 積 雪 量 20cm 以 上 による区 分 図 ―8 真 冬 日 の日 数 による区 分 4-2積雪寒冷条件が及ぼす影響 これらの気象条件は、外部空間で生じていることか ら、その影響は外部及び建物内部の結節点に影響する ものとして、道内に所在する官公庁施設について、現 地調査を行った。 写真―1では、身障者駐車場から玄関まで庇が設置 されているが、地吹雪により十分な機能を発揮してい 写 真 ―1 身 障 駐 車 場 周 辺 (留 萌 市 内 ) 雪庇 写 真 ―2 玄 関 (釧 路 市 内 ) 写 真 ―3 ロードヒーティング の結 節 点 (札 幌 市 内 ) ないことが判る。 写真―2は玄関の状況であるが、人力に 避難口 写 真 ―5 玄 関 の雪 の 吹 込 み状 況 (留 萌 市 内 ) 積雪 写 真 ―4 避 難 路 の周 辺 (札 幌 市 内 ) よる除雪を行っているが、日中に一度溶け た雪が氷となり、滑りやすい状況となって いる。写真―3はロードヒーティングと歩 降雨時 道の結節点に生じている段差である。写真 ―4は、一般的に見られる避難経路の状況 であるが、非難口の上部に雪庇が生じてお 降雪時 写 真 ―7 室 内 における 靴 拭 きマット(留 萌 市 内 ) り、さらに避難経路の除雪も十分には行わ れていない。 写真―5は、地吹雪により、扉の開閉時 写 真 ―6 雪 と雨 の 持 込 の違 い に雪が吹き込み、更に風除室が小さいこと で、建物内部にまで雪が入り込んでいる。このように、雪が 室内まで持ち込まれる範囲は、靴の付着だけでなく、衣服へ の 付 着 や 扉 か ら の 吹 込 み 等 に よ っ て 、雨 に 比 べ 大 き く な る( 写 真 ― 6 )。し た が っ て 、写 真 ― 7 に 示 す よ う に 、入 居 官 署 が 使 用開始後に靴拭きマットを設置する場合があるが、その際、 写 真 ―8 吹 雪 による 標 識 への着 雪 状 況 (札 幌 市 内 ) 点字タイルが隠されている。 写真-8は、吹雪によって標識に雪が付着したものであり、 内容を判読することが不可能となっている。 お 、全 国 共 通 の 仕 様 は 、平 成 1 5 年 度 末 を 目 標 に 、 外部空間 に 加 え る 条 件 を 考 慮 す る こ と と な る( 図 - 9 )。な 駐 車 場・ アプローチ スロープ・手すり サイン 雪寒冷地(つまり全国共通)の仕様に従い、それ 建物空間 えなければならない。従って、冬季間以外は非積 積雪寒冷による仕様 外部空間と建築空 間の結節点 ( 風除室・ 玄関等) 積 雪 寒 冷 地 域 に お け る UD は 、 四 季 を 通 し て 考 積雪寒冷条件 ・ 積雪・吹雪・吹きだまり ・ 屋根雪( 雪庇、落雪) ・ 凍結 その他 4-3積雪寒冷地におけるユニバーサルデザイン 積雪寒冷地のユニバーサルデザイン ユニバーサルデザイン(全国仕様) 現在、国交省大臣官房官庁営繕部で作業が行われ ていることから、本報告では、これについての検 図―9 積 雪 寒 冷 地 の UD 討を行わないこととする。 以上のことから、表-1に積雪寒冷の条件から生じる問題点とそれに対するハード 的な対応策及び留意点を掲げる。現段階でこれらを実施するには、施設整備段階での コスト増加に留まらず、維持管理段階でのコスト増や、法制度上の制限が多いことが わかる。 これらのことから、今後の施設整備を行っていく際には、予算要求(企画)段階か ら、UDに沿った施設整備のあり方を設定し、面積設定や整備後の維持管理費用等の 正確な把握が必要となることが判る。 5.積雪寒冷地における施設整備の留意点と今後の方向性 5-1企画段階の留意点 現段階でUDに近づけるためには、まず企画段階において、その施設がどのような サービスを提供するのかを把握・決定する必要がある。そのためには、施設の目的を 明確にすることが重要 であり、さらには提供 表 ―1 積 雪 寒 冷 による問 題 点 と対 応 策 するサービスの中で、 部位 駐車場 ハードウェアで行う部 分とソフトウェアで行 う部分を明確に区分す る必要がある。図-3 融けた水が凍る 駐車場 身障表示マークが雪に隠れる (身障用) 堆雪により幅員が狭い 通路が滑りやすい アプローチ (構内通路) ウェアとして、全ての 融けた水が凍る 点字ブロックが雪で隠れる 建築物に必ず整備する 日没が早く床面の状態が判りづらい 落雪事故がある という考え方は経済 的・物理的・社会的に 除雪・排雪が悪い (一般用) 通路・路面が滑りやすい (身障用) に示す全ての利用者に 対する対応を、ハード 積雪寒冷による問題点 階段・ スロープ 屋外に露出したアプローチは、その 配置により凍結や吹込みによる雪で 歩行障害を起こす 手すりやドアノブが冷たい(凍結) 困難な場合が多く、現 実 的 で は な い 。従 っ て 、 利用が想定されるでき 玄関・ 風除室 外部からの雪の持込により滑りやす くなる 扉からの雪の吹込み 対 応 策 屋根の設置 除雪・排雪の励行、堆雪スペースの確保 濡れても滑りにくい仕上げ ロードヒーティング 十分な排水施設の設置 自立式の表示 ヒーティング 除雪・排雪の励行、堆雪スペースの確保 庇の設置 濡れても滑りにくい仕上げ ロードヒーティング 十分な排水施設の設置 ロードヒーティングの設置 屋根・庇の設置 手すり等による誘導 音等による誘導 足元の明るさを確保 雪庇に対する配慮 濡れても滑りにくい仕上げ 勾配をゆるく(1/20以下) ロードヒーティング 材質の変更 床暖房等により融かす 濡れても滑りにくい仕上げ 冬季間のみ室内側のマットを延長 風除室を大きくする 扉の機密性を上げる 風向を考慮 留 意 点 国有財産上の面積増 広い敷地が必要 デザイン上の制約 ランニングコストが大 定期的な清掃が必要 雪の付着により隠れる ランニングコストが大 広いスペースが必要 国有財産上の面積増 デザイン上の制約 ランニングコストが大 定期的な清掃が必要 ランニングコストが大 国有財産上の面積増 デザイン上の制約 デザイン上の制約 デザイン上の制約 スペースの制約 ランニングコストが大 デザイン上の制約 ランニングコストが大 デザイン上の制約 端部のめくれ 面積上の制約 開閉時の吹込み デザイン上の制約 るだけ多くの人(すべ てが望ましい)が快適に利用できるように、「今できる限り」そして「継続して」進 め る こ と が 最 も 重 要 と な る 。こ の よ う な 中 で 、ハ ー ド で カ バ ー し て い な い 対 象 者 に 対 し 、 ソフト面での対応(職員による補助等)もあらかじめ組み入れて考えておくことも必 要なことである。 さらに、敷地の位置や形状にも配慮する必要がある。可能な限り駅・バス停等の公 共交通機関に近い敷地を選択することも、UD的な考え方となる。特に積雪寒冷地の 市街地において、冬季間の交通バリアが未解決な環境では、地下街やロードヒーティ ングの整備された場所に立地することは、多様な利用者が想定される官署には、UD として有効な手法である。 また、新たな土地を取得した場合に敷地造成が必要となる場合があるが、敷地内通 路の傾斜や建築物の入り口の高さなどは現状の地形に左右されることが多い。その場 合、通路にはロードヒーティングの施工が望まれるが、施工ができない場合には凍結 を考慮し可能な限り緩やかな勾配にする必要があり、そのために大規模な造成等が必 要になる場合があることに注意が必要である。このように、敷地選定の段階からUD を考えることが重要である。 5-2施設整備段階の留意点 移動経路は、すべての人ができる限り同じ動線で移動できるように計画することが 前 提 で あ り 、す べ て の 移 動 空 間 が 安 全 で 快 適 な 連 続 性 を 保 つ こ と が 重 要 で あ る 。特 に 、 屋外移動空間は積雪・凍結等による移動性能の低下が大きな問題となっており、これ らに支障が生じないようにすることが最も望まれる。 そのためには、まず外部移動空間の積雪による狭小化と堆雪領域等を考慮したゆと りあるスペースを確保する必要がある。さらに、雪の処理方法も予め計画する必要が あ る 。次 に 、吹 き だ ま り や 雪 庇 等 の 建 物 の 影 響 に よ る 特 有 の 現 象 が 発 生 す る こ と か ら 、 歩行空間がこれらの影響を受けないよう配置する必要がある。更に、玄関・通路に庇 などを設けた場合、その庇に雪庇が形成される場合があることに配慮が必要である。 なお、通路の勾配は凍結を考慮して、可能な限り緩やかに設定する必要がある。 また、排水計画は、融雪水を考慮し余裕を持ったものとする。特に、雪の融け方は 一様ではないため、融雪水が融け残った雪によ って水溜りを生じ、それが氷となって更なる障 害を生じることにも注意が必要である。また、 通路部分の横断勾配は原則として設けず水平に 者 が 直 進 し や す い よ う 水 勾 配 程 度( 1/100 以 下 ) に留める必要がある。なお、仕上げにインター ロッキング等の目地のある物を使用する場合、 車椅子などの通行時に振動が生じる為、目地を 小 さ く し 、凹 凸 が 少 な く な る よ う に す る 。ま た 、 ロードヒーティングが施工された場合には、積 雪部との境界部に著しい段差が生じることに留 意する必要がある。 内部移動空間は雨水と雪の持込み範囲の違 価 格 妥 当 性 持 続 可 能 性 審 美 性 アプ 通路仕 ロードヒーティング ○ ◎ ○ × ローチ 様 弾性ゴム敷き △ △ △ △ 床仕上 アスファルト ○ ○ ○ ○ 種類 インターロッキング ○ △ × × タイル(磁器) △ × × × 点字タ 磁器質 × △ ○ ○ イル セラミック × △ ○ ○ 発光(LED) × ○ ◎ × ピニル × △ ○ ◎ ゴム × △ ○ ◎ 手すり 金属 ◎ ○ △ △ ビニル ○ ○ ○ ○ 木 ○ ○ ○ △ 玄関 床仕上 タイル(磁器) x x x ○ 風除室 靴拭きマット(塩ビ) ○ ○ ○ ○ 靴拭きマット(ステン) ○ ○ ○ △ 凡例 ◎:非常に優れている ○:優れている △:やや劣る ×:劣る △ x ○ ○ ○ ○ ○ ○ x △ ○ △ x ○ x ○ △ x × ○ ○ △ △ △ △ △ ○ ○ △ ○ x x 種 類 安 全 性 ア ク セ ス ビ り テ 使 い 勝 手 ィ 計画し、やむを得ず設ける場合は、車いす使用 表 ―2 仕 上 げ種 別 の比 較 区 分 いに配慮する必要がある。特に、床はわずかな水分でもすべりやすくなるため、適切 な材料を選定するだけでなく、管理者と維持管理方法を入念に打ち合わせておく必要 がある。なお、屋外のロードヒーティングの有無により持ち込まれる雪の量に違いが 出ることに留意する必要がある。これらはメインアプローチのみに留まらず、職員用 や非難通路に対しても同様となる。 表 - 2 に 各 種 仕 上 げ 例 に 対 し て 、 古 瀬 敏 氏 の 提 唱 す る UD の 基 本 思 想 に 従 っ た “ い い デ ザ イ ン の た め の 6 つ の 要 求 条 件 3 )“ に お い て 、冬 季 間( 積 雪 ・ 凍 結 を 想 定 )に お け る比較を行った。現在までの設計において、これら要素のうち審美性(デザイン性) や経済性に重きをおく傾向が見られるが、今後は、様々な利用者を想定した場合、こ れらを総合的に決定していく必要がある。 表-3雪道での 移動性能 また、UDを進めていく上で表―3に示すように、雪道での 移動性能においても、その想定する利用者によって、相反する 状況となることに留意しなければならない。 健 常 者 表面状態 5-3施設整備の方向性 舗装 凍結状態 埋まる状態 凡例 ○: △: ×: 次 に 、 UD と し て 積 雪 寒 冷 地 に お い て 全 国 標 準 に 付 加 し て 取 り組むべき事項を、次に掲げる。 (1)外部移動空間 車 椅 子 杖 使 用 ○ ○ ○ △ △ × △ × △ 正常 困難 不可能 敷地内通路 ・ロードヒーティングがもっとも望ましいが、維持費を考え、最低限、身障用駐 車 ス ペ ー ス か ら 玄 関 ま で は 施 工 す る 。( a) ・風向きにより雪庇や吹き溜まりが生じやすいことを考慮し、建物からある程度 離 す 。( b) ・床面は、排水性能の高いもの(排水性舗装やインターロッキング、側溝等)を 使 用 す る 。( c) ・点字ブロックとの明暗の差が大きい色彩計画とし、日没が早いことを考慮し、 足 元 に 十 分 な 照 度 が 得 ら れ る 計 画 を 行 う 。( d) ・ 外 部 の 手 す り は 、 冷 た く な い 物 ( 塩 化 ビ ニ ル 製 等 ) と す る 。( e) 駐車場 ・機械による除雪しやすい形状とし、車止め等の凹凸を設けず、堆雪スペースを 十 分 に 確 保 す る 。( f) ・ 融 雪 水 を 考 慮 し 、 排 水 機 能 を 十 分 に 設 定 す る 。( g) (2)内部移動空間 ・風除室は、雪の持込みや吹込みを考慮し、大きめに設定する。また、雪を速や か に 融 か し 、 融 け た 際 の 排 水 を 十 分 に 計 画 す る 。( h) (3)生活空間 当面、積雪寒冷地での独自の問題点が見つからなかったことから、全国(非積雪 寒冷地)仕様と同様の取り組みを行うこととする。ただし、室内の結露に対しては 注意が必要である。 (4)情報装置(外部) ・サインは、文字よりピクトサインや図等を用いた 大型のものとし、色彩も雪の付着を考慮し、目立つ も の を 使 用 す る 。( i) 表 ―4 施 設 整 備 項 目 と積 雪 寒 冷 における考 慮 要 素 項目 a ○ ○ ○ ○ b ○ - ○ △ 空間 c ○ △ △ ○ d △ ○ ○ ○ e ○ ○ ○ ○ f ○ ○ △ ○ ○ ・ 音 等 に よ る 誘 導 装 置 を で き る だ け 活 用 す る 。( k) 数、複合性等を総合的に判断し、優先的に取り組む事項 を決定する必要がある。 根雪 期間 外部 雪 対 策 と し て 庇 や 熱 線 な ど を 付 加 す る 。( j) 生要素との関係を表-4に示す。これらの発生頻度・日 考慮要素 日最高 地吹雪 気温 移動 ・自 立 型 で 雪 に 埋 ま ら な い 高 さ を 確 保 す る と 同 時 に 、 以上の整備方策に対して、積雪寒冷地における障害発 積雪量 g ○ △ △ 内部移 動空間 h ○ ○ ○ ○ 情報 i ○ △ ○ - 装置 j ○ - △ - (外部) k ○ ○ ○ - 凡例 ○:有効 -:無関係 △:場合によっ て有効 5-4維持管理運営段階の留意点 前 述 の と お り 、ハ ー ド で カ バ ー で き な い 事 項 を ソ フ ト 的 な 対 応 と し て 決 定 し た 場 合 、 施設の管理体制や対応職員などを予め決めておくことが重要となる。特に専門の職員 を配置できる場合とできない場合では、来庁者の対応に大きく異なる事があるので注 意が必要である。 なお、外部移動空間での対応をソフト的な対応とした場合、積雪凍結等の影響を受 けないよう維持管理の方法を入念に定める必要がある。この場合、建物の配置計画や 降雪時の風向により、吹きだまりや雪庇の発生確率が大きく異なるため、職員の負荷 が当初の想定より増大する場合があることも考慮に入れる必要がある。 また、職員の転勤等による引継ぎが円滑にいかない場合も想定されるため、安易に ソフト対応とすることには注意が必要である。 さらに、維持管理段階で得られた要望や不満点等を詳細に把握し、企画・設計段階 に正確に伝え、今後に反映させなければならない。 6.おわりに ユニバーサルデザインの建物への適用を考えた場合、最も重要な点は、積雪寒冷条 件の有無に関わらず、造る側や管理する側の視点から考えるのではなく、使う側の視 点で計画・設計することである。現在、説明責任や情報公開という形で、利用者側の 立場を考慮したプロセスを踏むが、今後は、企画・設計・施工の各段階でワークショ ップ等の方法を用いて、多様なニーズのより一層の把握と同時に、完成後の評価が重 要となる。特に完成した建物を実際に使い始めると、新たな課題や改善点が見えてく ることがあり、この段階で出てくる意見や対応策は、後の施設整備計画や改修時に有 効な情報となるため、そのような機会(システム)を継続的に持ち続けていくことが 重要である。 また、ユニバーサルデザインに対する取り組みは、その対象とする者への対応とい うことではなく、 “ 健 常 者 に お い て も 使 い や す い デ ザ イ ン と な る ”と い う 視 点 が 欠 か せ ない。 今後、本省が制定する全国標準のユニバーサルデザインのガイドラインに、本報告 の内容を詳細に検討し加えたうえで、実際の施設に適用し、その有効性を確かめてい く予定である。 本研究を進めるにあたり、気象データを北海道工業大学細川講師に提供いただきま した。また、現地調査及びヒアリングにご協力いただいた関係者の方々に感謝いたし ます。 参考文献 1)熊 本 県 ; ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン 建 築 ガ イ ド ラ イ ン ( 一 部 変 更 ) 2)Bettye Rose Connell,Mike Jones,Ron Mace,Jim Mueller,Abir Mullick,Elaine Ostroff,Jon Sanford,Ed Steinfeld.Molly Story,Gregg Vanderheiden ら に よ る 共 同 提 唱 ( ア ル フ ァ ベ ッ ト 順 ) 3)古 瀬 敏 ; バ リ ア フ リ ー の 時 代 、 都 市 文 化 社 4)山 鹿 、 佐 賀 ; 北 国 に お け る 高 齢 者 ・ 身 体 障 害 者 の 利 用 を 考 慮 し た 施 設 の あ り 方 、 平 成 6 年 度 北 海 道 開発局技術研究発表会 5 ) 山 鹿 、 中 山 ; 北 国 に お け る 高 齢 者 ・ 身 体 障 害 者 の 利 用 を 考 慮 し た 施 設 の あ り 方 ( そ の 2 )、 平 成 7 年 度北海道開発局技術研究発表会
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