iOSシミュレータ ユーザガイド (TP40012848 0.0.0)

iOSシミュレータ
ユーザガイド
目次
iOSシミュレータについて 5
はじめに 5
この資料の構成 6
関連項目 6
iOSシミュレータの概要 7
XcodeからiOSシミュレータにアクセスする 7
iOSシミュレータ上でアプリケーションを実行する 8
iOSシミュレータを単独で起動する 9
インストール済みアプリケーションを表示する 9
Safariでウェブアプリケーションをテストする 11
「Maps」を使って場所の認識処理をシミュレートする 11
シミュレート対象デバイスおよびiOSバージョンの変更 13
シミュレート対象であるiPhoneやiPadの大きさ変更 15
iOSシミュレータの設定を変更する 18
デバイスを回転する 19
iOSシミュレータとデバイスの両方でテストする 19
iOSシミュレータを終了する 20
iOSシミュレータに対する操作 21
ハードウェアの操作をシミュレートする 21
ユーザのジェスチャをシミュレートする 22
iOSシミュレータでキーボードの動作をシミュレートする 23
アプリケーションのインストールと削除 24
iOSシミュレータのコピー/ペースト機能 25
シミュレータのスクリーンショットを取り込む 28
シミュレート対象デバイスの画面を表示する 29
Retinaおよび非Retinaディスプレイの表示をテストする 29
iOSシミュレータによるテストとデバッグ 30
iOSシミュレータによるテストの限界 30
ハードウェアの制約 30
OpenGL ESの制約 31
APIの制約 31
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目次
iOSの版に関する制約 32
iPad miniでの動作をテストする 32
64ビット互換性のテスト 32
アプリケーションのアクセシビリティをテストする 33
アプリケーションのローカライズ状態をテストする 35
ウェブアプリケーションをテストする 36
iCloudのテスト 36
バックグラウンドでのフェッチ処理のテスト 37
iOSシミュレータ上でデバッグ用ツールを使う 37
クラッシュログを表示する 38
iOSシミュレータの動作設定(Xcode Scheme) 39
書類の改訂履歴 42
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図、表
iOSシミュレータの概要 7
図 1-1
図 1-2
図 1-3
図 1-4
図 1-5
図 1-6
iPhoneのシミュレーション環境でHelloWorldアプリケーションを実行している様子 8
iOSシミュレータのホーム画面 10
iOSシミュレータのSafari上にAppleのウェブサイトが表示されている様子 11
iOSシミュレータ上で「Maps」を起動し、経緯度をシミュレートしている様子 12
iPadのシミュレーション環境で起動した「Settings」アプリケーションの様子 18
iOS のシミュレーション環境でiPadを回転した様子 19
iOSシミュレータに対する操作 21
表 2-1
表 2-2
iOSシミュレータの「Hardware」メニューから実行可能な操作 21
iOSシミュレータで実行できるジェスチャ 22
iOSシミュレータによるテストとデバッグ 30
図 3-1
表 3-1
iPhoneのシミュレーション環境で「Accessibility」インスペクタを使っている様子 33
iOSシミュレータの「Debug」メニューから起動できるデバッグツール 37
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iOSシミュレータについて
アプリケーション開発時にiOSシミュレータを利用すると、プロトタイプを迅速に作成し、動作をテ
ストできます。XcodeのツールのひとつとしてiOS SDKとともにインストールされ、標準的なMacアプ
リケーションとして動作し、IPhoneやiPadの環境をMac上にシミュレートできます。実デバイス上で
テストする前段階のテストツールと考えるとよいでしょう。
さまざまなiOSデバイス、各版のiOSオペレーティングシステムの環境をシミュレート可能です。この
環境はそれぞれ独立しており、各種設定やファイルも個別に用意できます。
はじめに
iOSシミュレータでアプリケーションの動作をシミュレートすることにより、次のようなことができ
ます。
●
設計や初期のテストの間に、アプリケーションの主な問題点を発見できる。
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5
iOSシミュレータについて
関連項目
●
iOSシミュレータでしか使えない開発ツールでアプリケーションをテストする。
●
iOSデベロッパプログラムのメンバーになる前に、Xcodeでの開発方法やiOSの開発環境について学
ぶことができる。
このガイドでは、iOSシミュレータの基本的な使い方から始めて、これに組み込まれた、テストやデ
バッグの各種支援ツールを紹介していきます。
この資料の構成
iOSシミュレータの使い方について、次の各章に分けて解説します。
●
●
●
●
「iOSシミュレータの概要」 (7 ページ):iOSシミュレータの機能を把握し、さまざまな起動
方法を知ることができます。
「iOSシミュレータに対する操作」 (21 ページ):ジェスチャやハードウェア操作など、iOSシ
ミュレータ上でアプリケーションを操作するさまざまな方法を説明しています。
「iOSシミュレータによるテストとデバッグ」 (30 ページ):iOSシミュレータに付属する各種
ツールを紹介します。アプリケーションのテストやデバッグに活用できます。
「iOSシミュレータの動作設定(Xcode Scheme)」 (39 ページ):Xcodeのスキームに基づき、
iOSシミュレータの動作をカスタマイズする方法を説明します。
関連項目
関連文書として次のようなものがあります。
●
●
●
iOSアプリケーション開発の基本事項については、『Start Developing iOS Apps Today 』を参照して
ください。
Xcodeにおける開発手順のカスタマイズについては、『Xcode Overview 』を参照してください。
デバイス上でアプリケーションをテストし、App Storeに登録し、配布する手順については、『App
Distribution Quick Start 』を参照してください。
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iOSシミュレータの概要
iOSシミュレータ(Xcodeに付属)は、iPhoneやiPadのユーザインターフェイスを、Macコンピュータ
上のウインドウに表示します。キーボードやマウスを使って、タップやデバイスの回転、その他のア
クションをシミュレートできるようになっています。
この章ではiOSシミュレータの基本機能を説明します。この章ではiOSシミュレータの基本的な使い方
を紹介します。自作のiOSアプリケーションを用意し、実際に使ってみてください。適当なアプリケー
ションがなければ、『HelloWorld 』サンプルコードを利用してもよいでしょう。iOSシミュレータの詳
しい操作方法や、これを使ってアプリケーションをテスト、デバッグする手順については、次章以降
を参照してください。
XcodeからiOSシミュレータにアクセスする
XcodeからiOSシミュレータを利用する方法は2通りあります。iOSシミュレータ上でアプリケーション
を実行するやり方と、iOSシミュレータを単独で(アプリケーションを実行することなく)起動する
やり方です。
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iOSシミュレータの概要
XcodeからiOSシミュレータにアクセスする
iOSシミュレータ上でアプリケーションを実行する
iOSシミュレータ上でアプリケーションの動作をテストするためには、Xcodeプロジェクトから直接、
iOSシミュレータ上で起動、実行するのが簡単でしょう。「Xcode scheme」ポップアップメニューか
ら、たとえばiPhone 5用、あるいはiPad Air用の「iOS Simulator」を選択し、「Run」をクリックしてく
ださい。Xcodeはプロジェクトをビルドし、Macの画面上でiOSシミュレータを起動した上で、最新版
のアプリケーションを実行します(図 1-1を参照)。
図 1-1
iPhoneのシミュレーション環境でHelloWorldアプリケーションを実行している様子
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iOSシミュレータの概要
インストール済みアプリケーションを表示する
注意: iPad用アプリケーションのテストは、iPadのシミュレーション環境でしか実施できま
せん。iPhone用またはユニバーサルアプリケーションであれば、iPhoneとiPadのどちらをシ
ミュレートした環境でもテスト可能です。
iOSシミュレータを単独で起動する
アプリケーションを実行せず、iOSシミュレータを単独で起動したいこともあります。デバイスのホー
ム画面からアプリケーションを適切に起動できるかテストする、あるいはiOSシミュレータ上でSafari
を起動し、ウェブアプリケーションをテストする場合に有用です。
iOSシミュレータを単独で起動するには
1.
Xcodeを起動します。
2.
次のいずれかを実行してください。
●
●
「Xcode」>「Open Developer Tool」>「iOS Simulator」コマンドを実行する。
Controlキーを押しながらDock内の「Xcode」アイコンをクリックし、ショートカットメニュー
から「Developer Tool」>「iOS Simulator」を実行する。
iOSシミュレータが起動し、直近に使ったシミュレート対象デバイスのホーム画面が現れます。
インストール済みアプリケーションを表示する
ホーム画面には、iOS シミュレーション環境にインストール済みのアプリケーションがすべて現れま
す。iOSシミュレータのホーム画面に、アプリケーションからアクセスする方法は2通りあります。
●
Command-Shift-Hキーを押す。
●
「Hardware」>「Home」を実行する。
iOSデバイスのホーム画面と同様、シミュレータのホーム画面も複数のページから成ります。「Home」
ボタンを押す(または「Hardware」メニューでホーム画面に切り替える)と、ホーム画面の2ページ
目が現れます。先頭ページ(インストール済みアプリケーションが並ぶ画面)に切り替えたいとき
は、シミュレータ画面上で右にドラッグし、先頭のホーム画面までスワイプしてください。
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iOSシミュレータの概要
インストール済みアプリケーションを表示する
ホーム画面には、iOSシミュレータにロード済みのアプリケーションがすべて並んでいます。図 1-2を
参照してください。
図 1-2
iOSシミュレータのホーム画面
ここに示したホーム画面上のアプリケーションは、iOSデバイスのシミュレーション環境に特有のも
のです。「Calendar」はiOS 7.0以降のiOSシミュレータでしか動作しませんし、「Passbook」もiPhone
上でしか動作しないので、旧版のiOS、あるいはiPhone以外のデバイスに切り替えると、このアプリ
ケーションは現れなくなるからです。
インストール済みアプリケーションを使って、ユーザとの対話機能をテストしてみましょう。たとえ
ばゲームをテストする場合、Game Centerが正しく使われているかどうか、iOSシミュレータ上で確認
できます。
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iOSシミュレータの概要
Safariでウェブアプリケーションをテストする
Safariでウェブアプリケーションをテストする
iOSシミュレータのホーム画面からSafariを起動できます。これを利用して、Mac上で直接、iOS用の
ウェブアプリケーションをテストしてみましょう。
1.
ホーム画面で「Safari」をクリックします。
2.
Safariのアドレス欄に「apple.com」と入力し、Returnキーを押してください。
Macがインターネットに接続されていれば、Safari上にAppleのウェブサイトが表示されます。図 1-3を
参照してください。
図 1-3
iOSシミュレータのSafari上にAppleのウェブサイトが表示されている様子
「Maps」を使って場所の認識処理をシミュレートする
iOSシミュレータにはiOSアプリケーションのデバッグ支援ツールが組み込まれています。ここでデ
バッグできる機能のひとつに、場所の認識機能があります。例として、実際とは違う場所にいるよう
シミュレートし、「Maps」アプリケーションで確認してみましょう。
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iOSシミュレータの概要
「Maps」を使って場所の認識処理をシミュレートする
1.
ホーム画面で「Maps」をクリックします。
2.
「Debug」>「Location」>「Custom Location」コマンドを実行します。
3.
すると現れるウインドウに、緯度として「40.75」、経度として「-73.75」を入力してくださ
い。
4.
「OK」を押します。
5.
シミュレータ上のデバイス画面の左下隅にある、「Current Location」ボタンを押してください。
すると、ニューヨークのロングアイランド高速道路付近が、現在位置として青い点で示されます(図
1-4を参照)。
図 1-4
iOSシミュレータ上で「Maps」を起動し、経緯度をシミュレートしている様子
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iOSシミュレータの概要
シミュレート対象デバイスおよびiOSバージョンの変更
シミュレート対象デバイスおよびiOSバージョンの変更
iOSシミュレータは、さまざまな版のiOSが動作する、各種のデバイスをシミュレートできます。iOSの
版ごとに独自のシミュレーション環境があり、設定内容や動作するアプリケーションもそれぞれ異な
ります。デバイスの種類とiOSの版の一般的な組み合わせに対応して、それぞれシミュレータがあり
ます。それ以外のデバイスとiOSの版でテストしたければ、新たにシミュレータを追加することも可
能です。もっとも、あらゆる組み合わせが可能なわけではありません。
注意: iPad mini用アプリケーションのテストは、iPadのシミュレーション環境で行います。
各種のデバイスに対応したシミュレータがあるので、これを切り替えてみれば、表示の大きさや動作
するアプリケーションの違いが分かるでしょう。たとえば「Passbook」アプリケーションはiPhoneで
しか動作しないので、iPad 2やiPad Airのシミュレーション画面には現れません。
シミュレート対象デバイスを切り替えるには
1.
「Hardware」>「Device」メニュー以下からデバイスを選択してください。
iOSシミュレータの表示が当該デバイスのものに変わります。
シミュレートしようとするデバイスの種類とiOSの版の組み合わせが「Hardware」>「Device」メニュー
以下になければ、新規に作成してください。
シミュレータを追加するには
1.
「Hardware」>「Device」>「Manage Devices」コマンドを実行してください。
「Devices」ウインドウが開きます。
2.
左側の欄の一番下にある「Add」ボタン(「+」の表示)を押してください。
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iOSシミュレータの概要
シミュレート対象デバイスおよびiOSバージョンの変更
3.
するとダイアログが現れるので、「Simulator Name」欄に名前を入力し、「Device Type」ポップ
アップメニューからデバイスを選択します。
4.
さらに、「iOS Version」ポップアップメニューからiOSの版を選択します。
該当するiOSの版がメニューに現れなければ、「Download more simulators」を選択し、シミュレー
タをダウンロードする手順に進んでください。
5.
「Create」を押します。
必要なiOSの版がなければ、ダウンロードして追加します。
シミュレータをダウンロードするには
1.
Xcodeで「Xcode」>「Preferences」コマンドを実行します。
2.
「Preferences」ウインドウで「Downloads」を押してください。
3.
「Components」画面で、追加したい旧シミュレータの版を選択し、「Install」ボタンを押します。
「Devices」ウインドウではシミュレータの削除や改名もできます。
シミュレータを削除するには
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iOSシミュレータの概要
シミュレート対象であるiPhoneやiPadの大きさ変更
1.
iOSシミュレータの「Hardware」>「Device」>「Manage Devices」コマンド、またはXcodeの
「Window」>「Devices」コマンドを実行してください。
「Devices」ウインドウが開きます。
2.
左側の欄で、削除しようとするシミュレータを選択します。
3.
左側の欄の一番下にある「Action」ボタン(「Add」ボタンの隣にある歯車)を押してください。
4.
「Action」メニューから「Delete」を実行します。
5.
表示される確認ダイアログで「削除」をクリックします。
改名する場合も同様に、「Action」メニューから「Rename」を実行し、新しい名前を入力してくださ
い。
「Devices」ウインドウに現れる実デバイスの管理方法については、『Devices Window Help 』を参照し
てください。
シミュレート対象であるiPhoneやiPadの大きさ変更
合理的な範囲内の、さまざまな大きさの画面でアプリケーションの動作をテストしたいときは、大き
さの変更が可能なデバイスを選択します。
Xcodeの「Scheme」ポップアップメニューから「Resizable iPhone」または「Resizable iPad」を選択し、
「Run」を押してください。あるいはiOSシミュレータ上で、「Hardware」>「Device」メニュー以下
の「Resizable iPhone」または「Resizable iPad」を選択しても同じです。iOSシミュレータのウインドウ
下部にある「Width」欄および「Height」欄に画面の寸法を入力し、「Apply」を押してください。す
ると動作しているアプリケーションの、画面の大きさが変わります。変更可能な範囲を外れた幅や高
さを指定すると、自動的に所定の範囲内の寸法に調整されます。
Important: iOSシミュレータのウインドウで変更できるのは、サードパーティ製アプリケーション
だけであり、ホーム画面やiOS付属のアプリケーションは対象外です。
あらゆるiOSデバイスに対して単一のストーリーボードのみ使っていても、アプリケーションはさま
ざまな大きさクラスの画面に対応できます。各種の大きさクラスをシミュレートするには、「Width」
欄や「Height」欄の隣にあるポップアップメニューから「Regular」または「Compact」を選択し、
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iOSシミュレータの概要
シミュレート対象であるiPhoneやiPadの大きさ変更
「Apply」を押してください。縦置きや横置きのiPadをシミュレートする場合、幅および高さとして
「Regular」を指定します。たとえばiPadの「マスタ-詳細」インターフェイスでは、テーブルビューが
左側、詳細ビューが右側に現れます。
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iOSシミュレータの概要
シミュレート対象であるiPhoneやiPadの大きさ変更
横置きのiPhoneをシミュレートする場合、幅および高さとして「Compact」を指定します。縦置きの
iPhoneは、幅として「Compact」、高さとして「Regular」を指定することによりシミュレートできま
す。たとえば縦置きのiPhoneで「主/副」インターフェイスをシミュレートすると、主たるビューが画
面全体にちょうど収まるようになります。テーブルビューである項目を選択すると、副ビューに遷移
します。
Interface Builderで各種の大きさクラスをプレビューする方法については、「About Designing for Multiple
Size Classes」を参照してください。
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iOSシミュレータの概要
iOSシミュレータの設定を変更する
iOSシミュレータの設定を変更する
iOSシミュレータの各種設定を、テストしやすいように変更できます。iOSシミュレータの「Settings」
アプリケーションは、ホーム画面の「Settings」をクリックすると開きます。図 1-5に、iOS シミュレー
ション環境で起動したときに現れる、「Settings」アプリケーションの画面を示します。
図 1-5
iPadのシミュレーション環境で起動した「Settings」アプリケーションの様子
iOSシミュレータの設定画面は、ハードウェアデバイスのそれとは違います。これは、アプリケーショ
ンのテスト用として設計されているか、実稼働を目的としているか、の違いです。iOSシミュレータ
の設定画面は当然ながら、テストを意識したものになっています。たとえば「Accessibility」メニュー
を見ると、iOSシミュレータには「Accessibility」インスペクタを開く機能があるのに対し、デバイス
の場合はアクセシビリティに関する各種機能をオン/オフするようになっているのです。
アクセシビリティ(ユーザ補助機能)やローカライズに関しては、テストの観点に応じて、さまざま
に設定を切り替えることができます。その方法について詳しくは、「iOSシミュレータによるテスト
とデバッグ」 (30 ページ)を参照してください。
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iOSシミュレータの概要
デバイスを回転する
注意: iOSシミュレータの「Settings」アプリケーションで施した変更は、現在動作中のシ
ミュレーション環境にのみ反映されます。
デバイスを回転する
iOSシミュレータ上では、シミュレート環境のデバイスを、物理デバイスそのものと同じように操作
できます。
デバイスの回転は、「Hardware」>「Rotate Left」コマンドで行います。図 1-6を見ると、ハードウェ
アデバイスを回転したときと同様に、「Settings」画面が回転しています。
図 1-6
iOS のシミュレーション環境でiPadを回転した様子
iOSシミュレータとデバイスの両方でテストする
iOSシミュレータは、設計やラピッドプロトタイプ、テストの支援用に設計されていますが、ここで
テストすれば充分ということにはなりません。ひとつには、シミュレータでは動作しないアプリケー
ションがあるからです。たとえば「Camera」アプリケーションはハードウェアデバイス上でのみ動作
し、シミュレータで動かすことはできません。
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iOSシミュレータの概要
iOSシミュレータを終了する
さらに、バグや性能上の問題の中には、iOSシミュレータでは顕在化しないものもあります。シミュ
レータの制約については、「iOSシミュレータによるテストとデバッグ」 (30 ページ)も参照してく
ださい。デバイス上で行うアプリケーションのテストについて詳しくは、『App Distribution Guide 』
の「Launching Your App on Devices」も参照してください。
iOSシミュレータを終了する
iOSシミュレータは明示的に終了しない限り動作し続けます。Xcodeを終了しても、iOSシミュレータ
は独立したアプリケーションなので、そのまま動作します。終了したいときは、「iOS Simulator」>
「Quit iOS Simulator」コマンドを実行してください。ただし動作しているXcodeはそのままです。
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20
iOSシミュレータに対する操作
iOSシミュレータの環境は、操作のしかたが実デバイスとは違います。この章では、次のような作業
の方法を説明します。
●
回転、シェイクなど、ハードウェアに対するアクションをシミュレートする
●
マルチタッチジェスチャを、マウスとキーボードでシミュレートする
●
シミュレーション環境にインストールしたアプリケーションを削除する
●
シミュレータとMac間で、テキストや画像をコピー/ペーストする
ハードウェアの操作をシミュレートする
iOSシミュレータ上では、ユーザがデバイスに対して行うほとんどの操作をシミュレートできます。
表 2-1に、iOSシミュレータの「Hardware」メニューから実行可能な操作を示します。
表 2-1
iOSシミュレータの「Hardware」メニューから実行可能な操作
メニュー項目
ハードウェアに対するアクション
Rotate Left
シミュレータを左に回転します。
Rotate Right
シミュレータを右に回転します。
Shake Gesture
デバイスを振る操作をシミュレートします。
Home
対象デバイスのホーム画面を表示します。
Lock
ロック画面を表示します。
Simulate Memory Warning
最前面のアプリケーションにメモリ不足の警告を送信します。
メモリ不足状態の対処方法については、「Observing Low-Memory
Warnings」 in iPhone Application Programming Guide を参照してくだ
さい。
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21
iOSシミュレータに対する操作
ユーザのジェスチャをシミュレートする
メニュー項目
ハードウェアに対するアクション
Toggle In-Call Status Bar
ステータスバーを通常状態と通話状態との間で切り替えます。通
話中やナビゲーション実行中にアプリケーションを起動したとき、
どのようなユーザインターフェイスになるかを確認するために有
用です。電話やFaceTimeで通話中、あるいはiOS 6の「Maps」でナ
ビゲーション実行中は、このステータスバーが通常よりも縦長に
なります。
「Keyboard」>「iOS
Uses Same Layout As OS
X」
iOS用のキーボードとして、Macのキーボード配列に最も近いもの
を自動的に選択します。
「Keyboard」>「Connect
Hardware Keyboard」
Macキーボードでシミュレータに入力するように切り替えます。
キーボードドックや無線キーボードを使っている状況をシミュレー
トするために使います。
「Keyboard」>「Toggle
Software Keyboard」
画面上にソフトウェアキーボードが現れている状態に切り替えま
す。この選択肢は、ハードウェアキーボードがデバイスに接続さ
れている場合にのみ現れます。
External Displays
選択された解像度で、デバイスのTV Out信号をシミュレートする
ウインドウを開きます。
ユーザのジェスチャをシミュレートする
iOSシミュレータでは、一般的なマルチタッチジェスチャを、マウスとキーボードで実行できます。
表 2-2に、iOSシミュレータで実行できるジェスチャを示します。ジェスチャについて詳しくは、『iOS
Human Interface Guidelines 』を参照してください。
注意: ジェスチャはいずれも、マウスやトラックパッドで実行できます。
表 2-2
iOSシミュレータで実行できるジェスチャ
ジェスチャ
デスクトップアクション
タップ
クリック。
タッチアンドホー
ルド
マウスボタンまたはトラックパッドを長押し。
ダブルタップ
ダブルクリック。
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iOSシミュレータに対する操作
iOSシミュレータでキーボードの動作をシミュレートする
ジェスチャ
デスクトップアクション
ドラッグ
ドラッグ。
スワイプ
ドラッグ。
フリック(はじ
く)
素早くドラッグ。
2本指ドラッグ
1. 2本指ドラッグを発生させようとする位置にポインタを置きます。
2. Optionキーを押したままにします。
3. 指でタッチする位置を表す円を、開始位置に移動します。
4. Shiftキーを押したまま、円を目的の中心位置まで移動してからShiftキー
を放すことにより、ピンチターゲットの中心点を移動します。
5. Shiftキーとマウスボタンを押したまま、ドラッグしたい方向に円を描
くように動かした後、Shiftキーとマウスボタンを離します。
ピンチ
1. ピンチを発生させようとする位置にポインタを置きます。
2. Optionキーを押したままにします。
3. 指でタッチする位置を表す円を、開始位置に移動します。
4. Shiftキーを押したまま、円を目的の中心位置まで移動してからShiftキー
を放すことにより、ピンチターゲットの中心点を移動します。
5. マウスボタンを押したまま、その円内から終了位置まで移動した後、
Optionキーを離します。
回転
1. 回転を発生させようとする位置にポインタを置きます。
2. Optionキーを押したままにします。
3. 指でタッチする位置を表す円を、開始位置に移動します。
4. Shiftキーを押したまま、円を目的の中心位置まで移動してからShiftキー
を放すことにより、ピンチターゲットの中心点を移動します。
5. マウスボタンを押したまま、その円を終了位置まで回転した後、Option
キーを離します。
iOSシミュレータでキーボードの動作をシミュレートする
iOSシミュレータは、デバイスの動作を正確にシミュレートするため、OS X用ではなくiOS用のキー
ボード配列を使います。「iOS Uses Same Keyboard Layout As OS X」をオンにすれば、Macのキーボー
ド配列に最も近いものを選ぶようになります。多くの場合、オンのままで構いません。しかしこれを
無効にし、MacとiOSシミュレータでまったく異なるキーボード配列を選択する必要があれば、
「Hardware」>「Keyboard」>「iOS Uses Same Keyboard Layout As OS X」をオフにしてください。
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iOSシミュレータに対する操作
アプリケーションのインストールと削除
Macのキーボード配列に最も近いもの以外も、iOSシミュレータの設定画面で自由に選択できます。
iOSシミュレータの自動選択に任せたのでは対処できないようなキーボード配列を使っている場合に
有用です。
まず、ハードウェアキーボードの言語として、開発言語および地域(たとえば「English(United
States)」)を選択してください。
ハードウェアキーボードの言語と地域を設定するには
1.
ホーム画面から「設定(Settings)」を開きます。
2.
「General」>「Keyboard」>「Hardware Keyboard」を実行してください。
3.
ハードウェアキーボードに設定する開発言語と地域を選択します。
次に、言語(たとえば「French」)と配列(たとえば「Accented AZERTY」)を指定して、新規にキー
ボードを追加します。
新規にキーボードを追加するには
1.
ホーム画面から「設定(Settings)」を開きます。
2.
「General」>「Keyboard」>「Keyboards」>「Add New Keyboard」コマンドを実行してくださ
い。
3.
言語とキーボード配列を選択します。
4.
「終了」をタップします。
ハードウェアキーボードの言語を、ここで追加したキーボード言語に合わせて設定(たとえば
「French(Canada)」を選択)し、テストしてください。たとえば、アプリケーションを開き、テキス
トを入力する際に、この新しいキーボードを次のようにして選択します。
キーボードの切り替えは、「地球」キーを1回タップしておこないます。
他のキーボードにも、「地球」キーを繰り返しタップすることにより、順次切り替え可能です。
利用可能なキーボードをすべて表示したいときは、「地球」キーをタップし、そのまま保持して
ください。
アプリケーションのインストールと削除
iOSシミュレータ用にアプリケーションをビルドすると、Xcodeはこれを自動的に、選択されているシ
ミュレーション環境にインストールします。シミュレーション環境を6.0から5.1に切り替えると「Maps」
がなくなるのと同様、ビルドしたアプリケーションがあるのは、インストールした環境だけです。
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24
iOSシミュレータに対する操作
iOSシミュレータのコピー/ペースト機能
注意: App Storeから入手したアプリケーションをシミュレーション環境にインストールす
ることはできません。
シミュレーション環境にインストールしたアプリケーションを削除するには
1.
アプリケーションを削除しようとするシミュレーション環境を、「Hardware」>「Device」以下
から選択します。
2.
削除したいアプリケーションのアイコン上にポインタを置き、マウスボタンまたはトラックパッ
ドを長押ししてください。
3.
アプリケーションアイコン上の「閉じる」ボタンを押すと、アプリケーションが削除されます。
4.
表示される確認ダイアログで「削除」をクリックします。
5.
アイコンの揺れは、Shift-Command-Hキーを押すか、「Hardware」>「Home」を実行すれば止ま
ります。
iOSシミュレータのコピー/ペースト機能
iOSシミュレータには各種のコピー/ペースト機能が組み込まれており、シミュレータ内、およびシミュ
レータとMacの間で実行できます。シミュレータ内でコピー/ペーストする手順はiOSデバイス上と同
じですが、Macとの間で実行する場合は手順が増えます。文字列と画像がコピー/ペーストの対象にな
ります。
iOSシミュレータ上で、ウェブページから画像をコピーする場合、事前に「Photos」アプリケーショ
ンに保存してください。
画像をウェブページから「Photos」アプリケーションに保存するには
1.
保存しようとする画像上にマウスポインタを置き、マウスボタンまたはトラックパッドを長押し
します。
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25
iOSシミュレータに対する操作
iOSシミュレータのコピー/ペースト機能
2.
メニューが現れるので、「Save Image」を実行して、iOSシミュレータ内の「Photos」アプリケー
ションに保存してください。
画像は「Photos」アプリケーションの「Saved Photos」アルバムに保存されます。
あるいは、画像をMac上のFinderからiOSシミュレータにドラッグしても、「Saved Photos」アルバム
に保存できます。
iOSシミュレータ内で画像をコピーするには
1.
「Photos」アプリケーション上で、コピーする画像を開きます。
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26
iOSシミュレータに対する操作
iOSシミュレータのコピー/ペースト機能
2.
コピーしようとする画像上にマウスポインタを置き、Commandキーを押しながらマウスボタンま
たはトラックパッドを長押しします。
3.
「Copy」をクリックします。
4.
iOSシミュレータ外のMac側にペーストする予定であれば、代わりに「Edit」>「Copy」を実行し
てください。
これにより、Mac側のクリップボードに画像がコピーされます。Mac上の他のアプリケーションに
画像をペーストする際は、当該アプリケーションの「Paste」コマンドを実行してください。
iOSシミュレータ内でテキストをコピーするには
1.
挿入ポイントをクリックすると選択ボタンが現れます。
2.
「Select」ボタンで隣接する語、あるいは「Select All」でテキスト全体を選択します。
3.
グラブポイントをドラッグすることにより、選択範囲を増減できます。
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iOSシミュレータに対する操作
シミュレータのスクリーンショットを取り込む
4.
「Copy」をクリックします。
5.
iOSシミュレータ外のMac側にペーストする予定であれば、「Edit」>「Copy」を実行してくださ
い。
これにより、Mac側のクリップボードにテキストがコピーされます。Mac上の他のアプリケーショ
ンにテキストをペーストする際は、当該アプリケーションの「Paste」コマンドを実行してくださ
い。
テキストをiOSシミュレータ内にペーストするには
1.
ペーストするテキストがMac側からコピーしたものであれば、「Edit」>「Paste」コマンドを実
行してください。
その結果、Macのクリップボードからシミュレータのクリップボードに、テキストがコピーされ
ます。
2.
テキストのペースト位置を見つけます。
3.
この位置をダブルクリックし、「Paste」を実行してください。
シミュレータのスクリーンショットを取り込む
iOSシミュレータ側のスクリーンショットを、Mac側のクリップボードにコピーし、あるいはファイル
として保存することができます。
●
●
Mac側のクリップボードにコピーする場合は「Edit」>「Copy Screen」コマンドを実行します。
ファイルとして保存するには、「File」>「Save Screen Shot」コマンドを実行してください。Mac
側のデスクトップ上に保存されます。
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iOSシミュレータに対する操作
シミュレート対象デバイスの画面を表示する
シミュレート対象デバイスの画面を表示する
iOSシミュレータはどのMacコンピュータ上でも動作しますが、その外観は機種によって若干違いま
す。シミュレート対象デバイスの解像度が高すぎて、画面上にあるiOSシミュレータのウインドウに
入りきらない場合、「Window」>「Scale」>「比率 」で縮小率を調整してください。
Retinaおよび非Retinaディスプレイの表示をテストする
iOSシミュレータでは、Retinaディスプレイの有無も切り替え可能です。RetinaディスプレイつきのMac
でなくても構いません。
注意: 以下に説明するように、Retinaディスプレイか否かによって表示の大きさを調整する
機能は、拡大率が100%のときにのみ働きます。
RetinaディスプレイなしのMac上でシミュレータを実行した場合、iOSアプリケーション側の1ピクセル
がMac側の1ピクセルにマップされます。ポイント対ポイントではありません。したがって、この上で
RetinaディスプレイつきのiOSデバイスをシミュレートすると、RetinaディスプレイなしのiOSデバイス
の場合に比べてピクセル数が多くなるため、見た目の大きさは2倍になります。
一方、RetinaディスプレイつきのMac上で実行した場合は、iOSアプリケーション側の1ポイントがMac
側の1ポイントにマップされます。したがって、この上でRetinaディスプレイつきのiOSデバイスをシ
ミュレートすると、各ポイントが1ピクセルで構成されます。これに対し、Retinaディスプレイなしの
iOSデバイスであれば、各ポイントが2ピクセルで構成されます。
ポイントをピクセルにマップする方式について詳しくは、「Points Versus Pixels」 in Drawing and Printing
Guide for iOS を参照してください。
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29
iOSシミュレータによるテストとデバッグ
iOSシミュレータは、実デバイス上でアプリケーションをテストする前段階で、ラピッドプロトタイ
プその他の開発作業に活用できます。それだけでなく、iOSアプリケーションやウェブアプリケーショ
ンのテストやデバッグにもおおいに役立ちます。iOSシミュレータに組み込まれたツールを活用し、
効率的に開発作業を進めてください。
iOSシミュレータによるテストの限界
iOSシミュレータは有用なツールですが、万能ではありません。これ自体はMac上で動作するアプリ
ケーションなので、実デバイスとは違い、大容量のメモリが使えます。したがって、メモリ消費量に
ついては正確なテストになりません。同じ理由で、ユーザインターフェイスの性能テストも、実デバ
イス上で行う必要があります。iOSシミュレータ上では、実際よりも高速かつ滑らかに反応するかも
知れません。
さらに、ユーザインターフェイス要素によっては、実デバイス上でタッチ操作するよりも、iOSシミュ
レータ上でマウス操作する方が使いやすい、ということもあります。
最後に、iOSシミュレータにはハードウェアやAPIに関する制約がいくつかあるので、実デバイス上と
は異なる動作になるかも知れません。
ハードウェアの制約
iOSデバイスの機能はほとんどシミュレート可能ですが、一部のハードウェア機能は実デバイス上で
直接テストしなければなりません。具体的には次のような機能です。
●
●
●
Motion のサポート
●
加速度センサー
●
ジャイロスコープ
オーディオとビデオの入力
●
カメラ
●
マイク
近接センサー
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
iOSシミュレータによるテストの限界
実デバイス上でアプリケーションをテストするためには、iOSデベロッパプログラムにメンバー登録
する必要があります。iOS Developer Programへの加入について詳しくは、『App Distribution Guide 』の
「Managing Accounts」を参照してください。
OpenGL ESの制約
iOSシミュレータは、OpenGL ES 1.1、2.0、3.0それぞれの完全な実装を備えており、アプリケーション
開発に利用することができます。iOSシミュレータが備える能力はA7 GPU相当です。iOSハードウェア
について詳しくは、『iOSDeviceCompatibilityReference 』を参照してください。iOSシミュレータをハー
ドウェアプロセッサと比べると、いくつか違いがあります。
●
iOSシミュレータはタイルベースの遅延レンダラを使用しません。
●
ピクセル単位の精度は、グラフィックスハードウェアと同等でありません。
●
iOSシミュレータにおけるOpenGL ESのレンダリングパフォーマンスは、実際のデバイス上におけ
るOpenGL ESのパフォーマンスとまったく関係ありません。
Important: iOSシミュレータのOpenGL ESサポートは、OpenGL ESアプリケーションの開発に取り
かかる際の支援機能として使ってください。iOSデバイスに搭載されているグラフィックスプロ
セッサと、まったく同等の処理性能や能力を備えているわけではありません。必ず、実際のデバ
イス上で描画コードをプロファイリングして最適化してください。
APIの制約
iOSシミュレータには、APIやそれを使って操作する次のような機能に関して制約があります。
●
Appleプッシュサービス
●
Photos、Contacts、Calendar、Remindersにアクセスする際のプライバシー警告
●
UIBackgroundModesキー
●
iCloudによる書類の同期とキー値ストレージ機能
以下のフレームワークは使用できません。
●
External Accessory
●
Media Player
●
Message UI
●
Event Kit
●
UIKitのUIVideoEditorControllerクラス
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
iPad miniでの動作をテストする
iOSの版に関する制約
iOSシミュレータは完全な後方互換性を維持していません。iOS 7.1に加え、iOS 7.0および6.1にも対応
しています。
iOS 7.0以降の環境をシミュレートするためにはXcode 5が必要です。
iPad miniでの動作をテストする
iPad miniはiOSシミュレータの対象デバイスに入っていませんが、テストは可能です。Retinaディスプ
レイなしのiPadをシミュレートし、テスト対象アプリケーションを実行してください。
64ビット互換性のテスト
iOSシミュレータで、64ビットハードウェアをシミュレートできます。名前に「64-bit 」という文字列
が含まれるターゲットを選択すれば、アプリケーションは自動的に、64ビットデータ型(『64-Bit
Transition Guide for Cocoa Touch 』を参照)を用いてコンパイルされるようになります。データ領域の
大きさや揃え境界の違いに対応するため、コードに変更を施しますが、これをシミュレータでテスト
できます。
64ビットABIの変更点には、シミュレータではテストできないものもあります。たとえば、関数やメ
ソッドの呼び出しに関係する違いは、実iOSハードウェア上で実行しなければ検出できません。した
がって、iOSアプリケーションの開発全般に言えることですが、シミュレータが有効なのは開発/テス
ト工程の初期段階に限ります。
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
アプリケーションのアクセシビリティをテストする
アプリケーションのアクセシビリティをテストする
「Accessibility」インスペクタで、アプリケーションのアクセシビリティをテストできます。ここに
は、アクセス可能な要素それぞれについて、アクセシビリティ情報が表示されるようになっていま
す。図 3-1に、iOSシミュレータ上で動作している「Accessibility」インスペクタを示します。
図 3-1
iPhoneのシミュレーション環境で「Accessibility」インスペクタを使っている様子
「Accessibility」インスペクタを起動するには
1.
iOSシミュレータの動作中に、「Hardware」>「Home」コマンドでホーム画面に切り替えてくだ
さい。
2.
「Settings」をクリックします。
3.
「General」>「Accessibility」コマンドを実行します。
4.
その上で、「Accessibility Inspector」スイッチをオンにしてください。
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33
iOSシミュレータによるテストとデバッグ
アプリケーションのアクセシビリティをテストする
注意: iOSシミュレータをいったん終了して再起動しても、「Accessibility」インスペク
タを明示的にオフにしない限りアクティブなままです。
iOSシミュレータ上で「Accessibility」インスペクタをオンにすると、シミュレータの動作が変わりま
す。要素をクリックしたとき、それがアクティブになるのではなく、インスペクタのフォーカスが当
該要素に移動するようになるのです。要素をアクティブにするためには、ダブルクリックしなければ
なりません。さらに、「Accessibility」インスペクタの動作中は、スワイプやドラッグのジェスチャが
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
アプリケーションのローカライズ状態をテストする
認識されません。このジェスチャをするときは、いったん「Accessibility」インスペクタを無効にする
必要があります。これは、インスペクタパネルの左上隅にある、「閉じる」コントロール(「X」を
丸で囲んだ表示)で行います。
「Accessibility」インスペクタによるアクセシビリティのテストについて詳しくは、『Verifying App
Accessibility on iOS 』を参照してください。
アプリケーションのローカライズ状態をテストする
いくつものローカライズを施したアプリケーションについては、iOSシミュレータの
「Internationalization」設定を変更してテストできます。iOS上で言語や地域を設定する手順について
は、「Reviewing Language and Region Settings on iOS Devices」 in Internationalization and Localization
Guide を参照してください。アプリケーションのローカライズについて詳しくは、『Internationalization
and Localization Guide 』を参照してください。
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
ウェブアプリケーションをテストする
ウェブアプリケーションをテストする
ウェブアプリケーションを開発し、iOSデバイス上で実行したときの使いやすさをテストするために
も、iOSシミュレータは有用です。
iOSシミュレータ上でウェブアプリケーションをテストするには
1.
テストしようとするシミュレータ環境を、「Hardware」>「Devices」メニュー以下のデバイスを
選択する形で指定します。
2.
iOSシミュレータのホーム画面からSafariを起動してください。
3.
ブラウザ上で、対象ウェブアプリケーションにアクセスします。
iOS用ウェブアプリケーションの開発について詳しくは、『Getting Started with iOS Web Apps 』を参照
してください。
iCloudのテスト
Important: iCloudシミュレータでテストできるのは、iOS 7.0以降のシミュレート時に限ります。
iCloudを使うアプリケーションを開発する場合、iOSシミュレータ上でiCloud同期機能をテストした後、
実デバイス上でのテストに移るとよいでしょう。テスト用デバイスの台数が足りない場合でも、多数
のデバイスにまたがるiCloud同期機能のテストが可能です。
iCloudの同期機能をシミュレートするためには、まず、Apple IDを使ってiOSシミュレータにサインイ
ンする必要があります。iOSシミュレータでiCloudのテストを行うために、専用のApple IDをぜひ用意
するよう推奨します。
Apple IDを使ってiOSシミュレータにサインインするには
1.
iOS 7.1以降が動作するデバイスを指定して、iOSシミュレータを起動します。
2.
ホーム画面で「設定(Settings)」を開き、「iCloud」を選択してください。
3.
Apple ID とパスワードを入力して「Sign In」をクリックします。
するとiCloudの同期機能をテストできるようになります。アプリケーションがiCloudと正常に同期し
ているか、「Debug」>「Trigger iCloud sync」コマンドで確認してください。
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
バックグラウンドでのフェッチ処理のテスト
バックグラウンドでのフェッチ処理のテスト
頻繁に内容が更新されるアプリケーションで、バックグラウンドでのフェッチ機能を利用している場
合、XcodeとiOSシミュレータを使ってこの機能をテストできます。iOSシミュレータ上でアプリケー
ションを起動し、Xcodeに切り替えて、「Debug」>「Simulate Background Fetch」を実行してくださ
い。
スキームの設定によって、Xcodeがアプリケーションを起動する方法を制御することも可能です。起
動後すぐに一時停止状態にしたい場合は、「Product」>「Scheme」>「Edit Scheme」コマンドを実
行し、「Background Fetch」チェックボックスをオンにしてください。
iOSシミュレータ上でデバッグ用ツールを使う
iOSシミュレータの「Debug」メニュー以下から、表 3-1に示すデバッグツールを起動できます。
表 3-1
iOSシミュレータの「Debug」メニューから起動できるデバッグツール
メニュー項目
起動した結果
Toggle Slow
Animationsin
Frontmost App
アプリケーション内で再生するアニメーションの速度を落とします。アニ
メーションに問題がないか、確認する際に有用でしょう。なお、Shiftキーを
3回押す、という方法でも起動可能です。
Color Blended
Layers
レイヤが重なり合っている部分を目立つように表示します。複数のレイヤを
重ねて描画している箇所は、赤の強調表示になります。一方、重ね合わせな
しで描画している箇所は、緑の強調表示になります。この機能をオンにした
とき、赤い部分が減るようにすれば、描画性能が大幅に向上します。表のス
クロールが遅い場合、レイヤの過多が原因であることも少なくありません。
Color Copied
Images
「Core Animation」がコピーした画像が青になるようオーバーレイ表示しま
す。
Color
Misaligned
Images
境界がデスティネーションピクセルに揃っていない画像上に、マゼンタを
オーバーレイ表示します。マゼンタのオーバーレイができない場合は、所定
の拡大率で描画した画像上に、黄をオーバーレイ表示します。
Color Off Screen
Rendered
オフスクリーンで描画した上に、黄をオーバーレイ表示します。
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iOSシミュレータによるテストとデバッグ
クラッシュログを表示する
メニュー項目
起動した結果
Location
Core Locationを使い、実際とは異なる場所で実行しているようシミュレート
します。場所の設定を次の中から選んでください。
●
None。場所を返しません。場所データがない場合の応答をテストする
際に使います。
●
Custom Location。緯度と経度を指定します。
●
Apple Stores。Apple直営店の経緯度を使います。
●
Apple。Apple本社の経緯度を使います。
●
City Bicycle Ride。カリフォルニア州クパーチノを自転車で走る状況をシ
ミュレートします。デバイスを持って所定の経路を移動する場合のテス
トに使います。
●
City Run。カリフォルニア州クパーチノを走る状況をシミュレートしま
す。デバイスを持って所定の経路を移動する場合のテストに使います。
●
Freeway Drive。カリフォルニア州クパーチノを自動車で走る状況をシ
ミュレートします。デバイスを持って所定の経路を移動する場合のテス
トに使います。
クラッシュログを表示する
アプリケーションがクラッシュする場合、クラッシュログを見れば問題点が判明するかも知れませ
ん。これはコンソール上に表示します。
クラッシュログを表示するには
1.
Finder上でApplications/Utilities/Consoleに切り替え、コンソールを開きます。
2.
「Saved Crash Report for」と表示されている行を探してください。
3.
行の左にある矢印を操作して、この行を展開表示します。
4.
「Open Report」をクリックしてください。
注意: シミュレート対象のオペレーティングシステムは、デバイスのログとは別に、独自の
ログを出力します。その内容は「Debug」>「Open System Log」コマンドで確認できます。
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38
iOSシミュレータの動作設定(Xcode Scheme)
iOSシミュレータの動作は、Xcodeのスキームエディタでカスタマイズできます。この方法でしか変更
できない事項もあります。Xcodeのスキームを利用する最大の利点は、アプリケーションデータのファ
イルやルーティングアプリケーションカバレージ(サポート地域の指定)ファイルをロードできるこ
とです。
スキーム設定にアクセスするには
1.
「Product」>「Scheme」>「Edit Scheme」コマンドを実行します。
2.
するとダイアログが現れるので、スキームエディタの左側ペインにある「Run」を押してくださ
い。
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39
iOSシミュレータの動作設定(Xcode Scheme)
3.
主ペインを「Options」タブに切り替えます。
4.
該当するオプションを指定してください。
●
Core Location。Core Locationのデフォルト設定を定義する場合は、「Allow Location Simulation」
をオンにし、デフォルトの場所をポップアップメニューから選択します。
●
Application Data。アプリケーションデータのファイルをシミュレータにロードしたい場合、
ポップアップメニューから当該ファイルを選択します。これにより、問題が発生したときの
設定を再現できます。
●
Routing App Coverage File。経路情報を扱うアプリケーションの場合、そのサポート地域をこ
のファイルで定義します。ルーティングアプリケーションカバレージファイルについて詳し
くは、『Location and Maps Programming Guide 』を参照してください。
●
GPU Frame Capture。これを有効にすると、デバッグナビゲータでGPUのフレームを取り込
み、フレームに描画(レンダリング)する関数の呼び出し状況を分析できるようになります。
●
Background Fetch。これを選択すると、Xcodeがアプリケーションを起動した後、直ちに一時
停止状態に移行するようになります。
ローカライズに関するオプションについては、「Testing Your Internationalized App」を参照してく
ださい。
5.
「閉じる」をクリックします。
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40
iOSシミュレータの動作設定(Xcode Scheme)
Xcodeのスキームについて詳しくは、「Create, Edit, and Manage Schemes」 in Xcode 4 User Guide を参照
してください。
2014-10-20 | Copyright © 2014 Apple Inc. All Rights Reserved.
41
書類の改訂履歴
この表は「iOSシミュレータ ユーザガイド 」の改訂履歴です。
日付
メモ
2014-10-20
全体を通して細かな変更を行いました。
2014-09-17
Xcode 6に合わせて改訂しました。
2014-03-10
Xcode 5.1に合わせて改訂しました。
2013-10-22
『アプリケーションの配布に関するガイド』のリンクを更新しまし
た。
2013-09-18
Xcode 5におけるiOSシミュレータの変更事項を取り込んで改訂しま
した。
2013-04-23
細かな訂正を行い、iOSシミュレータ上でBluetoothのテストを行う
手順の説明を追加しました。
2013-01-28
新規資料。開発期間中に、Mac上でiOSアプリケーションをテストす
る方法を解説。
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42
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