4 特集(2.4 MB) - 一般社団法人 中部経済連合会

開 港 10 周 年を迎える
中部国際空港
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2015年2月17日(火)、中部国際空港セントレアは開港10周年を迎える。大きな節目を迎えるに
あたり、改めて中部国際空港の10年を振り返る。また、川上中部国際空港㈱社長からこれまでの
10年と今後の展望などについてお話を伺った。
中部国際空港開港後の動き
多くの貨物は、価格競争力があり直行便が多く就
愛・地球博の開幕を1カ月後に控えた2005年
航する成田・関空へ流れ、2012年には11万トン台
2月17日、愛知県常滑沖に中部国際空港が開港し
まで落ち込んだ。
そのような中、24時間運用可能な
た。2 4 時 間 離 着 陸 可 能な新しい国 際 空 港 への
空港の特徴を活かし深夜に貨物の搭載・積替え、離
関心は非常に高く、初日から多くの人が詰め掛け、
着 陸を行う新 規 の 貨 物 専 用 便(フレイター )が
万博の開催・好景気と相まって、開港から半年で
2 0 1 3 年に就 航した。本 格 的な運用が始まると、
1,000万人を超える来場者数を記録。年間の航空
その効果は大きく、わが国全体では航空貨物の取
機 利用者 数も約 1 , 2 0 0 万 人と順 調なスタートを
扱量が減少傾向にあるにもかかわらず、中部国際
切った。
空港では増加が続いている。また、近年は日本の
2008年以降はリーマンショック、新型インフルエ
「食」の魅力が海外に広く知れ渡ってきており、中
ンザの流行、東日本大震災などの影響を受け、利
部地域でも農水産物の輸出事例が増えていること
用者数は大きく落ち込んだが、近年は東南アジア
から、今後さらに拡大していくことが期待できる。
を中心に訪日外国人旅行者に対するビザ発給要
件の緩和、東南アジア諸国の経済成長等もあり、
新規路線の開設・増便などが続いてきた。
さらに、
LCC
(Low Cost Career)就航による新たな需要
の掘り起こしにより、利用者数は増加傾向にある。
また、国際貨物の利用状況については、開港2年
目の2006年には24万トンの取扱いがあったが、
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中経連 2015.2
激動の10年-主 な出来事-
2005年 愛・地球博の開催
2008年 リーマンショック
2009年 新型インフルエンザ流行
2010年 日本航空経営再建
2011年 東日本大震災
2013年 中部国際空港初の国内LCC就航
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中部国際空港開港10周年を祝う ~ さらなる飛躍に向けて ~
一般社団法人中部経済連合会 会長
三田 敏雄
中部国際空港開港10周年、
まずもって心よりお祝い
申し上げます。
国 際 博 覧 会「 愛・地 球 博 」の開 催を3月に控えた
2005年2月17日、中部国際空港は24時間運用可能
な海上空港として中部地域の熱い期待を担って開港
いたしました。構想段階から中経連はもとより数多くの
関係者の皆様の並々ならぬ努力と支援により建設予
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算を余して利便性の高い空港を完成できたことは、
も
のづくり中部の底力をいかんなく発揮できたものとして
自負できるものと思っております。改めて関係者の皆様
に敬意と感謝を申し上げます。
しかし、開港から10年は必ずしも順風満帆ではあり
ませんでした。
デフレ、景気の低迷などわが国を取り巻
く環境は厳しい状況が続き、中部国際空港においても
国内外の航空会社の路線廃止・減便、旅客数・貨物量
の減少、2008年のリーマンショック、2011年の東日本
大震災はこれに追いうちをかけました。
このような状況の中、中部国際空港㈱の役職員の皆
様の懸命な努力、中部国際空港利用促進協議会によ
さらにインバウンド旅客数は増加しているものと思いま
す。
これに対応するためには、メガリージョン内の国際
空港である成田、羽田、関空、中部の各空港の充実と各
地方の空港との連携を強化していく必要があると思い
ます。
これは東京一極集中の是正、地方創生にも効果
があると思います。
中部北陸地域、いわゆる昇龍道エリアには優れた観
光資源が数多くあります。インバウンド旅客の皆様に中
部地域のみならず、わが国の玄関口として中部国際空
港を利用していただくためには、
その利便性・魅力を地
域全体として高めていく必要があります。
このため、
まずは何としてでも二本目滑走路を実現し
ていかなければなりません。中部国際空港二本目滑走
路建設促進期成同盟会の活動を活発化し、中部国際
空港拡充議員連盟との連携を密にし、総力を挙げて取
り組んでいくとともに、旅客数、貨物量の増加を国内外
の路線拡充とともに図っていく必要があります。
また、中部国際空港へのアクセスの向上を図るため、
リニア開業に合わせた名古屋駅鉄道乗換の利便性向
道プロジェクトの推進などによりインバウンド旅客数は
路などの道路整備、昇龍道エリアへのインバウンド旅
増加してきており、
また貨物量も路線拡充により徐々に
回復してきております。国際空港として世界的にも高い
評価を得られており、
また、2013年度決算では当初予
定を前倒しして累積損失が解消されるなど、経営体質
の強化も図られており、心強く思っております。
開 港からの1 0 年は平 坦ではありませんでしたが、
これからの10年を想起すると取り組むべき課題は山積
していると思います。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催さ
れます。国はこの年のインバウンド旅客数を2,000万人
(2014年は推定約1,300万人)にすることを目指すと
しております。2027年には名古屋∼東京間を40分で
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一体となったメガリージョンが生まれます。
この頃には、
る支援、最近では円高の是正、東南アジア諸国の経済
発展、
ビザ発給要件の緩和、
LCC路線の増加、昇龍
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結ぶリニア中央新幹線が開業し、首都圏と中部地域が
上、東海環状自動車道、名古屋環状2号線、西知多道
客の一層の増加を目指した観光資源の魅力向上と連
携強化、インバウンド旅客に優しい滞在環境の整備な
どを促進していく必要があります。
さらに、昇龍道エリアの空港(松本、静岡、県営名古
屋、富山、小松、能登)
との連携についても考えていか
なければならないと思います。
中部国際空港には、次の10年に向けてさらなる飛躍
を期待しています。
そのためには、空港会社自らの努力
とともに、中部地域の経済界と行政が一致団結、連携し
て取り組んでいくことが必要であると思います。中経連
はそのために全力で活動していきたいと思います。皆様
の熱いご支援・ご協力を宜しくお願いいたします。中部
国際空港をもっともっと利用しましょう。
中経連 2015.2
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中部国際空港開港10周年にあたり、2009年より空港会社のトップ
として積極的な取り組みを進めてこられた川上社長に、今後の展望
などについて伺った。
中部国際空港株式会社 代表取締役社長
川上 博
この10年を振り返って
開港以降を振り返ると、前半と後半で大きく明暗
中部国際空港利用率向上が大きな課題です。乗り
が分かれた10年となりました。前半期は、愛知万博
継ぎの必要がなく目的地に直行で行けるよう、路線
開 催や地 元の好 景 気などから順 調なスタートを
ネットワークの充実にも取り組んでまいります。
切ったものの、
リーマンショック以降、東日本大震
貨物では、一時、年間12万トンを下回るレベルま
災や外交問題などにより急激に旅客数・就航便数
で取扱量が低迷しましたが、足元では16万トンま
が減り、苦しい時期が続きました。
しかし、中経連を
で回復しています。今後、
フレイターネットワークの
はじめとした経 済 界の皆 様や自治 体のご支 援も
さらなる拡大などにより貨物ハブ機能を強化するこ
あり、現在は徐々に回復に向かいつつあります。
とで、航空宇宙産業など中部地域の次世代産業発
次の10年に向けての展望・計画など
開港10周年を第2の開港と位置付け、地元の皆
様のご期待に応えうる空港に成長すべく、
さらなる
飛躍を遂げたいと思っています。
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また、
日本人旅客については、特に業務渡航での
展の一翼を担いたいと考えています。
今後中部経済界に期待すること
この地域の業務渡航は大変旺盛ですが、航空ネ
ットワークを担っていただいている航空会社にとっ
旅客では、昇龍道プロジェクトの成果もあり、訪
て、業務渡航のお客様は大変重要です。経済界の
日外国人旅客が大きく増加しています。昇龍道プロ
皆様方には是非、中部国際空港発着の国際線を
ジェクト推進協議会会長を務めておられる三田会
ご利用いただく
『フライ・セントレア』に、
ご協力いた
長のリーダーシップのもと、地 域が一 体となれる
だきたいと思います。
体制 を構築できたことが、大きな成果に繋がって
また現在、中部国際空港二本目滑走路建設促
いると実感しています。今後も昇龍道プロジェクト
進期成同盟会や与党の中部国際空港拡充議員連
へ全面的に参画すると同時に、ゲートウェイとなる
盟などにより、二本目滑走路建設に向けて、様々な
空港として外国人に対する案内機能を強化するな
活動が展開されています。経済界には、
この実現に
ど、中部国際空港としての努力も続けてまいります。
向けての一層のご尽力を期待しています。
中経連 2015.2
中経連 2015.2
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中 部 国 際 空 港 の 構 想 から 開 港 1 0 周 年 ま で
1969年
中経連が「国際貨物空港建設構想」
を発表
1982年
中部新国際空港建設促進期成同盟会、
(財)中部空港調査会が設立
1985年
1990年
第7次空港整備五箇年計画が閣議決定
1996年
中部国際空港㈱が設立
中部国際空港利用促進協議会を設立
中部国際空港利用促進協議会
中部国際空港が、その機能を十分に発揮していく
ことが可能となるよう、地元民間および地域が中
心となって、利用促進・活用等の取り組みを一体
的に推進していくことを目的に設立。
「フライ・セン
トレア」
「フライ・セントレア・カーゴ」キャンペーン
などを柱に、中部国際空港の利用促進に繋がる
事業等を実施。
代表理事
理 事
中経連会長、名商会頭
岐阜県・愛知県・三重県 各副知事、
名古屋市副市長、中経連専務理事、
名商専務理事、中部国際空港㈱社長
3県1市、中経連、名商、空港会社等により
中部国際空港二本目滑走路建設促進期成
同盟会が設立
中部国際空港二本目滑走路建設促進期成
同盟会
中部国際空港の二本目滑走路の早期建設を目的
に設立。国や関係機関等への要望活動、二本目滑
走路の必要性をPRするシンポジウム等を実施。
会 長
副会長
愛知県知事
岐阜県・三重県 各知事、名古屋市長、
中経連会長、名商会頭
開港以来の航空旅客数が1億人を突破
中経連が中部新国際空港建設を基幹プロ
ジェクトに据えた「21世紀の中部ビジョン」
を発表
中部新国際空港建設促進協議会を設立
<代表理事:中経連会長、名古屋商工会議所
(以下、名商)会頭>
平成10年度政府予算案で中部国際空港
の新規事業化を認可
1997年
運 輸 大 臣が中部 国 際 空 港 設 置を許 可 、
中部国際空港㈱が空港の護岸工事に着手
1998年
中部国際空港 開港
2000年
2001年
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2005年
2007年
2008年
3県1市、中経連、名商、空港会社により中部
国際空港二本目滑走路整備促進会議を開催
自由民主党中部国際空港拡充議員連盟が設立
SKYTRAX社実施 顧客サービスに関する
国際空港評価において「Best Regional
A i r p o r t A s i a a w a r d 」を受 賞( 以 下 、
2014年まで4年連続で受賞)
2011年
2012年国際航空宇宙展(JA2012)開催
2012年
昇龍道プロジェクト推進協議会を設立
<会長:中経連会長>
2014年
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【問い合わせ:社会基盤部】
ロゴマーク・写真(○印)提供/中部国際空港㈱
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中経連 2015.2
中経連 2015.2
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