ISO レポート ISO/TC 4/SC 5/WG 1 第 4 回ウィーン会議報告 (針状ころ軸受-取付寸法及び公差) 株式会社ジェイテクト 白木 利彦 1 まえがき 2014 年 3 月 26 日に ISO/TC 4/SC 5/WG 1(針状ころ軸受-取付寸法及び公差) (以下、WG 1 という) の第 4 回会議がウィーンの ASI(オーストリア規格協会)で開催され、日本代表として会議に出席し たので、その概要を報告する。 この作業グループは、ISO 1206(転がり軸受-針状ころ軸受、寸法系列 48、49 及び 69-主要寸法 及び公差)及び ISO 3245(転がり軸受-内輪なしシェル形針状ころ軸受-主要寸法及び公差)に、軸 及びハウジングの推奨寸法並びに公差に関する附属書を追補として作成する目的で 2009 年 12 月に設 立されたが、その後 ISO 3245 及び ISO 1206 の改正作業を行なっている。 2 第 4 回ウィーン会議までの経過(第 3 回パリ会議以降) WG 1 第 4 回ウィーン会議にて討議予定であった各規格の経過概要を以下に示す。 (1) ISO 3245 の改正 2009 年にアメリカから提案された取付寸法の追補の NP(新業務項目提案)が承認され、WG 1 が設置された。2011 年に ISO 3245:2007 の定期見直しが行われ、その結果、検討してきた附属書を 含め規格全体を改正することが、2011 年 6 月の SC 5 ブリュッセル会議にて決定した。 • 2011-11 WG 1 第 3 回パリ会議 • 2012-03 パリ会議を反映した WD 3245 案が回付された。 • 2012-04 SC・WG 横浜会議開催期間中に、打ち合わせの場を持ち、図の表記方法などについて 討議した。 • 2013-02 ISO/CD 3245 が回付された。 • 2013-04 ISO/CD 3245 に対し意見付き賛成投票を行った。 • 2013-05 SC 5 上海会議にて GPS(製品の幾何特性仕様)を適用した改正とすることが決議され た。 • 2013-07 GPS を適用した CD 第 2 版が回付された。 • 2013-08 ころコンプリメントの内接円径など疑問があり、意見付き反対投票とした。 • 2013-09 賛成多数により承認。 • 2014-01 DIS 3245 回付。ころコンプリメントの内接円径には仕様モディファイアの (最大内 接円径)が採用された。 • 2014-02 意見付き賛成投票を行った。 • 2014-03 WG 1 第 4 回ウィーン会議が開催された。 (2) ISO 1206 の改正 • 2012-04 ISO 1206:2001 の定期見直しの回付があり、日本からは、使用されているにもかかわら ず、 意味もなく削除されていた 11 名番の追加などの意見とともに、改正投票を行った。 • 2013-05 SC 5 上海会議にて GPS を適用した改正とすることが決議された。さらに、日本が寸法 の追加を提案したため、他にも追加してほしい寸法を各国から提案することになった。 • 2013-07 追加寸法のための CIB(委員会内投票)が回付された。 • 2013-08 ISO 15 にある寸法系列 59 及び前回削除されていた 11 名番の追加を提案した。プロジ ェクトリーダーをフランスの Mr. Schmitt とし、WG 1 にて改正作業を行うことになっ 1/5 た。 各国から提案された寸法を考慮した WD が回付された。日本が提案した寸法系列 59 は • 2014-02 採用されているが、削除されていた 11 名番は、旧寸法と異なっている部分があった。 WD に対する意見を送付した。ISO 15 に規定されていない寸法として多くの寸法が追 • 2014-03 加されているが、これらの面取寸法は国内各社のカタログ値と異なっているので、面 取寸法を削除するか、又は ISO 15 に規定されていない寸法は記載せずに、削除されて いた 11 名番のみを、追補(参考)として記載するよう提案した。 WG 1 第 4 回ウィーン会議が開催された。 • 2014-03 3 WG 1 第 4 回ウィーン会議の目的 • ISO/DIS 3245 への意見に関する討議。 • WD 1206 への意見に関する討議。 4 関連文書 第 3 回パリ会議以降の WG 1 の文書及び関連文書を、表 1 に、第 4 回ウィーン会議の議事次第を 表 2 に示す。 表1 文書番号 N 30 N 347 N 348 - N 31 N 349 N 350 N 351 N 352 N 353 N 354 N 355 N 356 N 357 N 358 N 359 - N 360 1) 提出国 幹事国 幹事国 幹事国 ISO/CS 2) 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 ISO/CS 2) 幹事国 N 361 幹事国 N 362 N 363 N 364 N 365 N 366 - N 367 N 368 N 370 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 ISO/CS 2) 幹事国 幹事国 幹事国 WG 1 の文書及び関連文書 題目又は内容 WG 1 第 3 回パリ会議議事録 ISO 1206:2001/DAmd.1 案 ISO 1206:2001/DAmd.1 案に関する説明報告書 ISO 1206:2001/DAmd.1 パリ会議を反映した WD 3245 ISO 1206:2001/DAmd.1 投票結果、各国意見及び幹事国見解 SC 5 上海会議議題 TC 4 上海総会案内 TC 4 上海総会参加登録シート ISO 1206:2001/FDAmd.1 案のISO/CS 2)への送付報告 ISO/CD 3245 回付 ISO/CD 3245 修正版回付 SC 5 幹事国報告 ISO 1206:2001 定期見直し投票結果 SC 5 上海会議議題(N 350 修正) ISO/CD 3245 各国意見 ISO 1206:2001/FDAmd.1 ISO/CD 3245 投票結果 ISO 1206:2001 定期見直し投票結果 (N 357 修正) SC 5 上海会議決議録 SC 5 上海会議議事録 ISO/CD 3245 各国意見及び幹事国見解 ISO 1206:2001 定期見直し各国意見及び幹事国見解 ISO/CD 3245.2 案のISO/CS 2)への送付報告 ISO 1206:2001/Amd.1 発行 ISO/CD 3245.2 投票結果及び意見票への幹事国見解 ISO/DIS 3245 案のISO/CS 2)への送付報告 ISO 1206 の改正作業に関する通知 2/5 発行年月 2011-11 2011-12 2011-12 2012-01 2012-03 2013-02 2013-01 2013-01 2013-01 2013-02 2013-02 2013-03 2013-03 2013-05 2013-05 2013-05 2013-05 2013-05 2013-0 2013-05 2013-06 2013-05 2013-05 2013-07 2013-08 2013-10 2013-10 2013-12 N 32 幹事国 N 33 N 34 N 35 N 36 N 37 N 38 N 39 N 40 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 幹事国 注1) 注 2) ISO 1206 に追加する寸法について、各国提案のまとめ (SC 5/N 369) WD 1206 WG 1 第 4 回ウィーン会議議事次第案 DIS 3245案 DIS 3245案への意見票まとめ WD 1206への意見票まとめ(日本及びアメリカ) WD 1206への意見票まとめ(日本、アメリカ及びドイツ) ISO/DIS 3245 に対する各国意見及び幹事国見解 ウィーン会議の審議結果を反映した ISO/DIS 3245 案 2014-02 2014-02 2014-02 2014-03 2014-03 2014-03 2014-03 2014-04 2 桁番号は、WG 1 の文書、3 桁番号はSC 5 の文書を示す。 ISO中央事務局を表す。 表2 議題 1 2 3 4 5 6 7 8 2014-02 議事次第及び参照文書 議事次第 開会 出席者の点呼、紹介 議事次第の承認 DIS 3245への意見に関する討議 WD 1206 への意見に関する討議 ISO 3096 及び ISO 7063 の定期見直しに関する情報 次回会議の予定 閉会 参照文書 - - N 34 N 35 N 33 - - - 5 会議の内容 議題 1 開会 コンビーナの Mr. Schmitt が、開会を宣言した。 議題 2 出席者の点呼 WG 1 第 4 回ウィーン会議には、次の 5 か国 13 名が参加した。 表 3-WG 1 ウィーン会議参加者 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 議題 3 参加者名 Jean George Schmitt Nadiège Ludivion Rénald Vincent Hans Wiesner Hubert Kӧttritsch Christian Sommerhuber Ernst Ammon Karl Bywalez Franz Gӧtz Alfred Weidinger Ron Abarquez 瀧野 白木 和典 利彦 国名 所属 フランス フランス フランス オーストリア オーストリア オーストリア ドイツ ドイツ ドイツ ドイツ アメリカ 日本 日本 議事次第の承認 3/5 Consulting Engineer 元 INA(WG 1 コンビーナ) UNM(WG 1 事務局) Cetim(TC 213 の TC 4 リエゾン) SKF(TC 213 の TC 4 代表リエゾン) SKF SKF Schaeffler Schaeffler Schaeffler SKF Koyo Bearing JTEKT-Europe JTEKT 会議議題 (N 034)が、採択された。 議題 4 DIS 3245への意見に関する討議 主な 審議 内容は、以下の通りである。討議結果を反映したDIS第 2 版が発行される予定。 ① シェル形針状ころ軸受は、非剛体部品なので、各主要寸法には○ F(free state condition (non rigid parts))が必要との意見があった。また、一端密封形の底部の厚さ寸法C 1 及びC 2 は “二点間サイズ”では対応できないため、説明文を見直すことになった。 ② 主要寸法として、C 1 max及びC 2 maxが規定されているが、maxが付くのはGPSでは公差 限界なので、“boundary dimension”の箇条ではなく、“tolerance”の箇条に記述すべきと の意見があり、移すことが提案された。 ③ ΔF ws について、機能上 では不十分で、転動体を動かしてさらに測定値が小さくなる ときが考えられるので、最小実測値を選ぶべきとの意見があった。図面指示には、外輪 を“fixed parts” 、転動体を“movable part”とし、公差指示の記号は、 及び (最小 サイズ)の組み合わせにすることが提案された。 議題 5 WD 1206への意見に関する討議 審議時間がとれず、次回に持ち越しになった。 議題 6 ISO 3096 及び ISO 7063 の定期見直しに関する情報 二つの規格の定期見直しについて通知があった。回答期日は 2014 年 6 月 15 日。 議題 7 次回会議の予定 次回会議は、2014 年 11 月に他の WG 会議と合わせた日程で、ベルリンの DIN にて開催される予 定。 議題 8 閉会 Mr. Schmitt から会議ホスト国であるオーストリア(ASI)への感謝及び会議参加者に謝意が述べ られ、会議を閉会した。 6 あとがき 筆者は、WG 1 第 1 回パリ会議及び第 3 回パリ会議にはオブザーバという立場で参加したが、今回 は日本の担当エキスパートが他の会議と重なったため、代わりに日本のエキスパートとして出席した。 筆者が担当エキスパートを努めているSC 4/WG 4(転がり軸受へのGPS適用検討)からGPSの専門家 が会議に参加したため、かなり白熱した長時間の討議になってしまった。特に、DIS 3245の審議では、 主要寸法の“max”については、設計の限界と公差限界とを混同した考え方で違和感があったのでか なり反論したが、GPSの概念とのことで受け入れられなかった。 これは日本の中でも議論していき、日本として納得する形でこの規格開発を推進していかなければ ならないと考えるので、今後も日本ベアリング工業会各社の皆様方にご協力いただきながら、日本の 不利益にならないように、また、日本の意見が規格に取り入れられるように進めて行きたい。 以上 4/5 会議メンバー(右から 4 番目が筆者) 5/5
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