今日の石油産業2014

2014年4月
今日の 石油産業 2014
はじめ に
2013年の原油
(ドバイ)
価格は、年初は1バレル107ドル台
40年という節目でもあった2013年度には、経済産業省におい
であったものが、
米国の経済動向や地政学リスクにより値を上
て新しいエネルギー基本計画の検討が行われ、石油は
「今後と
げて、
2月中旬には113ドル台に達しました。その後3月に入る
も活用していく重要なエネルギー源」
と位置付けられました。
と徐々に原油価格は下がり、
原油需給の緩和などから5 ~6月
石油の需要が年々減少していく中、石油各社は2014年3月に
下旬には一時97ドル台にまで下落しました。以降も概ね100
エネルギー供給構造高度化法に基づき原油処理能力の削減
ドル~110ドルの間で安定的に推移し、
年平均では約105ドル
を行いましたが、
地方では給油所数の減少から
「給油所過疎の
となりました。その結果、わが国の輸入価格(CIF)の年平均価
問題」
が次第に顕在化しつつあります。
格は、約110ドル/バレルとなり、前年より約4ドル下落したも
その様な状況であっても石油各社は、石油に限らず様々な
のの、
約17円の円安となったことから円ベースでは約67円/ℓ
事業展開を推進することにより、結果的に石油事業の体質強
と前年より約10円/ℓ高い価格となりました。
化を図り、石油の安定供給というエネルギー供給者としての
また、
2013年の国内の石油需要については、原発の停止を
責務を全うする所存です。そうした一連の石油業界の取り組
受けて稼働率が上がった火力発電燃料として、前年一時的に
みは国の重点政策である産業競争力強化や国土強靭化にも
C重油が多く使われていたものが、天然ガス等にシフトしたこ
資するものと考えます。
このパンフレットはこうした石油産業の現状や取り組みにつ
とによる反動減から、
燃料油計でも前年を下回りました。
3年前の東日本大震災を契機に、緊急時における石油の重要
いて、消費者をはじめ関係の皆様に正しい理解をいただくた
性と自立・分散型エネルギーとしての強みが再認識され、石油
めに作成したものです。石油および石油産業に対する正しい
業界では製油所から給油所までのサプライチェーンの災害対
理解の一助となれば幸いです。
応力強化を進めているところです。第一次オイルショックから
1
2014年4月
C O N T E N T S
はじめに
1〜2
国際石油情勢
3〜8
国内石油需給動向
9 〜 14
わが国のエネルギー政策
15 〜 20
石油備蓄と新たな緊急時対策
わが国の石油開発
21 〜 26
27 〜 28
規制改革と石油産業
29 〜 34
石油製品の流通・販売
石油諸税の抜本的見直しに向けて
35 〜 38
39 〜 42
企業体質の改善・強化
二重、三重の安全対策
大規模な流出油事故に備えて
石油精製部門の環境対策
自動車燃料等の品質向上に向けて
地球温暖化問題と石油
バイオマス燃料への取り組み
石油の有効利用
技術開発に関する取り組み
43 〜 44
45 〜 46
47 〜 48
49 〜 50
51 〜 52
53 〜 58
59 〜 62
63 〜 66
67 〜 70
災害時を含めた最終消費者までの
石油安定供給
石油関連日誌/製油所の所在地と原油処理能力
石油産業の規模
2
71 〜 72
73 〜 74
国際石油情勢
原油の市場です。
国際石油需給
13年の原油価格の推移をWTI原油で見ると、
年初以降、
中国や米
IEA
(国際エネルギー機関)
が2013年12月に発表したレポートに
国の経済指標の動向を受け90~100ドル/バレルの間で推移してい
よれば、
13年の世界の石油需要は12年に比べ約1.3%増加し、
91.2
ましたが、
4月には米国の原油在庫が高水準であること、
米国の経済
百万バレル/日と前年の実績を上回る見込みです。
これは、
非OECD
指標の悪化などにより下落基調となり、4月17日には株価の下落や
諸国の石油需要の増加によるものです。具体的には、
中国が40万バ
米国の原油生産量が20年ぶりの高水準となったことから13年の最
レル/日の増加、他のアジア地域が30万バレル/日の増加、
ラテンア
安値である86.68ドル/バレルとなりました。その後は、
シリア情勢の
メリカは20万バレル/日程度の増加で、
非OECD全体としては120万
悪化、
エジプトの政情不安など地政学的リスクの高まり、
米国の原油
バレル/日の大幅な増加となりました。
在庫の急減などもあり上昇基調に転じ、
9月6日にはシリア情勢を巡
これに対して13年の石油供給は、
北アメリカが130万バレル/日の
る米国とロシアの緊張の高まりから、
13年の最高値である110.53ド
大幅増加となり、
非OPEC諸国全体で140万バレル/日増加すると見
ル/バレルとなりました。
しかしその後は、
シリアが化学兵器を廃棄す
込まれています。
ることで米国とロシアが合意したこと、
米国の原油在庫の上昇により
中期的には世界の石油需要は、中国やアジアを中心とする非
需給緩和感が出たこと、
OPEC事務局が18年のOPEC産油国原油へ
OECD諸国の経済成長に伴って増加すると想定され、IEAの見通し
の需要が減少するとの見通しを発表したこと、欧州中央銀行理事会
(13年12月)
でも、
18年の需要は13年に対して約7%、
6.1百万バレ
が政策金利を引き下げたことなどから下落基調で推移し、
11月中旬
ル/日増加して、96.7百万バレル/日に達するものと見込まれてい
には90ドル/バレル台前半となりました。12月には、
XLパイプライン
ます。
の南部部分
(ガルフコーストパイプライン)
が14年1月に稼働する計
しかし供給面では、非OPEC諸国の供給は18年には13年の54.4
画が発表され、
クッシングにおける原油の高在庫が解消されるとの
百万バレル/日から約9%、
5百万バレル/日の増加が見込まれていま
期待や、南スーダンにおける武力衝突もあり再び上昇基調に転じて
すが、その増加幅は需要の増加幅を下回ります。このため、今後、
います。
OPEC諸国への依存度が高まることとなります。
原油価格に影響を及ぼす要因として、
2000年以降は、
地政学的な
特に、
新興国における増加が見込まれる一方、
資源ナショナリズム
リスク、中国をはじめとする新興国での需要の急増、資源ナショナリ
の高まり、新規油田投資への意欲の低下傾向など、供給サイドの構
ズムの台頭、探鉱・開発投資の消極化などが挙げられてきましたが、
造的問題は解決されていません。11年にはチュニジアを発端とした
08年以降は、
ドル相場との関係や他の商品市場との関係など、原油
民主化の動きである
「アラブの春」
が中東・アフリカ諸国へ拡大する
は金融資産としての性格が強くなっています。
中、
リビアにおいては一時原油輸出が停止しました。13年においても
今後、
中長期的には、
アジア、
中東など新興地域での需要増加が確
リビア情勢の悪化により原油の生産、
輸出が大幅に減少し、
原油価格
実視されており、
原油開発投資が低迷した場合、
石油需給がタイト化
にも影響を与えました。
こうした中東・アフリカ諸国における政情不安
し、
OPEC依存度が高まることも考えられます。円滑な投資が継続で
は新規油田投資へも影響を与えると考えられるため、
石油需給が逼
きる安定的な原油価格の推移が期待されます。
迫する懸念が徐々に顕在化する恐れのあることを課題として認識し
また、10年4月頃からWTIとブレントの価格が逆転し始めました
ておく必要があると考えます。
が、11年10月にはその価格差が28ドル/バレルまで拡大しました。
13年は、夏から秋にかけて価格差は一旦縮小したものの、その後再
び11月に19ドル/バレルまで拡大しました。
これは、
WTIの引渡し場
原油価格の動向
所であるオクラホマ州クッシングにおける原油在庫が夏から秋に減
世界の原油価格は、
大きく分けて3つの市場で形成されています。
少したことでWTI価格が上昇し、
ブレント価格に近づいたことによる
アメリカのNYMEX
(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)
で取引さ
と考えられています。
れるWTI
(ウェスト・テキサス・インターミディエート)
原油の市場、欧
ここ数年の米国のシェールオイル
(タイトオイル)
の急激な増産は、
州のICE
(インターコンチネンタル取引所)
で取引されるブレント原油
米国の石油輸入の依存度を引き下げ、
世界の需給バランスも緩和さ
の市場、そして東京工業品取引所などで取引されるアジアのドバイ
せると考えられています。IEAが13年12月に発表したレポートでは、
3
国 際 石油情勢
■WTI原油先物価格、OPECバスケット価格の推移
(月平均)
単位:
ドル/バレル
140
2012年
2013年
130
120
111.8
110
106.6
107.7
101.0
100
100.3
97.9
94.0
95.8
90
88.3
80
70
60
50
40
0
82.4
OPECバスケット
・OPECが基準に用いている原油価格で加盟国代表油種である
次の13油種の平均値
サハラブレンド、
ジラソル、
オリエンテ、
ミナス、
イラニアンヘビー、バスラライト、
クウェートエクスポート、
エスシダ、
ボニーライト、
カタールマリン、
アラビアンライト、
マーバン、BCF-17
・2009年1月からはミナスが削除され、BCF-17に代わりメレーを加えた12油種の平均値
WTI
米国産原油で米国市場の基準銘柄であるWest Texas Intermediate
(WTI)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11 12月
出所:NYMEX、
OPEC
■原油価格の推移
(月平均)
単位:
ドル/バレル
140
リーマンショック
130
120
アラビアンライト
公式販売価格
110
アラビアンライト
スポット価格
アラビアンライト
ネットバック価格
ドバイ
スポット価格
100
90
イラクの
クウェート
侵攻
(8月)
80
70
60
50
第一次
第二次
オイルショック オイルショック
40
30
サブプライムローン問題顕在化
ハリケーン
「カトリーナ」
サウジアラビア、 イラン停戦受諾
ネットバック販売開始
標準原油廃止
アラブの春
アジアの
経済危機
OPEC増産
イラク戦争勃発
OPEC・非OPEC
の減産
第四次
20 中東戦争
(10月)
10
0
1972 73
年
イラン・イラク
戦争勃発
(9月)
同時多発テロの発生
イラン革命
(2月)
74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:各種資料より石油連盟が作成
4
20年代まで米国における軽質タイトオイルの生産量は増加する見
OPECプライスバンドの上限を大きく超える水準まで上昇する中、
込みとなっており、需給、価格面への影響は注視する必要がありま
05年1月にプライスバンドの一時停止を決定しています。
す。ただし生産コストの高い非在来型石油は、
原油価格の水準によっ
以降、OPECの原油価格に対する影響力は限定的なものとなり、
ては開発が停滞する可能性もあります。米国のタイトオイルの損益
08年の原油価格の暴騰と暴落、
また、09年から10年にかけての価
分岐点は60~80ドル/バレルといわれており、原油価格の動向に留
格上昇に対しても有効な対応策を講じることはできず、市場に翻弄
意する必要があります。
される結果となっています。1998年以降イラクはOPEC生産枠の対
象から外れていましたが、今後のOPEC諸国からの原油増産は主に
イラクによるものと見込まれており、12年6月に開催された総会で
変化するOPECの影響力
は、
イラクを含む12ヵ国の生産量を3,000万バレル/日としました。
OPEC
(石油輸出国機構)
は、1960年にイラクの呼びかけにより、
今後、
非OPEC諸国の原油生産量は増加すると見込まれていますが、
サウジアラビア、
クウェート、
イラン、
ベネズエラの5ヵ国で結成されま
アジア諸国をはじめとする需要の増加を賄うほどの供給量は確保で
した。73年の第四次中東戦争の際、
OPECはイスラエル支持の先進
きないと見込まれています。今後もOPEC諸国の動向を注視する必
諸国に対し、
原油供給を削減して原油価格を約4倍にする、
いわゆる
カスピ海
「オイルショック」
を引き起こし、
その存在感を全世界に示しました。
テヘラン
凡 例
キルクーク
油 田
OPECは、
70年代の最盛期には、
世界全体の原油生産の約53%を
パイプライン
ガワール
油 田 名
バグダッド
占めていました。
しかしその後、
油田開発生産技術の革新により原油
イスファハン
イラク
生産コストは著しく低下し、
北海などの非OPEC諸国の原油が増産さ
TA
P
れ、OPECのシェアは約29%まで低下しました。また、先物市場の登
ルマイラ
Lin
e
バスラ
アバダン
クウェート
ブルガン
場など石油市場の構造変化も加わり、
OPECの価格支配力は、
86年
イラン
シーラーズ
カーグ島
カフジ
サファニア
ペルシャ湾
ベリー
以降大幅に低下しました。
IPSA
バーレーン
カタール
ラスタヌラ
アブカイク
00年以降は、非OPEC産油国の協力を得て、プライスバンド制
ドウハン
e
o Lin
(OPECバスケット価格で22~28ドル/バレルの価格帯上下限を超え
リヤド
ると自動的に生産調整するメカニズム)
を導入することにより、一時
ジェッダ
的な価格コントロールに成功していましたが、その後原油価格が
ドーハ
Petr
ヤンブー
ガワール
ホルムズ海峡
フジャイラ
ウムシャイフ
ザクム
ムバラス
ドバイ
アブダビ
ルワイス
UAE
オマーン湾
ミナ・アル・ファハル
マスカット
オマーン
ハブシャン
サウジアラビア
アブダビ原油パイプライン
紅海
アラビア海
■OPEC加盟国の概要
人口
(2012年)
面積
国民1人当たり
総生産
(2012年)
万人
千km2
米ドル
イスラム共和制
7,652
1,648
7,173
項目
政治体制
国名
イ ラ ン
原油生産量
(2013年平均)
万バレル/日
%
268
8.8
原油生産能力
(2013年12月)
原油輸出量
(2012年)
万バレル/日
千バレル/日
290
2,102
イ ラ ク
共 和 制
3,421
438
6,419
307
10.1
320
2,423
クウェート
首 長 制
382
18
45,351
281
9.2
300
2,070
サウジアラビア
君 主 制
2,920
2,150
24,911
966
31.7
1,240
7,557
ベネズエラ
大統領制
2,952
916
12,956
249
8.2
260
1,725
カタール
首 長 制
177
12
108,458
73
2.4
75
588
リ ビ ア
共 和 制
641
1,760
12,777
90
3.0
140
962
アラブ首長国連邦
7首長国の連邦制
839
84
45,726
276
9.1
290
2,657
アルジェリア
共 和 制
3,780
2,382
5,204
115
3.8
120
809
ナイジェリア
共 和 制
16,768
924
1,535
195
6.4
200
2,368
アンゴラ
共 和 制
1,858
1,248
6,391
172
5.7
180
1,663
エクアドル
共 和 制
1,550
284
4,621
51
1.7
53
358
42,940
11,862
7,811
3,044
100.0
3,468
25,282
OPEC計
(12ヵ国)
出所:OPEC統計
(2012年)
、
原油生産量および原油生産能力はIEA
(2014年1月号)
5
国 際 石油情勢
要があります。
加であるのに対し、
中国・インド・中東の増加は約1.7倍となり、
世界需
OPECは、必ずしも一枚岩としての行動が容易ではない構造的問
要に占める中国・インド・中東のシェアも、概ね23%から33%に上昇
題を抱えていますが、
サウジアラビアを中心とする穏健派の加盟諸
することになります。同シナリオでは、
非OPEC諸国の供給も増加す
国は極端な価格の乱高下には消費国と同様の危機感を持っており、
るものの、
これら需要増分をすべてカバーすることはできず、
OPEC
持続的に新たな原油の開発が可能なレベルでの原油価格の安定が
諸国、特にイラクの大幅な供給増加が見込まれており、引き続き
重要であるとの認識を持ち、
消費国も産油国も受け入れ可能な価格
OPEC諸国の動向を注視しなければなりません。
レベルでの継続的な取引の実現を望んでいるとされています。
一方、
主要中東産油国などは従来から石油産業への外資参入を排
除してきましたが、今世紀に入ってからの原油価格高騰時において
は、
ロシア、
カザフスタンおよびベネズエラなど一部産油国では、
サ
中長期的な国際石油市場の見通し
ハリンプロジェクト、
カシャガン油田およびオリノコ流域石油開発など
今後の国際石油市場を中長期的に展望する上で、
アジアや中東を
において、
自国の国営企業の権益拡大・メジャーズ等の権益縮小を図
中心とする発展途上国の需給動向が非常に重要な要素となっていま
る、
いわゆる資源ナショナリズム的な現象が見られました。
す。IEAは、
13年版の世界エネルギー見通しにおいて、
エネルギー需
資源保有国が自国資源に対する支配力を強化している状況は当面
要の中心は中国・インド・中東へ決定的に移りつつあるとの予測を発
続くものと思われます。
しかし有力油田における国営企業の支配力強
表しています。新政策シナリオでは、2035年の世界の石油需要が、
化は、
資金および技術力を保有するメジャーズ等の経営資源が、
新規
12年/35年の年率ベースで0.6%増の101.4百万バレル/日となる
油田開発に投入されることを阻害する要因となり、
中長期的には原油
中で、中国は同2.1%増の15.6百万バレル/日、
インドが3.6%増の
供給能力の安定的な増加を妨げることになることも懸念されます。
8.1百万バレル/日、中東が1.6%増の9.9百万バレル/日となるとの
見通しが発表されています。世界需要が12年から35年で1.2倍の増
■国際石油需要の見通し
年
国・地域 百万バレル/日
2012-2035
2000
2012
2020
2025
2030
2035
OECD諸国
44.6
40.8
39.4
37.3
34.9
32.8
-0.9%
北米
22.7
21.3
21.9
20.8
19.6
18.4
-0.6%
アメリカ
18.7
17.1
17.5
16.4
15.1
14.0
-0.9%
欧州
13.7
11.7
10.9
10.2
9.4
8.9
-1.2%
(注1)
太平洋
8.2
7.8
6.7
6.3
5.9
5.5
-1.5%
日本
5.3
4.7
3.6
3.3
3.0
2.8
-2.2%
26.5
39.6
48.3
52.3
55.8
59.2
1.8%
5.2
5.3
5.4
0.6%
非OECD諸国
東欧州/ユーラシア
ロシア
アジア
4.2
4.7
5.1
2.6
2.9
3.2
0.4%
11.5
19.3
24.8
27.6
30.1
32.5
2.3%
12.9
14.1
15.0
3.1
3.1
3.2
中国
4.7
9.6
15.6
2.1%
インド
2.3
3.6
4.7
5.7
6.9
8.1
3.6%
中東
4.3
6.9
8.2
8.7
9.3
9.9
1.6%
アフリカ
2.2
3.4
4.0
4.2
4.4
4.6
1.3%
中南米
4.2
5.3
6.2
6.5
6.7
6.9
1.1%
ブラジル
1.8
2.4
2.9
3.1
3.3
3.4
1.6%
国際船舶向け需要(注2)
5.2
7.0
7.8
8.3
8.8
9.3
1.3%
76.3
87.4
95.4
97.8
99.5
101.4
0.6%
ー
10.9
9.9
9.1
8.3
7.7
-1.5%
0.2
1.3
2.1
2.7
3.4
4.1
5.0%
世界合計
EU
バイオ燃料需要(注3)
(注)
:1. 期間平均
2. 国際船舶・航空用燃料を含む
3. ガソリン・軽油換算
出所:IEA「WorldEnergyOutlook2013」
(世界エネルギー見通し)
6
(1)
水平掘削技術……水平方向に10km以上も掘削できるため、
1つ
石油の埋蔵量と可採年数について
の油田から出る石油生産量は増加します。
地下に存在するすべての石油の量は
「資源量
(Resources)
」
とい
(2)
三次元
(3-D)
地震探査システム……高密度な地質データを処理
い、
この資源量のうち、
既発見であり、
かつ経済的・技術的に回収
(採
することにより、
複雑な地下構造を立体的に把握することが可能
取)
可能な量を
「埋蔵量
(Reserves)
」
といいます。また、
「可採年数
(R/
になります。
P)
」
は現在の技術と価格の下で採掘可能であると考えられる石油埋
(3)
人工衛星と地上波を複合活用した測位システム……人工衛星と
蔵量
(R)
をその年の石油生産量
(P)
で割ったものをいいます。かつて
地上局からの電波を組み合わせて、
海上と海底の正確な位置を
可採年数は約30年と算出された時期もありましたが、
最近の可採年
測定できます。
(4)
大水深海洋石油開発システム……水深300メートル以上の大水
数はOGJ誌で60年、
BP統計で53年
(カナダのオイルサンド、ベネズ
エラのオリノコタール、米国のシェールオイルを含む)
とむしろ伸び
深にある海底油田からの生産が可能となっています。
る状況にあります。
これは、
技術革新による新規油田の発見や採掘技
術の進歩、
原油価格上昇に伴う採算性の向上などによって、
生産量を
「シェール革命」
上回るペースで石油埋蔵量が増加を続けてきた結果です。
また、世界的には、
オイルサンド、
オイルシェール、
オリノコタール
最近、
国際エネルギー市場において、
米国を中心とするシェールガ
等の
「非在来型石油」
が豊富に存在しています。オイルサンドは大部
ス・シェールオイルの開発・増産が注目されています。
分がカナダに、
次いでナイジェリア、
マダガスカル、
アメリカなどに賦
シェールガスとは、
頁岩
(シェール)
層に封じ込まれているガスで、
従
存しており、
オイルシェール
(油母頁岩)
はアメリカ、
ブラジル、中国、
来、
その生産はコスト的に見合わないものとされてきましたが、
近年
カナダ、
ロシア、
コンゴなど世界各地に分布しています。また、
オリノ
の開発技術の発達・普及とガス価格の上昇によって、
急速に実用化さ
コタールはベネズエラのオリノコ川流域を中心に存在する超重質油
れました。水平掘削技術を活用し、
頁岩層に水圧でヒビを入れて、
ガス
ですが、すでに発電用燃料として利用されています。このように、非
を回収するというもので、
北米のみならず、
中国や欧州等にも豊富に
在来型石油資源の開発が進んだことを受けて、
石油の埋蔵量は飛躍
存在していると見られています。
的に増加しています。また、
IEAの世界エネルギー見通しにおいては、
さらに、最近では、
「 シェールガス」
と同じ技術を利用して頁岩
石油系資源の残存年数は200年以上と見込まれています。石油の探
(シェール)層に封じ込まれている軽質油
「シェールオイル
(タイトオイル)
」
鉱・開発技術の進歩と非在来型石油の開発は、
中長期的な石油資源
の生産が急速に増加しつつあります。
の枯渇リスクを低減させています。
シェールガス、
シェールオイルは中長期的に、
エネルギーセキュリ
ティの向上、
原油価格の抑制に繋がるものとして期待されおり、
国際
エネルギー市場を変える可能性があると言われています。
石油の探鉱・開発技術の発達
なおIEAでは、
「シェールオイル」
について
「オイルシェール
(油母
頁岩)
」
と混同を避けるため、
「タイトオイル」
と表記しています。
探鉱・開発技術の発達により近年の埋蔵量は増加しています。
【技術の発達の例】
くっ さく
■シェールオイル・シェールガス掘削の仕組み
シェールオイル・シェールガス
在来型石油・ガス
井戸を掘り、自噴する
ガスを集める
硬い岩盤
石油貯留岩
石油・ガス
けつがん
頁岩に水圧でヒビを入れ、
中の石油・ガスを取り出す
2000
∼
石油・ガスは長い年月をかけて
移動し、硬い岩盤の下にたまる
水
4000
メートル
けつがん
石油根源岩
頁岩
(シェール)層
石油・ガスが作られる
典型的な根源岩
水平掘削技術・水圧破砕技術
7
石油・ガス
国 際 石油情勢
■世界の原油生産量・原油確認埋蔵量・可採年数
(2013年末現在)
2013年末の世界の原油確認埋蔵量は約1兆6,445億バレル、
可採年数は60年となっており、
確認埋蔵量の73.0%をOPEC諸国が、
また48.6%を中東諸国が占めている。
OPEC合計
75,278
イギリス
ノルウェー
119年
107年
169年
331年
可採年数
76年
143年
60年
21年
確認埋蔵量
世界合計
1,644,515
ち、
技術的・経済的に生産可能なものを
「可採埋蔵量」
といい、
通
常「原始埋蔵量」
の20∼30%程度といわれている。可採埋蔵量
のうち、
最も信頼性の高いものを
「確認埋蔵量」
としている。
確認埋蔵量:443,675
(27.0%)
■石油系資源の可採資源量と生産コスト
生産コスト︵バレル当たりドル、 年価格︶
石炭液化燃料
(CTL)
タイトオイル
(シェールオイル)
120
通常の増進石油回収
80
油母頁岩
(オイル
シェール)
超重質油・
アスファルト
他の地域
の石油
20
可採年数:ある年の年末の確認埋蔵量をその年の生産量で
除した数値。例えば、
「可採年数50年」
とあっても、
今後、
石油
探査や掘削をはじめ、
回収技術の進歩により既存油田の埋蔵
量が増えたり、
新油田の発見などがあるため、
その年数で石油
が掘り尽くされるということではない。
265,850
(16.2%)
297,740
(18.1%)
出所:OGJ誌
(2013年末号)
超深海底油田
北極海域油田
CO2による増進石油回収
2兆バレル
22年
非OPEC合計
173,200
(10.5%)
(100%)
確認埋蔵量:油層内に存在する油の総量(原始埋蔵量)のう
1兆バレル
27
11年
年
115,445
(7.0%)
確認埋蔵量:1,200,840
(73.0%)
生産済み石油
11年
80,000
(4.9%)
157,300
(9.6%)
中東・北アフリカの石油
12年
8,804
10,073
(0.6%)(0.5%)
24,376
31,777
(1.5%)
(1.9%)
単位:百万バレル
100
16年
可採年数:
確認埋蔵量
140,300
(8.5%)
3兆バレル
4兆バレル
5兆バレル
技術的に回収可能な残存石油資源量
〈試算〉
2013年生産量に
対する残存資源年数
メキシコ
99年
OPEC合計
0
アメリカ
99年
97,800 101,500
(5.9%)(6.2%)
2
0
1
2
中国
108年
37,140
(2.3%) 48,470
(2.9%)
40
ロシア
カナダ
単位:千バレル/日
9,060
(0.6%)
60
2,530
2,235
(3.4%)
(3.0%)
原油生産量
可採年数:
45,680
(2.8%)
4,211
(5.6%)
3,328
(4.4%)
3,226
2,822 (4.3%) 2,555
2,704
2,465
(3.6%)(3.7%)
(3.4%)(3.3%)
7,535
(10.0%)
その他
非OPEC諸国
10,404
(13.8%)
サウジアラビア
ベネズエラ
イラン
イラク
クウェート
53年
アラブ首長国連邦
︵UAE︶
リビア
ナイジェリア
アンゴラ
その他
OPEC諸国
14年
原油生産量:44,583
(59.2%)
(100%)
9,639
(12.8%)
(注)
: 1. 分割地帯はそれぞれサウジアラビア、
クウェートに含まれる
2. UAEはアラブ首長国連邦の略称
3. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
2,389
1,910
(3.2%) 1,752
(2.3%) (2.5%) 1,234
(1.6%)
非OPEC合計
世界合計
原油生産量:30,695
(40.8%)
52年
14,340
(19.0%)
原油生産量
100年
4.4兆
8
6兆バレル
ガス液化燃料
(GTL)
注1:IEA
(World Energy
Outlook,2013)
を
もとに作成
注2:残存資源年数は、
IEA(Oil Market
Report, jun 2014)
7兆バレル
8兆バレル
の2013年石油供
給量より、
プロセッ
シングゲインとバイ
オ燃 料を控 除した
87.4百万バレル/日
(320億バレル/年)
から試算
7.6兆
200年
国内石油需給動向
られ、
産業分野、
民生・業務分野で石油から天然ガス等への燃料転換
構造的な石油需要の減少
が進展しました。
②社会構造の変化
2012年度の石油需要は燃料油合計で約1億9,752万Sと前年度
実績比0.8%増になりました。1988年度に石油需要が燃料油合計で
現在も進む少子高齢化、
人口の減少という社会構造の変化により、
2億Sを超えましたが、
09年度以降は2億Sの大台を割っています。
ガソリンや灯油などの油種は直接的な需要家の減少に直面する一
復興需要などのあった軽油、
原子力発電所の停止に伴う火力発電の
方、
軽油やA重油については物資の輸送量そのものの低迷に加え、
輸
増加があったBC重油の需要は前年比で増加しましたが、
それ以外の
送体制の合理化・効率化等により燃料消費の削減が図られてきまし
油種は前年度実績を下回る結果となりました。
た。特に、
自動車燃料であるガソリン需要の減少に関しては、
都市部を
ガソリンからC重油までの、
いわゆる燃料油の需要は、
戦後、
一貫し
中心とした若年層の車離れが影響しているといわれています。
③地球温暖化対策
て増加してきましたが、第二次石油ショック後の1980年代に産業用
燃料・原料であるC重油とナフサ需要の大幅な減少によって2億Sを
二酸化炭素の削減が世界的な課題となって以来、
化石燃料である
下回る水準で低迷しました。その他の石油製品はその後も増加を続
石油は、
その消費削減が求められており、
よりCO2排出量の少ないエ
けました。その増加トレンドに転機が生じたのが2000年でした。燃料
ネルギーへの転換や自動車燃費の改善など、
エネルギー消費効率の
油合計の需要量は99年度の2億4,597万Sをピークに2000年度以
向上による石油の消費量の削減が図られています。
降は減少傾向が続いています。ガソリンについては04年度の6,148
万S、灯油は02年度の3,062万Sが需要のピークとなっています。
13年度の上期
(4月~9月)
の需要実績については、燃料油合計で
ちなみにBC重油の需要のピークは73年度の1億1,100万Sです。
8,957万Sと12年度同期の実績
(9,214万S)を3%下回っていま
こうした石油需要減少の構造的要因として、わが国における①脱石
す。油種別に見ると、
灯油、
A重油、
BC重油は減少となりました。BC重
油政策の展開、
②社会構造の変化、
③地球温暖化対策が挙げられます。
油については、東日本大震災により電力向けの需要が特に高まって
①脱石油政策の展開
いた前年同期に比べて31%減少、
969万Sとなりました。電力用需要
については、
今後の原子力発電の設備利用によって大きく需要が変
2度の石油ショックを受けて、
わが国では石油依存度の低減を図る
化すると考えられます。
ため、
エネルギー政策の柱として
「脱石油」
が掲げられてきました。
と
りわけ発電用や産業用のBC重油については原子力の推進・重油火
今後のわが国の石油製品需要は、
原油価格の急激な変動などによ
力発電の新設禁止や天然ガスの政策優遇など、
強力な施策展開が図
る一時的な変動を除いて、
構造的な減少要因に本質的な変化はない
■原油処理能力と設計能力稼働率の推移
単位:千バレル/日
6,000
単位:%
100
5,940 5,940
5,410
5,221 5,274
4,973
5,000
4,767 4,796 4,856 4,895 4,846
4,552
87.2
4,000
2,000
1,000
0
設計能力稼働率︵%︶
3,000
4,627 4,559
4,478
1973
77.3
82.9
79.4
82.7
79.2
78.9
77.7
74.5
74.2
75.9
70.7
90
年度平均処理能力
85.2
80
70
66.0
62.3
1975
1980
1985
60
1990
1995
2000
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011 2012年度
50
出所:経済産業省
「資源・エネルギー統計」、石油連盟
9
国 内 石 油 需給動向
■わが国の石油製品別(燃料油)
需要の推移
BC重油
1973年度
A重油
111,007
1975年度
92,903
1980年度
45,133
1990年度
46,623
2000年度
23,743
27,742
2012年度
0
21,930
36,240
27,223
24,613
31,423
30,017
46,699
43,718
57,209
43,172
56,447
100,000
150,000
3,739
218,012
245,405
51,628
243,218
58,372
236,109
61,421
58,159
3,056
180,931
44,783
196,019
自 動 車
56,379
航 空 機
4
ジェッ
ト
燃料油
ナフサ
200,000
250,000
灯 油
軽 油
都
重 油
原 油
潤滑油
2,029
583
3,986
1,599
531
2,909
3,807
24
10,140
97
電 力
413
13,586
化 学 用 原 料
43,172
56,447
43,172
19,433
6,025
18,991
13,730
33,443
41,501
製 品
(燃料油)
1,884
36,387
31,002
505
4,578
48,465
14,235
29,711
単位:千S
2010年度
2011年度
2012年度
輸 入
214,357
209,173
211,026
100.9
処 理
208,572
196,720
197,359
100.3
期初在庫
10,533
10,483
10,108
96.4
生 産
195,157
185,440
185,283
99.9
項目
20,908
1,527
242,993
出所:石油連盟
■石油需給バランス
原 油
847
2,811
(注)
:1.記入用途例は、
産業活動および国民生活のうち
「身近なもの」
の一例
2.四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
年度
4,083
12,384
5,033
210
3,965
91,257
5,038
1,884
家 庭・業 務
合 計
3,969
市 ガ ス
合 計
LPガス
3,965
64
5,153
単位:千S
運 輸・船 舶
鉱 工 業
5,129
出所:経済産業省
「資源・エネルギー統計」
32,265
農 林・水 産
4,611
3,965
197,520
■石油製品の用途別国内需要
(2012年度)
ガソリン
4,849
4,199
196,044
(注)
:四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
製品
用途 2,059
2,967
209,219
34,543
47,686
49,388
燃料油計
234,138
212,639
28,995
43,988
28,265
18,991
50,000
36,698
26,701
19,623
33,443
32,031
26,297
29,924
20,349
32,872
23,566
25,307
37,116
32,891
13,759
19,306 16,759
21,564
41,745
27,780
14,680
ガソリン
45,452
29,516
2010年度 17,343 15,425
ナフサ
37,680
28,796
27,009
2011年度
25,808
27,066
31,364
2005年度
21,083
20,315
40,675
1995年度
灯油
18,992 15,997 21,663
79,199
1985年度
軽油
単位:千S
ジェット燃料油 1,673
対前年度比
(%)
輸 入
33,100
37,368
38,916
104.1
供 給 計
228,257
222,808
224,199
100.6
内 需
196,019
196,044
197,520
100.8
輸 出
30,285
25,347
24,751
97.7
需 要 計
226,303
221,391
222,271
100.4
期末在庫
10,483
10,108
11,043
109.3
(注)
:バランスは品種振替、
ロス、
その他で一致しない
出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」
10
ことが想定されていますが、東日本大震災において石油の果たした
原油の輸入
役割を踏まえ、今後も石油のサプライチェーンを維持するためには、
12年度の原油輸入について地域別に見ると、中東地域が83.2%
安定需要の確保とサプライチェーンの効率化が必要となっています。
を占めています。中東地域への石油依存度は、
石油危機後の87年度
わが国の石油供給体制
には一旦68%まで低下しましたが、
96年度には24年ぶりに80%を上
回り、
以降80%台で推移しています。
12年度に国内で産出した原油は76万Sと、原油処理量の1億
9,736万Sの0.4%、
およそ1.5日分に相当する量に過ぎず、
国内で消
原 油 の 輸 入 国を国 別に見ると、サウジアラビア
(全輸入量の
費される石油製品需要を賄うため、
わが国は原油および石油製品の
30.4%)
、アラブ 首 長 国 連 邦
( 同22.1%)
、カター ル
( 同11.4%)
、ク
ほぼすべてを海外から輸入しています。国内の石油製品需要を賄う方
ウェート
(同7.4%)
の順となっており、
この4ヵ国で全輸入量のおよそ7
法としては、石油製品を輸入する方法と原油を輸入して国内で石油製
割を占めていることがわかります。
品に精製する方法がありますが、
わが国は原油の輸入と国内での精製
こうした中東の国々との良好な関係の維持・発展が極めて重要と
という後者の方式を採用しています。国内で石油製品を精製する方式
なりますが、
必ずしも国内の政情や国際社会との関係に問題のない
は
「消費地精製方式」
と呼ばれています。消費地精製方式は、大型の
国ばかりではなく、
わが国の石油供給体制は依然として脆弱な面を有
原油タンカーで大量に原油を輸送することによるコスト低減、
国内の
していると言わざるを得ません。
需要構造に合わせて石油製品の生産割合を一定の範囲で調整でき
製品輸入と製品輸出
ること、
国内の環境基準等に適合した品質の調整が容易であること、
緊急時への対応に優位性があることなど多くのメリットを有してお
消費地精製方式を採用するわが国において、
製品輸入は補完的な
り、
わが国の石油供給体制の根幹となっています。
石油の供給手段ですが、
ナフサについては例外で、
国内需要の約6割
一方、
国内の石油需要は、
東日本大震災後に原子力発電所の稼働
を輸入製品で賄っています。
これは、
国産ナフサが不足していること
が低下したことに伴いBC重油の需要が増加していますが、
ここ30年
もあり、
石油化学会社が独自に石油化学原料であるナフサを輸入し
の間、
ほぼ一貫して重油需要の減少とガソリンやナフサ、
灯油などの
ているためです。また、
外国航路を行き来する船舶に日本で生産した
いわゆる
「白油」
と呼ばれる製品が増加したため、
石油会社では、
重油
燃料を供給した場合は輸出とみなされるため、
このような輸出がBC
を分解して
「白油」
を増産するための設備を建設し、
需要と供給のバラ
重油の供給量のうち大きな割合を占めています。同様にジェット燃料
ンス維持に努めてきました。近年はマーケットの国際化が進展したこ
油についても、
わが国と海外を往復する航空機燃料の供給は輸出と
ともあり、製品の輸出入について、
より戦略的な観点から国内外の
みなされるため、国内需要の2倍以上が輸出量として計上されてい
マーケットを睨みながら機動的な活用が図られています。
ます。
■わが国の石油製品別輸入・輸出構成比
(2012年度)
輸 入 38,916千S
ガソリン
7.4
ナフサ 0.2
輸 出 24,751千S
重油 22.7
ナフサ 65.0
軽油 1.5
灯油 3.2
灯油 0.6
ジェット燃料油 36.6
単位:%
ジェット燃料油 0.2
軽油 25.9
重油 32.1
ガソリン 4.6
■わが国の主要石油製品の国別輸入・輸出構成比
スウェーデン 0.0
アメリカ 0.0
中国 1.2
オーストラリア 1.2
シンガポール
3.3
輸入
韓国
96.7
韓国
100.0
韓国
100.0
アメリカ 3.6
香港 4.0
米軍 5.3
輸出
ニュージーランド
12.8
韓国
15.8
フィリピン 0.7
台湾 0.6
タイ 0.4
中国 0.0
輸出
1,148千S
シンガポール
56.8
(注)
:四捨五入の関係により100%にならない場合がある
米軍 0.1
アメリカ
24.5
メキシコ 1.6
米軍 1.9
アメリカ 2.0
ブラジル 3.2
チリ 3.2
香港
12.8
輸出
144千S
韓国
14.8
韓国
75.4
インドネシア
5.8
韓国
20.3
中国 1.4
モザンビーク 1.4
フィリピン 1.0
その他 1.9
オーストラリア
28.2
輸出
6,410千S
シンガポール
26.6
重 油
輸入
583千S
軽 油
輸入
1,250千S
灯 油
ガ ソ リン
輸入
2,884千S
リビア 1.1
ベルギー 1.1
その他 2.3
マルタ 2.3
シンガポール 2.4
台湾 2.6
ロシア 2.7
輸入
マレーシア
8,829千S 57.0
香港
6.0
マレーシア 1.9
レバノン 0.4
インドネシア 0.0
韓国
9.8
中国
10.4
輸出
ボンド*
7,935千S 53.4
シンガポール
18.1
出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」
*外航船舶向け供給分
11
国 内 石 油 需給動向
■わが国の国別原油輸入比率の推移
1973
年度
1975
1980
サウジアラビア
19.9
アラブ首長国連邦
10.8
OPEC 92.9
イラン
22.3
分割地帯 4.9
インドネシア イラク
11.2
2.3
クウェート
8.3
OPEC 89.2
カタール 3.5
アラブ首長国連邦
14.7
サウジアラビア
33.0
クウェート
8.2
イラン
31.0
アラブ首長国連邦
10.3
サウジアラビア
27.2
クウェート 3.5
インドネシア
15.0
イラン
2.3
その他 0.8
ナイジェリア 1.9
イラク 0.3
インドネシア
分割地帯
14.7
5.3
分割地帯 5.4
イラク
5.5
1985
1990
アラブ首長国連邦
22.2
クウェート 1.7
カタール イラン
6.9
6.3
サウジアラビア
19.5
アラブ首長国連邦
21.4
カタール
6.0
分割地帯
6.1
その他 0.3
オマーン
8.9
2000
2005
2010
2011
2012
サウジアラビア
19.2
非OPEC 28.4
クウェート 1.9
イラン
10.7
アラブ首長国連邦
26.7
OPEC 79.9
サウジアラビア
21.6
アラブ首長国連邦
24.5
OPEC 90.0
アラブ首長国連邦
20.9
OPEC 84.0
サウジアラビア
31.1
アラブ首長国連邦
22.5
サウジアラビア
30.4
アラブ首長国連邦
22.1
OPEC 83.6
OPEC 81.9
イラン
8.7
カタール
9.6
OPEC 87.5
サウジアラビア
29.2
カタール
11.6
その他 0.6
クウェート インドネシア 分割地帯
5.0
7.9
5.4
イラン
11.5
カタール
9.4
イラン
9.8
分割地帯 2.1
イラク 2.1
カタール イラン クウェート
4.8
11.4
7.4
中国
5.0
非OPEC 20.1
分割地帯 2.0 イラク 0.7
イラン
クウェート インドネシア
13.0
7.2
3.1
その他 0.8
オマーン その他
2.6
3.1
1990
2000
非OPEC 10.0
その他 0.8
ロシア
4.1
その他
6.5
非OPEC 16.4
その他 1.6
ロシア
5.3
209,173千S
オマーン 2.8
インドネシア その他 ベトナム 2.0
4.5 211,026千S
3.6
非OPEC 18.1
9.0
67.3
74.4
2011
18.4
3.6
73.7
8.0
7.8
61.3
3.1
9.2
14.3
44.4
3.3
6.3
単位:%
邦系石油開発会社
8.5
7.7
17.8
16.6
249,010千S
スーダン 2.6
産油国政府
2010
2012
オーストラリア 0.9
ベトナム 0.8
オマーン 2.3
インドネシア 3.5
独立会社
2.2
22.2
254,604千S
非OPEC 12.5
出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」
1.9
27.8
オーストラリア 1.4
ベトナム 1.1
非OPEC 16.0
70.0
44.5
その他
3.3
オマーン 2.7
その他 インドネシア 2.4
3.8 214,357千S
メジャーズ 74.1
1980
マレーシア 2.1
ベトナム 1.9
その他
4.9 265,526千S
その他 0.2
オマーン 中国
4.5 2.2
イラク 3.3
その他 0.4
クウェート 分割地帯 ロシア
7.0
7.1
1.9
分割地帯 2.0
イラク 2.2
カタール イラン クウェート
7.8
10.2
7.0
オマーン
6.1
238,480千S
インドネシア 4.8 分割地帯 5.4
クウェート
イラク
7.4
1.4
■わが国の供給者別原油輸入比率の推移
1975
262,785千S
メキシコ 0.8
その他
249,199千S
5.7
その他 オマーン 中国
3.5 3.8
3.3
(注)
:四捨五入の関係により100%にならない場合がある
1973
年度
その他 1.1
非OPEC 10.8
分割地帯 3.5
オマーン 中国 メキシコ その他
6.4
6.5
3.7 5.4
その他
非OPEC 22.0
0.5
イラク 2.0
インドネシア
12.6
カタール
6.3
アラブ首長国連邦
25.6
サウジアラビア
29.2
288,609千S
非OPEC 7.1
マレーシア 3.8
その他
4.4 197,261千S
中国 メキシコ
6.5 4.9
OPEC 78.0
1995
単位:%
その他 1.1
非OPEC 13.8
イラク 3.2
インドネシア
11.4
OPEC 71.6
オマーンブルネイ
1.9 3.5
ブルネイ 3.3
その他 オマーン 中国
2.7 2.9 3.6
OPEC 86.2
サウジアラビア
13.5
中国 0.6
8.3
288,609千S
262,785千S
249,199千S
238,480千S
8.3
254,604千S
4.7 214,357千S
4.3 209,173千S
72.8
4.3
(注)
:四捨五入の関係により100%にならない場合がある
211,026千S
出所:経済産業省「石油輸入調査」
12
■わが国の原油輸入量とOPEC依存度・中東依存度の推移
単位:折線グラフは%、棒グラフは百万S
(百万S)
300
289
原油輸入量
263
(%)
100
266
255
249
249
250
238
214
92.9
197
87.6
89.2
80
200
90.0
90
OPEC依存度
86.2
86.6
89.1
87.1
83.2
78.2
150
84.0
79.9
77.5
211
81.9
78.0
78.6
71.4
71.5
中東依存度
湾岸危機
第二次
石油危機
第一次
石油危機
イラク戦争
71.6
70
60
100
68.8
50
0
1973 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
年度
出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」
■わが国の石油輸入金額の推移
80
20000
70
16,632
石油輸入金額
(10億円:左軸) 15000
15,166
16,194
13,642
総輸入金額に
占める石 油 輸
入金額の割合
(%:右軸)
12,456
38.12
10000
5000
43.34
50
12,290
9,491
32.63
6,631
22.51
40
6,624
19.39
2,784
6,495
23.13
20.58
30
19.68
21.76
22.46
20
3,846
11.67
15.30
10
0
0
1973
項目
原油CIF価格
平均硫黄分
A P I 度
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2008
2010
2011
2012年度
年度
1973
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2008
2010
2011
2012
ドル/バレル
4.75
12.05
34.62
27.30
23.34
18.27
28.37
55.81
90.52
84.16
114.18
113.89
円/S
為替レート (円/ドル)
(wt%)
60
8,329
22,654
47,508
38,282
20,296
11,057
19,617
39,735
58,542
45,373
56,680
59,356
278.57
298.91
218.23
222.90
138.23
96.23
109.95
113.19
102.82
85.72
78.92
82.86
1.35
1.36
1.43
1.25
1.20
1.33
1.49
1.44
1.49
1.46
1.43
1.41
33.67
33.89
34.41
35.06
35.51
35.10
35.09
35.66
35.54
35.94
35.83
36.00
出所:財務省「貿易統計」、
経済産業省「石油輸入調査」
13
国 内 石 油 需給動向
■世界の石油貿易量
(2012年)
単位:百万t
286.5
26.4
28.8
26.7
59.7
176.1
112.2
146.5
42.9
65.5
23.7
144.4
78.3
16.8
22.8
51.4
55.4
108.0
98.3
44.8
26.8
21.1
123.1
28.4
20.9
49.5
27.3
34.5
51.6
22.7
アメリカ
カナダ
メキシコ
中・南米
ヨーロッパ&ユーラシア
中東
アフリカ
アジア・太平洋
18.4
218.0
31.5
出所:BP「世界エネルギー統計」
(2013年版)
■主要消費国の一次エネルギー消費構成比
(2012年)
水力 6.7
単位:原油換算百万t、
%
再生可能エネルギー 1.9
原子力
4.5
2,735.2百万t
天然ガス
世界計
23.9 12,476.6百万t
石油
33.1
2,208.8百万t
再生可能エネルギー 2.3
石炭
29.9
水力 2.9
68.5
原子力 8.3
1.2
再生可能
エネルギー
1.7
694.2百万t
5.4
5.8
天然ガス 29.6
7.1
0.8
4.7
478.2百万t
原子力 天然ガス 22.0
0.9
水力
石炭 26.0
3.8
0.0
203.6百万t
石油 45.6
34.6
19.2
33.6
日本
イギリス
4.1
7.8
0.6
245.4百万t
39.2
15.6
33.0
フランス
2.2
5.4
4.6
311.7百万t
8.3
7.2
21.7
25.4
1.5
54.0
13.5
35.8
21.2
ドイツ
ロシア
石油 37.1
17.7
石炭 19.8
中国
アメリカ
出所:BP「世界エネルギー統計」
(2013年版)
14
わが国のエネルギー政策
替政策のあり方、
新エネルギーの定義を再検討することが明示され
エネルギー政策基本法の制定
ました。
わが国のエネルギー政策はその時代のさまざまな要請に従って
変化してきました。1973年の第一次石油危機から40年あまりが経
エネルギー供給構造の高度化に向けて
過し、エネルギーの安定供給に加えて地球規模での環境問題への
配慮、さらには規制改革等を通じた公正な競争の促進、自由化、効
08年に開催された北海道洞爺湖サミットなどを経て、低炭素社
率の向上も求められています。
会の構築へ向けて日本国内の議論も進められています。地球環境
このようなエネルギーを取り巻く情勢を踏まえ、2002年6月、エ
問題への対応を巡り各国の動きは活発化し、
これらによって、エネ
ネルギー政策の大きな方向性を示し、
さまざまな施策を総合的・整
ルギー業界にも大きな変革が迫られています。今後のエネルギー
合的に進めていくことを目的としてエネルギー政策基本法が制定
政策は、近年の原油価格の乱高下に伴って求められてきたエネル
されました。同法では
「安定供給の確保
(Energy security)
」
「
、環境
ギー安全保障の確保の観点に加えて、地球温暖化問題の解決を同
への適合
(Environment)
」
、およびこれらを十分考慮した上での
時に図ることが求められています。
「市場原理の活用
(Economic, Efficiency)
」
のエネルギー政策の3
こうした中で、08年10月より、経済産業省は代エネ施策の見直し
つの基本方針
(3E)
が示されるとともに、国および地方公共団体等
と非化石エネルギーの導入拡大に向けた検討を開始しました。そこ
の役割分担が明記されています。また、同法の下で、3Eの基本方針
では、08年は石油のみならず化石燃料全般の価格が高騰したもの
にのっとり、
10年程度を見通して、エネルギーの需給全体に関する
の、秋以降は世界的な金融不安の影響を受けて価格が下落すると
施策の基本的な方向性を安定的に示すものとして、
「エネルギー基
いった不安定な状態が続く中で、エネルギーの太宗を海外に依存
本計画」
の策定が定められています。
し、化石燃料への依存度は80%を超える日本のエネルギー供給構
造の脆弱性が指摘されました。さらに、地球温暖化問題への対応、
低炭素社会の構築といった中長期的な対応の重要性、エネルギー
21世紀も石油は重要なエネルギー
政策基本法の基本理念
(3Eの一体的解決)
を踏まえたエネルギー
政策見直しの必要性が提言されました。
石油業界は、エネルギー政策の3つの基本方針
(3E)
の同時達成
のためには、①各エネルギーの特性を客観的・公平に評価し、わが
審議会の議論を通じて、石油業界としては、①2030年も石油は
国に相応しい
「エネルギーのベストミックス」
を達成すること、②一
一次エネルギーの約4割を占める主要なエネルギーであり、政策の
次エネルギー供給の最大シェアを占める石油の有効活用・効率的
バッファーではなく基幹エネルギーとして位置付けること、②石油
利用を進めること、③バイオ等の新エネルギーの導入については、
資源の安定供給確保、
クリーンかつ効率的な利用に取り組むため、
実現可能性を重視すること、④
「エネルギーのベストミックス」
を達
代エネ法を廃止して全エネルギーを対象とした革新的技術による
成するためには、各エネルギーの税制や備蓄等の競争条件をイ
高度利用を実現するための法体系を新設すること、③エネルギー
コールフッティングさせることが必要であることなどを主張してき
のベストミックスを達成するため、税や支援制度など競争条件の公
ました。
平化を図ること、
を要望してきました。その結果、09年1月に取りま
この結果、
03年10月に策定されたエネルギー基本計画では、
こ
とめられた報告書には、
わが国として
「低炭素社会」
を実現させるた
れまでわが国のエネルギー政策の基本であった
「脱石油」
「脱中東」
めの基本方針として、①石油を単に抑制することを目的とした代エ
といった目標が削除され、
「石油は、経済性・利便性の観点から今後
ネ政策の見直し、②エネルギー政策基本法の基本理念に基づき各
も重要なエネルギー」
と位置付けられ、石油の重要性が再認識され
エネルギーの特性を客観的に評価し、
これに応じた供給構造の高度
ました。
化を進めること、
③エネルギー間の競争条件の公平性に配慮するこ
となどが指摘されており、石油業界としても極めて有意義なものと
また、
この基本計画を受けて04年10月に策定された2030年の
して評価しています。
エネルギー需給展望では、2030年において石油は一次エネル
ギーの主役であること、
さらに石油の効率的利用を進めるため、石
取りまとめを受けて、09年7月、石油依存度の低減のみを目的と
油残渣IGCCの導入を進めるべきことが示されるとともに、石油代
した代エネ施策を見直して代エネ法の
「石油代替」
概念を撤廃し
(代
15
わ が 国 の エ ネ ル ギー政策
エネ法の改正)
、
エネルギー供給事業者に対する誘導的規制により
げることを目標として、石油精製各社は、現状の装備率に応じた、
3
①革新的エネルギー技術、非在来型資源開発等の推進、②非化石
段階の改善率を達成することが義務付けられました。これにより、石
エネルギー(原子力、水力、地熱、新エネルギー等)
の導入拡大、③
油精製各社は重質油分解装置の装備率向上のため、同装置の新
化石資源
(原油、天然ガス、石炭等)
の高度利用・有効利用の推進、
設・増設、
または常圧蒸留装置の削減が求められることとなり、
これ
といった取り組みを規定する新法
(エネルギー供給構造高度化法)
に加えて設備の運転面の改善等、技術開発等について取り組むこ
が成立しました。これは、
エネルギー供給事業者
(電気、
ガス、石油事
ととなりました。
業者)
に対して、非化石エネルギー源の利用を拡大するとともに、化
石エネルギー原料の有効利用を促進することを目的としています。
具体的には、
エネルギー供給事業者が取り組むべき事項について、
エネルギー政策の再構築
~東日本大震災以降のエネルギー政策について~
10年7月、化石エネルギー原料の有効利用の促進に関する判断基
近年は、
原油価格の高騰など世界のエネルギー情勢は厳しさを増
準が告示されました。石油に関しては、
わが国の重質油分解装置の
し、
アジア諸国を中心としたエネルギー需要の増大、
資源国における
装備率
(10年時点10%程度)
を13年度までに13%程度まで引き上
資源ナショナリズムの高まりなど大きな構造変化が起きています。
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用
及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律
(エネルギー供給構造高度化法)
エネルギー供給事業者(電気、石油、ガス事業者)による、
①非化石エネルギー源の利用、②化石エネルギー原料の有効な利用を促進する。
エネルギー供給事業者による取組の促進の必要性
基本方針
・太陽光、原子力等の非化石電源を2020年までに50%以上とする等、
非化石電源の利用を拡大することを義務付け
(電気事業者)
・太陽光発電による電気の利用に係る適正な対価での買取りの義務付け(電気事業者)
・バイオ燃料・バイオガスの利用を義務付け
(石油事業者、
ガス事業者)
・原油や天然ガスの有効な利用を義務付け
(石油事業者、
ガス事業者)
技術開発の促進の必要性
(経済産業大臣が策定)
判断基準
(特定のエネルギー供給事業者へ
①、②を義務付け)
計画作成・提出
(例)
・水素社会構築に向けた、水素の製造や貯蔵、燃料電池に関する技術開発
・非在来型資源(メタンハイドレートやオイルサンド)
に関する技術開発
・石油残渣を高効率に分解するための技術開発
・ガス化複合発電(IGCC)
に関する技術開発
・木質等、
セルロース系バイオマスの活用に関する技術開発
(一定規模以上のエネルギー供給事業者が対象)
勧告・命令※
※判断基準に照らして取組の状況が
著しく不十分な場合に措置
石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(代エネ法)等の一部を改正する法律
石油代替政策を見直し、開発・導入を促進する対象を
「石油代替エネルギー」から「非化石エネルギー」
(新エネ、原子力等)に変更する。
具体的な措置の例
工場または事業場において導入すべき非化石エネルギーについて、
事業者に対する導入の指針を定め、公表する。
(例)
・事業者と地方公共団体が連携して、
大規模太陽光発電(メガ・ソーラー)
の建設を促進すること。
・港湾、鉄道、空港などの公的施設において、太陽光発電等新エネルギーの導入をより一層促進すること。
16
加えて、地震やハリケーンなど自然災害、原子力発電所事故による
その後、特に核燃料サイクル政策、
エネルギーミックス、温暖化対
エネルギーの安全性への見直し、投機的な資金の流入、テロの懸
策について精力的に検討がなされ、
12年6月には、①2030年まで
念、
イランの核問題といった中東諸国を取り巻く不安定要因による
のなるべく早期に原発比率をゼロとするゼロシナリオ、②原発依存
影響も深刻化し、
エネルギー価格は大きく変動しました。その中で、
度を着実に下げ2030年に15%程度としつつ、化石燃料依存度の
エネルギー安全保障への関心が世界的に高まり、各国ではエネル
低減、
CO2削減の要請を円滑に実現する15シナリオ、③緩やかに
ギー安全保障を主軸としたエネルギー国家戦略の再構築を進めて
原発依存度を低減しながら、一定程度維持し、2030年の原発比率
います。
を20 ~25%程度とする20 ~25シナリオが、国民が新たなエネル
こうした状況を背景として、わが国は、10年6月に第二次改定が
ギーの選択を議論するために必要な選択肢として提示されました。
行われたエネルギー基本計画の下でエネルギー政策を推進する一
同選択肢について、パブリックコメント、意見聴取会、討論型世論調
方、
11年3月11日に発生した東日本大震災や、福島原子力発電所
査等により、短い期間ではあるものの、国民的議論が行われ、
これ
の事故といったかつてない事態に直面しました。
を踏まえた形で同年9月に、エネルギー・環境会議において、
「革新
このような状況下、東日本の復興を支え、震災前からわが国が直
的エネルギー・環境戦略」
が取りまとめられました。同戦略には、①
面していた諸課題に対応し、日本の再生に向けた取り組みを再ス
原発に依存しない社会の一日も早い実現、②グリーンエネルギー
タートするために、11年5月17日に、政府は、日本再生の方針を提
革命の実現、③エネルギー安定供給、④電力システム改革の断行、
示した
「政策推進指針~日本の再生に向けて~」
を閣議決定し、そ
⑤地球温暖化対策の着実な実施といったことが明記されました。ま
の中で、
「新成長戦略実現会議」
において、電力制約の克服、安全対
た、同戦略を受けて、
12年末をめどにグリーン政策大綱、電力シス
策の強化に加え、エネルギーシステムのゆがみ・脆弱性を是正し、
テム改革戦略、地球温暖化対策の計画等について、取りまとめが行
安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中期・長期から
われることとされました。
なる革新的エネルギー・環境戦略を検討することを決定しました。
これを受け、同年6月7日に開催された新成長戦略会議におい
政権交代によるエネルギー政策の見直し
て、①原子力発電への依存度を2030年には5割とするとした現行
のエネルギー基本計画を白紙で見直すべき状況にあること、②経
その後、
12年12月の総選挙後の政権交代を受けて、
13年1月に
済成長と国民生活の安定を図るためのエネルギーの選択は、常に
は安倍総理大臣から茂木経済産業大臣に対し、
「 前政権のエネル
また、
どの国でも重要課題であること、③白紙からエネルギー・環
ギー・環境戦略をゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エ
境戦略を見直し、新たな合意形成を急がねばならないこと、の三点
ネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構
が改めて確認され、国家戦略担当大臣を議長とする
「エネルギー・
築すること」
との指示が出されました。これを受け、総合資源エネル
環境会議」
を設け、省庁横断的に、かつ、聖域なくエネルギー・環境
ギー調査会総合部会は、計17回の会議で集中的に議論を行い、同
戦略を練り直すこととなりました。
年12月に、
原子力発電を、
基盤となる重要なベース電源と位置付け
同会議において、
7月に
「革新的エネルギー・戦略策定に向けた
るなど
(14年2月の閣僚会議では
「重要なベースロード電源」
に修
中間的な整理」
をまとめ、原発への依存度低減のシナリオと、
分散型
正)
、前政権が
「エネルギー・環境戦略」
で示した、2030年代の原発
エネルギーシステムへの転換という大きな方向性を決定しました。
再稼働ゼロを目指すと言った方針を転換した
「エネルギー基本計画
また、示された方向性、基本方針に基づき、
グリーン成長戦略、原子
に対する意見」
を取りまとめました。この中では、東日本大震災等に
力をはじめとした各電源のコストの検証、新しい
「エネルギー基本計
よって露呈した、
わが国のエネルギー需給構造が抱える課題を踏ま
画」
(望ましいエネルギーミックス)
、温暖化対策、原子力政策に関す
え、
わが国のエネルギー政策の原則と改革の視点として、従来の3E
る議論を行いました。12月には、それぞれの論点整理等や検討結果
+S(安全性:Safety)
に加え、国際的視点と経済成長が重要である
を踏まえ、エネルギー・環境会議として、
「基本方針~エネルギー・
ことや、多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築に向
環境戦略に関する選択肢の提示に向けて~」
を決定し、
この方針を
けた政策の方向性が示されています。
踏襲した形で12月24日に閣議決定された
「日本再生の基本戦略に
具体的には、①原子力政策は、福島の再生、復興に全力で取り組
ついて」
の中でエネルギー・環境政策の再設計が明記されました。
むとともに、安全性の確保を大前提に引き続き活用していく重要な
17
わ が 国 の エ ネ ル ギー政策
ベース電源とし、②エネルギーの生産
(調達)
段階では、安定的な資
であること等を主張しており、概ねその意見が取り入れられた内容
源確保の抜本強化とともに、石油、LPガスの危機管理能力の強化な
となっています。
ど国内エネルギー供給網の強靭化を図ること、③さらに需要家の選
11年10月、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会におい
択肢を拡大し、市場の垣根を外していく供給構造改革として、電力
て、
わが国の望ましいエネルギーミックスおよびエネルギー政策の
システム改革を断行し、
ガスシステム改革を推進すること、石油につ
改革の方向性について検討が開始されたことなどを受けて、石油
いては、市場構造の変化に応じた構造改善によって、石油産業の経
業界としては、5次にわたり基幹エネルギーとしての石油の重要性
営基盤強化、競争力強化を推進すること、④エネルギーの消費段階
を主張し、
提言を行ってきました。
では、需要家の選択肢の拡大を通じた、効率的な供給構造の実現や
12年12月の政権交代により、前政権のエネルギー政策をゼロ
省エネ強化、⑤さらに、市場の統合を通じた総合エネルギー企業等
ベースで見直し、新たにエネルギー基本計画の策定に向けた議論
の創出、安定供給と地球温暖化対策に貢献する二次エネルギー構
が開始されたことを受けて、石油業界は、13年10月に、①エネル
造への変革
(分散型エネルギーなど)
、⑥総合的なエネルギー国際
ギー産業の競争力強化と緊急時対応力強化の両立、②災害対応力
戦略の展開、
といった方向性が明記されています。
に優れ、国民生活に必要不可欠な資源でもある
「石油」
の位置付け
今後、
これらの意見を基に、政府によって新たなエネルギー基本
の明確化、③市場における効率的なエネルギー選択を促すための
計画が決定されることになりますが、国家のエネルギー政策は、国
エネルギー間の公平な競争促進、④エネルギーシステム改革の推
民生活や企業活動に直接影響する問題であり、同計画に基づき、早
進等を骨子とした新提言
(
「新たなエネルギー政策への石油業界の
急にエネルギーミックス等の策定等の検討を行うなど、新たなエネ
提言と石油産業が目指すこと」
)
を取りまとめ、発表しました。この中
ルギー政策を着実に実行していくことが重要です。
では、①国民の安全・安心を守るエネルギーセキュリティの強化、②
石油産業の成長戦略
(産業競争力強化)
、③環境対策の推進といっ
た、石油産業が目指す方向と石油産業政策に対する提言も取りまと
石油政策の見直し
め、
関係方面に積極的に発信しました。
東日本大震災を受けて、石油政策について一部見直しが行われ
こうした結果、同年12月に、同分科会にて取りまとめられた
「エネ
ました。
ルギー基本計画に対する意見」
には、石油は利用用途の広さ
(発電、
具体的には、災害対応能力に優れたエネルギーである石油等の
運輸燃料等)
や利便性の高さ
(可搬性、
インフラの充実度)
から、
今後
資源・燃料の安定供給確保に向け、現状において先行して取り組む
とも活用していく重要なエネルギー源と位置付けられるとともに、
よ
事項を
「資源・燃料政策に関する有識者との意見交換会」
において
り具体的には、調整電源としての石油火力発電の活用、災害時のエ
検討しました。
ネルギー供給の
「最後の砦」
として石油の供給網の強靭化を推進す
同意見交換会では、東日本大震災において、系統エネルギー(電
ること、
石油産業の経営基盤を強化するため、
石油コンビナートの構
気・ガス)
が一時的に供給不能となる中、分散型エネルギーである
造改善や国際展開などの方向性が示されました。また、
電力・ガスシ
石油に対し、各方面から多くの供給要請がなされ、石油は、そういっ
ステム改革等により、相互市場参入や異業種からの参入を促進する
た供給要請に応え、国民生活の安全を守る
「エネルギーのラストリ
ことで、産業構造を変革しエネルギー市場を活性化するといった方
ゾート
(最後の砦)
」
の役割を果たした一方、災害時の石油の供給を
向性が明記され、石油産業もこうした機会を捉えて
「総合エネル
より万全にするための、サプライチェーンの強化策として、オイル
ギー産業」
へ脱皮することの重要性も示されました。今後、政府に対
ターミナル、
SS等の災害対応能力の強化等、災害に備えた石油会
しては、
これに沿った新たなエネルギー基本計画を策定し、
早期にエ
社・石油ガス会社間の共同体制の構築、災害対応としての石油・石
ネルギー政策を着実に進めていくことが望まれます。
油ガス備蓄等、情報収集・情報提供体制の整備を行うことが決定さ
石油業界としても、緊急時対応力強化
(強靭化)
、国際競争力強化
れました。本意見交換会の取りまとめについては、石油連盟として、
や総合エネルギー産業化などの経営基盤強化、消費者から選ばれ
緊急時の石油供給における官民の役割分担や連携の強化、情報収
る石油利用の促進と、サプライチェーンの維持を通じて、経済成長
集体制整備や出荷基地災害対応化、国家製品備蓄の拡充や、健全
に貢献していきます。
なサプライチェーンを維持するためには安定的な石油需要が必要
18
石油に次ぐ一次エネルギーである天然ガスにおいても依然その
エネルギー需給実績(2012年度:速報)
シェアは石油の半分程度であり、今後とも石油の安定需要と安定供
2012年度の最終エネルギー消費は、製造業の低迷や11年度と
給の確保がわが国のエネルギーセキュリティの確保において極め
比較して冷夏暖冬であったことなどにより、前年度比1.2%減となり
て重要です。東日本大震災では、電気・ガスが使用できない中、石
ました。前年度比で見ると産業部門が0.7%減、民生部門が1.7%
油は被災地の復興と電力の安定供給を支えるエネルギーとして活
減、
運輸部門が1.5%減となっています。
躍しました。特に、他電源の停止や猛暑・厳冬などの緊急時にバック
この結果、最終エネルギー消費合計では、11年度に引き続き減
アップ電源の役割を果たしてきた石油火力は、系統電源の安定供
少となりました。
給における最後の砦として、
バランスの良い電源構成を実現するた
これに対して、一次エネルギーの国内供給合計は20,838PJ(ペ
め平時から安定的な需要を確保することが重要です。加えて、暖
タジュール)
、原油換算で5億3,762万Sと前年度比1.5%減となり
房・給湯部門においても、
分散型エネルギーであり緊急時対応力の
ました。その内、石油は9,245PJ(原油換算2億3,852万S)
で、前
強い石油の利用を維持・促進すべきです。
年度比1.4%増となっています。
供給に占めるシェアでは、原子力が前年度の4.2%から0.7%へ減
少した一方、石炭が前年度の22.0%から23.3%、石油が前年度の
43.1%から44.4%、天然ガスが前年度の23.3%から24.5%へ増加
しています。原子力のシェアが減少し、火力発電の役割が増加した
ため、石炭、天然ガス、石油の供給量が増加しました。
しかしながら
■部門別最終エネルギー消費の見通し
1990年度
2005年度
単位:原油換算百万S
2012年度
2020年度
2030年度
現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース 現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース
実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比
最終消費計
358
100%
413
100%
370
100%
421
100%
401
100%
375
100%
424
100%
391
100%
346
100%
産 業
180
50%
182
44%
160
43%
180
43%
180
45%
177
47%
179
42%
179
46%
174
50%
民 生
95
27%
134
32%
124
34%
149
35%
134
34%
121
32%
154
36%
130
33%
103
30%
家 庭
43
12%
56
14%
53
14%
61
14%
56
14%
52
14%
66
16%
56
14%
47
14%
業 務 他
52
15%
77
19%
71
19%
88
21%
78
20%
68
18%
87
21%
74
19%
56
16%
83
23%
97
24%
86
23%
92
22%
86
22%
78
21%
91
22%
82
21%
69
20%
運 輸
■一次エネルギー供給の見通し
一次エネルギー国内供給
単位:原油換算百万S
1990年度
2005年度
2012年度
507
587
538
2020年度
2030年度
現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース 現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース
627
596
553
637
590
515
エネルギー別区分
実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比
石
油
265
52%
255
43%
239*
44%
227
36%
215
36%
190
34%
220
35%
204
35%
168
33%
L P G
19
4%
18
3%
-
-
18
3%
18
3%
18
3%
18
3%
18
3%
17
3%
石
炭
85
17%
123
21%
125
23%
128
20%
120
20%
107
19%
131
21%
119
20%
92
18%
天 然 ガ ス
54
11%
88
15%
132
24%
114
18%
103
17%
89
16%
112
18%
94
16%
71
14%
原 子 力
49
10%
69
12%
4
1%
99
16%
99
17%
99
18%
107
17%
107
18%
107
21%
水
力
21
4%
17
3%
17
3%
19
3%
19
3%
19
3%
19
3%
19
3%
20
4%
地
熱
0
0%
1
0%
1
0%
1
0%
1
0%
1
0%
1
0%
1
0%
2
0%
新 エネル ギー 等
13
3%
17
3%
21
4%
22
3%
22
4%
30
5%
29
5%
29
5%
38
7%
*2012年度の石油にはLPGを含む
(注)
:四捨五入の関係により100%にならない場合がある
出所:経済産業省/総合資源エネルギー調査会需給部会「長期エネルギー需給見通し
(再計算)
(
」2009年8月)
等
19
わ が 国 の エ ネ ル ギー政策
■一次エネルギー供給
(総供給)
の推移
1973年度
単位:原油換算百万S、
%
0.6
1.5
77.4
2.5
1975
1.0
4.1
15.5
73.4
1.5
5.3
16.4
石油
(LPGを含む)
416
石炭
0.9
天然ガス・LNG
396
原子力
1.1
1980
66.1
16.9
水力・地熱
429
6.1 4.7 5.2
新エネルギー等
2.6
1990
57.1
2000
50.8
2010
16.7
10.2
9.3
18.1
43.7
521
4.1
13.0
21.6
12.2
17.3
10.8
3.3 2.6
3.1 3.5
609
597
0.6
2012
47.4
0
22.6
100
200
22.5
300
3.0 3.9
400
561
500
600
(注)
:1. 経済産業省は、製造部門の重油補正に係わる見直しを1990年に遡及して修正を行ったため、
1990年以降のデータは前年までの資料から変更されている
2. 四捨五入の関係により100%にならない場合がある
出所:経済産業省「総合エネルギー統計」
■最終エネルギー消費の推移
単位:原油換算百万S
産 業 188
1973年度
民 生 52
1975
168
53
1980
165
61
1990
180
2000
186
2010
169
2012
160
0
286
運 輸 47
271
50
286
59
95
358
83
125
128
370
86
200
300
400
(注)
:四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
出所:経済産業省「総合エネルギー統計」
など
■電源別発電電力量の推移
1980年度
17
1985
単位:億kWh、
%
0
46
27
5
15
27
17
10
4,850
22
5,840
14
27
1995
29
10
34
2000
34
2005
11
31
2010
11
2012 2
0
18
22
18
(注)
四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある。
天然ガス
8,557
1 9,396
10
24
25
40
6000
年間発電電力量
20
9
9
43
8
8000
1 9,889
8
29
25
4000
水力
原子力
0
10
26
28
2000
石油等
7,376
26
8
14
12
14
11
29
2011
22
19
地熱および新エネルギー
(太陽光、風力など)
石炭
0
0
1990
386
89
124
100
412
101
1
1
10,064
9,550
2 9,408
10000
12000
出所:電気事業連合会
石油備蓄と新たな緊急時対策
わが国の石油備蓄制度の生立ち
過去の石油緊急時への対応
1963年12月、産業構造審議会総合エネルギー部会は、前年の
1973年12月、第一次石油危機に際して、石油の需給および価格
OECD勧告(石油需要60日分の備蓄を保有すべきこと)を受けて、
に関する緊急時体制の整備が図られ、
石油需給適正化法と国民生活
「一定の量の石油備蓄を行っておくことは、
一時的な供給不足に対し
安定緊急措置法(いわゆる緊急時石油二法)が成立、
施行されました。
て需給の不均衡を是正し、供給先の転換を行うまでのつなぎ対策と
石油需給適正化法は、
緊急時における①石油の生産計画等の提出、
してエネルギー供給の安全保障の要請に合致する」
として、
石油備蓄
②石油の使用制限、
③石油の保有の指示、
④石油のあっせん、
⑤石油
の必要性を提言しました。
の割当て・配給等を規定しており、
国民生活安定緊急措置法は、
石油
67年には、
第三次中東動乱が勃発、
すでに一次エネルギーの65%
だけでなく国民生活に関わる物資全体を対象として、
価格の規制(標
を石油に依存していたわが国では危機意識が急速に高まり、
71年の
準価格の設定等)の実施等を定めています。
こうして、
74年1月には民
総合エネルギー調査会石油部会の中間報告では、
74年度末までに
生用灯油価格と民生用LPガス価格が国民生活安定緊急措置法に基
60日備蓄を達成するため、財政・金融面での助成措置として石油対
づき規制され、同年2月には石油需給適正化法を発動して石油の使
策特別会計の設置が必要とされ、
72年度から実質的にわが国の石油
用節減などが行われました。
備蓄制度がスタートすることになりました。当時、
政府は、
国の助成措
79年の第二次石油危機に際しては、同年4月から翌80年8月にか
置を前提として民間企業に石油備蓄を行わせることが適切であると
けて、
備蓄義務者からの基準備蓄量の減少申請を順次受け入れるか
判断し、①備蓄原油の購入資金に対する長期低利融資、②石油貯蔵
たちで民間備蓄の引き下げが実施されました。
施設に対する開銀融資、
③タンクの割増償却措置が講じられました。
第一次石油危機は日本のみならず世界的な混乱を引き起こし、
当
73年には、第一次石油危機が発生しましたが、当時、一次エネル
時の西側18ヵ国は、
74年11月、
IEP(国際エネルギー計画)協定を締
ギーの77%が石油であり、国民生活は極めて大きな影響を受けまし
結、緊急時に石油消費国間で石油を融通するため、協定加盟国は前
た。
このため、
74年の総合エネルギー調査会石油部会中間取りまとめ
歴年の石油の純輸入量の90日分をそれぞれ保有する必要があるこ
では、
「60日分の備蓄水準は勿論のこと、
さらに90日分まで計画的に
ととし、
さらにOECDの下部機構としてIEA(国際エネルギー機関)を
増強するよう官民あげての備蓄増強体制の確立に努めるべき」
とさ
設置しました。
れ、
75年には、石油備蓄法が公布され、国が石油備蓄目標を定め、石
その後、
IEAは加盟国の協調石油備蓄放出を3回実施し、
わが国も
油精製、販売、輸入業者等に基準備蓄量以上の備蓄義務を課し、
わが
民間備蓄義務量を引き下げて対応しました。91年の湾岸戦争時に
国の石油の供給が不足する場合において石油の安定的な供給を確保
は、
民間備蓄義務量が74日間にわたり4日分引き下げられ、
供給不安
するために特に必要と認めるときには、
期間を定めて基準備蓄量を減
による無用な混乱の回避に一定の成果を上げました。また、
05年、
米
少すること等が法制化されました。また、備蓄増強の促進に伴う莫大
国南部はハリケーン
「カトリーナ」
に襲われ、原油生産設備、
製油所に
な資金コストを助成するため、さらなる低利融資(利子補給幅の拡
甚大な被害を被ったため、
民間備蓄義務量が約4ヵ月間にわたり3日
大)、
石油貯蔵施設への開銀融資比率の引上げ、
共同備蓄会社への石
分引き下げられ、
さらに元売各社は緊急的な措置として米国向けにガ
油開発公団(現JOGMEC)からの出資制度の創設などが行われまし
ソリン7万Sを輸出しました。11年にはOPEC加盟国であるリビアに
た。その後、
79年の第二次石油危機への対応を経て、
81年度初に90
おいて内戦が勃発、同国からの原油供給に支障が出たため、民間備
日備蓄体制(民間備蓄義務量90日分)が確立されました。
蓄量が約6ヵ月間にわたり3日分引き下げられました。
また、
78年には、
国自らが石油備蓄についてイニシアティブを取る
べきとの認識から、
石油公団(現JOGMEC)による国家備蓄が開始さ
れ、
89年2月に3,000万S、
98年2月には5,000万Sの備蓄目標が達
成されました。
また、
この間に国家備蓄基地が全国に10ヵ所建設され
ました。こうした国家備蓄の充実によって、
89年度以降、民間備蓄は
毎年度4日分ずつ軽減されることとなり、
93年度からは70日備蓄体
制(民間備蓄義務量70日分)となり、
現在に至ります。
21
石 油 備 蓄 と 新 た な 緊 急時対策
■過去の緊急時への対応
時 期
危機の経緯
一次エネルギー
供給に占める
石油の割合
原油価格上昇幅
〔危機直前とピーク時の
比較
(ドル/バレル)〕
原油輸入価格
期中最高値
(CIF、円/R)
ガソリン小売価格
期中最高値
(円/R)
備蓄水準
第一次石油危機
第二次石油危機
湾岸戦争
1973年10月∼1974年8月
1978年10月∼1982年4月
1990年8月∼1991年2月
ハリケーン
「カトリーナ」被害
2005年8月∼2005年12月
第四次中東戦争を契機にアラブ イラン革命の進展によりイラン原 イラクによるクウェート侵攻。
大型ハリケーン
「カトリーナ」による
石油輸出諸国の原油供給削減
油供給中断と湾岸におけるタンカ イラクに経済制裁。湾岸戦争へ発 米国メキシコ湾岸エリアの石油関
ー輸送の途絶
展
連施設への被害
77.4%
(73年度)
71.5%
(79年度)
58.3%
(90年度)
※
50.0%
(03年度)
※熱量換算による比較
アラビアンライト公示価格
3.9倍
73年10月
3.0
74年1月
11.6
アラビアンライト・スポット
(当用買い)
3.3倍
78年9月
12.8
80年11月
42.8
ドバイ・スポット
2.2倍
90年7月
17.1
90年9月
37.0
ドバイ・スポット
1.1倍
05年7月
52.83
05年9月
56.54
21.5円
(74年8月)
55.2円
(81年8月)
27.6円
(90年11月)
42.7円
(05年10月)
114円
(75年5月)
177円
(82年12月)
142円
(90年11月)
131円
(05年10月)
(注1)
67日分
(73年10月末)
民間備蓄:67日分
国家備蓄:ゼロ
(注1)
92日分
(78年12月末)
民間備蓄:85日分
国家備蓄:7日分
(注2)
(注2)
142日分
(90年12月末)
民間備蓄:88日分
国家備蓄:54日分
170日分
(05年9月末)
民間備蓄:80日分
国家備蓄:90日分
原油輸入量
2億8,861万S
(73年度)
2億7,714万S
(79年度)
2億3,848万S
(90年度)
2億4,181万S
(04年度)
わが国総輸入額に
占める原油輸入金額
のシェア(%)
23%
(73年度)
43%
(80年度)
19%
(90年度)
20%
(05年)
原油の
中東依存度
77.5%
(73年度)
75.9%
(79年度)
71.5%
(90年度)
89.5%
(04年度)
為替レート
298円
(74年8月)
246円
(82年4月)
128円
(90年11月)
113円
(05年10月)
(円/ドル)
・
トイレットペーパーなどの買いだめ
・行政指導に基づく元売仕切・小売価格設定
(74年3月∼8月)
・石油業法に基づく標準額の設定
(75年12月∼76年5月)
当時の状況と ・大口電力の使用規制、マイカー使用の自粛
政府の対応
・緊急時石油二法の施行
(73年12月)
・石油備蓄法の施行
(76年4月)
・民間備蓄義務量の一部引き下げ
(79年4月∼80年8月)
・原油の高値買いの自粛要請
・ガソリン輸入の自粛要請
・製品輸入を抑え、
国内生産主体の供給 ・民間備蓄義務量の引き下げ
(3日分)
・行政指導に基づく元売仕切価格の設定
体制へ移行
・米国向け緊急輸出
(79年3月∼82年4月)
・行政指導に基づく元売仕切価格の設定
・官庁の暖房温度19度、
冷房温度28度
/「月決め方式」
(90年9月∼91年4月)
設定など省エネ対策を実施
・民間備蓄義務量の引き下げ
(4日分)
・省エネルックが話題に
・官庁、
民間の冷房温度28度設定、
マイカー
・省エネ法施行
の経済運転など省エネ対策を施行
(79年6月)
・代エネ法施行
(80年5月)
(注)
:1. 総理府統計局/小売物価統計調査
(東京都区部)
(注)
:2. 石油情報センター
(全国/税込み)
22
規制緩和後の石油備蓄体制
災害を想定した備蓄制度の構築
96年の特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)の廃止により、石油
2011年3月の東日本大震災において、石油業界は生産から流通
製品の輸入が実質的に自由化されたことから、
石油備蓄法についても
のすべての段階において業界を挙げて、安定供給に努めました。こ
新たな輸入者に対応した改正が行われました。
の経験から、石油業界は、災害時の安定供給について、石油製品の
02年1月には、
石油業法が廃止され、
石油備蓄法は、
石油備蓄義務
不足による混乱を抑制し機動的で柔軟な石油備蓄制度とすべく、通
の履行の確保と同時に、緊急時対応の基盤強化を図るため、①石油
常の物流・商流が失われた際の石油供給の最後の砦として、国家製
精製業・石油販売業等の届出制、石油輸入業の登録制の整備、②経
品備蓄を積み増すこと、
国家製品備蓄は機動性確保・品質維持のた
済産業大臣による国家備蓄放出命令の整備、
③生産予定数量の増加
め、
製油所等の操業在庫として保管
(混合蔵置方式)
すべきこと、
さら
の勧告などについて改正され、名称も、石油の備蓄の確保等に関す
に、物流確保のために、備蓄管理者と輸送会社の事前協力体制を構
る法律に改められました。
築し、迅速性・確実性を高めるため、避難所・病院等の重要施設等
へ直接供給できる体制を導入すべきこと等を提言しました。
05年、
総合資源エネルギー調査会石油備蓄小委員会は、
国家備蓄
と民間備蓄の役割の整理、
備蓄水準について審議し、
現在70日の民
12年、国は、石油の備蓄の確保等に関する法律を改正し、海外か
間備蓄義務を60 ~65日程度まで引き下げると共に、
エネルギーセ
らの石油の供給不足時だけではなく、
災害により国内の特定地域へ
キュリティの水準を下げないように、
タイミングを見計らい国家備蓄
の石油供給が不足する時にも国家備蓄石油を放出できるようにしま
を増強すべき、
とした報告を取りまとめました。さらに06年には、
同調
した。また、国家製品備蓄については、前述の灯油に加え、
ガソリン、
査会の石油政策小委員会において、
より機動的な石油備蓄制度の構
軽油、
A重油の備蓄をスタートさせました。なお、
上記の法改正には、
築が必要との観点から、
①石油備蓄量の増強(国家備蓄の積み増しに
被災者への石油の供給を石油元売会社が一致協力して行えるよう、
よる)、
②原油による石油備蓄を補完する、
機動性の高い国家製品備
石油元売会社に、全国10地域毎に災害時の供給連携計画を予め協
蓄の導入が提言されました。
これらの報告・提言のうち、
国家製品備
力して作成するよう義務付け、災害時には、経済産業大臣が石油元
蓄については、
09年から、
灯油の備蓄が始められました。
売会社に対し同計画による措置の実施を勧告することや、給油設備
07年、同調査会の次世代燃料・石油に関する小委員会は、石油の
の規模が一定以上であることなどの要件を満たすサービスステー
消費量が増大しているアジア周辺諸国との備蓄国際協力の積極的な
ション(SS)を災害時における給油の拠点とするため、当該SSの設備
推進や、
わが国の備蓄石油を海外に直接放出することも視野に入れ
状況などを石油販売業者が国へ届け出るよう義務付けすることも
た緊急時における国際石油市場の安定化について検討しました。
こう
定められています。
した背景から、同年、
日本・ニュージーランド両政府間で備蓄融通協
定が締結され、
ニュージーランド政府が実施する
「備蓄石油を緊急時
に買い取る権利」
の入札にわが国の民間企業も応札可能となり、
落札
する事例も出てきました。また、
産油国が所有する原油を国内に貯蔵
し、
平常時には産油国が商業的に活用し、
緊急時にはわが国が優先的
な供給を受けられる、
政府と産油国の共同プロジェクトも取り組まれ
ており、
09年にはアブダビ国営石油会社、
10年にはサウジアラビア
国営石油会社の原油の貯蔵が開始され、
エネルギーセキュリティの
強化と、
産油国との戦略的な関係の構築が期待されています。
23
石 油 備 蓄 と 新 た な 緊 急時対策
■わが国の民間備蓄・国家備蓄の現状
(2013年12月現在)
民間備蓄
国家備蓄
82日分
108日分
3,635万S
4,776万S
備蓄日数
備蓄量
(製品換算)
備蓄目標
内需量の70日分
5,000万S
(原油ベース、
98年2月達成)
保有形態
生産・流通過程で保有
封印方式
(製品は生産・流通過程で保有)
保有場所
製油所・油槽所等の民間タンク
原油:①国家石油備蓄基地、
②民間タンク(借上げ)
製品:製油所・油槽所等の民間タンク
保有構成
原油:約50%
製品:約50%
原油:97.3%
精製業者、
輸入業者等
ただし、共同備蓄会社による代行が可能
管理主体
①国家備蓄会社
(約2/3)
(全国で8社・10基地)
②民間企業
(約1/3)
(管理委託)
①大部分が製油所や油槽所といった生産・流通過程に
保有されており、速やかに供給できる。
②原油の調達動向や石油製品の需要に応じて、弾力的
に対応できる。
備蓄石油放出
(取り崩し)
の特徴
①国の判断で放出し、
その分供給が確実に増すので、大
きなアナウンスメント効果が期待できる。
②原油の大部分は、石油備蓄基地からタンカーにより製
油所へ輸送する必要がある。製品は製油所・油槽所
等の民間タンクで備蓄しており、
速やかに供給できる。
①第二次石油危機
(79年3月∼80年8月)
②湾岸危機
(91年1月∼3月)
③ハリケーン
「カトリーナ」被害
(05年9月∼12月)
④東日本大震災対応
(11年3月∼5月)
⑤リビア情勢対応
(11年6月∼12月)
放出
(取り崩し)
事例
財政支援措置
製品:2.7%
なし
石油購入資金、
タンク建設などを支援
国が負担
(石油石炭税)
製品コストの一部を構成
(最終需要家への転嫁が期待)
財源となる石油石炭税は、
製品コストの一部を構成
(最終需要家への転嫁が期待)
コスト負担
■わが国の石油備蓄量・備蓄日数の推移
(各年度末)
150日
8,953
156日 163日
9,332 9,393 164日
163日 166日 169日 163日
168日 174日
166日 9,043
9,141 156日 9,080 9,023
185日
8,960 8,930
8,902 177日 184日
8,806
197日
190日
8,743
8,614 8,670 199日 193日
8,590
8,343
8,410
8,301
8,075
10,000
8,000
90日 88日
5,954 6,048
6,000
90日
民間備蓄
142日
8,278
単位:万S
100日 127日
95日 6,984 7,098
6,593
82日
88日
90日
92日
88日
74日
79日
80日
79日
72日
78日
77日
78日
74日
74日
78日
79日
77日
7日
7日
10日
35日
54日
76日
78日
82日
85日
84日
85日
89日
91日
88日
92日
90日
95日
99日 102日 115日 114日 113日 102日 108日
81日
84日
79日
83日
81日
84日
国家備蓄
4,000
2,000
0
備蓄放出事例
の引き下げ︶
︵民間備蓄義務量
1977年度 1978 1979 1980 1985 1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013年
12月末
第2次石油危機
湾岸戦争
ハリケーン・カトリーナ
1979.3∼1980.3
申請ベース
1991.1.17∼1991.3.6
82日→78日
(4日分)
2005.9.7∼2006.1.4
70日→67日
(3日分)
(注)
: 1. 備蓄量は製品換算、備蓄日数は石油備蓄法方式
2. 合計の備蓄日数については、四捨五入のため積上げ日数と合わない場合がある
東日本
大震災
2011.3.14 ∼ 3.21 ∼ 5.20
70日 → 67日(3日分) → 45日(25日分)
申請ベース
リビア情勢 2011.6.24∼2011.12.31
70日→67日
(3日分)
出所:資源エネルギー庁
24
■わが国の石油緊急時対策の概要
石油備蓄対策
「石油の備蓄の確保等に
関する法律」
国家備蓄
民間備蓄
平常時
新石油備蓄法
石油供給対策
石油備蓄の維持
石油事業者の把握(届出・登録)
準緊急時
備蓄石油の取り崩しによる安定供給の確保
石油消費抑制対策
石油需給適正化法
重要物資価格・需給対策
国民生活安定
緊 急 措 置 法
緊急事態宣言
緊急時
石油備蓄の停止
石油供給目標設定
石油使用制限措置
政府の指導・監督に
よる業界の協力措置
備蓄石油の取り崩し
石油生産・輸入計画などの指示
給油所の営業制限
標準価格の決定
(政府の指示・監督による業界の協力措置)
物資の生産指示
保 有・売 渡 命 令
輸入指示・命令
供給の斡旋・指導
物資の保管指示
石 油 製 品 の 割 当・配 給 制
主 要 物 資 の 割 当 ・ 配 給 制
(注)
:上記以外に
「買占め、
売惜しみ防止法」
に基づく緊急措置がある
25
売渡・輸送命令
石 油 備 蓄 と 新 た な 緊 急時対策
■IEA
(国際エネルギー機関)
の機構と民間諮問機関
(2014年1月現在)
理事会
(GB)
民間諮問機関
事務局
緊急時問題
常設作業部会(SEQ)
石油市場問題
常設作業部会(SOM)
長期協力問題
常設作業部会(SLT)
エネルギー研究
技術委員会(CERT)
地球規模エネルギー対話
常設作業部会(SGD)
● 緊 急 備 蓄 水 準 の 策 定・
●平常時の情報収集
●加盟国・非加盟国に対す
●石油依存度低減のため
●主要生産国および消費
管理
● 緊 急 融 通システムの 管
●国際石油会社
(メジャー)
等との協議・協調
るエネルギー政策
(エネル
ギー源多様化、価格政策
の省エネ技術
●代替エネルギーの研究
国との協力・調整
●これら諸国への政策・技
理発動
等)
の勧告
開発の促進等
術の提言
石油産業
諮問委員会(IAB)
[緊急時問題]
諮問・協議
提言・助言
石炭産業
諮問委員会(CIAB)
[石炭の利用拡大]
エネルギー効率作業部会
IEA加盟国
(計28ヵ国)
●オーストラリア ●オーストリア ●ベルギー ●カナダ ●チェコ ●デンマーク ●フィンランド ●フランス ●ドイツ ●ギリシャ ●ハンガリー ●アイルランド ●イタリア ●日本 ●韓国 ●ルクセンブルグ ●オランダ ●ニュージーランド ●ノルウェー ●ポーランド ●ポルトガル ●スロバキア ●スペイン ●スウェーデン ●スイス ●トルコ
●イギリス ●アメリカ
■欧米諸国の石油備蓄制度の概要
アメリカ
備蓄義務者
および義務量
民間企業に備蓄義務なし
フランス
・公認石油業者(精製・輸入業者)
・非公認石油業者(スポット輸入業者)
(公認・非公認は保税倉庫資格の有無による)
ドイツ
EBV
(石油備蓄協会)
前年または過去3年平均の純輸入量の
90日分のいずれか高い方
2012年度 2,348万t
すべての石油事業者はEBVのメンバー
になる義務あり。生産・輸入量のシェア
に応じ運営コストを負担
民間備蓄
前年の原油・製品消費量の28.5%が
義務量
2011年度 1,775万t
公認石油業者は一部をCPSSPに委託
非公認石油業者はすべてCPSSPに委託 (協会備蓄の欄参照)
(協会備蓄の欄参照)
協会備蓄
備蓄義務対象油種
・ガソリン
・軽油、
ヒーティングオイル
・ジェット燃料油
・重油
備蓄実施主体
戦略石油備蓄専門委員会
EBV
(石油備蓄協会)
(CPSSP・92年設立)が費用を徴収し、
安全備蓄管理会社(SAGESS・88年設
立)
が備蓄石油を管理
備蓄量および備蓄の方法
2011年末
2,033万t
CPSSP備蓄
全体の73%
SAGESS管理 全体の54%
・原油 全体の31%
・製品 全体の69%
国家備蓄
備蓄実施主体
エネルギー省
(DOE)
が行う戦略的
石油備蓄
(SPR)
目標備蓄量
10億バレル
備蓄の方法
地下備蓄
(岩塩ドーム)
・原油
・ガソリン
・軽油、
ヒーティングオイル
・ジェット燃料油
2012年度末 2,366万t
EBV所有
全体の97%
民間への委託 全体の3%
・原油 全体の58%
・製品 全体の42%
出所:経済産業省/石油審議会資料など
26
わが国の石油開発
わが国の石油開発
わが国では、
明治初期から新潟県を中心に石油開発が行われており、
現在でも北海道、
秋田県、
新
潟県で石油の商業生産が行われています。
また、
現在も探鉱活動が継続的に実施されており、
勇払油
ガス田、
南長岡ガス田、
岩船沖油ガス田
(海底油ガス田)
等が生産中です。石油と同時に産出される天
然ガスも、多くの地域で都市ガスや発電用燃料等として利用されており、地域経済に貢献していま
す。
しかしながら、
わが国は世界第3位
(2012年)
の大石油消費国であり、国産原油は国内消費量の
0.4%、
国産ガスは同じく2.7%
(どちらも2012年度)
に過ぎず、
ほとんどを輸入に頼っています。
日本企業による海外での石油・天然ガスの
「自主開発」
は、
一定量のエネルギー資源を長期安定的
に確保するのみならず、
わが国と産油・産ガス国との間の相互依存関係の構築・強化につながること
や、
産油国国営石油会社や国際石油資本
(メジャー)
等との事業連携の基盤が醸成されることもエネ
ルギー安全保障上大きな意義を持っています。現在、
わが国企業は、
中東、
東南アジアをはじめ、
アフ
リカ、
南北アメリカ、
オーストラリア、
旧ソ連諸国と世界各地で140を超えるプロジェクトを手がけてお
り、
その内約70で開発に成功し、
石油・天然ガスを商業生産しています
(2013年6月末現在)
。わが国
MitsuiE&PPoland
◎MitsuiE&PUK
◎IdemitsuPetroleumUK
IdemitsuE&PShetland
◎出光スノーレ石油開発
◎JXNipponExploration
&ProductionUK
◎CIECOExplorationand
ProductionUK
◎MarubeniNorthSea
(U.K)
INPEXWestofShetland
INPEXUK
◎SummitPetroleum
MOECOOil&GasNorge
MitsuiE&PItalia
企業が権益を有する石油・天然ガスの
「自主開発比率」
は、国内需要量の約22%程度に達してい
ます。
わが国石油・天然ガス自主開発のあり方
石油・天然ガスの探鉱・開発は巨額の資金と高度な技術を用いて高いリスクに挑戦する難しい事
業です。
海外で事業を遂行するためには、
最初に鉱区権益を取得しなければなりませんが、
有望鉱区取得
のためには資源外交等を通じた産油・産ガス国の資源開発権へのアクセスおよび協力関係の構築
等、
国でしかできない支援が必要です。また、
わが国の石油・天然ガス開発企業の多くは歴史的に海
外へ進出したのが遅く、
メジャーをはじめとする欧米諸国の企業に比べて資金力や技術力の点で相
対的に劣っているため、国による各種の支援を受けつつ事業を行ってきました。主要な支援母体で
あった石油公団は2005年4月に廃止され、
以後、
リスクマネー供給と研究開発等の機能は独立行政
法人
「石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」
に受け
継がれています。さらに、
様々な事業上のリスクを緩和するた
め、国際協力銀行(JBIC)等による金融、独立行政法人
「日本貿
易保険(NEXI)」
等による貿易保険等の制度的支援も行われて
います。
このように、
政府は石油・天然ガスを重要なエネルギーと位
置付けており、
民間企業が活発な事業活動を展開できる環境
を整備する一方、企業は経営資源の効率的な投入・配分を
行って成果を上げていくという官民一体となった取り組みが
有効に機能し、
わが国へのエネルギーの安定的な供給が確保
されることが期待されます。
27
JX日鉱日石カタール石油開発
◎アブダビ石油
◎合同石油開発
◎ジャパン石油開発
◎インペックスエービーケー石油
◎MitsuiGasDevelopmentQatar
◎カタール石油開発
◎JJIS&N
◎MitsuiE&PMiddleEast
ジャペックスガラフ
インペックス南イラク石油
◎エムピーディーシー・ガボン
◎帝石コンゴ石油
◎アンゴラ石油
シエコナミビアオイルアンドガス
MitsuiE&PGhanaKeta
インペックス西コンゴ石油
MitsuiE&PGhanaTano
◎EquatorialGuineaLNG
帝国カビンダ石油
わ が 国 の 石油開発
■主なわが国石油開発会社の海外石油開発プロジェクト
(2013年6月末現在)
◎MitsuiE&PMiddleEast
帝石エル・オアール石油
帝石スエズSOB
◎ITOCHUOilExploration
(Azerbaijan)
インペックス北カスピ海石油
◎インペックス南西カスピ海石油
InpexBTCPipeline
ITOCHUOilExploration
(BTC)
◎サハリン石油ガス開発
◎SakhalinEnergyInvestment
MitsuiE&PMozambiqueArea1
◎RavvaOil
(Singapore)
出光オイルアンドガス開発
◎日石ミャンマー石油開発
◎三井石油開発
◎タイ沖石油開発
◎日本ベトナム石油
◎ナトゥナ石油
モエコベトナム石油
◎モエコタイランド
モエコ南西ベトナム石油
◎出光クーロン石油開発
モエコカンボジア石油
◎SiamMoeco
帝石コンソン石油
ジャペックスBlockA
モエコツナ石油
JX日鉱日石半島マレーシア石油開発
新日石クーロン石油開発
◎MoecoInternational
JX日鉱日石開発
JX日鉱日石ミャンマー石油開発
JAPEXMontney
◎INPEXGasBritishcolumbia
JGCExplorationcanada
◎カナダオイルサンド
◎日本カナダ石油
インペックスカナダ石油
◎MCXGulfofMexico
JDRockiesResources
OsakaGasResourcesAmerica
◎SummitDiscoveryResources
◎MidContinentOil&Gas
◎JXNOEXUSA
◎TeikokuOildeBurgos
◎JAPEX
(U.S.)
◎TeikokuOil
(NorthAmerica)
◎MitsuiE&PUSA
◎MitsuiE&PTexas
INPEXGulfofMexico
◎JGCExplorationEagleFord
◎JGCEnergyDevelopment(USA)
インペックス北西サバ沖石油
インペックス南西サバ沖石油
インペックス南東マハカム沖石油
日本カラボボ石油
インペックス南マカッサル石油
◎ベネズエラ石油
日本コールベッドメタン
帝石スリナム石油
◎JX日鉱日石マレーシア石油開発
◎JX日鉱日石サラワク石油開発
◎ユニバースガスアンドオイル
◎国際石油開発帝石
◎インペックス北カンポス沖石油
◎インペックステンガ
インペックス北東ブラジル沖石油
◎IndonesiaNaturalGasResourcesMuturi
◎ケージーウィリアガール石油開発
◎日石ベラウ石油開発
◎ケージーベラウ石油開発
◎MIBerau
◎日本パプアニューギニア石油
◎サザンハイランド石油開発
マーレイ石油
インペックス北マハカム沖石油
ジャペックスブトン
インペックスセラム海石油
INPEXIchthys
NipponOilExploration
(Niugini)
インペックスババルスラル石油
モエコウエストパプア1石油
◎JXNipponOil&GasExploration(Australia)
モエコウエストパプア3石油
◎JapanAustraliaLNG
(MIMI)
JX日鉱日石サラワク陸上石油開発
◎アルファ石油
◎EnergyMegaPratama
インペックス西豪州ブラウズ石油
JX日鉱日石サバ深海石油開発
コスモアシュモア石油
ケージーバボ石油開発
インペックスマセラアラフラ海石油
OsakaGasNiugini
◎サウル石油
OsakaGasNiuginiE&P
◎インペックスチモールシー
INPEXOil&GasAustralia
◎MitsuiE&PAustralia
◎MitsuiE&PAustralia
JAPANENERGYE&PAUSTRALIA
JAPANENERGYE&PJPDA
OsakaGasAustralia
OsakaGasCrux
OsakaGasGorgon
OsakaGasIchthysDevelopment
OsakaGasSunrise(PSC19-20)
(注)
:◎印は生産中の会社
出所:石油鉱業連盟
28
規制改革と石油産業
法による精製能力削減を求められることになり、
すでに一部精製能力
規制改革の進展
¥
の削減や製油所の廃止が決まっています。
わが国の経済社会の国際化に合わせて石油関連の規制改革が進
自由化後の環境変化
展し、2001年末をもって石油業法が廃止されたことにより、
石油産
業は名実ともに自由化されました。
規制改革、
特に特石法廃止を契機として、
わが国の石油産業は、
流
わが国の石油産業に対する規制は、石油の重要性に鑑み、1962
通市場において価格競争が激化したことなどにより、
市況が低迷し、
年7月に制定された
「石油業法」
を基本法として、
「安定供給」
を最優先
企業収益が悪化するなど、
厳しい経営を余儀なくされてきました。
こ
に進められてきました。その後、
石油業法を補完する法律として、
「石
のため、石油各社は、精製・物流部門の合理化・効率化や販売・管
油備蓄法」、
「揮発油販売業法
(揮販法)
」、
「特定石油製品輸入暫定
理部門を中心とする大幅な人員削減、
組織の見直しなど、
経営全般に
措置法
(特石法)
」
が制定され、行政指導を含め、石油の輸入・生産・
わたるコスト削減に取り組んでいます。
販売にわたる広範な規制が行われてきました。
また、
特石法や石油業法の廃止といった規制改革を経て、
生産・輸
しかし、
わが国における規制改革が進み、
内外価格差の解消が課題
入・販売の各段階における自由化が進展する中で、
わが国の石油市
となる中で、
石油産業に対する規制のあり方についても見直しが求め
場は市場メカニズムに基づく事業活動がますます重要になっていま
られるようになりました。その結果、87年から92年にかけて、石油業
す。市場メカニズムの導入は、
本来、
市場を通じた資源の適正配分が
法・揮販法に基づく行政指導・運用について一連の規制改革が実施さ
なされることで生産・供給システムの効率化を促すことが期待され
れ、96年3月末の特石法の廃止以降、
石油政策は
「安定供給の確保」
ているわけですが、そのためには何よりも市場が有効に機能するた
とともに、
市場原理に基づく
「効率的供給」
の実現が目標となりました。
めのインフラとして適切な情報が広く開示されていることが必要で
その後、石油審議会は、98年6月、今後の石油政策の方向性に関
す。
しかしながら、
規制時代における石油に係わる需給情報は国が実
して、01年の実施を目途に事業許可・設備許可などの需給調整規
施している統計情報に限られており、
かつ、
これはマクロの経済動向
制および標準額による価格規制の廃止などを骨子とする報告を取り
を把握するためのデータの収集・発表を目的としているため、
市場メ
まとめました。
カニズムが有効に機能するための要件を兼ね備えた情報とは言いが
さらに、
同報告を受けて、
石油審議会は備蓄・緊急時対応のあり方
たく、
特に迅速性の観点からテンポの早い石油需給状況を的確に反
を検討し、99年8月、緊急時における具体的対応措置、国家備蓄原
映した情報という点で不十分な状況でした。
油の増強などを提言しました。また、
同報告では、
「厳しい経営環境下
こうした状況のもと、03年1月、石油連盟では、正確性・迅速性・緻
においても安定的に事業を営む強靭な石油産業の存在は、
セキュリ
密性を満たす適正な統計情報として、週単位で石油の供給状況を示す
ティ対策上も極めて重要である」
としています。
データを収集・発表する
「石連週報」
(
「原油・石油製品供給統計週報」
)
上記報告などを踏まえ、01年12月末に石油業法が廃止、
さらに
をスタートさせました。その後、東日本・西日本別の生産などの供給
石油備蓄義務の履行確保の強化などにより、
緊急時対応のための基
データおよび輸出データ、
製油所の実質稼働率を順次追加するなどして
盤強化を図るため、
石油備蓄法の一部改正が行われ、02年1月から
「石連週報」
の更なる拡充を図っています。これによって、
リアルタイム
新石油備蓄法
(
「石油の備蓄の確保等に関する法律」
)
が施行されまし
の供給情報を市場に提供することで市場メカニズム機能を十分に活か
た。その結果、
石油産業に対する主要な規制は、
備蓄面から新石油備
す環境整備を図り、
透明な市場が構築されることを期待しています。
蓄法、
品質面から品確法
(
「揮発油等の品質の確保等に関する法律」
)
に限られることとなりました。
「石連週報」
このように規制改革が進展する中、脱石油政策の推進、人口の減
(「原油・石油製品供給統計週報」)
のホームページ
https://stats.paj.gr.jp/
少、少子高齢化、
さらには原油価格の高騰やリーマンショック以降の
景気の後退による省エネ意識の高まりもあって国内の石油製品需要
エネルギー間の公平、平等な競争条件の整備確保
が減少し、
精製能力の過剰が問題となりました。石油業界が自主的に
精製能力の削減に取り組む一方、
「エネルギー供給構造高度化法」
に
規制改革の進展に伴って今後ますますエネルギー間競争の激化が
基づき重質油分解装置の装備率を一定程度以上に高めることが決め
見込まれる中、
税制や備蓄義務等において石油は他のエネルギーに
られました。
これにより石油各社は14年3月末の期限までに規制的手
比べて競争上著しく不利な扱いとなっています。
29
規 制 改 革 と 石油産業
石油石炭税は03年4月より、
エネルギー起源CO2排出抑制策の抜
また、
自動車燃料であるにも係わらず、
ガソリン代替燃料であるア
本的拡充などエネルギー政策の見直しとエネルギー間における負担
ルコール燃料
(アルコール100%)
などの新燃料やCNG自動車に使
の公平性を図るため、
石炭を新たに課税対象に追加し、LNGと輸入
用される燃料
(圧縮天然ガス)
には、
軽油引取税やガソリン税が課税さ
LPGへの増税がそれぞれ実施されました。
れておらず、
課税の公平性を著しく欠くこととなっています。
さらに、12年10月から地球温暖化対策のための税として、CO2
石油備蓄については、
石油危機以降、
エネルギーセキュリティ対策
排出量に応じ、
段階的に石油石炭税の課税が強化されることが決定
のひとつの柱としてその充実を図り、
また、
東日本大震災を契機に、
国
され、
石油の税率は16年度には2,800円/S(LNG、LPGは1,860円
内災害にも機動的に対応可能な備蓄制度となるよう備蓄法の改正が
/S、石炭は1,370円/S)
となる見込みです。石油業界として、既存の
なされるなど、
大変有益な政策となっています。
しかしながら、
石油以
1兆円を超す地球温暖化対策予算の精査が先決と主張していたもの
外の輸入エネルギー資源については、LPGは50日の備蓄義務があ
の、税ありきで課税強化が決定されてしまったことは残念です。石油
りますが、今後需要が伸びると考えられている天然ガスの備蓄は義
石炭税は原油段階の課税であり、税の回収・負担はすべて石油会社
務化されていません。
これはエネルギーの安定供給の確保に係わる
の責任となります。また、
石油業界は市場原理に基づいた自由競争と
問題でもあり、
今後早急に対応がなされる必要があります。
なっており、
電力やガス業界と異なり、
税を含めたコスト回収の仕組み
一方で、09年6月には、
低炭素社会構築に向けた取り組みを進め
がありません。石油業界としては、
石油消費に関わる税は、
本来的には
るため、
エネルギー供給構造高度化法が成立、石油代替エネルギー
最終消費者が負担するものであると考えられることや、
国内需要が減
法も改正され、
石油のみに過重な税負担を負わせることで代エネを
少する中で、石油の担税力は限界に達していることから、増税分を確
進めるこれまでの考え方は改められています。
こうしたエネルギー政
実に回収できるような政策的配慮が必要であると要望しています。
策も踏まえつつ、
エネルギー間の競争条件について、国民経済的に
■石油関連規制と規制改革の推移
年
1960
62年7月
平常時
緊急時
石油業法 原油輸入の自由化に対応、石油産業の基本法として制定
1965
73年12月
緊急時石油二法
国民生活安定緊急措置法/石油需給適正化法
石油危機の経験を踏まえて制定
1975
1985
1995
石油備蓄法 石油の安定供給確保の観点から制定
77年5月
揮発油販売業法 ガソリンなどの安定供給と品質管理の徹底などを目的として制定
86年1月
第一段階の規制緩和
1990
76年4月
87年7月
二次精製設備許可の弾力化
89年3月
ガソリンの生産枠
(PQ)
指導の廃止
89年10月
灯油の在庫指導の廃止
90年3月
SS建設指導と転籍ルールの廃止
91年9月
一次精製設備許可の運用弾力化
92年3月
原油処理指導の廃止
93年3月
重油関税割当制度
(TQ)
の廃止
96年3月
第二段階の規制緩和
96年4月
96年4月
2005
揮発油等の品質の確保等に関する法律
(品確法)揮発油販売業法の改正
①強制規格、SQマークの導入 ②指定地区制度の廃止など
石油備蓄法改正
石油製品輸出承認制度見直し 包括承認制の導入・輸出の自由化
97年12月
SSの供給元証明制度の廃止
有人給油方式のセルフSS解禁
2001年12月
石油業法の廃止 需給調整規制の廃止
2002年1月
石油の備蓄の確保等に関する法律
(新石油備蓄法)
2009年2月
2009年8月
2010
特石法の廃止 石油製品の輸入自由化
97年7月
98年4月
2000
特定石油製品輸入暫定措置法
(特石法)
ガソリン・灯油・軽油を一定秩序のもとで輸入を促進する観点から制定
2010年7月
2010年11月
2012年11月
品確法の一部改正
特定加工業者の
「登録制」
「品質確認義務」
エネルギー供給構造高度化法
同法に基づく化石エネルギー原料の有効利用の促進に関する判断基準告示
重油分解装置の装備率を2013年度末までに13%程度まで引き上げ
同法に基づく非化石エネルギー源利用の判断基準告示
2017年度までの揮発油に混和するバイオエタノールの利用目標量設定
石油備蓄法改正
30
見て有効な競争原理が働く公正なマーケット形成のため、
イコール
合併・集約化などによる経営効率化・合理化などによって、石油精
フッティングを実現することが重要です。
製・元売の従業員数は95年3月末には約36,000人でしたが、13年3
月末には約19,000人となっており、
過去18年で大幅に減少しました。
石油産業再編への動き
また総合エネルギー企業を目指して、
電力やLNG、
さらには燃料電
池や太陽光発電などの新エネルギーとして期待される分散型エネル
メジャーの世界的な再編の流れや、
国内金融業界の再編、
さらには
ギー分野に進出する石油会社が出てきています。また経営形態の合
特石法廃止後の国内石油業界の競争激化などを背景に、
わが国石油
理化・効率化が進展し、
グループ企業群の持ち株会社化を進める企
産業においても、
石油精製・元売会社の再編に向けた動きが活発化
業も出てきています。
し、1999年4月の日本石油と三菱石油の合併を契機にして、
過去に
このように、石油産業の将来展開としては、今後も需要減退が進む
ない規模とスピードで再編が進みました。その結果、2000年時点に
と見られる石油事業の合理化・効率化を一層進めていく一方で、
電力
おいて、
石油元売会社は
「新日本石油・コスモ石油グループ」
「エクソ
などのエネルギー分野、
新エネルギー分野への取り組みに加え、
製油
ンモービルグループ」
「ジャパンエナジー・昭和シェルグループ」
「出
所内の既存設備の有効活用を視野に入れた石化会社等異業種との高
光興産」
の4グループを軸とした時代に入りました。
度な一体運営体制
(コンビナートルネッサンス)
の実現などを通して、
しかしわが国石油産業全体では依然として精製能力などの過剰問
総合的なエネルギー産業への脱皮に向けた動きが加速しています。
題を抱えたままとなっており、
再編後も2002年6月にエクソンモービ
ルグループ4社のエクソンモービル有限会社への合併・統合や、出
適正な流通市場形成が喫緊の課題
光興産が設備過剰問題を解消するため、03年4月に兵庫製油所を、
2008年7月、WTI原油価格は米国株式市場の低迷やドル安の進
同年11月にはグループ会社の沖縄石油精製・沖縄製油所も廃止し、
展を背景に投機資金が原油市場等の商品市場に流入した結果、
一方で新日本石油との提携を精製部門まで拡大しました。
ニューヨーク市場における原油価格の史上最高値となる145ドルを
さらに07年頃になると、原油価格の高騰やアジアでの旺盛な石
油・石化需要を背景に、
中東産油国企業との資本提携により中東産
超える値をつけました。
しかし08年9月にリーマンショックが発生し、
油国との強固なパートナーシップの確立や、
ブラジルや中国など外
世界経済の減速が明らかになると急速に値下がりし、08年末には40
国資本の参入の動きも見られました。
ドル台と1/3以下の水準になりました。その後、
中東地域の政情不安
08年に入ると、
原油価格高騰とエネルギー全体の競争激化を背景
や中国、
インドなどアジアをはじめとする新興国を中心とした世界経
に、新日本石油が08年10月に九州石油と合併し、
さらに10年7月に
済の成長に伴い上昇し、14年1月現在の原油価格は95ドル程度で
はそれまで上流から精製、
物流、
燃料電池、
技術開発までの広範囲な
推移しています。その結果、わが国の原油輸入価格
(CIF)
は、07年
部門で業務提携していたジャパンエナジーと経営統合しJX日鉱日石
12月のリットル当たり63円程度から08年8月には同92円程度まで
エネルギーが発足するなど、
当初の4グループの枠組みから、
更なる
上昇しましたが、12月には同32円程度まで下落、
その後は上昇して
合理化・効率化に向けた集約化・経営努力が行われました。
また、12年6月には、エクソンモービルジャパングループ
は、
日本国内における資本関係を変更し、
新たに日本資本によ
る東燃ゼネラル石油を中心とする、
東燃ゼネラルグループが
始動しました。さらに、同社は14年2月に三井石油を買収し、
再編が加速しました。
再編後の合理化・効率化の進展
■石油産業の生産設備・流通・販売施設などの合理化
(一例)
単位:万バレル/日
生産設備(製油所の精製能力)
所、
給油所などあらゆる分野におよぶ再整備が行われ、
精製能
約499
15,000
10,000
7,072
5,000
350
1999年3月末
2003年12月末
販売施設
(SS)
末現在で約447万バレル/日と約94万バレル/日の削減が行
50,000
われ、過去14年間で約17%削減されました。エネルギー供給
40,000
少等により、
精製能力は400万バレル/日を下回ります。
17,744
400
力で見ると1999年3月末の約541万バレル/日から13年3月
義務付けられており、期限となる14年3月末には製油所の減
単位:台
約447
450
65,000
60,000
構造高度化法により石油会社はさらなる生産設備の見直しが
輸送手段
(タンクローリー)
20,000
500
0
このような再編の進展に伴い、
各社が保有する製油所、
油槽
約541
550
2013年3月
単位:ヵ所
60,421
35,000
2012年3月末
単位:人
36,363
30,000
36,349
25,000
19,237
20,000
15,000
20,000
10,000
10,000
31
1995年3月末
人員
(従業員)
40,000
30,000
0
0
5,000
1995年3月末
2013年3月末
0
1995年3月末
2013年3月末
規 制 改 革 と 石油産業
13年11月には70円程度となっています。
る企業体質の確立や、
適正な流通市場構築に取り組むことが喫緊の
これに伴い、
レギュラーガソリン価格
(全国平均小売価格/消費税・
課題となっています。
ガソリン税込み : 石油製品価格調査)
は、08年1月のリットル当たり
透明・公正なオープンマーケットの整備
154円から8月には同185円まで上昇し、その後下落して12月には106
円、
その後再び上昇に転じ、13年12月には158円程度となっています。
わが国の石油先物取引は、1999年に東京工業品取引所
(TOCOM
このように原油価格の変動に応じて、
国内の製品価格も変動しまし
※)
にガソリンと灯油が上場されたことに始まります。その後、中部商品
たが、そのタイムラグなどにより石油精製・元売会社や給油所を運
取引所でもガソリンと灯油が上場され、続いて、TOCOMで原油が、両
営する販売会社の収益が急速に悪化しました。
これを受け、
新日本石
取引所で軽油が上場されました。
油
(現:JX日鉱日石エネルギー)
や出光興産は08年10月に従来の
近年の動向として、2005年5月に改正商品取引法が施行され、委託
「 卸 価 格 月 決 め 方 式 」に 代 え て 週 ご とに 東 京 工 業 品 取 引 所
者保護の強化、
商品取引員に対する規制の見直し、
アウトハウス型クリア
(TOCOM)
等市場価格にリンクさせたフォーミュラ
(公式)
によって卸
リングハウスの設立等、
市場の信頼性・利便性の向上が図られました。
価格をタイムリーに決定する
「新価格体系」
を導入しました。
TOCOMでは、
石油価格の高騰に対して市場流動性を確保するた
わが国の石油需要が減少していく中、
元売・精製・販売業界は更
め、
原油については05年11月限から、
ガソリン、
灯油については06年
なる販売の質の向上、
すなわち付加価値販売の強化と経営の効率化
4月限から値幅制限を緩和し取引単位を100Sから50Sに引き下
に向けた
「新たな質の創出」
を徹底し、再投資可能な利益を確保し得
げ、合わせて当業者の建玉制限を柔軟にできることとしました。さら
■日本の石油元売会社の再編と提携関係
(2014年3月現在)
出光興産
出光興産
日本石油
三菱石油
1999年4月合併
2002年7月社名変更
日石三菱
新日本石油
2008年10月
合併
九州石油
日本鉱業
共同石油
大協石油
丸善石油
1992年12月合併
シェル石油
東 燃
ゼネラル石油
エッソ石油
モービル石油
1999年10月
精製・物流提携
JX日鉱日石
エネルギー
2010年4月
統合
2010年7月設立
ジャパンエナジー
1986年4月合併
コスモ石油
コスモ石油
旧コスモ石油
昭和石油
2002年12月
精製提携※1
1999年10月
精製・物流提携
1985年1月合併
昭和シェル石油
昭和シェル石油
2013年3月
精製・物流提携
2000年7月合併
東燃ゼネラル石油
2002年6月合併
※2
エクソンモービル
グループ
東燃ゼネラル
グループ
エクソンモービル
東燃ゼネラル
グループ
2014年2月
資本譲渡 ※3
三井石油
太陽石油
太陽石油
石油元売会社:製油所を所有するか、石油精製会社と密接な資本関係がある等で製品売買契約を結び石油製品を仕入、
自ら需要家に売るか特約店に卸売する会社
(公式な定義はない)
※1 日本石油(当時)と出光興産は1995年に物流部門での提携をしている
※2 2012年6月1日に東燃ゼネラル石油
(株)
を中心とした新体制に移行
(エクソンモービル
(有)
はEMGマーケティング
(同)
に商号変更)
※3 2014年2月4日に三井石油は東燃ゼネラル石油の子会社となりMOCマーケティング
(株)
に商号変更
32
に、06年6月からは、
制限値段を標準価格に応じた設定ではなく、
直
自由化範囲を拡大することとなり、
すべての導管保有者・運営者
(一
近の一定期間の価格変動に対応した額としました。07年10月から
般ガス事業者およびガス導管事業者)
に対する託送の義務付け、託
は、過去の一定期間の価格変動の最大値を基準とし、到達する可能
送料金の適正性を確保するための会計整理など託送制度の透明
性が極めて低い制限値段を設定するとともに、
当業者の建玉制限が
性・公平性を確保するための制度設計が行われました。
大幅に緩和されました。
その後、東日本大震災等を踏まえて、総合資源エネルギー調査会
一方、
経済産業省の
「工業品先物市場の競争力強化に関する研究
基本問題委員会において、
今後のわが国のエネルギー構成のあり方
会」
は、
世界最高水準の電子システムの早期導入、
取引時間の延長・
の基本的方向性を示す中で、天然ガスシフトの推進、分散型の次世
24時間化、値幅制限・建玉制限など取引ルールの緩和など、利便
代電力システムの実現について、12年1月に天然ガスシフト基盤整
性・信頼性の確保と競争力強化のための方策を検討し、07年6月に
備専門委員会、
また、
同年2月には電力システム改革専門委員会にお
報告書を取りまとめました。
いて検討が開始されました。
石油業界としては、
このように当業者にとって使い勝手の優れた魅
天然ガスシフトについては、12年6月に取りまとめられた報告書
力的な市場設計を構築したTOCOMで会員資格を取得するなど、
そ
には、
天然ガスシフトを進めていく上での大前提としての供給基盤整
の本格的な利用を開始しようとしているところです。今後も、透明性
備のあり方として、広域天然ガスパイプライン等の整備の意義、課
の高い価格指標の提供機能をもつ先物取引の流動性が高まること
題、
整備コストの低減や負担主体のあり方等について整理され、
広域
で、
より公正・透明かつ客観的な市況が形成され、当業者がリスク
天然ガスパイプライン等の整備は民間事業者の負担で整備すべき
ヘッジツールとして活用できる使い勝手の良い制度が整備されてい
であり、
政府の関与は、
規制緩和による整備コスト低減を目指すこと
くことを期待しています。
が妥当との方針が示され、
ガス事業制度改革の必要性について言及
なお、TOCOMは石油業界の要望を反映した制度改正
(取引数量
されました。
の拡大等)
を行った上で、10年5月に、06年2月に立会い休止となっ
また、
後述の通り、
電力システム改革専門委員会においてもガス市
ていた軽 油 先 物 取 引を、約4年ぶりに再 開しました。これにより
場における競争環境の整備が必要と指摘されるなど、
ガス市場の総
TOCOMにおける石油先物はガソリン、
灯油、
軽油と主要製品が揃う
合的な改革を進める必要性が高まったことを受け、13年11月、
ガス
ことになりました。
事業の特性を踏まえつつ、
ガス利用の将来性を見据え、
ガス産業の
※TOCOMは、2013年2月に農産物市場を開設し、東京商品取引所
(略称はTOCOMのまま)
となった。
あり方や、
ガスの卸および小売市場における需要家の選択肢拡大と
競争活性化に資するシステムのあり方について検討を行うガスシス
関連エネルギー政策の動向
テム改革小委員会が設置され、
ガスシステム改革について、具体的
電気・ガス事業においても、規制緩和を通じた市場メカニズムの
な検討が開始されました。石油業界としては、
東日本大震災において
導入による供給効率化が進められてきました。
都市ガスの復旧が1ヵ月以上要したことなど、
都市ガスが系統エネル
電 気 事 業につ い ては、1995年 から卸 供 給 事 業として のIPP
ギーであるが故の緊急時対応能力の脆弱性等を踏まえた、
広域天然
(Independent Power Producer)
が認められ、2000年からは大
ガスパイプライン等の整備についての慎重な検討や、
消費者利益の
口需要家
(特別高圧需要家:電圧2万ボルト・契約電力2,000kW以
最大化に向けたガス事業の規制改革の速やかな実行と、
パイプライ
上)
に対する小売の自由化
(参入規制・価格規制・供給義務なし)
が
ン網のみならず、LNGターミナル、LNGタンクの第三者の公平な
実施されるとともに、その前提となる送電線利用に関わる接続供給
利用
(オープンアクセス)
の促進が必要と考えています。
(託送)
が制度化されました。さらに、
小売全面自由化を視野に入れつ
電力システム改革については、12年7月にわが国の今後のある
つ、04年から500kW以上の需要家、05年からすべての高圧需要
べき電力システム改革
(基本方針)
が示されました。本方針は①需要
家
(50kW)
に小売自由化範囲を拡大、
全国規模の卸電力取引市場を
サイド
(小売分野)
の改革
(小売全面自由化等)、②供給サイド
(発電
創設するとともに、
新規参入を促進し、
有効な市場競争を実現する観
分野)
の改革
(発電分野の全面自由化)、
③送配電分野の改革
(中立
点から、送配電部門の公平性・透明性の確保措置
(部門間の情報遮
性・公平性の徹底)
が柱として構成されており、13年2月には、
同基
断・内部補助の禁止など)、系統利用に関わる託送料金の一本化・
本方針を踏まえた最終報告書が取りまとめられました。報告書にお
同時同量ルールの緩和などの具体的な検討が行われました。
いては、
小売り全面自由化とそのために必要な制度改革として、
地域
また、
ガス事業についても、95年から年間のガス使用量200万
独占の撤廃、小売り料金規制である総括原価の撤廃等が決定され、
m3、99年からは100万m3を超える大口需要家に対する供給が自由
小売り自由化に伴う、効率的な電源の活用や、電源の売電先の多様
化され、大手ガス事業者
(4社)
には接続供給
(託送)
が義務付けられま
化のために市場機能を活用できるよう、卸電力市場の活性化、卸規
した。電気事業と同様にガス事業も更なる規制緩和が検討され、04
制の撤廃等が決定されました。さらに、全国大での需給調整機能の
年から年間50万m3、07年から年間10万m3以上の需要家に小売の
強化や再生エネルギー等の分散型エネルギーの導入を進めるため
33
規 制 改 革 と 石油産業
に、
送配電部門の広域化・中立化を行うことが決定され、
具体的施策
府として今後進めていく電力システム改革の全体像として
「電力シス
として広域系統運用機関
(仮称)
の設立、
送配電部門の法的分離等を
テムに関する改革方針」
が閣議決定されたことを受け、同年10月に
行う事が決定されました。また、
安定供給のための供給力確保策とし
は、電力システム改革の第一段階として、広域的運営の推進のため
て、小売り事業者に供給力確保義務を課すこと等も決定されていま
の措置を講じるとともに、
需給逼迫への備えを強化するために、
自己
す。また、電力システム改革の工程表として、広域系統運用機関
(仮
託送および電気の使用制限命令に係る制度の見直しを行うため、
電
称)
の設立については15年を目途に、
小売り全面自由化
(参入の自由
気事業法の一部が改正されました。また、同改正において、附則とし
化)
については16年を目途に、
送配電部門の法的分離については18
て電気の小売業への参入の全面自由化、
法的分離による送配電部門
~ 20年を目途とすることも合わせて決定されました。報告書で示さ
の中立性の一層の確保、
電気の小売り料金の全面自由化に係る措置
れた内容は、
これまで述べたような電力システム改革だけではなく、
を段階的に実施していく旨の規定が措置されています。電力システ
ガス市場制度改革の必要性にも言及するなど、非常にバランスのと
ム改革については、
制度改革のみならず、
大型電源の緊急停止、
出力
れた報告書になっており、13年7月には、実務的な課題への対応も
不安定な再生可能エネルギーのバックアップの必要性などを踏ま
含めた具体的な制度設計に関する検討・審議を行うために、電力シ
え、
石油火力発電を
「供給安定型電源
(バックアップ電源)
」
として位置
ステム改革小委員会
(電力システム改革専門委員会から13年7月に
付けるなど、
緊急時対応を視野に入れた電源ミックスのあり方を検討
名称変更)
の下に制度設計ワーキンググループが設置され、具体的
することが望まれます。
な検討が開始されています。また、同年4月に、同報告書を踏まえ政
■電力システム改革の工程
法改正の工程
実施を3段階に分け、各段階で課題克服のための十分な検証を行い、その結果を踏まえた必要な措置を講じながら実行するものとする。
【第1弾改正】
(2013年臨時国会にて成立)
①広域的運営推進機関の設立 ②プログラム規定 等
改革実施の工程
第3弾改正
第1弾 改正法案成立
第2弾改正
電力システムに関する改革方針
第1弾改正
2013年 2013年
4月2日 11月13日
閣議決定
(注1)送配電部門の法的分離の実施に当たっては、電力の安定供給に必要となる資金調達に支障を来さないようにする。
(注2)第3段階において料金規制の撤廃は、送配電部門の法的分離の実施
と同時に、
または実施の後に行う。
(注3)料金規制の撤廃については、小売全面自由化の制度改正を決定する段階での電力市場、事業環境、競争の状態等も踏まえ、実施時期の見直しもあり得る。
【第2弾改正】
(2014年通常国会)
①小売全面自由化 ②一般電気事業制度の見直しに伴う各種関連制度整備
【第3弾改正】
(2015年通常国会を目指す)
①送配電部門の法的分離 ②法的分離に必要な各種ルール(行為規制)の制定
2015
【第1段階】
(広域的運営推進機関の設置)
2015年目処
【第2段階】
2016
2018
【第3段階】
(小売参入の自由化)
2016年目処
(送配電の中立化、料金規制の撤廃)
2018∼2020年目処
①需要計画・系統計画のとりまとめ
②【平常時】区域(エリア)
をまたぐ広域的な需給および系統の運用
③【災害時等の需給逼迫時】電源の焚き増しや電力融通指示による需給調整
④新規電源の接続受付、系統情報の公開 等
広域的運営
推進機関設立
小売全面自由化
(参入自由化)
様 々 な 料 金 メ ニュー の 選 択 や 、電 力 会 社 の 選 択 を 可 能 に
料金規制の経過措置期間
(国が競争状況をレビュー)
(2015年目処、新たな規制組織)
料金規制の撤廃
(経過措置終了)
需要家保護に必要な措置(最終的な供給の保障、離島
における他地域と遜色ない料金での供給の保障等)
送配電部門の
法的分離
競争的な市場環境を実現
(送配電部門は地域独占が残るため、
総括原価方式など料金規制を講ずる)
出所:総合エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革小委員会制度設計WG資料
■わが国の原油CIF価格とガソリン小売価格(消費税・ガソリン税抜き)の推移
単位:円/R
140
120
100
ガソリン小売価格
(消費税・ガソリン税抜き)
80
全国平均
60
40
原油CIF価格
20
0
96.3末 特石法廃止
01.12末 石油業法廃止
90年 90年 91年 91年 92年 92年 93年 93年 94年 94年 95年 95年 96年 96年 97年 97年 98年 98年 99年 99年 00年 00年 01年 01年 02年 02年 03年 03年 04年 04年 05年 05年 06年 06年 07年 07年 08年 08年 09年 09年 10年 10年 11年 11年 12年 12年 13年 13年 14年
1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月 7月 1月
出所:石油情報センター等
34
石油製品の流通・販売
石油連盟では、販売業界等と連携して軽油引取税脱税防止に関
規制改革による物流の合理化・効率化
する抜本的対策を実施すること等を要望してきましたが、2004年6
石油製品は、内航タンカー、
タンクローリー、
タンク車
(鉄道)
およ
月、不正軽油の製造・流通防止を目的として地方税法が改正され、
びパイプラインといった輸送手段を利用して、油槽所や給油所
(SS)
軽油引取税の脱税に関する罰金の引き上げ、混和等の承認を受け
を経由し消費者に届けられています。このうち、
タンクローリーと内
る義務に違反した場合の罪の創設など脱税行為への罰則が強化さ
航タンカーで輸送量全体の大半を占めています。
れました。
一方で、不正軽油の撲滅に向けて取り組む東京都および軽油引
石油産業は、1996年3月末の特石法廃止以降における経営環境
の変化に対処するため、各種の物流手段・施設を効率的に配置・
取税全国協議会から、03年秋と04年春の2度にわたり、
不正軽油の
統合するとともに、会社間における製品の相互融通の拡大、輸送手
原材料に使用されている灯油・A重油等の出荷の取り扱いに関す
段や油槽所の共同化を進めています。特に、99年以降は、企業の枠
る要請が石油元売会社に対して行われました。これを受けて、石油
組みを超えた精製から物流部門におよぶ業務提携等の動きが活発
連盟としては、04年12月に
「軽油引取税脱税防止ガイドライン」
を
化し、精製・流通基地の統廃合や物流情報のシステム化など、物流
策定し、石油精製・元売業界の指針として本社・支店・製油所等の
の効率化、
コスト削減が図られてきました。
各事業所に周知徹底を図っています。
また、06年6月より、
都道府県知事の承認を受けないで軽油を製
一方、物流効率化推進の観点から、内航・陸運に係わる規制改革
造する者に事情を知りながら原材料や薬品、
設備等を提供した者等
も行われてきました。
例えば、陸上輸送では、車両の全長・車軸間隔・輪荷重により積
に対する罰則の創設等、
軽油引取税の脱税防止対策がさらに強化
載量を制限する車両制限令などが93年11月に改正され、26 ~
されました。今後も、
軽油引取税の脱税防止に向けた取り組みの強
28S級の大型タンクローリーの導入が推進され、
さらに03年10月
化とともに、
自動車燃料に対する課税の公平性の確保が必要です。
の同令および保安基準の一部緩和を受け、コンパクトな超短尺
24Sローリーが開発されたことや、30S級のローリーの開発等、
SSを巡る経営環境の変化
ローリーの大型化が推進されました。99年4月以降は、石油製品輸
送の効率化と安全管理対策の向上を図る目的から、必要な安全対
2001年12月に石油業法が廃止され、石油産業は本格的な国際
策設備を講じることを条件にSSにおけるタンクローリー運転者単
化・自由化時代に入り、国内石油市場は国際市場とリンクしたもの
独での荷卸し作業が許可され、05年10月には、
これが灯油配送セ
となりました。また今後は電気自動車
(EV)
やプラグインハイブリッ
ンターや需要家等の地下タンクまで適用の拡大が図られました。
ド車
(PHV)
などの次世代自動車の増加が見込まれています。
単独荷卸しの適切な活用は安全性向上、物流コストの削減、SSや
こうした環境変化に対処するため、精製・元売会社、販売業界が
需要家の利便性向上などに繋がると期待されています。
一体となって、付加価値販売の強化と経営の効率化に向け、適正な
流通市場構築に取り組むことや、SSでの新たな付加サービスを創
出することが喫緊の課題となっています。
自動車用燃料課税に係わる諸問題への対応
■セルフSSの急増
石油製品の輸入自由化を契機として、軽油引取税の脱税を目的と
98年4月以降、
ドライバーの給油作業を一定の有資格者が監視
した悪質な不正軽油の輸入、流通段階における不正混和
(灯油やA重
する有人セルフ方式のSSが導入されて以来、その数は12年度中に
油等を混和)
、A重油などの不正使用が急増する一方、不正な脱税軽
8,800ヵ所を上回り、SS全体に占める普及率が約24%になってい
油の製造過程で生成される硫酸ピッチの不法投棄が社会問題化しま
ます。
した。このような問題は、安価な軽油が出回ることによって市場にお
わが国でのセルフSSは、当初欧米で経験豊富な外資系企業や中
ける公正・公平な競争条件が歪められるばかりでなく、自動車用燃料
小元売会社が先行し、02年以降は大手の民族系元売会社も積極的
として不適切な品質の燃料が使用されることによる環境面での悪影
に出店を開始しました。最近では特約店・販売店も独自にセルフ化
響が懸念されます。硫酸ピッチの不法投棄は土壌汚染などの環境問
に意欲的に取り組んでいます。一方、
セルフSS間での競争の激化に
題に加え、近隣住民の健康被害まで引き起こす事態になっています。
より、
閉鎖されるセルフSSも出始めています。
35
石 油 製 品 の 流 通・販売
■セルフSSの安全対策について
等に応じた漏えい対策を実施することが義務付けられました。この
ドライバーが自ら給油を行うセルフSSの増加に伴い、給油中のガ
規制は13年1月末をもって経過措置の期限を迎えました(東日本大
ソリンの吹きこぼれや誤給油が増加しているため、石油連盟などで
震災被災地においては16年1月末まで)。石油業界では今後も土壌
は正しい給油方法についてホームページ、
ポスター等で周知し、注
汚染防止対策を進めていきます。
意喚起を行っています。
■SS過疎地問題
また、石油各社はセルフSSにおける安全対策として、給油時の監
石油製品の需要減少に伴う競争の激化により、SS数の減少が続
視強化や、静電気対策として給油ノズルの導電性の確保、漏洩事故
いていることから、
「SS過疎地問題」
が懸念されています。SSが閉鎖
対策の観点からスプラッシュガードの設置等、安全性向上に向け
されることにより、生活圏内にSSがなくなり、寒冷地では生活必需
て、
積極的に取り組んでいます。
品となっている灯油や、農業林業用車両の燃料の供給が難しくなっ
■次世代自動車の増加
ている地域が増加しており、社会問題として取り上げられるように
EVやPHVなどの次世代自動車の増加に伴い、SSで提供される
なりました。その背景としては、前段で述べた13年1月末に経過措
サービスも、従来求められていたものから大きく変化する可能性が
置の期限を迎えた経年地下タンクの漏洩防止対策の義務付けを契
あり、SSを取り巻く環境の変化に合わせ、太陽光発電、急速充電器
機に、設備投資が困難な為、廃止となるSSが増加したことも一因と
の設置などのインフラの整備や、
カーシェアリング等SSにおける新
してあげられます。
この様な状況は、消費者の利便性を損なうだけでなく、災害時に
たな付加サービスを創出することが課題となっています。
■SSを巡る環境問題への対応
営業を停止せざるを得ないSSが発生した場合、地域住民への燃料
供給が極めて不安定化するなど、深刻な事態となることが懸念され
従来、石油産業の環境問題への取り組みは製油所を中心に進め
ます。
られてきましたが、
ここ数年は、SSに係わる真剣な取り組みが多くな
りました。
石油業界としては、石油製品の安定供給という社会的責任を果た
具体的には、02年4月からスタ−トしたPRTR法に基づくベンゼン
していくためにも、行政や自治体のリーダーシップの下、地域住民の
など有害化学物質の排出量の届出、05年1月から世界に先駆けて
方々とともにこの問題に取り組んでいくことが重要と考えています。
開始されたサルファーフリー(硫黄分10ppm以下)
ガソリン・軽油
の全国規模での供給などがあります。
また、SSの土壌・地下水汚染問題の重要性を踏まえ、石油連盟で
はSSにおける油漏れの未然防止・早期発見を目的に
「SS土壌環境
セーフティーブック」
を作成しています。
さらに、本問題への取り組みの一環と
して、09年8月に合成樹脂配管等の施工
方法に関する通知の一部を改正する通知
たことを受け、土壌と接する地下埋設配
管において、腐食等のリスクが低い合成
樹脂配管等の使用を促進する観点から、
地下埋設配管に合成樹脂配管および樹
脂配管用耐火板接続ボックスを用いる際
の標準的な施工方法について、2010年3
月に石連標準仕様を作成しました。
10年6月には、地下タンクからの油漏
れ事故への対策として、危険物の規制に
関する規則の一部が改正され、SS等の地
下に埋設されている鋼製一重殻タンクに
ついて11年2月より埋設年数や設計性能
60,000
ヵ所
55,000
50,000
45,000
60,421 59,990 59,615
58,263
56,444
給油所数
(消防危第144号)
が消防庁から発出され
■給油所およびセルフ給油所の推移
55,172
53,704 52,592
51,294 50,067
48,672 47,584
45,792
44,057
42,090
40,000
40,357
38,777 37,743
36,349
35,000
30,000
10,000
8,000
7,023
6,162
6,000
4,956
3,423
4,000
7,774
8,596 8,862
8,296 8,449
セルフ給油所
4,104
2,523
1,353
2,000
85
0
191 422
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
年度末
出所:経済産業省、
石油情報センター
36
活用して、従来灯油のみであった石油製品での国家備蓄が油種・
地域社会との共生を目指して
(大規模災害への対応)
量ともに拡充されました。
石油連盟では、企業の社会的責任
(CSR)
等の観点から、大規模災
害時などにおける石油製品の安定供給努力など地域社会との共生を
サプライチェーンの維持・強化のために
目指しています。
石油は、
地震等の災害時においても、
船舶やタンクローリーといっ
石油産業は、石油を消費者の皆様の手元に届けるために、資源の
た多様な輸送手段で運べること、
特にタンクローリーは、
輸送路を選
確保・開発から輸入・精製・物流・販売という
「サプライチェーン」
んで目的地まで運べることなどから、
供給における柔軟性が高いとい
(供給網)
を、
いわば血管網のように全国に張りめぐらせています。
う特性を有しています。
しかしながら、傾向的な石油製品の内需減少と市場原理に基づく
2008年11月に、東京都との間で
「大規模災害時における石油燃
経営合理化の中で、
余裕あるサプライチェーンを維持して行くことが
料の安定供給に関する協定」
を締結し、
震度6弱以上の地震があった
難しくなってきています。
「SS過疎地問題」
とまでいわれるSSの廃業問
場合等に、
災害対策上重要な公共施設に対して直接石油製品を供給
題は、
販売の最先端におけるサプライチェーンのほころびの例である
する体制を整備しました。以来、
この協定に基づく実地の訓練を行っ
といえます。
てきました。
また、2007年の中越沖地震の際には、
柏崎刈羽原子力発電所の
実際11年3月の東日本大震災では、製油所や油槽所が地震、津
停止に伴う石油火力発電所向け燃料輸送が、
製品タンカーの不足か
波の被害を受け、石油業界も多くの油槽所・製油所が被災しました
ら、
円滑に進まなかった例もあります。
が、発災当日より石油連盟では政府を通じた被災地からの石油製
経済産業省の2017年度までの需要見通し
(2013年6月)
に基づ
品の緊急供給要請に対応し、比較的被害が軽微な油槽所を元売会
くトレンドが20年まで続いた場合、石油製品の内需は、12年度比
社間で共同利用する等、訓練の成果を生かし、石油業界が一丸と
13%減少、
ピーク時の99年度から約3割減少するものと見られてお
なって被災地への安定供給継続が可能となるよう努めました。
り、
サプライチェーンの維持はますます困難になって行くものと思わ
石油業界では、東日本大震災を教訓に、大規模災害時における石
れます。
油のサプライチェーンの維持に向けて、災害時の情報収集体制の
図らずも東日本大震災においては、
「 系統エネルギー」
である電
整備、施設の防災力の強化、被災地向けドラム缶充填設備の整備、
気・都市ガスが供給不能となった瞬間から、
石油は、
持ち運びや貯蔵
緊急時の業界横断的な協力体制の構築等、
さまざまな対策を進め
が容易な
「分散型エネルギー」
として、
緊急時対応力を発揮しました。
ています。
そして、
避難所の暖房用燃料、
病院や原子力発電所の非常用発電燃
また東日本大震災における緊急要請への対応という経験を踏ま
料、
緊急車両や避難用車両の燃料として被災者の生命を守る役割を
え、石油連盟では、災害時等緊急時の被災地からの石油製品の緊
果たしたと考えています。
急要請に迅速かつ柔軟に対応できるよう、全国の道府県との間で
内需減少に伴うサプライチェーンの縮減が続く場合には、大規模
重要施設への燃料供給に関する情報共有を行なう等、緊急時対応
災害の発生時に、
東日本大震災時のような対応は取れないことが懸
体制の整備を進めています。
念されます。災害時における最終消費者までのエネルギーの安定供
また12年11月、国内で大規模災害が発生した際の対応を強化し
給の重要性を考えるならば、
現状レベルのサプライチェーンを維持・
た改正石油備蓄法が施行され、石油精製・元売業界は、災害時に業
強化して行くことが必要不可欠であり、
そのための
「石油の安定需要
界各社が協力して緊急供給に対処するため、国内の10地域ごとに
の確保」
が喫緊の課題であるといえます。
災害時石油供給連携計画を作成し、13年1月に政府に届け出まし
石油連盟としては、
サプライチェーン維持のためには、
暖房・給湯
た。13年6月にはこの連携計画に基づく初めての訓練を実施しま
部門、
輸送部門などを中心に石油利用を維持することで、20年にお
した。さらに、災害による国内の特定地域への石油の供給不足時に
いても1.8億S(10年度比8%減少)
程度の需要規模を確保すること
も国家備蓄を放出できるよう発動要件が見直されるとともに、被災
が重要と考えています。
地の需要に迅速に応えられるよう、石油会社の出荷基地のタンクを
37
石 油 製 品 の 流 通・販売
■石油製品内需の推移と見通し
千KL
250,000
ガソリン
246百万S(1999年度)
▲20%
ガソリン
200,000
198百万S
ナフサ
150,000
灯油
ジェット燃料油
▲13%
軽油
173百万S
重油
電力用C重油
灯油
出所:
・ 2012年度までの実績:資源・エネルギー
統計
・ 2017年度までの見通し:需要想定検討会
「石油製品需要見通し」
(2013年6月経済
産業省)
・ 2018年度以降の見通し:電力用C重油を
除き、
2012∼17年度の年率
(減少率)
をも
とに試算
※電力用C重油は、
経済産業省より見通しが
示されていないため、2012年度見込みと
同じと仮定
ジェット燃料油
100,000
軽油
50,000
ナフサ
▲30%
見 通し
重油
(電力用C重油を除く)
電力用C重油※
0
1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
年度
■石油のサプライチェーン
(流通・物流経路)
輸 入
● 原油輸入のためのタンカー
延運航隻数:871隻
(2012年度)
原油貯蔵・備蓄
● 原油を貯蔵するためのタンク
貯油能力:35,813千S
(2012年3月末現在)
精 製
● 石油製品を生産するための設備
製油所数:25ヵ所
精製能力:70万S/日
(438万バレル/日)
(2014年2月末現在)
● 石油製品を配送するためのタンクと輸送手段 製品貯蔵・備蓄
油槽所/貯油能力:11,794千S
(燃料油)
タンク基数:3,472基
(燃料油)
(2012年3月末現在)
内航タンカー
:578隻
(2013年3月末)
タンク車
:1,514両
(2013年3月末)
タンクローリー
:7,072台
(2012年3月末)
● 石油製品
(半製品を含む)
を
貯蔵するためのタンク
輸 送
販 売
38
貯油能力:45,633千S
(2012年3月末現在)
● SS
(サービスステーション)
36,349ヵ所
(含・可搬式)
(2013年3月末現在)
石油諸税の抜本的見直しに向けて
「巨額・高率」
な石油諸税
「不合理・不公平」
な石油諸税
石油はわが国の一次エネルギー供給の約44%を占め、国民生活
1989年4月の消費税導入に際して、
既存の個別間接税は、
廃止を
や産業活動を支える重要なエネルギーです。そのため、
そのコスト低
含めた見直しが行われ、
消費者の税負担が増えないよう既存の税と
減は国民経済的課題となっています。
しかし、石油には、年間約4兆
の調整が講じられました。
ところが、
石油諸税は、
使途が決まっている
5,000億円
(平成26年度予算)
にも達する巨額・高率な税金が多重・
「特定財源」
であることを理由に、
廃止も軽減もされず、
石油諸税を含
多段階にわたって課されています。
む販売価格に単純に消費税が上乗せされる
(単純併課)
という不合
石油への課税は、
まず、
石油製品の原料である原油、
および石油製
理、
不公平な措置が取られました。
品が輸入された段階で、
関税
(石油輸入製品のみ)
と石油石炭税が課
2009年4月、道路特定財源制度は廃止
(一般財源化)
され、
これに
せられ、
さらに製品となり消費者にわたるまでに、それぞれの製品ご
より消費税と石油諸税の調整が実施できない理由は解消されました
とにガソリン税
(揮発油税および地方揮発油税)、軽油引取税、石油
が、消費税と石油諸税に関する具体的な調整措置は何ら講じられて
ガス税、
航空機燃料税という個別間接税が課されています。
こうした
いません。
石油諸税に、
さらに消費税約1兆8,800億円
(石油製品売上高の8%
政府は、
14年4月に消費税を5%から8%に引き上げ、
さらに、
15年
相当分)
を加えると、
石油にかかる税金は、
約6兆3,800億円にもなり
10月には10%にすることを予定しています。仮に消費税率が10%に
ます。この石油に課された税金は石油輸入量1バレル当たり約48ド
なれば、
ガソリン税等の石油諸税にかかっている消費税、
いわゆるタッ
ル分
(100円/ドルの為替レート)
に相当します。こうした巨額・高率
クス・オン・タックス
(約2,800億円)
は拡大し、消費者負担がさらに
な石油諸税は、
エネルギーコストの高騰を招き、
国民生活や産業活動
増加することになります。石油連盟としては、
消費税導入時の考え方
を大きく圧迫しています。
に立ち戻り、
適切な調整措置、
とりわけタックス・オン・タックスの廃
止の実現に取り組んで行きます。
■石油の多重・多段階課税
(平成26年度予算)
石油ガス税
9,
800円/S
ガソリン
ガソリン税
53,
800円/S 2兆8,174億円
軽油
(注2)
輸入石油製品
2,
540円/S
(注3)
関 税(注4)
52億円
6,130億円
ジェット燃料油
軽油引取税
32,
100円/S
9,442億円
航空機燃料税
18,
000円/S
680億円
(注1)
(注1)
(注5)
ナフサ
消費者
石油石炭税
200億円
消費税 8%
輸入原油
LPガス
灯油
重油
その他
輸入の段階
製品の段階
消費の段階
石油諸税計 約4兆5,000億円
消費税 約1兆8,800億円
合計 約6兆3,800億円
(100円の為替レートで約48ドル/バレルに相当)
(注)
: 1. 軽油引取税と航空機燃料税にはTAX on TAX
(併課)
はない
2. 石油石炭税は原油、輸入石油製品、石炭、LNG、LPGが課税対象となっている
3.「地球温暖化対策のための課税の特例」による上乗せの経過措置として、2014年4月1日に2,290円/Sから2,540円/Sに引き上げられた
4. 2006年4月より原油関税
(170円/S)
は撤廃され、石油製品関税のみとなった
(関税収入は24年度実績に基づく石油連盟試算値)
5. 航空機燃料税は、租税特別措置法に基づき、26,000円/Sから18,000円/Sに引き下げられている
(3年延長:2017年3月31日まで)
6. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
出所:財務省主税局資料、総務省自治税務局資料等
39
石 油 諸 税 の 抜 本 的 見 直 し に向けて
■1R当たりのガソリンに課せられている
石油諸税および消費税
(2014年2月現在)
■国税収入に占める石油諸税の割合
(平成26年度予算)
(消費税込み小売価格1R当たり158円の場合)
158円/R
150.5円/R
法人税23.6%
酒税2.5%
印紙収入2.0%
Tax on Tax 2.8円
(消費税 7.5円)
(注1)
中味価格への消費税
ガソリン税
石油石炭税
(注2)
中味価格
相続税2.9%
所得税28.1%
自動車重量税1.2%
53.8円
ガソリン税
たばこ税2.0%
その他2.6%
2.29円
(揮発油税+地方揮発油税)
5.3%
石油製品関税
石油石炭税
石油ガス税
航空機燃料税
1.3%
94.4円
(注)
:1. 消費税率は5%
(現行は8%)
2. 石油石炭税は2,290円/S
(現行は2,540円/S)
出所:石油情報センター
国税収入計
53兆6,456億円
消費税28.6%
4.7円
間接税
直接税
45.4%
(注)
:1. 石油諸税には上記の他に地方税として
軽油引取税
(9,442億円)
がある
2. 四捨五入の関係により合計が一致しない
場合がある
54.6%
石油諸税計
6.6%
出所:財務省主税局資料、
総務省自治税務局資料
■消費税導入時の
既存間接税の調整状況
単純併課・据置
石油関係諸税
■石油諸税と消費税の現状
(平成26年度試算)
石油の売上にかかる消費税額 約1兆8,800億円
うち石油本体にかかる消費税額
約1兆6,000億円
吸収・廃止
物 品 税
トランプ類税
砂糖消費税
入 場 税
通 行 税
電 気 税
ガ ス 税
木材引取税
うちTAX on TAX分
2,800億円
約
ガソリン税
約2兆8,174億円
税抜き売上高
約20兆円
石油石炭税
約6,130億円
約3兆4,500億円
その他の税
約252億円
軽油引取税
(地方税)
約9,442億円
石油諸税 約4兆5,000億円
消費税分を調整併課
酒 税
たばこ消費税
料理飲食等消費税
娯楽施設利用税
現行消費税率 8%
石油の売上高 約23兆4,500億円
(消費税除く)
(注)
:1. その他の税は石油ガス税、石油製品関税など
2. 税抜き売上高は石油連盟試算値
3. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある
40
航空機燃料税
約680億円
石油諸税の負担軽減、課税の公平性確保
これ以上の石油の増税には反対
ガソリン税・軽油引取税の本則税率上乗せ分は、
これまで受益者
石油には既に年間5兆円を超える巨額な税が課せられています。
負担の原則に基づき道路整備に必要な財源を確保するために暫定
今後も地球温暖化対策税や消費税の段階的な引き上げが見込まれ
税率として引き上げられてきましたが、
2009年4月に一般財源化され
る中、
これ以上の税負担の増加は、
消費者の理解を得られないだけで
たことによりその課税根拠は失われています。
10年4月に暫定税率は
なく、
経済活性化にも逆行するものであり、
到底容認できるものでは
廃止されましたが、
財源不足を理由に暫定税率水準は引き続いて維
ありません。
持されています。自動車ユーザーのみに過度な負担を強いているこ
これまでも、石油諸税に対しては、車体課税の軽減に伴う代替財
とや、
ガソリン・軽油の使用量の多い地方と、
相対的に少ない都市部
源として燃料課税を強化することや、森林吸収源対策の財源として
との税負担の格差を踏まえると、
本則税率上乗せ分は直ちに廃止す
地球温暖化対策税の税収を充当すること等の考え方が示されてき
べきです。
ました。
また、最近の自動車用の燃料・エネルギーに関し、
10年以上前か
2013年末の税制改正の議論においては、上記の考え方は見送ら
ら実用化されている天然ガス自動車
(CNG自動車)
に加え、
電気自動
れましたが、
このような石油を狙い撃ちにした更なる増税や税収の転
車
(EV)
も本格的な販売が始まり、
将来的には水素を燃料とした燃料
用については、
引き続き断固として反対です。
電池自動車の実用化も見込まれます。
しかしながら、
CNG車、
EV等に
使用される天然ガス、
電気等については、
ガソリン、
軽油のような自動
車燃料税の課税対象となっておらず、
公平性を著しく欠いています。
道路整備・交通事故対策・環境対策など自動車の社会的費用は自
動車ユーザーが等しく公平に負担するとの観点から、
CNG車、
EV等
とガソリン車・軽油車との間の燃料・エネルギー課税の公平性を確
保すべきです。
■家計に占めるガソリン支出の割合
下位5都市
(県庁所在地・政令市)
全国町村平均
順位
都道府県
市
1世帯あたり
の金額
90,429円
1
東京都
23区
21,453円
2
大阪府
大阪市
23,493円
神奈川県 川崎市
27,124円
3
4
兵庫県
神戸市
27,247円
5
京都府
京都市
28,450円
格差 68,976円
出所:総務省統計局 家計調査
(平成25年)
41
石 油 諸 税 の 抜 本 的 見 直 し に向けて
■石油危機以降の石油製品に対する個別間接税率の推移
単位:円/S
(2010.4.1)
(注6)
53,800
(1979.6.1)
53,800
50,000
(2008.5.1)
53,800
ガソリン税
(揮発油税・地方揮発油税の総称)
(1976.7.1)
43,100
(2010.4.1)
(注6)
32,100
40,000
(2008.5.1)
32,100
(1974.4.1)
34,500
30,000
第2次
石油危機
航空機燃料税
28,700
第1次
石油危機
(2008.4.1)
28,700
(1979.4.1)
26,000
(1979.6.1)
24,300
(1976.4.1)
19,500
20,000
(1993.12.1)
32,100
(2011.4.1)
(注7)
18,000
軽油引取税
(2008.4.1)
15,000
15,000
石油ガス税
10,400 (1974.4.1)
13,000
10,000
(1970.1.1)
9,800
湾岸危機
石油税
(1978.6.1)
0
(1988.8.1)
2,040
(1984.9.1) (4.7%)
(3.5%)
1,020
石油臨時特別税
石油石炭税
(2014.4.1)
(注8)
2,540
(2012.10.1)
(注8)
2,290
(2003.10.1)
1973 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(1991.4.1)(1992.3.31)
(注)
: 1.
2.
3.
4.
5.
石油税は1988年8月1日以降従価税から従量税へ変更
石油臨時特別税は1991年4月1日から1992年3月31日までの湾岸戦争に係わる1年間の臨時的措置 2003年度より石油税は石油石炭税に改められ、
石炭が新たに課税対象となった
地方揮発油税は地方道路税の一般財源化に伴い2009年4月より改称
ガソリン税
(1974年4月1日∼2010年3月31日)
、
軽油引取税
(1976年4月1日∼2010年3月31日)
の税率は暫定税率であり、
暫定税率の一時的な期限切れにより、
2008年4月の1ヵ月間、
本則税率が適用された
6. 2010年度よりガソリン税、
軽油引取税の暫定税率は廃止となったが、
税率水準については従来の水準が維持された
7. 航空機燃料税は租税特別措置法に基づき、
26,000円/Sから18,000円/Sに引き下げられている
(2017年3月31日まで)
8. 石油石炭税は
「地球温暖化対策のための課税の特例」
により、
段階的
(下図表「■石油石炭税の税率の経過措置
(温暖化対策税)
」参照)
に税率が引き上げられる予定
■生活用品の小売価格に占める税負担率の比較
80
70
■石油石炭税の税率の経過措置
(温暖化対策税)
単位:%
ガス状炭化水素
<LNG・LPG>
(1t当たり)
石炭
(1t当たり)
2012年
9月30日まで
2,040円
1,080円
700円
2012年
10月1日から
2,290円
1,340円
920円
2014年
4月1日から
2,540円
1,600円
1,140円
2016年
4月1日から
2,800円
1,860円
1,370円
64.5
60
50
45.3
40.1
40
29.6
30
20
28.4
10.8
10
0
原油・石油製品
(1S当たり)
4.8
たばこ
ビール
清酒
乗用車
(350ml) (佳撰) (2,000cc)
ピアノ
ガソリン
軽油
(注)
: 1.平成24年度税制改正大綱より
2.「地球温暖化対策のための課税の特例」
に伴う経過措置
3.税率の上乗せは各化石燃料のCO2排出量に応じて実施
(注)
:1.小売価格は
「小売物価統計調査
(東京)
」2014年1月価格にて算出
2.
ガソリン・軽油は
「石油製品価格調査」2014年1月価格にて算出
石油連盟作成
42
企業体質の改善・強化
石油化学製品マージンの改善や石油開発部門における収益等に支え
企業体質の強化が必要
られ、通期では黒字を確保することができました。13年度について
石油産業には、国民生活に必須である石油製品の供給を、安定的
は、
堅調な石油化学製品部門、
石油開発部門からの収益等が見込ま
に行っていくことが求められています。
れるものの、
石油製品マージンの更なる悪化により、
非常に厳しい見
石油製品の安定供給を確保するためには、
最適な生産体制を維持
通しとなっています。
していくための設備投資などが不可欠となります。よって、石油産業
石油各社では業界を取り巻く構造変化に対して、
精製設備の削減
が適正な収益水準を確保し、
企業体質の改善と強化を図ることが必
等を通じた需給環境の改善への取り組み、他社との協業関係の構
要です。
築・深化など、
さまざまな企業努力を行っています。
エネルギー基本計画においては、
石油産業の事業基盤の再構築の
ため、
製油所の統合運営・事業再編を通じた総合的かつ抜本的な生
決算状況について
産性の向上を進めることにより、柔軟な石油・石油化学製品の生産
しかしながら、石油産業の収益構造は他産業と比較しても極めて
体制を確立することや、
資源開発事業、
発電事業およびガス事業への
不安定で厳しい状況となっています。人口減少などの影響で中長期
参入などにより総合エネルギー産業へと脱皮し、他事業分野・海外
的に石油製品の国内需要が減少傾向となり、
国内市場規模の将来的
進出の強化により収益力を向上させることなどが求められています。
な縮小が確実視されている上、
原油価格の変動リスクなどにより、
決
今後も経営環境の変化を的確に見極め、
徹底した合理化および効
算内容が大きく左右される傾向にあります。
このような厳しい外部環
率的な事業体制の構築や、
業際分野への展開に向けた努力を最大限
境の中で、適正な収益確保のための努力がますます重要な課題と
行う中、
再投資可能な収益を確保することで、
より強い企業体質を築
なっています。
いていくことが求められます。
近年の決算状況を主要セグメント別に見ると、石油製品部門は、需
給環境改善に向けた石油各社の取り組みなどが進められていますが、
依然として原油価格や製品マージンの動向に左右される部分が大き
く、不安定な収益状況が続いています。石油化学部門は、製品マージ
ンの改善や円安に伴う輸出環境の改善等により、比較的好調な推移
が見られています。また、
石油開発部門は安定的な収益を生み出して
おり、
中長期的にも堅調に推移することが見込まれています。
なお、
石油製品部門の収益については、
原油価格の変動に伴う
「在
庫評価影響」
により、
結果として見かけ上の利益や損失を計上するこ
とになります。
この
「在庫評価影響」
とは、
原油価格が変動した際、
棚卸資産の評価
方法によって、
決算上の売上原価が影響を受けることを指します。棚
卸資産の評価方法として、
石油業界では主に
「総平均法」
が用いられ
ていますが、原油価格上昇局面では、期中の仕入れ価格より期首の
在庫単価の方が安くなるため、決算上の売上原価が押し下げられる
ことで在庫評価益が発生し、
また原油価格下落局面では、
期中の仕入
れ価格より期首の在庫単価の方が高くなるため、
逆に在庫評価損が
発生することとなります。
これらは石油製品部門の損益に対して大き
な変動を及ぼしています。
12年度の石油業界の決算は、11年度と比較して石油製品マージ
ンの悪化が見られたものの、円安の進行に伴う在庫評価益の発生、
43
企 業 体 質 の 改 善・強化
■石油産業の売上高・経常利益の推移
(石油精製・元売全社)
単位:億円
売上高
300,000
289,995 288,178
経常利益
280,000
261,345 261,636
260,000
254,550
240,000
258,705
227,539
220,000
213,520
200,000
180,000
164,495
160,000
174,737 177,821
156,524 154,195
156,868 155,067
141,183 140,440 138,856
140,000
187,863
203,234
194,159
147,796
132,586
120,000
100,000
6,803
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-1,000
-2,000
-3,000
3,425 3,429 3,701 3,170
2,883
4,613
1,876
1,143
1,363
621
5,355
5,214
3,745 4,017
2,210 2,461 2,140
2,481
404
1,658
▲180
▲2,992
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
2011 2012年度
出所:石油連盟
■石油産業と他産業との経営指標比較(2012年度)
売上高経常利益率
6
5
5.2
単位:%
株主資本比率
100
単位:%
5.4
80
4
60
3
40
2
48.7
20.5
20
1.0
1
44.3
0
0
都市ガス
製造業
石油
都市ガス
製造業
石油
出所:石油は石油連盟、他産業は日経財務データ
44
二重、三重の安全対策
努めています。また2012年8月には
「製油所の安全確保策に関する
適切な安全対策と防災体制
検討会」
を立ち上げ、
事故防止の強化を進めています。さらに13年8
石油産業は、
精製、
貯蔵、
流通、
販売の各分野にわたって、
最新の技
月には
「産業保安に関する自主行動計画」
を策定し、
石油各社は自主
術による安全管理体制と不測の災害に備えた強靭な防災体制を構築
保安の考えのもとに適切な保安活動を推進すること、
石油連盟は各
してきました。
種の情報提供活動を通じて各社の活動を支援していくことを再確認
安全対策にはハードとソフトの両面があります。
し、
安全活動を強化・充実させていくこととしています。
ハード面の安全対策として、
設備については、
設計段階から使用材
料などの安全性チェックと万全の施工管理を行っています。
大規模地震への対応
設備のレイアウトは、製油所や油槽所の設備から一般居住地まで
の保安距離や、
これらの設備から事業所境界線までの敷地境界距離、
近い将来に想定される大規模地震を踏まえ、
石油各社は石油製品
そして各設備ごとの周囲に保有空地の確保など、安全確保に留意し
の生産・出荷拠点となる製油所における主要設備の耐震性の評価を
ています。また、
個々のプラントやタンクは関東大震災級の地震にも
推進しており、
必要に応じてハード・ソフトの両面から対策を講じるよ
耐えられるような耐震設計が施されています。
うに地震対策の強化を進めています。
一方、
ソフト面の安全対策として、
設備の保守管理を中心に、
プラン
トやタンクの定期開放検査、
運転停止検査、
運転中検査、
日常点検、
特
長周期地震による災害対応
別点検を実施しています。また、
緊急時の対応、
異常現象の早期発見
や初期消火などの処置がとれるよう、
緊急停止システムの導入や油・
2003年9月に発生した十勝沖地震による大型タンク火災は、
これ
ガス漏洩検知器のきめ細かい設置とともに、
パトロール隊による巡回
までに経験のない長周期地震動によるものとされています。
を繰り返しています。さらに、
不測の火災や油流出などの事故に備え
長周期地震による災害対応のため、
石油コンビナート等災害防止
て、
的確かつ迅速な対応処置がとれるように、
常時訓練された防災要
法等関係法令が改正され、
浮き屋根式タンクの長周期地震に対する
員で
「自衛防災組織」
や
「共同防災組織」
が整備され、
これらの組織に
安全性強化や、
浮き屋根式タンクの全面火災発生時の防災体制等の
は、大型化学消防車、大型高所放水車、泡原液搬送車、
オイルフェン
強化が定められました。
ス、
油回収機、
油回収船、
消防船などが装備されています。
このため、石油業界は国家備蓄、石油化学業界および電力業界と
一方、
労働者の作業中の安全対策については、
各事業所で危険予
協力して、
大容量泡放射システムを配備する
「広域共同防災組織」
の
知活動などを行い災害防止に努めているほか、
製油所で発生した労
整備を進め、
08年11月までに全国12ブロックの
「広域共同防災組織」
働災害事例の情報共有化を行い、
再発防止のための安全教育等に活
を設立し、09年5月には大容量泡放射システムの配備を完了しまし
用しています。設備事故についても業界内で情報を公開し、
同種の事
た。さらに、
10年3月には12ブロックが相互に応援できる体制を確立
故再発防止を図るとともに、
公開した事例に対して各社がどのような
しました。
対策をとったかのフォローアップを行い、
石油産業全体で事故防止に
機動的な相互応援体制の整備
石油連盟では、
製油所などにおいて大規模な災害が発生し、
石油コ
ンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域を越える広域的な応
援を必要とする場合を想定して、
「石油連盟製油所等災害相互応援規
程」
を定めています。これにより、的確・迅速かつ機動的な応援体制
を確保し、
被害を最小限に止めることが可能となっています。
45
二 重 、三 重 の 安全対策
3.新しい検査技術の導入
新しい技術への取り組み
設備を安全に維持し、
「供用」
すなわち運転期間中に検査を行うため
設備の信頼性の向上、
保安防災力の向上のためには最新技術の導
には検査技術の向上が極めて大切なことです。
しかし、現在消防法、
入が不可欠です。旧態依然とした技術基準は安全性の向上を阻害す
高圧ガス保安法などでは、検査手法が特定されているために進歩し
るだけでなく、
多大なコストを要するため国際競争力の観点からも憂
た技術を事業者の判断では採用できない状況にあります。石油連盟
慮すべき問題です。
このため、
石油連盟では消防法をはじめとする保
はこうした弊害をなくすよう消防庁に法令の性能規定化を要望する
安関連法への性能規定化を働きかけるとともに、
自主保安の下に、
設
とともに、
すでに海外で使用されている新しい検査技術の調査・研究
備保全、
防災分野の新しい技術を導入すべく、
次のような取り組みを
を行い、
国内で使用できる環境整備を図っています。
行っています。
■製油所などにおける保安防災対策
1.新しい防災資機材
(大容量泡放水砲)
の導入
保安防災施設
「広域共同防災組織」
には、
大型浮き屋根式タンクの全面火災を想
定し、大容量泡放射システムを導入しました。このシステムに使用す
る泡放水砲は、1台で従来の消防自動車
(大型化学消防車)
約10台
分に相当する大きな能力を持つものです。これらのシステム資機材
を有効かつ効果的に操作するため、定期的な教育・訓練を行ってい
ます。
設備の点検・補修については、
法律で詳細に規定されているため
に、
十分に供用できる設備まで補修、
取替を行っているのが現状です
が、
石油連盟は自主保安の推進を基本とした法令の性能規定化を目
指し、
民間自主基準の策定に取り組んできました。その一例として、
設
保安管理組織
保安防災対策
2.設備維持規格の策定
●保安距離・保有空地 防油堤
(防液堤)
●防火へい/水幕設備
●漏洩検知装置/冷却散水装置
●緊急移送設備/緊急遮断装置
●油回収船/化学消防車など
●防消火資機材/流出油対策
資機材など
●保安管理マニュアルの設備
●保安防災教育・訓練
●ガス漏洩などの異常時における
覚知手段と初期行動マニュアル
の手引きなど
備の運転期間中に検出された損傷が今後の連続運転に適合するかど
緊急時の動員組織
うかを評価する
「供用適性評価ハンドブック」
を石油化学工業協会と
共同で策定するとともに、その計算ソフトも作成しました。また、
(公
社)
石油学会と共同で検査・補修技術を集大成した
「維持規格
(配管、
設備、
回転機、
電気設備、
計装設備、
屋外貯蔵タンク)
」
を策定し、
設備
維持の信頼性の向上を図っています。
大容量泡放水砲
46
●自衛防災組織
●共同防災組織
●広域共同防災組織
●石油連盟製油所等災害相互
応援規程
●海水油濁処理協力機構など
大規模な流出油事故に備えて
■内外の主要資機材
(2013年4月現在)
油濁防除資機材の備蓄
主要資機材
石油連盟は、油濁防除用の資機材を備蓄し、災害関係者に貸し出
固形式
オイルフェンス
すための基地を1996年3月末までに国内6ヵ所、
海外5ヵ所に設置し
国内計
大型
緊急用
充気式
ました。
また、サハリンⅡプロジェクトの原油供給開始に伴い、2010年
(平
成22年)
7月に稚内分所
(石油連盟油濁防除資機材第5号北海道基地
9,806m
5,500m
15,306m
基数
能力
(S/h)
74
4,892
20
1,680
94
6,572
ビーチクリーナー
基数
能力
(S/h)
38
456
10
156
48
612
仮設タンク
国内については、石油の海上輸送量が多い海域で年中無休・24
合計
20,000m
1,200m
油回収機
回収油貯蔵設備
稚内分所)
を設置しました。
海外計
20,000m
1,200m
オイルバッグ・
バージ等
基数
能力
(ton)
27
1,950
基数
能力
(ton)
226
1,597
27
1,950
40
360
266
1,957
時間の操業を行っている製油所などに備蓄基地を設置し、万一の流
沿って、
マラッカ海峡のシンガポールとマレーシア
(ポートクラン)
、
イ
出油事故への対応に努めています。
ンドネシア
(ジャカルタ)
、
アラビア湾のサウジアラビア
(カフジ)
とアラ
海外については、中東産油国からわが国に至る
“オイルロード”
に
ブ首長国連邦
(アブダビ)
にそれぞれ基地を設置しています。
貸し出し事例
石油連盟では、
1991年11月の国内第1号基地設置以来、
2013年
国内1号東京湾基地
海外1号基地
12月までに27回
(うち、
国内15回)
の資機材貸し出しを行いました。
主な貸し出し事例は、
95年7月の韓国麗水沖でのタンカー座礁事
故、
さらに97年1月の島根県沖の日本海公海上におけるロシア船籍
■油濁防除資機材の内外備蓄基地
〈国内〉
タンカー・ナホトカ号の流出油事故、同年10月のシンガポール海峡
5号北海道基地 稚内分所
におけるタンカー衝突事故、
98年1月のペルシャ湾における大型バー
(北海道稚内市)
ジ船沈没事故、
2000年10月のシンガポール海峡におけるタンカー
5号北海道基地
(北海道室蘭市)
座礁事故、
10年5月のシンガポール海峡におけるタンカーと貨物船
2号瀬戸内基地
(岡山県倉敷市)
の衝突事故などで、
船主などからの要請を受けて、
大量の大型オイル
4号日本海基地
(新潟県新潟市)
フェンス、
油回収機、
仮設タンクなどを貸し出しました。特に、
ロシア船
籍タンカー・ナホトカ号の事故の際には、国内各基地の保管会社・
1号東京湾基地
維持管理会社の協力を得て、
資機材操作指導員を継続的に派遣する
(千葉県市原市)
6号沖縄基地
3号伊勢湾基地
(沖縄県うるま市)
など、
油濁防除活動に全面的に協力しました。
(三重県四日市市)
〈海外〉
教育訓練
海外3号基地
(マレーシア・ポートクラン)
アラビア湾
本事業の整備資機材は、外国製品を含めて大型・高性能の新機
ホルムズ海峡
種であることから、迅速、円滑な対応のためには、関係者がこれらの
マラッカ海峡
海外4号基地
資機材の使用に習熟する訓練が必要となります。石油連盟では、国
(UAE・アブダビ)
マカッサル海峡
海外2号基地
(サウジアラビア・カフジ)
内基地設置地域の海上保安部および地域防災組織が実施する防災
訓練に積極的に参加する一方、各基地において周辺の石油連盟加
ロンボック海峡
中東からのオイルロード
海外1号基地
盟会社および関係会社の油濁対応担当者などを対象に、定期的に
(シンガポール)
海外5号基地
資機材の操作を中心とするトレーニングコースを開催しています。
(インドネシア・ジャカルタ)
47
大 規 模 な 流 出 油 事 故 に備えて
また、現場指揮者などの専門家を養成するために、石油連盟基地関
早期に確立していくための必須条件である
「油濁域の位置」
や
「拡散・
係者などを対象に海外の油濁防除専門組織に派遣し、
専門家を育成
移動状況」
を人工衛星観測情報から全天候下で検出するものであり、
しています。海外においても、基地設置国の国営石油会社などと合
石油連盟油濁対策のホームページから利用が可能です。
同流出油防除訓練を実施しています。
本システムでは、
過去の調査研究で対象となった油流出事故の油
濁域自動検出結果や技術資料、
調査報告書、
過去の事故事例の閲覧
が可能であり、
また、
「自動認識処理エンジン」
を利用することにより、
ユーザーが所有する合成開口レーダ衛星画像から油濁推定域の自
動検出を行うことができます。
12年には英語版も作成し、
国内外のユーザーによる利用が可能と
なりました。
国際会議の開催
大規模な油濁事故が発生した場合の対応事例や国際協力、
油濁に
実地操作訓練
関する国際条約および油濁損害に対する補償制度とその改定の動き
等、
最新の国際機関に係わる油濁関連情報の収集および技術開発動
向を把握するため、
第一線の専門家を招聘して1995年から2014年
油濁防除に関する調査研究
まで毎年国際会議(シンポジウム16回、
ワークショップ3回)を開催し、
知識の吸収と人的交流の拡大を図るとともに、
石油連盟の事業内容
石油連盟では、万一の大規模流出油事故時において、迅速かつ
とその意義について普及啓発を行っています。
効果的な油濁防除作業の実施に資するための調査研究を行ってい
この数年、
油流出が関連した事故は大小問わず数多く発生していま
ます。
①流出油拡散・漂流予測モデルの改良および維持管理
すが、10年のメキシコ湾事故は、
規制当局と石油産業が大規模事故へ
の備えと対策を見直すきっかけとなりました。それらの事故を踏まえ、
石油連盟は、
1992年度から流出油拡散・漂流予測モデルの開発
に着手しました。
これまでの間、
予測対象海域の拡大、
流出油の経時
大規模油流出事故の対応体制や技術は各地域で発展を遂げています。
変化データの追加、世界測地系への変更など、精度および利便性の
14年は、
「油流出対応の体制と技術−近年の大規模事故を踏まえた進
向上を目的に改良を重ねてきました。予測モデルは、石油連盟油濁
展」
をテーマに、
世界各国の経験豊かな専門家を招聘しました。
対策のホームページから誰でもダウンロードして使用することがで
きます。
②油濁防除資機材輸送に関する調査
●石油連盟油濁対策のホームページ
わが国沿岸海域で発生する大規模油濁事故に対しては、
国内に設
石油連盟の保有する資機材および貸し出し手続き情報、訓練情報、調査
置された油濁防除資機材基地から事故地点に近い港湾まで、
備蓄し
研究情報、国際会議等の最新情報を油濁対策のホームページに掲載して
います。
ている資機材を迅速に輸送することが重要です。
http://www.pcs.gr.jp
石油連盟では、
96年度に油濁防除資機材輸送に関する調査を実施
し、
資機材基地から主要な港湾への輸送経路と所要時間を整理しま
したが、
最近の実態に合わせ既存の経路情報を最新の道路網情報に
基づき全面的に更新し、
有用性をより高めました。
③衛星画像を用いた海上流出油自動認識システムの開発
石油連盟は、
2011年に海上流出油自動認識システムの開発を行
いました。本システムは、
効果的かつ効率的な海上流出油防除体制を
48
石油精製部門の環境対策
して利用されます。硫黄化合物は硫黄回収装置で処理し、
硫黄を回収
さまざまな環境対策
します。回収しきれなかった少量の硫黄化合物は、
テールガス処理装
置で処理しています。
わが国の石油産業はクリーンな製油所を目指し、
大気、
水質、
騒音、
■窒素酸化物
(NOx)
対策
廃棄物、
緑化対策などに努力しています。
また、
石油製品の使用に伴う環境負荷を低減するため、
環境に配慮
製油所のボイラーや加熱炉から発生するNOxを削減するため、
低
した製品の供給を進めています。世界で初めて達成した全面無鉛化
NOxバーナー、二段燃焼など燃焼方法の改善に努めるとともに、排
ガソリンや軽油などがその例です。
煙中の窒素酸化物を排煙脱硝装置で除去しています。
■ばいじん対策
さらに、石油産業は、製油所、油槽所における環境対策をより適切
製油所では、
自家燃料として各装置から副生される石油ガスを可
に実施するため、
環境管理体制の充実を図ってきました。
その代表的な例として、1996年9月に発効したISO(国際標準化
能な限り利用しているため、
ばいじんの排出量は非常に少なくなって
機構)
の環境管理システム
(同年10月、
JIS
(日本工業規格)
として制定)
います。流動接触分解装置
(FCC)
、
石炭や重油を燃料とする大型ボイ
の取得があります。
ラーなどにはサイクロン、
電気集塵機を直列二段に設置する等、
ばい
じんの排出防止に努めています。
石油各社は、
国際規格
「ISO14001」
の認証取得および同等の環境
■揮発性有機化合物
(VOC)
対策
管理システムの構築に取り組んでいますが、
この認証を取得すること
VOCは、
蒸発して大気中に放出されると、SPM(浮遊粒子状物質)
により環境改善活動が組織的に着実に実行される体制にあること
や光化学オキシダントに変化するといわれています。製油所では主に
が、
国際的に認められたことになります。
貯蔵タンクや出荷設備から発生します。
大気汚染対策
このため、
原油タンクやガソリンタンクなどは炭化水素ベーパーの
蒸発を抑制するため、
密閉構造のフローティングルーフ式あるいはイ
■硫黄酸化物
(SOx)
対策
製油所では、
ボイラーや加熱炉などの燃料
(自家燃料)
として硫黄
ンナーフローティングルーフ式となっています。また、
タンク車、
タン
分の少ない精製ガス
(オフガス)
や低硫黄重油を使用し、SOxの排出
クローリー、
船出荷時に発生する炭化水素ベーパーは、
ベーパー回収
低減を図っています。また、排煙中の硫黄化合物を排煙脱硫装置で
装置により回収されています。
石油連盟では2010年度までに2000年度比30%削減を目標とした自
回収しています。
重油脱硫装置や灯油・軽油・潤滑油水素化精製装置など製品の
主行動計画を策定し、VOC排出抑制に取り組んでまいりました。2010
硫黄分を低減する装置から発生するガスは、
多量の硫化水素を含ん
年度の排出量は2000年度比31%の削減となり、その後も取り組みを継
でいるため、
ガス洗浄装置で硫黄化合物を取り除いた後、
自家燃料と
続し、2012年度の排出量は2000年度比36%の削減となりました。
内は装置基数
■重油脱硫装置能力の推移
(各年度末現在) 単位:千バレル/日 ( )
出所:石油連盟
1,441
(44) 1,387
(41)
1,509
(43) 1,447 1,447 1,448 1,451 1,460 1,460 1,449 1,449
(40)(40)(40)(40)(40)(40)(39)(39)
1,358
862
(29)
化学物質による環境汚染対策は、
少数の個別物質
による比較的高濃度の汚染に起因する健康問題を中
直接脱硫装置
1,267 (40)
1,200
(40)
(37) 459
616 548 548 548 550 550 550 550 550
(12) 459
(16)(14)(14)(14)(14)(14)(14)(14)(14)
500
(12) 415
289
(14)
(12)
(7)
有害化学物質対策
心に進められてきましたが、大気汚染防止法の改正
によって、1997年4月よりベンゼンなどの有害化学
物質が法規制の対象とされました。
石油産業は、
ベンゼン排出抑制対策を進めるため、
194
(5)
96年10月
「有害大気汚染物質に関する自主管理計
668
(24)
間接脱硫装置
982 928
911
899 899 900 901 910 910 899 899
(32)(29) 852 858 893
(30)
(28)(26)(27)(26)(26)(26)(26)(26)(26)(25)(25)
画」
を策定
(2001年7月に改定)
し、
ガソリン中のベン
ゼン含有量を2000年から1%以下とするなど品質面
での所要の対策を実施する一方、VOC対策を進め
ることにおいて排出面からの対策も行っています。
1973 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年度末
49
また、99年7月には
「特定化学物質の環境への排
石 油 精 製 部 門 の 環境対策
出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」
(PRTR法※)
が
しています。石油各社は、
タンクを防音壁として活用するなど製油所
公布され、
これに対応して石油産業では特定化学物質の環境への排
レイアウトの工夫や低音バーナーの設置、
吸音材の取り付け、
遮音壁
出量、
移動量の把握報告を行っています。
の設置など、
最適な騒音対策を行っています。
※PRTR:PollutantReleaseandTransferRegister
(化学物質排出移動量届出制度)
■産業廃棄物対策
製油所では、
廃油、
汚泥、
廃酸、
廃アルカリや電気集塵機の捕集ダス
水質保全、産業廃棄物対策など
トなどの廃棄物が発生します。
石油各社は、
廃油は再精製し、
汚泥、
捕集ダストはセメントなどの原
■水質保全
材料用に、
廃アルカリは水硫化ソーダにするなど可能な限り廃棄物を
製油所では、冷却用として多量の水を使用していますが、冷却水は石油
と直接接触しない間接冷却水となっています。工業用水は、循環再利用に
再資源化し、再資源化できないものは適切に廃棄処分しています。
より、使用量および排水量を低減し、海水を利用している場合は、万が一
2012年度の最終処分量は0.1万トンとなり、2000年度に比べ約
にも油分が環境中に排出されないように厳しいチェックを行っています。
97%の大幅な減量を行いました。
■緑化対策
さらに、プロセス上生じた排水はオイルセパレーターで排水から
油分を回収し、
凝集剤による化学処理、
活性汚泥、
活性炭処理など高
石油各社は、事業所内とその周辺の緑化に努めています。製油所
度の排水処理装置によって処理された後、
ガードベースン
(最終排
では敷地面積の約10%を緑地とし、
樹木や芝生を植え地域環境に配
水口の前にある貯留池)
を経てクリーンな水にして排出しています。
慮しています。製油所の緑地面積の割合は、一般の製造業に比べて
■騒音対策
高い水準となっています。
製油所では、
生産・出荷段階および動力設備から種々の音が発生
■VOC排出量の推移
7
6.14
6
5
5.65 5.49
5.35
4.93
単位:万t /年
目標:30%削減
実績:31%削減
(目標達成)
(2000年度比)
4.61
4.40 4.26
4.19
3.92
単位:万t
14
12
10
最終処分量
4
■製油所の廃棄物最終処分量の推移
8
3
6
2
1
4
0 2000 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
年度
(注)
:石油連盟「VOC排出抑制自主行動計画」
目 標: 2010年度の排出量を2000年度比で30%削減
(達成済み)
対 象: 原油、
ナフサ、
ガソリンの貯蔵、出荷に係わるVOC排出量
主な対策: 製油所ローリー出荷設備へのベーパー回収装置の設置
固定屋根式タンクの内部浮屋根式タンクへの改造
出所:石油連盟「VOC排出抑制自主行動計画」
2
0.1万t
0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
年度
出所:石油連盟「地球環境保全自主行動計画」
■わが国の環境規制と石油業界の設備投資額
設備投資
重油脱硫 約5,500億円
ガソリン無鉛化 約3,000億円
軽油低硫黄化 約2,000億円
ガソリン・軽油の低硫黄化等 約3,000億円(試算)
ベンゼン低減化 約1,400億円
1970
1980
1990
2000
ディーゼル排ガス規制
四日市公害訴訟判決
環境規制
( 短期…1993年
)
長期…1997∼1999年
(1967∼1972年)
自動車排ガス規制
ベンゼン環境基準設定
(1978年)
(1996年∼2000年)
環境庁設置
軽油の低硫黄化
(2007年)
(10ppm)
ガソリンの低硫黄化
ガソリンの超低硫黄化
(2004年末)
(50ppm)
(2008年)
(10ppm)
新長期排ガス規制
(ガソリン、ディーゼル…2005年)
(2001年)
50
軽油の超低硫黄化
(2004年末)
(50ppm)
環境省設置
(1971年)
2010
出所:石油連盟
自動車燃料等の品質向上に向けて
燃料品質改善への取り組み
揮発油等の品質の確保等に関する法律
(品確法)
■ガソリン、軽油の品質改善
1996年4月に石油製品の輸入が自由化されました。このため、
す
1970年代のモータリゼーションの急激な進展により都市型の大
でに世界的に高水準であったわが国のガソリン、
灯油、
軽油の品質を
気汚染問題が発生したため、
石油産業は燃料側からの対策を推進し
維持するために、従来の
「揮発油販売業法」
は
「揮発油等の品質の確
てきました。
保等に関する法律」
(品確法)
に改正されて、
環境・安全面からの法的
四アルキル鉛は、
ガソリンのオクタン価を高めるために使用されて
規制として品質基準
(強制規格)
が設定され、
石油精製業者や販売業
いましたが、
レギュラーガソリンについては75年2月から、
プレミアムガ
者にそれらの維持義務が課されました。
また、
強制規格以外に性能面
ソリンについては86年12月から世界に先駆けて使用を中止しました。
の項目も加えて標準的な品質を満たしていることを示す品質表示制
度として、SQマークが導入されました。
90年代以降は自動車の排ガス浄化装置の高度化に対応し、
これら
当初、強制規格は、
ガソリンについて8項目、軽油について3項目、
の能力を低下させないためにガソリン、
軽油の硫黄分の低減を進め、
灯油について3項目でしたが、
以降必要に応じて追加されています。
05年1月からは品質規制に先駆けて自主的にサルファーフリー(硫
石油製品の輸入自由化以降、
さまざまな輸入業者が新規参入する
黄分10ppm以下)
としました。
この他、有害化学物質であるベンゼン低減のために、
ガソリン中
中で、
当初想定されていなかったため規制対象となっていなかった高
のベンゼン含有量を品質規制に対応して2000年1月から1%以下
濃度アルコール含有燃料
(全体の50%以上をアルコール分が占め
に低減しました。また、
光化学スモッグの原因となる大気中の炭化水
る)
がガソリン自動車用の燃料として販売され、
エンジン発火等の事
素を削減するため、01年から夏期のガソリンの蒸気圧低減に自主
故が発生しました。
このため、
経済産業省は2003年8月、
アルコール
的に取り組み、05年以降は夏期のガソリン蒸気圧を65kPa以下と
混合燃料についても品確法の対象とし、酸素分1.3%以下、
エタノー
しています。
ル3%以下の2項目をガソリンの強制規格に追加し、
一般のガソリン自
■灯油の低硫黄化
動車用として高濃度アルコール含有燃料を販売することを禁止しま
した。
暖房用の灯油は、
室内で燃焼させても支障がないように硫黄分は
近年、
バイオ燃料の実証的な取り組みが各地で行われていること
0.008%(80ppm)
以下となっています。これは世界でもトップクラ
から、07年3月末には、
バイオディーゼル燃料の利用環境整備の一
スの水準です。
環として、
軽油の強制規格に脂肪酸メチルエステル
(FAME)、
トリグ
リセリド他4項目が 追 加されました。また09年2月、エタノー ル、
■品質表示制度
(SQマーク)
Quality certification system
ETBE等を揮発油
(ガソリン)
等へ混和する事業者の登録制度・品質
確認制度が創設されました。
品質のうち、
「性能」面については、
強制規格項目を設けず、
標準的な品
質を満たしている製 品 については、販 売 業 者が
「SQ(Standard
Quality)
マーク」
を表示できることになっている。対象はガソリン
(レギュ
ラー、
ハイオク)
、
軽油、
灯油。
このように、今後も燃料の適正な品質が維持されるように品確法
を適宜改正する等の対応が必要です。
■品確法強制規格
(2014年4月現在)
ガソリン
現行の規格
鉛
硫黄分
MTBE
ベンゼン
灯油混入
メタノール
実在ガム
色
※1
酸素分
エタノール※1
規格値
検出されない
0.001質量%以下
7体積%以下
1体積%以下
4体積%以下
検出されない
5mg/100ml以下
オレンジ色
1.3質量%以下
軽 油
現行の規格
セタン指数
硫黄分
蒸留性状
トリグリセリド
※2
脂肪酸メチルエステル
(FAME)
灯 油
規格値
45以上
0.001質量%以下
90%留出温度360℃以下
0.01質量%以下
0.1質量%以下
現行の規格
硫黄分
引火点
色
規格値
0.008質量%以下
40℃以上
セーボルト色+25以上
※2 上記は現在日本で一般的なFAMEを混合しない軽油の場合。
FAMEの混合は品確法強制規格として0.1質量%超5.0質量%以下として認められており、
その場合、
メタノール
(0.01質量%以下)
、
酸価
(0.13mgKOH/g以下)
、
ぎ酸・酢酸・プロピオン酸
(合計0.003質量%以下)
、
酸化安定性
(規定の試験法で酸化安定度65分以上または酸価の増加0.12mgKOH/g以下)
の規定がある。
3体積%以下
※1 E10対応自動車として道路運送車両法の登録または車両番号
の指定を受けている自動車用のガソリンについては、酸素分は
「3.7質量%以下」
、エタノールは
「10体積%以下」
として認めら
れている。
51
自 動 車 燃 料 等 の 品 質 向 上 に向けて
そのため、
石油業界は、
ガソリン・軽油のサルファーフリー化の早期
ガソリン・軽油のサルファーフリー化について
実現に向けて、
約3,000億円を投じて新技術の研究開発や脱硫設備の
ディーゼル車などから排出される窒素酸化物
(NOx)
やすす・粉
新設・改造等を推進してきました。その結果、04年9月、
石油連盟は
塵などの粒子状物質
(PM)
による大気環境の悪化が大きな社会的
「05年1月より、
世界に先駆けてサルファーフリーガソリン・軽油を全
問題となったため、1989年にディーゼルトラックやバスから排出さ
国に向けて供給開始する」
ことを決定・公表し、
大気汚染対策に先進
れるNOx、PMを短・長期的に削減していく排ガス規制の強化が打
的な取り組みを進める東京都を訪問して石原知事と会談しました。
ち出されました。ディーゼル車に導入された排気浄化システム
石油業界としては、環境対策の推進のため、大気汚染対策と地球
(EGR・酸化触媒など)
を円滑に機能させるため、石油業界は、それ
に大いに貢献するサルファーフリーガソリン・
温暖化対策
(CO2削減)
まで0.5%(5,000ppm)以 下 で あった 硫 黄 分 を92年 から0.2%
軽油の効果が最大限発揮されるよう直噴エンジン、
高性能排ガス処
(2,000ppm)以下、97年10月から0.05%(500ppm)以下まで
理装置のより一層の普及促進を期待しています。
低減、高性能の
「軽油深度脱硫装置」
を新設するなど約2,000億円
の設備投資を行いました。その後更なるPMの軽減のため、2007
年から05年に実施が前倒しされた新長期規制によってDPF(ディー
ゼル微粒子除去装置)
等の後処理装置の導入が必要となった結果、
2000年11月、04年末までに硫黄分を0.005%(50ppm)
以下と
する規制が設けられました。また、東京都は99年8月から都独自に
■わが国の ガソリン 中に含まれる硫黄分の現状
「ディーゼル車NO作戦」
を展開し、05年からの国の規制に先駆け
100
て、03年10月より、
自動車メーカーに対し新たなPM対策を採用し
単位:ppm
100ppm
わが国の規制
たディーゼル車の市場投入と、東京都の排ガス規制によって使用過
石油業界の
自主的取り組み
程車に対するDPFの装着を義務付けました。
そこで、
石油業界は、
ディーゼル車の排出ガス低減対策の緊急性お
50ppm
50
よび社会的要請に鑑み、03年10月から硫黄分0.005%(50ppm)
3年前倒し
以下の低硫黄軽油を部分供給することを決定しました。
しかしなが
ら、
大阪府、
愛知県などの地方自治体や軽油ユーザー(トラック、
バス
10ppm
10
業界など)
からの早期供給の強い要請があり、
また、東京都からは環
0
境確保条例の円滑な実施のため4月から前倒し供給することや全国
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009年
2005年1月∼(全国供給開始)
供給についても要請がありました。
これを受けて、
設備投資の前倒し
実施などによる努力の結果、国の規制
(04年末)
より1年9 ヵ月早い
■わが国の 軽油 中に含まれる硫黄分の現状
03年4月から50ppm軽油の全国供給を自主的に開始しました。
500
更なる低硫黄化については、環境基本計画
(02年1月、東京都)
で
単位:ppm
500ppm
わが国の規制
「 遅くとも2008年までにガソリン・軽 油 中 の 硫 黄 分を0.001%
400
(10ppm)
以下に低減することを求める」
とされ、03年6月の石油製
300
品品質小委員会でも
「ガソリンについては08年、軽油については07
石油業界の
自主的取り組み
21ヵ月
前倒し
50ppm
年よりサルファーフリーとすることが適当」
とする答申が示されまし
50ppm
50
2年
前倒し
た。ガソリン、
軽油中の硫黄分を10ppm以下とするサルファーフリー
化は、
大気汚染対策としての自動車排ガスのクリーン化に効果がある
10
だけでなく、
サルファーフリーの特性を活用した排ガス処理装置を装
0
備すればエンジンの燃費性能を最大限引き出して燃費の向上に効果
10ppm
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2005年1月∼(全国供給開始)
を発揮し、
地球温暖化対策としてのCO2削減につながります。
52
2008
2009年
地球温暖化問題と石油
地球温暖化問題の国際的動向
地球温暖化を巡る国内動向
■温室効果ガス排出量の推移
国際的な地球温暖化対策は、
大気中の温室効果ガス濃度を安定化
させ、
現在および将来の気候を保護することを目的とする
「国連気候
12年度のわが国の温室効果ガス排出量
(速報値)
は、景気回復お
変動枠組条約」
の枠組みを中心に議論が行われています。
よび東日本大震災を契機とした火力発電比率の増加により、京都議
1997年に同条約に基づき採択された京都議定書は、
08年から12
定書第1約束期間の基準年
(90年度)
と比べ6.
3%増加となりまし
年までを第1約束期間として、
日米欧等の先進国に対し温室効果ガス
た。京都議定書第1約束期間
(08年度から12年度)
の平均では基準
の削減義務を課しましたが、
米国の不参加決定
(01年)、
中国やインド
年比1.
4%増加となります。
等途上国の排出量増加により、
第1約束期間参加国のカバー率は約4
他方、
間伐の実施等による森林吸収源対策や、
京都メカニズムクレ
分の1にまで低下しました。
ジット
(政府および民間分)
を考慮すると、
12年度の排出量は基準年
13年以降の国際枠組みについては、
20年を目標年次として、
欧州
比4.
6%減少、
第1約束期間の平均でも同8.
2%減少となり、
わが国の
を中心とした京都議定書第2約束期間
(13年から20年)
と、
世界全体
第1約束期間の目標である基準年比6%減少を達成する見通しです。
の排出量の8割以上
(11年実績)
をカバーするカンクン合意※1に基づ
12年度のエネルギー起源CO2排出量
(速報値)
を部門別に見た場
き、それぞれ取り組みが進められていきます。わが国は、
すべての主
合、
産業部門は90年度より10%以上排出量を減少させた一方、
業務
要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築に向
その他部門や家庭部門は90年度より50%以上排出量を増加させて
けた取り組みに資さないとの立場から、
京都議定書第2約束期間には
います。
参加しないことをCOP※216
(10年12月)
にて表明しています。
■産業界の取り組み
今後は、
20年までの取り組み内容の強化とともに、全ての主要排
日本経団連を中心とした産業界は、
97年に、京都議定書第1約束
出国が参加する20年以降の法的枠組みの発行に向けた議論が15年
期間の対策として、経団連自主行動計画を策定しました。各業種が
末のCOP21に向け進められていく予定です。
自らの特性に応じて原単位やCO2排出量等の目標を設定し、
その達
※1先進国には削減目標
(数値)
を、途上国には緩和行動
(数値目標や削減計画な
ど)
を求める。先進国の目標未達時に関する罰則規定はない
※2COP…気候変動枠組条約締約国会議
(ConferenceOftheParties)
成を社会的公約と捉え、進捗状況を毎年度フォローアップする取り
組みです。このような産業界の主体的取り組みは、政府が京都議定
書第1約束期間の目標達成に向け策定した計画において
「産業界に
おける対策の中心的役割を果たしている」
と位置付けられるなど、
着
実な成果を上げました。
■世界のCO2排出量と京都議定書・カンクン合意のカバー率
京都議定書
削減義務対象国
59%
米国
24%
中国
14%
227億トン
41%
未提出国
その他
16.2%
EU
17%
1997年
(京都議定書採択時)
世界全体
14.8%
第2約束期間参加国
日本 5%
その他
12%
その他
10.2%
インド
5.6%
豪州 1.3%
その他 2.2%※1
ニュージーランド 0.1%
日本 3.8%
ロシア 5.3%
2011年
世界全体
313億トン
米国
16.9%
22.9%※2
第1約束期間参加国
※1 ウクライナ、
ノルウェー、
スイス、
クロア
チア、
アイスランド、
ベラルーシ、
リヒテ
ンシュタイン、
モナコ、
カザフスタン
中国
25.5%
その他
24%
カナダ 1.7%
インド
4%
①米国は議定書を批准せず
②カナダは議定書を脱退
③中国等途上国の排出量増加
EU
11.3%
83.8%
カンクン合意による削減目標・緩和行動提出国
※2 第1約束期間に参加せず第2約束
期間に参加している国がある
(カザフ
スタン等)
※3 四捨五入の関係により合計が一致
しない場合がある
出所:IEA CO2 Emissions from Fuel Combustion 2013
53
地 球 温 暖 化 問 題と石油
■わが国の温室効果ガス排出量の推移
■わが国の部門別エネルギー起源CO2排出量の推移
森林吸収源・京都メカニズムクレジット
(政府分・民間分)
を考慮した場合
年度
1990年
(基準年)
500
12.61
±0.0%
450
単位:百万tCO2
482百万t
産業部門
製造業
(工場)
、農林水産業、鉱業、建設業
12.82
+1.6%
11.52
▲8.7%
2008年
排出量
上段:排出量
下段:基準年比
431百万t
(基準年比▲10.7%)
400
350
2009年
平 均
▲8.2%
11.33
▲10.2%
2010年
12.57
▲0.3%
12.11
▲4.0%
13.08
+3.7%
2012年
(速報)
12.03
▲4.6%
13.41
+6.3%
京都議定書
第1約束
期間目標
7
8
9
10
11
業務その他部門
203百万t
(基準年比+59.5%)
150
家庭部門
127百万t
100
家庭における燃料・電力の使用(自家用自動車は除く)
68百万t
発電所・製油所等
0 1990
13
温室効果ガス排出量
(億トン)
14
年度
15
94
98
02
(注)
:発電および熱発生に伴うCO2排出量を
各最終消費部門に配分した排出量
出所:環境省
86.3百万t
(基準年比+27.1%)
エネルギー転換部門
50
12
259百万t
(基準年比+57.9%)
227百万t
(基準年比+4.5%)
事務所、ビル、サービス業等
217百万t
164百万t
11.86
▲6.0%
6
自動車
(自家用車を含む)
、船舶、航空機、鉄道
250
1.4
200
2011年
運輸部門
300
平均+ %
12.07
▲4.3%
10.88
▲13.8%
10
06
2012
(速報)
出所:環境省・経済産業省
■製油所における省エネ対策
こうした経験を踏まえ、経団連および主要産業界は、
2009年12
月、
自主行動計画に続く取り組みとして
「低炭素社会実行計画」
を公
製油所では広い範囲で省エネルギー対策を実施しており、
製油所
表しました。石油業界も、製油所の省エネルギー対策を中心とした
における省エネルギーはこれら多数の個別対策の積み上げとして成
「石油業界の低炭素社会実行計画」
を策定しています。
り立っています。
地球環境の保全や循環型社会形成、
わが国経済社会の持続的発
その対策内容は、
装置間の相互熱利用拡大や廃熱・廃エネルギー
展に積極的に貢献することを基本理念して、石油の高度利用かつ有
の回収、
最新の制御技術・最適化技術の導入による運転管理の高度
効利用、持続可能な再生エネルギー導入などに取り組むことで、低
化、
高効率装置や触媒の採用、
設備の適切な維持管理等、
多岐に亘り
炭素社会の形成に取り組んでいきます。
ます。以下に一例を示します。
■製油所における省エネ対策の例
石油業界の取り組み
省エネ対策例
塔槽および配管の保温・保冷の徹底
加熱炉の効率改善
各種熱交換器の設置・洗浄
フレアーガスの回収
加熱炉の空気量低減
精製装置間の相互熱利用
プロセスタービン設置(圧力エネルギーの回収)
ポンプの容量最適化
(インペラーカッ
ト)
コンピューター制御の推進
運転管理値の見直し
モーター化、
コンプレッサー改良等、
動力系の効率改善
高効率機器の導入
スチームトラップの管理強化、
蒸気使用量の削減
ボイラー空気量低減
コージェネレーションの導入
■
「石油業界の地球環境保全自主行動計画」
石油連盟では、
経団連の呼びかけに応え、97年2月に
「石油業界の
地球環境保全自主行動計画」
を策定し、2012年度まで
「製油所エネ
ルギー消費原単位」
の改善の数値目標達成に取り組んできました。
製油所の省エネルギーの指標である
「製油所エネルギー消費原単
位」
は、
熱回収の高度化、
設備の効率化・最適化等の推進により、
年々
改善されたことから、07年10月には、取り組みの進捗状況と今後の
石油需要の減少による影響等を踏まえ、
目標値を90年度比10%から
13%改善へ上方修正を行いました。12年度には90年度比15%改善
され、
その結果08年度~ 12年度平均でも90年度比15%改善となり、
新しい目標
(90年度比13%改善)
を達成しました。
54
これらの取り組みは、
(一財)
省エネルギーセンター実施の
「省エ
これら地道な省エネ努力の積み重ねにより、
日本の製油所は世界
ネルギー優秀事例全国大会」
(2008年度まで実施)、
「省エネ大賞
でも最先端の効率を達成しています。
(組織部門)
」
において、
各社の製油所が次の通り受賞し、
評価されて
■CO2対策としてのサルファーフリー自動車燃料
います。
■省エネルギー優秀事例全国大会・
省エネ大賞
(組織部門)
受賞状況
サルファーフリー(硫黄分10ppm以下)
のガソリン・軽油は、大
気汚染対策としてのNOx・PM排出量の削減に貢献するだけでな
省エネルギー
優秀事例
省エネ大賞 省エネ大賞
全国大会
(09年度
(11年度
(90年~08年度 受賞件数) 受賞件数)
合計受賞件数)
経済産業大臣賞
5件
1件
—
資源エネルギー長官賞
12件
1件
—
経済産業局長賞
29件
—
—
省エネルギーセンター
会長賞
20件
—
1件
審査委員会特別賞
—
—
1件
く、燃費向上に役立つためCO2排出削減効果も期待でき、温暖化対
策としても有効です。石油業界では、国の規制に先立ち、05年1月
からサルファーフリー自動車燃料の全国供給を開始しました。
■技術開発や国際協力の推進
温暖化対策は、技術開発によるブレークスルーが重要です。石油
各社も、環境負荷の小さい燃料電池や水素SSの実証等、未来技術
の開発を進めています。また、石油各社は、地球規模での温室効果
ガス削減、途上国への技術協力推進等の観点から、海外プロジェク
政府が行っている省エネルギーに関する補助支援事業を積極的
トや各種炭素基金への参画など、国際的取り組みも推進していま
に活用し、先進的技術を導入して省エネルギー対策に努めていま
す。特に、CDM(クリーン開発メカニズム)
については、石油連盟
す。また、複数の製油所が、隣接する工場群
(石油コンビナート)
の高
会員の4社5件のプロジェクトが日本政府承認済みです。
度な一体運営を目指したコンビナート・ルネッサンス
(RING)
事業
※
に参加し、
直接的な省エネルギーに限らず、
原料融通、
副生物の利用
や生産管理面も含めた効率化を図り、プロジェクト全体としてのエ
ネルギー消費削減に取り組んでいます。
■政府支援補助事業、
コンビナートルネッサンス事業に
採択された省エネ技術・対策の例
導入された省エネ技術
1
可変速ガスの圧縮機の導入
2
スチームトラップ排出蒸気回収による排熱回収
3
高性能トレイへの更新による加熱炉使用エネルギーの削減
4
デスーパーヒーター設置によるスチーム回収
5
廃熱ボイラーの設置
6
産業用ヒートポンプシステムを組み込んだ省エネ型プロピレン
精留装置の設置
※石油産業および化学産業に関連する企業が、
単独企業のみでは達成困難なコンビナート域内
の省資源、
省エネルギーの向上を図るため、
石油コンビナート全体の横断的かつ高度な運営機
能の融合を行うための技術開発事業。
55
地 球 温 暖 化 問 題と石油
■石油製品1Sを作るのに必要な
エネルギー消費指数(注1)の比較(2004年度実績)
■1990年以降の製油所の省エネルギー実績
(エネルギー消費原単位の推移)
120
(日本=100として比較)
115
0%
113
高 効 率 ↓
110
100
100
101
製油所エネルギー消費原単位
対1990年度改善率
105
103
5%
目標:13%改善
2008年度∼2012年度平均値
15%改善(目標達成)
10%
95
15%
90
日本
先進アジア諸国 西ヨーロッパ
(注2)
(15ヵ国)
米国・カナダ
20%
Solomon Associates社の調査結果を基に作成
(注)
:1.
同社独自の指標で、
換算通油量を用いており、
自主行動計画で採用している
エネルギー消費原単位と類似した性質を持つ
2.
韓国・シンガポール・マレーシア・タイが対象。中国は含まない
1990 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
年度
【 概要 】石 油 業 界 の 低 炭 素 社 会 実 行 計 画
∼石油の高度・有効利用によるエネルギー安定供給と温暖化対策の両立∼
基 本 方 針
石油業界は、地球環境の保全や循環型社会の形成、わが国経済社会の持続的発展に積極的に貢献することを基本理念として、
①石油の高度利用かつ有効利用、②持続可能な再生可能エネルギーの導入に取り組むことで、低炭素社会の形成を目指すと
ともに、エネルギー政策の「3E」
(安定供給の確保、環境への適合、経済性)の同時達成を追求していく。
2 0 2 0 年度に向けた具体的な取り組み
石油製品の製造段階(製油所)
石油の消費段階
■既存最先端技術の導入や近隣工場との連携推進等により、世界最
高水準のエネルギー効率の維持・向上を目指す
①バイオ燃料の導入
■LCAでの温室効果ガス削減効果、食料との競合問題、供給安定
性、生態系への配慮など持続可能性が確保され、安定的・経済的
な調達が可能なバイオ燃料を導入していく
■エネルギー供給構造高度化法で示された目標量、2017年度に原
油換算50万S※4の着実な導入に向け、政府と協力しつつ持続可能
性や供給安定性を確保しながらETBE方式によるバイオ燃料の利
用を進めていく
■2010年度以降の省エネ対策により、
2020年度において原油換算
53万Sの省エネ対策量を達成する※1,2,3
※1 約140万tCO2に相当 ※2 政府の支援措置が必要な対策を含む
※3 想定を上回る需要変動や品質規制強化など業界の現況が大きく変化した場合、
目標の再検討を視野に入れる。
2015年度には目標水準の中間評価を行う
【省エネ対策】
① 熱の有効利用(高効率熱交換器の導入等)
・・・・・・・・・・・・15万S
② 高度制御・高効率機器の導入(運転条件の最適化等)
・・・・6万S
③ 動力系の効率改善(高効率モーターへの置き換え等)
・・・・9万S
④ プロセスの大規模な改良・高度化(ホットチャージ化等)
・
・23万S
※4 約130万tCO2の貢献
②クリーンディーゼル乗用車普及への働きかけ
③高効率石油機器の普及拡大
■潜熱回収型高効率給湯機
(エコフィール)
の普及拡大に取り組む
石油製品の輸送・供給段階
■物流の更なる効率化(油槽所の共同利用、製品の相互融通推進、
タンクローリー大型化等)
■給油所の照明LED化、太陽光発電設置 等
④石油利用燃料電池の開発普及
■既存の石油供給ネットワークを活用可能な石油利用燃料電池の
普及拡大(LPGなどにより水素を供給)
⑤燃費性能に優れた潤滑油の普及(ガソリン自動車用)
革新的技術開発
国際貢献
■重質油の詳細構造解析と反応シミュレーションモデル等を組み合わ
せた
「ペトロリオミクス技術」開発
■二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)
■世界最高水準のエネルギー効率を達成したわが国石油業界の
知識や経験を、途上国への人的支援や技術交流で活用
56
サルファーフリー軽油の全国供給を実現しました。そしてこの高品質
ディーゼルシフトについて
な燃料を生かした燃費性能に優れるディーゼル車の普及に期待をし
ディーゼル乗用車はガソリン車に比べ燃費が優れ、地球温暖化防
ていました。近年わが国でも関係方面の審議・提言を受けてクリー
止の観点からCO2削減効果が高く、欧州では新車販売台数の約5割
ンディーゼル車が大気環境対策と温暖化対策の両面から再評価さ
をディーゼル乗用車が占めています。欧州の最新のディーゼル車は
れ、
その政策的位置付けは大きく変化しています。
1990年代後半以降の技術革新等によって大幅な性能向上と排ガス
08年1月、
「次世代自動車・燃料イニシアティブ」
の提案を受け、
ク
のクリーン化が進んでいますが、
わが国での販売比率は0.1%という
リーンディーゼル車の本格普及に向けた環境整備を目的として、政
状況です。
これは欧州に比べて厳しい排ガス規制
(NOx規制)
が定め
府、
自治体、
自動車業界、
石油業界が参画する
「クリーンディーゼルに
られていること、
車両価格が高いこと、
イメージが悪いといったことが
関する懇談会」
が設置されました。懇談会ではCO2対策に貢献するク
主な普及の阻害要因となっています。最新のディーゼル車は技術開
リーンディーゼル車の普及、
イメージ改善、
高コストへの対応、
ディー
発の進歩により、
高出力化や排ガスのクリーン化が図られ、
静寂性が
ゼル技術の将来展望のあり方などが検討され、08年6月、
「クリーン
格段に向上しているにもかかわらず、消費者の認知度が極めて低い
ディーゼル普及推進戦略」
および「クリーンディーゼル普及推進方策
というのが現状です。
(戦略詳細版)
」が取りまとめられました。その中で、
クリーンディーゼ
このような状況の中で、2004年9月に経済産業省に
「クリーン
ル車について、改めて運輸部門のCO2排出削減に寄与し、地球温暖
ディーゼル乗用車の普及・将来見通しに関する検討会」
が設置され、
化対策に大きく貢献することなど政策上の意義が確認されるととも
05年4月にまとめられた報告書では、ディーゼル乗用車の普及
に、
イメージ改善戦略や税制優遇措置が講じられました。また、
ディー
(ディーゼルシフト)
は運輸・産業部門のCO2排出量削減に効果的で
ゼルのイメージ改善に向けた情報発信、
地域特性を活かした普及促
あることが明らかになりました。例えば、
ガソリン車に比べて燃焼効率
進策として、
ディーゼルに適した都市構造でディーゼル比率も高く、
が優れたディーゼル車の保有台数比率が全体の10%にまで増加し
環境産業が盛んであるなどの地域特性を持つ北海道では、7月に開
た場合、
その優れた燃費性能によって運輸部門におけるCO2削減効
催された洞爺湖サミットで展示会や試乗会など、
各種イベントが展開
果は200万t-CO2/年と試算されています。さらに、わが国の製油所
されました。
の装置体系や製品生産構成を前提としたシミュレーションをしたとこ
低炭素社会に向けて、
ハイブリッド車、
電気自動車とともに、
短中期
ろ、
ガソリンの製造時に排出されるCO2の方が軽油の製造時に排出
的な自動車の環境対応策として中心に位置付けられているクリーン
される量よりも多いため、
軽油需要の10%(400万S)
分がガソリン
ディーゼル車は、
サルファーフリー軽油の供給という環境整備はすで
から軽油へシフトした場合は、製油所におけるCO2削減効果は170
に整っており、CO2削減効果の観点から、その市場創出・普及拡大
万t-CO2/年にも上ることが明らかになりました。
また、05年4月に閣
が重要です。次世代自動車として税制優遇も措置されていますが、
今
議決定した京都議定書目標達成計画において、
「…将来、
ガソリン乗
後も、
政府、
自治体、
自動車業界との連携のもと、
本格普及に期待して
用車と遜色のない排出ガス性能を有するクリーンなディーゼル乗用
います。
車が開発される場合に、
その普及について検討する」
こととされてい
ます。
07年2月には、
改定されたエネルギー基本計画において、
ディーゼ
ルシフトは運輸部門における省エネ対策のひとつとして明確に表記
され、
わが国の運輸部門におけるCO2対策として注目を集めていま
す。そうした中で、5月には
「次世代自動車・燃料イニシアティブ」
が
取りまとめられ、
地球温暖化とエネルギーセキュリティ、
さらには国際
競争力強化の観点から、
最新の排ガス規制を満たしたクリーンディー
ゼル車の早期本格導入を目指すことが提言されました。
石油業界は、
かねてから自動車の排ガス処理能力を向上させるた
め、
約3,000億円の設備投資を行い、05年1月には、
世界に先駆けて
57
地 球 温 暖 化 問 題と石油
■ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの燃費比較
高速燃費
(R/100km)
MB-Eクラス
E240
(AT)
■ディーゼルシフトによるCO2削減効果(試算)
ディーゼルエンジン
ガソリンエンジン
7.8
E270 CDI
(AT)
14.8
5.3 -32%
9.8 -34%
VW-GOLF
6.2
1.8T
(MT)
7.2 -33%
6.6
170万トン-CO2の削減
10.6
4.9 -26%
2.0D
(MT)
(日本自動車研究所試算)
軽油需要の10%(400万S)分がガソリンから軽油へシフトすると、
アベンシス
2.0G
(MT)
200万トン-CO2の削減
②製油所におけるCO 2削減の効果
10.7
4.4 -29%
1.9TDI(MT)
①運輸部門におけるCO2削減の効果
ディーゼル乗用車保有比率が10%アップすると、
市街地燃費
(R/100km)
(石油連盟試算)
7.5 -29%
出所:クリーンディーゼル乗用車の普及・将来見通しに関する検討会
(2005年4月)
■日欧のディーゼル乗用車販売比率の推移
単位:%
クリーンディーゼルに関する懇談会(大臣級会合)
50
(政府、
自治体、
自動車業界、石油業界)
45
検討指示
40
報告
35
30
25
欧州
20
15
10
日本
5
0
1990 91
92
93
94
95
96
97
98
99 2000 01
02
イメージ改善・
普及促進WG
(専門家会合)
新燃料検討WG
(専門家会合)
将来展望WG
(専門家会合)
イメージ改善策、普及
促進策の具体化につ
いて検討
軽油代替新燃料の開
発・導入の促進策の具
体化について検討
クリーンディー ゼ ル
の将来展望について
検討
03 04年
出所:世界自動車統計年報
■クリーンディーゼル車の普及支援策
● クリーンディーゼル乗用車は、省エネルギー・省CO2に資することから、
「低炭素社会づくり行動計画(平成20年7月閣議決定)」にて、次世
代自動車として位置付けられ、その普及促進について政策的に重要な位置付けをしているところ。
● クリーンディーゼルの初期需要の創出に向けては、ガソリン乗用車との価格差、ディーゼル商用車の新規制対応のためのコストアップに対
応するため、導入支援や税制優遇(エコカー減税)などの普及支援策を実施。
<導入補助制度>
<税 制 優 遇 措 置>
①クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(平成24年度:
292億円)
①自動車重量税・自動車取得税の時限的減免措置(新エコカー減税)
環境性能に優れた自動車に対し、
自動車重量税
(平成24年5月1日∼平成27
本格的に市場投入される電気自動車、
プラグインハイブリッド自動車、
クリーンディーゼ
年4月30日)
・自動車取得税
(平成24年4月1日∼平成27年3月31日)
を時限的
に減免する。
ル自動車の導入および充電設備の設置に対する補助を行い、
普及促進を図る。
条 件
(対象者、対象行為、
補助率等)
国
民間団体等
補 助
クリーンディーゼル乗用車
(平成21年排ガス規制適合車)
申請者
補助
(1/2以内等)
自動車重量税… ①新車・新規検査:免税
② 2 回 目 車 検:50%軽減
(1)補助対象車両等
●自 動 車: 電気自動車、
プラグインハイブリッド車、
クリーンディーゼル自
動車
●充 電 設 備
車:非課税
自動車取得税… ③新
④中古車(控除額)
:
(中古車購入時
の取得価額から)
45万円控除
(2)補助率
●自 動 車: 通常車両との価格差の1/2以内
●充 電 設 備: (本体価格の)
1/2以内
58
バイオマス燃料への取り組み
ノールについては、国内生産には耕作地や生産コスト面の限界があ
「バイオガソリン」
の販売
る中で世界的に輸出余力があるのはブラジル一国のみであること、
農作物や木材等を原料とするバイオマス燃料は、
燃焼時に発生す
さらに天候や食料品価格などの影響を受けずに安定供給が可能か
るCO2の排出量が計上されないカーボンニュートラル効果の点か
(供給安定性)、
原料が農産物であるためコストが高く、
熱量がガソリ
ら、地球温暖化対策に効果があるエネルギーとして各国で注目を集
ンに比べて3割程度低いこと
(経済性)
などの課題があります。
めています。わが国においては、
京都議定書目標達成計画
(2005年4
また、
バイオエタノールを直接ガソリンに混合すると、少量の水分
月)
の中で、
輸送用燃料において50万S(原油換算)
のバイオマス由
混入でも油とエタノールの相分離が生じ、
燃料品質の変化
(オクタン
来燃料の導入目標値が定められました。
価の低下)、流通・販売施設や自動車部材の劣化など、安全性を脅
石油業界は、資源エネルギー庁の要請に基づき、06年1月、
この
かすことになります。また、直接混合はガソリン蒸気圧の上昇も引き
計画の実現に協力するため、
「2010年度において原油換算21万S
起こすため、
光化学スモッグの原因となるHC(ハイドロカーボン)
な
(バイオエタノール約36万S)
のバイオエタノールをバイオETBEと
ど有害物質の排出量増加が考えられます。バイオエタノールに関し
してガソリンに配合する」
ことを目指すことを決定しました。
ては、CO2対策ばかりが強調されている面がありますが、その一方
バイオマス燃料の導入に際しては、
「消費者優先」
「安心・安全・公正」
で大気汚染対策をどうするかも忘れてはなりません。
「国産国消」
を基本方針に据え、
責任ある燃料供給者として、
国からの要
一方、
バイオETBE方式はこのような問題が発生することはありま
請およびエネルギー供給構造高度化法
(以下、
高度化法)
に定められた
せん。
また、
従来通り製油所
(生産段階)
でガソリンとバイオETBEを配
導入量を遵守するため、
着実に準備を進めているところです。07年1
合して出荷されるため、
ガソリン税の脱税や粗悪ガソリンが流通する
月には石油連盟加盟各社でバイオETBE等の共同調達を行うための組
こともありません。従って、
石油業界ではバイオエタノールを自動車
合
(JBSL:バイオマス燃料供給有限責任事業組合)
を設立したほか、07
燃料として利用するにあたっては、
消費者の安全・安心を確保するた
年度は関東圏50ヵ所のSSで、08年度は大阪、
宮城を含む100ヵ所の
め、
引き続きバイオETBEとしていく予定です。
SSでバイオガソリン
(バイオETBE配合)
の試験販売を実施しました。バ
イオガソリンの試験販売
(国の補助事業)
は08年度をもって終了し、
石
連加盟各社は
「10年度のバイオETBE84万Sの導入」
を円滑に進める
ため、
本格導入の前年である09年度は20万SのバイオETBEの導入
を開始しました。
さらに、
バイオETBE配合率など適正な情報提供を行うため、
表示ガ
イドラインを策定しました。
これは、石連加盟の元売系列のSSにおい
て、
バイオETBEをガソリンに配合した
「バイオガソリン」
の名称とマー
■バイオガソリン
(バイオETBE配合ガソリン)
表示ガイドラインの概要
クを表示して販売する際の取り扱いを定めたものです。消費者の皆様
に安心してご利用いただけるよう環境整備に努めています。現在
(14
1. 目 的
年2月時点)
は、
約3,360ヵ所のSSでバイオガソリンが販売されており、
石油連盟加盟の元売系列のSSにおいて、
「バイオガソリン」
の名称とマーク
(右下)
を表示して販売する際の取り扱い
を定めたもの
原油換算21万Sの導入を完全達成いたしました。
また、
バイオマス燃料の導入については10年6月に改定されたエ
ネルギー基本計画において
「2020年に全国のガソリンの3%相当以
2.「バイオガソリン」表示ガイドライン
上の導入を目指す」
こととされており、同計画を受け、10年11月に
①バイオETBE配合率は1.0vol%以上
であること
施行された高度化法において、17年度には原油換算50万S(バイ
②最低保証するバイオETBE配合率を
表示すること
オエタノール約82万S)
のバイオエタノールをガソリンに直接、
もし
くはバイオETBEとして混和し、
自動車用燃料として利用することが定
③バイオETBEのバイオ由来性が証明
されていること
められました。
しかしながら、バイオマス燃料として注目されているバイオエタ
59
バ イ オ マ ス 燃 料 へ の 取り組み
■主要国のバイオエタノール自給率
■蒸発ガス(HC)の増加と光化学スモッグの発生プロセス
紫外線
エタノール消費に占めるシェア
︵非燃料用含む︶
100%
光化学スモッグ
(光化学オキシダント)の発生
1%
9%
19%
40%
80%
光化学反応
輸入
国産
60%
HC
(炭化水素)
の増加
99%
40%
100%
91%
100%
97%
81%
60%
20%
0%
SS
3%
米国
米国
EU
EU
ブラジル ブラジル 日本
(2008)(2017)(2008)(2017)(2008)(2017)(2007)
出所:バイオ燃料持続可能性研究会
(2009年4月)
石油業界のバイオ燃料の取り組み(バイオETBEの導入)
バイオガソリンの
販売
バイオETBEの
導入
2007年4月∼2009年3月
試験販売
2007年度 SS:50ヵ所
2017年度
普及拡大(最終)
原油換算21万S
原油換算50万S
[ バイオETBE
] [ バイオETBE
20万 S
] [ バイオETBE
84万 194万
S
S ]
①輸入一次基地
の整備
2008年夏:契約
利用開始
②外航船の調達
2008年夏:契約
運航開始
③内航船の調達
2008年冬:契約
2008年7月
バイオETBEの
供給
2010年度
本格導入開始
流通実証事業(注)
2008年度 SS:100ヵ所
国内インフラの
整備
2009年度
導入拡大
運航開始
2009年9月
ブラジルにて覚書締結。
国産エタノール取引開始
米国会社とETBE購入契約。
(注)
:2007年度から2年間は国の補助事業
(流通実証事業)
として実施した
バイオ燃料の持続可能
な利用の確保に向けた
対応を推進・強化
①LCAの温室効果ガス削減効果(ガソリン比50%以上)
②食料価格への影響(食料競合)
の回避
③生態系への影響の回避
60
ギーとしての供給安定性について、
上記持続可能性基準を満たすバイ
バイオ燃料の持続可能性基準について
オマス燃料が、
現時点でブラジルからの輸入や一部国産の燃料に限定
バイオ燃料に対しては、
当初、
温室効果ガスの排出削減のための有
され、
エネルギーセキュリティの観点からも、
高い自給率を目指すこと
効な手段として大きな期待が寄せられましたが、
最近では食料との競
が必要であること、
③食糧との競合について、
関係省庁が連携し、
原因
合、
生態系等の環境への影響の問題が指摘されています。
こうした現
分析と対処法を検討していくことが必要であること等が示されました。
状を把握するため、石油業界は各国の取り組み・問題点・課題等に
また、
高度化法に基づき導入されるバイオマス燃料の持続可能性基準
関して調査を野村総合研究所に委託し、07年12月、
「バイオ燃料に
も、
同中間報告で示された方向性を踏襲するものとなっています。
ついて」
を取りまとめました。
このように、
バイオマス燃料の持続可能性について、
わが国でも検
また、08年当初より、
食料価格の高騰の原因のひとつとして世界
討が進められておりますが、
諸外国においても同様に検討が進んでい
的なバイオ燃料利用の拡大が指摘されたことから、
バイオ燃料の食
ます。特に欧米において、
バイオマス燃料用の作物の生産のために、
当
料競合問題が大きくクローズアップされました。世界的にバイオ燃料
該土地で従来生産されていた作物などが別の土地で生産されること
利用が拡大する中で、欧米諸国や国連においてもバイオ燃料の利
に伴う土地利用の転換影響としての
「間接的土地利用変化
(ILUC)
」
に
用・開発における食料競合や森林破壊等の環境問題、
ライフサイク
係る研究が進められた結果、
穀物由来
(第一世代)
のバイオマス燃料の
ル全体での温室効果ガスの削減効果など、
持続可能な利用・開発に
GHG削減効果について疑問が呈され、EU及び米国での穀物由来
(第
向けた議論、基準の策定が進められています。こうした動きを受け、
一世代)
のバイオマス燃料に対する導入制限を課すことが検討されて
08年10月より、経済産業省は農林水産省、環境省、内閣府の参加を
います。
また、
穀物由来のバイオマス燃料から、
廃棄物等を原料とする
得て、
「バイオ燃料持続可能性研究会」
を設置、
調査・検討が開始され
次世代バイオマス燃料へのシフトを進めるために、
導入インセンティブ
ました。
ここでは、
わが国でバイオ燃料を導入拡大していくにあたり、
を拡大する動きもみられます。
持続可能性と供給安定性を考慮することが重要との観点から、欧米
無資源国である日本のエネルギー政策は、3E(供給安定性、
環境
諸国の動きや運用方法などを調査し、
バイオ燃料の温室効果ガス削
適合性、
経済性)
の同時達成が基本です。バイオマスを自動車燃料と
減効果、
バイオマスの栽培に伴う土地利用変化、
食料との競合、
供給
して利用するにあたってもそれは例外ではありません。今後バイオ燃
安定性などのあり方といった、
わが国の基準策定の際に備えるべき
料の普及拡大を進めるにあたっては、
「安定供給」
に対する配慮が極
課題について取りまとめがなされています
(
「日本版のバイオ燃料の
めて重要であるとともに、
長期的には、
食料と競合しない草木植物な
持続可能性基準の策定に向けて
(2009年4月)
」
)。
どを原料とする低コストの生産技術の開発が重要です。石油業界は、
その後、
わが国としての具体的な基準策定と運用実施に向けて、7
上記中間取りまとめを踏まえて決められた持続可能性基準を遵守し、
月には
「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」
を
国際情勢の動向や、
研究等も踏まえつつ、
バイオエタノールを食料や
設置、
検討が開始され、10年3月の中間取りまとめにおいて、
①わが
環境にマイナスの影響を与えない範囲で、
再生可能なエネルギーと
国の具体的なバイオマス燃料の持続可能性基準のひとつの方向性と
して有効に活用していきたいと考えています。そのために実現可能
※
して、
「ガソリンのGHG(温室効果ガス)
排出量に比較し、LCA の
性を踏まえた地に足のついた取り組みを今後とも続けてまいります。
GHG削減効果を50%以上」
とすること、②バイオマス燃料のエネル
※LifeCycleAssessment:ライフサイクル全体
(生産・使用・廃棄)
の環境影響
(必要とするエネ
ルギー・素材資源量や発生する環境負荷
(二酸化炭素、
SOx、
NOxなど)
)
を、
評価する手法。
■EUにおけるバイオ燃料政策見直しの動き
(持続可能性基準)
【目的】
EUでは、
土地利用変化による食料
価格の高騰、
GHG排出量の増加
に歯止めをかけるため、
第一世代
(穀物由来)
バイオの使用を制限し、
次世代バイオ燃料へのシフトにつ
いて検討が進められている。
*バイオ燃料用作物の生産によって、
これまで生産
されていた作物が、別の土地で生産されることに
伴って生じる影響のこと
(例:エタノール原料のサトウキビ増産→大豆畑
を転換→大豆畑を開墾→森林伐採)
現 行
改訂後
(2013.9.11欧州議会採決)
第一世代
(穀物由来)
バイオ燃料の制限
な し
2020年 10%目標のうち、
穀物由来燃料比率を6%に制限
サブ目標
な し
次世代バイオ2.5%
次世代バイオへの
インセンティブ
・廃食油、獣脂、残さ物、
次世代バイオ燃料
(廃棄物、残さ物、 非食用セルロースは2倍カウント
非食用セルロース)
は2倍カウント ・藻類、産業廃棄バイオマス、
麦わらなどは4倍カウント
間接的土地利用変化*
(ILUC)
考慮せず
61
考慮する
バ イ オ マ ス 燃 料 へ の 取り組み
■バイオ燃料導入の歴史的な流れ
バイオ燃料
導入の背景
バイオ燃料
バイオエタノール
とうもろこしや小麦などの穀物
農 業 支 援・振 興
1960
960
年代
1990
990
年代
バイオディーゼル
糖蜜
(砂糖原料)
米国を中心とした
とうもろこし産業の
保護・活性化
植物油など
化石資源由来ディーゼル油に
含まれる硫黄分が
原因となって引き起こされる
大気環境汚染の防止
(欧州)
ブラジルの砂糖産業育成
EUによる砂糖制度改革に
伴う農家と砂糖産業の
保護・活性化
原油価格の高騰/気候変動の顕在化
導入加速
エ ネ ル ギ ー・セ キュリ ティ / 気 候 変 動
2000
000
0
年代
2012
年
食糧か、燃料か
第一世代原料作物の限界
第二世代原料作物へ
持続可能性への対応
[持続可能性を構成する論点]
[持続
1. 直接
直接的土地利用変化 2. 間接的土地利用変化
(ILUC)
3. 生態系・生物多様性 4. 水の利用可能性と品質 5. GHG削減効果
6. 大気質の変化 7.
大
ランドラッシュ 8. バイオマスの利用最適化 9. 地域活性化/経済波及効果 10. 食糧との競合
ILUCへの関心の高まり
[ILUCへの関心の高まり]
[ILUC
バ イ オマス の 最 適 な 活 用
2013
年
[バイオ燃料に対する投資]
ILUCに係る研究が進み、
穀物由来
(第一世
IL
代)
バイオ燃料の温室効果ガスの削減効果
代
に疑問が呈され始め、食糧との競合に関する
に
意識の強化が図られている。
意
穀物由来バイオ燃料へのCAP量は、
これまでのバイオ燃料生
産に対する投資を保全する範囲で設定、一方でILUCを含め温
室効果ガス排出量の増加が懸念される穀物由来バイオ燃料へ
の投資を抑制する目的もある。
この動きは、EUにおけるRED及びFQD改正
作業において、穀物由来バイオ燃料の導入
目標量へのCAPの導入に結びついた。
その中で、第二世代/次世代バイオ燃料への移行が求められて
いる。
米国も同様に、RFS2では、
コーンエタノール
の導入目標量にCAPが導入されている。
一方で、欧州では2020年以降、米国では、2023年以降のバイ
オ燃料に対する政策の方向性が示されていないことから、投資
回収に穀物由来でも平均8.5年必要とされる第二世代/次世代
バイオ燃料生産に対する投資が進まない状況にある。
出所:
「欧州と米国のバイオ燃料動向に関する調査」(株)野村総合研究所
■LCAのバイオエタノールの温室効果ガス削減効果
ガソリンよりもCO2排出が少ない←
→ガソリンよりもCO2排出が多い
ブラジル産
サトウキビ
ガソリン
40%
既存農地
ガソリン比60%減
86% ガソリン比14%減
草地からの転換
ガソリン比240%増
340%
森林からの転換
多収量米①
国産
︵参考値︶
70%※
72%
54%
49%
75%
多収量米②
MA米
規格外小麦
余剰てん菜
てん菜
(目的生産)
10%
建設廃材
0
ガソリン比30%減
ガソリン比28%減
ガソリン比46%減
土地利用変化
原料栽培
原料輸送
燃料製造
燃料輸送
ガソリン比51%減
ガソリン比25%減
ガソリン比90%減
67%
廃糖蜜
ガソリン比50%
111% ガソリン比11%増
50
ガソリン比33%減
100
150
g-CO2/MJ
200
(注)
:1. 多収量米①は水管理状況の変化を伴う水田、多収量米②は水管理状況の変化を伴わない水田で栽培した場合の試算結果
2. ガソリンのライフサイクルGHG排出量は81.7gCO2/MJと想定。 3. 地産地消型利用の場合、燃料輸送工程の排出は0となる
出所:バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会-中間とりまとめ
(2010年3月)
62
250
300
石油の有効利用
石油消費段階での有効利用
■環境対応型高効率業務用ボイラーの開発と普及促進
環境省による石油ボイラ−に関する
「小規模燃焼機器の窒素酸化
石油業界では、家庭・業務用
(民生用)
石油消費部門を中心に、地
物排出ガイドライン」
が2000年度より強化されたことを受けて
(株)
球温暖化問題への対応として省エネルギーの推進、
利便性の向上を
石油産業技術研究所と
(一財)
石油エネルギー技術センターが共同
図るため、1993年度より、
石油コージェネレーション、
石油暖房・給
で開発した低NOxバーナーを使い、
A重油焚きで排出ガス中のNOx
湯システムなどの普及方策の検討や地域熱供給システムの提案活
濃度が70ppm以下、
しかも高効率
(熱効率95%)
の環境対応型高効
動を行ってきました。
率ボイラーが開発されました。
石油連盟は、
ボイラーメーカー団体である
(公財)
日本小型貫流ボイ
2011年度に東日本大震災以降の情勢の変化を踏まえ、
地方自治
ラー協会、
日本暖房機器工業会と協力し、
普及促進に努めています。
体に対する災害対応能力に優れた石油機器の避難所等での利用促
進の働きかけ、
消費者目線に立った灯油・石油機器の普及促進活動
を、全国石油商業組合連合会
(全石連)、各県石油商業組合
(県石商)
と連携して展開しています。
■消費者から選ばれる石油エネルギー
石油は、
その手軽さから消費者にとって、
最も馴染みの深い暖房・
給湯用エネルギーとして親しまれてきました。
しかし、世界的な環境
意識の高まり、
原油価格の高騰などを背景に、
より環境にやさしく、
よ
り経済性の高い石油燃焼機器システムの普及が必要となりました。
石油業界は、石油が消費者に信頼され、選択されるエネルギーで
あり続けるため、環境にも家計にもやさしい高効率な石油機器の開
環境対応型高効率業務用ボイラー
発と普及に努めています。
● 環境対応型高効率業務用ボイラーの開発と普及促進
● 高効率家庭用給湯機
「エコフィール」
の開発と普及促進
●「ホット住まいる」
(石油セントラル暖房給湯システム)
の普及促進
● 災害対応能力に優れた石油利用機器の普及促進
■低NOx化を実現
(ppm)
従来機
環境対応型高効率ボイラ
(R)
120
年間燃料消費量(R/年)
300,000
100
50 %の削減
NOx濃度
80
NOx濃度
62.5 %の削減
60
250,000
年間
14,400Rの節約
100,000
130 ppm
65 ppm
120 ppm
〈A重油2.0tボイラ〉
45 ppm
50,000
0
〈灯油2.0tボイラ〉
2.5t/h
2.0t/h
1.5t/h
2,000
273,200 R
258,800 R
年間
1,000
500
2,130 万円
65ppm
60ppm
55∼65ppm
環境対応型高効率ボイラ
(灯油燃料)
45ppm
45ppm
40ppm
35∼45ppm
従来機種
130ppm
130ppm
120ppm
120ppm
2,018 万円
環境対応型高効率ボイラ
〈計算条件〉
●従来品
(ボイラ効率:90%、2tボイラ)
の燃料消費量:136.6R/時
●環境対応型高効率ボイラ
(ボイラ効率:95%、2tボイラ)
の燃料消費量:129.4R/時
●稼働時間:2,000時間
(定格燃焼)●A重油単価:78円/R ●低位発熱量:8,770Z/R
1.0t/h
環境対応型高効率ボイラ
(A重油燃料) 65ppm
112 万円の節約
0
従来機
排ガス中のNOx濃度
換算蒸気発生量
年間燃料代(万円/年)
1,500
200,000
150,000
40
0
(万円)
2,500
排ガス中のNOx濃度
(ppm)
140
20
■経済性
63
石 油 の 有効利用
■
「エコフィール」
の開発と普及促進
■CO2排出量:石油の場合
灯油代が節約でき、
しかも地球温暖化の原因のひとつといわれる
1年間で
197kg-co2
「エコフィー
CO2の排出量も削減できる高効率家庭用石油給湯機
ル」
が開発され、2006年12月に発売されました。
削減
石油連盟は、機器メーカーの団体である
(一社)
日本ガス石油機器
工業会と連携し、
共通名称とロゴマークを設定しました。全国石油商業
1,560kg-co2
組合連合会の協力も得て、
エコフィールの普及促進に努めています。
1,363kg-co2
※CO2排出係数
石油
(石油市場平均)
:2.51kg-CO2/R
出典「温室効果ガス排出係数一覧」
環境省H14年度/H12年度報告書
従来タイプ
杉の木なら1年間で
本分の
14 CO 削減効果
※杉の木1本あたりのCO 2 吸収量は、1
年で平均して約14kgとしている
(「地球
温 暖 化 防 止のための緑の吸 収 源 対
策」環境省/林野庁より試算)
※給湯使用条件
(4人家族想定、入水温度は通年で18℃)
・ふろお湯はり:200R×42℃
・シャワー:12R/分×5分/人×4人 = 240R×40℃
・洗 面:6R/分×2分/人×4人 = 48R×40℃
・台 所:8R/分×3分/回×3回 = 72R×37℃
2
不快な臭いも騒音も低減
燃焼効率の高い比例制御バーナーを採用することで、
温度ムラが
少ない安定した湯温を保ちます。
しかも通常使用領域でON/OFFを
繰返さないため、
運転音と臭いを低減。また、
排気温度が低いのでさ
らに臭いが抑えられます。
排熱を利用することで効率アップを実現
従来は排気とともに空中に放出していた熱エネルギーを再利用す
低いささやき
る、新しいタイプの熱交換器を採用することで、給湯機の熱効率を
20dB
95%にまで高めました。熱効率が高くなることにより、使用する灯油
静かな公園
の量も大幅に節約できます。
従来の石油給湯機
エコフィール給湯機
排熱約200℃
排熱約60℃
1次熱交換器
2次熱交換器
エコフィール
熱効率が大幅にアップ!
普通の会話
83%
95%
1次熱交換器
中和器
200℃
約60℃
約
排水
灯油100
※図は排熱利用のイメージ。実際の構造とは異なる。
湯95 水
80dB
列車の通過するガード下
排気温度が低下!
湯83 水
49dB
60dB
昼間の繁華街
従来までは捨てていた高温の
排気を有効利用。
灯油100
40dB
100dB
(dB:Aレンジ)
■自立防災型エコフィールの開発と普及促進
東日本大震災では広範囲に停電が発生し、電子制御している電
気・ガス・石油の全ての給湯器が使用不能となりました。
こうした経
燃焼効率もよく乾燥した排気で
冬場の白湯気排気も低減。
験を踏まえ、12年4月に停電時も作動する自立防災型エコフィール
が開発されました。高効率給湯器エコフィールの性能に加えて、
停電
時においても標準的な4人家族が約3日間使用する給湯量を賄うこ
灯油の使用量を節約し、CO2の排出量も削減
とができる自立防災型機能を備えた高効率給湯器です。
従来の石油給湯機
(効率83%)
と比較して、
灯油の使用量を12%、
13年度からは国の導入補助制度
(自立防災型高効率給湯器導入
CO2の排出量を12%削減します。
支援補助金)
が創設され、
国もその普及を支援しています。
64
■電気の廃熱・送電ロス
■自立防災型エコフィール
バックアップ
電源ユニット
一次 エ ネ ル ギ ー
通常時
台所
リモコン 浴室リモコン
(BDU-301)
商用電源
(100V)
通信線
内 蔵
バッテリー
発電所
37%
総合エネルギー効率
利用していない
廃熱や送電ロス
電源(100V)
63%
■エネルギー別コスト比較<1kWh当りのエネルギーコスト(税込み)>
<灯油を1とした場合>
灯油
停電時・ピークシフト運転時
バックアップ
電源ユニット
LPガス
台所
リモコン 浴室リモコン
内 蔵
バッテリー
1.86
都市ガス
1.39
電気
(夜間)
1.11
23時∼7時
(BDU-301)
商用電源
停電
1.00
電気
(昼間)
通信線
2.86
7時∼23時
バッテリーからの電源(100v)
電気
(従量電灯)
2.32
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
出所: 石油情報センター、
都市ガス会社全国平均、電力会社全国平均
(2014年2月時点)
■エネルギー別二酸化炭素排出係数<kg-CO2/kWh>
0.244
灯油
■「ホット住まいる」
(石油セントラル暖房給湯システム)の普及促進
0.213
LPガス
住宅性能の向上
(高断熱・高気密)、冷暖房の安全・環境面への
関心が高まる一方、
灯油の給油作業の煩わしさが灯油離れのひとつ
0.180
都市ガス
の要因となっていました。
こうした課題を解決するため、
石油業界は、
0.571
電気
(実排出係数)
)
「ホット住まいる」
(石油セントラル暖房・給湯システム)
の普及促進に
電気
0.487
(CO2クレジット
反映後)
取り組んでいます。
0.0
「ホット住まいる」
は、
灯油のボイラーで作った温水を住居内に供給
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
出所: 環境省、
経済産業省
(平成22年6月温室効果ガス排出量算定・
報告マニュアル Ver. 3.0)
、
2012年度 電気事業連合会資料
することで、
家庭の暖房と給湯を行うシステムで、
室内の空気を汚す
ことのない快適なシステムです。戸建住宅だけではなくマンション、
■灯油は災害対応能力に優れた分散型エネルギー
アパート等の集合住宅でも利用できます。
灯油は、
タンクに貯蔵することのできる分散型エネルギーなので、
また、消費者への親しみやすい広報活動を展開するため、石油連
万が一の災害で電力・都市ガス等のライフラインが寸断された場合
盟は
(一社)
日本ガス石油機器
でも、
使うことのできる災害対応能力に優れたエネルギーです。
工業会と共同で
「ホット住まい
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の成人男女1,000人を
る」
という共通名称と右記の
対象としたアンケート調査でも全体の52%の方が震災直後から使う
ロゴマークを設定しました。
ことができたと回答しています。
■環境にも家計にもやさしい灯油
避難所施設では、
避難住民の暖房機器として石油ストーブが大活躍
私たちの身近なエネルギーには、
灯油のほかガス、
電気など、
さま
しました。
実は電力よりも少な
ざまなものがありますが、
灯油のCO2排出量は、
■震災直後に使用できたエネルギー
いのです。これは電気が発電所から各家庭に届くまでに送電や排熱
灯油は調査対象者全体の52%の方が震災直後から使うことができた。
によるロスが63%も発生するからです。
〔灯油〕52%
60%
CO2排出量が多いと思われている灯油は、実は環境にやさしい
50%
40%
“エコ”
なエネルギーなのです。
52.3
3
20%
スの約7割です。灯油はほかのエネルギーと比べて経済的で家計に
23.5
10%
0%
もやさしいエネルギーです。
65
調査対象者全体(n=1000)
36.9
30%
また、
1kWあたりの灯油価格は、
昼間の電力料金の約3割、
都市ガ
灯油は災害時に最も使用
できたエネルギーである!
9.4
灯油
LPガス
電気
都市ガス
17.2
その他
石 油 の 有効利用
ファルト)
のガス化技術を活用し、
生成される分解ガスを発電用燃料と
また、
病院施設でも石油の自家発電設備等が被災した方々の命を
して利用し、
その際発生する蒸気の複合タービンから効率よく発電す
お守りするのに役立ちました。
るシステムをベースにしています。また、
ガス化の過程で燃料に含ま
東日本大震災後の防災意識の高まりを受けて、
石油連盟は、
「石油
れる硫黄分など不純物を容易に除去することが可能であり、硫黄酸
システム普及に係るアクションプログラム」
(2012年度)
を策定し、
災
化物や窒素酸化物などの大気汚染物質を極限まで低減できます。
害発生時に避難所施設となる小中学校等の公共施設に対する石油
一方、
ガスタービンと蒸気タービンの複合発電によって高い熱効率
機器
(石油暖房機、給湯器、発電機等)
の導入提案を積極的に展開し
(石油火力比▲15%)
を達
(46%)
が可能となり、CO2排出削減効果
ています。
成することができます。わが国では、2003年6月より、石油残渣
(ア
■地方自治体への訪問提案活動
スファルト)
を燃料としたガス化複合発電
(IGCC)
として、
電力卸供給
石油連盟は、
全石連、
各県石商と連携し、
災害に備え避難所施設等
事業の営業運転を開始しています。
の整備を進めている地方自治体に対して、
公共施設への災害対応能
力に優れた灯油利用機器導入を提案するとともに、
灯油の経済性、
灯
また、
石油業界はサウジアラビアとの共同研究によりHS-FCC(高
油機器の安全性・利便性の向上、
石油業界が進めている安定供給維
過酷度流動接触分解)
の開発を進め、03年にはサウジアラビアで、
持のための体制整備等について説明し、
石油に対する自治体関係者
11年には日本国内に装置が建設され、実証化運転が行われていま
の理解促進に努めています。2011年度から活動を開始し、2013
す。
これは重質油を分解し、
ガソリン得率を高めるとともに、
石油化学
年度までの3年間で400以上の自治体を訪問しました。
原料として付加価値の高いプロピレンを効率よく生産する技術です。
プロピレンは、
汎用プラスチックであるポリプロピレンの原料として、
アジアを中心に需要が拡大し続けており、石油精製からの供給増加
が期待されている高付加価値製品です。現在、HS-FCCの商業化に
石油製品の有効利用
向けた検討が行われており、
その進展が期待されています。
石油業界では、
発電用や産業用の基幹エネルギーとして利用され
てきたC重油需要の減少に対処するため、
重油からガソリンなどを生
■IGCCの特性
産する分解設備などの装置を増設してきました。
しかしながら、重油
(注)
:1. BTG=Boiler Turbine Generator
2. 排ガスレベル:NOx、SOxの排出量で比較
需要は今後も漸次減少していくことが見込まれるため、
この抜本的対
IGCC
BTG
(従来の石油火力発電)
発電端効率
46%
39%%
CO2排出量
598g−CO2/kwh
706g−CO2/kwh
排ガスレベル
◎
○
策が求められており、
石油業界としてもC重油を含めた石油残渣の有
効活用を目的とした技術開発に取り組んでいるところです。
中でも、IGCCは石油残渣をクリーンかつ効率的に利用すること
が可能な技術として最も有望な技術であり、
わが国のみならず世界
的にも注目されています。IGCCは、
付加価値の低い石油残渣
(アス
■石油残渣ガス化複合発電(IGCC:Integrated Gasification Combined Cycle)
空気
アスファルト
窒素
空気分離設備
酸素
複合発電設備
蒸気
水素
+
一酸化
炭素
電気
ガスタービン
蒸気
タービン
分解ガス
発電機
空気
蒸気
ガス化設備
ガスタービン排気
66
廃熱ボイラー
技術開発に関する取り組み
■CO2排出量の比較
燃料電池への期待
燃料電池は、
効率が高く、
環境への負荷が少ないため、
家庭や自動
車等への新しいエネルギーの供給形態として期待されています。
従来システム火力発電
+
従来給湯器
CO2
家庭用燃料電池
コージェネレーション
システム
CO2
今後の普及に向けて、
技術開発や実証事業など国を挙げた取り組
みが進められており、
石油業界でも、CO2削減に貢献し、
かつ石油系
燃料を有効に活用できる新しいエネルギーシステムとして、
石油系燃
料電池の開発、
普及への取り組みを進めています。
約30%削減
※CO2排出量、
削減量は家庭によって異なります。
から水素源として適しています。
定置用燃料電池システム
(2)
阪神・淡路大震災や新潟県中越地震でも証明されましたが、
■仕組み
灯油やLPGは災害に強く、
災害時のエネルギー供給システムとして期
定置用燃料電池システムは、灯油やLPGなどから作った水素と空
待できます。
■石油業界の取り組み状況
気中の酸素を利用して発電します。発電と同時に発生する熱は、
温水
として回収し、
キッチンや風呂の給湯として使用することができます。
石油業界では、
長年にわたり、
石油系燃料から水素を製造するため
■特徴
の高度な技術や取り扱いについてのノウハウを蓄積してきました。
こ
のようなノウハウや全国に整った燃料供給インフラを活かし、
一般家
(1)
省エネ……発電と同時に発生する熱も使用できるため、
石油系
庭へLPGや灯油などの石油系燃料を用いた燃料電池システムを設置
燃料のエネルギーを効率よく利用できます。
し、
実証を進めてきました。その結果、2009年には、
家庭用燃料電池
(2)環境にやさしい……石油系燃料を効率よく利用するため、
CO2の排出量を削減できます。
また、
水素と酸素を使った電気化学反
は名称
「エネファーム」
*として一般販売が開始され、石油系燃料とし
応による発電のため、
酸性雨の原因となる窒素酸化物
(NOx)
や硫黄
てまずLPGを用いるものが登場しました。
酸化物
(SOx)
をほとんど発生しません。
*
「エネファーム」
および「ENE・FARM」
は、
登録商標です。
■石油系燃料を用いるメリット
(1)
発電に使用する水素は、LPG、天然ガス、灯油などさまざまな
燃料から作ることができます。中でも、
灯油やLPGなどの石油系燃料
は、
全国に供給インフラが整っており、
また貯蔵や輸送が容易なこと
■定置用燃料電池システムの設置例
発電原理
温水
電気
連系盤
商用電力
燃料
電池
空気(酸素)
貯湯槽
照明
給湯
風呂
(空気)
エアコン
シャワー
貯湯槽
灯油
LPG
システム構成
電流
水素
調理
H+
H+
酸素
水
水素
スタック
熱
直流電力
燃料改質器
制御系
(水素製造装置)
補機類
インバータ
灯油/LPG
冷蔵庫
電極
(水素極)
テレビ
戸建て
電解質
電極
(空気極)
固体高分子形
(PEFC型)
の場合
67
電力
温水
技 術 開 発 に 関 す る 取り組み
●普及基盤整備……規制緩和要望、JIS基準・国際基準の策定、そ
の他各種基準の作成を進めます。
燃料電池車への水素供給
石油業界では、水素と空気中の酸素を反応させて作った電気で
モーターを回して走る、地球にやさしい燃料電池車の普及に向け
て、燃料電池車向けの水素製造技術を開発するとともに、燃料の水
素供給インフラである水素ステーションの実証を進めています。
石油各社は、JHFC/NEDOプロジェクトや水素供給・利用技術
研究組合
(HySUT)
への参加を通じて、
国の実証事業として各種タイ
プの水素ステーションを運用してきました。2011年1月には石油各
社、
自動車各社、
ガス各社の計13社が燃料電池車の15年国内市場
家庭用燃料電池「エネファーム」
(出所:JX日鉱日石エネルギー)
導入と水素供給インフラ整備に向けた声明を共同で出しました。
石油各社は水素供給事業者として、
水素供給インフラの先行整備
■燃料電池の普及に向けて
東日本大震災を機に、
災害時の停電への備えや節電対策に対する
を目指していきます。また、
自動車各社、
ガス各社と共同で燃料電池
社会的な関心やニーズは高まっており、
これらに応えるためにも石油
車の普及拡大、
供給インフラ網整備に取り組むとともに、
これらの実
業界は積極的に燃料電池の普及促進に取り組んでいます。
現に向け、普及支援策や社会受容性向上策等を含む普及戦略につ
●技術開発……従来の固体高分子形
(PEFC型)
を上回る、定格発電
いて官民共同で構築することを政府に要望してまいります。
※
効率45%を実現した固体酸化物形
(SOFC型)
家庭用燃料電池の
また、SSで灯油から水素を製造・供給する設備の技術開発も
販売を2011年10月より開始しました。
行っています。08年度からは、
灯油を原料とする膜型反応分離プロ
引き続き災害に強い石油系燃料の特徴を活かした災害対応型燃料
セスを用いた水素製造技術開発を実施しています。
電池システムの開発を進めています。
●実証試験……技術開発の成果を反映させつつ、
一般家庭や業務用
※
(一財)
石油エネルギー技術センターが実施する将来型燃料高度利用研究開発事業の
一環として実施
施設における石油系燃料を用いる燃料電池システムの実証試験を
積極的に進めています。
■水素供給インフラの
先行整備のイメージ図
高速道路への配備
※導入以降、全国的な
FCV導入拡大と
水素供給インフラの
整備に取組む
4大都市圏への先行配備
東京・杉並水素ステーション
68
②将来のディーゼル燃料に関する研究:今後導入が見込まれる非
石油関連技術への取り組み
在来型石油や分解系軽油留分などの各種軽油用基材を利用した燃
料について、
ディーゼル車の各種性能に及ぼす影響と課題の検討な
より高効率な石油利用技術や、
より高品質な石油製品の開発など、
どが挙げられ、
各取り組みに反映されています。
石油業界の共通技術課題に取り組むため、石油連盟加盟会社は、
さらに、2012年度からは、JATOPで得られた成果を踏まえて、
1990年12月に
(株)
石油産業技術研究所
(石油技研)
を設立し、
自動
車用燃料、
業務・家庭用燃料、
石油システム・機器および石油精製・
原油から得られる各留分を余すところなく活用することにより、
原油
貯油設備の保安管理に係わる調査・研究等に取り組んでいます。
処理を最適化し、
原油処理量の削減、CO2排出量の削減を実現する
ことを目的にしたプロジェクト
(JATOPⅡ)
が開始されています。この
また、1991年度には千葉市に同社土気研究所
(千葉市緑区大野
台)
を建設し、
(一財)
石油エネルギー技術センター(JPEC)
の石油基
研究では、
石油精製における残油の分解等で得られる留分について、
盤技術研究所と協力して、
各種の試験研究を実施しています。
自動車燃料としての利用等を想定し、環境面・安全面で問題なく使
■自動車用燃料に係わる調査・研究
用できるよう、
自動車を用いて燃費・運転性に与える影響の評価、
排
出ガス等による環境負荷の影響評価等が行われています。
環境問題等の社会的ニーズに応えるには、
自動車の省燃費性向上
※1:JapanCleanAirProgram、
JCAPⅠ:1997〜2001年度、
JCAPⅡ:2002〜2006年度
※2:JapanAuto-OilProgram、
JATOP:2007〜2011年度
と排出ガス低減に寄与する燃料品質の方向性を見極めることが重要
となっています。
■石油システム・機器に係わる調査・研究
石油業界は国の支援を得て、
自動車業界との共同研究として
「大気
石油連盟では
「石油システム21世紀普及基本方針」
(2001年2月
改善のための自動車排出ガス浄化技術の研究
(JCAPⅠおよびJCAP
策定)
に基づき、
民生・業務分野における石油利用システム・機器の
※1
」
を実施しました。そのひとつの成果として、
ガソリン、
軽油の低硫
Ⅱ)
本格普及に取り組んでいます。
黄化による排出ガスのクリーン化および燃費向上効果を確認し、
石油
石油技研ではこのための実証データ取得や、
各種の調査・研究に
業界はその結果を踏まえ、
世界に先駆け、
サルファーフリーガソリン・
より、
「ホット住まいる
(石油セントラル暖房・給湯システム)
」
などの性
軽油の供給を実現しました。
能や快適性を評価し、
普及促進に活用しています。
また、2007年度からは、大気環境保全とさらには地球温暖化、
エ
■石油精製・貯油設備の保安管理に係わる調査・研究
「
、バイオマス等
ネルギーセキュリティ対応を視野に入れ、
「CO2削減」
石油業界は自主保安の推進を目指しています。
燃料多様化」
「
、排出ガス低減」
という3つの課題を同時に解決する最
そのために石油精製設備や貯油設備の非破壊検査技術など効率
適な自動車・燃料利用技術の確立を目指した新しいプロジェクト
的な設備保全技術の導入に関する調査研究を行っています。
を実施しました。主な成果としては、
(JATOP ※2)
使用中の設備に関しては、
検査で得られたデータに基づき、
その設
①バイオマス燃料利用に関する影響評価:国内石油業界によるバ
備が現在保有している強度や余寿命を判断する供用適性評価基準に
イオETBE配合ガソリン(バイオガソリン)の導入(2010年度に原油換
ついてAPI(全米石油協会)
やASME(米国機械工学会)
と連携をと
算21万S/年のバイオマス利用)のためのデータベースとしての活用
りながら取りまとめを進めています。
また、
わが国が地震国であることに鑑み、長周期の地震動が貯油
設備に与える影響について地道にデータを取得し、
将来の貯油設備
の安全管理に資するための調査研究を進めています。
(株)
石油産業技術研究所・土気研究所
69
技 術 開 発 に 関 す る 取り組み
石油技研の研究・技術開発
1 自動車用燃料に係わる調査・研究
●分解系軽油留分の自動車技術としての利用に関する研究
●ガソリン蒸発ガス低減対策の評価
●新技術搭載車両を用いた燃料性状変化に対する ポテンシャル評価
●大気環境改善検討および評価技術
SHED研究設備
全天候シャシダイナモメーター
中型ディーゼルエンジンベンチ
2 石油システム・機器に係わる調査・研究
3 石油精製・貯油設備の保安管理に
係わる調査・研究
●エコフィールのドレン水に関する水質調査
●石油給湯器の省エネ性能検証調査
●灯油型HEMSの構築調査
●石油温水暖房機に関する省エネ性能検証調査
●効率的保全技術導入のための調査・研究
●保安技術基準策定のための調査・研究
●長周期地震動の影響に係わる調査・研究
地震データ
マンションなど集合住
宅への灯油自動給油
システムと組み合わさ
れて使用される高機能
微流量灯油メーターの
集中検針盤
70
▲
災害時を含めた最終消費者までの石油安定供給
こうした経験や教訓に基づいて、
政府においても、
災害時の石油供
東日本大震災の経験と教訓
給体制強化を目的として石油備蓄法を改正し、
石油元売会社に対し、
全国10地区毎に協力して被災者に供給するための
「災害時石油供給
東日本大震災において、電気や都市ガスの供給が止まる中、石油
連携計画」
の策定を義務付けました。
は、
病院の非常用発電燃料、
避難所の暖房
(灯油ストーブ)
用燃料、
緊
また同時に、
ガソリンや灯油などを対象とする国家石油製品備蓄を
急車両の燃料など、
利便性・貯蔵性・運搬性に優れた、
災害に強い自
本格的に開始するため、
同法の改正により、
その管理の民間事業者へ
立型・分散型エネルギーとして大きな役割を果たしました。
の直接委託が可能となりましたが、
石油各社ではこれに積極的に協力
その一方で、出荷基地
(製油所・油槽所)
や給油所も大きな被害を
して行くこととしています。
受け、
東北・関東に立地する9製油所のうち6ヵ所が稼働を停止
(停止
震災時に病院等の重要施設に緊急支援物資として燃料を輸送した
能力日量140万バレル/日、わが国の精製能力の約3割)、東北太平
際、
重複配送や油種の間違い、
給油口とカップリングの不一致などの
洋岸の油槽所もほとんどが出荷不能に陥りました。そのため、全体と
トラブルが一部で発生しました。そのため石油連盟では、
各道府県に
して在庫は十分であったにもかかわらず、
港湾や道路等の社会インフ
政府への緊急支援物資要請を前提として、
石油連盟が窓口となる、
防
ラの麻痺と相まって、
ロジスティクス上の障害により、
一部地域では一
災拠点等への確実な輸送を確保するための情報共有の覚書締結を
時的に石油製品の供給が十分に図れない事態も発生しました。
提案しているところです。石油連盟では、
覚書締結を通じて緊急時の
このように、
災害時を含めた最終消費者までの安定供給の実現に
防災拠点等をデータベース化する予定で、
すでに19道府県
(2014年
向けた、
サプライチェーン
(供給網)
の維持・強化は、
現在の石油業界
2月末現在)
と同覚書を締結しており、さらに数県と協議中です。な
にとって、
大きな課題となっています。
お、東京都とは2008年に首都圏直下型地震を想定した燃料供給協
定を締結しています。
緊急時対応力の強化
震災の教訓を踏まえ、
現在、
石油業界では、
設備と体制の両面にお
石油の安定需要の確保
いて、
緊急時対応力の強化を進めています。
石油業界では、
こうした取り組みを通じ、消費者に安心してご利用
まず出荷基地において、
耐震補強工事、
電気設備の防水対策、
緊急
頂けるエネルギーとすべく努力するとともに、
色々な提案や要望の活
用電源の配備などに順次着手しています。
ドラム缶出荷は、
平時には
動を行っています。すなわち、
これらの活動を通じて消費者に選ばれ
ロットが小さく効率的ではないとして、
従来縮小されてきましたが、
震
るエネルギーとして、
平時から安定的な石油需要を確保して行くこと
災では緊急支援物資としての要請が多かったため、
ドラム缶充填設備
は、
安定供給の前提となるサプライチェーンを維持・強化して行くた
の維持・増強も行われています。給油所でも非常用電源の設置、手
めにも、
極めて重要であると考えています。
動ポンプの配備、
あるいは非常用物資の備蓄、
避難場所の提供等、
災
まず、石油が優位性を発揮できる給湯・暖房部門で高効率な石油
害対応化の取り組みが始まりました。
利用を提案しています。例えば、
停電時にも使用可能な自立型石油給
次に体制面では、
石油各社と出荷基地の間で震災時に情報収集に
湯機をメーカーとともに開発し、導入を推進しています。また、学校・
時間を要したことを踏まえ、
通信・連絡手段の確保を強化するととも
公民館等、
避難所として利用が想定される公共施設においては、
平時
に、
災害時には石油連盟に石油各社の情報を集約する体制を整備す
からの石油系暖房設備の活用が有効であることから、石油連盟では
るため作業を進めています。また、石油連盟では、事業継続計画
全国の地方自治体に対する提案活動を展開しているところです。
(BCP)
のガイドラインを作成し、会員各社はこれに準拠した形で、策
さらに発電部門においても、
石油の緊急時対応力を十分に発揮す
定することになっています。
るためには、
平時から一定の石油火力発電所の稼働が必要であるこ
とは言うまでもありません。
また、
今後のエネルギー政策においては、
国・地方との連携
消費者利益を重視すべきであり、
市場における消費者の効率的なエ
震災時、
被害が比較的軽微で規模が大きかった宮城県の塩釜油槽
ネルギー選択をゆがめるような税制や補助金等の制度は是正される
所は、
県や国土交通省など当局の尽力により、
震災6日後の3月17日
べきです。そうした観点から、
競合エネルギー間では公平な競争条件
には在庫による出荷が、10日後の21日にはタンカー受入が再開し
の整備が期待されています。
たことから、2社の施設を元売5社で共同利用し、
会社の枠を超えた
景気の本格的回復への期待はあるものの、
石油消費の構造的な減
協力体制を構築しました。さらに石油連盟には、
首相官邸や経済産業
少基調は変わっておらず、石油業界を取り巻く環境は引き続き困難
省からの緊急支援要請の窓口としてオペレーションルームを設置し、
な状況にありますが、
緊急時を含めた最終消費者までの石油安定供
約1400件の要請に対応しました。
給を実現すべく、
最大限取り組んで参りたいと考えています。
71
震災時の被災地を行くミニローリー2011年5月陸前高田
石油連盟オペレーションルーム
塩釜油槽所の機能回復・共同利用
政府要請に基づく緊急支援に対応
【提供:NHK】 3月21日よりタンカー受入・輸送力の飛躍的拡大
2011年3月12日午前1時30分頃 仙台市若林区七郷中学校
【提供:河北新報社】
東日本大震災への対応
○
○
○
○
○
○
稼働中の製油所の生産体制の強化
(能力増強・稼働率アップなど)
ガソリン等の緊急輸入・製品輸出の停止
(国内供給増加)
西日本や北海道から被災地への石油製品の転送
(内航タンカー・タンク車・タンクローリー)
被災地における全社協力体制の実施
(油槽所の共同利用など)
西日本からタンクローリーを被災地へ投入
(約300台の臨時投入)
被災地のSS営業情報提供等、被災地における消費者の不安心理解消に向けた広報活動
■東北・関東地方の製油所・油槽所の稼働状況
地震直後 3月12日
3月21日
青森
一部のみ出荷
精製能力
312万バレル/日
400万バレル/日
秋田
一部のみ出荷
八戸
東北
自動車道
酒田
出荷停止・不可能
出荷可能
(制限あり)
秋田
自動車道
新潟
気仙沼
小名浜
出荷不可能
一部のみ出荷
日立
出荷不可能
鹿島
稼働停止
京葉
(千葉)
一部製油所稼働停止
出荷停止
製油所
製
稼働
働:3ヵ所/停止
3ヵ所/
ヵ所/
/停止:6ヵ所
3/20
被災地向け
ドラム缶出荷
(千葉)
東京近郊 油槽所
道
車
動
自
越
磐
出荷可能
出荷不可能
東京近郊 油槽所
一部製油所稼働停止
秋田
自動車道
出荷不可能
塩釜
気仙沼
塩釜
小名浜
その他2油槽所は再開に向け作業中
(大型船入港不可)
出荷不可能
日立
鹿島
稼働再開
(3/17・21)
釜石
出荷不可能
出荷不可能
出荷不可能
京浜
(神奈川)
東日本 の 殆どの 拠点が通常出荷不可能
稼働停止
盛岡
出荷再開
2油槽所…出荷再開
(3/17・20)
稼働停止
(東京近郊除く)
仙台
郡山
出荷再開
(在庫出荷)
出荷再開
油槽所
出荷可能:6ヵ所
停止
(制約あり)
:23ヵ所
東北
自動車道
出荷可能
釜石
稼働停止
(出荷制約あり・海上受入不可)
秋田
車道
自動
山形
仙台
郡山
出荷停止
京浜
(神奈川)
盛岡
出荷停止
八戸
1油槽所…出荷再開
(3/21)
出荷可能
酒田
3/21
震災後タンカー
初入港
(塩釜)
上越
自動
車道
上越
自動
車道
道
車
動
自
越
磐
出荷可能
車道
自動
山形
新潟
青森
出荷可能
精製能力
京葉
(千葉)
一部を除き稼働再開(3/17)
製油所
製
稼働
働:6ヵ所/
6ヵ所/停止
ヵ所/
/停止:3ヵ所
油槽所
出荷可能:18ヵ所
停止
(制約あり)
:11ヵ所
(東京近郊除く)
太平洋側の拠点が一部再開、東京近郊は一部を除き出荷可能
72
▲
石 油 関 連 日 誌(2013年1月〜12月)
石油業界関連
12
△△
16
17
資源エネルギー庁、
メタンハイドレートが埋まる愛知県沖東
部南海トラフ海域の地層からのメタンガス分離採取試験
に成功したと発表
(海洋でのガス産出は世界初)
総合資源エネルギー調査会総合部会、
「エネルギー基本
計画」
を見直し、
年内の策定に向けた議論を再開
安倍首相、
環太平洋連携協定
(TPP)
交渉への参加を正
式表明
日本銀行、
黒田東彦新総裁就任
5
5
ベネズエラ、
ウゴ・チャベス大統領が死去
中国、第12期全国人民代表大会開幕、
14日に習近平
新国家主席選出
(17日閉幕)
日本銀行、
黒田新総裁の下で初の金融政策決定会合を
開催し、
新金融緩和策の導入を発表
総合資源エネルギー調査会総合部会
(第2回)
開催
(化
石燃料をめぐる環境変化等、
エネルギーの生産・調達段
階での論点について議論)
19
ベネズエラ、
14日の選挙で勝利したニコラス・マドゥロ新大
統領就任
米国、
日本など非FTA締結国に対してLNG輸出解禁を発
表
OPEC、
第163回定例総会を開催し、
現在の生産水準で
ある3,000万バレル/日を遵守すること等を決定
19
26
△
△
15
△
15
△
△
23
17
31
石油産業技術研究所、
2012年度成果報告会開催
石油連盟、
平成26年度税制改正要望取りまとめ
出光興産、
月岡隆新社長就任
12
資源エネルギー庁、
第11回総合資源エネルギー調査会
石油分科会石油市場動向調査委員会を開催し、
3年ぶり
となる平成25 〜29年度石油製品需要見通しを策定
政府、
2012年度エネルギーに関する年次報告
(エネル
ギー白書)
閣議決定
政府、
経済財政諮問会議が取りまとめた
「経済財政運営
と改革の基本方針」
(骨太の方針)
と、
産業競争力会議
が取りまとめた
「日本再興戦略」
(成長戦略)
を閣議決定
第183回通常国会閉会
(1月28日から150日間)
16
参議院選挙、
政権与党が過半数の議席を確保し3年ぶり
にねじれ国会が解消
資源エネルギー庁、
総合資源エネルギー調査会基本政
策分科会
(旧総合部会)
第1回会合開催
4
11
△
経済産業省、
総合資源エネルギー調査会基本政策分科
会第9回会合を開き、
石油連盟等エネルギー関連5団体
のヒアリングを実施
電力市場の自由化、
発送電分離等
13 参議院本会議にて、
を定めた改正電気事業法を可決・成立
日本の2008 〜12年度の平均温暖化ガス排出
19 環境省、
量
(速報値)
が京都議定書で義務付けられた削減目標
(1990年度比6%減)
を上回る8.2%減となったことを発表
△
24
△
20
△
4
18
△
東燃ゼネラル石油、
三井物産が保有する三井石油の株
式を全量取得し同社を2014年2月4日に子会社化するこ
とを発表
コスモ石油、
東燃ゼネラル石油、
昭和シェル石油、
住友商
事の4社、
2014年末迄にLPG事業を統合し新会社を設
立することを発表
△
24
73
12
△
△
24
4
△
△△
12
16
参議院本会議にて、
産業競争力強化法、
国土強靭化基
本法を可決・成立
政府、
平成25年度補正予算を閣議決定
資源エネルギー庁、
サウジアラムコと日本国内での原油
共同備蓄事業の契約を更新
政府、
平成26年度税制改正大綱、
および予算案
(一般
会計歳出総額95兆8,823億円)
を閣議決定
猪瀬直樹東京都知事、
辞職
24
△
△
△
12
△
△ △
石油連盟、
全国石油商業組合連合会と合同で石油増
税反対を訴える
『総決起大会』
を開催
石油連盟、
石油業界における地球環境保全自主行動計
画について、製造部門の2008 〜12年度平均エネル
ギー消費原単位が、
目標
(1990年度比13%減)
を上回る
15%減となったことを発表
石油連盟を含む経済団体43団体、
地球温暖化対策税
の使途拡大等に反対する要望書を発表
石油連盟、
東京都・あきる野市合同総合防災訓練に参加
△
15
△
△
24
17
△
△
22
安倍首相、
来年4月から消費税率を現在の5%から8%に
引き上げると正式表明
第185回臨時国会召集
(〜12月6日)
△
△
21
16
△
△
23
△
1
3
経済産業省、
第2回LNG産消会議開催
△
石油連盟、
新たなエネルギー政策への石油業界の提言を
発表
出光興産、
ベトナムのニソン製油所・石油化学コンプレッ
クスの起工式開催
25
△
△△
23
△
△
10
18
月
△
コスモ石油、
東燃ゼネラル石油、
三井石油の3社にて、
コ
スモ石油千葉製油所と極東石油工業千葉製油所の共
同事業検討に関する覚書締結
23
12
第184回臨時国会開会
(7日閉会)
政府、消費増税の影響を検証する集中点検会合開催
(〜31日)
17
△
△
30
△
月
21
2
26
14
11
コスモ石油、
坂出製油所閉鎖
24
△
月
△
7 月8 月9 月
10
26
31
△
△
14
△
△
14
△
平成25年度予算成立、
一般会計総額92兆6,115億円
(5月の連休後に予算が成立するのは1996年以来)
(第3回)
開催
(石
20 総合資源エネルギー調査会総合部会
油のサプライチェーン等、
流通段階の論点について議論)
△
15
△
△△△
6月
7
21
27
コスモ石油、
韓国ヒュンダイオイルバンクと、
自然災害など
の緊急時における相互協力体制構築の覚書締結
△
△
5月
9
23
△
△
19
5
△
△
4月
18
JX日鉱日石開発、
資源エネルギー庁からの受託事業で、
JOGMECと新潟県佐渡沖にて石油と天然ガスの試掘
調査開始
(政府主導は約9年ぶり)
石油連盟、
製油所の安全確保策に関する検討会にて3
月末に取りまとめた検討結果を発表
JX日鉱日石エネルギー、
NEDOとの共同実証事業として
初のSS一体型水素ステーションを神奈川県海老名市に
開所
経済産業省、
岡山県倉敷市と愛媛県今治市のLPG備
蓄基地の完成を発表
(備蓄量は全国5カ所の基地で計
45日分
(約150万トン)
△ △
20
14
△△
△
△
3月
18
シーウェイ
・パイプライン
(米国オクラホマ州クッシングとメキ
シコ湾岸のテキサス州フリーポートを結ぶパイプライン)
、
輸送能力を最大40万バレル/日に増強し、
稼働を再開
イスラム武装勢力、
アルジェリア南東部イナメナスのガス
関連施設を襲撃し、
邦人を含む現地従業員を人質として
拘束する事件発生。19日にアルジェリア軍の軍事行動に
より、
武装勢力を鎮圧するも多数の人質が死亡
米連邦航空局
(FAA)
、
トラブルが多発しているボーイング
787についてバッテリーシステムが改修するまで運航を禁
止する内容の緊急耐空性改善命令を発行
米国大統領就任式
(オバマ大統領2期目)
ダボス会議開幕
(〜27日)
電力システム改革専門委員会
(委員長:伊藤元重東大教
授)
、
電力小売の全面自由化や発送電分離などを含む電
力改革報告書を取りまとめ
参院本会議、
緊急経済対策を盛り込んだ、
過去2番目の
大規模補正となる総額13兆1,054億円の2012年度補
正予算案を1票差で可決、
成立
△
△
26
△△ △
21
23
△
△△
27
28
△
△
2月
14
28
29
16
△
昭和シェル石油と東燃ゼネラル石油、
安定的効率的な供
給体制を構築すべく、
精製・供給、
流通の各部門におい
て協業することを基本合意
△
30
22
海外関連
11
△
15
△
16
政府、
2012年度補正予算案を閣議決定
国土交通省、
米国連邦航空局
(FAA)
の緊急耐空性改
善命令の発行を受けて、
わが国の航空会社に対しても、
同様の内容を指示する緊急耐空性改善通報を発行
政府、
日本銀行、
デフレ脱却と経済成長に向けて連携を
強めるため、
2%の物価上昇率目標等を盛り込んだ共同
声明を発表
第183回通常国会召集
(〜6月26日)
政府、
2013年度予算案閣議決定
△
東燃ゼネラル石油、
エネルギー供給構造高度化法の対
応として川崎・和歌山工場の常圧蒸留装置の廃棄(計
10.5万バレル/日)、
および川崎工場の残油水素化分解
装置の能力増強を経済産業省に提出したことを発表
石油連盟、
第1回石油の力。
シンポジウム開催
石油連盟、
第3回油流出ワークショップ開催
△△
15
17
△
1月
15
国内政治・経済
石油連盟、
2012年度
「地球・夢・未来―石油の作文コン
クール」
表彰式開催
(経団連会館)
出光興産、
三井化学とベトナムで製油所・石油化学プラン
トの建設に着手することを発表
コスモ石油、
昭和シェル石油、
日本政策投資銀行の3社、
共同でメガソーラー事業に取り組むことを決定し、
合弁会
社設立に関して基本合意したことを発表
石油連盟、
2011年度までの実績報告をまとめた石油業
界の地球環境自主行動計画第15回フォローアップを取り
まとめ
△
12
エクアドル大統領選挙、
現職のラファエル・コレア大統領
3選
中国、
PM2.5問題対策として、
自動車燃料の環境基準に
ついて硫黄含有量を日欧並みの10ppmに規制する新基
準を年内に定め、
2017年末までに全国で実施することを
決定
中国海洋石油、
中国企業による海外買収では過去最大
となるカナダの資源大手ネクセンの買収成立を発表、
買
収額は151億ドル
(約1兆4千億円)
イラン、
第11期大統領選挙実施、
穏健派のハサン・ロウ
ハニ氏が当選
(8月に第7代大統領就任予定)
G8首脳会議
(北アイルランド・ロックアーン、
18日迄)
エジプト、
ムルシ大統領が強制解任され、
マンスール最高
憲法裁判所長官が暫定大統領に就任
カタール、
ハマド首長が退位し、
四男タミム皇太子が新首
長就任
イラン、
ロウハニ新大統領就任
国際連合、
シリアにおいて化学兵器使用を断定する報告
書を公表
国際連合総会、
開幕
米国、
連邦債務上限引き上げと政府機関再開に向けた
関連法が成立し、
デフォルト回避
サウジアラビア、
国連安全保障理事会の非常任理事国
入りを辞退する声明を発表
国連気候変動枠組条約第19回締約国会議
(COP19)
、
ポーランドのワルシャワにて開催
(〜22日)
石原環境相、
COP19にて、
2020年度の温暖化ガス排
出量について、
従来の目標
(1900年度比25%減)
に替わ
る、
2005年度比3.8%減とする新目標を正式表明
イランの核問題を巡る同国と欧米6カ国協議、
イランが核
計画を後退させる見返りに米国等が経済制裁を一部緩
和する第1段階の措置で合意
(於:
ジュネーブ)
OPEC、
第164回定例総会を開催し、
加盟12カ国による
原油生産目標を現在の3,000万バレル/日で据え置くこと
を決定
メキシコ議会下院、
外資を含む民間企業に同国の石油資
源開発を認める憲法改正案を可決
▲
製 油 所 の 所 在 地と原 油 処 理 能 力(2014年2月末現在)
単位:バレル/日
常圧蒸留装置能力
合計438万4,700バレル/日
(製油所数:25ヵ所)
出光
(北海道)140,000
出光
(愛知)160,000
コスモ
(四日市)155,000
昭和四日市(四日市)255,000
JXエネルギー
(室蘭)180,000
JXエネルギー
(水島)380,200
JXエネルギー
(麻里布)
127,000
出光
(徳山)120,000
JXエネルギー
(仙台)145,000
西部
(山口)120,000
JXエネルギー
(大分)136,000
鹿島
(鹿島)252,500
コスモ
(千葉)240,000
極東
(千葉)175,000
出光
(千葉)220,000
富士
(袖ケ浦)143,000
東燃ゼネラル
(川崎)335,000
東亜
(京浜)70,000
JXエネルギー
(根岸)270,000
コスモ
(堺)100,000
東燃ゼネラル
(堺)156,000
大阪国際石油精製
(大阪)115,000
東燃ゼネラル
(和歌山)170,000
南西
(西原)100,000
太陽
(四国)120,000
出所:石油連盟
(注)
:会社名は略称
(製油所名)
▲
石 油 産 業 の 規 模(石油精製・元売会社)
企業数
16社
資本金総額
5,630億円
年間売上高
25兆 8,705億円
従業員数
約19,200人(2012年度末)
原油・石油製品(燃料油)輸入量
2億4,994万S
(2014年3月現在)
(2013年 3月末現在)
(2012年度)
原油・石油製品輸入金額
わが国総輸入金額に占める石油の割合(22.46%)
1,954億ドル
(16兆1,940億円)
99.6%
石油の輸入依存度
(2012年度)
(2012年度)
(2012年度)
74
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2
(広報グループ)
TEL(03)
5218-2305 FAX
(03)
5218-2321
2012年4月
http://www.paj.gr.jp/