赤外線の基礎 赤外線の基礎 新技術で世界の 赤外線サーモグラフィをリードする 日本アビオニクス株式会社 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 目次 0.赤外線サーモグラフィについてよく誤解される点 1.赤外線とは 2.熱の伝わり方 3.赤外線の放射、反射、透過 4.赤外線サーモグラフィの測定原理 5.温度測定について 6.放射率について 7.短波長と長波長の特徴 8.測定上の注意 9.その他:赤外線の放射について 10.その他:赤外線による色々な測定 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 0.赤外線サーモグラフィについて よく誤解される点 ①赤外線カメラから何か照射しているのでは? 何も照射していません: 対象物から放射されている赤外線を受動的に検出するだけです。 但し、周囲からの反射の影響を受ける場合があります。 ②波長で温度分布を測定するのでは? 波長ではなく、赤外線エネルギー量により温度分布を測定します。 ③物体の表面から透過して見ることができるのでは? 物体の表面から放射されている赤外線を検出するため 裏側を透過して見ることはできません。 但し、熱伝導の違いで表面に温度分布ができる場合は、 裏側を推定することができます。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 1.赤外線とは ■赤外線の発見 1800年にイギリスの天文学者ハーシェルによって発見されました。 ハーシェルは太陽光をプリズムで分光している時に、偶然に 赤色光の外側に物体の温度を高くする目に見えない光があることに 気がつきました。 出典: R. D. Hudson, Jr. 『INFRARED SYSTEM ENGINEERING』 (John Wiley & Son, 1969) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 1.赤外線とは 電磁波である 波長が0.7μm以上 波長が1mm以下=周波数が300GHz以上 可視光 波長(μ) 周波数(Hz) 赤外線サーモグラフィが 扱う波長帯 波長(μ) 波数(cm-1) 出典: R. D. Hudson, Jr. 『INFRARED SYSTEM ENGINEERING』 (John Wiley & Son, 1969) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 1.赤外線とは 赤外線の大気中での透過特性 大気の窓 大気の窓 海抜 0m, 水平光路 1.8km, 水蒸気の凝結長17mm 出典: R. D. Hudson, Jr. 『INFRARED SYSTEM ENGINEERING』 (John Wiley & Son, 1969) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 1.赤外線とは 赤外線の性質 (1)可視光より波長が長いため目で見えない。 可視光の明るさ、暗さに関係しない。 (2)絶対0°K以上の全ての物体から自然に放射されている。 従って、あらゆる分野に適応できる (3)物体を暖める性質がある。 従って、熱線と云う場合がある。 (4)光(電磁波)の一種である。 真空中も伝わることができる。 (5)赤外線エネルギーと物体の温度は相関関係にある。 従って、物体の温度を測定することができる。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 2.熱の伝わり方 = 放射 : 物体面から直接、赤外線エネルギーとして 届く熱の伝わり方 (赤外線) 対流 : 気体や液体中で暖まったものが上昇することで 熱が伝わる。 伝導 : 主に固体中での熱の伝わり方 対流 放射(赤外線) 伝導 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 3.赤外線の放射、反射、透過 赤外線をよく吸収する物体は赤外線をよく放射する。 W=透過+反射+吸収 透過=0なら W=放射+反射 放射 透過 吸収 反射 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 反射 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 4.赤外線サーモグラフィの測定原理 表示 増幅 検知 集光 走査 大気 赤外線 対象 同期 電子走査 光学走査系 (水平走査) 機械走査 光学系 (垂直走査) 検出器 検出器 (1)単素子の検出器と走査系 (2)二次元素子の検出器と走査系 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 4.赤外線サーモグラフィの測定原理 ■赤外線サーモグラフィの特徴 (1)面の温度分布として捉え、可視化情報として表示できる。 (2)対象物から離れたところから、非接触で温度測定ができる。 (3)リアルタイムで温度計測ができる。 ■スポット温度計との違い (1)スポット温度計は1点の温度計測であり、温度分布として 面計測ができない。 (2)スポット温度計では、ホットスポットの測定や温度分布として 相対的な測定ができない。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 4.赤外線サーモグラフィの測定原理 ■赤外線サーモグラフィの優位点 (1)広い範囲の表面温度の分布を相対的に比較できる。 (2)動いているものや、危険で近づけないものでも、 簡単に温度計測できる。 (3)微小物体でも温度を乱すことなく温度計測できる。 (4)食品、薬品、化学製品などでも衛生的に温度計測できる。 (5)温度変化の激しい物や、短時間の現象でも温度計測が できる。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 赤外線の放射エネルギーと物体の表面温度は 相関関係にある。 T 赤外線エネルギー(W) W=σT4 : ステファン・ボルツマンの 法則(黒体放射) 〈熱と温度〉 熱:エネルギーの一形態である。 赤外線エネルギーは熱エネルギーそのものである。 温度:熱の一つの状態を表す尺度である。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 温度と赤外線の関係 放射発散度 〔W/㎝2 .μm〕 すべての物体は赤外線を放射する。 温度が高い物体は強く赤外線を放射する。 短波長帯 長波長帯 波長 (μm) 黒体の温度と放射光のスペクトル Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 温度と赤外線の関係 W(T)=σT4 (黒体放射) σ:ステファン・ボツマルン定数(5.637×10-12W/cm2・K4) K(ケルビン)=℃+273 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 温度と赤外線と放射率の関係 W=εσΤ4 W=赤外線エネルギー ε=放射率 σ=定数 Τ=絶対温度 (Τ=t + 273) (黒体放射) 放射率補正 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 実際の赤外線サーモグラフィでの温度測定処理内容 温度測定と環境温度補正 ελ< 1 T 対 象 物 Ta:環境温度 (1-ελ)・W(Ta) ελ・W(T) W(T,Ta,ελ)= ελ・W(T)+ (1-ελ)・W(Ta)ーWb(Ta) 環境反射エネル ギー サーモグラ フィ内部の 放射分 赤外線サーモ グラフィの検出 器が受ける全 体のエネル ギー ελ: 分光放射率 赤外線サーモグラフィの中で、 この分を除去する補正処理を 行っている。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 5.温度測定について 実際の赤外線サーモグラフィでの温度測定処理内容 温度変換処理 黒体温度 校正テーブル 表示温度 検出器出力 検出器出力 校正テーブル方式 黒体温度 リニアライズ 黒体温度 検出器出力 校正計算式方式 E=aTn+bTn-1+・・・・・・・・・・+X n、a、b ・・・・・・・・X : 実験評価から求める T : 上式から計算で求める。 黒体温度 ログアンプ 入力 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 表示温度 黒体温度 出力 検出器出力 電気回路方式 リニアライズ 黒体温度 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について 〈放射率の考え方〉 (1)例えば、近距離から、100℃の物体を赤外線サーモグラフィで 測定しても、測定値が100℃以下になるのはその物体に 放射率があるためである。 (2)ほとんどの物体の放射率は、1.0以下である。 (3)放射率は物体の温度に関係するのではなく、物体から放出 される赤外線エネルギーに関係している。 (4)放射率(ε)は、 (物体放射エネルギー)÷(黒体放射エネ ルギー) で定義される。 従って、W=εσT4 (5)温度分布測定では、あまり放射率の補正を気にする必要は ない。 しかし、画像データを読む場合、物体表面の放射率(及び 反射率)の違いを考慮する必要がある。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について ■放射率特性 測定物体から放射される赤外線は、通常の放射率とは別に、 特殊な放射率特性がある。 ■通常の放射率特性 依存項目 材料 表面粗さ 金属表面 の錆び 特性 材料の電磁気物性値として決まる。 色にも関係する。 粗い面ほど放射率は大きい。鏡面は小さい。 同一材料、同一温度であっても、表面粗さが異 なると、見掛け上の温度分布として測定される。 深く錆びているほど放射率は大きい。 同一金属、同一温度であっても、錆びの状態に より見掛け上の温度分布として測定される。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について ■特殊な放射率特性 依存項目 温度 穴や隅の 空洞放射 特性 一般的な傾向として、絶縁物は温度が高くなる と、放射率が小さくなる。 金属は温度が高くなると、放射率が大きくなる。 温度が大きく(約100℃)変動する場合、放 射率補正値を変更しないと正しい温度測定がで きない。 穴や隅は多重反射の影響を受けて、空洞放射と なり、放射率が大きくなる。 小さく深い穴ほど放射率は大きくなる。 均一な温度で、放射率が小さいものでも、穴の 部分は放射率が大きくなり、高い温度で測定さ れる。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について ■特殊な放射率特性 依存項目 特性 測定角度 一般的な傾向として、直角から約50度までは放 射率は一定である。約50度から下がり始め、約 60度を超えると急激に低下する。 氷(ぬれた) ガラ ス粘 土 酸 化 銅 木材 酸化アルミニウム 紙 出典:甲藤 好郎 『伝熱概論』 351頁 (養賢堂, 第19版, 1980) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について ■特殊な放射率特性 依存項目 測定角度 特性 斜 め か ら 測 定 せ ざ る 得 な い 場 合 、測 定 面 の 手 前( 測 定角度がゆるい)は温度が高く、遠い面は温度が 低く測定されてしまうので注意を要する。 測定面 遠くなるほど見掛け上低い温度で測定される Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 6.放射率について ■特殊な放射率特性 依存項目 特性 測定角度 円柱面を測定する場合は、放射率の角度依存性を受 けないで測定できる範囲は直径の約80%である。 それを超えると見掛け上の温度が急激に低く測定さ れる。 出典:Gilbert Gaussorgues 『La Thermographie Ingrarouge』 (Technique et Documentation - Lavoisier, 1989) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 ■屋内測定の場合 通常の温度測定では、ほとんどの場合、 検出波長帯を気にする必要はない。 ■屋外測定の場合 検出波長帯による影響が異なるので注意を要する。 比較項目 検出波長帯 太陽光の反射 環境反射の影響 低温反射の影響 大気中の減衰 ガラスの透過 容器内の測定 ガス火炎の影響 短波長帯(SW) 3~5μm 影響が大きい 小さい 小さい 受けやすい 比較的透過する サファイア窓で測定可 能 大きく影響を受ける Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 長波長帯(LW) 8~14μm 殆ど影響を受けない 大きい 大きい 受けにくい まったく透過しない ゲルマニウム等 比較的、影響を受けに くい 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 色々な物質の分光放射率 測定温度 : 500℃ 放射率 (1)黒体 木節土 波 長 出典: 津田 直樹編 『遠赤外線放射セラミックスのすべて』 32頁 (オプトロニクス社, 第一版第一刷, 1989) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 大気の透過率と太陽および地表面の放射エネルギー特性 短波長(3~5μm) 長波長(8~14μm) 大きい 地表面の放射エネルギー 小さい 300K放射発散度 透過率(%) (地表面) 5900K放射照度 (太陽) 大気の窓 大気の窓 小さい 大きい 放射照度、発散度(X104/cm2μm) 太陽の放射エネルギー 波長(μm) 出典: 梅干野 晁 他 「多重分光熱画像を用いた建築外部空間における放射温度計測に関する基礎的研究」 日本建築学会計画系論文集 第459号 17頁以下 (1994) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 ■天空の放射エネルギーと放射温度 短波長(3~5μm) 長波長(8~14μm) 大きい 小さい 天空の放射エネルギー 高い 低い 天空の放射温度 天空の反射の影響 小さい 大きい ○ 長波長(8~13μm) △ 短波長(3~5μm) 25.5℃黒体 天頂角45° 天空の放温度(℃) 放射輝度(X104W/cm2srμm) 地表面付近の気温 (35.7℃) 天頂角 波長μm 晴天時における天空の放射エネルギー 天空の放射温度(℃) 天空の放射温度の天頂角の角度特性 出典: 梅干野 晁 他 「多重分光熱画像を用いた建築外部空間における放射温度計測に関する基礎的研究」 日本建築学会計画系論文集 第459号 17頁以下 (1994) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 〈屋外測定の場合の赤外線放射エネルギー伝達経路〉 対向面 (太陽、天空、壁面等) 対象物 対向面の反射 対象物からの反射 大気からの放射 伝達経路中の大気による吸収と散乱 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 大気中の透過特性(60cm) H2O透過率 CO2透過率 H2O+CO22 透過率 波長(μm) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 7.短波長と長波長の特徴 大気中の透過特性(60cm~3km) H2O透過率 CO2透過率 H2O+CO22 透過率 大気の窓 波長(μm) Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 大気の窓 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 8.測定上の注意 (1)赤外線サーモグラフィをできるだけ対象物に正対して測定する。 不可能なら、約50度以内で測定する。 (2)赤外線サーモグラフィをできるだけ対象物に近づけて測定する。 (3)フォーカスを正しく合わせて測定する。 (4)対象物の周囲や対向面からの反射に気をつけて測定する。 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 9.その他:赤外線の放射について (1)赤外線の放射は、 ①分子を構成する原子が振動を起こす分子振動によるもの ②分子構造の格子が振動を起こす格子振動によるもの 原子 原子 原子 分子振動 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 原子 格子振動 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 9.その他:赤外線の放射について (2)赤外線の放射を増やすには、 ①ヒーターで加熱する ②機械応力を加える △T=-Km・T・△σ ③摩擦 ④マイクロ波を照射する(電子レンジ) ⑤電磁誘導 ⑥抵抗加熱 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社 赤外線の基礎 10.その他:赤外線による色々な測定 (1)温度測定 (2)応力測定 : 断熱圧縮 ⇒ 温度上昇 断熱引っ張り ⇒ 温度降下 (3)水分測定 : 吸収率を利用 (4)流れの可視化 (5)放射率の違いを利用 (6)膜厚計 : 透過率を利用 (7)熱慣性を利用 Copyright (C) Nippon Avionics Co., Ltd. 日本アビオニクス株式会社
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