1 本報告の概要 1.背景 (1)IMOにおけるBCに関する議論 (2)IMO下の汚染防止・対応小委員会(Sub-Committee on Pollution Prevention and Response, PPR)におけ る検討状況 2.本報告 (1)前報概要及び本報告の目的 (2)計測・分析方法 (3)計測・分析結果 (4)まとめ 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 2 IMOにおけるBCに関する議論 ●2011年7月のIMO第62回海洋環境保護委員会 (MEPC62)において,「国際海運から排出される BCが北極圏に及ぼす影響」について調査を行い,規 制の必要性について検討すべきことが合意された. ●IMO汚染防止・対応小委員会(PPR)において,具体 的にBCに関することが検討されている. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 3 PPRにおける検討状況 1. 国際海運から排出されるBCの定義 「光を吸収する炭素成分(Light Absorbing Carbonaceous Components, LAC)」をベースとして定義を定める方向で検討. 2. 船舶から排出されるBCの計測方法 フィルタ式スモークメータ(Filter Smoke Number, FSN)が有 力視されながらも,レーザ誘導発光法,マルチアングル吸光 法,光音響法,温度化学種法(熱光学法)も含め引き続き検 討. ⇒本報告では主としてFSNについて検討. 3. BC排出を削減するための適切な制御方法についても今後検討. 2014年2月3-7日開催のPPR 1での検討状況: 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 4 前報概要 C重油、舶用特性75%負荷 ・各種BC計測装置の測定結果からそれぞれの装 置メーカの換算式によりスート濃度に換算. EC/OC のみ拡大 3] Concentration [mg/m3] Soot Concentration [mg/m 250 200 150 Soot Concentration [mg/m Concentration [mg/m3] 3] 35 ⇒スート濃度はPM中のEC濃度に相当. 2013/01計測 30 ・硫酸塩エアロゾルは光をほとんど吸収しない ため1),BCの光吸収の影響を考える場合, 25 OC 2013/01計測 20 15 ⇒PM濃度は指標としては不適切. 10 5 Soot Soot Soot Soot EC 0 Sulfate その他 + Ash 100 C重油 50 0 Soot Soot Soot Soot OC EC 硫黄濃度とPM排出率との関係 1)中山,エアロゾル研究,Vol.27,No.1(2012),p13-23. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 5 本報告の目的 BC計測方法の計測結果がPM中のEC濃度に相当していたこと を踏まえ, 「 PM中のEC濃度が光吸収上昇(増加)の適切な指標である」 であるかどうかを確認するため, ・PM計測及びPM組成分析(温度化学種法(熱光学法)によ るEC・OC分析) ・BC計測方法による測定 を再度実施し,追加計測として, ・光吸収計測 を実施して,BC計測-光吸収の相関を調べる. その結果より,今後のPPRにおけるBC計測方法の議論に資す ることを目的としている. 供試機関:㈱松井鉄工所製 MU323DGSC,3気筒4サイクル,定格出力 257kW(420rpm) 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 6 PM計測及びPM組成分析 ●P M 計 測 :JIS B 8008-1:2000準拠のエフテクノ社製 MIT-2000CT ●PM組成分析:温度化学種法(熱光学法)によるEC・OC分析. IMPROVE Protocol準拠のSunset Laboratory社 製 Model-4 分析条件は以下の表の通り.なお,フィルタ試料は石英フィ ルタを用い,PM計測手順に沿って捕集. 温度化学種法(熱光学法)分析条件 炭素フラクション 分析温度(℃) OC1 120 OC2 250 OC3 450 OC4 550 EC1 550 EC2 700 EC3 800 分析雰囲気 He He He He 2 98 5%O2+95%He 98 2 5%O2+95%He 2 98 5%O2+95%He (炭素フラクションの定義:各測定条件の分析雰囲気により発生する炭素) 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 7 BC計測方法 ●フィルタ式スモークメータ (AVL社製415S) 排ガスをフィルタに捕集して そのフィルタ試料に可視光を入 射し,反射率を計測. 排ガス 光源 検出器 ろ紙供給 ●レーザスモークメータ (司測研社製LEX-635S) 排ガス中に赤色光(650nm)を 入射し,光の減衰及び散乱(粒 径により使い分ける)を計測. レーザ光 演算処理 検出器で透過 光を計測 120℃加熱 なお,計測結果は,それぞれの装置メーカの換算式により排気中ス ート濃度に換算 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 8 スートによる光吸収量の算出① ●サンプルの作製 PM計測時に,別途,時間を変えて石英フィルタ上に試料を捕集 A重油 発電特性 25% 捕集時間 5分 10分 15分 ●サンプルの光吸収測定 紫外可視近赤外分光光度計 V-670 (日本分光) シングルモノクロメータ・ダブルビーム方式 + 積分球ユニット ISN-723 (日本分光) 計測波長範囲: 275 ~ 2500 nm 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 9 スートによる光吸収量の算出② フィルタ上に捕集された試料について 全波長範囲で光吸収特性を測定 Spectral Irradiance W/m2/nm Spectral Irradiance W /m‐2 nm ‐1 100 90 光吸収率 % 80 70 60 A重油, 発電25%負荷 10分捕集フィルタ 50 石英フィルタ 40 30 石英フィルタ上のスート により光吸収率上昇 地上に届く太陽光の エネルギスペクトル 北極海域の氷上にススが 落ちた時の光吸収率上昇 20 10 大気上端での太陽光スペクトル 2 地上での太陽光スペクトル 1.5 1 0.5 0 0 0 500 1000 1500 2000 Wavelength nm 2500 3000 波長ごとに掛け算してススが 吸収するエネルギ量を計算 2.5 光吸収エネルギ 光吸収エネルギW /m‐2 nm ‐1 W/m2/nm 2.5 地表でA25フィルタが 吸収するエネルギ 2 1.5 1 0.5 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavelength nm 275 波長250nm~2500nm の範囲で積分 →吸収エネルギ量を計算 →PM,EC量との関係を検討 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavelength (nm) 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 10 BC計測方法とEC濃度との比較 20 Concentration [mg/m3] Concentration [mg/m3] 20 15 10 5 0 Filter S.N. Laser S.N. 15 10 5 0 Filter S.N. EC A重油舶用特性75%負荷時 EC A重油発電特性25%負荷時 100 Concentration [mg/m3] Concentration [mg/m3] 100 Laser S.N. 80 60 40 20 0 Filter S.N. Laser S.N. EC C重油舶用特性75%負荷時 80 60 40 20 0 Filter S.N. Laser S.N. EC C重油発電特性25%負荷時 BC計測方法とEC濃度との比較 • A重油発電特性25%負荷時の測定結果を除き, 前報と同様, おおよそではあるが,スート=ECの傾向. • A重油発電特性25%負荷時の測定結果のみ,BC計測方法によるスート換算値 はEC濃度よりも低い傾向. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 11 光吸収の実験条件による比較 PM及びEC捕集重量は,サンプリング時間を変えることでフィルタ捕集量を調整 900 太陽光熱吸収量, W 2 太陽光熱吸収量,W/m 太陽光熱吸収量, W 2 太陽光熱吸収量,W/m 900 850 800 A重油, 発電25% A重油, 舶用75% 750 C重油, 発電25% 850 800 A重油, 発電25% A重油, 舶用75% C重油, 発電25% 750 C重油, 舶用75% C重油, 舶用75% 700 0 10 20 30 40 50 700 60 0 PM捕集重量, mg 2 太陽光熱吸収量, W 太陽光熱吸収量,W/m 太陽光熱吸収量, W 2 太陽光熱吸収量,W/m 850 800 A重油, 発電25% 750 15 850 800 A重油, 発電25% A重油, 舶用75% 750 C重油, 舶用75% A重油, 舶用75% 700 700 0 1 2 3 4 5 PM捕集重量, mg PM捕集重量と光吸収との関係 • 10 900 900 • 5 EC捕集重量, mg 0 1 EC捕集重量, mg 2 3 EC捕集重量と光吸収との関係 A重油発電特性25%負荷時のみ,PM及びEC捕集量が増加すると光吸収が増加 する傾向. その他の条件についてはA重油発電特性25%負荷時と比較して,PM及びEC捕 集重量による光吸収特性への影響は小さい傾向. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 12 OCのECに対する比率と光吸収の関係 A重油発電特性25%負荷時以外の条件において,OC成分のEC成分に対する比率と 光吸収との関係を整理した. 太陽光熱吸収量, W/m2 2 太陽光熱吸収量,W/m 880 870 A重油,舶用75% C重油,発電25% C重油,舶用75% 860 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 OC/EC OC成分のEC成分に対する比率と 光吸収との関係 A重油発電特性25%負荷時以外の条件においては: • 燃料油に関係なく,OC成分のEC成分に対する比率によって 太陽光熱吸収量は決定. • OC成分のEC成分に対する比率が大きいほど光吸収が低くな る傾向. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 13 OCフラクションの実験条件による比較 実験条件毎の炭素フラクション中の,OCフラクション(OC1, OC2, OC3, OC4)について整理. 1 0.8 上から順に: OC4(550℃) 比率 0.6 OC3(450℃) OC2(250℃) 0.4 OC1(120℃) 0.2 0 A油舶75% A油電25% C油舶75% C油電25% 各実験条件でのOCフラクションの比率 • A重油発電特性25%負荷時のみ,OCフラクションが他の実験条 件と異なる傾向.(OC2フラクションがとりわけ多い) • よって,OCフラクション特性の影響によって光吸収低下があ ることが示唆. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 14 まとめ1 •BC計測方法によるスート換算値は,主として EC成分に相当する. •OC成分が多いと,光吸収は低くなる傾向があ る. •特にOCフラクション特性による光吸収低下へ の影響が大きいと考えられる. •EC成分と光吸収特性との相関はあるが,OCフ ラクション特性によっては,光吸収特性を適 切に捉えることが出来ない場合がある. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 15 まとめ2 •フィルタ式スモークメータ,レーザスモーク メータともに, OCフラクション特性の影響に より実際のEC成分よりも低い計測値を示して いる.(A重油発電特性25%負荷時) •このことからフィルタ式スモークメータ及び レーザスモークメータともに,EC成分だけで なく光吸収特性を反映していることからBCを 測定するには適切と考えられる. 謝辞 本研究の一部は,AVL Japan株式会社,株式会社司測研及び東京ダイレック 株式会社の多大なるご協力の下で行われた.ここに謝意を表します. 平成26年度(第14回)海上技術安全研究所研究発表会 16
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