最新号の立ち読み記事

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(No.152/2016 年 1 月 14 日)より
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改正電子帳簿保存法と企業実務
【第9回】
「電子取引に係る電磁的記録の保存(1)」
税理士 袖山 喜久造
【第8回】までは、税法上、備付け・保存が義務付けられている国税関係帳簿書類の電子保存に
ついて、電子帳簿保存法で規定された保存要件等を解説してきた。
今回から2回にわたって、同法第 10 条《電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存》に規定
されている電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務の規定について解説する。
1 電子取引を行った場合の新たな規定
法人税法等で規定されている保存すべき国税関係書類については、本連載【第3回】においても
解説しているが、取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収証、見積書、
その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類で写しのあるものは、その写しを保
存することとされている。これらの取引関係書類は「書面」すなわち「紙」のものを前提としている。
紙の書類の受け渡しも行われている一方で、インターネットの爆発的な普及により、取引に関して
は、簡易な書類のやり取りのほか受発注情報などもインターネットや電子メール、EDI 取引(後
述)などを通じ頻繁に行われるようになった。このような流れを受け、平成 10 年7月に施行された
電子帳簿保存法では、EDI 取引やインターネット等による電子取引の取引情報に係る電磁的記
録の保存を義務付けたわけである。
電帳法第 10 条で規定されている電子取引に係る電磁的記録の保存義務について、正しく理解し
ている税理士や納税者は少ない。電子取引の増加により、昨今の税務調査においても電子取引
に係る電磁的記録が事実認定を行う上で重要な調査対象となり、その際に電磁的記録の保存が
されていないと問題となるケースが多くなっている。
電帳法第 10 条では、電子取引を行った場合には当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を
保存しなければならないとされている。なお、同条但書きでは、当該電磁的記録を書面で出力し
た場合には紙による保存も認めている。データで保存することができないケースもあることから、
紙保存も認めているのである。
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ただし、紙保存をする場合には当該取引形態に係るすべての取引情報を紙で保存する必要があ
る。電子取引による取引情報の電磁的記録については、紙保存のものとデータ保存が混在しな
いように保存する必要がある。
2 電子取引とは
電帳法第2条第6号では、「電子取引」について次のように定義している。
取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
ここでいう「取引情報」とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収
書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項のことを指す。完成された書類を添
付するメールのみならず、取引先とやり取りしたメールはほぼすべてが電子取引の対象となる。
IT技術の劇的な進歩により電子取引の形態は年々変化していくと思われるが、電磁的方式により
取引情報を授受するのであれば、インターネットを利用しようが電子媒体の授受であろうが、すべ
てが電子取引とされるのである。
現状における電子取引の例を示すと以下のとおりである。
① EDI 取引
EDI 取引について、経済産業省ホームページでは
異なる組識間で、取引のためのメッセージを、通信回線を介して標準的な規約を用いて、コンピュ
ータ間で交換すること
と定義しており、主に製造業における部品等の調達や、流通業における受発注情報の授受に用
いられることが多い。
② インターネット等による取引
「インターネット等による取引」といった場合、非常に幅が広い。インターネットを利用した取引とし
ては、電子契約サービスなどが挙げられる。電子契約サービスとは、契約書や各種の書類のやり
取りを共通のサーバ上で行い、サーバ上で共有し閲覧するシステムである。
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③ 電子メールにより取引情報を授受する取引
取引先等との間で電子メールで取引情報の授受を行った場合も電子取引に該当し、メール本文
だけでなく、添付されているファイルも含めて保存することとされている。
④ インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引
ここでいう「インターネット上のサイト」とは、ASP(Application Service Provider)事業者を介した取
引がこれに該当する。
⑤ FAX 等による取引情報の授受
一口に FAX といっても、現在は様々な形態の FAX 装置が販売されており、大きく分類すると、次
の2つに分けられる。
1つは、一般的な FAX と呼ばれているもので、送信側で紙の文書をスキャナで読み取り通信回線
を介して送信先プリンタで紙に出力するタイプが挙げられる。もう1つは PC-FAX、インターネット
FAX と呼ばれている画像情報を通信回線又はインターネットを介して送信先のサーバやパソコン
に送信し、受信側では当該画像に係る電磁的記録をため込んでいくタイプである。
どちらのタイプも画像情報を電磁的方式により取引情報を授受する取引として電帳法第2条第6
号で定義されている電子取引に該当する取引に該当する。ただし、一般的な FAX 装置は、スキャ
ナで読み取った画像情報を相手方のプリンタ機器で紙の状態に出力され、電磁的記録自体は保
存されないこととなるため、書面での保存ということになる。一方、PC-FAX、インターネット FAX に
ついては、送受信の双方で紙で出力し保存するのでなければ、電磁的記録を保存しなければな
らないこととなる。
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次回は、電子取引に係る電磁的記録の保存方法に関する要件について解説する。
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〔凡例〕
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電帳法(電子帳簿保存法)・・・電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方
法等の特例に関する法律
規則・・・電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法
律施行規則
(了)
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連載目次
「改正電子帳簿保存法と企業実務」(全 12 回予定)
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【第1回】 電子帳簿保存法の導入経緯
【第2回】 スキャナ保存制度の規制緩和
【第3回】 国税関係帳簿書類のデータ保存の承認申請(1)
【第4回】 国税関係帳簿書類のデータ保存の承認申請(2)
【第5回】 国税関係帳簿書類のデータ保存の承認申請(3)
【第6回】 国税関係書類のスキャナ保存(1)
【第7回】 国税関係書類のスキャナ保存(2)
【第8回】 国税関係書類のスキャナ保存(3)
【第9回】 電子取引に係る電磁的記録の保存(1)
【第 10 回】 電子取引に係る電磁的記録の保存(2)
【第 11 回】 電子帳簿保存法適用法人の税務調査対応
【第 12 回】 これからの帳簿書類の電子化の検討方法
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