「2015 MEDIA TECHNOLOGY!」 と「マイクロウェーブ展 2015」 神谷 直亮 今月は、11 月に行われた 2 件の小規模 「特別展示 8K3D シアター」では、ロッ ベルリンなど大都市を撮影したものや立山、 な展示会に触れたいと思う。NHK メディ クバンド、サカナクション(サカナのアク 函館、ハワイなど観光地をテーマにした作 アテクノロジー(NHK-MT)が開催した ションという意味らしい)の実写と CG で 品が多かった。すべて 1 分の尺で、30 万 「2015 MEDIA TECHNOLOGY!」と高度 構成された立体映像が、22.2 チャンネル 円で貸し出すとのことであった。意外だっ な産官学の技術レベルを誇示した「マイク のオーディオと共に上映された。特設のシ たのは、ずらりと並んだ 18 コンテンツを ロウェーブ展 2015」である。 アターで使用されていたのは、JVC の 8K 紹介するディスプレイが 2K となっていた。 プロジェクター 2 台と 250 インチのスク 「4K コンテンツマーケット」のコーナー リーンのであった。 では、ハウステンボス、セブ島、フィージー、 NTT-MT が誇る最先端の技術を活用し、 屋久島など、観光の名所を撮影した 4K 作 レーザー光線をふんだんに取り入れた空間 品の紹介と4K HDR映像のデモが行われた。 TECHNOLOGY!」展は、 「InterBEE2015」 演出は素晴らしかった。しかし、再生され 4K の作品の中の 1 本が、1,000fps で 直前の 11 月 12 日、13 日に開催された。 た 3D 映像は意外に小さくて迫力に欠けて 撮影した 4K スローモーションの映像で、 2016 年 6 月から BS(放送衛星)による いた。確かに、非常に奥行きの深さを感じ 特に来場者の注目を集めた。撮影に使われ 4K8K 試験放送が始まろうとしており、実 させる場面や観客席を背景にしたステージ た の は、 ア メ リ カ の Vision Reseach 社 にタイミングの良い開催と言える。 が 360 度眼前で回転するシーンなど、苦 製高速度、高解像度ハイスピードカメラ 会場となった東京・渋谷のヒカリエ 9F 労して撮影したと思われたが、全体的に線 「Phantom」で、再生は BrightSign 社の ホール B には、 「特別展示 8K3D Theater が細く、供えられた人形のように感じら 「BrightSign 4K」ハイエンド・メディア feat. サ カ ナ ク シ ョ ン 」 「8K コ ン テ ン ツ れ、見終わって胸に迫るものがなかった。 サーバーを使って行われていた。コンテン マーケット」 「4K コンテンツマーケット」 「2015 MEDIA TECHNOLOGY!」 NHK-MT に よ る「2015 MEDIA 敢えて言えば、メインボーカルの山口一 ツは、サッカーボールをキックする瞬間、 「Light Field Imaging」 「8K・4K3D for 郎、メンバーの岡崎英美、岩寺基晴、Ami ワインをグラスに注ぐシーン、水鉄砲の発 Medical & Education」 「Coll@Board」 「デ Kusakari、江島啓一をひとりひとり立体的 射などであった。 ジタルサーネージ」 「防災・減災 MT の取り に紹介し、その後、仲良く演奏するシーン 4K HDR 映像の方のデモは、ソニーの 組み~未来への記憶~」の 8 つのコーナー をハイライトした場面が新鮮に映った。 4K メモリープレイヤー「PMW-PZ」とモ が設けられていた。展示のタイトルに英文 ニター「BVM-X300」を使って手堅く行 が多いのと、4K より 8K をいつも先に並 「8K コンテンツマーケット」では、18 われていた。コンテンツのハイライトは、 べているのが面白かった。 タイトルのコンテンツから好きなものをタ 日光がまぶしいワイキキビーチの光景と夜 ブレット型ディスプレイで選んで、98 イ 空を彩る花火であった。 ン チ 8K デ ィ ス プ レイで視聴できる 光線空間を再現する立体映像テクノロジ ようにアレンジし ー「Light Field Imaging」のコーナーでは、 て あ っ た。 珍 し か 3D ディスプレイに美術品や医療現場の高 っ た の は、 再 生 に 精細映像を映し出し裸眼で鑑賞できるよう 中国の BOE 製のデ にアレンジしてあった。また、特殊なアス ィスプレイとイギ カネットの「AI プレート」と組み合わせる リ ス の 7thSense ことで空中に 3D 映像を結像させ、来場者 Design 社の「Delta の耳目を集めていた。 Infinity Ⅲ」超高精 「 8 K ・ 4 K 3 D f o r M e d i c a l & 細メディアサーバー Education」のコーナーでは、医療手術を が 2 台使われてい 8K または 4K3D で撮影する手法とシステ た。 写真 1 「8K コンテンツマーケット」のコーナーでは、18 タイトルの様々なコン テンツを並べ、販売やレンタルサービスを訴求していた。 52 FDI・2016・01 コンテンツは、東 京、ニューヨーク、 ムを完成させた実績を誇示していた。また、 「撮影だけでなく、編集や蓄積などの分野も 含めたトータルなサービスを実現していく」 写真 2 「4K コンテンツマーケット」のコーナーでは、1,000fps で撮影したスロ ーモーション映像が再生され来場者の注目を集めた。 写真 3 4K HDR 映像のデモは、ソニーの 4K メモリープレイヤーとモニターを使 って行われていた。 と意気込みを語っていた。8K ディスプレ ロウェーブ展 2015」は、11 月 25 日か 記述の 4 社以外で、興味深い展示を行っ イに 13.3 型有機 EL が使われており、製 ら 27 日までの 3 日間、パシフィコ横浜で ていたのは、情報通信研究機構とパナソニ 造元を聞いてみたら半導体エネルギー研究 開催された。残念ながら今年も衛星通信事 ックシステムネットワークの 2 社である。 所とのことであった。 業者の出展がなく、衛星本体と衛星との電 情報通信研究機構は、地球の姿勢の絶対 波を送受信する地球局関連のコンポーネン 値を超高精度に計測する VLBI(超長基線電 クラウドを活用する「Coll@Board(コ ト・メーカーや販売代理店が中心であった。 波干渉法)のプレゼンテーションを行って ラボード) 」のコーナーでは、企画からコン この分野で出展していたのは、NEC、三菱 いた。分かりやすい例として挙げていたの テンツ管理、編集などをメンバー間で情報 電機、緑屋電気、エー・ティーアイの 4 社 が、うるう秒の挿入である。つまり、地球 を共有しながら映像制作を行なえる支援サ である。 の自転で決められる時刻と原子時計で決め ービスを売り込んでいた。デモを見せても NEC は、衛星通信地球局用の進行波管 られる時刻との間に生じる時間差を 1 秒以 らったら、PDF 画面を見ながらチャット画 (TWTA)をブースに並べていた。C、X、 内にするのがうるう秒の挿入で、VLBI は地 面でやり取りする機能も備えていて面白か Ku、DBS、Ka、Q と 6 つの帯域をすべて 球の自転速度を 10 万分の 1 秒でとらえる った。サービスを提供できるタイミングを カバーしているのが、いかにも NEC らし 唯一の方法とのことであった。 聞いてみたら「2016 年度には完成させて、 かった。特に、Ku 帯の TWTA については、 パナソニックシステムネットワークは、 提供を開始できる見込み」と答えていた。 スカパー JSAT の東京メディアセンターの 「Giga Connection」技術のデモを実施し デジタルサイネージのコーナーでは、65 アップリンク用に納入していると語ってい ていた。近接する機器から機器へ電源と高 インチの 4K タッチパネルを使ったインタ た。 速データを無接点で伝送する技術である。 ラクティブ・サイネージやスマホを 2 次元 三菱電機は、子会社の島田理化工業と デモでは、給電コイルを高速回転させるこ バーコードにかざして URL を取得するこ 共同で出展して、VSAT 用 LNB、高出力 とで、HD カメラの映像を接点レスで伝送 とで、画面上の映像を表示させて持ち帰る GaN HEMT、ハイパワーアンプなどを紹 して見せていた。 ことを可能にした「持ち帰りサイネージ」 介した。VSAT 用 LNB は、C バンドから などが提案されていた。 Ka バンドまで 6 帯域をカバーしている。 最後の「防災・減災 MT の取り組み~未 緑屋電気は、アメリカの Narda Miteq 来への記憶~」のコーナーでは、 「大津波 製の多様な Active 3.11 未来への記憶」と題する映像が上映 コンポーネントと された。NHK-MT が、東日本大震災発災後 Passive コンポー 1 か月目から定点観測的に被災地を 3D で ネントを出展して 撮影したメディア史に残る貴重な遺産とも 注目を集めた。 言えるコンテンツである。今回、改めてこ エ ー・ テ ィ ー の記録映像を会場で視聴して、つくづくそ ア イ は、 ア メ リ の思いを新たにした。 カ Naoakira Kamiya 衛星システム総研 代表 メディア・ジャーナリスト の G e n e ra l Dynamics と子会 「マイクロウェーブ展 2015」 社 の Vertex の 製 品の PR に余念が 「快適でやさしい社会を演出するマイクロ なかった。 波技術」を基調コンセプトにした「マイク 53 FDI・2016・01
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