プロセスアセスメントの分類とアセッサ教育 村上孝(NSD),福田仁志(*1),石津和紀(*2),近藤聖久(*3),佐藤克(*4),小川清(*5) Study for Categories of process Assessment and Assessor training Murakami Takashi, Fukuda Hitoshi, Ishizu Kazunori, Kondo Kiyohisa, Sato Masaru, OGAWA Kiyoshi ねらい アセスメントには様々な状況の違いがあり、アセッサが対応できる必要について検討した。 キーワード , プロセスアセスメント、分類、教育 Target: .Assessor experiences and trainings with categories of target product and services and other aspects Keywrds: Assessor training, categorize, of software process, process assessment 想定する読者・聴衆 2.2 研究開発と量産 名古屋市工業研究所で設計しているのは、研究試作の プロセスアセスメントを実施したことがある組織、 前段階に相当する。そのため、企業内において研究試 改善のためにプロセスアセスメントを検討している組 作段階をどのように診断したり、作業記録などを残す 織の経営・管理層、技術者。不具合対応を含む作業の ようにすると効率が上がるかなどの知見の整理が必要 効率化、設計者の士気の向上、ソフトウェア技術者の である。 新人育成を検討している方。 2.3 規模 1.背景 プロセスアセスメントは、協力会社間の調整、作業 小規模なソフトウェアは一人で作成する。また大規 模なソフトウェアでも、構造化をあらかじめして、分 担可能で、単独でも動作するような小規模な道具類に の抜け漏れなどを調べる手法として、作業改善の鍵と 分けて開発することがある。開発結果と開発担当のそ なっている。これまで、名古屋市工業研究所で実施し れぞれの量に応じた Tailoring が大切である。 てきたプロセスアセスメントがオープンソースを対象 2.4 文書 にしてきたことなどから、アセッサとアセッシの間の オープンソースの場合はソースコード自体を文書と 意思疎通が不十分であることがわかった。そこでアセ して公開しいつでも見えるようになっている。また、 スメントを分類し、どのようなアセッサが必要である ソースコードに統合環境、構築方法などを記載したり、 か、そのための教育・訓練をどのようにすればよいか 構築用の手順を記述したファイル等を用意することが を検討した。 ある。例えば TOPPERS プロジェクトでは、TOPPERS 2.分類 会員であれば、開発の経緯がわかるような ML, Wiki, Trac などを用いており、アセッサが TOPPERS 会員企業 2.1 診断対象:オープンソース・商用ソフト・書籍 であれば必要な資料を確認することができる。 名古屋市工業研究所で設計しているのは、オープン 2.5 設計期間 ソースであるため、費用の対価が時間で測るのではな オープンソースでは、一日で移植して公開するなど いだけでなく、そもそも対価の支払いは受託研究など 最短で期間1日の場合がある。そのため十年かけるソ 限定的であること。ソースコードによる設計など、商 フトウェア開発の手順と同じ書類が必要ではない。 用ソフトウェアとは手順が異なることが多数ある。こ 2.6 品質管理と品質保証 れは、以前、IPA の出版物を作成する過程を診断した際 受託開発のように顧客に渡すソフトウェアの品質目 に同様の課題があり、その際、出版物の作成過程は, 標の設定があれば、それぞれのプロセスでの品質目標 読者を想定し自分で仕様や内容を定義するといったパ を設定することができる。ところで、オープンソース ッケージ開発と相似であると想定し、診断を実施した。 では、品質は保証していないが、品質を管理していな いわけではない。例えば、自動車向けのオープンソー 1 豊田自動織機、2 ICS, 3 三菱電 三菱電機、4A&D, *5 名市工研 スでは、静的解析の一環として MISRA C の検査をして 1 逸脱の手続きを取るなどしている。ただし、角速度制 プンソースの開発にあたっても、自動車の制約条件に 御のように、システム試験の結果アルゴリズムを変更 合うかどうかについて、技術的な深い質問などにより、 するような関数の場合には、試験はシステム試験に力 アセッサが十分にそれに答える活動を提示することに 点を置くことがあり、他の開発と同じ順番ではない。 よって、アセッサとアセッシの両方に成果をもたらす 分類して行く中で、診断対象と経験した分野が異な ことができた。 る場合、経験則に基づく質問や診断結果を出している この場合、モデルに書いてある言葉そのものではな ため、依頼者の状況にあった改善提言や求めている結 く、アセッシの説明に対して理解できる言葉で質問を 果にならない場合が多いことがわかった。 することによって成果をもたらしたものである。実際 さらに課題としてあがったのが第一者、第二者、第 に、第一者、第二者、第三者のいずれの場合も、組織 三者による診断の仕方の違いがあった。普段は、第一 の目的・目標、現場の意向、アセッサの能力などに応 者、第二者、第三者のいずれかの立場で診断しており、 じて、甘くなることも辛くなることもあることが議論 3つの立場の違いを意識してない。 の結果分かった。どの場合でも、相似な構造はある。 しかし、個々人の経験では、第二者は特定の調達先だ 3.診断の種類 ったり、第三者が特定のアセッサであったりと十分な Automotive SPICE の基になった ISO/IEC 15504 では、 経験を積めていないことが多いことがわかった。アセ 調達目的と自己改善の二つの種類に分類してきた。し ッサ教育としては、第一者、第二者、第三者全ての視 かし、国際規格などでは、適合確認の作業を第一者、 点でのアセスメントを経験するとよい。 第二者、第三者に分類している。そこで、アセスメン トも三分類での違いについて検討した。立場の違いな 4.まとめ どから、アセッサの訓練にはなってもアセッシにとっ 実業務では機密性の問題で第二者、第三者視点での て十分な成果がある場合とそうでない場合があった。 診断が容易に経験できない事は課題である。IPA で実施 そこで、アセスメントの仕方についての違いの種類と、 している SPEAK IPA の教育においては、まず第一者視 そのために必要となる教育・訓練のあり方について整 点で自組織のこととして診断してみて、次に第三者視 理した。 点で他組織を診断するという訓練をしている。連名の 表 1 視点の違い 多くのメンバがこれを経験して成長してきている。教 材は実例で、証拠などはネットで検索して確認するこ 視 点 1 2 3 特徴 中がよくわか っている。 いつでも可能 だが中途半端 になることが ある 原価など機密 事項が壁にな る 調達決定後と 調達決定前で 範囲が異なる 可能性あり レベル取りの ために依頼す ることがある 視点は多角 化する 費用見積り 課題 甘くなりすぎる か、辛くなりす ぎる 立場によって見 えない資料あり 二者で対応する つもりであれば 甘くなり、一者 にやってもらお うと思うと辛くな る。立場で見え ない資料あり アセッサが経験 していないこと は対応できない ことがある。 依頼の仕方に ついて要検討 アセッサの対応 二者、三者のアセ スメントも経験す る 経営・管理層の長 期目標に基づい て行う 第一者もアセッサ チームに加わる アセッサがアセス メントの複数のや り方を経験し改善 している 第一者もアセッサ チームに加わる アセッサがアセス メントの複数のや り方を経験し改善 している とができることなども有効である。また、第二者、第 三者視点での診断とアセスメントプロセスの診断を経 験することが重要であることがわかった。 文 献 [1] 社会調査法,福武 直・松原 治郎, 有斐閣,1967 [2] Automotive SPICE を例にしたアセスメントモデルに対する評価 指標,河野文昭, 足 立久美, 小川清, 北野敏明, 込山俊博,電気関係 学会東海支部連合大会,2006 [3] プロセス改善ナビゲーションガイドプロセス診断活用編(SEC BOOKS) ,IPASEC,2007 [4] 同、ベストプラクティス編(SEC BOOKS),IPASEC,2008 [5] 最小セット OS 開発の作業改善と診断,後藤健太郎, 柏原一雄, 市川知典, 竹下千晶, 三輪田寿康, 川口直弘, 堀武司, 斉藤直希, 小川清,情処学会研究報告,2009 [6] 製品、作業、人に着目した効率的な作業診断の実践,飯田卓郎, 山内一資,丹羽友 治,市川知典,村上孝,近藤聖久,北野敏明,小川清, 第 8 回クリティカルソフトウェア ワークショップ, 2011 [7] アセスメント経験にもとづく SEPG 人材育成と現場改善への 展開,倉田智穂,第 8 回ク リティカルソフトウェアワークショップ, [8]作業モデルと診断モデルの分析と仕立てについて,村上孝, 北野敏明, 小川清,電 気関係学会東海支部連合大会,2011 表に1者、2者、3者によるアセスメントの違いに ついて記載した。どの場合でも、経験のあるアセッサ [9] TOPPERS/SSP への組込みコンポーネントシステム適用におけ る設計情報の可視 化と抽象化, 鵜飼敬幸, 第 9 回クリティカルソ フトウェアワークショップ, 2011 では十分な成果を上げている。例えば、自動車のソフ [10] SPEAK-IPA を用いた設計指向による 公開アセスメントの試 トウェアの経験のあるアセッサは、自動車向けのオー 行, 佐藤克,福田仁志,村上孝,小川清,山内一資, 石津和紀,倉田智穂, 近藤聖久,北野敏明,第 12 回 WOCS2, 2015 2
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