軽量鉄鋼建築物向け新型ハイブリッド・セミアクティブ TMD 本論文では

軽量鉄鋼建築物向け新型ハイブリッド・セミアクティブ TMD
(原題:A NOVEL HYBRID SEMI-ACTIVE TUNED MASS DAMPER FOR LIGHTWEIGHT STEEL STRUCTURAL APPLICATIONS)
本論文では、筆者の提案する新型ハイブリッド・セミアクティブ TMD(以下、SHMD)につ
いて、従来用いられてきた TMD や AMD またその亜種と比較することで性能面・エネルギ
ー面での優位性が述べられていた。
従来の TMD では、経年による制御対象の特性変化やそもそもモデルに含まれる誤差のた
め、長期間にわたって良好な特性を得ることは難しいという欠点があった。そこでバネ・ダ
ンパを廃し、アクチュエータを用いて可動マスを動かす、所謂 AMD や、従来型の TMD に
アクチュエータを付けたハイブリッド型の AMD(以下、HMD)が開発されたが、これらには
消費エネルギーが大きいという問題があった。またアクティブ制御の為、建築物が揺れたと
きに、その振動エネルギーを吸収するだけではなく、わずかながら建築物にエネルギーを追
加してしまうという問題もあった。パッシブの場合はこの問題は発生しない。TMD や、ダ
ンパの減衰係数を可変できる STMD はエネルギーを吸収するだけである。
以上の問題を解決する為に筆者が開発した SHMD というのは、可変ダンパを備えた TMD
にアクチュエータを取り付けた、いわば STMD と HMD の合いの子である。筆者はこれを
76 階層の建築物に取り付け、風入力下での建物の応答をシミュレーションで評価すること
で、SHMD の性能を評価した。比較のため図 1 に示したように、TMD、STMD、AMD の三
種についてもシミュレーションを行った。風入力の時間は 900 秒間で、これは性能評価に十
分な時間であると筆者は述べている。また、どの制振装置でも可動マスの重さは 500 t で一
定とした。
図 1 シミュレーション用のモデルと各制振装置
(左から TMD、STMD、AMD、筆者提案の SHMD)
建築物に風入力を与えた場合の応答の評価には 12 個の指標が設けられていた。変位と加
速度の減少率、変位の RMS 値と加速度の RMS 値の減少率、変位の最大値と加速度の最大
値の減少率、そしてエネルギーの RMS 値と最大値の以上の項目が主な評価項目であった。
すべての項目で、小さい値を示すほど、その項目の性能は良いということを意味している。
シミュレーションの結果、ストロークを同じにして比較すると、SHMD は AMD を取り付
けた場合と同じ性能を得られるということが分かった。その上、SHMD の場合の消費エネ
ルギーは概ね AMD の場合の 10 分の 1 程度という結果が得られた。表 1 に制振装置の性能
評価結果を示す。
表 1 制振装置の性能評価結果
TMD
STMD
AMD
SHMD
Max force [kN]
N/A
N/A
300
100
Rms force [kN]
N/A
N/A
57.87
64.02
Max energy [kW]
N/A
N/A
57.87
32.09
Rms energy [kW]
N/A
N/A
13.36
2.88
Total added energy [kJ]
N/A
N/A
7315
779
アクティブ制震の場合には筆者提案の SHMD の要するエネルギーの少なさ、そして加え
たエネルギーの少なさが AMD に比べて際立っていることが分かる。