八月のフロリダ 結城 文 カストロのキューバ逃れし難民の二世らとゆくマイアミ・ビーチ 大いなる緑の傘を拡げたつ樹齢八百年の大木に遇ふ 甘やかな青海カリブ海わたる朝風にそよぐバンヤンの葉むら 褐色の気根のひげをあまた垂るるバンヤン老爺のごとしと見あぐ ベイサイド・マーケットゆけば英語よりスペイン語優勢に聞こえくるなり メキシコの旗を体に巻きつけし女が歌ふ真昼のカフェ そ の 出 自 は 分 か ね ど 散 策 の 足 と め て 「ビ バ ・ メ キ シ コ」 と 唱 和 す る 観 衆 サ ン ト ・ オ ー ガ ス テ ィ ン へ 遠 足 ティムナカン先住民の遺跡跡めぐりてをれば雷鳴とどろく を ち み づ 変若水といふがフロリダにもありてプラスチックのカップにて受く 発掘は十六世紀のスペインの侵攻を確かなものと裏づく 14 展景 No. 80 展景 No. 80 15
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