伴走型支援体制構築の進め方 - 特定非営利活動法人 中小企業販路

成功事例が生まれる
伴走型支援体制構築の進め方
平成 28 年度版
株式会社流通プランニング研究所
成功事例が生まれる伴走型支援体制構築の進め方
INDEX
Ⅰ
基本前提
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1.伴走型支援の定義
2.支援を妨げている理由
3.課題と対応策
Ⅱ
伴走型支援体制構築の進め方
支援体制構築のための施策
支援力向上のための施策
・・・・・・・・・・・ 2
Ⅲ
支援体制構築のための施策 ・・・・・・・・・・・・・ 3
1.データベースの整備
・・・・・・・・・・・・ 3
2.支援への誘導手法
・・・・・・・・・・・・ 5
3.事業計画策定手法
・・・・・・・・・・・・ 6
4.伴走型支援・検証手法
・・・・・・・・・・・・ 7
Ⅳ
支援力向上のための施策
1.経営指導員研修
2.研修
3.専門家の窓口相談
4.交流会
[参考]導入事例
・・・・・・・・・・・・・ 8
・・・・・・・・・・・・・・ 9
・・・・・・・・・・・・・・ 11
・・・・・・・・・・・・・・ 11
・・・・・・・・・・・・・・ 12
作成趣旨
この企画書は、早期に伴走型支援体制を構築したいとされる某商工
会議所様よりご依頼を受けて作成したものです。
過去、伴走型支援体制構築の支援に携わってきたことから、最近、
多くの方からお問い合わせ頂くようになって参りました。
今後、経営発達支援計画の認定機関が増えることで、構築の進め方
に関する情報を必要とされる方の増加が見込まれます。
伴走型支援体制の早期構築を目指される商工会議所、商工会の皆様
に役立つように、取り組まれるべき事項とその内容を、改めて私見と
してまとめてみました。
お役に立ちましたら幸甚に存じます。
企 画
経済産業省認定 経営革新等支援機関
株式会社流通プランニング研究所
代表取締役 川上 正人
成功事例が生まれる伴走型支援体制構築の進め方
Ⅰ
基本前提
1.伴走型支援の定義
伴走型支援とは『事業計画にて策定した目標を達成するために、強みの発揮、経営課題の
解決など必要な支援を計画的、継続的に行い、自らが計画、実施、検証、是正を自律的に行
える状態になるまで導くこと』と、ここでは定義しています。
これまでの支援との相違は
○支援する目的、目標が設定されていること
○その達成手段があらかじめ示されたものであること
○時期を定め、定期的に行われるものであること
と考え、局所的な課題解決のための助言でなく、大局的な観点に立ち短時間で効率的、かつ
効果的な支援を、期間を定めて行うことにあります。2 年から 3 年が理想とされています。
2.支援を妨げている理由
効果的で、かつ失敗の許されない支援を行うに際して以下の理由が妨げとなっています。
過去に伴走型支援体制を構築された支援機関の方が、感じられていた原因でもあり、小規
模事業者に伴走型支援が必要であるのと同様に、これまで経験したことのない支援を行うた
めには、支援担当者にも相談できる先(セーフティネットと称す。
)が必要と考えます。
○やり方がわからないこと
○自信が持てないこと
○よりどころを持たないこと
3.課題と対応策
ここでは、経営指導員研修、研修、専門家の窓口相談、交流会を提案しています。その理
由と必要性、及び実施効果は次の通りです。
○やり方がわからない
業種、業歴、規模が異なることから、標準化することが難しいのが支援の方法ですが、反
面、共通点も多くあります。支援の方法は、大きく 4 点にわけられ、ヒアリングすること、
分析すること、方向付けをすること、及び書面にまとめること、この繰り返しです。この方
法を習得することができれば、まずは、行動に移せます。
【経営指導員研修】
○自信が持てない
自分で体験しないと技能は身につきません。専門家の窓口相談に同席することで、自分な
らどうするかを考え、どのような方法があるのかを知ることができます。初期段階において
は研修や窓口相談に支援対象者と同席して共に考えるという経験を積むことで、肌で感覚が
身につき、さらに成果報告で自信につながります。【研修、専門家相談、交流会】
○よりどころを持たない
間違った助言は、時として事業者に迷惑が及んだり、最悪の場合、倒産に至る可能性もあ
ります。自分では判断しかねることや上司、先輩に聞いても得心の行く答えが得られない際
のセーフティネット的な相談先が求められます。わからなくても、聞くことができる相手を
持つことで、不安を解消することができます。
【専門家の窓口相談】
1
Ⅱ 伴走型支援体制構築の進め方
短期間にて支援体制を構築するためには、2 つの施策を同時に推進する必要があります。
組織として計画的に支援を展開するための「支援体制構築施策」と効率的で効果的な支援
の手順と手法を習得するための「支援力向上施策」に、取組むことが求められます。
伴走型支援体制構築の基本体系
支援力向上のための施策
支援体制構築のための施策
1.経営指導員研修
2.研修
3.専門家の窓口
4.交流会
1.支援先データベース整備
2.支援への誘導手法
3.事業計画策定手法
4.伴走型支援・検証手法
【2 つの取り組みが必要な理由】
支援は、一般的に認知されておらず、中には過去のトラウマからネガティブ(否定的)な
イメージを有している方からおられます。
支援件数を増やすためには、まずそうした偏見を改めて、支援の体験機会を増やす必要が
あります。いきなり計画策定を支援するのでなく、ネガティブなイメージを、まずポジティ
ブ(好意的)に転換させる必要があります。その後、効果の高まる事業計画策定や実施支援
に伴走型で取り組むことが重要です。
要するに、支援体制は、まず恒常的に支援対象者が確保できる機会を設けることと、効果
的に支援できる支援力を向上させることで構築できると考えています。
支援対象者発掘のサイクル
商工会議所・商工会に対する
期待が大きい
支援体制の構築する
イメージ転換
支援の体験
支援対象者の取り組み
意欲が低い
この層を
掘り起こす
体験への誘導
巡回・セミナー・交流会
ネガティブイメージ
無関心
支援力を
計画策定・実施への誘導
研修・専門家窓口相談・巡回
成果の報告・披露
交流会
支援の推奨・紹介
巡回・セミナー・交流会
期待が小さい
信頼感の醸成
高める
伴走型支援
支援の卒業
交流会
意欲が高い
信頼関係の確立
自律的PDCA
よい支援をすれば、ひとが集まる
伴走型支援は、支援の体験をされた支援対象者の経営状況を分析し、分析結果に基づいた
事業計画を策定するところからスタートします。その進捗を確認し、新たに生じた課題を解
消するためのアドバイスを、定期的に行います。
これを繰り返すことで、自分で計画を策定することができ、適切に是正できるようになっ
た段階で、伴走型支援を卒業し、得られた結果を、交流会で披露頂くことを理想とします。
2
■支援体制構築のための施策
支援する目的を、成功事例を生み出すこと、と考えます
成功事例を生み出すことの難しさは、誰が成功するのか、わからないことにあります。
従って、
○支援件数を増やすこと(量)
○的確な支援を行うこと(質)
が求められます。
ここで紹介する方法は、新たな顧客を獲得し、満足度の高いサービスを提供し、継続利用
頂くことを目指しています。支援を受けて成功した(目標達成、課題解決)方の紹介を受
け、次の支援対象者が恒常的に得られる状態となることを目指しています。
支援体制構築のプロセス
1.データベース整備
2.支援への誘導手法
3.事業計画策定手法
4.伴走型支援・検証
(1)対象者抽出
(1)巡回指導
(1)持続化補助金
(1)新規顧客獲得
(2)担当者設定
(2)セミナー
(2)経営革新承認
(2)既存顧客維持
(3)リストアップ
(3)研修
(3)ものづくり
(3)進捗・評価
1.データベースの整備
今後、重点的に支援し、成果輩出を目指す支援対象者をリストアップします。
(1)対象者抽出
事業者のリストを作成します。4 段階に分けて、それぞれのモチベーションの程度に応じて区
分し、成果輩出が期待できるポテンシャルと前向きに支援を受ける意欲を持たれる方を重点支援
先として特定します。数と区分の定義は、協議によります。
【参考】
データベースとは、簡単にいえば見込み客リストです。入手できる情報をリストにまとめ
る作業によって、対象者を抽出します。
データベース整備のイメージ
④紹介拠点開発
・過去の支援先
・青年部、女性部
・金融機関
・税理士事務所
・社労士等士業
①データベース
(支援対象者抽出)
・各種相談
・セミナー参加
・マル経融資
・記帳指導
②支援ニーズ顕在
・巡回指導
③分類・ランク分け
・重点支援先
・要支援先
・支援候補先
②支援ニーズ潜在
・広報誌
3
・継続案内先
①データベース(支援対象者の抽出)
一覧性あるリストを作成します。
今後、セミナー、研修を案内する際の送付先リストともなります。
このリストに接点を記録したり、評価区分を行うことで、支援対象者を特定していきま
す。管理する項目は、協議のうえ決定します。(ここでは省略)
②支援ニーズの評価
データベースに記録された支援対象者のうち、事前の情報で支援ニーズが顕在化されてい
る場合は、巡回指導で直接アプローチします。巡回することで顕在化する場合もあります。
情報がない場合、あるいは過去の接触で支援を必要とされていない場合でも、支援を案内
する広報誌によって支援を促します。
③分類・ランク分け
一定の情報量が集まった段階で定期的に評価を見直します。支援ニーズが顕在化したもの
を、優先度によって 3 区分して把握することをお勧めしています。
直接、要望がない先でも、潜在的には支援の必要性がある場合も考えられるため、継続案
内先として、リスト上管理します。
④紹介拠点の開発
自らの情報収集では限界があるため、企業支援ニーズを持ちうる外部機関と連携して、支
援対象者の発掘を行います。支援ニーズが生じた際に、紹介依頼が得られるように、支援の
内容説明と、依頼を行います。
(2)担当者設定
経営状況分析、事業計画策定、計画の実施支援による成果輩出に責任を持って取組む担当者を
設定します。一連の支援を通じて成果が得られた場合は、成果披露の場でもある交流会にて成果
の報告と支援の進め方をご紹介頂き、これに一貫して対応するのが担当者の役割です。
支援担当者の役割
巡回指導
セミナー・研修
事業計画策定
計画・実施支援
交流会
経営状況分析
参加を促す
専門家窓口相談
施策の活用
成果報告
(3)リストアップ
月度における活動計画を策定して頂きます。ここでいう誘導とは、巡回指導による経営状
況分析、セミナー、研修への参加を指します。支援を受ける動機付けを図るために必要な行
動を具体的に計画として示して頂きます。
データベースの中から候補となる参加見込みが期待できる支援対象者をリストアップし
て、参加予定リストを作成します。
(見込み客リスト)リストに記載された支援対象者に個
別に案内し、参加を促します。
データ
ベース
リストアップされた参加者リストと
参加実績を比較し、評価方法の改善
を重ねることで、データベースの精
度を向上させます。
対象者を網羅
支援に誘導する
参加予定
リスト
見込み客
4
計画策定候補
参加者
2.支援への誘導手法
ここでいう誘導とは、事業者が事業計画策定を希望される意思を示して頂くことを指します。
(1)巡回指導
通常は、支援を希望されることはありません。しかし業績を向上させたいと事業者の誰もが願
っており、丹念な掘り起こしが求められます。すべてを分析対象と考えず、興味あるひとを発掘
するために種まきするという意識での地道な努力を行うことで必ず案件が見つかります。
色々な場数を踏んでいくことで、最終的に支援対象の候補となる事業所の見分け方がわかるよ
うになります。一般の営業活動でいう、見込み客探しと同様です。
成功事例は例外なく、ささいなきっかけから生まれています。
(2)セミナー
研修への誘導を図るため、事業者が興味あるテーマで開催します。
セミナーは、研修参加を促す事前告知であると位置づけます。研修につながるテーマを選定
し、事業の連動性を図ります。
セミナー終了後 10 分前には、毎回次期開催研修の案内告知、及び申し込み受付を行います。
○セミナーと研修の違い
セミナーとは、1 回 2 時間程度、聞くだけの講演会のようなものを指し、研修とは、2 日間 12
時間程度、演習により労力を伴うものを指します。
支援に対して興味関心の程度が低い方はセミナーには参加されても研修には参加されません。
研修に参加される方は、それなりの負担が生じますので事業計画策定に至る可能性は大です。
とはいえ、小規模事業者の方は、少人数であるがゆえに時間的制約がありますので、必ずしも
研修に参加されないからといって、支援の対象外であるともいえません。
しかし参加されることが、支援を受けたい期待の程度の目安になります。
(3)研修
事業計画を策定する際の方向付けや事業活動のアクションにつながるテーマで開催します。
国、県の目指すところは、まずは経営革新であることから、事業計画を経営革新計画と想定
し、そのインセンティブの有無に関係なく、策定されるように誘導します。
研修だけでは計画は、完成しませんので、窓口相談に誘導します。
事業計画策定支援への誘導プロセス
(2)セミナー
支援先ランク
(1)巡回指導
(3)研修
誘導 ・1 回 2 日間
・重点支援先
・ヒアリング
誘導 ・1 回 2 時間
アプローチ
・分析
・研修の擬似体験
・要支援先
・負荷あり
誘導
研修を案内
・支援候補先
・強みと経営課題
セミナーを案内
・継続案内先
段階を経るごとに数が減り、絞り込まれる
事業計画策定支援
・専門家窓口相談
○事業の連動性
セミナーや研修を開催する目的を、最終的に事業計画策定の希望者を発掘することに置き
ます。自らの意思で時間や労力をかけて考えをまとめる意思をもたなければ、事業の成功は
ありません。一定の負荷がかかることで、支援すべき対象者を選別することができます。
巡回指導は、やみくもに訪問するのでなく、データベースに基づいて、あらかじめ仕分け
され、必要度や成功できる可能性を考慮して選ばれた先を、優先的に訪問します。
巡回指導からセミナーや研修が、すべて一体化、連動することで支援の数を増やせます。
5
3.事業計画策定手法
補助金などのインセンティブがなくとも、事業計画を策定したいという方を支援します。
計画策定の実務的な手順は、次の通りです。
事業計画策定支援のプロセス
経営実態の把握
・販売商品・役務
・保有する技術
・従業員
・経営資源
・財務など
経営状況の分析
・経営環境分析
・財務分析
方向性の確認
・事業目的、目標
・達成手段
事業計画策定
・事業目的、目標
・達成手段
・活かすべき強み
・解決すべき課題
・経営者の意思
・実現可能性考慮
施策の活用
・補助金など
事業計画には、2 種類があり、思考を整理する目的と施策を活用する目的にわかれます。
事業計画を策定支援することは、施策を活用する支援ともなります。施策活用を望まれなくて
も、経営課題の解決にも役立ちます。
実施手順としては、経営実態を把握したうえで経営状況を分析し、今後の方向性をまとめてい
きます。そのうえで、取り組む方向や内容について経営者の意思を確認し、書面にまとめます。
作成された計画は、次の施策活用につながります。経営指導員研修のテーマとリンクさせてい
ます。
(1)小規模事業者持続化補助金
しばらくの間、制度の継続が見込まれています。
また、支援対象者の関心も高く、支援依頼の増加が今後も見込まれます。
単に計画を作成して、申請するだけでなく、支援対象者の期待に応えられるよう、採択される
ことが求められます。
:経営状況分析シート
を、的確に作成できるようになることで経営状況を分析する支援力が身につきます。
(2)経営革新計画知事承認
経営革新計画を支援する制度は、PDCAの定着を促すため平成 11 年に創設されたもので
す。これまで支援施策の中枢を担ってきましたが、これからもその重要性は変わりません。
各種国や県の施策を活用するうえで、知事の承認を受けることは必須となっています。
:経営革新構想シート
を、的確に作成できるようになることで事業計画を策定する支援力が身につきます。
(3)ものづくり補助金
補助される金額も大きいことから、今後も支援が期待されています。
持続化補助金と比較して、問われる要件が多く他の申請者の作成レベルが総じて高いことか
ら、採択される申請書を作成することは容易ではありません。
:経営状況分析シート、経営革新構想シート
が、まず最小限、的確に作成できるスキルが求められます。
採択されるためには、
“問われること”に“答えること”が必要です。
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4.伴走型支援・検証手法
直面する経営課題の克服と、設定された目標を達成するための顧客づくりを支援します。
(1)新規顧客獲得支援
面識がなく、気心が知れているわけではないひとと面談し、自社や商品・サービスのよさを説
明する準備が、一般には不足しています。目標を達成するためには、新たな顧客を獲得する必要
がある場合がほとんどであるため、その準備を支援します。具体的に何をすればよいのかが理解
されていないため、必要な取組みをアドバイスする方法で行います。
(2)既存顧客維持・関係強化支援
ほとんどの事業所は、顧客管理を行っておりません。今回の伴走型支援体制構築の取組みも、
データベースを作成するところからはじまるのと同様に、事業所においても、顧客の全体像を把
握する必要があります。顧客を可視化することで、現実を直視することができ、次に何をすべき
か、新たな課題が浮かび上がってきます。その取組みをサポートすることで信頼感を高めます。
(3)進捗・評価
原則として、四半期に一度、取組みを定量的、定性的に評価します。売上、利益などの財
務指数だけでなく、客数や客単価など、進捗がリアルに判明できる目標をあらかじめ設定
し、取組みを明確化しておくことで、できた、できていないを、評価致します。
伴走型支援のプロセス
新規顧客獲得
まず ・対象先、商品を選定
ここから ・自己紹介の準備
・商品説明の準備
・接客、商談の進め方
新たな目標・課題
既存顧客維持・関係強化
・新商品開発
さらなる
・顧客を可視化
モチベーション
・新たな課題が顕在化 モチベーション ・販売促進
・提供方法
・潜在的販売機会の発見
・人材確保等
・取組み意欲の向上
こうした取組みを経て、徐々に経営課題が解消されます
【参考】
○実施支援の価値
いかに計画書を作成しても、実施されなければ何にもなりません。
絵に描いたもちとなることを阻止するところに実施支援の価値があります。
定期的に進捗状況を第三者が評価することは、支援対象者にとって、一定のプレッシャーとな
ります。それは、
「やると決めたこと」が「できていないこと」を「知られてしまう」ことにつ
ながるためです。
実施支援は、実施を促すプレッシャーを与える目的と、新たに生じた課題の解決を支援する目
的があります。一般には、フォローアップと称されています。
○新たに生じた課題の解決
自身で解決できない場合は、先輩や上司に相談する他、専門家の窓口相談を活用します。
不慣れな場合、解決できないことが多いと思いますが、ひとつずつ課題解決を体験しくこと
で、知識の積み重ねができ、自信がついてきます。
一度体験すれば、適切なアドバイスが、次回からできるようになります。
7
■支援力向上のための施策
初期段階においては、まず学び、体験して自信をつけることが肝要です。ケースを積み重
ねることで、より知識も増え、技量も高まり、自信が持てるようになります。支援した成果
を披露する場を設けることで達成意欲も高まると共に、次の案件発掘にもつながります。
先駆的に経営発達支援事業に取組まれている支援機関が、これまで実践してこられた内容
を元に、構成しています。
支援力向上のプロセス
1.経営指導員研修
・基本的な考え方(心構え)
・すすめ方(手順と手法)
・演習・検証(事例)
・5 つのテーマ
・1 日 6 時間×2 日間
2.研修
・事業計画書作成
・経営革新塾
・販路開拓塾
・顧客管理塾
3.専門家の窓口相談
・同席によるOJT
4.交流会
・支援成果を紹介
・支援対象者と支援担当者
・受けた支援と効果
・対象
過去に支援を受けた方
これから支援を受けたい方
是非支援を受けて欲しい方
支援力を高めるには、
「知識習得」と「体験・経験」が必要です。
経験したことがないことに取り組むにはかなりの勇気が要りますので、まずは、どのようなも
のかを知り、手順と手法を、経営指導員研修で学びます。
研修は、一般的に事務局として携わる機会が多いのですが、支援力向上につなげる機会ととら
え、受講者と同様に聴講する他、アドバイスにも役立てます。
ここで構想されたことを計画書にまとめていきますが、自信が持てない場合は、専門家を活用
します。回数を重ねることで要領がわかり、自分ひとりでできるようになることを目指します。
交流会は、自らが行ってきた支援を、これから支援を受けるひとに伝える場です。支援の意義
と価値が感じられることで、次の支援対象者の発掘につながるだけでなく、自分の支援に自信が
持てるようになります。
概要は、以下の通りです。
○経営指導員研修
現場に出て実践する前に踏まえておくべき事項を座学で事前学習致します。
内容は、心構え、支援の具体的な手順と手法とし、演習で擬似体験して頂きます。
○研修
支援対象者自らの手で、経営状況を分析してもらうと共に、事業計画策定を体験して頂くこと
で、計画が有用であるとの認識を深めて頂きます。担当者は重点支援先と同席し、意見を交換し
ながら計画等書面をまとめることで、自らの支援力を高めます。
○専門家の窓口相談
個別の案件に専門家と同席し、課題解決の手法やアドバイスの方法を学びます。
何をヒアリングすべきか、どうアドバイスすべきか、座学とは異なる経験が得られます。
○交流会
重点支援先の成果を年 1 回披露する場を設けて、成功事例複数社の取組みを紹介します。
このことは、支援される担当者の成果輩出に対するモチベーションにもつながります。
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1.経営指導員研修
経営発達支援計画の認定申請ガイドラインでは、事業計画を策定する前に、小規模事業者
の経営実態の把握、及び強みや経営課題を分析することが求めています。さらに計画策定
後、計画が実施され、経営目標を達成できるようフォローアップが必要となります。
最終的に小規模事業自ら、PDCAが回せるようになるためには、現在のところ 5 つの支
援テーマが想定されています。
時間的余裕と予算に合わせて、適時組み合わせて頂ければ幸いです。
経営指導員研修の進め方
経営状況の分析【指針①】
(1)経営環境分析
事業計画・策定支援【指針②】
(3)経営革新計画
(2)財務分析
事業計画・実施支援【指針②】
(4)新規顧客獲得支援
(5)顧客維持・関係強化支援
○想定時間
各テーマ 1 日 6 時間×2 日間 計 12 時間(延長は可能です。
)10:00 から 17:00 が理想
○進め方
基本的な考え方、すすめ方(手順と手法)を座学で 3 時間、残り 9 時間で演習・検証(2 事例)
に取組み、最低限の技量を身につけて頂きます。
○テーマ(詳細な内容は、後述)
2 つの指針に即した支援を行っていくためには、概ね 5 つの研修テーマが想定されます。
経営状況の分析【指針①】
事業所の経営実態を把握し、方向付けや取組み提案を行うことができるようになります。
分析が的確にできるようになることで、支援対象者の信頼感が飛躍的に高まります。
(1)経営環境分析
(2)財務分析
事業計画策定支援【指針②】
分析結果に基づいて、強みを生かし、経営課題を解消するための事業計画が策定します。
今後、進むべき方向性が明らかとなり、新たな事業活動を促すことにつながります。
(3)経営革新計画
事業計画実施支援【指針②】
設定された目標を着実に達成するための営業力強化を支援するフォローアップの手法です。
事業者は、販路開拓に関心を示しており、売上、利益の増加につながる支援を求めています。
(4)既存顧客維持・関係強化支援
(5)新規顧客獲得
○特徴
すべてフォーマットを使用し、講師が説明した後、作成に取り掛かって頂きます。
座学と異なり、すべて研修成果は可視化されますので、効果が確かめられます。
時間確保が難しい場合、初日のみ受講して下さい。二日目はスキルを高める演習となって
おり、必要な知識は、初日講義で得られる構成としています。
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【研修テーマ】
各テーマの実施目的と、実施メリットは、次の通りです。
提案テーマ
実施目的・内容
(1)経営環境分析
対象事業所の強みと経営課題を把握し、方向付けができる
巡回指導で、適切なヒアリングができる
(2)財務分析
経営状況の良否を判断する。経営課題が特定できる
分析できることで、信頼感が得られる
(3)経営革新計画
必要性を説明することができ、県申請書がひとりで行える
国、県など行政の期待にこたえられる
(4)新規顧客獲得
新規顧客を獲得するために、必要な準備がアドバイスできる
売上、利益の増加に貢献し、成功事例が輩出できる
(5)顧客維持・関係強化
顧客を資産としてとらえられるようになるフォローアップができる
支援する事業者から期待され、信頼される
【カリキュラム】
各回講義は、テーマが異なりますが、基本的に同じ進め方と致します。
基本的な考え方で心構えと初歩的な知識を習得し、進め方について説明を受けて、事例を用い
てワークシートを作成します。知識の習得と経験を踏むことで技量を身につけて頂きます。
単に作成するだけでなく、評価を受けることで、自分に足りないことに気づきます。指摘する
側も自分に置き換えて考えることで、自らの糧となります。
しっかりとした技量を身につけて、自信を持って支援に当たれるように、最小限にて必要な事
項を網羅したパッケージで構成しております。
想定手順
初日
基本的な考え方
心構え
60 分
すすめ方
(手順と手法)
120 分
時間配分
10:00
-11:00
11:00
-14:00
(昼 1 時間)
実
施 内 容
今回テーマが重要であるという背景を理解する
相談事例からみた小規模事業者の実態を知る
支援するものへの事業者や社会の期待、役割を認識する
支援の成功事例により、支援方法のイメージをつかむ
効率的な支援の進め方、手順を理解する
効果的な支援の手法を理解する
フォーマットの記載方法を把握する
14:00
-16:00
○グループワーク(PC 班毎)
講師が用意した事例に基づいて、ワークシートを作成する
グループリーダー主導のもと、時間内に完成させる
検証
各班
16:00
-17:00
受講者、講師が気づいたことを質問し、指摘する
作成者が回答する。質問者の疑問に答える
二日目
演習その 2
180 分
10:00
-14:00
(昼 1 時間)
○個別ワーク(PC ひとり 1 台)
主催者が用意した事例に基づいて、時間内に完成させる
実際に支援に携わっているリアルな事例を想定する
検証
5 名程度
14:00
-16:00
受講者、講師が気づいたことを質問し、指摘する
作成者が回答する。質問者の疑問に答える
まとめ
16:00
-17:00
研修を通して得た、わかったこと、気づいたことなどを共
有する。全員がまとめ、意見発表する
演習その 1
120 分
10
2.研修
研修は、セミナーと異なり、時間をとられ、作業を求められるため、単なる興味本位では参加
されません。そのことは、そのまま取組みへの意思につながってきます。
長時間、慣れない作業を伴う研修に、あえて参加されることは経営のあり方を変えたいという
強い意思の現れであり、支援することで成果につながりやすい方を見出すことにもなります。
巡回指導やセミナー(2 時間程度)で得た接点を、研修(2 日間)に誘導することで、事業計
画策定支援対象者の発掘へとつなげます。
提案テーマ
事業計画作成セ
ミナー
経営革新塾
時間配分
実
1 日 4 時間×
2 日間
計 8 時間
13:30-17:30
持続化補助金の申請を希望される方
・伴走型支援を受けるための入門編
・経営状況分析シートを作成して頂く
・自社を分析し、強みと経営課題が明確化する
1 日 6 時間×
2 日間
計 12 時間
強みを活かし、経営課題を解決したい方
・本格的に事業計画を策定し、公的支援を受ける準備編
・経営革新構想シートを作成して頂く
・これまで暖めてきた構想がまとまり可視化される
10:00-17:00
販路開拓塾
1 日 6 時間×
2 日間
計 12 時間
10:00-17:00
顧客管理塾
(新設)
1 日 6 時間×
2 日間
計 12 時間
10:00-17:00
施 内 容
計画通りに進まない方、顧客や取引先を増やしたい方
・伴走型で支援している方に対するフォローアップ編
・販路開拓 3 つのフォーマットを作成して頂く
・何が足りていなかったのか、不足が自覚できる
今の顧客管理方法を見直ししたい方
・伴走型で支援している方に対するフォローアップ編
・顧客管理 2 つのフォーマットを作成して頂く
・何が足りていなかったのか、不足が自覚できる
※標準的な時間の目安です。内容を調整することで、時間を変更することも可能です。
3.専門家の窓口相談
窓口相談の本来の目的は、支援対象者の課題解決です。その課題解決の場に同席して、専門家
と対象者のやりとりを聞くことは、ヒアリングやアドバイスの擬似体験につながります。
不得手なことを専門家に委ねる(まる投げと例えられる)という発想でなく、支援対象者と専
門家をつなぐコーディネートの場と考えるとともに、自らの学習機会として捕らえて頂きます。
提案テーマ
専門家の窓口相
談
時間配分
ひとり
90 分
120 分
180 分
内容に応じて
実 施 内 容
相談テーマは、概ね二分される
○経営課題の解決、アドバイス
○ヒアリングのうえ、事業計画のとりまとめ
計画策定には、180 分が好ましい
相談内容は、すべて書面化して、帰りにお渡しする
先駆的支援機関では、相談前後の担当者の役割を制度化されています。
効果的な相談とするために入念な準備と徹底したフォローを行っておられます。
要実施事項
実 施 内 容
事前準備
事業所の概況と、相談したい事項をとりまとめ、事前送付する
相談依頼書送付
担当者としてどう考えるか、専門家にどうして欲しいのか記載する
相談当日
何をヒアリングしているか、どのような聞き方をしているか参考にする
手順と手法の習得
どのような方法で、課題解決方法をアドバイスしているかを知る
事後フォロー
課された課題を実施されているかを訪問して確認する
実行を促す
理解が不十分で実行されていないことがあれば、補足説明する
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4.交流会
○交流会の意義
地域によって、経営革新フォーラム、経営革新シンポジウム、異業種交流ネットワークな
ど様々な呼称が用いられています。
ここでは、わかりやすく説明するために交流会と表記しています。
交流会の開催目的は、
・支援対象者の取組み成果を披露、報告すること
・担当経営指導員の支援成果を知らしめること
・支援が何であるかを周知させること
にありますが、さらには、
・支援を受けたひと同士をつなげること
・互いにメリットある関係づくりを促すこと
・ひとの話を聞いてモチベーションを高めること
に効果があります。
先駆的支援機関では、毎年 5 事例と定め、平成 20 年度から既に 7 回開催されています。
担当者がひとつ事例をつくるという目標をおいたことで、誇れる成果があげられるように
なったとのことです。これは、支援対象者も同様に、目標を宣言することで、実行が伴うの
と同様に、支援体制構築、整備を加速させることにつながると考え、提案致しております。
○交流会の内容
初年度は、大きな成果は必ずともあがらないかもしれませんが、次年度への布石と考え
て、取組み事例をご紹介されることをお勧めします。
【例】四国地区某商工会議所
実施項目
経営革新
フォーラム
定員 100 名
ビジネス交流会
想定 30 名
時間配分
13:10-16:00
基調講演
(趣旨説明)
事例紹介
5名
16:15-18:15
自己紹介
実
施 内 容
この交流会が何のために行われているのかを紹介する
経営革新に取組むことの意義を説明する
事例発表者が、取組みの成果と受けた支援を紹介する
支援担当者が、どのような支援に取組んできたかを説明する
・1 組の持ち時間は 30 分程度
・事業者が 25 分、支援した担当者が 5 分説明する
・事業の内容そのものより、受けた支援を中心とする
参加メリットは、モチベーションアップと支援を正しく知ること
事前に接点を持ちたい相手や希望を問い、まとめて配る
何をしていて、どのようなひとを探しているかプレゼン
支援担当者が、あわせたい相手を紹介して引き合わせる
・1 人 3 分程度 極めて短いプレゼンを実施する
・コーディネーターが、発表者の説明不足を補足する
・想定される相性のよい組み合わせを都度提案する
・途中、長めの休憩を入れて、直接、名刺交換できる
参加メリットは、必要な相談相手やつながりが持てること
この開催で、支援対象者を多数発掘されています。
支援の意味を参加者に直接お知らせできることから、新規案件の発掘につながっています。
創業前に参加、来年はあの場に立ちたいと宣言され、創業を成功させた創業者もおられます。
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□導入事例
現在、本企画に基づく関与を以下の 4 地区で行っております。
以下の地区の方と、年 1 回集って情報交換をしており、より効果のあがる方法を模索しな
がら、伴走型支援の理想的な進め方を探求しており、その結果を、各種研修等に反映させて
います。効果的な伴走型支援体制構築の進め方を、理論でなく現場に即して探求しています。
事業
計画
経営
革新塾
販路
開拓塾
交流会
窓口
相談
担当者
研修
四国 会議所
○
-
○
○
○
○
第一回
北陸 会議所
-
○
○
○
△
○
第二回
関西 会議所
○
○
○
○
△
○
第三回
関西 商工会
-
○
○
○
○
○
第二回
支援機関
窓口相談△=セミナー後数日、○=ほぼ毎月定例
認定
※顧客管理塾は、本年度創設。
□これまでの経緯と実績
企画立案者、川上正人は、当社設立以来、効率的で効果的な支援のあり方を探求し、事業
計画策定手法の標準化と計画実施支援手法の確立に取り組んで参りました。
支援の手順と手法を確立することをテーマとして平成 12 年、広島県知事より経営革新計画
承認を頂いて後、これまで 4 回の承認を頂き、内容のブラッシュアップを進めてきています。
現在も支援を継続している四国の商工会議所において、5 年ほど前から、いまでいう伴走型
支援体制や支援力向上の手法が確立され、四国経済産業局や日本商工会議所などからも高く
評価されるようになりました。同商工会議所の複数の経営指導員の方は、中小企業大学校な
どにて、支援担当者研修講師をつとめられています。
今回の提案は、同所にて約 10 年かけて培ってきた、伴走型支援体制構築のエッセンスを凝
縮し、2 年から 3 年かけて、成功事例が輩出できる内容であると自負しています。
株式会社流通プランニング研究所
経営革新計画広島県知事承認実績
第 1 回 平成 12 年 7 月 ローコスト・高品質経営支援サービスの開発
第 2 回 平成 18 年 10 月 効率的効果的経営革新支援システムの開発
第 3 回 平成 22 年 9 月 効率的効果的販路開拓支援システムの開発
第 4 回 平成 25 年 8 月 経営支援専門家向け経営支援体制構築支援システムの開発
すべて、支援の進め方をパッケージにする取組みをテーマとしてきました。
(支援担当者研修 平成 27 年度のみ)
中小企業大学校
機構北海道 経営発達支援事業の進め方
旭川校
経営革新、販路開拓支援のすすめ方
東京校
経営革新支援の進め方、販路開拓支援の進め方
関西校
販路開拓支援の進め方
直方校
小規模企業の支援能力の向上
その他、大分県商工労働部、大分県商工会議所連合会、福岡県商工会連合会、広島県商工会
議所連合会、松山商工会議所、高知商工会議所、徳島県商工会連合会、豊岡市商工会、大津商
工会議所、宮城県商工会連合会、(公財)北海道中小企業支援センター他
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□スケジュールサンプル
フルに採用された場合は、以下のイメージとなります。
時間的な制約を踏まえて、スケジュール化されることをお勧めします。
項目/月
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
支援体制
データベース整備 担当者設定
支援力向上
経営指導
員研修
セミナー
経営
環境
○
事業
計画
新規
顧客
○
○
計画
作成
研修会
専門家
相談
交流会
財務
○
○
○
既存
顧客
○
経営
革新
○
○
○
○
○
販路
開拓
○
○
○
○
顧客
管理
○
○
○
○
○
○
開催
予算に見合った担当講師を派遣させて頂きます。詳細は,お問い合わせ下さい。
以
【MEMO】
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上
【MEMO】
企 画
経済産業省認定 経営革新等支援機関
株式会社流通プランニング研究所
代表取締役 川上 正人
〒732-0052
広島県広島市東区光町 1 丁目 12 番 16 号広島ビル 4F
PHONE 082-263-1153 FAX 082-263-1154
E-mail [email protected]
初版 平成 27 年 12 月
※許可なく、複製を禁じます。
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