ベトナムの会計制度 の基礎知識 - ベトナム会計事務所

ベトナムの会計制度
の基礎知識
<根拠規定>
・2003 年会計法
・Decision 15/2005/QD-BTC(会計システム)
・Circular 13/2005/TTLT-BKC-BLDTBXXH(会計責任者)
2014 年 8 月
ベトナム会計事務所(http://www.vn-office.com)
~目次~
1 章. はじめに ................................................................................................................... 1
2 章. ベトナムにおける会計関連法令と基準 ............................................................... 2
1. 企業法(Law on Enterprise) .................................................................................................... 2
2. 会計法(Law on Accounting) .................................................................................................. 2
3. ベトナム会計基準...................................................................................................................... 5
4. ベトナムの会計制度を支えるその他の法令 .......................................................................... 7
3 章. 会計記録に関する法令と実務 ............................................................................... 8
1. 会計責任者 (チーフアカウンタント) の資格要件 ................................................................. 8
2. 会計記録に関する規定 ............................................................................................................ 10
4 章. ベトナムの財務諸表様式 ..................................................................................... 22
1. 貸借対照表 - Form No.B01-DN ............................................................................................... 22
2. 損益計算書 - Form No.B02 - DN ............................................................................................. 25
3. キャッシュフロー計算書 - Form No. B03- DN ..................................................................... 26
4. 財務諸表の注記(Note to financial statements) – Form No.B09 - DN ..................................... 27
5 章. 会計処理に関する日本基準、国際会計基準、及びベトナム基準の相違..... 31
1章. はじめに
ベトナムの会計制度といえば、本来、監査制度が含まれるべきですが、監査に関しましては、
ベトナムの監査制度として別途解説しますので、ここでは、監査を除く会計制度について解
説いたします。
ベトナムの会計制度で押さえなければならないのは、以下のポイントです。
1. “会計を支える法令や基準”とは何か?
2. “会計処理”の指針は何か?
3. “会計記録”に関する指針は何か?
4. “会計情報の開示”に関する指針は何か?
5. “会計処理の国際化”とは?
では、それぞれのポイントについて解説したいと思います。
1 会計制度
2章. ベトナムにおける会計関連法令と基準
ベトナムの会計を支える法律・基準として、以下の 4 つがあります。
(1)
企業法
(2)
会計法
(3)
ベトナム会計基準
(4)
ベトナムの会計制度を支えるその他の法令
企業法(Law on Enterprise)
企業法は、日本でいうところの会社法になります。この企業法において会計に関する以下の
規定があります。
•
会計に関する法律に従い、誠実かつ正解に会計記録を作成し、期限通りに提出しな
ければならない(第 9 条)。
•
企業が保管すべき書類として、監査役会の報告書、検査機関や独立した会計監査組
織の結論、会計帳簿、領収書や年次財務報告書がある(第 12 条)。
条文は少ないですが、企業法には、明確に会社の財務諸表作成義務、監査、会計記録作成・
保管義務が規定されています。
会計法(Law on Accounting)
2003 年 6 月に会計に関する法律が初めて公布されています。この法律にて会計に関する以下
の事項を規定しています。
章
タイトル
条
第1章
総則
第 1 条-第 16 条
第2章
会計業務
第 17 条-第 47 条
第3章
経理部門の組織と経理スタッフ
第 48 条-第 54 条
第4章
会計活動
第 55 条-第 58 条
2 会計制度
第5章
会計業務の政府管理
第 59 条-第 60 条
第6章
報酬及び罰則
第 61 条-第 62 条
第7章
実施時期
第 63 条-第 64 条
各条文の規定を概観できるようにタイトルをつけてみましたので、ざっと目を通してくださ
い。
第1章 総則
第1条
適用範囲
第2条
適用対象者
第3条
適用される国際条約
第4条
用語の定義
第5条
会計業務
第6条
会計上の要求事項
第7条
会計原則
第8条
会計基準
第9条
対象取引
第 10 条
財務会計、管理会計、一般会計及びその詳細
第 11 条
会計単位
第 12 条
会計言語及び数字
第 13 条
会計期間
第 14 条
禁止行為
第 15 条
会計記録及びデータの価値
第 16 条
会計記録の管理、使用及び提供に関する責任
第2章 会計業務
第 1 項 会計書類
第 17 条
会計書類の項目
第 18 条
電子書類
第 19 条
会計書類の作成
第 20 条
会計書類への署名
第 21 条
セールスインボイス
第 22 条
会計書類の管理及び使用
第 2 項 勘定科目及び会計帳簿
第 23 条
勘定科目及び勘定科目コード
第 24 条
勘定科目コードの選択と適用
3 会計制度
第 25 条
会計帳簿と会計システム
第 26 条
会計システムの選択と適用
第 27 条
会計帳簿の開始、記録、終了時期
第 28 条
会計帳簿の訂正
第 3 項 財務諸表
第 29 条
財務諸表
第 30 条
財務諸表の作成
第 31 条
財務諸表の提出日
第 32 条
財務諸表の公開
第 33 条
財務諸表の公開に関する書式と期限
第 34 条
監査済み財務諸表
第 4 項 会計検査
第 35 条
会計検査
第 36 条
会計検査の対象項目
第 37 条
検査官の権利と責任
第 38 条
検査対象会社の権利と義務
第 5 項 棚卸資産、会計記録の管理及び保存
第 39 条
棚卸資産
第 40 条
会計記録の管理及び保存
第 41 条
会計記録の紛失、破壊に関する会計業務
第 6 項 解散、清算、倒産時の持分分割、分離、変更がある会社の会計業務
第 42 条
会社分離に関する会計業務
第 43 条
会社分割に関する会計業務
第 44 条
会社合併に関する会計業務
第 45 条
会社統合に関する会計業務
第 46 条
出資者変更に関する会計業務
第 47 条
解散、清算および倒産に関する会計業務
第3章 経理部門の組織と経理スタッフ
第 48 条
経理部門の組織
第 49 条
経理部門の代表者の責任
第 50 条
経理スタッフの基準、権利、及び責任
第 51 条
経理スタッフに不適格な従業員
第 52 条
会計責任者(チーフアカウンタント)
第 53 条
会計責任者の資格要件
第 54 条
会計責任者の権利と責任
第4章 会計活動
4 会計制度
第 55 条
会計活動
第 56 条
経理スタッフまたは会計責任者の採用
第 57 条
会計業務を遂行する際に必要となる資格
第 58 条
専門的な会計組織に参加する権利
第5章 会計業務の政府管理
第 59 条
会計業務の政府管理
第 60 条
会計に関する政府管理局
第6章 報酬と違反
第 61 条
報酬
第 62 条
違反
第7章 実施時期
第 63 条
実施時期
第 64 条
施行細則
このように会計法は、主に会計記録や経理組織に関する事項を規定しています。それぞれの
規定内容につきましては、後述しますので、ここでは会計法で規定さている事項の紹介にと
どめたいと思います。
ベトナム会計基準
日本に企業会計原則があるように、会計処理や財務諸表の表示に関して、多くの国が各国の
会計基準を持っていますが、会計情報は国を超えた企業間比較が重要であるため、その作成
基準を国際的に統一しようという大きな流れが存在します。
会計処理や財務諸表の表示に関する指針として、ベトナム国会基準が存在する限り、ベトナ
ム国会計基準(Vietnamese Accounting Standards :以下 VAS)を適用しなければなりません。
その事項の会計処理や表示に関するベトナム国会計基準が存在しない場合には、ベトナム会
計基準の第 1 号「フレームワーク」の概念に基づき、妥当な処理方法が決定されます。
ベトナムは、基本的に、国際会計基準の一部を修正してベトナム国の会計基準に置き換える
作業を繰り返しています。したがって、国際会計基準が廃止された場合には、ベトナム国会
計基準も廃止され、国際会計基準が改訂された場合、ベトナム国会計基準もそれに伴い改訂
が必要となりますが、その改廃のタイミングには、タイムラグあります。
5 会計制度
ベトナム国財務省の主計局では、以下のように、過去において多数のベトナム会計基準を制
定しており、2009 年 9 月現在、以下のような状況となっています。
VAS
IFRS
タイトル
公布時期
第1号
Framework
フレームワーク
2002 年 12 月
第2号
IAS 2
棚卸資産
2001 年 12 月
第3号
IAS 16
有形固定資産
2001 年 12 月
第4号
IAS 38
無形資産
2001 年 12 月
第5号
IAS 40
投資不動産
2003 年 12 月
第6号
IAS 17
リース
2002 年 12 月
第7号
IAS 28
関連会社に対する投資の会計処理
2003 年 12 月
第8号
IAS 31
ジョイントベンチャー対する持分の財務報告
2003 年 12 月
第9号
<空き番号>
第 10 号
IAS 21
外国為替レート変動の影響
2002 年 12 月
第 11 号
IFRS 3
企業結合
2005 年 12 月
第 12 号
<空き番号>
第 13 号
<空き番号>
第 14 号
IAS 18
収益
2001 年 12 月
第 15 号
IAS 11
工事契約
2002 年 12 月
第 16 号
IAS 23
借入費用
2002 年 12 月
第 17 号
IAS 12
法人所得税
2005 年 2 月
第 18 号
IAS 37
引当金、偶発債務及び偶発資産
2005 年 12 月
第 19 号
IFRS 4
保険契約
2005 年 12 月
第 20 号
<空き番号>
第 21 号
IAS 1
財務諸表の表示
2003 年 12 月
第 22 号
IAS 30
銀行及び類似する金融機関の財務諸表における
2005 年 2 月
開示
第 23 号
IAS 10
後発事象
2005 年 2 月
第 24 号
IAS 7
キャッシュフロー計算書
2002 年 12 月
第 25 号
IAS 27
連結財務諸表及び子会社に対する投資の会計処
2003 年 12 月
理
第 26 号
IAS 24
関連当事者についての開示
2003 年 12 月
第 27 号
IAS 34
中間財務報告
2005 年 2 月
第 28 号
IFRS 8
セグメント別報告
2005 年 2 月
第 29 号
IAS 8
会計方針、見積もりの変更及び誤謬
2005 年 2 月
6 会計制度
第 30 号
IAS 33
一株当たりの利益
2005 年 12 月
ベトナムの会計制度を支えるその他の法令
以上の法令や基準は、一般的な会社の会計制度を支えるものですが、以下の会社については、
別の法律にて、その会計に関して特別な規定が設けられています。
ベトナム国証券取引所上場会社
証券法(Law on Securities)及び証券法に基づく国家証券委員会等の規定に従って情報を公開
することを義務づけられています。
金融機関その他
商業銀行、ファインス会社等は、金融機関法(Law on Credit Institutions)において、会計及
び情報公開に関する規定があり、一般的な会計に関する法定や基準に加え、これらの規定に
も準拠しなければいけません。
7 会計制度
3章. 会計記録に関する法令と実務
ベトナムにおける会計記録に関する最も重要な法律は、前述の会計法であり、ここには、作
成・維持しなければいけない帳簿、その帳簿への記載事項とその他の記録に関するルールや
会計実務に関するルールが規定されています。
主な規定をご紹介したいと思います。
会計責任者 (チーフアカウンタント) の資格要件
会計責任者の条件、任免手続き及び給与について以下の通り規定しています。
会計責任者が満たすべき条件
会社は、会計責任者(通常、会社の従業員)を任命しなければいけません(Cir 13-II.2)。
会計責任者の条件を満たす人材がいない場合、1 年間を最長として、会計責任者の役割担当
者を任命することが認められています(Cir 13-II.3.a)。これら何れの任命も困難な場合、
会計責任者を会計事務所などへ外部委託することも認められています(Cir 13-II.4)。
会計責任者に求められる条件の概要は、以下の通りです。
① 会計責任者が満たすべき要件(最低条件)
会計責任者が満たすべき要件は以下のとおりです(Cir 13-III.1.a)。
①
倫理的
誠実性、職業倫理および法遵守の意識
➁
資格・能力
短大以上の会計に関する資格と能力
会社の要求に基づく英語の語学能力(外資系企業の場合)
③
経験
3 年(短大卒および会計資格取得者)、または 2 年(大学卒)以上の
職務経験
② 会計責任者になるための条件
会計責任者になるための条件は以下のとおりです(Cir 13-III.1.a)
①
上記 1 の要件を満たしている。
➁
会計責任者証明書を取得している。
③
会計法で会計義務を担うことを認められていない次の者に該当しない。

未成年者
8 会計制度