Bridge Report キッツ(6498)

ブリッジレポート(6498) 2014 年 8 月 11 日
Bridge Report
堀田康之社長
http://www.bridge-salon.jp/
キッツ(6498)
会社名
株式会社キッツ
証券コード
6498
市場
東証 1 部
業種
機械(製造業)
所在地
千葉市美浜区中瀬 1-10-1
事業内容
バルブ国内首位。特に建築設備や石油化学向けに強い。海外開拓に積極姿勢。伸銅
品も国内上位。
決算月
3月
HP
http://www.kitz.co.jp/
- 株式情報 -
株価
発行済株式数(自己株式を控除)
571 円
DPS(予)
配当利回り(予)
12.00 円
2.1%
時価総額
109,218,738 株
62,363 百万円
EPS(予)
PER(予)
45.77 円
ROE(実)
売買単位
5.7%
BPS(実)
12.5 倍
100 株
PBR(実)
601.56 円
0.9 倍
*株価は 8/8 終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPS は前期末実績。
- 連結業績推移 -
決算期
(単位:百万円、円)
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2011 年 3 月(実)
106,059
6,341
5,929
3,063
27.36
7.00
2012 年 3 月(実)
108,446
4,638
4,388
2,480
22.71
7.50
2013 年 3 月(実)
111,275
6,558
6,521
4,039
36.98
9.50
2014 年 3 月(実)
117,355
6,470
6,501
3,564
32.63
10.00
2015 年 3 月(予)
122,000
8,200
8,000
5,000
45.77
12.00
*予想は会社予想。
キッツの 2015 年 3 月期第 1 四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
―目次―
1.会社概要
2.2015 年 3 月期第 1 四半期決算
3.2015 年 3 月期業績予想
4.今後の注目点
1
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今回のポイント
・15/3 期 1Q(4-6 月)は前年同期比 7.4%の増収、同 63.2%の経常増益。売上・利益共にバルブ事業がけん引。国内では値上げ効
果で主力の建築設備向けが増加した他、半導体製造装置向けも前期からの好調を持続。海外では北米やアジアが増加した。利益
面では、新設設備の立ち上げに時間を要した伸銅品事業が大幅な減益となったものの、値上げや内製化によるバルブ事業の利益
増で吸収。営業利益が同 73.2%増加した。
・業績予想に変更はなく、通期で前期比 4.0%の増収、同 23.0%の経常増益。国内、北米、アジアでバルブ事業の売上が増加する。
利益面では、内製化等による原価低減(約 21 億円を見込む)と価格改定効果(14.5 億円を見込む)でバルブ事業の利益率が改善。
1Q に苦戦した伸銅品事業のオペレーションは既に正常化しており、2Q 以降は設備更新効果が本格化する。
・国内のバルブ事業は、4 月、5 月が想定したほど落ち込まなかったが、6 月に入って調整が顕著になったと言う。2Q は調整が続く
可能性が強い。また、2Q は、1Q に計上を予定していた IT 関連費用の期ずれ計上も予定されている。このため、1Q は利益面での
上振れが大きくなったが(73.2%)、上期の着地は期初予想に沿ったものになりそうだ。
1.会社概要
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、上下水道、給湯、ガス、空調などの身近な生活分野だけでなく、
あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、
ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、子会社を通してバルブの材料となる伸銅品の生産及び外販を行って
いる他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内 2 位のポジションにあり、同社を含
めた 30 社でグループを構成している。
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及び総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)やホテル・レストランの経営(ホテル事業)等の
その他に分かれ、14/3 期の売上構成比は、それぞれ 74.9%、17.8%、7.3%(利益ベースでは、91.2%、5.8%、3.0%)。
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「通す」、「止める」、「流れを絞る」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設
備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート
施設など様々な分野で使用されている。同社は世界有数のバルブメーカーであり、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製
の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等のステンレス製バルブにおいて特に高いシェアを有する。
鋳物からの一貫生産も同社の特徴で、日本で最初に「国際品質保証規格 ISO9001」の認証を取得。材質や弁種のラインナップを充実
させ、建築設備や各種プラントだけでなく環境・エネルギー・半導体分野にも展開しており、また、グローバルコストの実現に向けて海
外生産拠点の強化にも取り組んでいる。14/3 期の海外売上比率は約 35.6%。
バルブの材料と特徴
材料
特徴
青銅
銅+錫+亜鉛+鉛の合金材料。耐摩耗性・耐食性・切削性が良く複雑な鋳物が作りやすい。低・中圧のバルブに最も
適している。
黄銅
銅+亜鉛の合金材料。鍛造性と切削性に優れ青銅よりも経済性が高い材料。
鋳鉄
融点が 1150℃と比較的低く、低圧・常温用のバルブに使用されている。
鋳鉄ライニング
バルブ本体の内外面にナイロン 11 を粉体塗装したもので、鉄錆による「赤水」の発生を未然に防ぐことが可能。給
水ラインにも適している。
ダクタイル鋳鉄
使用圧力、温度範囲が広いため、蒸気、水、ガス、油などに用いられるコストパフォーマンスの高い材料。
鋳鋼
使用圧力、温度範囲が広く、石油精製から石油化学プラントの配管ラインに使用されている材料。
ステンレス鋼
耐食性、耐久性に優れ、石油化学工業から事業設備まで幅広い分野で採用されている材料。
特殊合金鋼
特殊合金鋼(Special Alloy Steel)は、耐孔食性・耐腐食性に最も優れた材料。
2
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伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、
鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグル
ープの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークスの事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を製造・販売している(黄銅棒は
バルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)。
その他
スポーツクラブの経営(フィットネス事業)やホテル・レストランの経営(ホテル事業)等を行っている。フィットネス事業では、(株)キッツ
ウェルネスが首都圏を中心に総合スポーツクラブを展開しており、スイミングプールをはじめ各種マシン、フィットネススタジオ、テニ
ス、スカッシュ、ゴルフレンジ等の本格的な施設を提供している。一方、ホテル事業では、(株)ホテル紅やが長野県諏訪湖畔で温泉
を楽しむ事ができるリゾートホテルを運営。夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホー
ルを有する。
【キッツグループ】
バルブ事業 エリア別売上高
(単位:百万円)
13/3 期
構成比
14/3 期
構成比
前期比
国内
55,658
65.9%
56,633
64.4%
+1.8%
海外
28,813
34.1%
31,254
35.6%
+8.5%
売上高合計
84,472
100.0%
87,888
100.0%
+4.0%
総合バルブメーカーとして、国内では、主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバー。海外では、イン
ド、U.A.E.、韓国に駐在員事務所を置く他、中国、シンガポール、タイ、アメリカ、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販
売ネットワークを構築している。
キッツグループの国内ブランドと特徴
特徴
キッツブランド
会社名:(株)キッツ
鋳物からの一貫生産(一部は材質から)により高品質を実現。総合バルブメーカーとして、幅広い市場、分野
に商品を提供。特に、建築設備市場、石油精製・石油化学市場に強い。
東洋バルヴ
ブランド
会社名:東洋バルヴ(株)
建築設備向けや消防防災設備用バルブ。
三吉バルブ
ブランド
会社名:三吉バルブ(株)
衛生設備を中心とした建築設備用バルブとターボ冷凍機など冷凍空調機器用バルブに特化。
清水合金製作所
ブランド
キッツエスシーティー
ブランド
会社名:(株)清水合金製作所
水道バルブから浄水装置までの商品。
会社名:(株)キッツエスシーティー
半導体製造設備等の高純度流体用バルブ、継手及びユニット。
国内バルブ事業では、建築設備向けが46%を占め、水関連(上下水道等、13%)、機械装置や半導体(共に9%)等の比率も高いが、
石油精製・石油化学、一般化学、食品・製紙、ガス、電力等、幅広い分野に製品を供給している。
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KITZ グローバルネットワーク
欧州
アセアン
米州
ドイツ・ニデラウに統括会社 KITZ Europe GmbH を置き、ドイツの工業用ボールバルブメーカーPerrin(ドイツ)及び「ISO」
ブランドの鋳鋼製及びステンレス鋼製ボールバルブの製造・販売を手掛ける KITZ Corporation of Europe, S.A.(スペイ
ン)と共に、東欧及びロシアを含む欧州全地域を見据えた生産・販売体制を構築している。
尚、Perrin は、高温・高圧の特殊用途メタルシート技術に強みを持ち、石油精製・石油化学のプロセスラインで使用され
るメタルシートボールバルブ等を主力とする。
シンガポールに KITZ Corporation of Asia Pacific Pte.Ltd.を置き、アセアン諸国の中核拠点として、営業活動を行ってい
る。
石油プラントへの投資が急拡大しているシンガポールで、石油精製・石油化学向け工業用バルブの販売を強化するべ
く、13 年 3 月にシンガポールの総代理店 Mikuni Engineering(Singapore)Pte.Ltd.(現 KITZ Valve & Actuation Singapore
Pte. Ltd.)を孫会社化した。
アメリカ・ヒューストンに KITZ Corporation of America を置き、主力の北米だけでなく、中南米も含めた米州全域で販売
活動を行っている。
特に北米では、シェールガス及びオイルを利用するエチレン等の化学プラント建設が増加しており、日系 EPC(エンジ
ニアリング会社)が受注するケースが増えている。このビジネスチャンスを捉え、プラント向けの鋳鋼バルブ、ステンレ
スバルブ、ボールバルブの拡販を図っていく考え。
海外バルブ事業のエリア別売上構成比は、アジア 57%(アセアン・その他41%、中国13%、中東3%)、北米27%、欧州・その他16%。
製造拠点は、タイ、中国、台湾、ドイツ、及びスペインに展開している。
【沿革】
1951 年 1 月、各種バルブの製造・販売を目的とした(株)北澤製作所として設立され、同年 4 月に長坂工場(山梨県長坂町)が完成し、
青銅バルブの製造・販売を開始した。1959 年 3 月には(株)東洋金属を設立してバルブの素材となる黄銅棒の生産を開始し、1962 年
9 月には社名を(株)北澤バルブに変更。1977 年 4 月の東証 2 部上場を経て、1984 年 9 月に東証 1 部に指定替えとなった。
2001 年以降は、選択と集中を進めると共に、キャッシュ・フロー重視の経営を推進。08 年秋のリーマン・ショック後は、国内生産体制
の再構築と海外事業の強化に取り組み、2011 年にアセアン地区の統括会社として KITZ Corporation of Asia Pacific Pte. Ltd.をシンガ
ポールに設立。2012 年には東洋バルヴ(株)の生産部門を(株)キッツに移管し、東洋バルヴ(株)を販売会社として再スタートさせた。
2013 年には欧州地区の統括会社として KITZ Europe GmbH を設立した他、シンガポールの総代理店 Mikuni Engineering (Singapore)
Pte. Ltd.を買収して新会社 KITZ Valve&Actuation Singapore Pte. Ltd.をスタートさせた。
現在、世界有数のバルブメーカーとして国内外の連結子会社29 社と共にグループを形成。「キッツブランド」の商品は、国内外で高品
質の商品として高い評価を得ている。
4
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2.2015 年 3 月期第 1 四半期決算
(1)第 1 四半期(4-6 月)連結業績
(単位:百万円)
14/3 期 1Q(4-6 月)
売上高
構成比
15/3 期 1Q(4-6 月)
構成比
前年同期比
期初計画
計画比
27,040
100.0%
29,040
100.0%
+7.4%
28,652
+1.4%
売上総利益
5,986
22.1%
6,908
23.8%
+15.4%
7,056
-2.1%
販管費
4,921
18.2%
5,064
17.4%
+2.9%
5,554
-8.8%
営業利益
1,065
3.9%
1,844
6.4%
+73.2%
1,502
+22.8%
経常利益
1,125
4.2%
1,836
6.3%
+63.2%
1,452
+26.5%
563
2.1%
1,173
4.0%
+108.4%
873
+34.5%
四半期純利益
※数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。
前年同期比 7.4%の増収、同 63.2%の経常増益
国内外で売上が増加したバルブ事業がけん引役となり、売上高は 290 億 40 百万円と前年同期比 7.4%増加。国内では値上げ効果で
主力の建築設備向けが増加した他、半導体製造装置向けも前期第 2 四半期以降の好調を持続。海外では欧州が前年同期並みにと
どまったものの、北米やアジアが増加した。
営業利益は同 73.2%増の 18 億 44 百万円。バルブ事業を中心に売上総利益が増加する中、経費削減の徹底で販管費の伸びを抑え
営業利益率が改善。為替差益(74 百万円→4 百万円)の減少で営業外損益が悪化したものの、特別損失の減少と税負担率の低下で
四半期純利益が 11 億 73 百万円と同 108.4%増加した。
期初計画との比較では、新設設備の立ち上げで苦戦した伸銅品事業の原価率悪化で売上総利益が計画を下回ったものの、諸経費
の削減が計画以上に進んだ。
為替換算レートと電気銅建値
13/3 期 平均実績
ドル:対円
14/3 期 平均実績
80.11
ユーロ:対円
電気銅建値:円/トン
15/3 期 計画
97.99
103.00
15/3 期 1Q 実績
92.55
102.56
103.44
130.53
140.00
121.98
140.23
696,000
750,000
750,000
754,000
750,000
四半期売上高・営業利益の推移(百万円)
32,000
14/3 期 1Q 実績
2,500
値上げや消費税率引き上げに伴う仮需
31,000
2,000
30,000
29,000
1,500
28,000
連結売上高
連結営業利益
1,000
27,000
26,000
500
25,000
24,000
0
13/3-1Q
2Q
3Q
4Q
14/3-1Q
2Q
3Q
4Q
15/3-1Q
5
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(2)セグメント別動向
セグメント別売上・利益
(単位:百万円)
14/3 期 1Q(4-6 月)
構成比
15/3 期 1Q(4-6 月)
構成比
前年同期比
期初計画
計画比
バルブ事業
19,717
72.9%
21,563
74.3%
+9.4%
21,114
+2.1%
伸銅品事業
5,312
19.6%
5,414
18.6%
+1.9%
5,387
+0.5%
7.1%
+2.6%
2,151
-4.1%
+7.4%
28,652
+1.4%
その他
2,010
7.4%
2,062
連結売上高
27,040
100.0%
29,040
バルブ事業
1,642
91.4%
2,476
97.7%
+50.8%
2,118
+16.9%
伸銅品事業
147
8.2%
7
0.3%
-94.6%
152
-94.7%
7
0.4%
51
2.0%
+599.9%
7
+631.3%
調整額
-731
-
-691
-
-
-775
-
営業利益
1,065
-
1,844
-
+73.2%
1,502
+22.8%
その他
バルブ事業
売上高 215 億 63 百万円(前年同期比 9.4%増)、営業利益 24 億 76 百万円(同 50.8%増)。売上の内訳は、国内が 134 億 57 百万円(同
6.9%増)、海外が 81 億 06 百万円(同 13.8%増)。
国内は、前期第 2 四半期以降の好調を維持した半導体製造装置向けが同 42%増加した他、青黄銅バルブ等が中心の主力の建築設
備向けも同 7%増加。一方、ステンレス製バルブが多く使用される各種工業向けは、維持・更新需要を中心に前年同期並みの水準に
とどまった。尚、建築設備向けは、1 月に実施した値上げに伴う仮需(値上げ前の代理店の駆け込み仕入)の反動と代理店の在庫調
整の長期化(工事の遅延等による需要の低迷)で数量が減少したものの、値上げ効果で売上が増加した。
海外は、欧州が前年同期並みにとどまったものの、アジアが前年同期比 22%増加した他、北米もオイル&ガス向けを中心に同 9%
増加した。アジアでは、建築設備向け汎用バルブの回復で中国が同55%増加した他、13 年3 月にシンガポールの総代理店を孫会社
化した効果もありアセアン・その他も同 12%増加した。
利益面では、国内での内製化等による原価低減と値上げ効果に加え、海外生産子会社の生産も順調に推移し、営業利益率が改善し
た。
伸銅品事業(子会社 キッツメタルワークスの事業領域)
売上高 54 億 14 百万円(前年同期比 1.9%増)、営業利益 7 百万円(同期比 94.6%減)。4-6 月の国内黄銅棒市場は消費税率引き上げ
前の仮需の受注残消化で16,510トン/月と前年同期比13%増加。材料相場の安定を背景に製品価格も前年同期の水準で安定して推
移した。こうした中、同社は販売重量を前年同期比 3%増加させたものの、生産性向上のために新たに導入した設備(原材料の洗浄
装置)の稼働が安定せず原価率が悪化した(ただ、足元の稼働は安定している)。
その他(フィットネス事業:キッツウエルネス、ホテル事業:ホテル紅や)
売上高 20 億 62 百万円(前年同期比 2.6%増)、営業利益 51 百万円(同 599.9%増)。会員数が前年同期を上回って推移したフィットネ
ス事業の売上が同 4.3%増加した他、ホテル事業も前年同期並みの売上を確保した。利益面では、増収効果でフィットネス事業の利
益が増加した他、ホテル事業の損益も改善した。
(3)会社別動向
同社の個別業績は、売上高 156 億 85 百万円(前年同期比 0.6%増)、営業利益 9 億 74 百万円(同 69.1%増)、経常利益 14 億 02 百
万円(同 15.9%増)、四半期純利益 9 億 69 百万円(同 19.8%増)。売上・利益の増減要因は、連結とほぼ同じ。建築市場向けが中心の
青黄銅バルブは数量減を単価上昇でカバーして増収。一方、機械装置や工業用プラントに多く使われるステンレス製バルブは単価
が上昇したものの、数量が減少した影響をカバーできなかった。営業利益と経常利益で増益率に大きな差があるのは子会社からの
配当金等の影響によるもの。
子会社では、半導体製造装置向けを手掛けるキッツエスシーティーの売上・利益が大きく伸びた。また、プラント・エネルギー向けバ
ルブの製造部門では、鋳鋼バルブを手掛けるキッツ閥門(中国)が売上を伸ばし黒字転換した他、キッツ昆山(中国)も、前年同期の
高い売上・利益水準には及ばなかったものの健闘した。この他、Perrin(独)は中国での石炭火力向け特殊バルブの需要減で売上が
減少したものの、採算重視の選別受注と経費削減で営業損益が黒字転換した。
6
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(4)財政状態等
財政状態
(単位:百万円)
14 年 3 月
現預金
14 年 6 月
8,807
8,322
売上債権(電子記録債権を含む)
25,496
たな卸資産
流動資産
14 年 3 月
14 年 6 月
仕入債務
5,585
5,902
25,039
短期有利子負債
7,800
7,888
19,052
19,560
流動負債
20,703
20,418
55,866
55,435
長期有利子負債
15,927
15,526
有形固定資産
36,835
36,628
固定負債
20,101
19,828
無形固定資産
3,315
3,312
純資産
66,777
66,759
投資その他
11,566
11,629
負債・純資産合計
107,583
107,006
固定資産
51,717
51,570
有利子負債合計
23,728
23,414
※ 有利子負債=借入金+社債
第 1 四半期末の総資産は前期末に比べて 5 億 77 百万円減の 1,070 億 06 百万円。自己資本比率は前期末に比べて 0.3 ポイント改善
の 61.4%。
キャッシュ・フロー
(単位:百万円)
14/3 期 1Q(4-6 月)
15/3 期 1Q(4-6 月)
前年同期比
営業キャッシュ・フロー(A)
-2,425
1,579
+4,005
-
投資キャッシュ・フロー(B)
-1,025
-1,075
-49
-
フリー・キャッシュ・フロー(A+B)
-3,450
504
+3,955
-
財務キャッシュ・フロー
1,550
-805
-2,356
-
現金及び現金同等物期末残高
4,336
7,475
+3,138
+72.4%
利益の増加により前年同期は 24 億 25 百万円のマイナスだった営業 CF が 15 億 79 百万円の黒字に転じ、5 億 04 百万円のフリーCF
を確保した。
ROE 分析
10/3 期
ROE
11/3 期
5.98%
12/3 期
5.81%
13/3 期
4.67%
14/3 期
7.16%
5.70%
売上高当期純利益率
3.19%
2.89%
2.29%
3.63%
3.04%
総資産回転率
0.97 回
1.07 回
1.11 回
1.14 回
1.13 回
レバレッジ
1.93 倍
1.87 倍
1.84 倍
1.73 倍
1.66 倍
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、
自己資本比率の逆数)」の 3 要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当
期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記
のレバレッジは必ずしも一致しない)。
14/3 期は過年度法人税等の影響で利益率が悪化したため ROE が低下したが、15/3 期の ROE は、想定通りの利益を確保できれば、
13/3 期と同程度の水準に回復するものと思われる。
同社の業績は為替や銅の市況変動の影響を受けやすく、ROEにも影響が及ぶ。また、10/3期末には275億円を計上した有利子負債
残高が 14/3 期末には 237 億円に減少しており、財務内容の改善が ROE の向上にマイナスになっている面もある。もっとも、中期経
営計画では 16/13 期に売上高 1,430 億円(14/3 期比 21.9%増)、当期純利益 71 億円を目指しており、この計画を達成できれば、ROE
は 10%程度に高まろう。中期経営計画の進捗に注目したい。
尚、東証発表の「決算短信集計」によると、東証 1 部、東証 2 部、及びマザーズ上場企業の 14/3 期の ROE は、金融を除く全産業
8.65%(前期は 4.99%)、製造業 8.55%(同 4.53%)、非製造業 8.79%(同 5.67%)。
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3.2015 年 3 月期業績予想
(1)連結業績
(単位:百万円)
14/3 期 実績
売上高
構成比
15/3 期 予想
構成比
前期比
117,355
100.0%
122,000
100.0%
+4.0%
売上総利益
26,976
23.0%
30,800
25.2%
+14.2%
販管費
20,505
17.5%
22,600
18.5%
+10.2%
営業利益
6,470
5.5%
8,200
6.7%
+26.7%
経常利益
6,501
5.5%
8,000
6.6%
+23.0%
当期純利益
3,564
3.0%
5,000
4.1%
+40.3%
業績予想に変更はなく、通期で前期比 4.0%の増収、同 23.0%の経常増益予想
国内、北米、アジアでバルブ事業の売上が増加する。利益面では、円高修正による利益の押し下げ 2 億円を見込んでいるものの、内
製化等による原価低減(約 21 億円を見込む)と価格改定効果(14.5 億円を見込む)でバルブ事業の利益率が改善。その他、コスト削
減に取り組む伸銅品事業やその他の利益も増加する見込み。
配当は 1 株当たり 2 円増配の年 12 円を予定(第 2 四半期末 6 円、期末 6 円)。
為替換算レートと電気銅建値
12/3 期 平均実績
ドル:対円
ユーロ:対円
電気銅建値:円/トン
13/3 期 平均実績
14/3 期 平均実績
15/3 期 計画
79.45
80.11
97.99
103.00
111.17
103.44
130.53
140.00
717,000
696,000
750,000
750,000
セグメント別売上・利益
(単位:百万円)
14/3 期 実績
構成比
15/3 期 予想
構成比
前期比
バルブ事業
87,888
74.9%
92,000
75.4%
+4.7%
伸銅品事業
20,953
17.8%
21,000
17.2%
+0.2%
7.4%
+5.7%
その他
8,514
7.3%
9,000
連結売上高
117,355
100.0%
122,000
バルブ事業
8,597
91.2%
10,300
91.2%
伸銅品事業
548
5.8%
600
5.3%
+9.4%
その他
285
3.0%
400
3.5%
+40.2%
調整額
-2,960
-
-3,100
-
-
6,470
-
8,200
-
+26.7%
営業利益
+4.0%
+19.8%
(2)第 2 四半期(7-9 月)以降の事業別の見通しと取り組み
バルブ事業
国内は、価格改定に伴う仮需の反動及び代理店在庫の過多状態が第 2 四半期も続く見込み。市場別では、季節的要因から水市場向
けが増加する事に加え、半導体製造装置向けが、夏場に納入の端境期を迎えるものの、前期からの高水準の出荷を継続する見込
み。一方、建築設備向けの実需は第3 四半期後半からの回復を見込んでおり、引き続きメンテナンス需要が中心となる工業用バルブ
は収益の確保に努める。この他、大型プロジェクト物件は、LNG 基地プラント建設等の物件対応で収益の確保を図る。
海外は、政情不安の影響でタイの苦戦が続く見込みだが、インドネシアは、ラマダンを挟むものの、大統領選挙が終了した事で市場
が回復に向かうとみている。中国は、中国経済の減速懸念に加え、日本品不買運動が続くものの、Perrin ブランド、ISO ブランド等の
現地ユーザーへの積極的な PR で受注の確保に努める。オイル&ガスを中心に好調な米州では、工業用ボールバルブの在庫を増
やし、即納体制を整えユーザーニーズを取り込んでいく。欧州市場は、景気回復の兆しはあるものの、工業系市場は未だ弱い。引き
続き 3 ブランド(キッツ、Perrin、ISO)製品の拡販を目指す。
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伸銅品事業
第 2 四半期は、第 1 四半期に比べて若干生産・販売量が減少するものの、第 3 四半期以降は前年並みの水準を維持する見込み。安
定稼働に時間を要した新規生産設備の稼働が本格化するため、第 2 四半期以降、収益性の改善も進む見込み。
その他
フィットネス事業は、各種入会キャンペーンやスイミング及び体育の夏季短期教室の実施で会員増と収益の増加を図る。ホテル事業
は、リニューアル完了の告知(HP、パンフレット)を積極的に行い集客を図る。また、NET エージェント向けの企画の見直しやサービス
エリア(諏訪湖 SA)のリニューアルに伴う商品の見直しも進める。
【トピックス】
(1)北米の化学プラントからの受注決定
北米において、シェールガスやシェールオイルを活用したプラント案件が増加しており、日本のエンジニアリング会社の設備受注が
拡大している。同社においては、この度、大型エチレンプラントへの納入が決定した。
物件概要
受注内容
納入時期
年産 150 万トンの世界最大のエチレンプラント
自動操作バルブ約 300 台
2015 年 3 月~
北米における化学プラント案件については、現地販売法人 Kitz Corp. of America と現地代理店及びキッツのプロジェクト統括部が連
携して受注活動を強化していく考え。
(2)新しい水浄化技術「KITZ RECIRQUA(キッツリサクア)」
- 水上養殖用ろ過装置市場に参入 -
魚が排泄するアンモニア等の有害物質の分解と脱臭・殺菌を同時に行う革新的な水浄化技術「KITZ RECIRQUA(キッツリサクア)」の
実証実験に成功した。「KITZ RECIRQUA」は同社が培ってきた流体制御技術をベースとし、これまでバクテリアに頼っていた「ろ過の
工業化」(電気分解)を実現するもので、バクテリアに頼った不安定な生物濾過プロセスが不要となる上、養殖水の管理に必要な各種
水質データだけでなく、アンモニアの分解状況や装置の運転状況をすべてデジタルデータとして管理できる。また、これにクラウド
ICT を融合させる事で、収集されたデータの遠隔監視分析及びデータフィードバックも可能になる。今年から来年にかけて、コストの
比較を含めて更に実証実験を重ね、2016 年度中の事業化を目指す。また、早期に売上 20 億円を達成し、2050 年に 5,000 億円と言わ
れる市場でシェア 10%の獲得を目指している。
(同社資料より)
昨今、天然魚の水揚げが頭打ちとなる中、養殖魚の生産が増えており、既に市場全体の半数を占めるに至っている。引き続き右肩
上がりの養殖魚生産が予想される中、注目を集めているのが、場所の制約を受けない陸上養殖である。陸上養殖では、環境・衛生
管理の観点から、一般的に水槽を用いた閉鎖循環式が採用されており、その際、養殖水の環境維持のために必要となるのが、殺菌、
脱色、脱臭、及び魚の成育に伴う代謝物の分解であり、特に魚から排出され、魚の生育にとって有害なアンモンニアの無害化は重要
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(窒素ガスとして無害化する)。通常、無害化する方法としてバクテリアによる生物濾過が用いられるが、バクテリアによる生物濾過は
方式が複雑で相応の時間とスペースが必要な上、バクテリアの管理も難しい。
これに対して、「KITZ RECIRQUA」は養殖水中のアンモニアと複数の分子とに連鎖的な化学反応(促進酸化反応)を起こさせる事でア
ンモニアを瞬時に窒素ガス化すると共に殺菌、脱色及び脱臭を同時に行う事が出来る。
4.今後の注目点
国内は 4 月、5 月が想定したほど落ち込まなかったが、6 月に入って調整が顕著になったと言う。また、第 2 四半期(7-9 月)は、第 1
四半期(4-6 月)に計上を予定していた IT 関連費用の期ずれ計上も予定されている。このため、第 1 四半期の利益面での上振れが大
きくなったが(22.8%)、上振れ分は流通在庫の調整とコストの増加が予想される第 2 四半期にほぼ相殺されそうで、上期の着地は期
初予想に沿ったものになりそうだ。
ただ、第 1 四半期のバルブ事業の利益増加要因をみると、これまでに取り組んできたグループシナジーの追及の成果(主力製品の
最適地生産体制の構築及び採算性向上と供給体制の見直しによる原価低減)が顕在化しつつある事もみてとれる。また、国内では、
価格改定効果が徐々に顕在化しつつあり、第 3 四半期(10-12 月)後半以降は主力の建築向けの回復も期待できる(人手不足や資材
不足で遅れていた現場が動き出すと見られている)。海外では、米国でオイル&ガス分野を中心に好調が続く他、欧州も、現地子会
社の受注状況が緩やかながら回復基調にある。国内外で下期以降の見通しは明るい。
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