鶏糞の普通肥料化の事例 - (有)鈴鹿ポートリー:三重県鈴鹿市 - 農林水産省認定「農業技術の匠」が作る 有機肥料(写真は地元のホームセンター で販売される「匠のぼかし肥」) 1.地域の概要 鈴鹿市は三重県の北西地域に位置する。 北は四日市市、南は津及び亀山の両市と 市境を接し、東は伊勢湾、西は鈴鹿山脈 が連なる恵まれた自然環境に囲まれた地 域である。養鶏、肉牛、酪農などの畜産 も盛んで特に採卵鶏の飼養羽数は県内で も多い地域である。また、自動車レース の鈴鹿サーキットで有名。 三重県鈴鹿市 2.経営の概要 (有)鈴鹿ポートリーでは、育成舎を含 め4棟のウィンドレス鶏舎で約6万羽の 採卵鶏を飼育している。従業員は、4名 (正社員3名、フルタイムのアルバイト 1名)で、特殊卵を含む鶏卵生産の他、 通常、安価で取引される鶏糞を原料とし た有機肥料の製造・販売を行い、大きな 収益を上げている。 【 肥料製造工程 】 これまで蓄積してきたデータ・ノウハ ウを活かし縦型コンポストによる鶏糞 3.肥料の製造と販売 肥料の製造は殆ど自動化されている。 自社鶏舎内から出る鶏糞を原料とした「Suzuka 有機」、Mg 入肥料の「有機 トップ1」、魚粉入肥料の「匠のぼかし肥」の3種類の普通肥料を製造。 「Suzuka 有機」は鈴鹿ポートリーが直売、「有機トップ1」と「匠のぼかし肥」は地元 の農具店などに卸販売を行っている。販売価格は「Suzuka 有機」が 500 円/ 20kg 袋、 「有機トップ1」と「匠のぼかし肥」は、店頭販売価格で 1,000 ~ 2,000 円/ 20kg 程度。年間の売上高は同社の肥料製造部門全体で約 1,500 万円。 4.取組に至った経緯 鶏卵価格が低迷していた頃に何か他に 出来ることがないかと考え鶏糞の販売を 思い当たったが、当時(十数年前)、窒素 肥料が 2,000 円/ 20kg 袋で販売されてい るのに対し、同じように窒素を多く含む 鶏糞は、耕種農家に使ってさえ貰えない という状況であった。原因はそれまで流 通していた鶏糞堆肥では、品質が一定し ないことに加え、成分表示も無ければ、 いつ、どれぐらいの量を散布したらいい のか分からないことにあった。それなら 堆肥ではなく普通肥料として付加価値を 付け販売してはどうかと考えたのがきっ かけとなっている。 【 ペレット化工程 】 使い易さのため肥料はペレット化。施 設は縦型コンポストに隣接して設置。 5.取り組む際に生じた課題 製品化そのものには大きな問題は無か ったがパイオニア故の課題で 15 年前に 始めた当初は、誰にも相手にして貰えず 鶏糞堆肥と同じ値段で販売し、売上高も 200 万円/年程度。それでも鶏糞肥料の 特性・使用法をPRし続けた結果「良い ものは良い」ということで口コミで販売 量が増え新規需要の道が開けるとともに 適正な価格の設定が可能となり、結果、 現在のような売上状況となっている。 【 袋詰施設外観 】 6.今後の展望 窒素肥料の市販価格は 2,000 円/ 20kg 袋前後であるため、鶏糞肥料を使うこと で耕種農家養鶏農家ともに大きな経済メ リットが期待出来るが、鶏糞肥料の利用 拡大は①地産地消の推進 ②宣伝費をか けないという2点に留意する必要がある 【 袋詰施設内部 】 と考えている。このため、鈴鹿ポートリ ーの取組を日本全国に地元密着型で展開させることを目標に全国を行脚し講 演しているところである。
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