Success Story - 日本オラクル

Oracle Customer Case Study
千代田化工建設、世界中のプロジェクトを見える化、リソースの効率的
活用やプロジェクトの進捗予測など、現場から経営層までそれぞれの
レベルで迅速な意思決定を可能に
稼動後徐々に管理対象のプロジェクトを増やして、現在はほぼすべてを Primavera で管理しています。
『どの地域で、どのような案件の受注活動に注力
するか』といった経営の意思決定をサポートする道具としても、きわめて有効だと思います
千代田化工建設株式会社
上席理事 グローバルプロジェクトマネジメント本部 IT マネジメントユニット GM
今、エネルギー問題への関心が世界的に高まっている。国内におけるエ
ネルギーシフトも重要だが、北米を中心とするシェールガス革命のインパ
クトも大きい。こうしたなか、LNG プラントをはじめとするエネルギー
関連の巨大プロジェクトが世界各地で進行中だ。
この分野で世界的に存在感を高めている千代田化工建設株式会社(以
下、千代田化工建設)。LNG プラントの分野で世界シェア 4 割以上(キャ
パシティベース)の建設実績をもつ総合エンジニアリング会社である。同
社 執行役員 グローバルプロジェクトマネ
ジメント本部 本部長代行 大木英介氏は
次のように語る。
「事業の中核はエネルギー関係のプラン
ト建設です。カタールで世界最大の LNG 生
産プラントを手掛けたほか、大規模なプラ
ントを数多く作ってきました。近年は、太
陽光・太陽熱発電や水素供給などの分野に
も事業を拡大しつつあります。また、EPC
と呼ばれる分野だけでなく、稼動後のメン
千代田化工建設株式会社 テナンスや改修などにも注力しており、国
執行役員 内だけでなくシンガポール(アジア)やカ
グローバルプロジェクト タール(中東)の地域拠点を核として、プ
マネジメント本部 本部長代行 ラントの改修やメンテナンスなどのビジネ
大木 英介 氏
ス も 展 開 し て い ま す 」 EPC と は 、
Engineering, Procurement and Construction の略称で、プラント建設にお
ける設計、資機材調達、建設工事を含む一連の工程を指す。これら工程全
体を一括して請け負うことを EPC 方式や EPC 事業などという。
千代田化工建設は早い時期から事業のグローバル化を進めてきた。現在
の売上高に占める海外比率は約 7 割で、常時、世界各地でプロジェクトが
遂行されている。その種類や規模はさまざまだが、近年は大型化の傾向が
あるという。
「LNG プラントを例にとると、1980 年
ごろに一系列あたり年産 110 万トンだった
ものが、最近では 780 万トンの巨大なプラ
ントが作られるようになり、プロジェクト
の複雑さや難易度も増しています」と千代
田化工建設株式会社 上席理事 グローバル
プロジェクトマネジメント本部 IT マネジ
メントユニット GM 増川順一氏はいう。
数千億円規模の投資が必要な LNG 生産プ
ラントは、地球上でもっとも大規模かつ複
千代田化工建設株式会社 雑な構造物の一つである。大きなプロジェ
上席理事 クトになると完成までに 5 年以上、ピーク
グローバルプロジェクト 時には数万人単位の工事関係者が参加する
マネジメント本部 ものもある。ヒト・モノ・カネといったリ
IT マネジメントユニット GM ソース、品質やスケジュールなどの管理は
増川 順一 氏
ビジネスの生命線だ。プロジェクト・マネ
ジメントが甘くなれば、企業の業績にもダメージを与えかねない。
「一つひとつのプロジェクトにおける損益の積み重ねが、会社の損益に
直結する」と増川氏。そんな企業にとって、数々のプロジェクトを統合的、
かつ横串で見える化する仕組みはきわめて重要だ。しかし以前は、そのた
めのシステムが十分整備されていなかったと大木氏は打ち明ける。
「各プロジェクトのデータは容易に見ることができるのですが、すべて
のプロジェクトの状況、あるいは過去からの傾向をつかもうとすると、1
カ月程度かかりました。プロジェクトごとにデータの取り方や粒度が異な
増川 順一氏
っており、補正などの作業が発生するからです」
そこで同社は、プロジェクトの現場で入力したデータを自動的に集約し、
現場マネジャーだけでなく、関係部門や経営の意思決定にも活用するデー
タマネジメント・インフラとして「GBM(Global Business Management)
システム」の構築に取り組んだ。この基幹システムを構築するために ERP
パッケージとともに用いられたのが、オラクルの統合型プロジェクト・ポ
ートフォリオ管理ソリューション、Primavera である。
プロジェクトを三軸で見える化、グローバル連結経営を強化する GBM システムは 3 つの軸でプロジェクト、およびビジネスの見える化
を実現する。x軸は管理対象となるリソース(ヒト、モノ、カネ)。ヒト
に関しては、おもにマンアワー(労働時間)が指標として用いられる。ま
た、各プロジェクトの進捗(売上げ)やコストは集計されて財務会計や管
理会計の数値が導かれる。y軸はマネジメントの三階層。現場レベルと中
間レベル(プロジェクト・マネジャーと複数プロジェクトの統括責任者な
ど)、そして経営レベルという三階層で情報が提供される。z軸には受注
前の案件を管理するオポチュニティ・マネジメント、過去からの実績デー
タを蓄積して傾向などを分析する仕組みなどが含まれる。
GBM システムという 1 つの基盤上で、数百ものプロジェクトを三軸で
管理する。それだけでも大きな仕事量だが、千代田化工建設はこのシステ
ムを本社だけでなく、前述した世界各地のグループ企業にも導入すると決
めた。GBM システム構築のための業務開始は 2011 年夏である。
「GBM の大きな目的は見える化ですが、ほかにも業務改革という狙い
があります。背景にあるのは、従来の会計システムやプロジェクト管理シ
ステム、それらに埋め込まれた業務プロセスは、将来のビジネス成長を支
えるものとして最適なのかという問題意識です。海外ではライバル企業と
競いながら、一方では、合弁でプロジェクトを推進するケースも増えてお
り、もっとグローバル標準を取り入れていく必要があるのではないかと考
えました」と増川氏は振り返る。さらに、大木氏はこう続ける。
「グローバルで一体的な経営をおこなうには、業務の標準化とともに、
データを同じように把握できる環境が欠かせません。現地法人ごとにやり
方が違えば、リソースの融通も難しくなりますからね」
導入にあたり、海外拠点であるカタール現地法人を含めたことには理由
がある。本社だけで導入すると、どうしても従来業務を残そうとする力が
働きやすい。システム構築の難易度は高まるが、日本と海外拠点の導入を
同時進行させることで、よりグローバルビジネスに適合したシステムにな
るとの判断である。
「GBM システムの構築にあたっては、グローバル・テンプレートとい
うコア部分を作り、本社向けとして“千代田ローカル”の仕組みを載せる
形をとりました。海外の現地法人は基本的にコアのシステムをそのまま使
います。今後、ほかのグループ企業に展開する際も、グローバル・テンプ
レートに最低限のアドオンを加えて導入することになります」(大木氏)
意思決定支援に有効な手段、問題への迅速な対処も可能に GBM システムの主要な構成要素としてオラクルの Primavera が選ばれ
たのは、ほとんど必然だった。増川氏は「Primavera はこの分野のグロー
バル標準。それに、実現可能な見える化のレベルもきわめて高い」と評価
する。
今回のプロジェクトに参画したのが千代田システムテクノロジーズ株
式会社(以下、CST)だ。CST は 100 社以上でオラクルの Primavera の
導入を支援した実績をもっている。そのノウハウを活かし、今回の基幹シ
ステム構築では全体管理、Primavera と ERP とのインタフェース開発な
どの役割を担った。
このほかにシステム・インテグレーターなども加わり、基幹システム構
Oracle Customer Case Study
築にピーク時で 200 人上が参加。そして、予定どおり 2013 年 4 月に稼動
を迎えた。
「途中で多少の遅れはありましたが、最終的な期日は守ることができま
した。プロジェクト・カンパニーとして、納期遅れは許されません」と増
川氏。こうして動き始めた GBM システムは今、千代田化工建設の事業その
ものを支えている。そして、大きなビジネス効果を生みだしているという。
「今では、システムを立ち上げるだけで全社的なプロジェクトの状況を
把握できるようになりました。スケジュールやコストなどの点で、問題が
ありそうなプロジェクトはすぐにわかります。問題に対処するスピードも
大幅に向上できると考えています」(大木氏)
「稼動後徐々に管理対象のプロジェクトを増やして、現在はほぼすべて
を Primavera で管理しています。横串でさまざまなプロジェクトを比較、
集計できるというのは、以前とはまったく違う世界です。『どの地域で、
どのような案件の受注活動に注力するか』といった経営の意思決定をサポ
ートする道具としても、きわめて有効だと思います」(増川氏)
このような全社体制を構築できたのは、経営トップの強い意志とコミッ
トメントによるところが大きい。同社は 2013 年 5 月に発表した中期経営
計画において、2016 年度に連結純利益 300 億円(2012 年度は 161 億円)
という高い目標を掲げた。グローバルな「攻め」の経営を支える不可欠の
基盤として、GBM システムは位置づけられている。プロジェクト・ポー
トフォリオ・マネジメントのレベルアップは、持続的な成長のドライバー
になるはずだ。
オラクル製品/サービス選定理由
・Primavera は、個々のプロジェクトの管理だけでなく、全てのプロジェク
トを統合的・横断的に把握することができる
千代田システムテクノロジーズ 株式会社 IT 事業本部 N-IT 事業
ユニット GM 代行 兼 EPM ソリューションセクション SL 櫻井 泰 氏
・千代田システムテクノロジーズに 100 社以
上の Primavera の導入実績があった
・ERP に装備されているプロジェクト管理
モジュールは、プラント建設用途としては不
向きであると判断された
「プロジェクト管理ツールは数多くありま
すが、個々のプロジェクトしか見えないもの
が大半です。個別プロジェクトだけでなく、
それらを積み上げて全体状況を把握するため
のプロジェクト・ポートフォリオ・マネジメ
ントの仕組みとしては Primavera が圧倒的に
強い」」(千代田システムテクノロジーズ株
式会社 IT 事業本部 N-IT 事業ユニット GM
代行 兼 EPM ソリューションセクション SL 櫻井 泰氏)
Oracle Customer
千代田化工建設株式会社
売上髙 : 4,461 億 4,700 万円(2014 年 3 月期)
従業員数: 6,062 名(連結)/1,630 名(単体)
(2014 年 3 月 31 日現在)
オラクル製品とサービス: ・ Primavera P6 Enterprise Project Portfolio Management
・ Primavera Portfolio Management
課題: ・ グローバル・ビジネス・マネジメント(GBM)の仕組みを導入し、グローバル
で一体的な経営がおこなえる体制を強化する
・ LNG プラントに代表される地球上でもっとも大規模かつ複雑な構造物の建
設に必要な「ヒト・モノ・カネ」といったリソース、品質やスケジュールな
どをより効率的に管理する
・ 個々の拠点で管理していた数百ものプロジェクトを過去の実績データを参照
しながら横断的に比較、あるいは集計・分析するための基盤を確立する
・ データマネジメント・インフラを構築し、プロジェクトの現場で入力したデ
ータを自動的に集約し、現場マネジャーだけでなく関係部門や経営の意思決
定にも活用できるようにする
導入効果:
・ Primavera をマネジメント基盤に取り入れたことで、海外拠点との連携もスム
ーズに実行でき、グローバルで一体的な経営がおこなえるようになった
・ Primavera の導入により、個別プロジェクトだけでなく、全てのプロジェクト
の状況を横断的に把握するプロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントの仕
組みを構築できた
・ 世界中のプロジェクトを可視化し、リソースの有効活用、プロジェクトの進捗
予測、将来の投資判断など、現場や中間管理層から経営層までそれぞれのレベ
導入プロセス
・2010 年 12 月、海外拠点も含めた全社での統一基幹システム構築プロ
ジェクトチームが発足
・2011 年 7 月、コンサルティングパートナーを選定、グローバル共通の
業務プロセス策定作業を開始、プロジェクト・ポートフォリオ・マネ
ジメントツールとして、Primavera 導入を決定
・2013 年 4 月、横浜の本社とカタールの関連会社でシステムを稼動開始
ルでの迅速な意思決定が可能になった
・ データの取り方や粒度を統一したことにより、従来約 1 カ月要していた全プロ
ジェクトの統合的・時系列的な比較や分析が迅速にできるようになった
・ システムを立ち上げるだけで全社的なプロジェクトの状況を把握できるように
なった
・ 問題をはらむプロジェクトの発見も迅速になり、問題に対処するスピードも大
幅に向上した
・ 100 社以上の Primavera の導入実績がある千代田システムテクノロジーズの協
力によって、導入プロジェクトは予定通り進めることができた
・2013 年 7 月、バグ修正を終了させ、本格稼動
「今回のチャレンジが成功に導かれたのは、とくに初期段階におこな
われた濃密なコミュニケーション。ビジネス設計・基本設計の段階で、
ビジネス部門と IT 部門が集まって喧々諤々の議論をしました。ビジネス
部門というのは、システムユーザーである会計や経営企画、プロジェク
ト管理、営業、人事などの各部門。ぞれぞれの責任者が一堂に会するこ
とで、経営のビジョンに基づく本質的な話し合いができました」
(大木氏)
「会議で決めるべきことを決められないということが往々にしてあります
が、今回のプロジェクトではそれがまったくなかった。各レベルの会議毎に、
決める権限と責任をもった人たちが参加していたからです」(櫻井氏)
(本事例は 2014 年 1 月のものです)
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*Oracle と Java は、Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標である場合があります。 Published December 2014