No.XX 跡倉押しかぶせ断層 Atokura Overthrust 青倉川の対岸にみられるこの露頭は,御荷鉾緑色岩の破砕帯(下盤) の上に,上部白亜系跡倉層(上盤)が断層で乗っている跡倉ナップの最 も有名な露頭です.この断層露頭の走向・傾斜はN70˚W, 25 Nと北傾 斜ですが,さらに北側(青倉川下流側)には再び御荷鉾緑色岩がウイ ンドウ(フェンスター)として川底周辺に露出しています.このように, ナップ基底部は多数の断層の集合体となっていますが,ナップ基底部の 平均的な傾斜はほとんど水平に近く,上盤側の下盤に対する相対運動 方向は,西→北西→北 という時計まわりの変化が,破砕帯の構造の中 に記録されています(Kobayashi, 1996).地元では「根なし山のす べり面」としても知られており,道路沿いには案内版が設置されていま す.日本の地質百選「跡倉クリッペ」の代表的露頭であると同時に,下 仁田ジオパーク構想の重要なジオサイトです. 写真・解説:高木秀雄 写真1.跡倉押しかぶせ断層(跡倉ナップ基底断層の模式露頭). 1 北西 南東 上盤の相対移動方向 南 写真2 断層下盤の御荷鉾緑色岩にみられる 複合面構造(P-R1構造).この構造から, 上盤が下盤に対して南東から北西に向かって ずれたことがわかります. R1剪断面 P面 北 写真3 跡倉押しかぶせ断層面を下から 見上げた露頭面についている擦痕. 破砕された岩石の破片の下側(北側) に向かって彗星の尾のような溝が存在す ることから,上盤が南から北に向かって ずれたことがわかります. スケールは1cm. 参考文献 Kobayashi, K., 1996, Rotation of slip direction of the Atokura Nappe viewed from microstructural analyses of brittle shear zones in the Sanbagawa belt, Southwest Japan. Journal of Structural Geology, 18, 563-571. 小林健太・新井宏嘉,2002, 関東山地の跡倉・金勝山ナップと中央構造線. 日本地質学会第109年学術大会見学旅行案内書,第5班,87-108. 「下仁田町と周辺の地質」編集委員会,2009, 下仁田町と周辺の地質. 下仁田駅 場所:群馬県下仁田町青倉川右岸 下仁田町自然史館(旧青倉小学校)の 前の青倉川沿い. (138˚46 37 E, 36˚12 08 ) 交通:上信電鉄下仁田駅(終点)より, 徒歩30分またはタクシー 地図:国土地理院1/25,000地形図 「下仁田」 自然史館 関連URL:http:// www.town.shimonita.gunma.jp/html/ kyouiku/geopark/index.html 2
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