詠 草 書 式 O 印 東 昌 綱 詠 草 と は、 詠 歌 の草 稿 、 す な は ち 歌 稿 の こ とで あ る が、 轉 じ て、 歌 の草稿 を 書 き改 め たも の の義 と な つた。 い つ の 時 代 より 、 そ の名 の呼 ば れ た る か は詳 でな い。 古 く寂 蓮 法師 集 に ﹃藤 三位 季 經 、 ふ る き今 の歌 よ み の和 歌 草 ﹄ 云 々と あ る が、 こ れ は、 歌 稿 の義 で あ ら う。 慕 景集 に は ﹃飛 鳥 井 中 納 言 雅 世 卿 へ淌 息 し奉 リ ザ 、、 添 創 の詠 草 た てま つ る時 ﹄ とあ る。 慕 景 集 は 、 そ の作 者 に就 い て種 々の説 のあ る集 では あ る が、 典 故 とし ては 古 いも の であ ら う 。 近 世 の賀 茂 眞 淵 は、 や はら げ 訓 ん で 、﹃な がめ ぐ さ ﹄ と 門 人 への書 歌 中 に書 い てゐ る。 詠 草 には 、│ 竪︽ 詠た 草て 、︾ │ 折︽ 詠を 草リ 、︾ │ 綴︽ 詠セ 草ぢの︾わか ち があ る。 今 そ の順 に よ つ て述 べ てゆ く 。 一、 、 竪 ハ 詠 弗 早 竪 詠 草 は 、歌 會 そ の他 、 おも だ た し き時 に歌 を 書 いた も の で、 明 治 中 期 頃ま では 、民 間 歌 人 の歌 會 の、 ↓月 の發 會 には懐 弑 を、 十 二月 の納 會 には 竪 詠 草 を 、 し か し て毎 月 の會 には 短 册 を 用 ゐ る こ と が、 習 は し と な つ てゐ た 。 堅詠 草 諒 草 書 式 四〇五 四〇六 の料 紙 は 、 小 奉 書 、 杉 原 (一名 糊 入 )等 で あ る .先 づ紙 を 竪 に 二 つ に折 り 、 そ れを 更 に折 日 の方 よザ 内側 へと五 行 に 折 り、 第 一の行商 の下 部 に名 を、 次 の行 の中 聞 稍 上 より 題 を 書 き下 し 、 第 三 の行 聞 に、 初 句 、 二句 、 三句 を 、 第 四 の 行 聞 に、 四句 、 五句 を 書 く。 そ の墨繼 は 短 册 と同 樣、 初 句 、 三句 、 五 句 であ る。 し か し て五 行 目 と裏 の牛 面 とを 、 室 白 のま ま 明 け て おく 。 普 通 の竪 詠 草 は、 歌 一首 を者 く が、 二首 著 く 例 も 古 く よ り あ る。 そ の場 合 には 第 三 の行 聞 に、 二列 に 一首 、 第 四 の行聞 に、 二列 に他 の 一首 を書 い て、第 五行 日 以 下 は や は り餘 白 とす る の であ る。 二、 鴻 詠進 竪 ハ 詠" 早 宮 中 に於 け る新 年 歌 御 禽 の御題 を 、 一般 國 民 から 詠 進 す る場 合 には、 竪詠 草 書 式 によ る こと が、恆 例 と な つ てゐ る 。 そ の書 式 は、 前 の 竪詠 草 書式 に論 いた のと 同 じ で あ るが、 いさ さ か補 足 し て お か ね ばな ら ぬ事 は 、 男 女 とも に羇 名 の 右 脇 に、 や や小 さ い字 で ﹁ヒ ﹂ の 一字 を 書 き 添 へる こ とで あ る . こ れ は畏 き あ た り に│上︽ るた のび 意てを ぼ表 ソす ︾る の であ る。 ま た裏 面 の最 後 よ り 二行 日も しく は 三 行 目 の中 部 に、 住 所 、 族 籍 、 氏名 を し るす ので、 官 職 、 位 勳 、 爵 等 のあ る人 は、 詠 草 氏名 の上 部 に書 き 加 へる。 な ほ 詠 進歌 の料 紙 は、 美 濃 紙 を 用 ゐ る事 と定 めら れ てあ る 、 三、 .折 、 5 r r 」、r噂 甲 ・帆 Ψ 「 」ビ 褶憎r尸 帆 冨問■ ψ 「 囁 ,月臨腱∼ 甲 丁 〒」 晒 尸 「詫 苧イ吼 ド 酬 ' 曜 F 、 折 詠 草 は、 歌 會 の席 上 そ の他 で、 師 ま た は 先達 に、 添 削 を 乞 ふ折 に用 ゐ るも の で、 料 紙 は、 杉 原 、 美 濃 紙 、 ま た 略 し ては 牛紙 であ る。 古 式 に則 れば 、 二枚 を 重 ね た も の であ る が、 今 は 重 ね な い。 先 づ横 に二 つに折 り 、 竪 に四 つ折 り にす る. 第 一折 の欄 の中 央 に題 を 書 く 。 ︼字 題 よ り 三字 題 ま では 一行 に、 四 字 以 上 の題 は 二 行 に割 つて書 く 。 但 し熱 語 は 二 行 に ま た がら ぬ樣 に せ ね ばな ら ぬ。 ま た 詞 書 の場 合 は 、 無論 二行 にな つて も、 三 行 にな つても 差 支な い。 名 は 第 一折 の右 端 下部 に書 き、 男 子 は そ の右 脇 に、 女 子 は 左 脇 に ﹃上 ﹄ の宇 を 書 き 添 へる。 次 い で第 二折 日 に 和歌 一首 を . 五 ・七 ・ 五 ・七 ・ 七 と 三行 に書 く、 折 詠 草 に書 く 場 合 、 原 則 とし て歌 は 二首 を 詠 む べき であ る。 ﹂首 は ﹃か へ歌 ﹄ と 稱 し て、 若 し 一首 の悪 い折 に は、 次 の 一首 を 採 つ ても ら ふ と い ふ補 充 の爲 で あ る。 但 し 二首 以 上 を詠 ん だ場 合 に は、 順 次裏 に廻 し て書 い て よ い。 叉別 の題 の歌 を 、 同 じ 詠 草 に書 く には 、 四 折 目 の 一行 に題 を書 き 、 二 行 目 に、 五 ・七、 三 行 日 に五 ・七 と書 いて、 結 句 の 一行 を裏 に廻 し て書 く の であ る。 墨 繼 は 初 句 、 四 句 、 結 句 の 三個 處 に て繼 ぐ 。 各 行 の頭 には 、假 名 は よ ろ し い が、 漢 字 を 並 べ ぬや う に注 意 す る。 そ れ は 鱧 裁 の見 よ い爲 であ る。 な ほ この折 詠草 に は、 三折 に し て認 め る書式 も あ るが 、 一般 には 四 つ折 であ る。 し かし て師 ま た先 逹 が、 こ の詠 草 詠 草 丶 に批 點 を加 ふ る こ とを 、│ 合 點︽ とが 言りひて、んよ ︾い と思 ふ歌 の初句 の右 に、斜 線 を引 く ので あ る、 四、 綴 綴︽ 詠と 草ぢ は︾、師 のも と に持 參 し て、 添 削 を 乞 ふ折 の料 であ る。紙 は改良 美 濃 紙 等 が最 も 相 應 し い。 牛紙 でも 差 支 へな 詠 草 書 式 凶〇七 『 吼 町 「 ' 四〇八 い が、 筆 を 邏 ぶ に稍 窮窟 の感 が す る。紙 が 大 き い と、・ 丈 字 も の び の び と書 け るか ら 、 知 ら す 知 ら す の聞 に字 の練 習 の 上 にも 功 果 が あ る。 先 づ 料紙 を 折 詠 草 と 同 じ く 横 二 つに折 り 、 縱 に 叉 二 つ に折 る。 紙 數 凡 そ 二 十 枚 ほ ど重 ね 、 折 日 を 下 と 右 によ ぐ 揃 へ、 右 端 より 三 四分 の處 で 一册 に綴 ぢ る。 女 子 は絹 の色 絲 等 を用 ゐ る のも よ い。 し か し て表紙 は 通 常 は 別 の紙 を 用 ゐす 、 綴 ぢ た 一枚 日を そ の儘 これ にあ て、 左 端 上 部 に詠 草 と稍 大 き く し ろ し、 右 端 の 下部 に名 を書 き、 こ れ に も 亦 男 子は 名 の右 脇 に、 女 子 は 左脇 に ﹃上 ﹄ の 一字 を 書 き 添 へるこ とは 、 折 詠 草 の場 合 と 同 じ で あ る 。裏 表 紙 は 最 後 の 一枚 を そ の儘 これ にあ て る。 術 表 紙 の詠 草 と書 いた 下 に、 一、 二、 と 記 し 、│裏 表 紙︽ のり 左ぞ 端りに .年 .月 !を ﹃記 うし し︾ て置 く と よ い。歌 の書 式 は、 一頁 を 七行 に割 り 、 策 一行 目 に題 を し る し、第 二行 日 に五 ・七 、 第 三行 目 に、 五 。七、 第四 行 臼 に七 と 一首 を 認 め 、 第 五 ・六 ・七行 に同 じ く 一首 を 認 め る .若 し無 題 の場 合 には 、 第 一行 日 を 室 白 と す る 。 ま た 同 題 で 次 の頁 に 亘 る場 合 にも 第 一行 日を 室 白 とす る 。 墨 覆 及 び、行 の頭字 に漢 字 の並 ば ぬ や う にす る事 な ど は 、 折 詠 草 に 同 じ であ るが 、 こ れ はも と潤 筆 と潟 筆 と の調 和 上 か く い ふ の であ る から 、 師 に つ い て添 削 を こ ふ の を 專ら とす る こ の綴 詠 草 に於 い ては、 書 式 に の み捉 はれ す とも 、 筆 のは こ び1ーハ 合 で、 二句 な り 三句 な り の何 處 でで も 、 適當 に穗 先 に、 あ つさり と墨 の 中 つぎ を し ても 差 支 は な い。 叉 七行 に書 き を さ め る には、 書 學紙 等 の厚 手 の紙 を 遖 宜 に切 り 、 七 行 に罫 を 引 い て、 下敷 に用 ゐ る の がよ い。 こ の他 添 削 ㌃乞 ふ詠 草 には、 牛 紙 を 竪 二 つ折 の袋 と ち に し た の に、 一首 を 二行 つ つ に書 く のも あ る。 そ の他 通 信 用 と し ては 、 罫 紙 、 牛紙 、 或 は 原稿 紙 な ど に、 一首 を 一行 叉 ぱ 二行 に書 く 類 も あ る が、 そ れ ら の行 數 、 墨縫 等 は 、 書 く 人 々の 任意 で 、 萬 年筆を 用 ゐ て も よ いo し かし 稽 古 用 と し ては 、綴 詠 草 の本 丈 に述 べたも の の優 美 な のに は 及ぱ な い。 本 居 宣 長 以上詠草 の四書式 に就 いて述 べ了 つた。な ほ不明な點 は、古人 の作 を例に示す べく書 いた のによ つて、 さだか に ・知 ら れるであらうと おもふ。 一、 竪 詠 草 書 弍 解 設 初 春 さ し いつ る こ の 日 のも と の光 よ り 高 麗 唐 十 も 春 を 知 る ら む 二、詠 進 竪 詠 草 隈 言 道 九條 武孔 大 新 年 山 曜 大 須 賀 ま っ江 つは も の に召 し 出 さ れ し 我 脊 子 は いつ こ の 山 に年 迎 ふら む 三、折 詠 草 梅 梅 の花 お も ふ ば か り の 枝 の 樹 を 心 に 植 ゑ て 見 る 寢 ざ め か な 梅 か を る 風 にま よ ひ て そ な た へと には か に折 る る 里 の中 道 四、綴 詠 草 春の歌の中に 見 わ た せ ば 西 も 東 も か す む な り 君 は か へら す ま た 春 や 來 し 夕 霞 西 の 山 の 端 つ つ む こ ろ 一人 の わ れ は 悲 し か り け り - ;: 詠 草 書 式 四〇九・
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