IMO 貨物運送小委員会 CCC1 - 海上技術安全研究所

海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
(独)海上技術安全研究所 国際会議報告
会
議: 国際海事機関(IMO)貨物運送小委員会第 1 回会合(CCC 1)及び
同編集・技術グループ第 22 回会合(E&T 22)
開催場所: 国際海事機関(IMO)
、英国、ロンドン
会議期間: CCC 1:
2014 年 9 月 8~12 日
E&T 22: 2014 年 9 月 15~18 日
参 加 国: CCC 1
E&T 22
国及び地域:62、政府間機構:4、国際機関:33
国及び地域:21、政府間機構:0、国際機関:3
海技研からの出席者: 太田
進
:国際連携センター長
概要
CCC 1 においてガス又は低引火点燃料を使用する船舶の安全に関する国際コード(IGF
コード)案及びこれを義務化するための海上人命安全条約(SOLAS 条約)改正案が作成さ
れた。なお、燃料タンクの隔離等コード案の一部の規定については、本年 11 月に開催予定
の第 94 回海上安全委員会(MSC 94)においてさらに審議される予定。
CCC 1 及 び E&T 22 に お い て 来 年 6 月 に 開 催 予 定 の 海 上 安 全 委 員 会 第 95 回 会 合
(MSC 95)における採択のための IMSBC コード第 3 回(03-15)改正案が作成された。
CCC 1 において海洋環境有害(HME:Harmful to the Marine Environment)物質に関する
非義務的規定に係る IMSBC コード改正案が作成され、検討のため来年 5 月の海洋環境保護
委員会第 68 回会合(MEPC 68)に送付されることになった。なお、この改正案も速やか
に回章され、MEPC 68 の審議結果によっては、MSC 95 で採択される。
ミニ解説
CCC 小委員会:正式名称は Sub-Committee on Carriage of Cargoes and Containers。主な議題
は、各種貨物の運送基準。IGF コード(概要の項参照)もこの小委員会の議題である。
E&T グループ:このグループは、CCC 小委員会の決定を受けて、奇数年は国際海上危険物規
程(IMDG コード)
、偶数年は国際海上固体ばら積み貨物規則(IMSBC コード)の改正
案を作成する。CCC 小委員会の合意に技術的問題がある場合、一部の案を取り入れな
い等、小委員会の合意と異なる案を作成する権限が与えられている。
IMDG コードと IMSBC コードの改正手順:通常、SOLAS 条約及び関連する義務規定の改正
案は、海上安全委員会で承認された後、加盟国に回章され、その後、海上安全委員会
で採択される。しかしながら、IMDG コードと IMSBC コードについては、CCC 小委員
会が合意した案(E&T グループが仕上げた改正案)を海上安全委員会の承認を経ずに
回章することが合意されている。改正案の回章・採択・発効については、SOLAS 条約
附属書(第 I 章を除く)の改正に適用される手続きが準用される。
海洋環境有害(HME)物質:MARPOL 条約改正附属書 V の発効により、2013 年 1 月 1 日か
ら、固体ばら積み貨物が海洋環境有害物質である場合、貨物の残渣を含む船倉洗浄水
を海洋に排出することは禁止された。
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主な貢献
太田は、CCC 1 においては、IMSBC コードにおける
海洋環境有害物質に係る通信グループ(CG)のコー
ディネータとして結果を報告するとともに、本件に係
る作業部会(WG)の議長を務めた。また E&T 22 にお
いては、新規個別スケジュール案の各種規定と現行個
別スケジュールの規定の整合を図るなど、IMSBC コー
ド改正案の策定に貢献した。
海技研からの出席者
主な審議結果
以下の貨物に関する新規個別スケジュール
CCC 1 において当所職員が参画した審議の
の取り入れ
主な結果、及び E&T 22 の主な結果は以下の通
り。CCC 1 ではこの他に、ガス又は低引火点
鉄鋼スラグ及びその混合物
燃料を使用する船舶の安全に関する国際コー
鉄鋼スケール
ド ( IGF コ ー ド )、 国 際 海 上 危 険 物 規 程
マンガン系合金鉄スラグ
(IMDG コード)等についても審議が行われた
化学石膏
が、これらについては、他機関の報告を参照
非鉄スラグ(銅スラグ及び亜鉛スラ
願いたい。なお、貨物の日本語名は仮称であ
グ)
り、今後変更されることがある。
E&T 21 は、これら我が国提案に合意し、個
別スケジュール案を作成の上、CCC 1 に報告
CCC 1 議題 5「国際海上固体ばら積み貨物
した。しかしながら、E&T 21 で修正の上合意
規則及び付録の改正」における主な審議結果
した「鉄鋼スラグ及びその混合物」の個別ス
ケジュール案は、このままでは実際の貨物へ
1
E&T 21 の報告
の適用が困難と考えられたため、我が国は適
1.1
我が国の IMSBC コード改正提案
用に係る記述(義務要件)の修正を提案した。
本年 4 月に開催された第 21 回 E&T グルー
小委員会は、この我が国提案に基本的に合意
プ(E&T 21)に、我が国は以下の IMSBC コー
し、より明確な表現とするため、E&T 22 に、
ド改正に係る提案を行った。
個別スケジュール案の仕上げを指示した。
液状化貨物運搬船に係る規定の改正(乾操
した粉の運搬船 1 に係る免除規定の追加並
2
1.2
その他の新規個別スケジュール提案
びに含水液状化貨物運搬船 により運送す
E&T 21 は、前述のもの以外に、以下の新規
る際に免除する液状化貨物に係る要件の範
個別スケジュール案(括弧内は提案国)に合
囲の拡大)及びクリンカアッシュの個別ス
意し、IMSBC コード改正案を作成した。
ケジュールの改正
木材ペレット(カナダ)(現行個別ス
ケジュールに代わるもの)
1
2
セメント運搬船等の船舶
縦通隔壁等により貨物が液状化した際の移動
を拘束し、適切な復原性余裕を有する船舶
ホウ酸(米国)
焼結鉄鉱(フィリピン)
ガラスカレット(スウェーデン)
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マンガン鉱粉(オーストラリア)
E&T 21 は、火災事故を受けて、セルフアン
フッ化アルミニウム(イタリア)
ローダー船の閉囲されたコンベヤベルトス
このうち、液状化貨物であるマンガン鉱粉
ペースの火災に係るリスク評価の要件を、暫
の新規個別スケジュールと、液状化貨物では
定的措置として、IMSBC コードに追加するこ
ないマンガン鉱石の現行個別スケジュールの
とに合意した。小委員会はこの改正案に合意
適用の判断については、E&T 21 でも議論が
した。
あった。今次会合には、粒径に基づく適用基
準 3 等の修正をブラジルが提案し、小委員会は
2
MARPOL 条約附属書 V との関係におけ
る IMSBC コードの海洋環境有害物質
これに基本的に合意した。
MARPOL 条約改正附属書 V の実施に資する
1.3
その他の IMSBC コード改正
前回改正により「ばら積み時のみ化学的危
ため、DSC 18 は、以下の項目について検討す
るための CG を設置した。
険性を有する貨物(MHB4)
」の判定基準(6 種
HME 物質か否かに係る貨物情報申告
類)が IMSBC コードに導入されたことを受け
要件の IMSBC コードへの取り入れ
て、昨年 9 月に開催された危険物・固体貨
MARPOL 条約改正附属書 V 及び同
物・コンテナ小委員会第 18 回会合(DSC 18)
2012 実施指針6に関する情報の IMSBC
は、今後作成または改正する MHB の個別スケ
コードへの取り入れ(新 14 章)
ジュールではどの判定基準に該当するか(細
HME 物質か否かに係る判定を容易に
分類)を明記することに基本的に合意した。
するための例示リストの作成
これを受けて E&T 21 は具体的方法について審
CG では、IMSBC コードは MARPOL 条約と
議したが、事故の経験等により化学的判定基
は別の法体系であること、HME 物質の基準は
準とは別の判断で MHB に分類される貨物(そ
2012 実施指針に示されており、義務的規定で
の他の MHB)の取扱については合意には至ら
は無いこと等の問題点が指摘されたが、作業
なかった。今次会合においては、オランダ及
の進捗のため、これらの問題点については小
びベルギーの提案に基づき、小委員会は、今
委員会で審議することとし、CG は、IMSBC
後必要に応じて MHB 基準をさらに追加する可
コード改正案を用意した。一方、例示リスト
能性があること、また、「その他の MHB」の
については、貨物の分類には至らず、リスト
個別スケジュールにおいては、記号として
の目的や位置づけを明らかにするため、リス
“OH”を用いること等に合意した5。
トとなる IMO 文書に記載すべき文章を作成す
るに留まった。
3
4
5
鉄鉱石/鉄鉱粉と同様に、中央粒径(D50 )
10 mm 以下且つ有効径(D10)1 mm 以下の場
合は液状化貨物とする。
Materials Hazardous only in Bulk。特殊貨物船
舶運送規則では「固体化学物質」。危険物は
MHB ではない。
細分類の表記は以下の通り。
可燃性固体:CB
自己発熱性固体:SH
水反応性可燃性固体:WF
水反応性毒性固体:WT
CG の審議結果を受けて我が国は、HME 物
質か否かに係る貨物情報申告の義務的要件に
ついて、各種の問題点を指摘し、IMSBC コー
6
毒性物質:TX
腐食性物質:CR
その他:OH
決議 MEPC.219(63)(MEPC.239(65)で一部改
正):2012 Guidelines for the implementation of
MARPOL Annex V.
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ドの今次改正(03-15)への取り入れは見送る
合成酸化鉄(ドイツ及びスウェーデ
べき旨を提案した。小委員会は、この我が国
ン)
提案に合意しつつ、貨物情報に係る非義務的
ジルコン藍晶石精鉱(オーストラリ
規定の取り入れについて MEPC に検討を求め
ア)
るため、WG を設置し、IMSBC コード改正案
銑鉄副生物(ドイツ)
を作成した。また、MARPOL 条約改正附属書
E&T 22 における主な審議結果
V 等に関する情報の新 14 章案も、MEPC に検
討を求めるための IMSBC コード改正案に含め
た。これら改正案は、他の IMSBC コード改正
1
IMSBC コード第 3 回改正案の作成
案とは別に回章され、MEPC 68 に検討を要請
E&T グループは、CCC 1 の指示に基づき、
するとともに、最終的には MSC 95 で採択の可
各種の修正を行った後、IMSBC コード第 3 回
否が判断される。
改正案を作成した。この改正案は速やかに回
固体ばら積み貨物は、同じ正式名称であっ
章され、MSC 95 で採択される予定である。改
ても産地等により成分が異なり HME 物質にも
正案の概要(海洋環境有害物質に係る事項を
非 HME 物質にもなるものが多いという特性が
除く)を末尾に示す。
ある。そのため小委員会は、貨物の例示リス
CCC 1 に新たに提案され、合意された個別
トの作成は困難であるとともにリストの有効
スケジュール案のうち、銑鉄副生物について
性にも疑問があるので、当面例示リストの作
は、グループは、現時点では情報が不十分で
成は進めずに、MEPC に報告の上、指示を仰
あり個別スケジュール案を作成できないと判
ぐことに合意した。
断し、改正案への取り入れを見送った。
鉄鋼スラグ及びその混合物については、我
3
固体ばら積み貨物の液状化
が国提案を考慮し、その適用に係る記述を明
固体ばら積み貨物の液状化については、フ
確化し、個別スケジュール案を仕上げた。ま
ランス及びオーストラリアから、それぞれの
た、マンガン鉱粉については、ブラジル提案
研究の中間報告があった。フランスは、ニッ
を考慮し、個別スケジュール案を仕上げた。
ケル鉱の液状化及び荷崩れの危険性を、水分
値を介さずに直接評価する試験法を開発中で
あり、オーストラリアは石炭の液状化危険性
の判定方法を開発中である。
2
IMSBC コード改正に伴う各種 IMO 文書
の改正案の作成
IMSBC コ ー ド の 改 正 に 伴 う 以 下 の MSC
サーキュラーの改正案は、グループがこれを
4
CCC 1 への新規個別スケジュール提案
小委員会は、以下の貨物の個別スケジュー
ル案(括弧内は提案国)の取り入れに基本的
に 合 意 し 、 IMSBC コ ー ド 改 正 案 の 作 成 を
E&T 22 に指示した。
非結晶塊状珪酸ナトリウム(イタリ
ア)
リチア輝石アップグレード(オースト
ラリア)
作成、または、作成を事務局に指示した。
MSC.1/Circ.1395/Rev.1 “Lists of solid bulk
cargoes for which a fixed gas fireextinguishing system may be exempted or for
which a fixed gas fire-extinguishing system is
ineffective”
MSC.1/Circ.1453
“Guidelines
for
the
submission of information and completion of
the format for the properties of cargoes not
listed in the International Maritime Solid Bulk
Cargoes (IMSBC) Code and their conditions of
carriage”
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MSC.1/Circ.1454 “Guidelines for developing
and approving procedures for sampling, testing
and controlling the moisture content for solid
bulk cargoes which may liquefy”
MSC.1/Circ.1395/Rev.1 及び MSC.1/1454 の改
正 案 は 承 認 の た め MSC 95 に 送 付 さ れ 、
MSC.1/Circ.1453 の改正案は検討のため CCC 2
に送付される予定である。
3
その他
CCC 1 に提案され合意に至らなかった各種
個別スケジュール案について検討し、今後の
作業に際しての助言を行った。
IMSBC コード第 3 回改正案の概要
(海洋環境有害物質に係る事項を除く)
1
本文改正
第 3 章 セルフアンローダー船の閉囲されたコ
ンベヤベルトスペースの火災に係るリ
スク評価の要件を追加
第 7 章 乾操した粉の運搬船に係る免除規定を
追加。含水液状化貨物運搬船により運
送する際に免除する液状化貨物に係る
要件の範囲の拡大
第 9 章 MHB の細分類に関する規定の追加
第 13 章 各種参考情報の更新
2
現存固体ばら積み貨物の個別スケジュー
ルの改正(附属書 1)
クリンカアッシュ(湿式)
(CLINKER ASH,
WET):現行個別スケジュールの名称から
WET を削除し、乾操した貨物にも適用可
能にするとともに、天候要件の免除規定に
「乾操した粉の運搬船を使用する場合」を
追加。
3
新規固体ばら積み貨物個別スケジュール
(附属書 1)
フッ化アルミニウム
ALUMINIUM FLUORIDE
非結晶塊状珪酸ナトリウム
AMORPHOUS SODIUM SILICATE LUMPS
ホウ酸
BORIC ACID
化学石膏
CHEMICAL GYPSUM
銅スラグ
COPPER SLAG
ガラスカレット
GLASS CULLET
鉄鋼スラグ及びその混合物
IRON AND STEEL SLAG AND ITS
MIXTURE
鉄鉱粉
IRON ORE FINES
合成酸化鉄
IRON OXIDE TECHNICAL
焼結鉄鉱
IRON SINTER
マンガン系合金鉄スラグ
MANGANESE COMPONENT
FERROALLOY SLAG
マンガン鉱粉
MANGANESE ORE FINES
鉄鋼スケール
SCALE GENERATED FROM THE IRON
AND STEEL MAKING PROCESS
リチア輝石アップグレード
SPODUMENE (UPGRADED)
木材ペレット(添加剤または結合剤を含むも
の)
WOOD PELLETS CONTAINING
ADDITIVES AND/OR BINDERS
鉄鉱石(IRON ORE):鉄鉱粉の個別スケ
ジュールとの区別に係る適用に関する規定
を追加
木材ペレット(添加剤または結合剤を含まな
いもの)
WOOD PELLETS NOT CONTAINING ANY
ADDITIVES AND/OR BINDERS
木材ペレット(WOOD PELLETS)
:個別ス
ケジュールを削除
亜鉛スラグ
ZINC SLAG
ジルコン藍晶石精鉱
ZIRCON KYANITE CONCENTRATE
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4
試験法の改正(附属書 2)
修正プロクター/ファガベリ法:鉄鉱粉の
ための運送許容水分値決定法として、新たに
試験法を追加。
5
その他
貨物の性状に係る情報(附属書 3):非粘
着性貨物のリストから木材ペレットを削除
し、以下の貨物を追加:
フッ化アルミニウム
リチア輝石アップグレード
木材ペレット(添加剤または結合剤を
含むもの)
木材ペレット(添加剤または結合剤を
含まないもの)
固体ばら積み貨物の索引(附属書 4):木
材ペレットを削除し新規貨物を追加
三カ国語による正式名称一覧:附属書 5 と
して、英語、スペイン語、フランス語によ
る正式名称(BCSN)の表を追加