自治体バス(コミュニティバス) の実態と評価に関する調査 自治体バス

平成21年 地域公共交通コーディネーター会議 (2009/06/04)
自治体バス(コミュニティバス)
の実態と評価に関する調査
財団法人 豊田都市交通研究所
研究部 主席研究員 山﨑 基浩
研究の経緯と目的
• 平成
18年度 : Web
による全国自治体調査を実施。(コミュ
平成18年度
Webによる全国自治体調査を実施。(コミュ
ニティバスの実態把握)
〔〔橋本成仁,増岡義弘,板谷和也,山﨑基浩:自治体の運行する公共交通の
橋本成仁,増岡義弘,板谷和也,山﨑基浩:自治体の運行する公共交通の
状況に関する研究,土木計画学研究・講演集
Vol.37,CD-ROM,2008.〕
状況に関する研究,土木計画学研究・講演集Vol.37,CD-ROM,2008.〕
• 平成
19年度 : 愛知県内の自治体に対して、コミュニティバ
平成19年度
ス運行評価のためのモニタリングに関する調査を実施。
〔〔板谷和也,橋本成仁,三村泰広,瀬尾和寛:自治体バスのモニタリング・評
板谷和也,橋本成仁,三村泰広,瀬尾和寛:自治体バスのモニタリング・評
価制度に関する基礎的研究
,土木計画学研究・講演集Vol.37,CD-ROM,
価制度に関する基礎的研究,土木計画学研究・講演集Vol.37,CD-ROM,
2008
.〕
2008.〕
• 平成
20年度 : 再度、全国のコミュニティバス実態を把握し
平成20年度
ながら、
H19に愛知県内で実施した評価に関する調査を
ながら、H19に愛知県内で実施した評価に関する調査を
全国自治体に展開。
• PDCA
への意識や運行内容の見直し実態を把握し、持続
PDCAへの意識や運行内容の見直し実態を把握し、持続
可能なバス運行のあり方検討と課題整理が目的。
自治体アンケート調査の概要
アンケート調査項目
アンケート調査項目
【自治体バスの運行実態について】
① 自治体バス運行の有無
② 運行するバスの実態(運行目的,免許形態,運賃形態,運
行形態,利用実績,事業収支)
③ 運行に関するデータ収集状況
【PDCA サイクルによるマネジメント実施状況について】
④
⑤
⑥
⑦
見直しの内容
利用者や地域へのアンケート実施状況
バス運行への PDCA サイクルに対する意識
運行見直し時に重視する項目
運行内容見直し履歴(見直しの時期と内容)
□運行頻度の変更(□増便 □減便)
□運行時間帯の変更(□延長 □短縮)
□頻度・時間帯変更を伴わない軽微な時刻表の変更
□運行路線の変更(□拡大 □縮小 □経路の変更)
□停留所の変更(□増設 □撤去 □移設)
□車両サイズの変更(□大型化 □小型化)
□車両台数の変更(□増車 □減車)
□新型車両の導入(□低床 □低環境負荷)
□料金の変更(□値上げ □値下げ □仕組み変更)
□運行委託の変更(□事業者変更 □委託方法変更)
• 2008年11月に実施、全国
の自治体(調査時点で
1,804市区町村)に郵送で
調査票を配布し、郵送また
はE-Mailにて回収。
• 回答は1,112自治体から得
られ、回収率は62%であっ
た。
• 調査内容は左表のとおり、
バスの運行実態とPDCA
に対する意識、運行見直し
履歴など。
コミュニティバス運行の有無
コミュニティバスを運行していますか?
(回答自治体数=1112)
これまでに運行していたコミュニティバスを廃止したことはありますか?
(回答自治体数=708)
廃止したこと
がある
14.0%
運行して
いない
41.3%
運行している
58.7%
廃止したこと
はない
86.0%
• 1,112市区町村から回答、う
ちコミバスを運行している
のは651自治体。
• コミバス廃止の経験がある
自治体は14.0 % 。
利用者が少なく財政的に厳しい(55件)
デマンド交通導入の(8件)
民間の路線バス、鉄道が運行した(7件)
試行運行後の見込みがない(6件)
運行形態の変更の(5件)
利便性向上を目指した統廃合の(5件)
バスの老朽化や排ガス規制等により運行
ができない(3件)
運行に関するデータ収集の実態
貴自治体で運行しているバスについて運行に関してどのようなデータを
収集していますか?(複数回答)
47.3%
バス停乗降者数
バス停間OD
9.5%
86.5%
日利用者数
73.1%
便毎の利用者数
その他
0.0%
7.7%
20.0%
40.0%
60.0%
回答割合(n=651)
80.0%
100.0%
属性別利用者数(個人属性別、
時間・天候別など)(16件)
月間・年間利用者数(10件)
運賃収入(13件)
回数券、定期券利用者数(5件)
利用者属性(5件)
• 日々の利用者数、便別利用者数は、多くの自治
体で計測されている。
• バス停間OD調査の実施は1割程度。
利用者・住民アンケート調査実施の実態
貴自治体で運行しているバスについて利用者や地域に対してアンケート
調査を実施したことがありますか?
(回答自治体数=645)
ないし調査予
定もない
29%
その際の調査項目はどのようなものでしたか?
(調査実施「ある」と回答した自治体のみ:複数回答)
79.8%
個人属性
65.1%
利用理由
86.1%
利用目的・場所
82.4%
利用頻度
16.5%
以前の交通手段
ある
59.1%
ないが調査予
定はある
12%
• 多くの自治体で、利用目的や
場所、頻度、利用の理由を質
問している。
• その他としては、自由意見や
要望が多数だが、運行経費
やバスの必要性に関して質
問する自治体もあり。
42.3%
利用時間
44.4%
運賃満足度
14.7%
外出回数変化
34.4%
いつもの交通手段
運行時間満足度
42.8%
ルート満足度
41.5%
27.3%
バス停位置満足度
車両形状満足度
乗降方式満足度
13.4%
6.8%
乗継利用有無
16.0%
運転手への満足度
15.2%
37.0%
全体評価
27.3%
その他
0.00
0.20
0.40
0.60
回答割合(n=381)
0.80
1.00
施策展開における
PDCAに対する意識
施策展開におけるPDCAに対する意識
貴自治体では、コミュニティバスについて計画・実施・評価・改善の
いわゆるPDCAサイクルを意識していますか? (回答自治体数=639)
意識していない
10.6%
運行の見直しを行う際に、どのような項目を重視して評価をされますか?
利用者の満足度(n=615)
意識している
28.3%
年間又は月間の利用者数(n=619)
収入額(n=574)
収益率(n=580)
意識しているが
具体的にどうする
のかは決まって
いない
61.0%
1便あたりの利用者数(n=609)
利用者数の増減(n=611)
住民の外出機会の増大(n=573)
交通事故の削減効果(n=548)
• PDCAを明確に意識している自治
体は3割程度。
• 具体的にどうするか確定していな
い自治体が多数。
• 評価項目としては、利用者数や利
用者満足度を重視する傾向あり。
渋滞削減効果(n=547)
環境改善効果(CO2など)(n=553)
地域経済活性化への影響(n=561)
0%
20%
とても重視する
40%
60%
回答割合
重視する
80%
重視しない
100%
事例ごとに集計したコミュニティバス実態
主な運行目的(複数回答)
• コミュニティバスを運行している651
自治体のうち、運行している各バス
の詳細質問への回答があったのは
635自治体。これらで運行されている
コミュニティバスの事例数は、1,031
件であった。(これを集計)
既存路線バス(鉄道)の
廃止代替
39.5%
交通空白地域解消
59.1%
9.8%
中心市街地活性化
高齢者福祉
37.3%
15.4%
その他
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
該当するコミュニティバスの割合(n=1,031)
運行日
路線形態
49.9%
循環型路線
日曜日以外
0%
45.4%
26.4%
その他
1.1%
その他
9.6%
毎日
5.9%
デマンド
25.2%
平日(月∼金)
60.6%
往復型路線
70%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
該当するコミュニティバスの割合(n=1,031)
70%
0%
10%
20%
30%
40%
該当するコミュニティバスの割合(n=1,031)
50%
事例ごとに集計したコミュニティバス実態
運賃形態
均一運賃の金額(1乗車あたり)
35%
120
100
106
92
90
80
73 75
80
88
81
72
54
60
6
6
10
1990年
1991年
20
1989年
40
5
13
8
17
26
33 33
20
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
1988年以前
500
400
300
200
190
180
3.6%
0.5% 0.3%
運賃(円)
コミュニティバス導入年度
(件)
0.7%
0.1%
0.1%
0.1%
170
0%
70%
4.1%
160
10%
20%
30%
40%
50%
60%
該当するコミュニティバスの割合(n=1,031)
0.1%
150
0%
5%
0
12.9%
10%
140
無償
15%
130
5.2%
21.8%
20%
120
その他
25%
110
22.6%
30.7%
30%
50
距離制運賃
該当するコミュニティバスの割合
(n=1,031)
64.4%
100
均一運賃
利用実績と収支状況
該当するコミュニティバスの割合
(n=1,031)
一便あたり利用者数
8%
7.4%
•
一便あたりの利用者数で
は、3人/便が最も多く全
体の約7%を占める。全
体の約5割が一便あたり
10人以下である一方で、
20人以上の利用者があ
るバスも8%存在する。
•
収支率(収益に対する費
用の割合)0.5未満のバス
が全体の7割を占める。
0.1∼0.2が最も多く、全体
の18%である。
なお、収益の内訳を別途
尋ねているが、運賃収入
が収入全体の9割以上を
占めるバスがほとんどで
あった。
7.3%
6.7%
7%
6%
5.3%
4.9%
5%
5.7%
5.3% 5.3%
4.1%
4%
3.8%
3.5%
3% 2.4%
1.9%
2%
2.3% 2.5%
1.1%
1.7% 1.6%
1.5%
1.0% 0.9%
1%
20人以上
(人/便)
20
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0%
18.4%
16.2%
12.3%
10.6%
8.8%
•
1.6%
1.4%
0.7-0.8
0.8-0.9
1.5%
1以上
2.0%
0.9-1
2.6%
0.6-0.7
3.2%
0.5-0.6
0.4-0.5
0.3-0.4
0.2-0.3
0.1-0.2
5.5%
0-0.1
20%
18%
16%
14%
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
0
該当するコミュニティバスの割合
(n=1,031)
収支率
収支率
バス運行内容の見直し実態
1年あたりの運行内容見直し回数
該当するコミュニティバスの割合
(n=1,031)
30%
•
26.5%
25%
20%
17.6%
17.3%
14.5%
15%
•
9.8%
10%
8.3%
6.0%
5%
1回∼
0.8∼1回
0.6∼0.8回
0.4∼0.6回
0.2∼0.4回
0∼0.2回
0回
0%
運行内容見直しの内訳
•
27.2%
運行頻度の変更
16.7%
運行時間帯の変更
頻度・時間帯変更を伴わない
軽微な時刻表の変更
運行路線の変更
19.2%
48.4%
•
40.9%
停留所の変更
4.9%
車両サイズの変更
7.7%
車両台数の変更
6.0%
新型車両の導入
10.9%
料金の変更
5.3%
運行委託の変更
全見直し回数(n=1,855)に対する割合
8.3%
その他
0%
10%
20%
30%
40%
約3割のバスがこれまでに運行
の見直しを実施していない。た
だし、このうち約45%は運行開
始から1年未満のバスである。
約半数が1∼2年に1回程度の
見直しを実施している。また、1
年に1回以上の見直しを実施し
ているバスも約1割存在する。
50%
60%
見直しを実施したコミュニティバ
ス(758事例)の見直し回数を総
合すると、1,855回。これらの見
直しの内訳は左図のとおり。
運行路線の変更や停留所の変
更など、ネットワークの変更に関
する見直しが多く実施されてい
る。一方、車両や料金に関する
見直し実施は少ない。
都市特性からみたバス運行と
PDCAへの意識
都市特性からみたバス運行とPDCAへの意識
都市特性別にみた運行の有無
都市特性別にみた運行の有無
0%
20%
40%
全体(1112)
人口規模
1万人未満(264)
∼5万人(447)
57%
44%
56%
∼20万人(297)
23%
76%
41%
59%
35%
65%
∼25%(261)
42%
58%
∼30%(262)
47%
53%
∼35%(144)
56%
44%
35%以上(75)
56%
44%
0.2未満(107)
63%
37%
∼0.4(297)
55%
45%
∼0.6(241)
57%
42%
∼0.8(199)
∼1.0(140)
1.0以上(92)
運行あり
100%
41%
43%
20%未満(370)
高齢化率
80%
59%
20万人以上(104)
財政力指数
60%
「都市特性からみた自治体バスの運行実態とP
DCAサイクルに対する意識に関する研究」
※第39回 土木計画学研究発表会 (2009.06.13
∼14,@徳島大学)にて発表予定
36%
64%
34%
66%
74%
運行なし
26%
不明
• 人口規模別では、5万人以
上20万人未満の自治体に
おいて導入割合が高い。
• 高齢化率による差違は、
あまり見うけられない。
• 財政力指数が高いほど導
入割合が高い傾向がみら
れる。→自治体バスの運
行に必要となる財政負担
が,自治体バス導入の足
かせになっている?
都市特性からみたバス運行と
PDCAへの意識
都市特性からみたバス運行とPDCAへの意識
都市特性別にみたPDCAへの意識
都市特性別にみたPDCAへの意識
0%
20%
全体(651)
人口規模
1万人未満(113)
∼5万人(250)
100%
10%
19%
11%
61%
26%
∼20万人(227)
80%
60%
61%
15%
7%
59%
33%
5%
56%
38%
8%
60%
32%
20%未満(239)
高齢化率
60%
28%
20万人以上(61)
9%
62%
∼25%(151)
26%
∼30%(139)
25%
58%
14%
∼35%(80)
26%
58%
14%
35%以上(42)
0.2未満(40)
∼0.4(164)
財政力指数
40%
∼0.6(137)
∼0.8(127)
12%
62%
19%
23%
60%
13%
28%
13%
56%
11%
65%
23%
29%
∼1.0(93)
35%
1.0以上(68)
34%
「都市特性からみた自治体バスの運行実態とP
DCAサイクルに対する意識に関する研究」
※第39回 土木計画学研究発表会 (2009.06.13
∼14,@徳島大学)にて発表予定
63%
59%
57%
意識している(何年か毎に計画の見直しを行うことになっている)
意識しているが具体的にどうするのかは決まっていない
意識していない
不明
7%
3%
9%
• 人口規模が小さい自治体
ほど、相対的にPDCAサイ
クルを意識していない割合
が高い。
• 財政力指数についても、若
干のばらつきはあるが概
ね同様の傾向が見うけら
れる。
運行内容の見直しと効果に関する分析
運行見直し内容の詳細
運行見直し内容の詳細
総事例数(N=853)に対する割合
0.0%
10.0%
20.0%
16.3%
時間延長
時間短縮
7.5%
23.9%
軽微な見直し
時刻表
34.3%
路線拡大
運行路線
路線縮小
7.2%
32.6%
経路変更
41.1%
停留所増設
8.9%
停留所撤去
停留所
10.4%
停留所移設
車両大型化
車両サイズ
車両小型化
2.0%
6.3%
11.4%
車両数増
車両数
車両数減
新型車両導入
低床バス導入
低環境負荷バス導入
運賃値上げ
料金の変更
運賃値下げ
運賃仕組み変更
事業者変更
委託方法変更
50.0%
18.2%
減便
運行時間帯
40.0%
25.8%
増便
運行頻度
運行委託
30.0%
「地方自治体におけるコミュニティバス運行内
容の見直しとその効果に関する研究」
※第39回 土木計画学研究発表会 (2009.06.13
∼14,@徳島大学)にて発表予定
1.8%
7.0%
2.3%
6.6%
3.3%
8.9%
5.7%
3.5%
• 路線ポテンシャルの高い東京都
23 区、および運行開始から1年
未満(2007 年11 月以降に運行
開始)の事例を除いた557 自治
体の853 事例を対象に分析。
• 「運行路線拡大」や「増便」「増
設」が「運行経路縮小」「減便」
「撤去」よりも高い割合を示して
おり、見直しによってサービスレ
ベルを向上させるケースの多い
ことが見うけられる。
運行内容の見直しと効果に関する分析
1年あたり見直し回数と1便あたり利用者数
1年あたり見直し回数と1便あたり利用者数
1.0回∼
(N=58)
0.8∼1.0回
(N=122)
0.4∼0.6回
(N=133)
33
41
0∼0.2回
(N=52)
21
0回
(N=137)
58
0%
20%
1∼5人
13
40
40%
6∼10人
2
38
51
42
0.2∼0.4回
(N=117)
6
22
33
19
7
20
40
55
0.6∼0.8回
(N=80)
2
17
19
20
60%
11∼20人
31
12
12
6
31
80%
21人∼
「地方自治体におけるコミュニティバス運行内
容の見直しとその効果に関する研究」
※第39回 土木計画学研究発表会 (2009.06.13
∼14,@徳島大学)にて発表予定
8
100%
• 1年あたり見直し回数0.8回
以下の事例では、見直し回
数が少ないほど、「1便あた
り利用者数が5人以下であ
るバスの割合が多くなる」と
いう傾向が見うけられる。
まとめ
• コミュニティバス運行において、
PDCAサイクルによ
コミュニティバス運行において、PDCAサイクルによ
る施策マネジメントを意識しているものの、「その具
体的な方策がわからない」という自治体が多数。
• 評価のために必要なデータ収集は十分に行われて
いないものの、多くの自治体は「利用者数」を評価の
視点として捉えている。
• コミュニティバスの運行やその評価、改善において、
財政力指数の低い自治体では「やりにくさ」が伴って
いる。
• 運行改善によって効果(例えば、利用者の増加など)
が得られているのか、さらなる分析の余地がある。