御 崎 逮 捕 令 状 国 賠 - Biglobe

No.32
(1)
編集・発行
逮捕令状問題を考える会
2002年 9月 15 日 第32号
〒135―002 東京都江東区住吉2―27―1
TEL/FAX : 03-3633-1954
振替 : 00160-5-404749
Email : [email protected]
意されていな
ある日突然、屋根に白羽の矢がたつ。その家の
言われる法学者
娘を人身御供(ひとみごくう=いけにえとして神
すら、まず逮捕
にそなえる人のからだ)を差し出せという御告げ
されれば良いと
だ。家族がどれほどなげいても“邪神”の意志に
いう考えだ。
逆らうすべはない。まだ闇の恐怖が生きていた神
“秩序を守る” 岩見重太郎のヒヒ退治という人身
話か伝説の世界のことである。
ために、毎年10
近代合理主義は神話の闇を打ち破り、人をこう
万人もの人身御供を警察に捧げる必
した恐怖から解放した……はずである。
要があるのだろうか。しかもその半
しかし21 世紀の今、警察がある人間に白羽の矢
数近くの人びとは起訴もされないのだ。
を立て逮捕しようとした場合、何者もこの意志に
先日も逮捕という白羽の矢をたてられた人から、
逆らうことはできないように見える。一応、裁判
令状の会にSOSが入った。しかし、残念ながら
所がチェックすることになっているが、その裁判
令状の会にはまだ、警察というこの“邪神”を打
所は、邪神に仕える神官のように警察の主張しか
ち倒す力がない。限られた抵抗の方法を伝えるこ
聞く必要はないと言う。その結果が、99%を超え
とができるだけだ。いつか必ず、警察から逮捕権
る逮捕令状の発付率である。逮捕されようとして
をはく奪し、この現代の“邪神”を打ち倒したい。
いる者が、警察に反論したり、抵抗する手段は用
そのために、ぜひ力を貸してほしい。
第 1 7 回口頭弁論
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会
員
も
募
集
し
て
い
ま
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○
会
費
/
半
年
三
千
円
○
会
費
半
年
分
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そ
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会
に
連
絡
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て
下
さ
い
○
○
○
逮捕という人身御供
東
京
地
裁
法
廷
未
定
日
程
延
期
御
崎
逮
捕
令
状
国
賠
= 15
不年
当の
逮デ
捕ッ
令チ
状あ
発げ
付指
を名
問手
う配
傍
聴
を
お
願
い
し
ま
す
い。
「良心的」と
御供伝説の残る姫宮神社(飯田市)
J 電
R 話
、 日 0
比 3
谷 ︱
線 3
恵 4
比 6
テキスト
寿 1
村井敏邦編著
駅 ︱
『現代刑事訴訟法』 徒 3
歩 4
第2版 5 5
分 3
会員以外の方も歓迎します。 令状の会まで連絡して下さい。
渋
谷
区
恵
比
寿
西
2
︱
8
︱
1
誤変換
場
所
恵
比
寿
区
民
会
館
2
階
和
室
2
号
日
時
10
月
19
日
︵
土
曜
日
︶
午
後
2
時
定
例
会
・
刑
訴
法
学
習
会
(2)
No.32
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れた後の9月13日に裁判
所に提出した「申し入れ書」
80年10・30事件に対して5人の青年が全国
によると、毎日10時間以
指名手配され、そのうちの1人伊藤隆明さんは92
上の取り調べを受けていま
年2月に逮捕され、目撃証言だけでは公判維持が不
したが、その中で警察官も
可能という理由(つまり目撃証言は証拠にならな
検察官も何の証拠も提示す
い)で起訴されず、処分保留で釈放されました。それ
る事が出来ませんでした。
なのにあくる年の93年6月28日にまたしても
警察官が言っていた事はた
5人のうちの1人権田茂さんが逮捕されました。
だ「目撃証人がいる」あるい
伊藤さんの時も60人以上の刑事が襲いかかり、 は「他の人間は覆面してい
公安1課の刑事が自ら転んだ事によるデッチあげ
たが、お前は素面だった」な
公務執行妨害罪(いわゆる転び公妨)で逮捕された
どでした。そんな事がある
- 22 のですが、権田さんの時はもっと悪質でした。
はずがありません。
「 この
時効までの裁判所に対する160回以上の抗議 『目撃証人』なる者は、警察が意図的にデッチ上げよ
の折に、裁判所に堤出した「申し入れ書」が全部では
うとした物に他なりません」と権田さんは述べてい
ないが、ほとんど私の手許にあります。そのうち9
ます。
3年7月5日に提出した「申し入れ書」には、権田さ
「目撃証人」
使った起訴を粉砕
んが逮捕された当時の事が書いてあります。一部を
此処に書き写します。
また救う会が提出した申し入れ書には、
「勾留理
「警視庁公安部は6月28日、千葉県流山市の住
由開示公判に弁護士の求釈明に対して、東京地裁刑
宅を襲撃し、中にいた男性1人を公務執行妨害の容
事第14部池田耕平裁判官は『本件被疑事実の重要
疑で不当逮捕しました。午前10時15分頃20数
証拠は目撃証言である』
『少なくとも複数の目撃供
人の公安刑事がドアをノックすると同時に、4ケ所
述がある』旨釈明している。即ち池田裁判官は『被疑
の窓をたたき割って乱入し、部屋で寝ていたその男
者は洗足公園さきから洗足図書館にかけての約8
性を『公務執行妨害だ』と叫んで、いきなり不当逮捕
0米の範囲の道路上に居た。実行行為にかかわった
したものです。男性はその後東京に連れてこられ、 かどうか定かではない』と具体的位置、行為の態様
麹町署に留置されています。この男性は指1本触れ
等について何も明かにしていないで、逮捕状を認め
る事もしていません。寝ている所をいきなり私服刑
ています」と書かれています。
事に取り押さえられ逮捕されたのです。刑事達は捜
権田さんは事件当時横浜の事務所で会議に参加
索差し押さえ令状の提示も告知も行わず、いきなり
していた事を、同僚が証言しています。
窓を壊して強盗同然に部屋に押し入って男性に襲
そして権田さんは7月31日釈放されました。全
い掛かったのです。これが合法的な『家宅捜査』と言
国指名手配されてから何と12年6ヶ月たってい
える代物でないことは明らかです。捜索令状も示さ
ました。多数の「目撃証人」の面通し強行を力の限り
ずに窓から侵入する事が、どうして『公務』なのです
阻止した結果の釈放なのです。 (つづく)
か。この場合犯罪を犯して居るのは警察官であり、
国家的犯罪行為です」と述べています。この男性が
権田さんです。
権田さんが伊藤さんと同じ理由で不起訴釈放さ
窓から乱入し
「公妨」デッチあげ
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令状も見せず違法逮捕
苑
恵
にする事も読む間も無く、取材陣の面前で捜査員
に両側から抱えられて車に押し込められた。車は
そのまま走り去った。
この逮捕は違法である、と思っていたところ、1
9月10日、1億円詐欺容疑で、
「ジー・オーグ
2日にテレビ朝日の昼の番組の担当者から、電話
ループ」
(本部・東京都港区)の投資商法事件で同
であの逮捕状況について問い合わせがあった。や
グループの名誉会長大神源太氏(39歳)が逮捕
はりおかしいと思ったのだろう。
された。
でも令状執行とは大抵こんなものだ。私宅のガ
大神氏は警視庁の出頭要請を受け、前日より逮
サの時も令状を目の前で振り回すだけなので「渡
捕勾留を予期して日常生活用品を準備し、10日
して読ませろ」と手を出したら、なんと!「公務
未明に足立区のマンションを出て弁護士会館の前
執行妨害で逮捕するぞ」と言われた。
「逮捕するな
でマスコミの取材を受けていた。そこへ多数の取
らしてみろ」と言ったら仕方なしに令状を渡した
材陣をかき分けて捜査員が現れて、最初は警察手
が。こんな違法は日常的に行われている。
帳のみを見せて「逮捕! 逮捕!」と絶叫した。山
何も知らない市民は、令状見せられなくても
田弁護士に「令状は?」とどなられ、他の捜査官
「逮捕する」
と警察官に言われたらなすすべも無く
が令状らしい白い紙を示した。
逮捕されてしまうだろう。違法であり、また冤罪
私は図らずも此の様子をテレビで見た。一瞬の
の第一歩にもなりかねない。恐ろしい事だ。
テレビの場面であったが。手帳だけで逮捕する事
(注)
刑訴法第201条
は許せないし、令状も本人に手渡しし、内容を確
逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を
認させなければ違法である。大神氏は、令状を手
被疑者に示さなければならない。
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話し合うだけで犯罪に
「共謀罪」新設へ法制審が審議開始
に反対する運動は、必ず権力者
の作り上げる戦争遂行法と衝突
するし、圧政に対する市民の闘
いは、圧政のつくる法に逆らっ
9月18日、法制審議会(刑
錮を科す「共謀罪」を導入する
て行われるしかない。
事法部会)は、国際的組織犯罪
という。具体的な犯罪行為もな
「共謀罪」新設は、そうした労
条約の批准に向けた国内法整備
く、被害者もいない、会話や相
働運動や反戦運動、圧制に反対
として、話し合うことだけで犯
談、会議といった純粋の言論活
する運動を、話し合うだけで闘
罪とする「共謀罪」新設につい
動が犯罪とされるのだ。
いを呼びかけるだけで犯罪とし、
ての審議を始めた。
人は、たとえ権力者から犯罪
弾圧しようというものだ。旧治
報道によれば、組織犯罪対策
とそしられようと、人権と自由
安維持法の協議罪、破防法の扇
法を改悪し、①最高刑が死刑か
と平和を守るためには法をも乗
動罪をはるかに超える労働者・
無期、または短期1年以上の刑
りこえて実力で闘わなければな
市民弾圧のための悪法である。
期の犯罪について、その実行に
らないことがある。
考えることは語ることである。
ついて話し合っただけで5年以
例えば、労働運動は、形だけ
語ることを犯罪とするというこ
下、②それ以外の犯罪で長期4
見れば資本家の企業活動への業
とは、考えることを犯罪とする
年以上の犯罪について話し合っ
務妨害ではないだろうか。
ことである。
「共謀罪」導入に全
た場合は3年以下、の懲役か禁
とくに、自国政府の行う戦争
力で反対しよう。
No.32
(4)
違法な逮捕であった」
「約五時間
にも及ぶ逮捕状によらない逮捕
という令状主義違反の違法は、
それ自体重大な暇疵であって、
-4-
……このようなことが容認され
長時間の任意取調べは違法逮捕
るとするならば、捜査側が令状
警察(捜査機関)の違法・不当な逮捕に対して裁判所がなんの歯止め
にもなっていないことは、逮捕令状の発付率 99
%以上という統計数字
が厳然と示しています。しかし、それでも逮捕令状を得られない場合、
警察は「任意同行」という令状なしの逮捕を行うのです。そしてこの露
骨な違法逮捕を支えているのが、最高裁の積極的追認なのです。
今回は、このシリーズの趣旨とは少しずれますが、
「任意同行」とい
う名の令状なしの違法逮捕に対する下級審の数少ない心ある裁判官の抵
抗と、それをもあざ笑い、踏みにじる人権破壊の府・最高裁の姿を紹介
束状態におき、その罪証隠滅工
します。
なくして終日被疑者を事実上拘
作を防止しつつ、いわばフリー
ハンドで捜査を続行することが
可能となり、令状主義の基本を
害する」として、準抗告申立を
棄却した。
●最決H元 .7.4 /第3小法廷
(判例時報 1323 号 153 頁)
●勾留請求却下に対する準抗告
で及ぶ取調は……任意の取調と
事件は次のようなものであ
申立/富山地裁S 54.7.26 決定
は認められない、……従って、
る。被告人は、被害者の殺害死
本件においては、少なくとも夕
体が発見された直後に任意同行
事件の概要は、次のようなも
食時である午後七時以降の取調
を求められ、午後11時過ぎに警
のである。被疑者は1979年7月
は実質的には逮捕状によらない
察署に到着した。午後11時半過
(判例時報 946 号 137 頁)
23日、出勤のため自宅を出たと
ころ、警察官から同行を求めら
れ、午前7時40分ころ警察署に
到着した。直ちに取調室で取調
べが始まり、数回の休憩をはさ
んで翌 24 日午前零時過ぎまで
断続的に取調べが続いた。その
間、立会人が休憩時などにも被
疑者を看視し、用便時をのぞい
て被疑者が取調室を出ることは
なく、その際も立会人が同行し
た。24日午前零時20分ころ、逮
捕状が執行され、同日午後5時
1 5 分に勾留請求がされたが、
「先行する逮捕手続きに重大な
違法がある」という理由で勾留
請求が却下された。
これに対して、検察官が準抗
告したが、富山地裁は「事実上
の看視付きの長時間の深夜にま
富山地裁S 54.7.26 決定
(S 54(む)第 161 号勾留請求却下の裁判に対する準抗告申し立て事件)
「以上の事実によると、当初被疑者が自宅前から富山北警察署に同行され
る際、被疑者に対する物理的な強制が加えられたと認められる資料はな
い。しかしながら、同行後の警察署における取調は、昼、夕食時など数回
の休憩時間を除き同日午前八時ころから翌二四日午前零時ころまでの長時
間にわたり断続的に続けられ、
しかも夕食時である午後七時ごろからの取
調は夜間にはいり、被疑者としては、通常は遅くとも夕食時には帰宅した
いとの意向をもつと推察されるにもかかわらず、
被疑者にその意思を確認
したり、
自由に退室したり外部に連絡をとったりする機会を与えたと認め
るに足りる資料はない。
右のような事実上の看視付きの長時間の深夜にまで及ぶ取調は、
仮に被
疑者から帰宅ないし退室について明示の申出がなされなかったとしても、
任意の取調であるとする他の特段の事情の認められない限り、
任意の取調
とは認められないものというべきである。従って、本件においては、少な
くとも夕食時である午後七時以降の取調は実質的には逮捕状によらない違
法な逮捕であったというほかはない。
」
「本件においては逮捕状執行から勾留請求までの手続は速かになされてお
り実質逮捕の時点から計算しても制限時間不遵守の問題は生じないけれど
も、約五時間にも及ぶ逮捕状によらない逮捕という令状主義違反の違法
は、それ自体重大な暇疵であって、制限時間遵守によりその違法性が治ゆ
されるものとは解されない、けだし、このようなことが容認されるとする
ならば、捜査側が令状なくして終日被疑者を事実上拘束状態におき、その
罪証隠滅工作を防止しつつ、
いわばフリーハンドで捜査を続行することが
可能となり、令状主義の基本を害する結果となるからである。
」
No.32
(5)
ぎから本格的な取調べが始ま
法性を主張し、それで得られた
しかし、本件には①被告人か
り、翌日午前9時半ころ被告人
供述証拠の排除を主張したが、
らの取調べの承諾、②被告人の
は自白を始めた。その後も取調
最高裁第3小法廷は、「本件任
自白が客観的状況と照応せず、
べは続き、途中昼休みをはさん
意取調べは、被告人に一睡もさ
虚偽を含んでいること、③被告
で午後2時ころには「犯行」の
せずに徹夜で行われ、更に被告
人が取調べを拒否した形跡がな
概要を記載した上申書を書き上
人が一応の自白をした後もほぼ
いこと、などの特殊事情が存在
げた。ところが上申書の記載や
半日にわたり継続してなされた
していたとして、「社会通念上
供述が、警察に判明していた事
ものであって、一般的に、この
任意捜査として許容される限度
実と異なっていたことなどから
ような長時間〔の〕……取調べ
を逸脱したもの」ではないと強
取調べは続行され、被告人は午
は、たとえ任意捜査としてなさ
制された自白の任意性を認めた
後4時ころから第2の上申書を
れるものであっても、被疑者の
のである。
作成した。この2通の上申書を
心身に多大の苦痛、疲労を与え
②のように、長時間の取調べ
も疎明資料として逮捕状が請求
るものであるから、特段の事情
後の自白が事件の客観状況と異
され、令状逮捕が午後9時25分
がない限り、容易にこれを是認
なる場合、自白が拷問的取調べ
に行われた。
できるものではなく」と一応、
で強制された虚偽のものであ
無期懲役の判決を受けた被告
一般論としてはその違法性を示
り、警察によるデッチあげの可
人が、任意同行後の取調べの違
唆した。
6面へつづく
最高裁H元 .7.4 第3小法廷決定(S 60 年(あ)第826号強盗致死、有印私文書偽造、同行使、詐欺被告事件)
本件逮捕にいたるまでの「取調べは、刑証法一九八条に基づく任意捜査として行われたものと認められるところ、
任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の
事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容されるものである(最高裁昭
和……五九年二月二九日第二小法廷決定・別集三八巻三号四七九頁参照)」
。
「本件任意取調べは、被告人に一睡もさせずに徹夜で行われ、更に被告人が一応の自白をした後もほぼ半日にわた
り継続してなされたものであって、一般的に、このような長時間〔の〕……取調べは、たとえ任意捜査としてなされ
るものであっても、被疑者の心身に多大の苦痛、疲労を与えるものであるから、特段の事情がない限り、容易にこれ
を是認できるものではなく、ことに本件においては、被告人が……〔一応の〕自白をした段階で速やかに必要な裏付
け捜査をしたうえ逮捕手続をとって取調べを中断するなど他にとりうる方途もあったと考えられるのであるから、
そ
の適法性を肯認するには慎重を期さなければならない。そして、もし本件取調べが被告人の供述の任意性に疑いを生
じさせるようなものであったときには、その取調べを違法とし、その間になされた自白の証拠能力を否定すべきもの
である。
」
しかし、本件には次のような特殊事情が存在していた。
①「警察官は……参考人として被告人から事情を聴取するため本件取調べを始めたものであり、冒頭被告人から進ん
で取調べを願う旨の承諾を得ていた。
」
②一応の自白の後に「取調べが長時間に及んだのも、警察官において、逮捕に必要な資料を得る意図のもとに強盗の
犯意について自白を強要するため取調べを続け、あるいは逮捕の際の時間制限を免れる意図のもとに任意取調べを
装って取調べを続けた結果ではなく、
それまでの捜査により既に逮捕に必要な資料はこれを得ていたものの……被告
人の自白が客観的状況と照応せず、虚偽を含んでいると判断されたため、真相は強盗殺人ではないかとの容疑を抱い
て取調べを続けた結果であると認められる。
」
③本件の「取調べを通じて、被告人が取調べを拒否して帰宅しようとしたり、休息させてほしいと申し出た形跡はな
く、本件の任意の取調べ及びその後の取調べにおいて、警察官の追及を受けながらなお…-重要な点につき虚偽の供
述や弁解を続けるなどの態度を示しており、所論がいうように当時被告人が風邪や眠気のため意識がもうろうとして
いたなどの状態にあったものとは認め難い。
」
④「以上の事情に加え、本件事案の性質、重大性を総合勘案すると、本件取調べは、社会通念上任意捜査として許容
される限度を逸脱したものであったとまでは断ずることができず、
その際になされた被告人の自白の任意性に疑いを
生じさせるようなものであったとも認められない。
」
(丸数字は便宜上つけたもの。本件取調べは違法であり、自白の
任意性には疑いがあるとする坂上裁判官の反対意見がある。
)
No.32
(6)
5面からつづく
能性が非常高いことは、多くの
冤罪事件が示している。しかし、
最高裁第3小法廷はそのことを
もって逆に長時間の拷問的取調
● 集会・学習会の案内 * 学習会「国際的組織犯罪条約」を暴く
日時:9月28日(土)午前10時
会場:日本基督教会館
講師:海渡雄一弁護士
主催:破防法・組対法に反対する共同行動
べを合法としたのだ。冤罪多発
* 個人情報保護法案拒否!9・28東京頂上決戦
の背景にはこのような最高裁を
先頭とする裁判所のデッチあげ
日時:9月28日(土)午後6時
場所:読売ホール(入場料:1000円)
主催:実行委員会
への加担と容認があるのだ。
* 9・2住基ネットに「不参加」を!横浜市民集会
また、最高裁は、被告人が取
調べを拒否していないと言う
が、いったん取調室に連れ込ま
れた市民が取調べを拒否できる
のか、拒否したからと言って警
察が取調べをやめるのか。現実
を無視した主張である。富山地
日時:10月2日(水)午後6時30分
場所:神奈川県民センター・ホール(資料代:500円)
講演:斉藤貴男さん「住基ネットが招く監視社会」
主催:住基ネットに「不参加」を!横浜市民の会
* 秋期シンポ ジウム「判例からみる国賠の未来」
日時:10月12日(土)午後2時
場所:日本基督教会館4階
主催:国賠ネットワーク
* あなたは「司法改革」を信じますか?
ては、通常は遅くとも夕食時に
日時:10月18日(金)午後6時
会場:弁護士会館2階クレオA(会場費:500円)
講演:小澤隆一・静岡大学教授
主催:自由で独立した裁判官を求める市民の会
は帰宅したいとの意向をもつと
* 反警察ネット学習会「治安出動−警察VS自衛隊」
裁の決定のように「被疑者とし
推察」するのが当然だろう。
しかも、最高裁第3小法廷は
S 51.3.16 決定で、任意取調べ
日時:10月26日(土)午後6時
会場:日本基督教会館(会場費:500円)
講師:西沢優(軍事評論家)
主催:反警察ネット
から帰ろうとした市民の前に立
はないか。
着た卑劣漢”に、これ以上私た
ちふさがり、両手をつかんで引
結局、裁判官の頭の中にある
ちの自由や人権をゆだねておい
き止めた行為を、
「強制手段にあ
のは、令状国賠の小島宏裁判長
て良いのだろうか。職業裁判官
たらない有形力行使」という詭
も言ったような“犯人なら多少
から裁判における事実認定権を
弁をもって容認したのである。
の手続き違反も許される”とい
はく奪しなければならい。
第3小法廷は同決定の中で、
う、無罪推定や適正手続きの原
またこの背景には、違法捜査
強制処分とは①「個人の意志を
則への嘲笑なのである。
だろうと犯人ねつ造であろうと
制圧し」、②身体、住所、財産等
長時間の拷問的取調べの強制
事件が「解決」すれば良いとい
に制約を加えて」、③「強制的に
=令状なし逮捕に合法の御墨付
う捜査機関の人権無視、憲法・
捜査目的を実現する行為」と規
きを与えたH元 .7.4 決定の裁判
刑訴法無視の体質がある。この
定し、それにあたらない「有形
長伊藤正己、裁判官安岡滿彦、坂
ようなゲシュタポまがいの捜査
力行使」があると言うのだ。し
上壽夫、貞家克己、S 51.03.16
機関に私たちの安全をまかせる
かし、帰ろうとする市民をむり
決定の裁判長天野武一、裁判官
わけにはいかない。警察など捜
やり取調室に閉じ込め、犯人に
坂本吉勝、江里口清雄、高辻正
査機関のの強制捜査権をはく奪
デッチあげるのは、
「個人の意志
己、服部高顯の名前を記憶に明
しなければならない。
を制圧」して「身体に制約を加
記しよう。このような刑事手続
(元号には反対ですが慣例表記
え」
「強制的に」犯人ねつ造とい
きの基本原則や憲法・刑訴法に
なので判例には元号・MTSH を
う「捜査目的を実現する行為」で
一片の敬意も持たない“法服を
使用します)
(つづく)