ICT国際競争力強化の課題と方向性 - Nomura Research Institute

第130回NRIメディアフォーラム
ICT国際競争力強化の課題と方向性
~ ICTと社会基盤連携 ~
2010年4月13日
株式会社野村総合研究所
コンサルティング事業本部
情報・通信コンサルティング部
主席コンサルタント
桑津浩太郎
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
内容
Ⅰ.本プレゼンテーションでお伝えしたいこと
Ⅱ.ICT国際競争力
Ⅲ.ICT国際競争力強化の方向性
Ⅳ.新社会基盤とICT連携に向けた課題、施策提案
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
Ⅰ.本プレゼンテーションでお伝えしたいこと
„日本のICT産業の国際競争力は低迷。世界市場における位置付けは、いわば「愛知
県」から「静岡県」へ。
„ベンチャー×ブレイクスルーだけでは、ICTは活性化しない。
zICT産業のパラダイムシフト。「ICTだけが主役ではない」「他産業との連携」
zICT産業の役割は、最適化、複合・一体化、インフラの運用管理、ノウハウ・パッケ
ージ化。
„有望分野は、社会システム・基盤の構築(再構築)と業際領域。
zコンテンツ立国、フロンティア指向(地中、海底、宇宙、人体)、安全保障(日本では
実現性乏しい)等に比較して、社会システム・基盤の構築が有望。
z業際領域は責任ある大企業にサービス開発を進めさせるインセンティブが必要。
„想定される施策としては、クロスボーダ、クロスインダストリー、コンパクト・インフラ。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2
ICTと社会基盤連携は、ICT視点での世代交代ではなく、社会基盤視点での更新に着目
【歴史、マクロ視点でのスマート化】
【歴史、マクロ視点でのスマート化】
利用企業、社会基盤がICTを組み込んだ無駄のないビジネスモデル、社会
利用企業、社会基盤がICTを組み込んだ無駄のないビジネスモデル、社会
基盤を再構築すること。ICT産業単体の成長、発展トレンドではない。
基盤を再構築すること。ICT産業単体の成長、発展トレンドではない。
1780~1840 1840~1890
1890
産業革命
鉄道
電気、化学
紡績、蒸気機関
自動車
伝統、重厚長大産業の
ビジネスモデル、設備交代
ICTの波ではなく、既存
産業の更新の波の集合
「複数の波が重なって
大きな波を形成」
ICT需要サイド
利用企業視点
環境対応等の外部環境変化
が後押し
クズネッツの波(20年単位)
・インフラが老朽化
・環境対応での新エネ、需給最適化等を
ビジネスモデル、インフラに組み込む。
ICT供給サイド
ICT産業視点
パラダイム
シフト
デジタル化
ネットワーク化
1970~
1980~ 1990~2010
デジタル化
デジタル化ネットワーク化
半導体
コンピュータ
クズネッツの波(20年単位)
ジュグラーの波(10年単位)
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
スマート化
スマー
ト化
3
Ⅱ.ICT国際競争力
日本のICT産業の競争力は、愛知県のシェアから静岡県のシェアへ
世界におけるシェア10%超から、3%強度の水準に下落(2020年)
世界のGDP長期予測
ICT市場における日本のシェア例
大手ICT企業の日本市場シェア
16.0%
160
20%
140
単位:兆ドル
14.0%
PC、OS、交換機、伝送機器
ストレージ等
12.0%
120
100
10.0%
80
8.0%
60
6.0%
40
4.0%
20
2.0%
0
0.0%
ブラジル
ロシア
インド
中国
英独韓
米国
日本
日本のシェア
15%
愛知県の位置
10%
5%
2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050
静岡県の位置
年
0%
1980
1990
2000
2010
2020
2030
年
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
4
IMD、WEFランキングにおける日本の位置
„90年代はトップ5に入っていたが長期低落から横ばい。
WEF/IT分野の日本の推移
IMDランキングにおける日本の推移
1996 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
2002
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
0
5
5
10
10
15
20
15
25
20
30
年
35
出所:IMD
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
25
年
出所:WEF
5
産業別の強い分野は?-デジタル化が遅れた分野ほど強い
事務機、ゲーム機、電子部品分野(除くMPU、メモリ)での競争力は依然として高い
日本企業の国内市場、世界市場でのシェア(2009年)
日本企業の日本国内市場シェア
70%超
30~70%
30%未満
コピー機、ビデオカメラ
40%超
家庭用ゲーム機
光通信部品
液晶TV、デジタルカメラ
20~40%
プリンタ
世界市場での
リーダ
オプトエレクトロニクス部品
ノートPC
世
界
市
場
10~20%
携帯電話端末、DWDM等光幹
線伝送
半導体メモリ
ATM(金融)、カーナビ
3~10%
アクセス光伝送
PDA
携帯電話基地局
ストレージ
DVDレコーダ
PC
サーバ
3%未満
BPO
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ルータ
WS
MPU
LANスイッチ
世界市場での
限界プレイヤ
日本市場の
世界シェア
OS
アプリケーションソフト
6
完全なソフトウェアではなく、メカ(印字、金銭ハンドリング)、化学(インク、トナー)などのデ
ジタル化だけで対応のできないアナログ要素が残っている分野に強い傾向がある
„日本企業が強い(強かったもの)
zマイクロソフトやアップルが見送った
周辺機器分野
▪FDD、プリンタ、ディスプレイ
zアナログのブラックボックス
▪光学系部品があるもの
カメラ、光伝送部品
▪ICTにおける駆動部品があるもの
ストレージ、プリンタ等が該当。
「信頼性設計、設計ノウハウが必要
で、時間をへると壊れるもの。すりへ
る部品があるもの」(電子部品)
zハンドリングのノウハウがあるもの
▪ATMの貨幣ハンドリング機構、コピ
ー機の紙送り機構等
zただし、ブラックボックスに安住してい
ると市場規模が大きくなった時に、後
発が本腰を入れると追い抜かされる。
「市場がメジャーにならない方が、中堅
、部品は儲かる」「セットよりも儲けすぎ
て、眼をつけられると参入されてつぶさ
れる」(電子部品)
zマテリアルとケミカルのブラックボック
ス
▪インク、トナー
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
7
産業別:AV、情報家電、携帯電話端末-メジャー分野で苦戦
携帯電話端末「日本企業がするべきはずであったこと・・・」
国策はCDMAであったが、成熟市場(西欧GSM)で後発ながら、シェアを奪っていった事例
SEC(サムスン電子)の携帯電話端末生産台数推移
4,500
„ 10年海外社員、迅速な
意志決定、現地へのコミ
ット(広告宣伝等)
30%
4,000
25%
出荷台数(K Units/M)
3,500
3,000
20%
2,500
15%
2,000
CDMAの立ち上げ
1,500
10%
GSMで成長
(特に欧州)
1,000 1996年ー1999年
5%
500
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
03/1Q
02/4Q
02/3Q
02/2Q
02/1Q
01/4Q
01/3Q
01/2Q
01/1Q
00/4Q
00/3Q
00/2Q
00/1Q
99/4Q
99/3Q
99/2Q
99/1Q
98/4Q
98/3Q
0%
98/2Q
0
98/1Q
CDMA
GSM(China)
GSM(EU+Others)
利益率
z GSM技術のキャッチ
アップ
z デザインでの訴求
z 中価格、高品質
z 大規模な販路開拓、
広告宣伝への経営
資源投入
z 日本車、日本エレク
トロニクスの成功パ
ターン
8
産業別:液晶TV
転換期は2004年。携帯電話同様、アジア企業の参入で競争激化、特にSECが日系メーカ
を逆転
„当時の市場リーダ転落の要因は、海外市場展開の遅れ。
z日本市場で無敵であったが、米国市場が立ち上がると、販路開拓、価格水準、広告宣伝で差をつけられ
、その後、デザイン(ワイングラス等)、機能(LED対応等)でも苦戦。
ブラジル、インド、中国の薄型TV市場シェア(2008)
主要メーカの液晶TVシェア(世界市場、台数ベース)
30%
25%
26%
27%
28%
日本メーカA社
日本メーカA社
22%
20%
SEC
北米市場
北米市場
立ち上がり
立ち上がり
時期から
時期から
シェア低下
シェア低下
ソニー
ブラジル
シャープ
29%
LG
8%
PHILIPS
東芝
その他
80%
100%
30%
21%
18%
15%
18%
15%
11%
10%
9%
37%
インド
13%
17%
4% 1 6 %
10%
5%
14%
中国
15%
12% 8 %
20%
40%
0%
1Q04
2Q04
3Q04
4Q04
1Q05
2Q05
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
3Q05
4Q05
0%
60%
9
産業別:部品
アナログ処理等のノウハウが残る光関連部品の強さは依然として維持
ソフトウェア、アーキテクチャが重みを占める半導体分野は苦戦
ICT(部品)分野の日本企業の世界市場シェア
18%
16%
テレビ用液晶デバイス
„オプトエレクトロニクス部品は、高い水準を維持。
„光ファイバは横ばいを維持しているものの、今後、
新興国市場需要の高まり等から、緩やかに低下し
ていくと予想される。
2%
2%
PC用液晶デバイス
46%
50%
携帯用液晶デバイス
53%
54%
51%
オプトエレ部品
41%
43%
45%
ディスクリート半導体
16%
15%
17%
メモリ
42%
41%
37%
光ファイバ
21%
19%
23%
特定用途半導体デバイス
0%
10% 20%
„プロセッサについては、アーキテクチャ、ソフトウェ
ア等での劣位もあり、市場のメインストリートに登場
できない。
2009
2008
1995
2%
2%
2%
プロセッサ
„液晶デバイスは携帯電話を除いて、日本企業の競
争力は低下。携帯用もシェア低下の傾向は止まら
ない。
30%
40% 50%
60%
出所:経産省資料等より作成
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
特定用途半導体デバイス
光ファイバ
プロセッサ
メモリ
ディスクリート半導体
オプトエレ部品
携帯用液晶デバイス
PC用液晶デバイス
テレビ用液晶デバイス
1995
23%
37%
2%
17%
45%
51%
2008
19%
41%
2%
15%
43%
54%
50%
2%
16%
2009
21%
42%
2%
16%
41%
53%
46%
2%
18%
年度
10
日本市場に魅力はないのか?
・通信インフラ、通信と鉄道、金融等の境界領域の成熟度、垣根の低さは魅力
・優先分野から、モバイルのアプリ、サービスに近い領域が優れたインフラに魅力を感じる
アプリ、サービス
モバイル環境利用
に魅力
Evernote
・日本のユーザが、PDA、
ノートPCで最先端ユーザ。
・日本語化を前倒し。
テレプレゼンス等のアプリにシフト中
Google
・動画像コンテンツの先端
ニーズとしてニコニコ等に着
目。ベンチマーキング先とし
て重視。
優れたインフラの提供が
アプリ、モバイルで牽引力
を発揮しつつある。
モバイル環境利用
に魅力
固定
Quallcomm
・携帯電話アプリ、ミドルのター
ゲット、パイロット。
・特に地図、自動車に注目。
モバイル
シスコ
・ブロードバンドのモデルケースとして注目。
・大口通信事業者の存在
インフラ、ハード
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ノキア→×
・日本から撤退。調達のみ残す。
・日本向け販売の不振。
3G環境整備にともない、日本の圧倒的な
リードは失われつつある。
11
ICT国際競争力強化のモデル評価
・フロンティアを個人で開拓させることを最適化した米国モデル
・2番手の立場から、目標設定・管理の上、資源投入をはかる従来型産業政策、EUモデル
・中国モデルは、従来型産業政策と自国市場保護(単体で世界市場の大きなシェアに相当)
国際競争力強化モデル
産業育成と自国市場保護を重視
2’)従来型産業政策
中国
産業育成を重視
公的機関
国家等の関与
漸進的改善
「フォロワー指向」
域内連携を重視
2)従来型産業政策 3)EUモデル
日本(80年代以前)、
韓国、台湾
自由放任
営利追求を強い
モチベーション
1)ベンチャー主導モデル
米国
ブレイクスルーは
小さな組織から
「フロンティア指向」
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
リスクテイクを個人に。
営利を強いモチベーションに。
12
ベンチャー主導モデル(米国)
ハイリスクテーマ向けの人材、資金、運営体を効率的に生み出して、市場原理で淘汰、育
成する仕組み
„ベンチャー主導モデルはハイリスクテーマ(技術、事業)の開発を、大
きな組織から切り離し、柔軟かつ低コストで委託する仕組み。
„基本的な思想は、
zベンチャー、産軍学連携
ハイリスクテーマ人材の供給。高リスクテーマの安価な開発。
z知財、標準化
独自性、先行優位を保護する構造。
z資金調達
高リスク対応マネーを、リスクに応じて段階的供給する仕組み。
あわせて成功者への報奨。
大学
公的機関(特に軍)
ベンチャー
ハイリスク対応資金供給
成功者への潤沢な報酬
資金調達
支援
z先端技術、事業は高リスク。
z先端技術、新規事業は既存企業、特に大
規模組織では生み出すことができない。
「フロンティア」は、強い意志をもった個人、
小規模組織でないとたどりつけない。
z市場原理での淘汰の仕組みと、勝者への
潤沢な報酬を組み合わせる。
ハイリスクテーマの低コスト「委託」
人材供給
独自性、先行優位を
法的に保護する構造
z「フロンティア」に、「欲望」をもった人間を
向かわせる仕組みを、「市場構造」と「競争
原理」から設計。
知財・標準化
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
13
ベンチャー主導モデル(米国)
大きな成果をあげた反面、問題点も明らかになってきた
„産業育成、国際競争力面での評価(ポジティブ)
„功罪相半ばする側面はあっても、ICT市場の牽引
役、特にサービス面での高い評価は否定できない。
„1985~2005年までのICTベンチャー主導モデルの
成果
„創生された企業数
z62万社(個人経営コンサルティング等は除く)
„IPO数
„ICT分野のなかでも、大型産業分野、社会インフラ
分野等には必ずしも、適していない?
zスタートが小規模、少人数であり、大規模システ
ム向け事業は対象範囲に含まれないことが多く
、不向き。
z個人、企業向け製品は開発できても、通信事業
者向け大規模製品の開発(特に完成品)での提
供が困難。
▪ キャリアグレードルータ「シスコモデル」
z5200(外国企業等は除く)
„投入された資金
zIPOで42兆円、アーリーステージで22兆円。
増資等は除く。
„関連した従業員数
z「欲望」と「市場原理」にもとづいているため、好
調期にバブルを発生しやすく、循環的にバブル、
不況を繰り返すことになる。
▪ 光ネットワークバブル
zうち、関連した移民は40万相当
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
14
シスコのジレンマ(1)
「ベンチャーから、必要とする新しい技術、製品が獲得できない」
新技術がベンチャー企業から獲得できなくなったため、A&D(Acquisition&Development)から、自社
研究開発比率をあげる方向に転換。特にコアネットワークは買収等の対象企業が無くなっている
◆A&D主体(2004年まで)
„自社での基礎的な研究開発は、最小限
度にとどめる。
„基礎研究と、その成果はベンチャー企
業へのM&Aを通じて獲得する。
z基礎段階でのリスクは、ベンチャー、
アカデミズムが負担。
その成果を、金融手法で還元しつつ
、シスコ社は、開発以降に経営資源
を集中する。
„90年代中盤までは、ISP等の事業規模
も限定的であり、スイッチやルータへの
技術・新製品導入も、ベンチャー製品を
起点として、十分に機能していた。
z特にスイッチへの転換でA&Dが奏
功。ルータ依存リスクをA&Dで切り
抜けた。光伝送製品への品揃え拡
大。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
◆やむなく自社研究重視へ転換(2004年以降)
„2004年以降、キャリアグレード製品のA&D調達が困
難となった。
zキャリアが望む、高信頼、高スケーラビリティ製品
はベンチャー企業では開発困難。
z最後のキャリアグレード大型製品企業の買収は
2004年のProcket。
z調達可能な分野としては、ASICやソフトウェア・ミ
ドルウェアなどの一部、部品に限定されており、こ
れをキャリア向け大型ルータ等の形にするために
は、自社での研究開発が不可避となっている。
zCATV-STB、各種アプライアンス、ネットワークサ
ービスソフトなど、A&D分野が従来のコアビジネ
ス範囲よりも、広い範囲に広がっている。
zCATV-STB等の変則的な買収を除いて、コアス
イッチ関連分野での04年以降のA&D対象におい
ては、ソフト、ASIC関連企業の比率は70%を超え
ている。
15
シスコのジレンマ(2)
2005年以降、キャリア向け大規模装置の最終製品を対象としたA&Dは実施されていない。
かわって、企業向け等のアプライアンスベンダー買収が増えてきた。コアネットワーク向け最終製品の
買収は、2004年のProcketが最終
図表 Cisco社のA&D(2004~2005)
分野
買収金額等
Sheer Networks
仮想ネットワーク
USD9700万
KiSS Technology
家庭向け映像録画
NetSift
パケット処理ASIC
買収金額等
Protego Networks
中小企業向けアプライアンス
USD6500万
BCN Systems
ルータ向けネットワークソフト
USD3400万
Jahi Networks
ネットワーク管理アプライアン
ス
USD1600万
Perfigo
エンドポイント向けアクセス制
御
USD7400万
Dynamic Soft
SIP
USD5500万
Netsolve
リモート管理
USD1.28億
P-Cube
IPサービス管理
USD2億
Parc Technology
MPLS
USD900万
Actona Tech.
リモート向けファイル転送
USD8200万
Procket Networks
コアルータ技術
USD8900万
Riverhead Networks
DDoS防御
USD3900万
Twingo Systems
SSL-VPN
USD500万
USD6100万
USD3000万
M.I.Secure
VPN/セキュリティ
USD1300万
FineGround
DC向けアプリ管理アプライア
ンス
USD7000万
Vihana
通信処理プロセッサ等
USD3000万
Sipura Technology
家庭端末向けVoIP
USD6800万
Topspin
Communications
サーバ向けファブリックスイッ
チ
USD2.5億
AireSpace
無線LAN管理ソリューション
USD4.5億
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
分野
16
シスコのジレンマ(3)
コアネットワークに関連した基礎技術分野の買収は件数減少、最終製品ではなく、部品やソフト分野
に。収益率の低い非キャリア向け分野にも拡散。
2005年のSA社(CATV-STB)買収は、放送/消費者分野向けであり、方針転換の象徴案件。
図表 Cisco社のA&D(2005~2007)
分野
買収金額等
Ashley Laurent
DSLゲートウェイソフト
非公開
USD32億
Arroyo Video
Solutions
VoDソリューション
USD9200万
NAS仮想化
非公開
802.1x
USD43.7億
Utah Street Networks
SNS構築
非公開
Meetinghouse
Data
Communications
ReactivICTy
XMLゲートウェイ
USD1.35億
Metreos
IP通信アプリ開発環境
USD2800万
Five Across
SNS構築
非公開
Audium
VoiceXML
USD1980万
IronPort
電子メールセキュリティアプラ
イアンス
USD8.3億
Sypixx Network
ビデオ監視
USD5100万
Tivelia
電子サイネージ
非公開
Cybertrust
FW
USD5100万
Greenfield Networks
高速パケット処理ASIC、ソフ
ト
非公開
DigICTal Fairway
IPTelephony Provisioning
USD1525万
Orative
携帯音声、データ統合
USD3200万
Scientific-Atlanta
CATV-STB
USD69億
Nemo Systems
ネットワーク処理高速化
USD1250万
分野
買収金額等
SpansLogic
パケット処理プロセッサ
非公開
WebEx
Web会議サービス
NeoPath Networks
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
17
技術サイクルの短期化
骨太かつ革新的な変革のサイクルは長期化し、改良・改善型の新技術導入は短期化して
いる
„新技術サイクルの導入
帯域確保負担、複数システム併用の流れはあるものの、
3G以降の導入は改良が先行し、4Gは後送りの一歩
携帯電話の世代交替
1G
1980~
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2G
3G
„ビジネスプランにおける技術サイクル、投資回収サイクル
の考え方の変化
z基地局投資等のインフラ負担が大きい事業は依然として10年近
い投資回収サイクルを想定しているが、回収サイクルそのものは
短期間化している。
2000年
頃の展望
1Gの普及
80年代
2Gの普及
事業計画例
„市外通信(電話)
単黒化5~7年、累損解消10~12年
„CATV
単黒化4~6年、累損解消10~14年
„衛星通信 単黒化3~5年、累損解消10~12年
3Gの登場 3Gの登場
90年代
3.5G
3.9G
„光通信事業
単黒化3~6年、累損解消8~10年
„DSL
単黒化3年、累損解消6~7年
2000年以降
4Gの登場
(3.99G?)
4Gの登場?
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
„3G wCDMA
単黒化4年、累損解消9~10年
„コンテンツ配信
単黒化3年、累損解消5~7年
„Wimax
単黒化3年、累損解消7~9年
18
参考:EUモデル
・参加国の連携による規模の経済性追求、個人と社会のバランスに配慮したR&Dを模索
・通信、運輸などのネットワーク産業で、施策等の評価が高い
„新リスボン戦略(2005)
z2010年までの経済、社会政策の包括的方向付け。
z「投資、ビジネスに魅力ある欧州」「成長に向けた知識
とイノベーション」「雇用の質と量の向上」
z個人の自由と社会の責任をバランス
米国ベンチャーモデルのような個人の営利を強く訴求
するモデルではないが、創造的な小企業への目配り、
支援は意識。
エネルギー、通信など社会インフラ領域での取り組みを
重視。
„第7次フレームワークプログラム
z産官学共同プロジェクトへの助成、費用の50%をEUが
助成。
z欧州研究圏を構築。
z競争力イノベーションイニシアティブとして、下記3プロ
グラムを設定。
▪ イノベーション支援(中小)
▪ 情報通信政策支援
▪ インテリジェント・エネルギー・ヨーロッパ(再生エネ
ルギー向け)
„EUモデルの特徴
z規模の経済性の追求
加盟国の連携による米国等への対抗。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
z域内連携とネットワーク型産業のシナジー
「グローバル市場の先取り」
域内特性から、加盟国間での接続、相互融通、認証な
ど、ネットワーク型産業の支援政策、プラットフォーム構
築は完成度が高いと評価されている。
GSMが世界市場で高い評価を得た理由の一つと評価
できる。
・当初からローミングを前提
端末ではなくSIMベース、他方式にない高度なポータ
ビリティ
料金決済の仕組みを当初から準備
・多言語インターフェースを前提
19
Ⅲ.ICT国際競争力強化の方向性
(1)日本の強みの再強化とBoP待ち伏せ
次世代マス層を対象とした日本の強み(
品質、質感、Japan Cool等)の再訴求。
(2)フロンティア(人、宇宙・海底・地底、ロ
ボット)と未踏技術
新たな技術領域探索。
(3)ソフト・カルチャー露出と連携
Cool Japan等のコンテンツ、トレンドによ
る世界市場への浸透。
(4)安全保障と技術
衛星、次世代ナビゲーション、高セキュリ
ティネットワーク技術等の安全保障面か
ら産業育成。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(5)ICTと新社会基盤
「コーディネータ」
エネルギー(スマートグリッド、直流住宅、
電気自動車)、交通(鉄道、ICTS)、電子決
済、医療など、ICTを組み込んだ新たな
社会基盤の構築とビジネスモデル、イン
テグレーションによる国際競争力強化。
z視点として、ICTを触媒とする新しい
すり合わせ型の社会インフラ(エコシス
テム)をとりあげる。
(6)先端市場、世界のパイロットファーム
「世界の愛知県(10%)から、静岡県(3%)
へ」を前提として、世界の企業、人材を呼
び込む「場」を提供し、競争力強化をはか
る。
20
仮説の整理、位置付け
社会基盤連携の有効性が相対的に高く評価される。
着目点
日本の強み
課題
日本の強みへの回帰、新
興国低中間層の所得向
上へのターゲティング
高品質、丁寧、行き届い
た等
質感(クオリア等)
個別企業の戦略
未踏領域の技術ブレーク
スルーでICTを再活性化
ロボット分野における総
合力、ヒューマノイド技術
の先行
長期かつハイリスクな課
題が多数
(3)ソフト・カルチャー露出による連携「
Digital Cool」
ICT上位レイヤの一つで
あるコンテンツ等でのICT
牽引
アニメ、ゲーム、キャラク
タ等での先行
産業そのもののすそ野、
奥行きに欠ける
安全保障とICTの一体整備推進
(検討からは除外)
次世代ネット、衛星等の
安全保障要件からのICT
牽引
(レーダ等の技術領域で
は高評価)
安全保障を全面に打ち出
すことの社会的受容性。
鉄道、環境等の相対的に
強く、世界市場で通用しう
る事業領域を有する
ビジネスモデル、制度を
持ち込む仕組み、体制。
ICT視点では必ずしも革
新的な技術等をともなわ
ない可能性がある。
充実したICT基盤
後背市場の魅力に欠ける
状態では持続しない「卵
⇔鶏」
(1)「日本らしさ」によるBoP待ち伏せ
(2)フロンティア探求
「ロボット、宇宙、地中、海底、人体」
(4)新社会基盤連携
「スマート化」「コーディネータ」「新社会
基盤」
(5)先端市場、世界のパイロットファー
ム
社会インフラの更新、新
設、環境対応をICT視点
で支援。
充実したICT基盤を活用
した世界の人材、企業、
技術の引き寄せ
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
21
参考:BoP待ち伏せ
10年後に現れる世帯収入1万ドルをターゲットに、日本企業の強みを訴求。
新興国7カ国の世帯数予測 (ブラジル、中国、インド、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム)
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
22
フロンティア・未踏領域:ロボット(1)
新規需要2兆円の期待が10年以上前から続いているが立ち上がりは不明。
„産業用ロボット
ロボット市場実績推移・予測
z製造業用(従来型)
99%を占める
製造業用を
除いた予測
2001年予測
2010年2兆円強(製造業除く)
生活分野1.5兆円
120
出荷金額予測(億円)
95
79
80
65
60
53
44
34
0
2001
zホームロボット
ペット、エンタメ、セキュリティ
33
z医療・福祉
介護、セラピー等
22
15
福祉・介護用ロボット
10
家庭用サービスロボット
8
6
52
59
業務用サービスロボット
65
„日本の強み
44
6
20
„パーソナルロボット
112
100
40
z非製造業用(公共・福祉)
消防、原子力、土木・建築、運輸・ゴミ処理等
29
z広範な要素技術の集大成
総合力に勝る日本の強みが活かせる?
特にヒューマノイド技術で世界をリード
36
21
7
9
10
11
12
13
14
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
z自立制御、姿勢センサ、移動制御、力センサ
設計技術、加工技術、バッテリ技術
年
23
フロンティア・未踏領域:ロボット(2)
90年代後半の2010年本格普及予測が外れたことが明らかになるにつれ、2025年を目
標とする見方が増えてきた
„ロボット産業成長の障壁
特定作業用途
2010年
„特化のジレンマ(1)
z高度な機能、高いコストを下げたい
z機能特化
zロボットである必要性が乏しくなる
2015年
特定用途
„特化のジレンマ(2)
zニッチ化が進展し、市場が小型化
z普及には人間との親和性が重要
自律・汎用用途
広範な技術の集大成であるため、一つの
技術のブレイクスルーだけで、産業が
立ち上がらない。
z用途を限定
„擬人化の負担
2025年
今の日本の強みは、厳しく言えば、
相対的な強みであり、ブレイクスルーは
大量に必要
z人間が自然に行っている動作、機能の必
要要件が予想以上に負担大(歩行等)
„不気味の壁
z普及には人間との親和性が重要
z人間に外見を似せるほど、違和感が増す
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
汎用化の段階でエネルギー、駆動とい
った基本構成要素への必要要件の難
易度が急上昇する。
„エネルギー調達
z使い勝手の点で有線を避けたい
z既存のバッテリーでは容量等が不十分
„アクチュエータ
z駆動、伝動機構の小型化、経済化、パワ
ーアップが困難。
24
フロンティア・未踏領域
宇宙産業(1)
米国、欧州との差は極めて大きく、実績、コスト競争力、人的資源蓄積、軍需等のコア需要
基盤など、いずれをとっても見劣りする
宇宙産業 機器(サービス含まず)
億円
米国3兆円超
10,000
8,000
EU0.8兆円超
6,000
4,000
3,546
3,699
2,500
2,400
2005
2008
2,000
0
1995
2000
年
サービス産業が機器の2倍。
出所:JAXA資料等より作成
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
日本の宇宙産業の現状
„政府調達が2/3を超える。
軍事関連需要をもたない日本は規模で
見劣り。
„盛り返しつつあるが上位二地域との差
は極めて大きい。
z企業視点で見ても、最大手三菱電機
で、ボーイング等の米系企業の1/10、
欧州大手(アリアン等)の1/2。
„打ち上げ等が安定化しても、EUには届
かず、米国との差は絶望的に遠い。
„小型衛星等のニッチ領域でユニークな
ポジションを模索する動きもあるが、この
アプローチでは基幹産業としての量的貢
献、成長は期待しにくい。
25
フロンティア・未踏領域:宇宙産業(2)
事例、準天頂衛星。ユニークな着想、割高な実装・運用、骨太構想とバックアップ欠如。
„日本独自のアプローチとして、3つの楕円軌
道衛星のセット運用が検討されたが、経済性
等の観点で本格採用に至らず。
„背景と着目点
z天頂位置に見えるので、都市部での衛星
サービス等に優位。
z欧州のガリレオなど、ポストGPSの機運が
高まっていた。
z静止衛星軌道の不足等を回避することが
可能。
z豪州、中国などの隣接地域をカバーでき
る。
(安全保障上の有効性も一部で指摘されて
いた)
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
„課題
z3つの衛星は、常時サービス提供可能で
はなく交代で利用。
裏をかえせば、常時2つの衛星は「遊んで
いる」
打ち上げコストは、単純に3倍、量産効果を
加味しても2倍を超える。
「そうでなくとも日本製で割高なのに、それ
が更に2倍超になる。経済性を重視した運
用には耐えられない」。(エレクトロニクス)
z安全保障用途、ポストGPS等の大型支援
プロジェクトをあわせて考案、打ち出すこと
が出来なかった。
26
コンテンツ産業、ジャパンクール
コンテンツ産業が輸出強化、対ハリウッドでの存在感を示せるとしても、プレゼンス強化で
有効だが、基幹産業としては課題が残る。
コンテンツ産業の海外輸出増加に関する試算
単位:兆円
20
15.1
英国並
15
13.6
11.9
米国並
10
5
0
2008
2015
2015
年
単位:兆円
2008
映像
音楽・音声
ゲーム
出版・新聞等
計
日本のシェア
4.4
1.7
0.8
5
11.9
7.9%
輸出比率
3.0%
ライセンス料等
2015
2015
13.6
15.1
17%
米国並
„現在の輸出比率3%が、米国並(17%)、欧州
先進国並(30%相当)まで拡大したとして、国
威、プレゼンス強化には有効だが、雇用や波
及効果は限定的。
z波及効果の相対的な低さ
雇用や関連算出量等の乗数効果が、やや
見劣りする。
「うまく振る舞えば、大儲けできる構造だが
、周辺産業・経済への波及は、意外に奥行
きに欠ける。デジタル化で事業範囲が広が
り、ライブラリ拡大が進んでも、雇用や投入
への効果は意外に小さい。むしろ、デジタ
ル化で少人数、生産性向上が進んだ」
(米国コンテンツプロバイダ)
「基幹産業というよりは、フラッグ、彩りやバ
ラエティ、プレゼンス強化といったもの。よく
も悪くも高次産業。」(官公庁)
30%
英国等
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
27
「新社会基盤とICT」の背景
„ICT普及、成熟化をうけて手段、支援役としてのICT
ICT産業は必ずしも主役ではなく、むしろ、既存産業の変革を支える支援役。
携帯電話、インターネットの急速な普及による市場構築ではなく、エネルギー、自動車、
交通、ヘルスケア等の既存産業のビジネスモデル、基盤再構築を支援。
„新興国成長、先進国再構築。ただし、「供給(資源、人)は制約」
先進国の社会、市場の成熟化を受けて、量的成長だけではなく、無駄や環境負荷の軽
減による最適化に重点を置く。
従来から社会インフラを支えていた歴史ある企業にとって影響、事業機会。
„グローバル化に続いて、業際・融合領域が活性化
上記の社会基盤再構築にともない、従来のバリューチェーン、業種別役割分担が変化
し、業際領域での越境、融合に向けた動き、異業種からの参入が活発化。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
28
ICT産業の転換期。手段、サポート役として社会基盤を支えることでICTの成長戦略を模索
z環境負荷、排出削減のための
需給調整、制御
z新エネルギー導入の最適化
z人口増、成長を前提提とし
ないビジネスモデル追求。
z新産業創出(ヘルスケア等)
と住宅、エネルギー、自動車
等の業際境界領域開拓。
環境対応
新社会基盤/スマート化とICTの関係
【スマート化のパラダイムシフト】
【スマート化のパラダイムシフト】
ICTそのものは副次的な位置付け。
ICTそのものは副次的な位置付け。
ICTは目的ではなく、手段。主体は利用者。
ICTは目的ではなく、手段。主体は利用者。
少子高齢化
スマート
グリッド
新エネDSM
新社会基盤
スマート化等
EVカーシェアリング
新社会基盤
スマート化
3R
グローバル化
ICT視点
ICT普及
→利用者視点
→ICT利用
ICTそのものが目的→ツール、基盤
(革新的進化→漸進的変化)
サービス化
従来のICT視点
・携帯電話、ブロードバンド普及は上限。
・企業のICT支出も二桁成長は期待薄。
z物販からサービス化
z所有から利用へのシフト
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
29
参考:GoogleとGE
「ICT基盤を新社会基盤の中核に」「社会基盤再構築の主導権確保」
Google
GE
広告モデルからICT基盤
発電、自動車、住宅向けのインフラ再更新へ
ICT基盤をスマートインフラの中核に
メータリングの次は、規制見直しへ
電気自動車ベンチャー投資
電気モビリティ
Google Map→Google Navi
・充電スタンド位置
提携
クライスラーとの電気自動車関連提携
電気自動車、バッテリーメーカ投資
・EV対応機能の研究開発
AMI(Advanced Metering Infrastructure)導入
Google Power Meter
ユーティリティ
・電力消費データの収集、蓄積
Google Power Meter
ホーム
提携
提携
・エネルギー管理アプリ
・家庭向けボードの開発
Demand Responseプログラムの訴え
・デカップリング制度(電力会社の省エネ推進にお
ける負のインセンティブを除去)の導入訴え
エネルギーネットゼロ住宅(2015)
Advanced Load Control Strategy
Google Street View
都市交通開発
・デジタルサイネージとの連携
・ローカル、コミュニティエネルギー管理の実証実
験
高速鉄道評価プロジェクト
Google Health
ヘルスケア、ライフ
・電子個人健康記録(PHR)とGoogleプラットフォ
ーム連携
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ヘルスケアフィールドトライアル
30
社会基盤(再構築)におけるICTの役割
最適化、複合・一体化、運用・監視、ノウハウ・仕組みパッケージ化等が課題。
社会基盤(再構築)におけるICTの役割
スマート
グリッド・
ハウス
(1)最適化機能の提供
センサリング、需給マッチング
資源配置、キャパシティ管理
ピーク時
対応蓄電
DSM
スマート
モビリティ
配車・位
置管理
鉄道
水
運行管理
処理プラ
ント、流量
予測
医療
環境
その他
大規模医
療記録
在宅・遠
隔診療
広義のスマートグリッド
住宅・電力・自動車
(2)業種をまたがる異なる
社会基盤の複合・一体化、
横断化
スマートメータリング、
業際化対応
(3)社会基盤の運用・監視
機能の提供
運用管理、顧客応対、課金等
ビジネス階層機能
グローバルサービスハブ
(4)海外市場への社会基盤
提供におけるノウハウ、
仕組みのパッケージ化
管理システムパッケージ化、
ナレッジイントラネット、
要員育成(遠隔ラーニング等)
スマートメータリング
都市・都市交通一体整備
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ローカルハブ(現地)とグローバルハブでの運用・監視体制
-
シェアリン
グ
運行、車
両、駅舎
管理等
プラント運
用全般
診断、医
療情報、
医業従事
者管理
31
(1)最適化機能
社会基盤の運営における需給調整等を通じた最適化機能の提供。
„センサリング
z温度・湿度、人間(在席)、機器状態等の状況把握
スマートグリッド、直流住宅、EV
EV
の事例
スマートグリッド、直流住宅、
の事例
„需給マッチング
zピーク時対応の蓄電/放電管理
DSM
需要をきめ細かく
測定、制御、引下げ。
エネルギー需要/供給
電力
スマートグリッド
住宅
直流住宅
定常電力供給
電力需要
蓄電
時間帯
„ 需要制御
zピーク時の直接需要制御(DSM)
zカーシェアリングにおけるピーク、オフピーク課金
„資源配置
自動車
EV対応
z充電状態管理と充電ステーション位置管理を組み合わ
せたEVシェアリングにおける車両位置
新エネルギー
PV等
zカーシェアリングにおける車両配置・回収位置管理、充
電SS配置
„キャパシティ管理
z電力系統における発電、蓄電等の容量管理
z流量予測に対応した水処理プラント運用管理
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
32
(2)業種をまたがる異なる社会基盤の複合・一体化、横断化
・異なるサービス、インフラ等の一体的な提供、管理を実現
・天津エコシティの場合、シンガポールが自国の都市運用ノウハウを包括的に提供することを目的
„複合・一体的な社会基盤構築
複数の社会基盤を、地域限定等の条件下で一体整備。
天津エコシティ2020年までの目標
分野
エネ
ルギ
ー
スマートメータ
電力、水、ガス
等の一体管理
水
目標
再生可能エネル
ギー比率
用水総量に占め
る非通常用水比
率
(再生水、海水
淡水化)
交通
建築
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
グリーン交通比
率
グリーン建築比
率
20%
以上
天津TEAD投資控股有限公司
天津TEAD投資控股有限公司
国家開発銀行
国家開発銀行
天津不動産開発経営集団有限公司
天津不動産開発経営集団有限公司 Temasek Holdings
Temasek Holdings
天津塘沽都市建設投資公司
天津塘沽都市建設投資公司
天津漢濱投資有限公司
天津漢濱投資有限公司
津聯集団資産管理有限公司
津聯集団資産管理有限公司
天津生態城投資開発有限公司
Keppel Corporation
Corporation
天津生態城投資開発有限公司 Keppel
50%
以上
中新天津生態城投資開発有限公司
中新天津生態城投資開発有限公司
下水処理・用水共有・電力/ガス/暖房供給
下水処理・用水共有・電力/ガス/暖房供給
道路整備、都市緑化、など分野ごとの事業会社
道路整備、都市緑化、など分野ごとの事業会社
90%
100
%
ロイヤル・フィリップス・エレクトロニクス
省エネ照明事業とエコ生活製品事業、ソリュー
ション事業などで提携
三井不動産
コミュニティ開発事業に関する覚書を結び、高級
住宅街の開発事業で提携
33
(3)社会基盤の運用・監視機能の提供
海外市場における社会基盤構築は、運用・監視までを含めたビジネスモデルが主
世界のポンプ、鉄道、発電所、通信機器は、グローバルサービスハブで監視
社会基盤における運用・監視比率
100%
100%
90%
90%
80%
80%
70%
70%
60%
60%
53%
50%
50%
43%
40%
35%
30%
40%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
水
鉄道
電力
水:24年ターンキー契約の事例
鉄道:都市型コミュータの事例
電力:太陽光発電プラントの事例
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
課金・請求
顧客管理
運用管理
人材育成・研修
メンテナンス
建設
キーデバイス・機器
設計
コンサルテーション
広義の運用・監視比率
„社会基盤構築におけるビジネス
モデルが、従来の構築、ターンキ
ーから、運用受託を前提とした全
バリューチェーンカバーに向かっ
ており、ICTは、管理、運営、課金
等に貢献。
„現地センタ(顧客応対、法規制対
応)とグローバルセンタ(24/365集
中監視で規模の経済性を追求)で
の二階層構造に向かう傾向。
水
コンサルテーション
設計
キーデバイス・機器
建設
メンテナンス
人材育成・研修
運用管理
顧客管理
課金・請求
広義の運用・監視
鉄道
3%
4%
8%
32%
21%
7%
15%
7%
3%
53%
1%
4%
29%
31%
12%
7%
12%
2%
2%
35%
電力
5%
7%
31%
14%
17%
3%
16%
4%
3%
43%
34
(4)海外市場への社会基盤事業提供におけるノウハウ、仕組みのパッケージ化
差別化困難な運用サービスへの可搬性の実現。商品化、継続的な収入獲得のためのブラ
ックボックス
„海外市場への社会基盤ビジネス展開におい
て、装置・機器以外のソフト、運用での規格化
を進めることで、社会基盤の移植、定着を早
める。運用ノウハウ、管理システム、研修・訓
練等のICTによるパッケージ化が必要となる。
„運用ノウハウ・マニュアル
zイントラネット
水処理プラントにおけるトラブル対応、運行
ノウハウのイントラネットによる提供。
„研修・訓練
zプラントシミュレータ
電力プラント等における要員向けシミュレ
ータ機能
z遠隔教育
水処理プラント、発電機器、交通監視、通
信機器管理(基地局監視)
„管理システムパッケージ化
z高速鉄道における運行管理、スケジュー
ル管理、駅舎管理等のパッケージ化。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
35
新興国、グローバル視点での社会基盤強化
高度な専門性を有する人的資源不足、短期間での基盤整備のためにICT利用が不可避
新興国での社会基盤支出予測
兆円
鉄道
EV/PHV
環境
水
エネルギー
都市開発*1
医療
その他*2
(重複)
計
新興国での社会基盤支出におけるICT、運用管理受託分予測
期間累計、資本支出、運営費用含む
2010-2015 2016-2020 2021-2025
72
84
112
4
20
64
24
42
64
34
64
85
78
102
146
62
72
88
12
17
25
34
42
68
72
112
142
248
331
510
単位:兆円
40.0
兆円
30.0
鉄道
EV/PHV
環境
水
エネルギー
都市開発*1
その他*2
医療
20.0
新興国での社会基盤支出におけるICT、運用管理受託分予測
兆円
鉄道
EV/PHV
環境
水
エネルギー
都市開発*1
医療
その他*2
(重複)
計
2010-2015 2016-2020 2021-2025
15.1
19.3
28.0
0.4
2.8
11.5
1.4
3.4
5.1
4.8
9.0
12.8
14.8
21.4
33.6
5.6
7.2
8.8
2.2
2.7
4.5
5.1
6.3
10.2
11.1
18.2
24.9
38.3
53.9
89.5
10.0
0.0
2010-2015
2016-2020
2021-2025
(年)
*1:他分野と重複
*2:教育、道路等
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
36
分野別:鉄道
事業者固有ノウハウの位置付けは大きいが、運行管理、駅務管理等を対象に、パッケージ
化は、急速に進展している
„ICTの役割
図表 鉄道システムビジネスの構造
資金調達
特にICTが関与する部分
zネットワークを介した車両、路線、運行管理
z発券等の駅務業務
車両保守
車両
„運行管理
車両
運行管理
建設 路(線、駅舎
計画・コンサル
設計
制御
システム
z運行計画
スケジュール策定
z路線管理
異常、障害監視が主
路線・運行
z運行管理
車両運行状況の監視、報告・連絡対応
)
„駅務
駅務
z発券、改札管理
プリペイド化による省力化、パッケージ化が進展
路線・運行
zプラットフォーム監視
中央集中での映像監視が進展。
z広告管理
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
37
分野別:鉄道
世界の鉄道インフラ関連ビジネスは、2016年に14.4兆円規模に拡大する
„ 都市化の進行、環境、省エネへの対応、信号システムの欧州以外への拡大、新たな車両の需要が旺盛。
世界の鉄道インフラ関連ビジネス(外部サプライヤーが参加可能な市場)
(兆円)
15.0
制御システム
インフラ
車両関連
サービス
1.7
10.0
1.3
2.2
1.5
1.4
1.4
1.5
1.6
1.3
2.3
2.5
2.4
2.4
4.4
4.3
4.2
2.6
4.5
2.6
4.6
1.6
2.7
4.7
1.6
2.8
2.9
制御システム:列車制御システム、
運行管理システム、他の信号装置に
関わる業務
4.8
4.9
インフラ:線路、枕木、バラスト(砕石
や砂利)、省力化軌道、架線、牽引
電力供給に関わる業務
車両関連:高速鉄道、LRVなど
4.0
4.1
4.0
4.2
4.8
3.9
4.6
3.8
4.5
3.6
4.3
3.5
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
サービス:上部構造や電化に関わる
労働や部品、列車制御システムや労
働力といったインフラサービスに加え、
車両のメンテナンスや部品交換など
5.0
0.0
出所:欧州鉄道産業連盟(UNIFE)“Worldwide rail market study quo and outlook 2016”などより野村證券金融経済研究所作成
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
38
ICT事業者の参入可能性に関するコメント
„制御系
z車両側システム、運行管理ネットワーク等の構
築は、プライムコントラクタ、車両メーカが協力。
„運行管理
z路線管理は自動化が比較的、容易。
zスケジュール管理は、海外事業者はパッケージ
+カスタマイズで対応。ただし、専門コンサルティ
ング要員が必要。
z運行管理そのものは、パッケージ化が進んでい
るものの、危機管理やトラブル対応等のノウハ
ウの塊であり、鉄道事業者以外での指導、運行
管理は困難。
「中近東やアジアでの都市型コミュータ等の小規
模施設においては、思い切った集中化、簡素化
が採用されていることも多く、日本型のきめ細か
さとは一線を画する」
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
„駅務管理
zチケット発券、改札管理等は自動化比率が高く
、相対的に参入が容易。特に都市型コミュータ、
モノレール等の小規模施設はパッケージ化が容
易。
z長距離、高速鉄道等になるとシステム支援も必
須であるが、要員教育・指導等の訓練など、人
的資源管理の比率が高まる。
„日本側体制の課題
z制御系、運行管理は提供可能であるが、パッケ
ージ化の遅れや駅務管理の高コスト対応等に課
題。
zアジア、中近東圏域での集中監視、現地での一
次対応施設の組合せ等は検討の余地がある。
「小規模コミュータ系は、インド、中国内でも州レ
ベル、国レベルの2階層構造を指向」
39
分野別:電力
系統運用管理、対顧客業務に加えて、蓄電、顧客宅内機器の制御でもICT活用。
電力システム事業におけるICTの役割
z発電所のターンキーオペレーション等は提
供実績あり。
発電所
オペレーション
資金調達
特にICTが関与する部分
„発電所オペレーション、系統運用管理、対顧
客業務のいずれにおいても、ICTは必須。
発電
系統運用管理
建設 発(電、系統
計画・コンサル
設計
系統管理
)
課金・
請求
顧客応対
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
対顧客
z系統運用管理、課金・顧客請求対応も、北
欧新規参入事業者向けに提供事例あり。
„電力系統そのものについては、外部からの
参入可能性は小さいものの、住宅、自動車等
での蓄電機能分担など、利用者側設備で、発
電・蓄電が可能なものについては参入余地。
z集合住宅、都市、地域等で事業範囲、対
象設備数等が異なるため、事業規模は様
々。
40
分野別:自動車
車両のEV対応にともなうICT需要は、充電・SS管理、カーシェアリング
„充電SS等
特にICTが関与する部分
資金調達
zセル交換、充電等
z顧客応対、課金・請求
充電
課金・
請求
顧客応対
車両・運行管理
カーシェアリング
専用施設、商業施設、住宅等
等
SS
管理
SS
充電 SS
セル交換設備
充電
計画・設計
z小型・近郊利用、住宅での充電が主とな
れば、充電SSは緊急時対応。ガソリン比
較で収入が1/10、設備利用時間が10倍超(
緊急充電の場合でも)。単体で成立しにくい
。
„カーシェアリング
(オペレーションは
ICTが大半)
z車両管理
設備状況、鍵管理
z運行管理、位置管理
z課金・請求
z顧客応対
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
41
分野別:自動車
モビリティの電化が進展する-環境対応車が爆発的に拡大
500m
電動自転車
1Km
10Km
ショートコミュータ
30Km
100Km
1000Km
プラグインハイブリッド/EV
電車の整備拡大
2,000~5,000万台 2,000万台規模
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
2,000万台規模
2015~2020年に
想定される市場規模
42
分野別:自動車
環境対応車普及により、カーエレクトロ二クス市場は2倍以上に拡大
自動車市場規模予測
自動車市場展望
万台
14,000
12,000
10,000
新カテゴリー車
環境適合自動車
既存自動車
新カテゴリー車
Ex. PUMA
環境適合車
Ex. プリウス
8,000
6,000
4,000
2,000
20
0
20 5
0
20 6
0
20 7
0
20 8
0
20 9
1
20 0
1
20 1
1
20 2
1
20 3
1
20 4
1
20 5
1
20 6
1
20 7
1
20 8
1
20 9
2
20 0
2
20 1
2
20 2
2
20 3
2
20 4
25
0
年
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
43
分野別:自動車
都市型ビークル市場として、二輪車と四輪車のスキマを埋める新セグメント(2人乗り以下、近距離の
み)が登場。「所有」から「利用」へのシフトが加速。自動車の機能をサービス型で提供するビジネスモ
デル登場。
自動車の保有から利用へ(日本)
中国市場における新セグメント発生の可能性
100%
12%
90%
80%
24%
利用することはない
JPY 2000k
ガソリン自動車
36
JPY 1000k
約120万人
ガソリン自動車ほど
搭乗者、運航距離は
不要
約450万人
新セグメント
60%
買いたい
0.01
70%
レンタル・シェアリングでもよい
どちらかといえばレンタル・シェ
アリングでもよい
どちらかといえば買いたい
EV/PHV
50
21%
電動自転車、二輪車
よりも高機能
50%
約430万人
二輪車
40%
30%
28%
20%
10%
87
電動自転車
JPY 30k
110
JPY 18k
自転車
15%
600
0
100
200
300
400
500
600
JPY 3k
700
単位:100万
0%
出所:NRI「生活者1万人アンケート」(2009)
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
44
分野別:水
・プラント運転管理、顧客管理がICT関与。
・運転管理はシステム支出以上に地域ノウハウ蓄積、オペレーション反映等を重視。
・顧客管理も、他分野に比較して顧客獲得等の負担が軽く、システム化は容易。
資金調達
特にICTが関与する部分
„運転管理
流量、品質、設備稼動状況の管理であり、監視点
数やリアルタイム制御の制約は比較的弱い。
運転管理
プラント建設
キーデバイス
膜(、処理等 )
コンサル、
計画・設計
z「小地域別の流量、品質の特性、パターンを運
転管理に反映させていくプロセスに特徴がある」
「ヴエオリアやスエズは、地域別、言語別に大規
模なトラブル対応等のイントラネットでのマニュア
ル応対に特徴がある」
„顧客管理
工場等の大口顧客応対を除けば、住民顧客は契約
獲得の負担は相対的に小さい業種。
契約、課金・
請求
顧客応対
顧客管理
z契約
顧客の地域内での網羅性が高く、更改等の負担
も小さい。
z課金・請求
大口顧客を除けば、違法利用対策等の負担が、
むしろ大きい
z顧客応対
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
45
参考:水資源
水資源関連市場は、2025年の時点で100兆円に達する
„ 水資源ビジネスに係る市場規模は急激な伸びを示しており、2025年には100兆円市場になると見込まれている。
„ そのうち、日本はキーデバイスである膜製品を中心に強みを有しているが、全体から見ると僅か1兆円市場にしか過ぎない
。
„ もっとも市場規模が大きい分野は、水事業の運営・管理にかかるオペレーション分野と資金調達にかかる金融分野である
。
世界の水ビジネスの市場規模予測
出所:掲載産業省「わが国水ビジネス・水関連技術の国際展開に向けて」(2008年7月)
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
46
Ⅳ.新社会基盤とICT連携に向けた課題、施策提案
・クロスボーダ化、クロスインダストリー化、コンパクト化に注目。
(1)クロスボーダ化
„社会基盤運用のサービスハブ優遇
z国内ハブと海外ハブの一体整備への優遇措置
zテレプレゼンス、コンテンツのマルチリンガル対応(英語、中国語以外)
zノウハウのパッケージングサポート
(2)コンパクト化
„小地域での一体・複合的な社会基盤構築への注目
特区から、コミュニ
ティ・コンパクト地域での一体・複合整備
z世界市場に向けたトラックレコード、ショーケース(国内版)
グローバル市場向けトラックレコードとなる小地域のピックアップ
「長大の伊吹山ドライブウェイ買収(海外道路案件獲得のためのトラックレコード取得)」
「都心近郊、リゾート地とヘルスケア、リタイア地域への注目。→熱海、白浜への注目」
z世界市場に向けたトラックレコード、ショーケース(海外版)
海外での「コンパクトジャパン」「複合一体整備」のショーケースを作成→ブラジル
„ICT、住宅、エネルギー、自動車分野等での地域、期間限定での境界見直し
(3)クロスインダストリー化
zC Japan/X Japan(cross boarder Japan)
▪ インダストリー・ラウンドテーブル、スマートグリッド、スマートモバイルを対象。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
47
(1)クロスボーダ化
社会基盤運用におけるサービスハブ間競争に対応した優遇政策の検討が必要
„国内ハブと海外ハブの一体整備への優遇措置
„テレプレゼンス、コンテンツのマルチリンガル対応(英語、中国語以外)
„ノウハウのパッケージングサポート
グローバル
グローバル
ハブ
ハブ
グローバル
グローバル
ハブ
ハブ
ローカル
ハブ
ローカル
ハブ
ローカル
ハブ
ローカル
ハブ
ローカル
ハブ
グローバル
グローバル
ハブ
ハブ
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
グローバル
グローバル
ハブ
ハブ
ローカルハブは現地対応
グローバルハブは24/365、
サービス品質維持の全世界
対応
ローカル
ハブ
グローバルハブ間
は、時差による
補完関係が望ましい
48
(2)コンパクト化
グローバル市場開拓に向けたトラックレコード、ショーケース開発が必要
„世界市場に向けたトラックレコード、ショーケース(国内版)
グローバル市場向けトラックレコードとなる小地域のピックアップ
「長大の伊吹山ドライブウェイ買収(海外の道路案件獲得のためのトラックレコード取得)」
「都心近郊、リゾート地とヘルスケア、リタイア地域への注目。→熱海、白浜への注目」
z参考 長大ヒアリング
▪ 本業は道路建設のコンサルティング。国内市場の成熟化にともない中国、ベトナムへの進出を計画。
▪ ベトナムでの幹線道路設計、運用プロジェクトに入札したところ、技術評価点は高かったが、実績不足の理由で落札
できず。英国、欧州等の競合他社が、道路設計、コンストラクションマネジメントから、有料道路運用までを包括的に
実施している点が訴求されていることを知り、顧客にアピールできる実績作りの必要性を強く認識。
▪ 国内で、伊吹山ドライブウェイ運用に買収、参画することで実績確保につとめる。
„世界市場に向けたトラックレコード、ショーケース(海外版)
海外での「コンパクトジャパン」「複合一体整備」のショーケースを作成→ブラジル
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
49
(2)コンパクト化
社会基盤の更新、再構築に際して、コンパクト化、一体化に着目
エコ対応、再更新は全国一律ではなく、小地域から着手することで日本の強みを活かす
先進国の大規模インフラは、
全国一律、「面」の整備は困難。
都市部への人の集中と呼応して
「点」を複合・一体的に整備。
少子高齢化
需要の伸びは期待できない
財政制約
新興国でも、都市部の環境対応
人口集中を見越した先行的な
「点」の開発が進む。
インフラ老朽化
への対応
公共投資の伸びは期待できない
人的資源制約
民間参入による運営効率化
そのための運用のアウト
ソーシング、
これまで
都市形
状
(空間)
運営主
体
低密度
拡散
官主導に
よる
一体運営
サービス 画一的
今後のインフ アプロー
ラ変革
チ
一体整備
コンパクト化
交通体系
の再構築
運営主体の
多様化
PPPなど
柔軟な運
営主体の
実現
マルチスタン
ダード化
市場原理
の一部導
入
構築、運用の両面で
生産性をあげる必要がある
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
50
参考:日本(先進国)市場における社会基盤再構築
・約700兆円のインフラストックが更新期を迎えつつあるが、投資負担能力は不足
・成長期のような一律の面的整備ではなく、「点」から重点的に整備、再更新せざるを得ない
日本のインフラストック
„道路、上下水道を中心に老朽化が進展
日本のインフラ再投資
20
兆円
兆円
15
その他,
134, 19%
道路,
234, 34%
治水,
70, 10%
文教施
設, 75,
11%
新規投資
災害復旧
維持管理
更新投資
10
2007年時点
698兆円
上下水
道, 91,
13%
農林漁
業, 94,
13%
5
60~70年代建設
分が更新投資とし
て顕在化
0
1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
(年)
51
参考:中国エコシティの事例 天津エコシティ
シンガポールが官民一体で関与。都市化のノウハウをビジネスに
„天津濱海新区内のTEDA(天津経済技術開発区)の北側で開発が始まった天津エコシティは、投資規模は2500億元(3兆
5000億円)、開発面積は約30km2、2020年の完成時には35万人が居住する予定。
„上記はエコシティの中でも最大級のものであるが、各地域で数十エリアの計画が検討されている。
2020年までの目標
分野
エネルギー
目標
再生可能エネルギー比率
用水総量に占める
水
天津エコシティの組織構成と各社のアプローチ
非通常用水比率
(再生水、海水淡水化)
20%
以上
50%
以上
天津TEAD投資控股有限公司
天津TEAD投資控股有限公司
国家開発銀行
国家開発銀行
天津不動産開発経営集団有限公司
天津不動産開発経営集団有限公司
天津塘沽都市建設投資公司
天津塘沽都市建設投資公司
天津漢濱投資有限公司
天津漢濱投資有限公司
津聯集団資産管理有限公司
津聯集団資産管理有限公司
Temasek
Temasek Holdings
Holdings
天津生態城投資開発有限公司
天津生態城投資開発有限公司
Keppel
Keppel Corporation
Corporation
中新両陣営が
50%ずつを出資
中新天津生態城投資開発有限公司
中新天津生態城投資開発有限公司
交通
建築
グリーン交通比率
グリーン建築比率
90%
100%
下水処理・用水共有・電力/ガス/暖房供給
下水処理・用水共有・電力/ガス/暖房供給
道路整備、都市緑化、など分野ごとの事業会社
道路整備、都市緑化、など分野ごとの事業会社
ロイヤル・フィリップス・エレクトロニクス
分野別に事業会社が
組織されている
多くの企業が
アプローチして
提携関係を締結
省エネ照明事業とエコ生活製品事業、ソリューション事業などで提携
三井不動産
コミュニティ開発事業に関する覚書を結び、高級住宅街の開発事業で提携
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
52
参考:Finland Digiecocity ProjectにおけるICT活用
„フィンランド貿易産業省の「環境技術の対中輸出促
進計画」の一環。江西省、江蘇省の2地域で推進。
z密閉式循環水供給システム
zブロードバンド、無線ネットワーク
z交通・測位システム
z地域分散エネルギーシステム
z地域分散エネルギーシステムの管理系、ゴミ管
理収集の一部(車両・運行管理)についてはノキ
アが関与する可能性が高い。
▪ 処理工場は別企業担当。
z密閉式循環水供給への関与は、特に確認でき
ていない。
zゴミ管理・収集システム
„事業者関与としては、ノキアの位置付けが大きい。
zブロードバンド、無線ネットワーク、交通・測位シ
ステムはノキアが実質的な主契約者として提案
。
ただし、現地通信事業者側との調整が必要でし
あり、正式決定ではない。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
53
(3)クロスインダストリー化
ICTによる複合一体のメリットを活かすため、住宅、エネルギー、自動車分野等での地域、期
間限定での境界見直し
„C Japan(cross industry Japan)
zインダストリー・ラウンドテーブル(非公式)、スマートグリッド、スマートモバイル等を対象。
z想定される業際領域テーマ群
▪ スマートグリッド、スマートホーム、V2G(Vehicle to Grid)をめぐる主導権争い
発電、蓄電機能を、配電系統、住宅、自動車のいずれに設置し、どう分担するか?
高品質な日本の配電系統と、相対的に低品質な海外市場におけるスマートグリッドの機能
、対象範囲のハーモナイゼーション
▪ 鉄道、流通、金融、通信
駅舎・駅ナカでの一体的インフラ整備に関する関連産業の役割分担、利害衝突。
▪ 複合一体整備のモデル開発
エネルギー、通信、交通、住宅、ヘルスケア等のインフラを、小地域で複合的に一体整備・
開発するための枠組み、各種補助金制度等の一体的、調和のとれた運用方法等。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
54
残るフロンティア分野は?
残るIT投資、事業領域の対象は、業際領域。ここはB2B2Cプラットフォームに期待
業際領域での大手企業21社のIT支出予測
„決済関連システム、事業への支出が先行。
(2007~2011)
zネット銀行、金融ポータル設立、子会社系
クレジットカードのスピンオフ等の案件が集
中的に発生。
総額1.13兆円
6,200億円
金融
流通
1,120億円
1,200億円
鉄道・旅客
1,240億円
„鉄道・旅客は金融、物流との業際領域での
事業開拓が更に進む。
680億円
„流通分野はEC、駅中出店、通販など、業態
開拓とあわせて金融関連の取り組みが進展
する。
880億円
運輸・物流
エネルギー
自動車
ヘルスケア
セキュリティ
都銀3、その他3
流通2
鉄道5、航空・旅客3
運輸・物流2、自動車3
エネルギー、ヘルスケア、
セキュリティは除外している
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
55
業際、協業における新サービス、産業育成の事例
・大手企業に、サービス、産業を開発させるための仕組み。業際は協業。
企業間連携モデルの一部に“連携”の形態を含む事例
サービスを構成する要素(設備等)の一部で、他社のリソースを活用した事例
事例①
CD/ATM
金融
サービス
電力
サービス
鉄道
サービス
クレジットカード
事例③
CD/ATM機の
銀行間・業態間の相互利用
クレジットカード決済端末の
相互利用(加盟店の相互開放)
事例⑤
託送サービス
相互乗入れ
ICカード乗車券
放送
サービス
地上波/BS/CS
携帯音楽
プレイヤー
iPod
テレビ
ゲーム機
Wii/PS3
電子
ブック
Kindle
事例⑦
相互乗入れにおける
車両の相互利用
事例⑧
プリペイド電子マネーの
リーダ/ライタの相互利用
事例⑨
既存電力会社の送配電設備・
系統管理・料金収受機能の貸出し
(日本)
JR東日本のデータ処理センタを
小規模な鉄道事業者が利用
事例②
CD/ATM相互利用のための
業態(都銀)内の共同センタ
(BANCS等)の共同利用型
事例④
振り分けセンタ(CAFIS等)の
共同利用型
事例⑥
送配電と小売の分離、
送配電機能の共同利用型
(米国)
事例⑩
複数の電子マネーに対応する
共同センタの共同利用型
事例⑪
衛星放送(BS/CS)のハードとソフトの分離、
受託放送事業者設備の共同利用型
事例⑭
事例⑮
事例⑱
音楽配信サービス(iTMS)を
他社プレイヤー端末で利用可能
アタリ社のゲーム端末で
他社のソフトを利用可能
Kindle StoreをiPhone/iPod端末
で利用可能
一体型
共同利用型
片方向利用型
相互利用型
企業間連携モデルの一部に
“一体的”な形態を含む事例
事例⑫
地上波放送のハード・ソフト一体運営
事例⑬
端末(iPod)、ソフト(iTunes)、音楽配信サー
ビス(iTMS)をApple社が一体的に提供
事例⑯
ゲーム端末、ソフトを
任天堂/ソニーが一体的に提供
事例⑰
端末(Kindle)、書籍配信サービス(Kindle Store)、
通信サービスをAmazon社が一体的に提供
(注)託送サービス:電力会社が所有する送配電網を、発電事業者や他の電力小売り事業者が利用して、電力を供給すること
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
56
金融サービス(CD/ATM)
強い規制(大蔵省主導)、新サービスというよりは既存サービス拡張(市場の受け入れリスク
小)、差別化困難であることから、共同利用型が有効に働いた事例。
相互利用型
金融
サービス
CD/ATM
CD/ATM機の
銀行間・業態間の相互利用
詳細
z限られたエリアの店頭
やATMからしか預金
が引き出せなかったが
、CD/ATMが相互利
用可能になると預金
を引き出せるエリアが
拡大し、利便性向上
に繋がる
事業効率性
z単独でCD/ATMを新
設すると莫大なコスト
がかかってしまうが、
各行が強みにしてい
るエリアのCD/ATMを
接続することで、連携
の経済性が働く
一体型
共同利用型
事例②
事例①
エンドユーザの
利便性
要因
片方向利用型
CD/ATM相互利用のための
業態(都銀)内の共同センタ
(BANCS等)の共同利用型
技術・ビジネスモデル
事業のコアな部分か
革新のスピード
(供給者責任)
zオンライン化のために
は莫大な投資が必要
だが、一度導入してし
まえば新たな設備更
新費用はかからない
z収益の源泉となるコア
事業は、振込・送金サ
ービスであり、重要イ
ンフラとしての責任が
発生
規制
z大蔵省によるオンライ
ン提携の後押し
市場における企業の
相対的な大きさ
z銀行は群雄割拠
zトップシェアは郵便貯
金で、且つ全国規模(
約30%)
‹ 1997年の業態内の取引件数256百万件が、2008年には258百万件に。一方、業態間の取引件数は、1997年に379百万件だったのが、2008年には529百万件に
拡大。つまり、取引量は業態内よりも業態間における取引量のほうが多くなっている。
‹ 業態間のCD/ATMという「機器」の相互利用や、業態センタ間の接続が行われたことが、取引件数の増加に特に寄与していることが想定される。
‹ これらの接続がなければ、CD/ATMの利用はここまで増加しなかったということが想定できる。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
57
連携の形態
1980年代から金融業界でのCD/ATM機の相互利用が進んだ。 これを実現するために
、各業態毎に業態センタが設立され、各行のコンピュータセンタと接続された。
連携の形態(1)
„ 業態内でのCD/ATM機の相互利用のための共同センタは、接続する銀行が多数あったため、共同
利用型の業態センタを設置し、それと各行のコンピュータセンタを接続する形態が採られた。
„ 首都圏では、まずは都銀の上位行と中下位行がそれぞれ業態センタを設置して、コンピュータセンタが接
続された。その後、都銀全体を接続する共同センタが設置された。
業態内でのCD/ATM機の相互利用
業態内でのCD/ATM機の相互利用
大手都銀同士の接続例
大手都銀と中下位都銀の接続例
都銀A
NTT
都銀B
(上位行) データ等 (上位行)
都銀C
NTT
(中下位行) データ等
都銀C
(中下位行)
都銀A
(上位行)
都銀B
(上位行)
NTT
データ等
都銀C
都銀C
(中下位行) (中下位行)
コンピュータ
センタ
業態センタ
TOCS
SICS
BANCS
(共同利用型)
(共同利用型)
(共同利用型)
CD/ATM
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
58
鉄道サービス(ICカード乗車券)
JR東日本は、技術規格策定での主導権確保やライセンスフィー等による収益確保を維持
しつつ、投資を効率的に回収するため、自ら開発した駅務機器やセンタの他社利用を推進
片方向利用型
相互利用型
鉄道
サービス
要因
詳細
事例⑧
ICカード乗車券
エンドユーザの
利便性
JR東日本のデータ処理センタを
小規模な鉄道事業者が利用
事業効率性
精算なしで、利用可能な
鉄道サービスの拡大
大規模開発へのリソース集中
投入
利用可能な加盟店の拡
大
開発費の効率的な回収(ライ
センスフィーやシステム利用
料等による収益確保)
加盟店での利用可能な
電子マネーの拡大
鉄道会社間の接続に係るコ
スト削減
一体型
事例⑩
事例⑨
プリペイド電子マネーの
リーダ/ライタの相互利用
共同利用型
複数の電子マネーに対応する
共同センタの共同利用型
技術・ビジネスモデル
事業のコアな部分か
革新のスピード
(供給者責任)
非接触式ICカードの進
展を睨みつつ、10年後
のシステム更新に合わ
せて、切り替えを実施
乗車券機能は、コア事
業、電子マネー機能は
非コア事業
駅務機器(自動改札機
等)やセンターサーバ、
電子マネー対応のリーダ
/ライタの技術規格策
定での主導権確保
(鉄道事業、生活サー
ビス事業に続く、第三
の収益源の柱に育て
る戦略)
規制
運輸政策審議会第
20号答申でICカード
の相互利用化への取
組を後押し
市場における企業の
相対的な大きさ
JRグループのシェアは
約66%
(JR東日本のシェアは
約30%)
小規模な鉄道会社が
依存することを見越し
てインフラ構築
全国加盟店へのリーダ/ライタ
設置に係るコスト削減
自ら策定した技術規格を活
用した事業展開により実行ス
ピードを高めた
‹ Suica・PASMOの相互利用開始前後を比べると、Suicaの1日当たりの利用件数は開始前の約40万件から開始2ヶ月後には60万件に達し、急
増していることから、プリペイド電子マネーのリーダ/ライタの相互利用は、エンドユーザの利便性向上に繋がるとともに、市場拡大に寄与している。
‹ 複数の電子マネーに対応する共同センタの開設前後を比べると、加盟店の店舗数はそれほど大きく伸びていないことから、複数の電子マネーに
対応する共同センタの共同利用型は、加盟店の拡大にそれほど貢献していない。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
59
連携の形態
相互利用する鉄道会社の規模や経営体力の大きさに十分配慮した連携となっている
規模の大きい鉄道会社
東京メトロ
等
JR東日本
センター
ICカード乗車券
乗車券機能
規模の小さい鉄道会社
片方向利用
自前で構築
データ処理・管理
東京モノレール
等
JR東日本
駅サーバ
自動改札機
相互利用
相互利用
規模の大きい鉄道会社
規模の小さい鉄道会社
JR他社
JR東日本
JR他社
JR東日本
ICカード乗車券
センター
電子マネー機能
自前で構築
データ処理・管理
リーダ/ライタ
加盟店
相互利用
片方向利用
相互利用
カード乗車券
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
60
携帯音楽プレイヤー(iPod)
音楽配信市場(サービス)が未整備の環境において、ユーザー利便性の高い、端末・配信一
体のサービスを提供し、端末・配信市場の立上げに成功した(ネットワーク層の保有は必須
条件ではなかった)。
片方向利用型
相互利用型
携帯音楽
プレイヤー
要因
iPod
一体型
事例⑬
事例⑭
音楽配信サービス(iTMS)を
他社プレイヤー端末で利用可能
エンドユーザの
利便性
端末、ソフト、配信サー
ビスの一体的提供によ
る使い勝手のよさ
事業効率性
限界的コストを低く抑え
られる(iTMS一部貸し出
し事例)
端末価格に転嫁するこ
とによる格安楽曲
詳細
共同利用型
コンテンツラインナップ
の充実
利用可能な配信サービ
ス、ソフトの拡大(iTMS
一部貸し出し事例)
技術・ビジネスモデル
事業のコアな部分か
革新のスピード
(供給者責任)
バージョンアップ・高機
能化への要求が高い
一曲売り、ダウンロード
販売による事業の成功
の不確実性
提携すべき、魅力的な
音楽配信サービスを提
供しているプレーヤーの
不在(外部リソースがな
かった)
収益の源泉となるコア
事業は、携帯音楽プレ
ーヤ販売
端末(iPod)、ソフト(iTunes)、
音楽配信サービス(iTMS)を
Apple社が一体的に提供
規制
独禁法による開放圧
力(iTMS一部貸し出し
事例)
市場における企業の
相対的な大きさ
企業ブランド力を活かし
たレーベルとの優位な
交渉
不正流通防止対策のた
めDRMが必要
端末・ソフト・配信サービ
スの連携はAppleにとっ
ての競争力の源泉(
iTMS一部貸し出し事例
)
‹自社で一体的なサービスを行うことにより、ユーザー利便性の高い配信サービス(①使い勝手、②コンテンツの安さ、③豊富
なコンテンツ量)を提供し、市場を急速に立ち上げた。
‹iTMS開始から2年後(05年)には音楽配信市場シェア7割以上(米)、端末販売台数も累計1000万台を突破した。
‹当初iTMSは客寄せ用の目玉サービスだったが、事業規模の拡大と共に収益性が高まっている。
‹07年の他社端末へのiTMS開放は、独禁法回避のため、他社にチャーンしないことが分かった上で行った。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
61
電子ブック(Kindle)
電子ブック市場が萌芽期にある中で、自社コンテンツリソースを活かした、ユーザー利便性
の高い、端末・配信一体のサービスを提供し、端末・配信市場の立ち上げに取り組んでいる
片方向利用型
相互利用型
電子
ブック
要因
一体型
事例⑰
事例⑱
Kindle
Kindle StoreをiPhone/iPod端末
で利用可能
エンドユーザの
利便性
端末、配信サービスの一
体的提供
端末価格に転嫁するこ
とにより、格安コンテンツ
を提供
詳細
共同利用型
コンテンツラインナップの
充実
事業効率性
端末・コンテンツ一体提供
にあたり、Amazonのコン
テンツ・調達チャネルを利
用
限界的コストを低く抑えら
れる(Kindle Store一部貸
し出し事例)
技術・ビジネスモデル
事業のコアな部分か
革新のスピード
(供給者責任)
萌芽の段階であり、バー
ジョンアップ・高機能化
への要求はこれから
収益の源泉となる事業
は、電子ブック端末・電
子書籍販売であり、特
に書籍販売を最も重要
なビジネスと位置づける
電子ブック、端末による
事業の成功の不確実性
端末(Kindle)、書籍配信サービス
(Kindle Store)、通信サービスを
Amazon社が一体的に提供
規制
青少年保護のため
の規制
市場における企業の
相対的な大きさ
Amazonブランドを活か
して電子書籍の大量調
達に成功
不正流通防止対策のた
めDRMが必要
利用可能な端末の拡大
(Kindle Store一部貸し
出し事例)
‹Amazonはユーザー利便性の高い、端末・配信一体のサービスを提供することより、急速に端末販売台数を伸ばした。
‹①使い勝手の良さ(無線通信機能付き端末と配信PFの連携)、②コンテンツが安価、③コンテンツが豊富
‹09年に入り、iPhoneユーザーにKindle Storeの利用を許可したことが、配信サービスの売上げ増加につながっている。
‹Amazon内で、Kindle版とハード版が両方発売されている書籍については、販売冊数ベースでKindle版が26%に達している(09年5月)。
62
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
62
家庭用ゲーム機
技術革新の早い市場環境での端末開発費の短期間での回収と、ソフトの品質コントロール
を目的として、ゲーム機とソフトを一体的に提供するビジネモデルを維持せざるを得ない。
片方向利用型
相互利用型
テレビ
ゲーム機
要因
一体型
事例⑯
事例⑮
アタリ社のゲーム端末で
他社のソフトを利用可能
Wii/PS3
エンドユーザの
利便性
利用可能なソフトの拡大
(アタリ社の例)
詳細
共同利用型
事業効率性
端末開発費の効率的な
回収
ソフト開発に係るコスト
削減(サードパーティーへ
のソフト開発のアウトソ
ーシング(ソニーの例))
ゲーム端末、ソフトを
任天堂/ソニーが一体的に提供
技術・ビジネスモデル
事業のコアな部分か
革新のスピード
(供給者責任)
5年後の更新に合わせ
て、高機能化された次
世代ゲーム機を市場に
投入
収益の源泉となるコア
事業は、テレビゲーム
機・ソフト販売
規制
ゲームのメインユーザ
である青少年の保護
が必要
市場における企業の
相対的な大きさ
任天堂Wiiがトップシェア
、次いで、ソニーPS3、
MSXbox360が続く
ソフトの品質のコントロ
ールが必要
(公序良俗の厳守)
(一定品質の維持)
‹ アタリ社(米)はソフトの開発を開放することで、家庭用ゲーム市場を本格的に立ち上げたものの、ソフトの供給過剰や粗製濫造によりユーザ信
頼を失い、結果的に市場自体を衰退させた。
‹ 日本の端末メーカー各社は端末・ソフトを一体的に提供する形で次世代ゲーム機を発売し、5年周期で市場の立ち上げを繰り返し、約20年間
家庭用ゲーム機市場を維持している。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
63
市場の立上げ期には、通常、一体的な形態が有効。
市場成立後、共同利用型/片方向利用型等が成立する場合も多い。
図表 事業ステージから見た企業間連携モデルの在り方
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
64
市場が受け入れるか、どうかが極めて不透明なサービス、事業のリスク(例、新端末投資等)を分かち
合うことは、リスク分担、迅速な意志決定ともに、困難なため、一体的にならざるをえない。
„相互利用型
鉄道の相互乗り入れのように受益性、貸し出し
負担が明確なものは成立しやすい。
ただし、新サービス・産業育成に際しては、技術
開発力、事業規模、投資能力等の主導権を有す
る事業者が、経営資源に乏しい事業者を牽引す
るケースも。
適用時期、領域が限定される
適用時期、領域が限定される
z共同利用型
強い規制環境下において、参加事業者すべ
てが同じ立場からスタート。対象も差別化の
必要性の乏しい既存サービス拡張(ATMの
他店利用、バックオフィス業務)をターゲットと
した場合以外に目ぼしい成功例が見当たら
ない。
規制、適用業種で強く限定される
規制、適用業種で強く限定される
„一体型
事業、サービス開発の不透明性、リスクコント
ロールが困難な分野(特に端末開発の投資・
回収)においては、依然として一体的な運用を
堅持している事例が多い。
市場が受け入れる
か、どうかが、不透
明なサービス、事
業のリスク(例、新
端末投資等)分担、
迅速な意志決定は、
困難なため、一体
的にならざるをえ
ない。
z片方向利用型
既存市場の活性化を目的とし、適用業種は
限定。極めて例外的なモデル。
新産業・サービスの育成ではなく、料金低下
、競争促進に重点が置かれている。
Copyright(C) 2010 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
65