pdfファイル - 京都府立図書館

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ただいまご紹介をいただきました
西村でございます。私のところは、
東本願寺の前で出版をやっておりま
すけれど、昔ながらに店先に書店が
ありまして、自分のところで作ったも
のも、一部ですけれど自分のところ
で売っています。店の屋号は丁子屋
といいまして、本家は慶長年間(1596
∼1615)に創業しておりますので約
390年経ちます。しかし、直接の先祖
は嘉永3年(1850)に分家・独立した
丁子屋七兵衛でして、そこから計算
すると約150年になります。京都の出
版業は当初から寺院との係わりが深
く、現在も仏教書の出版や寺院の出
版物に携わる出版社はたくさんあり
ます。本日はこうした京都の仏書関係
出版社を中心に、私のところの歩み
も加えながら、近代京都の出版史を
辿ってみたいと思います。
京都の仏教書出版社の流れ
私ども日本書籍出版協会京都支部
では平成3年に『京都出版史 明治
元年―昭和二十年』という本を10年
ほどかかって作りました。この中には
各書店の沿革も収録しておりまして、
これらを参考に京都における主要な
仏教書出版社の系譜(次ページに掲
載)
を作成してみました。大急ぎで作
りましたので抜け落ちているところが
あれば、またご指摘ください。
まず②から説明させていただきま
す。菱屋の文昌堂さんは京都で一番
古い本屋さんです。慶長年間に創業
されまして今も代々が永田長兵衛と
いう名前でお仕事をされています。
我々は永田文昌堂さんと呼んでおり
ますが、西本願寺関係の出版を中心
にされています。ここから分かれた
本屋に菱屋法文館と三文字屋法林館
があります。菱屋法文館は昭和27年
頃閉店しましたが、この最後の頃に
私は親父に言われて本とか版木を引
き取りに行った記憶があります。ここ
から分かれた本屋に田中文栄堂さ
ん、大八木興文堂さん、あそか書林
さんがあります。田中文栄堂は菱屋
法文館から大谷大学の仕事を譲りう
け今も大谷大学内で営業をされてお
られます。大八木興文堂は西本願寺
の前に居られお経の本を出しておら
れます。この中であそか書林だけが
お仕事をやめられています。ここの
ご主人にも私はいろいろ古い本の話
しを聞かせていただきました。また
永田文昌堂から分かれた三文字屋法
林館は、大正9年に閉店しました。
次が①の平楽寺さんです。こちら
も永田文昌堂さんとともに京都で一
番古い本屋さんのひとつです。菱屋
法文館から独立した井上さんが大正
2年に平楽寺の営業権を譲り受け、
平楽寺書店として日蓮宗の書籍や仏
教学の書を中心にがんばっておられ
ます。
③が私どもの本家、丁子屋九郎右
衛門(護法館)です(大正12年廃業)。
本家を私どもは略して「丁九」と呼ん
でおりました。丁子屋九郎右衛門10
代目の末子(三男)である西村七兵衛
が嘉永3年に独立して丁子屋七兵衛
(略して「丁七」)
を起こし、明治18年
に法蔵館と改称して現在に至ってい
ます。丁子屋九郎右衛門の11代で分
かれたのが文華堂の山内正五郎さん
で我々は山内文華堂と言っておりま
すが、昭和48年に廃業されました。
同じく11代で分かれたのが、為法館
の西村十次郎さんで西村為法館と呼
んでいましたが、平成4年に閉店さ
れました。西村十次郎さんは非常に
本が好きな人で、私どもも本につい
て詳しいことをいろいろと教わりまし
た。
④の興教書院は丹波の出石出身
の清水精一郎さんが明治22年に興し
た本屋で、一代で真宗系の仏教書の
出版と販売に大変なお仕事をされた
方です。その後、長男の啓一郎さん
が引き継いでおられましたが、昭和
20年、企業整備の関係から西本願寺
内で仏教書の小売として百華苑が創
設され、初代の責任者に啓一郎さん
が兼務されました。のち従弟の清水
秀雄さんが引き継いで独立し、真宗
関係の仏教書出版と小売を行なって
います。なお興教書院さんは昭和31
年に廃業されました。
⑤の顕道書院は松田善六さんが明
治24年に始めた西本願寺系の本屋
ですが、昭和19年の企業整備を機に
一代で廃業されました。そこから分
かれた本屋に司文館と広島で始めた
洗心書房があります。
⑥の丁子屋・小林庄平衛というの
は元禄年間(1688∼1704)から始まっ
た本屋です。ここは仏教書はあまり
やっていなかったようですが、ここの
何代目かの方の息子が私のほうに養
子として来て2代目七平になりまし
た。その兄弟は大阪の金尾文淵堂と
いう老舗の本屋さんにも養子に行っ
て大変な活躍をされています。丁子
屋・小林庄平衛は明治10年に一応閉
鎖するのですが、その後小林印刷と
いう印刷所を興しました。
⑦の升屋・須磨堪兵衛は、これも
京都の老舗の本屋ですが、仏教書は
あまり扱っていなかったようです。明
治27年に廃業しましたが、その後、
店主は法蔵館(2代七平)のもとで10
年勤め、大正9年に弘文社という名
前で印刷所を始めまして、そのあと
内外出版と名前を変えて学術書出版
を再開されました。その後、さらに昭
和17年企業整備の際に冨山房に譲
渡合併され内外印刷と改称しており
ます。
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こうして見ると京都の出版業界、特
に仏教書の出版社は、姻戚関係や師
弟関係でのつながりが強く残ってい
ます。
法蔵館の近代の歩み
次に法蔵館の歩みを述べてみたい
と思います。初代七兵衛は嘉永3年
に分家・独立して店舗を構えました
が、当初は書籍小売のかたわら、本
家との相合版(共同で行なう出版)
に
よる仏書を刊行したようです。そして
幕末から明治にかけて独自の出版活
動をすすめていきますが、明治9年、
丁子屋・小林庄兵衛の三男を養子に
迎えます。この人が経営の柱として
活躍し現在の法蔵館の基礎をつくり
ました。お手元の資料に法蔵館の主
要刊行物一覧表をお配りしておりま
すが、そのうち明治14年刊行の『真
宗住職試験五題術問答』は真宗住職
の試験問題です。こうした問題集は
その他にもいろいろあるんですが、
こうしたものまで私どもで出版してい
たようです。
明治18年には丁子屋から法蔵館に
名称を変更しました。
これは明治という時代背景がある
ようでございます。京都には法文館、
法林館、護法館、為法館それに私ど
もの法蔵館等、館のつく名前の本屋
が多いのですが、これは1880年代の
欧化主義の時代を鹿鳴館時代ともい
われたことから、その影響を受けて、
館をつけるとハイカラな時代だった
ようで、それで競って館をつけたよう
です。
きょくが
かんどう
明治20年には、佐伯旭雅 編『冠導
あ び だ る ま く し ゃ ろん
阿毘達磨倶舎論』を刊行しております
が、木版で30巻という大冊です。い
まだに20年に一回くらい印刷してい
ます。息の長い図書ですが、逆にこ
れを越える研究がないということに
もなるわけです。同じ年に『オルコッ
ト氏大演説』を出版していますが、こ
のオルコットという人はインドで生ま
れてアメリカへ渡り、当時、万国霊智
学会会長として有名な方ですが、こ
の方が来洛したのを機会に演説をし
てもらい、それを本にするということ
をしたようです。外国の思想を吸収
しようとする意欲が感じられます。
明治24年には法蔵館で活版印刷業
を開始しました。それまでは木版印
刷でして桜の板を彫って版木を作り、
墨をつけて和紙をあてバレンで刷っ
ていました。現在では京都に多くの
印刷所がありますが、当時は印刷所
がなかったので自分の家の中に活版
工場をつくり印刷を始めたわけです。
これによりそれまでの百部単位の刷
りから、一挙に千部、万部という大
量印刷が可能になりました。しかし
びっくりするのは7、8年で印刷業をや
めていることです。なぜかというと,
京都にたくさん印刷業者ができてき
たので、本来の出版業に戻って印刷
は人にまかせるということで、転換を
はかったようです。
明治26年から29年にかけての出版
に、
『心鏡 天理教退治』、
『天理教捻
つぶし
り潰 』などという物騒なタイトルの図
書があります。すぐおわかりのように
天理教批判の書です。天理教は中山
みきさんが始めたのですけれど、明
治20年頃から急速に各地に展開され
真宗の信者さんを片っ端から改宗さ
せようとし真宗では危機感を感じた
ようです。そこで法蔵館としては何と
か本願寺を救おうと思ってこのような
図書を出版するようになったと思うの
ですが、東京大学の笠原一男先生の
お弟子さんが天理教の研究をやって
おりまして 、
「 法 蔵 館 さんとこは 、
・ ・ ・
大変な 仕事を明治にしてますね」と
言われました。
今となっては当時の真宗がいかに
天理教に対し危機感をもっていたか
を如実に物語る資料として見るべき
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に役立ったよ
うです。これ
らの 出 版 が
契機となって
昭和14年に、
『支那文化史
蹟』 全12巻
を出すことが
で きまし た 。
ここに収録さ
れている遺
跡 は 、もう今
では中国に
ないものもた
江戸期の面影を残していた法蔵館の旧社屋 くさんあるよ
うです。
だと思います。
戦時中は企業整備がありました。
大正時代になりまして仕事は主に
出版社の企業整備は、まず中核社が
私の祖父の3代目七兵衛がやりまし
選ばれ、これを核として5、6社の出
た。この人は京都法政学校(現立命
版社が集まってひとつの統合体を結
館大学)の第1回の卒業生で、家に
成するかたちで進められました。京
その卒業證書が残っていましたので
都では昭和18年、臼井書房、河原書
立命館大学百周年の年に記念として
店、星野書店、柳原書店さん等の連
大学へ寄贈しました。この人の日記
合体である大八洲出版社。武揚社・
を読みますと京都の文化史を見てい
田畑書店・田村書店と、京極書店等
るようなところがありまして、立命館
の連合体である大雅堂。それから仏
大学百年史にもかなり引用されてい
教書出版の統合会社は、①東光書林
ます。いずれ本のかたちにしたいと
(東本願寺系:法蔵館・藤井丁子屋・
思っています。この人は仕事熱心で
一生堂・東本願寺出版部)、②全人
大正12年刊行の『意訳真宗聖典』に
社(西本願寺系:永田文昌堂・興教
精魂を傾け翌年に亡くなりました。
書院・顕道書院・同朋舎・山内文華
それから父(4代目七兵衛)の時代
堂・龍谷大学出版部・金子大栄刊行
に入らせていただきます。父は大正
会)、③上記以外の宗派と旧法文館
13年に跡を継ぎましたが、本願寺の
出身(平楽寺書店・貝葉書院・芝金
仕事をいろいろしながら「これから
声堂・山田保延堂・文栄堂・大八木
の時代は東京でないといかん。出版
興文堂・藤井文政堂・豊田愛山堂・
は東京や」と言って東京に店を出し
文海堂)の3社になりました。翌年の
ました。私らの同業者が皆反対し、
昭和19年になってもう一度再編があ
また「どうしても出すんだったら、寺
りまして、仏教書関係は法蔵館が中
がたくさんある浅草だろう」と言った
核となり全部東光書林に一本化され
んですが、
「東京は神田、神田でない
ました。雑多な個性の寄り合い所帯
と意味がない」ということで、神田に
だけに、しょせんはうまく行くはずも
店を出しました。
なく、日毎に末期的な様相を深める
昭和12年のことですが、その時、
そんごう しんぞう
戦局のなかで、出版事情も悪化の一
東京支店開設記念として『尊号 真像
めいぶん
途をたどって、いずれもこれという実
銘文』を出版しました。これはコロタ
績を上げることなしに終戦を迎え、
イプ版で写真中心に編集されたもの
自然消滅してしまいました。
で、前年に刊行されたコロタイプ版の
戦後になると、以前『支那文化史
複製『坂東本 教行信証』とともに評
蹟』を出していた関係で、昭和33年
判になりました。その後の真宗研究
に『西域文化研究』 全6巻を出すこ
とができました。これは西本願寺の
大谷光瑞さんが持って帰られた資料
を研究した本です。私はこの2巻目
から仕事を始めまして今日にいたっ
ています。そんな関係で西域いわゆ
るシルクロードにこだわって、シルク
ロードの奥までかなり行かせてもらい
現地を見てきました。
それからうちの父は、昭和36年に
『講座 近代仏教』 全6巻を作りま
した。当時のトップの先生方を集め
て出した本ですが、全然売れません
でした。それで大変苦慮したんです
が、父は「日本の近代文化としての仏
教文化を考察する証(あかし)
として
出版したんだ。人のできんものを出
来ただけでもうれしい」と言っていま
した。非常に評価された割りには一
般の読者がついてこなかったようで
す。同じようなものに昭和32年に出し
た仏典の本があります。これは海音
寺潮五郎とか佐藤春夫という作家に
学者を組み合わせて書いてもらった
本ですが、これも全然売れずに大変
な目にあったのですが、5年ほど経っ
てから東京の本屋さんがこれに近い
ものを次々と出されて成功しました。
ということは父の感覚が早すぎて時
代の先取りをしすぎたんですね。あ
んまり世の中より早すぎてもいかん、
それを教訓に私は一歩半くらい前の
ところを目指しております。
今、出版界が不況で本が売れなく
なっております。売上げは下がってき
ているのに、出版点数は増えるとい
う自転車操業のような状態になってき
ています。こうした苦しい時代です
が、私は上山春平先生(京大名誉教
授)から言われた、
「続けようと思って
もなかなか続けられないが、続けよ
うとしなければ続かない」という言葉
を常に頭におきながら、
「コンピュー
タ時代になっても、インターネット時
代になっても本はなくならない」と信
じて仕事を続けております。
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府立図書館では、府内全域44市町村をA∼Eの5つの
コースにわけ、毎週連絡協力車を走らせています。
Aコースは亀岡市ほか口丹波地方の8町とライトハウス、
総合資料館の1
1館(室)。
Bコースは木津川西岸を主に走る八幡市ほか7市町村の
8館(室)。
Cコースは宇治市ほか木津川東岸の南山城地方を走る9
市町の1
0館(室)。
Dコースは綾部市・福知山市・舞鶴市へと丹波から丹後
へかけての4市町の5館(室)。
Eコースは一泊二日で加悦町ほか丹後半島を中心とする
1
1市町の1
2館(室)。
という具合に、毎週、要望のあった本や図書館相互貸借
本、お知らせやさまざまな文書類を乗せて走っています。
各市町村への巡回回数は、これまで月2回でしたが、新し
い府立図書館が開館してから毎週1回に増やし、より迅速
に各図書館等に本を届けることができるようになりました。
現在は、各コース月に一回の割で、図書館職員が乗務し、
各市町村の担当者とさまざまな話をし、物流だけでなく、
助言や相談及び人的ネットワークの形成に役立てています。
Eコースを除いては、朝の8時半すぎには府立図書館を出
発し、夕方には帰館なので、ゆっくり話をする時間はなく、
話そこそこに次の館へ向かうというあわただしさの中で、
いかにコミュニケーションをはかるかというのが乗務者に
課せられた課題と言えるでしょう。
しかし、たとえ5分や10分であっても担当者と直接会っ
て話ができるというのがこの業務の醍醐味であり、また難
しいところでもあります。帰館してから、本の返却処理をし
たあと質問を受けた事柄を担当係に伝えて返事をお願い
したりして、報告書を書く段になって、あの話はどこの誰と
したんかいな、と頭がこんがらがってくることがあります。
10館前後を駆け足で巡るのですから、話がごっちゃにな
るのもやむを得ないことかもしれないのですが、そこは何
とか報告書をまとめて終了となるわけです。
行程は、ほぼ一日
(Eコースは二日)出張となるわけです
が、各図書館にいる時間はわずかで、あとは車中。特にD、
Eコースは北部へ巡回しますので、車中での移動距離が長
いので、車窓から眺める風景も季節ごとに様変わりし、目
を楽しませてくれます。各コース毎に紀行文が書けそうな
気がするのですが、それはまたの機会に譲るとして、気候
のよい時節なんかは仕事を忘れて思わず風景に見とれてし
まいます。しかし、その間でも頭の中では、先ほど訪問し
たところの話の要約と次の話の準備に余念がないのです。
車の中では一日中この作業を繰り返していると言っていい
ほどです。
京都府図書館総合目録(K-L
i
bne
t)
というネットワークを
通じて、京都府内の図書館どうしがコンピュータで結ばれ
たのが、府立図書館が開館した翌月の平成13年6月です。
当初17館だった参加館も平成14年12月現在で44館となり、
ネットを通じての相互貸借資料の依頼・承諾業務は(一部F
AXでやり取りする館が残るものの)順調に拡大してきまし
た。こうしたネットを通じての相互貸借図書の物流を担うの
がこの連絡協力車です。年間にしてのべ約5万冊にものぼ
る本がこの連絡協力車で運ばれているのです。
府立図書館が新館になって2年目、市町村支援という理
念をかかげ各市町村図書館(室)
に要望のあった資料を届
けるという役割を背負って、連絡協力車はこうして毎週走り
続けています。週3日で5コースの運行というスケジュール
も結構過密で、担当の方では毎日これらの準備作業と、帰
館後のあと処理(コンピュータ処理も含めた)
に追われてい
る状況です。
しかし、利用者の求める資料をその図書館まで届けると
いう任務は、京都府内のどこに住んでいても均一な図書館
サービスを提供する府立図書館の役割を果たすため、今
後ますます重要になるだろうと確信しています。
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昭和初期の『世界音楽全集』(春秋社)が大活躍
昨年5月のリニューアル開館に際して、それまで府
立総合資料館が所蔵していた資料が多く当館に移管さ
れ、その大半は書庫に収められました。その中には利
用者の質問に適した資料を探す過程で「再発見」する
ような資料もあります。今回はそうした資料のひとつ、
『世界音楽全集』(春秋社)が大活躍した事例について
ご紹介します。
Q
クライスラー作曲「ウィーン奇想曲」の
楽譜 を見たい、歌詞も知りたい。
まず開架書架の資料から調査を始めまし
た。『新訂標準音楽辞典』(音楽之友社)の
「クライスラー」の項には「オペレッタと多数のヴァ
イオリン曲を残し…」とあり作品には「美しいロスマ
リン」「愛の悲しみ」とともに「ヴィーン奇想曲」が
あることが紹介されています。次に『最新名曲解説全
集』(音楽之友社)の索引から『独奏曲Ⅳ』に収録さ
れたクライスラーの作品を見ると「ウィーン綺想曲
作品2 Caprice viennois」の解説と譜例が数小節あ
りますが、全曲ではなくヴァイオリン独奏曲のためか
歌詞の紹介もありません。書庫の『世界大音楽全集』
(音楽之友社)の索引も調べましたが作品は収録され
ていません。
春秋社の『世界音楽全集』は昭和4年から11年に
かけて刊行された全90巻・別巻4巻に及ぶ大著です。
内容はクラシックの名曲を初め、世界と日本の童謡・
唱歌・民謡・合唱曲などを含み、しかも全曲に楽譜が
載っているのが特徴です。(なお春秋社ではこの後、
昭和6年から11年にかけて、学生版として上記全集
から60巻を抜粋して編集した『世界音楽全集』全60
巻を刊行しています。当館では両方所蔵していますが、
欠号があります。)
この全集は索引や総目次がないため、適当と思われ
る巻を出納して、内容を確認しなければなりません。
利用者の方と一緒に調査することにしました。ヴァイ
オリン曲が収録されている巻や、歌詞を聞かれたとの
ことなので歌曲の巻を調べましたが収録されていませ
ん。何冊目かに見た第6巻「世界独唱曲集」にクライ
スラーの作品を発見しましたがタイトルは「懐かしい
歌 」、 念 の た め 解 説 を 見 る と 、「『 ヴ ィ ー ン 狂 想 曲
A
Caprice Vinnois,Op.』を歌曲に直した」とあり、ア
ンダアゼン(アンデルゼン)の詩と、その訳詞が掲載
されていました。利用者の方にもこの結果で納得して
いただきました。
・「京城府歌」という曲を探しています。
・歌詞の一部がわかっているがタイトルは
不明、なんと言う曲でしょうか。歌詞は「山は北韓
ながれは韓江・・・」「ソウル チョッタ チョッタ」
という囃子ことばがあったように記憶しています。
Q
いずれも戦前の歌、ソウルの歌らしいの
ですが、詳しくはわかりません。当時のソ
ウル、朝鮮方面の観光案内などに紹介されていないか
とタイトルにソウル(当時の京城)が入っている資料
を調べました。すると昭和13年に京城府庁が発行し
た『京城府勢一斑』、この資料は統計資料が主体です
が、その巻頭に「京城府歌」が掲載されていました。
次の問いはなかなか回答が得られません。歌詞や囃
子ことばなどから、いわゆる伝承的な民謡ではなく
「新民謡」ではないだろうかと、先に紹介した春秋社
の『世界音楽全集』の第43巻「日本新民謡曲集」(昭
和8年刊)を調べることにしました。目次をみると、
関東地方、甲信越地方などに続いて満鮮地方、台湾地
方などとあります(当時の状況です)。その満鮮地方
の最初の曲が「京城小唄」。西条八十作歌、中山晋平
作曲で、利用者の方がお示しになった歌詞と楽譜が出
ていました。
A
ちなみに、本書には京都関係の新民謡として次の曲
が楽譜つきで収録されています。
・京都夜曲(西条八十作詞、中山晋平作曲)
この曲は解説では「京都小唄」として記載され、ま
た京都行進曲(西条八十作詞、中山晋平作曲)とし
ても収録されています。
・伏見小唄(西条八十作詞、中山晋平作曲)
・新舞鶴小唄(西条八十作詞、佐々紅華作曲)
・宮津小唄(楠田敏郎作詞、町田嘉章作曲)
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関西ドイツ文化センター ■ Goethe-Institut Inter Nationes Kansai
●情報・図書室には、5,000冊以上の図書があり、文化、哲学、歴史、政治の分野が充実しているほか、現
在のドイツ文学作品も豊富です。また、40種類以上の雑誌、5種類の新聞、音楽やドイツ語のCD−
ROM、CD、スライド、ビデオがあります。約20%の図書は日本語で書かれたものです。(閲覧は無
料、貸出は年会費3000円)
●所在地:〒606-8305 京都市左京区吉田河原町19−3
●TEL:075-761-2188
FAX:075-752-9133
●URL:http://www.goethe.de/os/kan/jpibib.htm
●開館時間:火曜日・木曜日:13:30-19:30
金曜日:13:30-17:00 土曜日:12:30-17:00
●最寄駅:京阪「出町柳」または「丸太町」
バス「河原町荒神口」
関西日仏学館 ■ Institut franco-japonais du Kansaï
●フランス語教育と文化交流を行う、京都で唯一のフランス政府公式機関。平成15年3月にリニューアル
オープンの予定です。現在改装工事が行われています。定評のあるフランス語講座は工事中も貸し会場
にて継続して行われています。新しいメディアテークは2万冊の蔵書を所蔵し、CDやDVDの貸し出
しも行います。パソコンでの情報収集も可能になります。
●所在地:〒606-8301 京都市左京区吉田泉殿町8
●TEL:075-761-2105
FAX:075-761-2106
●URL:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ifjk606
●開館時間:未定(改装工事期間中、講読室は利用できません。)
●最寄駅:市バス「百万遍」、市バス「京都大学正門前」
ブリティッシュ・カウンシル京都 ■ British Council
●昨年リニューアルオープンした京都センターでは、英国の新聞・雑誌、英国の大学や専門学校に関する
情報などを提供しています。また、多彩な英語講座や留学に関するカウンセリング・説明会も開催され
ています。
●所在地:〒604-8152 京都市中京区烏丸通り錦小路上ル手洗水町659 烏丸中央ビル8F
●TEL:075-229-7151
FAX:075-229-7154
●URL:http://www.uknow.or.jp
●開館時間:月―金曜日:10:00-20:00
土曜日:10:00-17:00
●最寄駅:地下鉄「四条」または「烏丸御池」、阪急京都線「烏丸」、市バス「四条烏丸」
イタリア文化会館(イタリア大使館文化部)■ Instituto Italiano di Cultura di Kyoto
●図書館があり、イタリア語と日本語で書かれた4,500冊のイタリア間連図書(文化、歴史、文学、生活を
網羅)を所蔵。
(閲覧・貸出とも無料)また、ビデオ・ライブラリー(ほとんどがイタリア語または英語)
の館内視聴もしくは貸出が可能です。そのほか、イタリア語講座や多彩な交流行事が開催されており、
留学情報などの提供も受けられます。
●所在地:〒604-8205 京都市中京区三条町344-1
●TEL:075-253-6565
FAX:075-253-6550
●URL:http://www1.odn.ne.jp/iic-kyoto/
●開館時間:月─金 10:00-12:00 14:00-18:00
改装のため図書館は1月中旬頃まで休館中です。
●最寄駅:地下鉄「烏丸御池」
日本イタリア京都会館 ■ Centro Culturale Italo-Giapponese di Kyoto
●資料室には、イタリア関係の和書を中心に、さまざまな分野の図書が取りそろえられています。(閲覧は
無料、貸出は友の会会員(年会費:4000円)及び語学講座受講生)
また、イタリア文化を紹介する講演
会や映画上演、展覧会、コンサートなどが企画・運営されるほか、年4期のイタリア語講座が開催され
ています。
●所在地:〒606-8302 京都市左京区吉田牛の宮4
●TEL:075-761-4356
FAX:075-761-4357
●URL:http://www.italia.on.arena.ne.jp/
●開館時間:月―金曜日:11:00-19:00
土曜日:11:00-18:00
●最寄駅:京阪「出町柳」、市バス「京都大学正門前」
京
都
市
内
に
あ
る
御
存
知
で
す
か
⋮
?
外
国
文
化
交
流
セ
ン
タ
ー
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●「IT図書館探検隊」を実施
動した本、読んでほしい本を書いた絵てがみ(はがき)を、
平成14年11月1日(金)に「IT図書館探検隊」開催した
18歳以下の府民から募集したところ、府内各地の2歳か
ところ、49名の府民の方が参加されました。
ら14歳までの多数の子どもから応募がありました。
最初に、国立国会図書館関西館事業部堀越敬祐氏によ
なお、展示は、平成14年4月23日(火)から4月30日
り、
「国立国会図書館の電子図書館機能∼近代デジタルラ
(火)まで、京都市営地下鉄烏丸御池ギャラリーにて展示
イブラリィを中心に∼」をテーマとした講演を行い、この
を行なった外、
府内の9市町の図書館等で巡回展示を行い、
講演では、国立国会図書館関西館の概要と機能の説明の
多くの方々に御覧いただきました。
後、スクリーンに映されたそのホームページから、様々な
機能を実演を交えながら説明がありました。近代デジタ
● 友好提携20周年・中国陜西省のパネル展示
ルライブラリィでは、
「我輩は猫である(夏目漱石)」の実
京都府では、異なる言葉、生活習慣、文化を持つ人々と
例での説明もありました。短時間でしたが、豊富な電子図
の交流を通じて、相互に理解を深め、平和な世界をつくっ
書館としての機能が逐一説明され、参加者からは驚きの声
ていくために、外国の州や省などと「友好提携」を結んで
があがっていました。
国際交流を進めています。
続いて、京都府立図書館の職員によるホームページか
らの「蔵書を探す」、
「貴重書データベース」、
「リンク集」の
活用方法の実演を行いました。館内見学では、5グループ
に分かれて、普段利用者の方が入れない場所(ITを駆使し
た自動化書庫や電動集密書庫)
を見学していただきました。
中華人民共和国陝西省と京都府が、昭和58年7月16日
に友好提携を結んで、平成15年で20年を迎えます。
京都府立図書館では、友好提携20周年を記念して、パ
ネル展を企画しました。
平成15年1月15日(水)から平成15年1月31日(金)ま
図書館の裏側のIT化を見学していただく一方で、インター
で、京都府立図書館の玄関展示スペースで、中華人民共和
ネット端末や市町村支援室も見学していただき、府立図書
国陝西省の代表的な風景・産業・文化財等のパネルや中華
館の機能も探検していただきました。今後とも、
「IT図書
人民共和国陝西省と京都府との友好提携交換文書等を展
館」の一層のご利用をお待ちしています。
示していますので、ぜひ御覧下さい。
● 絵てがみ、府内の9市町で巡回展示
● 京都府立図書館音訳協力者募集中!!
平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する
京都府立図書館では、視覚障害のある方に対する対面
法律」が公布・施行されました。この法律において、国民
朗読サービスを行っており、これに御協力いただく "音訳
の間に広く子どもの読書活動についての関心と理解を深
協力者”を随時募集しています。対象は、原則として音訳
めるとともに、子どもが積極的に読書活動を行なう意欲
講習を終了した18歳以上の方です。詳しくは資料課閲覧
を高めるため、4月23日が「子ども読書の日」とされ、国
担当までお問合せください。
及び地方公共団体は、
「子ども読書の日」にふさわしい事
お問合先: 京都府立図書館 資料課閲覧担当
業を実施するよう努めなければならないとされています。
TEL:
075-762-4655
京都府立図書館として、京都府図書館等連絡協議会と共催
FAX:
075-762-4653
して、
「子ども読書の日」にふさわしい事業として、
「子ど
も読書絵てがみコンテスト」を企画し、面白かった本、感
京田辺市立中央図書館 中部分室
延床面積:191m2
開館:平成14年10月20日
京田辺市立中央図書館の分室として、北部分室に次ぐ2
番目の分室としてオープン。中部住民センター「せせらぎ」
の1階に設けられ、蔵書数は1万3千冊。椅子席を多く配置
し、地域にくつろぎのスペースを提供。絵本コーナーでは、
月1回お話し会を行っている。中央館と各分室は、オンライ
ン化されており、また、週3回、本の配送を行って利用者
の便宜を図っている。
〒610-0311
館長 中村 和男
京田辺市草内美泥22番地の2
TEL 0774(64)8833