2.4 テーマ【2−4】鉄筋コンクリート構造物の地震時性能の高度化に関する研究 2.4.1 はじめに 各分野における規制緩和、国際基準、製造者責任等を背景とし、また、1995 年 1 月に発生し た兵庫県南部地震を契機に、建物の各種性能を建主や使用者に予め表示する性能設計法の議論 が高まっている。1998 年には建築基準法が改正され、これまでの仕様規定型の設計法から性能 規定型へ変更された。 建築物の耐震設計の諸規定も 2000 年にはすべて整備され、 性能規定型の設計ルートが示され た。 鉄筋コンクリート(以下 RC)造建物においても建物に入力される地震動特性を明らかにし、そ の地震動によって建物がどの程度変形し、どれぐらい損傷を被るのか設計時点で明確にし、そ の性能を表示する必要に迫られている。しかし、現状の耐震技術において地震動の入力レベル と RC 造建物の変形・損傷状況との関係が明らかになっているとはいえない。 今回の建築基準法の改正に伴う性能規定化への方向性のなかで、鉄筋コンクリート造建物の 地震時性能の向上を目指し、本研究テーマでは、①RC 造建物への地震動の入力特性の把握、② RC 造部材や建物の地震動入力に伴う変形レベルと損傷の関係を明らかにすること(損傷評価) 、 ③損傷を制御し設計上意図した性能を有する建物の設計法の確立(応答制御)を目的として検 討してきた。 以下に、上記 3 つの検討項目に対して実施した次の 5 つの研究課題、 1. 地盤-杭-構造物系の加振シュミレーション解析 2. 動的載荷時における鉄筋コンクリート造ト形柱梁接合部の力学的特性に関する研究 3. 高靭性セメント複合材料の開発と耐震壁への応用 4. 曲げを受ける鉄筋コンクリート造複筋ばりの寸法効果に関する解析的研究 5. 摩擦ダンパーを偏心配置した建物の補強効果と捩れ応答性状に関する研究 について得られた成果の概要を報告する。 2.4.2 地盤-杭-構造物系の加振シミュレーション解析[2-4-1]∼[2-4-8] 1995 年の兵庫県南部地震以降,地盤の非線形性を考慮した杭−地盤系の動的相互作用に 関する実験が数多く実施されている。また,一般に Penzien モデルと呼ばれる質点−ばね 系モデルによる非線形地震応答解析手法も報告されている。これらの研究では単独杭基礎 支持構造物を対象としている。一方,耐震安全性を特に重視する原子力発電所建屋の隣接 効果に関する研究においては,大型重量構造物の動的相互作用効果に着目し,隣接効果を 含む動的地盤ばねを適切に評価することを目的として,同種 2 棟,異種 2 棟試験体による 起振試験が実施されている。この場合,シミュレーション解析では地盤は弾性体として扱 われている。 テーマ[2-4]では,弾性範囲内である杭基礎周辺地盤の経年変化が杭基礎の動特性に及ぼ す影響と複数異種基礎間におけるクロスインターラクションに関する基礎的な知見を実 験的に把握することを目的として,杭支持基礎,埋込基礎及び杭支持埋込基礎から構成さ れる実大基礎モデル群(図 2-4-1)の起振実験を平成 13 年度に実施した。杭定数および基 礎モデル定数をそれぞれ表 2-4-1・表 2-4-2 に示す。 Ⅰ 1.2m 1.5m Ⅳ 1.6m Ⅱ 6.2m 3.4m Ⅴ 5.7m Ⅲ 表 2-4-1 杭定数 杭種 杭長(m) 杭径D(mm) 肉厚(mm) 断面積(cm2) 質量(kg/m) 断面係数(cm3) 断面二次モーメント(cm4) ヤング係数(N/cm2) 鋼管 26.6 406.4 9.5 118.5 88.2 1148.56 2.334x104 2.06x107 11.1m 7.7m 図 2-4-1 基礎モデルの配置 表 2-4-2 基礎モデル定数 モデル サイズ(m) 質量(ton) 杭本数 杭間隔 I 5x5x1 60 4 10D II 2x2x1.2 11.5 4 2.5D III 3x3x1.4 30.2 9 2.6D IV 2x2x1.2 11.5 4(埋め込み有) 2.7D V 2x2x1.2 11.5 0(埋め込み有) - 平成 14 年度は同実大基礎モデル群の起振実験結果のシミュレーション解析を薄層法点 加振解を用いたフレキシブルボリューム法により実施し,隣接基礎間のクロスインターラ クション効果について考察した。加振基礎および各隣接基礎ブロック上端面の水平 EW 方 向の実験と解析における変位共振曲線を図 2-4-2 に示す。隣接基礎間のクロスインターラ クション効果は加振基礎が隣接基礎群に影響を与えるだけでなく,加振基礎自身も特に重 量の大きな受振基礎から影響を受けることが起振実験,シミュレーション解析の両者から 確認された。また,地震時における隣接基礎間のクロスインターラクション効果の影響度 は起振実験に較べてより顕著となることが解析より示唆された。 さらに,同モデル群の常時微動測定も実施した。その詳細なデータ解析については現在 実施中であるが、モデル III 上の測点を図 2-4-3 に,モデル III のフーリエスペクトルを 図 2-4-4 に示す。図よりx方向成分とy方向成分のスペクトルに相異が確認された。また, x方向成分から求めたz軸回りの捩れとy方向成分から求めた z 軸回りの捩れがほぼ同一 であることから、捩れ動の励起が確認された。 (×10-5m/kN) (×10-5m/kN) 3 3 experiment analysis single M odel III M odel III multiple 2 abs abs 2 1 1 M odel I M odel II 0 0 3 0 4 (×10-5m/kN) 8 f(Hz) 12 0 16 4 8 f(Hz) 12 16 (×10-5m/kN) 3 M odel III M odel III 2 abs abs 2 1 1 M odel V M odel IV 0 0 0 4 8 f(Hz) 12 16 0 4 8 f(Hz) 12 16 図 2-4-2 実験と解析における各基礎の変位共振曲線 Z Y Nx Nx Wy Sx Ey X 図 2-4-3 モデル III 上の測点 -3 X方向並進成分 (x10 cm/sec) 2.0 (x10-3cm/sec) 2.5 Y方向並進成分 2.0 1.5 abs abs 1.5 1.0 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0 0 5 -3 10 15 0 並進成分 (x10 cm/sec) 2.5 f(Hz) 5 -6 X 方向並進成分 10 15 捩れ成分(Z軸回り) (x10 rad/sec) 4.5 f(Hz) X 方向成分から算定 2.0 Y 方向並進成分 Y 方向成分から算定 3.0 abs abs 1.5 1.0 1.5 0.5 0.0 0.0 0 5 f(Hz) 10 15 0 5 f(Hz) 図 2-4-4 モデル III の並進成分および捩れ成分のフーリエスペクトル 10 15 2.4.3 動的載荷時における鉄筋コンクリート造ト形柱梁接合部の力学的特性に関する研究 [2-4-9]∼[2-4-14] 平成 7、8、10 年度にト形柱梁接合部試験体に対し静的載荷実験と動的載荷実験を一組にし て実施している。 本研究は、安達・中西研究室で実施された RC 造ト形柱梁接合部試験体の動的及び静的載荷 実験結果[参考文献 2-4-1∼2-4-4]を基に、載荷速度、定着法、軸力変動がト形柱梁接合部の 力学的特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 a)検討対象試験体の概要 検討対象とする試験体は、[参考文献 2-4-1∼2-4-4]で報告した、それぞれ同一形状及び寸 法のト形柱梁接合部試験体に対して、静的と動的の載荷実験を行った 8 組、 合計 16 体である。 これら試験体は、せん断余裕度(接合部せん断耐力時層せん断力に対する梁曲げ耐力時層せ ん断力の比) 、梁主筋の定着法(U字、機械式)、軸力(長期一定、変動)、載荷速度(静的、動的) の違いにより 4 グループ各 4 体に分けた。表 2−4−3 に検討対象試験体一覧を示す。また、 図 2−4−5 に加力装置と応力状態の概念図を示す。試験体名の頭文字は、せん断余裕度を表 す。N(Group-1、2)は、梁曲げ降伏型に設計したせん断余裕度の高い試験体である。B(Group-3、 4)は接合部せん断強度と梁曲げ強度が拮抗するように設計したせん断余裕度の低い試験体で ある。次に、定着法の違いはMとUで表わされ、Mが機械式定着、UがU字定着である。そして、 CとVが軸力の載荷状態を表わし、Cが長期一定軸力(σN=3.68N/mm2)を、Vが変動軸力である ことを表す。採用された最大圧縮軸力比は 0.55Fc、最大引張軸力比は 0.2Fcである。試験体 表 2−4−3 検討対象試験体一覧 名最後の記号は載荷方法を表わし、Sが静的載 group せん断余裕度 定着法 柱軸力 載荷速度 静的 機械式 動的 長期 1 一定軸力 静的 U字型 動的 高い (Nタイプ) 静的 機械式 動的 変動軸力 2 静的 U字型 動的 静的 機械式 動的 長期 3 一定軸力 静的 U字型 動的 低い (Bタイプ) 静的 機械式 動的 4 変動軸力 静的 U字型 動的 荷、Dが動的載荷を表す。なお、動的載荷にお ける載荷速度は 50kine相当の地震波を用い たフレーム系地震応答解析結果3)より部材角 1/50 で層間変形速度が 5.0kine程度であるこ とから決定した。静的載荷においては、動的 載荷速度の 1/200 倍で載荷試験を行った。 b)ひずみ速度と材料強度 一般的に地震時に材料が経験するひずみ速 度は、10-3∼10-1(1/s)程度とされており、 材料の力学的特性に対する載荷速度の影響は 無視できない領域であ ・る。材料強度上昇推定 (梁荷重) 式を下記に示す。[参考文献 2-4-5] ・ f / f =1.2+0.05・log ¦ε ¦ ・・・ (1) 正加力側 D y S y ひずみ速度(1/sec) P 梁 反力壁 地震波 c)最大耐力と破壊形式に対する検討 (N/mm2),SFC:コンクリート静的強度(N/mm2),ε: 負加力側 アクチュエータ ・ F / F =1.38+0.08・log ¦ε ¦・・・ (2) D C S C Dfy:鉄筋動的降伏強度(N/mm2),Sfy:鉄筋静的降 伏 強 度 (N/mm2),DFC : コ ン ク リ ー ト 動 的 強・度 試験体 NMCS NMCD NUCS NUCD NMVS NMVD NUVS NUVD BMCS BMCD BUCS BUCD BMVS BMVD BUVS BUVD 圧縮ローラー支承 200t クレビス 梁 柱 (柱軸力) 圧縮側 引張側 ロードセル 200t クレビス 加力ビーム 試験体 N N 柱 反力床 図 2−4−5 加力装置と応力状態の概念図 表 2−4−4 に実験値最大耐力と計算値及び最大耐力上昇率を示す。計算値は、各破壊強度 時の梁加力点の荷重を示している。また、動的載荷における計算値は、式(1)、(2)より求め られる動的材料強度を用いて算出した。なお、コンクリートのひずみ速度は、コンクリート と鉄筋間の付着が完全であると仮定して、実験で得られる圧縮側梁端部主筋のひずみ量から 算出した値である。最大耐力上昇率は、静的載荷時の最大耐力に対する動的載荷時の最大耐 力の上昇率を示している。NMC を除く全ての試験体で載荷速度の影響により、最大耐力が約 5%∼25%上昇していることがわかる。また、U 字定着と機械式定着を比較すると U 字形定着 の最大耐力上昇率が機械式定着の約 2 倍から 3 倍となっており、定着法の違いによって、定 着部の挙動に及ぼす動的載荷の影響が大きく異なることが分かる。表 2−4−5 に各グループ の試験体のせん断余裕度と破壊形式を示した。NMC は静的および動的載荷とも押し抜きコー ン破壊を起こした。他のせん断余裕度の高い N シリーズの試験体では静的載荷、動的載荷共 に梁曲げ破壊を起こしている。一方、B シリーズの U 字定着試験体では、静的載荷時には接 合部せん断破壊であったものが、動的載荷により梁曲げ破壊を経験する破壊形式に移行して いる。載荷速度による曲げ強度の上昇よりもせん断強度上昇が大きいことによるものと思わ れる。以上のことから、機械式定着試験体では、せん断余裕度と押し抜きコーン破壊等の定 着に対する設計が適切であれば最大耐力が上昇する。また、U 字形定着では動的載荷により 接合部せん断耐力が上昇することで破壊形式の安全側への移行が見られる。 d)荷重変形曲線の包絡線 表 2−4−5 せん断余裕度と破壊形式 group 1 2 3 4 せん断余裕 破壊形式 動的 静的 動的 静的 1.60 1.70 B+CC B+CC 1.60 1.65 B+T B B B 1.62 1.65 B B B B 1.27 1.41 B B 0.97 1.00 B B 0.78 0.90 J BJ B B 0.97 1.01 JB JB J JB 0.78 0.91 JB BJ 試験体 NMC NUC 引張軸力 NMV 圧縮軸力 NUV 引張軸力 圧縮軸力 BMC BUC 引張軸力 BMV 圧縮軸力 BUV 引張軸力 圧縮軸力 B:梁曲げ破壊 J:接合部せん断破壊 BJ:梁曲げ降伏後接合部せ ん断破 JB:はり梁曲げとほぼ同時に接合部せん断破壊 S:支圧破 壊 T:側方割裂破壊 CC:押抜コーン破壊 CT:引抜コーン破壊 表 2−4−4 実験値最大耐力と各強度推定式によるよる計算値及び最大耐力上昇率 group 試験体名 正加力側 静的載荷時 負加力側 実験値 正加力側 動的載荷時 負加力側 正加力側 最大耐力上昇率 負加力側 静的 梁曲げ強度 動的 静的 計算値 接合部せん断強度 動的 静的 支圧強度 動的 1 NMC 91.4 81.4 88.8 91.4 -2.9 12.3 81.8 91.1(11.3) 121.4 142.1(17.1) 115.3 123.2(6.9) 2 NUC 77.3 77.3 80.9 83.5 4.6 8.0 81.8 92.8(13.4) 121.4 141.2(16.3) - NMV 71.8 76.7 75.5 80.6 5.2 5.1 61 64.8(6.2) 93.1 106.7(14.7) 73.4 83.3(13.5) 3 NUV 60.8 63.6 68.2 69.4 12.3 9.1 58.1 69.0(18.7) 72.9 92.1(26.33) - BMC 106.2 91.8 112.5 101.3 6.0 10.5 95.6 106.5(11.4) 93.6 106.5(13.8) 122.2 131.5(7.6) 4 BUC 82.8 82.0 100.5 102.9 21.4 25.4 94.6 104( 9.9) 72.9 91.6(25.6) - BMV 93.1 99.5 98.1 104.3 5.4 4.8 95.6 105(9.8) 93.6 106.1(13.4) 122.2 131.3(7.4) BUV 74.4 88.0 91.1 100.8 22.5 14.6 94.6 103.8(8.8) 72.9 91.9(26.1) - Group-1 図 2−4−6 の荷重―変形関係を表 2−4−3 に NMCS NMCD NUCS NUCD 対応させてグループ別に示した。Nタイプにお 120 Group-3 荷重(kN) 120 BMCS BMCD BUCS BUCD 90 60 60 30 いて、一定軸力を受ける Group-1 では、正負加 力ともに、ほぼ同じ包絡線を示している。変動 - 1/40 圧縮軸力 150kN 軸力を受ける Group-2 では、正加力側(引張軸 0 1/40 -90 形において耐力低下は見られない。これは、梁 90 60 0 1/40 引張軸力 378kN 30 部材角 0 1/20 - 1/20 - 1/40 0 1/40 1/20 -30 圧縮軸力 1039.5 kN -60 あるため急激な耐力低下を起こさず、靭性を確 60 部材角 -30 荷重(kN) 90 引張軸力 378kN 0 梁端部主筋が降伏した時点でも接合部が健全で 120 BMVS BMVD BUVS BUVD 30 圧縮軸力 1039.5 kN Group-4 荷重(kN) 1/20 -60 -120 120 - 1/40 1/40 -120 NMVS NMVD NUVS NUVD - 1/20 0 -30 -90 Group-2 端部主筋の降伏により耐力が決定される N タイ - 1/40 圧縮軸力 330.8kN -60 部材角 0 1/20 - 1/20 -30 力時) 、負加力側(圧縮軸力時)ともに、最終変 プ試験体であるので、柱の軸力変動に対して、 30 部材角 0 - 1/20 荷重(kN) 90 -60 -90 -90 -120 -120 図 2−4−6 荷重−変形関係の包絡線 保できる。このように、N タイプ試験体は、荷 重−変形関係の包絡線の履歴形状より変動軸力に対する影響は少ない。一方、B タイプでは、 一定軸力を受ける Group-3 と変動軸力を受ける Group-4 比較すると、負加力側(圧縮軸力時) では、圧縮軸力が大きくなると、機械式定着の試験体は、最大耐力後の耐力低下が激しい。 また、正加力側での、Group-3 と Group-4 の最大耐力を比較すると、Group-4 は引張軸力を受 けることによって最大耐力が Group-3 よりも小さな値を示している。Group-4 の正加力側(引 張軸力時)では、負加力側(圧縮軸力時)に比べ最大耐力に至るまでの剛性低下は大きいが、 最大耐力後の耐力低下は緩やかである。B タイプ試験体は、荷重−変形関係の包絡線の履歴 形状より変動軸力に対する影響が見られ、特に、高圧縮軸力を受ける際には、せん断余裕度 の低い機械式定着試験体は最大耐力後の耐力低下が脆性的である。 e)接合部せん断応力度-せん断変形角関係 Qj:接合部せん断力 (=T(梁主筋の軸力の合計)−Qc(柱せん断力)) , tp:接合部有効幅(=Bb(梁幅)+Bc(柱幅)/2), ldh:接合部内の柱成(梁主筋の水平投影長さ) 接合部せん断応力度は次式により求めた。 τp=Qj/(tp×ldh) ・・・ (3) 図 2−4−7 に接合部せん断応力度(τp)とせん断変形角(γ)関係を示す。それぞれのグ ラフで接合部せん断応力度の最大値とその時のせん断変形角を併せて示す。図 2−4−7 では、 U 字定着と機械式定着の比較するとτp の最大値とγで明瞭な違いがあることが分かる。すな ①NMCS 6 NUCS 4 ③ 2 -1% 1% 2% -2% -1% -4 -6 -6 -4 -6 1% 2% NMCD τpmax=4.30(N/mm2) γ=0.19 (%) NUCD τpmax=3.75(N/mm2) γ=0.85(%) -2% -1% ⑥ -4 -6 0 0% 2% -2% -1% BMCS τpmax=5.49(N/mm2) γ=0.65(%) BUCS τpmax=4.05(N/mm2) γ=0.52(%) -4 -6 BMCD BUCD 1% -6 6 ⑧ BMVD 6 4 BUVD 4 2% -2% NMVD τpmax=3.91(N/mm2) γ=0.77 (%) NUVD τpmax=3.27(N/mm2) γ=0.40(%) -1% -4 -6 2% 2 0 0% -2 1% BMVS τpmax=4.81(N/mm2) γ=0.91(%) BUVS τpmax=3.64(N/mm2) γ=0.85(%) -4 0 1% 0% -2 2 0% -2 4 2 -2 0 0% -2 -1% 2 0 -1% -2% 4 2 -2% 2% 6 NMVD NUVD 4 1% NMVS τpmax=3.71(N/mm2) γ=0.38 (%) NUVS τpmax=2.97(N/mm2) γ=0.62(%) -4 ④ 6 6 BMVS BUVS 0 0% -2 NMCS τpmax=3.94(N/mm2) γ=0.15 (%) NUCS τpmax=3.76(N/mm2) γ=0.99(%) ⑦ 4 2 0 0% -2 NMCD NUCD 4 6 BMCS BUCS 2 0 -2% ⑤ 6 NMVS NUVS 1% 2% -2% BMCD τpmax=5.82(N/mm2) γ=0.39(%) BUCD τpmax=4.92(N/mm2) γ=0.16(%) -1% 0% -2 -4 -6 1% 2% BMVD τpmax=5.07(N/mm2) γ=0.91(%) BUVD τpmax=4.45(N/mm2) γ=0.14(%) わち、Group-1を除く他のグループでは U 字定着の試験体は接合部入力せん断応力度が小さ く、せん断変形角も小さい。また、文献 4)の最終破壊状況では、機械式定着では最終的に柱 外側主筋に沿うような割裂状のひび割れが顕著なのに対し、U 字形字形定着ではみられなか った。この現象の違いから、接合部内の力の伝達が異なる可能性があり、この破壊メカニズ ムの違いを明確にする必要がある。 2.4.4 高靭性セメント複合材料の開発と耐震壁への応用 [2-4-15]∼[2-4-26] コンクリート系構造物の靭性向上および損傷抑制を目的として、ビニロン繊維で補強した「高 靭性セメント複合材料(Ductile Fiber Reinforced Cementitious Composite;以下、DFRCC と略 記)」の開発を行っている。次に、普通コンクリートおよびDFRCCを用いた RC 耐震壁の繰返し水 平載荷試験を行い、DFRCC の補強・靭性改善および損傷抑制効果について検討している。最後 に、DFRCC の破壊力学パラメータを考慮した構成則モデルを用いた耐震壁の FEM 解析を行い、 その性能の確認を行っている。 a) DFRCC の開発と性能評価 [文献 2-4-6∼2-4-8] 細骨材種類、水セメント比、ビニロン繊維寸法、繊維体積混入率を変動因子としたビニロン 繊維補強モルタルの切り欠き梁 3 点曲げ試験を行い、DFRCC の合理的な調合法を提示するとと もに、次の 2 種類の材料を開発している。 1) 一般に入手できる山砂を使用した高靭性ビニロン繊維補強モルタル 2) 廃ガラス発泡細骨材を使用した高靭性ビニロン繊維補強軽量モルタル さらに、各種の実験結果に基づいて、DFRCC の材料挙動を特徴づける引張軟化、圧縮軟化、破 壊エネルギーなどの破壊力学パラメータを評価している。図 2-4-8 は、日本コンクリート工学協会 の研究委員会の企画」で実施された各研究機関の DFRCC 梁の共通曲げ試験の結果である。こ の結果より、本研究の DFRCC の靭性能が優れていることが確認される・ A研究機関 JCI性能比較試験結果 (曲げ試験) 本研究DFRCC B研究機関 繊維補強コンクリート 構造上,耐久性上 問題無い微細ひび割れ コンクリートや モルタル 図 2-4-8 各研究機関の DFRCC の性能比較 b) 普通コンクリートおよび DFRCC を用いた耐震壁の構造性能の評価 [文献 2-4-6∼2-4-8] 耐震壁試験体の形状および配筋詳細を図 2-4-9 に示す。試験体は実大の 1/3 スケールを 想定し、柱断面が 240x240mm、柱脚から上部スタブ中心間距離は 1400mm である。図 2-4-10 に 載荷装置を取り付けた試験状況を示す。載荷は、まず、各柱にコンクリート圧縮強度の 1/6 相当の 軸力を負荷した後、変位制御により正負交番の繰り返し水平荷重を作用させた。 図 2-4-11 は RC 耐震壁試験体と DFRCC 耐震壁試験体に関して求められた実測の水平力と 層間変形角の関係を比較したものである。DFRCC 耐震壁の性能は、RC 耐震壁に比べて、強 度・靭性とも大幅に向上している。特に、RC 耐震壁の限界変形は約 1/200 であるのに対し、 600 600 DFRCC 耐震壁の限界変形は約 1/100 まで向上している。 帯筋 帯筋 D6@50 D6@50 600 600 主筋 主筋 12-D13 12-D13 1100 1100 壁筋(縦,横) 壁筋(縦,横) D6@200 D6@200 60 60 240 240 500 500 単位[mm] 単位[mm] 240 240 240 240 240 240 2000 2000 500 500 図 2-4-9 配筋詳細 図 2-4-10 載荷状況 RC耐震壁 <最大耐力> 1500 1000 500 0 -500 -1000 -1500 水平力Q(kN) ・922kN (正側) ・-930kN (負側) -20 -15 -10 -5 0 層間変形角R×10 5 (rad.) -3 10 20 DFRCC耐震壁 <最大耐力> 1500 1000 500 0 -500 -1000 -1500 15 水平力Q(kN) ・1045kN (正側) ・-1061kN(負側) -20 -15 -10 -5 0 層間変形角R×10 -3 5 (rad.) 10 15 20 図 2-4-11 RC 耐震壁および DFRCC 耐震壁の水平力−層間変形関係(実験結果) 図 2-4-12 は非線形有限要素解析を行うための要素分割および試験体のモデル化を示したも のである。図 2-4-13 は DFRCC 耐震壁の繰返し解析結果を実験結果と比較したものである。破 壊力学パラメータを考慮した有限要素解析により、DFRCC 耐震壁の強度や変形性能だけでなく、 履歴性状についても適切に追跡できることが確認された。 試験体のモデル化 コンクリートおよびDFRCCは 4節点アイソパラメトリッ ク要素,柱主筋は トラス要 ク要素 素でモデル化 柱せん断補強筋および壁筋 は 埋込み鉄筋要素によって 埋込み鉄筋要素 モデル化 柱主筋とコンクリート間に は,付着すべり 付着すべりを考慮した 壁については,鉄筋とコン クリートまたはDFRCC間の付 付 着は完全であると仮定 着は完全 2300 柱要素寸法 :220×240 壁要素寸法 :220×220 単位[mm] 3000 図 2-4-12 有限要素分割とモデル化 応力(MPa) ① 引張側 ③ 水平力Q(kN) 1500 0 1000 ② 500 圧縮側 縦ひずみ(μ) 赤線:解 析 黒線:実 験 0 <実験最大耐力> ・ 1 0 4 5 kN ( 正 側 ) ・ - 1 0 6 1 kN( 負 側 ) <解析最大耐力> ・ 1 0 9 9 kN ( 正 側 ) ・ - 1 1 0 1 kN( 負 側 ) -500 -1000 -1500 -20 -15 -10 -5 0 層間変形角R×10 5 10 -3 (rad.) 図 2-4-13 DFRCC 耐震壁試験体に関する繰返し挙動の解析 15 20 2.4.5 曲げを受ける鉄筋コンクリート造複筋ばりの寸法効果に関する解析的研究 [2-4-27]∼[2-4-28] 本報では昨年度報告書で述べた複筋ばり実験結果を対象に、Hillerborg[参考文献 2-4-9]の 仮定に基づく応力−ひずみ曲線を用いた分割要素法(以下ファイバー法)による RC 造はりの弾 塑性解析を行い梁部材の最大耐力や変形性能に及ぼす試験体寸法の影響を解析的に検討した。 a)Hillerborg の仮説 1 コンクリートの応力−ひずみ関係 Hillerborg は、破壊力学理論の概念からコンクリートの応力−ひずみ曲線を次の二つの局面 に別け寸法効果を表現できるものとした。最大強度までの上昇領域とその領域に起きる除荷経 路については、一様な損傷を経験し、変形は試験体寸法に依存しないひずみとして表されると した。一方、最大強度以降の軟化域においては、コンクリートの変形はある領域に局所的に集 中し、それ以外の領域は除荷され変形は減少する。したがって、軟化域の応力−ひずみ曲線の 特性がコンクリートの局所変形領域を含む破壊領域長さに依存するため、応力−変位曲線で表 すことが適切な表現となる。 図 2-4-14 に最大応力度までの上昇領域及び除荷経路の応力−ひず み関係、最大応力度以降の軟化域の応力−変位関係及び、これら 2 つの和を平均化した応力− ひずみ関係を示す。ω u は軟化域の応力度σ が 0 の時の変位である。今、一軸圧縮応力を受ける コンクリートの基準化長さを l とすると、軟化域の応力度 σ が 0 の時の、平均ひずみ ε u は(1) 式で表される。終局時の平均ひずみ ε u は、応力−ひずみ曲線の軟化域の形状を決定するパラメ ーターとみなすことができる。このことにより基準化長さ l はコンクリート試験体の一軸圧縮 試験などの場合、試験体寸法に強く依存することを意味している。 2 RC 造はりへの適応 図 2-4-15 に一軸圧縮応力と同様の状態を、RC造はりの圧縮領域に模擬した場合における破壊 領域の概念図を示す。一軸圧縮応力を受ける場合と同様に、コンクリートの圧縮領域について 圧縮応力がはりの材軸方向にのみ働いているとして、RC造はりの圧縮領域に(1)式の応力−ひず み関係を適用する。ここで、Hillerborgは圧縮領域の高さCに比例した軟化域を平均化する長さ における最大応力度にあたる点から除荷経路により得られるひ εu を としており、平均ひずみ l ずみ を省略し簡略化した(2)式として平均ひずみ εo を表現した。 Hillerborgの仮説によると、 εu ωc ωc この は材料特性として一定値を持ち、 普通強度のコンクリートに対して =3mmを与えている。 仮説に従うとするならば、応力−ひずみ曲線の軟化域の形状は圧縮領域高さに依存することに なり、はり高さDが高くなれば軟化域の性状は脆性的な挙動を示すことが明らかである。 ε u = ε o + ωu l σ 除荷経路 εu = ωc l , l ≒ C ・・・・・・(1) σ σ σB ε u = ε o +ωu L 下降領域 破壊領域 コンクリートの一要素 C ωc 局所化ひずみ 上昇領域 引張領域 l ≒C D 圧縮応力 ωu /L Ec ε0 圧縮領域 ・・・・・・(2) ε ωu ω ε0 b)解析概要[文献 2-4-10] 図 2-4-14 平均化した応力−ひずみ曲線 εu ε 梁のせん断方向断面図 梁の材軸方向断面図 鉄筋 (一軸圧縮応力状態) 図 2-4-15 RC 梁における破壊領域の概念図 1 解析モデル 図 2-4-16 に RC 造はりにおける解析の概念図を示す。既報の実験において用いた単純支持形 式のはりを、対称条件から片持ちばりとしてモデル化し、材端における荷重−変位関係を求め る。図中⊿δyc を、実際のはり中央部における変位として実験値との比較を行う。 2 材料の構成則 図 2-4-17 にコンクリートと鉄筋の構成則を示す。コンクリートの構成則は、上昇領域におい てはパラボラ曲線を適用し、 軟化域においては Hillerborg の仮説から直線として近似した式を 用いた。鉄筋の構成則は、tri-linear 型モデルを用いた。また、圧縮鉄筋に対しては、圧縮鉄 筋を含むコンクリートの要素が、コンクリートの最大圧縮ひずみに到達すると、鉄筋は座屈す るとして、座屈応力度まで耐力低下する構成則を採用した。ただし、圧縮鉄筋の座屈応力度は、 座屈長さを 2 点載荷の区間とする Euler 座屈により算定した。 c)実験結果と解析結果との比較 図 2-4-18 に荷重−変位曲線の実験結果と解析結果を比較して示す。Hillerborg の仮説では ω c の値を一定値として与えているが、ファイバー法による解析を行った結果から得られた局 所化領域内の変位 ω c は、Hillerborg の仮定していた値 ω c =3 mm とは異なる。ここで、解析に 用いたω cの値は単筋ばりの解析結果[参考文献 2-4-11]を参考に、釣合鉄筋比以上では 0.8 mm、 釣合鉄筋比以下では 0.2 mm とした。また、釣合鉄筋比以上・以下のどちらのモデルも、試験体 の寸法が減少するに伴い最大荷重からの勾配が減少している Y軸 js=1 2 2 3 3 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ⊿Py ・ ・ ・ n ns Z軸 コンクリート断面要素 εu εo εc 鉄筋の断面要素 E sh σ s = Es ⋅ ε s B σ c = σ B − ε uσ− ε o ⋅ (ε c − ε o ) −σB σB 2 σB σ c = − ε o2 ⋅ ε o + 2⋅ ε o ⋅ εo コンクリートの圧縮領 s ε sk σ sk = Es ⋅ ε sk Es σ εs σk σsk 鉄筋の圧縮領域 300 150 Es ε sy ε sh 鉄筋の引張領域 圧縮鉄筋の座屈応力 D19 D10 D6 D3 0 160 320 εs 座屈応力度σk (N/mm2) 14.6 14.3 26.1 22.8 σ C : コンクリートの応力度 σ S : 鉄筋の応力度 σ B : コンクリートの最大応 力度 σ sy : 鉄筋の最大応力度 εc : コンクリートの歪度 εs : 鉄筋の歪度 ε u : コンクリート終局時の 歪度 ε O : コンクリートの最大応 力度に対する歪度 ε sy : 鉄筋の最大応力度に対 する歪度 ε sh : 鉄筋の第 2次勾配における歪度 E c ,E s : コンクリート,鉄筋の ヤング係数 E sh : 鉄筋の第 2次勾配におけるヤング 係数σ sk : コンクリートの最大応 力度に対する鉄筋の応 力度 σ k : 座屈応力度 ε sk : σ skに対する鉄筋の歪度 = ε o 図 2-4-17 各材料の構成則と鉄筋の座屈応力度 0 480 B072 60 80 160 160 80 20 40 240 B212 120 40 0 0 sh B211 450 80 0 σ s = σ sy + Esh ⋅(ε − ε s) 600 160 80 σs σs −σ B 2 B071 240 0 図 2-4-16 部材の要素分割と断面の要素分割 σc 釣合鉄筋比以上 0 ・ ・ ∆ Pyb : 増分荷重 ∆ Pyc : 材端増分荷重 ∆ δ yb : 増分変位 ∆ δ yc : 材端増分変位 X軸 荷重[KN] ⊿δyb 80 160 20 荷重[KN] ⊿δyc 釣合鉄筋比以下 320 荷重[KN] j = 1 240 B074 0 40 80 40 15 30 10 20 5 10 120 B214 0 0 0 40 80 8 荷重[KN] ⊿Py 120 B078 6 0 20 40 12 9 4 6 2 3 60 B218 0 0 0 20 40 60 変位[mm] 解析結果 0 10 20 30 変位[mm] 実験結果 図 2-4-18 各モデルによる荷重−変位曲線の比較 2.4.6 摩擦ダンパーを偏心配置した建物の補強効果と捩れ応答性状に関する研究 [2-4-29]∼[2-4-34] 本報は、昨年度報告書で述べた実験結果から得られた知見を踏まえ、摩擦ダンパーを偏心配 置した場合の捩れ応答性状をより詳細に把握することを目的としたものである。まず、摩擦ダ ンパーを偏心配置した場合と、ダンパー無しの強度抵抗型ブレース(弾性ブレース)を偏心配置 した場合について地震応答解析を行い、両者の捩れ挙動の違いについて検討する。また、摩擦 ダンパーを偏心配置した場合の最大応答捩れ回転角が、力の釣合い条件から求めた計算値によ り推定可能であることを示す。 a) 試験体概要と解析概要 1)試験体概要 [参考文献 2-4-12∼2-4-17] 図 2-4-19 に試験体概要、表 2-4-6 に試験体一覧を示す。試験体は、天井板(重 量 3640N)と 4 本の鋼棒を柱とする 1 層 1 スパンの立体骨組とする。加振方向の 4 構面をそれぞ れ Y1,Y2,Y3,Y4 構面とし、加振直交方向の 2 構面をそれぞれ X1,X2 構面とする。試験体は、無 偏心中層 RC 造建物の損傷限界時と安全限界時の固有周期を想定した無補強無偏心試験体 M5A,M8A を基本試験体とし、基本試験体に摩擦ダンパー(摩擦荷重 200N)を設置したモデルを B,C,D とする。また、摩擦ダンパーと同じ剛性(2kN/mm)の弾性ブレースを Y1 構面に設置した モデルを B’とする。 2)解析概要 解析は、各部材を線材置換し3次元立体骨組弾塑性解析プログラムを使用して 行った。柱は弾性体としダンパーの復元力モデルには、バイリニアモデルを使用した。数値積 分は New mark-β法(β=0.25)で行い。⊿t=0.005sec とした。柱及びダンパーの減衰定数は(そ の1)の自由振動実験より得られた値(M5A:2.2%、M8A:2.1%)を用いた。 b) 応答性状及び捩れ挙動の比較 摩擦ダンパーを偏心配置した試験体(M8B)と弾性ブレースを偏心配置した試験体(M8B’)に対し、 入力地震動(EL-Centro NS)の入力倍率をパラメーターとした応答解析を行い、応答性状及び捩れ 挙動の違いについて比較・検討する。図 2-4-20 (A)に各モデルの最大応答変位(重心位置・Y4 構 面)と入力倍率の関係を示す。重心位置の最大応答変位は M8B’の方が M8B より小さいが、Y4 構面の最大応答変位は逆に M8B’の方が M8B より大きくなっていることがわかる。また、M8B’ では重心位置と Y4 構面の最大応答変位の差が大きいのに対し、M8B では、その差がほとんど 見られない。この結果は図 2-4-20(B)の最大応答捩れ回転角と入力倍率の関係からも明らかであ る。すなわち、M8B’では入力倍率の上昇に伴い、最大応答捩れ回転角が上昇しているのに対し、 M8B の最大応答捩れ回転角はさほど上昇しない結果となっている。これは、摩擦ダンパーが滑 り始めると偏心の影響が小さくなり、捩れ回転角が上昇しないという、ダンパー偏心配置時の 捩れ挙動の特徴を表しており、また同時に、ダンパー偏心配置時の最大応答捩れ回転角は、ダ ンパーの滑り始める変位に関連して決定されると推定される。 表 2-4-6 試験体一覧 model 柱直径 柱の剛性 補強位置 (mm) (N/m m) A 無補強 B,B' Y1構面 M5 φ19 14.7 C Y2構面 D Y3構面 A 無補強 Y1構面 M8 B,B' φ15 5.7 C Y2構面 D Y3構面 偏心率 固有振動数 (Hz) 1次 2次 0.00 2.01 3.12 1.03 2.78 7.00 0.54 3.00 6.10 0.00 3.12 5.74 0.00 1.25 1.95 1.71 1.74 6.73 0.91 1.88 5.85 0.00 1.95 5.52 ※固有振動数は X 方向と回転方向を示す。 ※偏心率は偏心距離を弾力半径で除したものである。 X2 Y4 Y3 (重心位置) Y2 (Y1 と Y3 の中央) Y1 構面 天井板(3640N) X1 構面 加 向 方 振 柱 摩擦ダンパー 80 0 0 160 単位[mm] Y 図 2-4-19 試験体概要(B モデル) X c) 最大応答捩れ回転角の推定 ここでは、最大応答捩れ回転角が理論的に推定可能か検討する。摩擦ダンパーが滑り始める と捩れ回転角が上昇しないと仮定すると、滑り始める時の回転角(計算値)が地震時の最大応答 捩れ回転角となる。計算値は、重心周りの力の釣合い条件から以下のように求めることができ る。試験体の抵抗機構を図 2-4-21 のようにモデル化すると、重心周りのモーメントの釣合いは (1)式で表される。 P1 ⋅ L y - P2 ⋅ L y - Pd ⋅ Ld + P3 ⋅ Lx - P4 ⋅ Lx + IG ⋅ θ&&=0 (1) ここで、P1∼4 ,Pd:柱 1∼4,ダンパーの復元力、Ly:重心からY1,Y4 までの距離、LX:重心からX1、X2 までの距離、Ld:重 心からダンパーまでの距離、IG:慣性モーメント、 θ&& :回転角加速度 ダンパーの滑り始める変位をδd として、(2)∼(7)式を(1)式に代入し、また、回転角加速度を(8) 式のように仮定すると、滑り始めの回転角(計算値)は(9)式で表される。 P 1 ~ 4= K 1~ 4 ⋅ δ 1~ 4 Pd= K d ⋅ δ d δ 1={δd + (Ly + L d ) ⋅ θ } (2) (3) (5) θ&&= - ϖ 2 ⋅ θ (8) θ= Kd ⋅ δd ⋅ Ld 2K Ly2 + Lx2 - IG ⋅ ϖ 2 (7) δ 2={δd - (L y − Ld ) ⋅ θ } (6) K = K 1= K 2= K 3= K 4 δ 3= − δ 4=(Lx ⋅ θ ) (4 { ( ) } (9) ここで、K1∼4,Kd:柱 1∼4,ダンパーの剛性、δ1∼4:柱 1∼4 の変位、δd:ダンパーの滑り始め変位、θ:回転角、 ω:固有角振動数 まず、計算方法の妥当性を確認するため、ダンパーを偏心配置した試験体 (M5B,M5C,M8B,M8C)の重心位置に水平力を作用させた静的弾塑性解析より得られる最大捩れ 回転角と計算値を比較する。ただしこの場合、外力は静的なので、(9)式のIG・ω2の項は無視し て計算値を求めている。図 2-4-22 に、M5,M8 モデルの各々の解析結果と計算値を比較して示す。 解析結果と計算値は良い対応を 示しており、計算方法の妥当性が確認できる。 次に、地震時の最大応答捩れ回転角と計算値を比較する。図 2-4-23 に(その2)の振動台実験 で得られた M5,M8 モデルの最大応答捩れ回転角と計算値を比較して示す。実験結果は、 EL-Centro NS(280gal),Kobe NS(300gal)の観測加速度波形と、 2つの模擬地震動波形 Wg82(200gal), Wg88(150gal)の計 4 波によるものである。なお、計算値の算定に際し、ωは無補強試験体 (M5A,M8A)の捩れに対する振動数(2 次)を用いている。図より、M5,M8 両試験体とも、実験結 果と計算値は良く対応しており、地震時の最大応答捩れ回転角が、(9)式の計算値により推定可 能であることが確認できる。 0.4 2 0 1.5 2.0 入力倍率 2.5 8 6 4 (A)最大応答変位 1.5 2.0 2.5 入力倍率 P1 δ1 θ Y K1 Y4 θ Pd Kd Ld 重心 X Ly K2 P3 K3 P4 図 2-4-21 0.6 偏心率 0.9 図 2-4-22 δ4 δ2 試験体のモデル化 0.2 0.1 M8 0.0 0.0 0.5 1.0 偏心率 1.5 2.0 静的解析結果と計算値の比較 Wg82 Wg88 計算値 2.5 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 M5 0.00 重心 δ3 解析結果 計算値 0.3 1.2 Kobe NS 0.0 Ly K4 0.3 EL Centro NS Y3 Y1 P2 0.0 3.0 (B)最大応答捩れ角 Lx M5 0.0 X2 Lx 0.1 0 図 2-4-20 摩擦ダンパーと弾性ブレースの解析結果の比較 X1 0.2 2 1.0 3.0 0.3 捩れ回転角(×10−2rad) 4 10 0.4 解析結果 計算値 捩れ回転角(×10−2rad) 6 捩れ回転角(×10−2rad) 8 1.0 M8B (ダンパー)回転角 M8B (ブレース)回転角 12 捩れ回転角(×10-2rad) 重心・Y4 構面変位(cm) 10 (ダンパー)重心変位 (ダンパー)Y4 変位 (ブレース)重心変位 (ブレース)Y4 変位 捩れ回転角(×10−2rad) M8B M8B M8B M8B 0.25 0.50 偏心率 0.75 2. 0 1. 5 1. 0 0. 5 M8 0.0 1.00 0.00 0.50 1.00 偏心率 図 2-4-23 振動台実験結果と計算値の比較 1.50 2.00 2.4.7 まとめ a) 地盤-杭-構造物系の加振シミュレーション解析 1) 隣接基礎間のクロスインターラクション効果は加振基礎が隣接基礎に影響を与えるだ けでなく,加振基礎自身も特に質量の大きな受振基礎から影響を受けることが実験, 解析の両者から確認された。 2) 地震時における隣接基礎間のクロスインターラクション効果の影響度は起振実験に較 べてより顕著となることが解析より示唆された。 3) 同モデル群に対して実施した常時微動測定に関する検討が必要である。 b) 動的載荷時における鉄筋コンクリート造ト形柱梁接合部の力学的特性に関する研究 1) 載荷速度の上昇によって,U 字定着は最大耐力が 10∼20%上昇し,破壊形式の安全側 への移行がある。一方、機械式定着においては,載荷速度の上昇による最大耐力の上 昇率は 5∼10%である。また、破壊形式の移行は認められない。 2) 接合部せん断余裕度が十分であるならば,柱の変動軸力の影響は小さい。 3) 接合部の耐力は,柱引張軸力時よりも圧縮軸力時で大きくなるが,最大耐力後の耐力 低下が激しい。 4) 接合部せん断余裕度が低い試験体に変動軸力が作用すると、引張軸力側の最大耐力は、 一定圧縮軸力時よりも減少する。 5) 接合部せん断余裕度が低い機械式定着の試験体は接合部入力せん断応力度が大きく, せん断変形角も大きい。また U 字形字形定着では見られない柱外側主筋に沿うような 割裂状のひび割れが顕著である。 c) 高靭性セメント複合材料の開発と耐震壁への応用 1) 複数の繊維の3次元ランダム配向性を考慮した DFRCC のひび割れ分散条件式を導いた。 2) DFRCC の調合法について検討した結果,山砂を使用した高靭性ビニロン繊維補強モルタ ルおよび軽量化と資源の再利用を目的とした廃ガラス発泡細骨材を使用した高靭性ビニロ ン繊維補強軽量モルタルを開発した。 3) DFRCC の引張応力−開口変位関係は引張破壊エネルギーを関数とした多直線モデルによ り近似でき、また、圧縮応力−塑性変形関係は圧縮破壊エネルギーを関数とした2直線モ デルで近似できることを示した。 4) 圧縮・引張繰り返し挙動,ひび割れコンクリートおよび付着すべりの既往モデルでは, DFRCC の圧縮・引張の繰り返し実験を実施するとともに,FEM 解析による実験結果の検 証を行い、DFRCC の圧縮・引張繰り返し挙動に適用可能な構成則を提示した。 d) 曲げを受ける鉄筋コンクリート造複筋ばりの寸法効果に関する解析的研究 1) 応力−ひずみ曲線の軟化域に、寸法の影響を考慮した構成則を適用したファイバー法によ る RC 造はりの解析結果から、釣合鉄筋比以上・以下のいずれの梁においても強度・変形 性能に寸法効果が現れる。 2) この解析結果に現れた強度・変形性能に対する寸法効果は、実験結果と同じ傾向を示した。 ・ 以上から Hillerborg の仮説は寸法効果を説明しうることが確認された。 e) 摩擦ダンパーを偏心配置した建物の補強効果と捩れ応答性状に関する研究 1) 強度抵抗型ブレース(弾性ブレース)を偏心配置した場合には、入力地震動の大きさが上昇 するにつれて最大応答捩れ回転角が上昇するのに対し、摩擦ダンパーを偏心配置した場合 はさほど上昇しない。 2) このときの最大応答捩れ回転角は、摩擦ダンパーが滑り始める時の捩れ回転角とほぼ一致 しており、力の釣合い条件から求めた計算値で推定可能である。 参考文献 [2-4-1] 安達洋、奥田明久ほか:「機械式定着法を用いた鉄筋コンクリート造ト型柱梁接合部 の動的な定着性状に関する研究」 コンクリート工学年次論文報告集 Vol.18,No2, 1996 pp971-976 [2-4-2] 安達洋 増島克巳ほか:「鉄筋コンクリート造ト型柱梁接合部の力学的性状に及ぼす 載荷速度の影響に関する実験的研究」 コンクリート工学年次論文報告集 Vol.20, No3,1998 pp553-558 [2-4-3] 安達洋 山田高史ほか:「変動軸力を受ける鉄筋コンクリート造外柱梁接合部の力学 的性状に関する実験的研究」 コンクリート工学年次論文報告集 Vol.21,No3,1999 pp637-642 [2-4-4] 安達洋、小島陽一:変動軸力を受ける機械式定着法を用いた鉄筋コンクリート造ト形 柱梁接合部の挙動に関する実験的研究,コンクリート工学年次報告 集,Vol.24,No.2,pp445-pp450,2002. 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