資料 - 国土交通省 関東地方整備局

資料-2
大深度トンネル技術検討委員会
第6回
委員会資料
大断面シールド掘削技術の検討について
平成 19 年 10 月 26 日
国土交通省 関東地方整備局 道路部
1. 検討目的
外環(関越道~東名高速)は極力大深度地下を活用した計画となっており、その延長は約 16km である。このうち約 15km をシールドトンネルとして計画している。
施工中のシールドトンネルの前面は、掘削のために地盤に直接触れることとなり、近年ではほとんどの事例においてシールド機前面の地盤を泥水(泥水式シールド)もしくは泥土(泥土圧シールド)により抑えながら掘削している。
外環に適用可能なシールド形式は、第2回委員会において、東京湾横断道路その他のφ10m以上の大断面シールドで一般的であった泥水式シールドを選定したところであるが、
①
長距離施工における耐久性の向上
②
泥土圧シールドの適用性
について更なる検討が必要な項目としてあげられていた。
今回の委員会では、以下に示す外環の特徴を考慮しその項目について検討するものである。
①
大断面
国内における最大径となるφ14.18m(地下鉄南北線麻布シールド、トンネル径φ13.94m)やφ14.14m(東京湾横断道路シールド、トンネル径φ13.9m)よりも大きいφ約 16mのシールドとなる。
②
長距離
シールドは、7km以上の長距離を掘削することとなる。
③
硬質地盤
掘削地盤のほとんどは上総層であり、比較的硬質な地盤を掘削する。
④
高水圧
大深度地下に計画されているため高水圧下での施工となる。
中央 JCT
東名 JCT
青梅街道 IC
【出入口】
東八道路 IC
【出入口】
目白通り IC
大泉 JCT
【出入口】
立坑
立坑
約 7.5km
約 7.5km
約 1km
約 15km(シールド工法)
図 1.1 外環本線シールド延長
-1-
(開削区間)
<参考> シールド工法の概要
2. 検討方法
① 泥水式シールド
本検討では外環のシールドの特徴に留意するとともに、これまで泥水式で計画を進めてきた理由を踏まえ、次
シールド機の前部を隔壁で仕切り、この隔壁と切羽の間の空間(チャンバ)を加圧した泥水で満たし、切羽の
に示す項目により、外環を対象とした泥土圧シールドの適用性を検討する。
安定を図る工法である。
掘削した土砂は泥水中に取り込み排泥水として流体輸送する。チャンバに送る泥水は、流体輸送された排泥水
① 泥土圧シールドの採用実績の推移
から土砂分を分級し、所定の性状に調泥して循環使用される。
泥土圧シールドの採用実績の推移から、泥土圧シールドの大断面・長距離・硬質地盤・高水圧に対す
る適用性を検討する。
② 考えられる施工時課題に対する適応性
外環シールドの特徴を踏まえたシールド施工時の課題について、予め講じておくべき対策を検討する
ことで、泥水式シールドを適用した場合とともに、泥土圧シールドの施工時課題への適応性を検討する。
② 泥土圧シールド
シールド機の前部に設けたチャンバ内に掘削した土砂を充満させて切羽の安定を図る工法である。チャンバ内
の掘削土は加泥材や気泡などの添加剤を加え強制攪拌を行うことによって、均質な泥土として流動性をもたせる。
掘削した土は、切羽の安定を図りながら掘進量に見合う土砂をスクリューコンベアなどで排土する。
-2-
<参考> 大断面シールド機の事例
3. 泥土圧シールドの適用性の検討
近年における泥土圧シールドの採用実績から、大断面や長距離等における施工のノウハウは蓄積されつつあると
ともに、外環シールドの特徴を踏まえた施工時課題に対し、技術的には事前の対策は可能であると考えられる。こ
れらのことから、外環のシールドトンネルでは泥土圧シールドでも施工は可能であると考えられる。
なお、施工時には慎重な施工管理を行う必要がある。
東京湾横断道路
泥水式シールド機
3.1
泥土圧シールドの採用実績の推移
φ14.14m
実績の面からは泥土圧シールドは泥水式シールドにおよばないが、近年では、泥水式シールド・泥土圧シールドと
L=1.85km~2.9km
もに、外環への適用で必要となる長距離シールドや大断面シールドへの対応などのノウハウは蓄積されつつあるもの
と考えられる。
m
10000
東電
東 扇島
泥土圧
9000
泥水式
※ 円の大きさは外径を示す
8000
関電
学園豊 崎
7000
6000
延
長 5000
霞ヶ浦
導水路
NTT
NTT
江戸 川 浪 速関目
3000
2000
1000
土 佐堀 幹線
中堀 川
NTT
雨水 幹線
淡路 浪速
中 電川 越
東 俣野
桑 名地 区
洞道
φ12.14m
味美
共 同溝
東京 湾
横断 道
多 摩川幹 線
1990
φ11.52m
上海長 江ト ンネ ル
(中 国)施 工中
L=2.02km
φ 15.01m
φ 13.06m
φ 13.44m
今井 川
地下 調整 池
M30(スペ イン )
φ 12.02m
多摩川 上流
雨水幹 線
2000
φ12.02m
首 都高 新宿線
山崎川
雨水幹 線
平野 川
地下 調節池
1995
泥土圧シールド機
石岡
小 机幹線
φ 14.14m
首都高新宿線
φ 15.4m
関電
学 園豊崎
新 羽末 広
幹線
東電上 尾
4000
春日 井
共同 溝
首都 高新 宿線
環七地 下
調整池
2005
マドリッド環状道路M30
泥土圧シールド機
2007
φ15.01m
工事年度
L=3.54~3.66km
図 3.1 シールド外径と掘進延長の実績(土と基礎 2006.11 をもとに加筆)
-3-
3.2
考えられる施工時課題に対する適応性の検討
外環のシールドと同様な施工事例はないことから、外環の特徴である大断面、長距離、硬質地盤、高水圧に対し、これまでの施工経験とは異なる状況が生じることも考えられる。このため、比較的大断面(φ6m 以上)
、長距離(施工延長
2,000m以上)のシールド工事における事例をもとに、外環シールドの特徴を踏まえた想定される施工時課題と、事前に対応しておくべき対応策を検討した結果、外環のシールド工事では泥水式・泥土圧ともに、想定される施工時課題に対し
て事前対策を施すことにより対応可能と考えられる。
高水圧
長距離
大断面
硬質地盤
表 3.1 想定される施工時課題と事前対策事例
事前対策事例
要 因
施工時課題
泥土圧シールド
A:長距離・大断面・礫質土が原因となる部材の磨耗・ ・ 土砂シールの損傷とそれに伴う駆動不足
疲労
○
○
・ コピーカッターの伸縮不能
泥水式シールド
・ 多段シール、自動給脂装置、冷却装置
・ 超硬チップ配置
・ 排泥管、排泥機器、ロータリージョイント、 ・ 予備部品のストック、設計時による安全率の見直し、タイヤ方式による掘削土搬送
○
面板等の破損
・ 段差ビット、高耐磨耗性材の使用、機械式ビット交換方式の採用
・ 潤滑性の高い加泥材の使用
・ スクリュー先端の補強
○
○
B:長距離・大断面・硬質地盤であることが原因とな
○
・ 駆動部の変形、油温度上昇とそれに伴う駆 ・ インターロック、モーターのインバータ制御、設計時による安全率の見直し、冷却装置
る過負荷
動不能
C:巨礫などが原因となる閉塞
硬質粘性土などが原因となる掘削土の塑性流動
○
・ 掘削土の排出不能
・ 清掃用ジェット装置
・ スリットの適切な開口率の採用
化不足による閉塞
○
○
○
○
・ スクリューコンベアの複数設置
・ クラッシャの配置
D:礫地盤が原因となるマシン締め付け
・ シールド機の推進不能
・ 潤滑材注入用孔設置、低速対応型パワーユニット装備
E:切羽の抑制圧の不足や介在砂層の被圧水等
・ 切羽の押し出し
・ 切羽圧力監視装置、地山崩壊探査装置
・ 地山に適した添加材および添加率の選定
F:止水不足やセグメントの損傷
・ 坑内への出水
・ スリット幅の制御、泥水圧変動対策装置
・ 複数段テールシール、緊急止水装置の設置
○
・ 施工時荷重の考慮
・ 二次スクリューコンベアの設置、緊急用ゲートの設置
泥土圧シールド
コピーカッター
A
ビット,面板
A
切羽抑制圧の不足
E
塑性流動化不足
C
泥水式シールド
テールシール
F
セグメント
F
コピーカッター
A
ビット,面板
A
駆動部
B
スリット
C
切羽抑制圧の不足
E
塑性流動化不足
C
テールシール
F
駆動部
B
スリット
C
土砂シール
A
ロータリー
ジョイント
A
スクリュー
コンベア
C,F
土砂シール
A
ロータリー
ジョイント
A
スクリュー先端部
A
マシン締め付け
D
マシン締め付け
D
-4-
排泥管
A
セグメント
F