(春日先生 第4回-2)pdf - 橋梁研究室

2012/12/20
Structural Eleganceの三要素
第四回 橋の美しさについて
 機能美
→用
→ 道路を通す.周辺の環境と調和する構造物.
環境負荷の小さな構造・工法.等々
 構造美 → 強
Structural Eleganceとは
→ 構造的な合理性.シンプルな力の流れ.
 造形美 → 美
デザインビルドの事例
→ 機能美・構造美の次に来るもの.造形は構造
的に説明が可能なこと.
機能美(見え方)
アーチの支柱間隔とその位置
高架橋の支間長と橋脚高のバランス
・ V字谷は縦長、なだらかな谷では横長
・ 支間割りは奇数とし谷の中央に橋脚を建てない
・ 空間の対角線の傾きがほぼ同じになるよう名支間割り
・ 支間>1.5橋脚高の扁平な谷では等間隔も可能
機能美の例(コッハタール高架橋)
橋脚高185m
ミヨ高架橋ができるまでは世界一高い高架橋
支間>1.5×橋脚高
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機能美の例(リン・コーブ高架橋)
橋脚8本
185m
国立公園内
コンペの3案
橋脚12本
Y形橋脚8本
90m
桁橋の桁高変化
良い桁高変化(上)と良くない例(下)
ドライバーの視点
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機能美とは・・・
 必然性が説明できることが重要
 すべて経済性で決定されるのではなく、機能美を追
求するエンジニアの判断が尊重される土壌
 周辺環境と調和する構造物をイメージする高度なス
キルが必要
構造美(合理性)
構造美の例(ズンニベルグ橋)
構造美の例(CD運河橋)
温度による変形方向
コンクリートトラス
主塔・横梁のPC配置
平面アーチ
(斜張橋)
構造美の例(エスカルドゥナ橋)
太さの違うピア
曲線桁、非対称断面
ただの屋根ではなかった・・・
補剛トラス
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構造美の例(ログロノ橋)
力の流れ
(斜張橋のタワー)
歩道吊材+アーチの面外補剛
端部の吊材は橋台に固定
平面アーチ
力の流れが最短距離
造形美(美しさ)
構造美とは・・・
造形美の例(イゼール橋)
 構造的な合理性とシンプルな力の流れ
 力は最短距離を通って伝達
 曲線桁、非対称断面、桁高制限等の制約があると
きこそ構造美が問われる
 構造美を通して構造工学という「言語」でエンジニア
の思想や哲学を読みとることができる
先行施工部
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造形美の例(エブロ川橋)
Spielmann
(力学的に効率はいいが
造形的に難しい放射型)
フィーレンデール構造
遠景は・・・
桁下空間の制限
造形美が主になった例(ロアール川橋)
PC定着部
アーチ天端はレベル
側径間の曲げを
低減する脚
補剛リブ
ウェブ形状保持部材
アーチの軸力を受ける脚
桁のねじりを低減する脚
スパンドレルアーチではないため・・・
アラミヨ橋
Wp
温度変化による変形は・・・
アーチ水平力
主桁は一度支保工で支持
Wp:充填コンクリート重量
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カンポボランティン橋
磨りガラス
張力が入っていない吊材
補剛桁軸線
造形美とは・・・
Structural Eleganceの例(ブロトンヌ橋)
 主は機能美と構造美
 風土や民族が持つ特有の感覚が影響を及ぼし、主観
が入りやすい
 造形美は構造的に理由があることが理想
 感性を磨くためには構造的なバックグラウンドが前提
栄久庵憲司
広幅員1Box+1面吊の最適解
斜材の着色
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Structural Eleganceの例(かつしかハープ橋)
S字斜張橋
耐震補強後に・・・
変曲点
日本にも昔からStructural Eleganceはあった・・・
美しい橋とは・・・
浄土寺多宝塔(広島)
軒の反りと深さ
 機能美>構造美>造形美
 機能美は周辺環境との調和(用)
 構造美は合理性と力の流れ(強)
 造形美は構造的な理由付け(美)
 日本古来の美的感覚の喚起
貫
Structural Eleganceとは「雅」、「粋」・・・
聖橋(昭和2年)
名橋が名橋たる所以 → 時間
改修後
万代橋(1928年)
柳都(りゅうと)大橋
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余部鉄橋(明治45年)
アーチのキーストーン
時間はいかなる技術よりも優る・・・
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事例1:西谷高架橋工事
~ デザインビルド方式 ~
実際の新橋
西谷高架橋の設計
上部工:PC4径間連続ラーメン箱桁橋
下部工:RC橋脚(矩形柱)+場所打杭(深礎工法)
橋長:232m
幅員:10.75~18.7m
工期:平成19年7月~21年9月末
日経コンストラクション 2007.8.10
技術提案評価の概要
(技術評価点50点)
① 橋梁の耐久性に配慮した設計 35点
評価項目:「橋梁の維持管理費と橋梁の耐久性についての
考え方」の適切性
② 自然環境に配慮した施工計画 15点
評価項目:「自然環境に配慮した施工計画」の適切性
日経コンストラクション 2007.8.10
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設計条件
架橋位置は高野川と林道地芳峠線に挟まれた地点
技術提案(設計)において配慮すべきこと
施工条件
①河川
・河川区域内の工事は渇水期(11月~2月)の施工
①維持管理
②工事用進入路及び作業ヤード
・進入路及び施工ヤードは幅員4.0m程度の林道
②経済性
・維持管理を不要とする構造
・維持管理の容易な構造
・コストに優れた構造
③施工性
・自然環境(河川の水質・地形改変)に配慮した施工が可能な
構造
④自然環境への配慮
・地形改変の軽減を図った構造
景観への配慮
→
掛違い部のすり付け
全体一般図と完成予想パース
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アンカー式土留めによる地形改変量の低減
平面図・側面図
郡界川橋工事
郡界川橋工事
0.0
23+4 21
STA. 04.5
FH=1
0.0
31+4 21
STA. 20.5
FH=1
800000
140.00
130.00
計画高
120.00
110.00
DL
2. 80
D 3.
L 60
DH
DH
9. 90
CL
C L~C M
100.00
4
5
12
19
29
32
30
50 /24
31
50 /9
50 /11
50 /26
50 /11
50 /10
50 /4
50 /7
50 /4
50 /4
50 /2
50 /4
50 /1
50 /0
DL
DM
CM
CH
CM
80.00
DL
DH
CL18. 70
CH
CL
CH
CL
DL
60.00
県道
賀線
川志
加茂
DM
河川
一級
川 郡界
線
桑原
花沢
県道
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
交点高
40.00
20
N値
30 40
CL
CM
CL
CM
L
CL
R
CH
CM
CL
CH
CM
CH
1 .0 0
2. 05
DL
CL
DH
CL
CH
CM
DH
CM CL
CL
CH
CH CL
CM
CH
DM
CM
CL
CH
CM
DH
CC LM
CH
CM
45
5 0/10
5 0/9
5 0/0
5 0/0
5 0/0
5 0/3
5 0/0
00%
i=2.0
勾
132.53 121.321
132.40 120.921
126.48 120.521
96.69 118.921
121.16 120.121
114.85 119.721
84.51 118.521
107.11 119.321
20.000
STA.31 20.000
82.90 118.121
80.40 117.721
83.64 116.121
75.36 117.321
74.19 116.921
87.97 115.721
85.09 115.321
74.45 116.521
83.94 114.921
93.48 114.521
20.000
98.85 114.121
20.000
+80
94.58 113.321
+60
85.58 112.921
20.000
80.00 112.521
101.42 113.721
STA.28 20.000
84.70 112.121
20.000
+80
89.71 111.721
STA.27 20.000
20.000
90.33 111.321
20.000
+80
20.000
90.50 110.921
20.000
+60
+60
90.50 110.521
20.000
+40
+40
87.29 110.121
20.000
+20
60.60 108.921
79.88 109.721
STA.26 20.000
51.62 108.521
71.39 109.321
43.31 108.121
20.000
+60
20.000
47.50 107.721
20.000
+40
47.50 107.321
20.000
+20
64.50 106.921
20.000
STA.25 20.000
+80
80.40 106.121
86.54 105.721
STA.24 20.000
20.000
89.44 105.321
20.000
+80
+60
94.59 104.921
20.000
+60
75.90 106.521
104.73 104.521
20.000
+40
104.121
高
高
20.000
20.000
20.000
+80
+60
20.000
+20
+80
20.000
+60
20.000
20.000
+40
+20
STA.30 20.000
20.000
20.000
+80
+60
20.000
+40
20.000
+20
STA.29 20.000
20.000
+40
+20
20.000
+20
+80
20.000
+40
+20
離
20.000
離
点
20.000
距
STA.23 20.000
盤
加 距
単
+20
画
累
103.721
配
勾
配
測 点
CH
CM
C MCL
DL
5 0/1 1
CH
3.2
0
CM
~CH
CM
CH
CM
DM
16. 85
CL
50
曲線長
地
測
1. 55
50
1.
DL
CM
CL
CH
CL
CM
CH
C L 12 .35
C LD H12. 50
C LDH
DH
CM
CH
CM
0 10
3
19
50 /10
50 /7
50 /8
50 /4
50 /3
DH
CL
DM
8 .5 0
DL
DL
DH1 7.9 6
CL
CM
CH
支持層線
CL
2CM
.60
B-1(STA24+76.
0 CL)
GH=48.12m,D
L=11.0m
50.00
14
9
11
12
13
14
19
21
22
16
5 0/3
DL
DL
5. 45
70.00
計
CL
CM
桂野
市道
90.00
CH
CM
平線
九久
+40
事例2:群界橋工事
~ デザインビルド方式 ~
L= 4321.144
R= 3000
0.075 0.075
2.500%
2.500 %
平面線形曲率図
片こう配すり付図
84.00
75
B2-6(H12-基礎地盤)
90
15
91.47
95.15
R=
1
2号
調
整
87.6
85
3
NO.1
100
110
R=30
R=∞
郡
界
川
00
78.3
70
NO.27
池
134.81
57
線
県道 花沢桑原
00
83.5
86.6
NO.1
87.98
NO.12
67.51
64.60
50.4
43.7
56.4
+40. 000
+ 80.0 00
90
132.37
80
郡 界 川
98.20
79.77
47.7
+6 0.000
BV-3(IV-H16-日さく)
NO.10
94.94
B2-1(H12-基礎地盤)
75
54.3 4
R=20
56.77
64.94
+ 80 .00 0
B2-2(H12-基礎地盤)
95.35
5 3.53
71. 21
97.51
100.60
NO.28
B-1(H18-シマダ技術)
+20 .000
53. 64
59.14
91.35
95
ST A.31
+ 60.0 00
ST A.3 0
+20. 000
84.54
69. 94
B1-7(H8-ソイルエ)
94.96
B2-7(H12-基礎地盤)
B1-3(H8-ソイルエ)
+ 40.0 00
+8 0.00 0
+60 .000
+40 .000
+ 20.0 00
STA .29
+ 40.0 00
+6 0.0 00
+ 80.0 00
+20 .000
STA .28
+ 80.0 00
+40 .000
BV-4(IV-H16-日さく)
74.22
R=∞
B1-1(H8-ソイルエ)
B1-2(H8-ソイルエ)
88.02
8 3.21
95.12
105.00
107.50
40.0
.31+ 21
STA 20.5
FH=1
NO.8
90.37
59.27
70
90
104.74
109.47
115.27
123.18
110.27
91.03
B2-5(H12-基礎地盤)
NO.7
BV-2(IV-H16-日さく)
+6 0.0 00
+ 20.0 00
S TA. 27
+8 0.00 0
+40. 000
+20. 000
STA .26
+80. 000
90.57
55
72.33
ST A.25
+ 60.0 00
+ 40.0 00
+20.0 00
S TA.2 4
+ 94.0 00
110
100
+ 80.0 00
+6 0.000
+4 0.000
12 0
+ 20.0 00
85.06
51.70
45.35
NO.9
85.76
92.71
+8 0.00 0
85
95.72
+40. 000
120
80
99.50
108.18
59.71
+20. 000
4 9.63
6 7.81
70. 61
80.02
86.24
+60 .000
60
78.1 5
76.80
91.50
+6 0.00 0
67. 30
81.09
87.86
94.80
99.77
106.18
120.64
77.16
B2-4(H12-基礎地盤)
BV-1(IV-H16-日さく)
60 .64
110.50
70.21
81.01
B2-3(H12-基礎地盤)
75.10
80
124.91
R=15
70
80
NO.6
65
140
76.09
70
m
.000
L=20
79.40
所 0.0
23+4 21
STA. 04.5
FH=1
待避
103.78
ST A.23
85
郡界川橋工事 800000
90.56
61.15
69.44
115.94
+80. 000
75.94
49.0
111.30
128.91
R=∞
61.81
136.77
112.18
58.1
41.6
75
56.7
線
・宮石
奥殿
市道
4
138.9
NO.1
事業者案
4径間+7径間
コントロールポイントで100m以上の支間が必要.
渡河部はPC波形ウェブ箱桁橋.
山岳部は80mのPC箱桁橋.
P4橋脚上で掛違い.
1室箱桁のストラット構造を採用.
11
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DB案 7径間
工期短縮が最優先 → 全橋脚同時施工.
架設作業車の保有台数が径間数に影響.
維持管理性の向上 → 全橋脚をラーメン化.
1室箱桁のストラット構造を採用.
軽量化のための斜めウェブ. → 橋脚幅の低減
現況
表-1 数量の比較
単位
主桁コンクリート
m
波形鋼板
t
橋脚コンクリート
橋脚コンクリ
ト
m
3
事業者案
16,900
DB案
18,340
(1.00)
3
基礎杭コンクリート m3
(1.085)
350
-
(1.00)
(
8,690
-
)
5,960
(1.00)
(0.686)
13,470
10,250
(1.00)
(0.761)
※( )は比率を示す。
10ヶ月の工期短縮.
落札率は91%.
12
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今日のまとめ
• 橋の美しさには三つの要素がある。
• 機能美は、道路・鉄道など本来の機能や、調和・環境
負荷低減などの機能に基づく美しさ。(用)
• 構造美は、構造的合理性やシンプルな力の流れが
重要。(強)
• 造形美は、構造的に説明できることが必要。(美)
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