振り込め詐欺の社会心理学 振り込め詐欺の社会心理学 - 静岡県立大学

振り込め詐欺の社会心理学
一時的マインド・コントロールの検討
時的 イ ド
ト
検討
西田公昭
静岡県立大学看護学部
秋山 学
神戸学院大学人文学部
1
(本研究はNHK社会部の協力を得た)
問題
 「詐欺」とは、他人をあざむいて錯誤に陥れ、
「詐欺」とは 他人をあざむいて錯誤に陥れ
意思決定や行動を誘導することといえる(西田
,2007)。それには様々な内容や手口が見られ、
) それには様々な内容や手口が見られ
流行のように時世とともに変化・巧妙化すると
い た特徴がある
いった特徴がある。
 電話の相手に心理操作されて被害を受けている
振り込め詐欺は 昨年だけ 約 億円も 被害
振り込め詐欺は、昨年だけで約250億円もの被害
が出た。そこで本研究では、その被害者心理を
実証検討した。
実証検討した
2
方法
 質問紙法による自筆式無記名の調査
 実施時期:2008年12月
 対象者:全国の振り込め詐欺被害者61名であっ
た。その内訳は、オレオレ詐欺39名、還付金詐
39
欺15名、融資保証金詐欺6名、架空請求詐欺2名の
被害者であった。
 なお、この調査はNHK社会部との共同で実施し
た。
3
「振り込め詐欺」のリスク認知
Q「振り込め詐欺」の認知
十分対策していたから
24.6
10%
いいえ
はい
90%
Q
被害にあうと思っていたか?
8%
92%
4
思っていなかった
あまり思っていな
かった
相談者が たから
相談者がいたから
61.5
対抗する能力に自信
79.2
状況認識があったから
81.3
リスク確率の低い認知
89.1
0
100
肯定率(%)
被害を想定しなかった理由
タイプ別の認知度
6
60
55.7
オレオレ詐欺
50
架空請求詐欺
41.4
融資保証金詐欺
40
ー
パ
還付金詐欺
29.5
セ 30
ン
ト
25 24.1
8
18.3
20
15.3
12.1
10.2
10.3
66
6.6
0
何も知らなかった
5
25.4
15
8.2
10
25
86
18.6
16.7
12.1
0
30.5
名前だけ認識
少しは手口を認識 大体は手口を認識
よく手口を認識
タイプ別被害件数
45
40
39
35
30
25
件
数 20
15
15
10
6
5
2
0
オレオレ
6
架空請求
融資保証
還付金
被害者の日常心理
不安なことがあるときすぐ解決しないと気が済まない
平日の昼間、身近に気軽に相談できる人がいる
ATM機械の操作は苦手である
詐欺に遭うなんて運が悪すぎると思う
もしも私と話している人が泣き出したら、私も涙がこぼれそうになる
私はほかの人より用心深い方だと思う
相手が警察官や役人だと少しおかしいと思っても逆らえない
待ち合わせの時間に遅れる人を待つのは苦手だ
相手の人柄をすぐに見抜くような眼力がある
どんな時も人に嫌われないように振る舞う
P<.05
意見が合わないときは相手に譲ることが多い
肩書きのすごい人には気おくれして話しかけにくい
還付金詐欺
不安でイライラしている人がそばにいると、私も緊張する
電車やバスが少しでも遅れるとイライラする
P<.05
オレオレ詐欺
喜怒哀楽が激しくてマイペースを乱しがちである
7
1
1.2
1.4
平均値(1:あてはまらない
1.6
1.8
2
2:ややあてはまる
2.2
2.4
3:あてはまる)
2.6
オレオレ詐欺の電話受信時の心理
Q 電話の声を聞けば、本物の
電
を聞 ば
物
家族や身内の声なら聞き分
けられると思っていた
けられると思っていた。
声が本人と似ていると
思った
3.3 話のつじつまがあって
いた
3.0 焦った
33%
2.9 驚いた
2.8 不安になった
いいえ
97%
はい
2.7 何も考えられなくなっ
た
怖くなった
2.2 2.0 1 0 1.5 1.0 1 5 2.0 2 0 2.5 2 5 3.0 3 0 3.5 3 5 平均値
8
(1:いいえ:2:少し 3:かなり
4:とても)
受信時の不審感
すぐに行動するよう
急がされた
1.0 誰の声かはっきりと
聞き取れなか た
聞き取れなかった
0.8 誰にも言わないよう
口止めされた
0.8 振り込み理由を
指示された
0.4 振り込みに使う機械の
場所を指示された
0.4 自分から名前を
名のらなかった
0.8 0 8 0.0 0.5 1.0 平均値
9
(0:事実なし
1:疑わなかった
2:少し疑った
3:疑った)
送金前の対処行動と心理
かかってきた電話番号に掛け直した
き 電話番号 掛け
64.1
急いでお金を振り込む以外の
ことを考える余裕がなかった
64.1
誰にも気づかれないようにお金を用意した
40
誰かに相談するのは恥ずかしいと感じた
30.8
家族や親しい人に相談した
25.6
振り込みや送金のとき、詐欺ではないかと
他の人から注意をされた
20.5
振り込みや送金のとき、詐欺かもしれないと
心によぎり、ためらった
12.8
かかってきた電話番号とは違う方法で
本人に連絡をつけようとした
5.1
警察に相談した
2.6
0
10
20
40
肯定率(%)
6
60
8
80
送金した理由
まったく疑わず、完全に
信じ込んでしまったので
82.1
自分が知っていた振り込め
詐欺の手口と違っていたので
38.5
「おかしい」と思う気持ちが薄れてきて、自分で
「本当だ」と思いこむようになってしまったので
43.6
電話の内容や振り込む場所が
かなり具体的だったので
35 9
35.9
0
11
50
肯定率(%)
100
考察
被害者は、不意に仕
掛けられ、かたりの
電話の声を本人と錯
誤した。
2. その上、情緒的に動
その上 情緒的に動
揺させられるといっ
た心理操作を受け
た。
3. 疑いをあまりもたな
いまま急ぎ指示に
従った。
1.
12