朗読家 原 きよさん在学中はアナウンスメント研究会での活動のほか

INTERVIEW with OB・OG
教 養のたね
教授の研究紹介
獄跡に建設されていることも、決して偶然ではありません 。
﹁ 劇 場 国 家 ﹂フランスから 学べるこ と
去る 月、パリをはじめとするフランス各地で、サルコ
します。都市空間は、力と力がぶつかり合う極めて劇的な
レードでは、大統領参列の下、戦車が轟音と共にデモ行進
はご存知でしょう。この石畳の上を、革命記念日の軍事パ
そう言えば、日本にも﹁小泉劇場﹂という小さな芝居小屋が
きた過程が実感できるはずです。
を支えて、フランスという国家のダイナミズムを形成して
してみると、こうして権力が文化を取り込み、文化が権力
フランス 世紀の演劇やオペラの作品を観たり読んだり
場なのです。
あ り ま し た ね。権 力 と 文 化 の関係 に ついて、フラ ン スは私 た
ジ政権の年金改革に反対する大規模なデモが行われたこと
劇的な空間といえば﹁劇場﹂。
﹁演劇の時代﹂と呼ばれる
ち日本人に多くのことを気づかせてくれます。また、学生時
演劇好きなフランス人から学べること
み方をぜひ身に付けてほしいと思います。
事の歴史的背景にも考えを巡らせる楽し
代 に は、こ の よ う に 日 常 で 見 聞 す る 出 来
世紀のフランスでは、劇場は政治と文化の二つの世界が
重なり合い、様々な力がせめぎ合う、
特権的な空間でした。
世紀は、太陽王ルイ 世の絶対王
政が確立し、
ヴェルサイユ宮殿が建立
は他にもあります。変化する自分を楽し
み、多くの選択肢の中から自分の可能性
心とする新興勢力が、彼らのものである言葉を武器に、劇
出します。一方、パリでは法曹関係のブルジョワジーを中
オ ペラ﹂さながらの劇場 空 間に仕立てあげ、王権神話を演
学生時代にはあらゆる人間関係において自分をつくり出
る力﹂をフランス人から大いに学べるのではないでしょうか。
は強く自覚しています。
﹁自分を主張する力﹂
﹁自分を表現す
よ う と す る。
﹁自分づくり﹂のための﹁演劇性﹂をフランス人
を開花させるものを見つけだして、人生をより楽しく生き
場を表象空間として支配し始めていました 。こうした劇空
し、ぶ つ か り 合 い、自 分 に 真 摯 に 向 き 合 い な が ら 様 々 な こ
後 期 課 程 修 了。1998年
は17世 紀フランス演 劇。
学 DEA 修 了。専 門 分 野
主な論文に「新たなる聖王
神 話と神 学」
(
『ラシーヌ
劇の神話力』上智大学出
!
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感 情 的 な 表 現に 慣 れ ず 、とても 戸
惑いました。しかし、練習を重ねる
中で、作 品の世 界 観 を 深 く 理 解で
きるようになったとき、自然と登場
人 物の気 持 ちに 沿った 声 が 出 る よ
うになったんです。人の心を打つよ
う な 朗 読 を す る た めに 、こ れか ら
も学び続けることを忘れません。
将来の方向性を定める 年 間
では目標に向けて挑戦する際の後
大学生活は将来への方向性を定め
できました。
何事も学ぶ気持ちを忘れない
「Racine et
版、2001年)、
る大切な時間です。私はサークルの
ほか、
﹁キリスト教学﹂や福田靖先生
ち を 持 ち 続 けていま す 。特に 朗 読
様々な仕事に対して常に学ぶ気持
意 し た と き は も ち ろ ん 、現 在 の
ビ局を退社し、アメリカへ留学を決
いつまでも学び続けたい 。テレ
に、そして好きなことに地道に挑戦
ばなければいけません。自分に素直
います。誰しもいつかは進む道を選
を見つけられた私は幸せだったと思
に触れ、 この 道 だ と将来の指針
野は多岐に渡ります。多分野の物事
興味本意から勉強に打ち込んだ分
“
は、作品をただ読むだけではなく、
のゼミナールでの﹁ 貿易実務﹂など、
作 家に 縁のあ る 土 地 やエピソー ド
して得られる自信と経験が、あなた
といったバックグラウンドをきちん
の背中を押してくれるはずです。
シューマンを題材にしたサスペンスミステリー。
ストーリー
され、フランスがヨーロッパの政治経
済的中心地として君臨しようとした
時代 。ルイ 世はヴェルサイユという町全 体 を﹁バロック・
間を基盤として、大革命を乗り越えて三世紀を経ていまも
と に チャレ ン ジ し て く だ さ い。
﹁人 生 は ショー タイ ム ﹂
なのですから。
パリ第 四・ソルボンヌ大
基 本 中の基 本 。最 初 は 台 詞 な どの
院人文科学研究科博士
押しになる貴重な糧を得ることが
らしてくれたのも事実です。西南
1988年学習院大学大学
と 学 ぶこ と が 重 要です 。その学 び
”
“
”
が 朗 読の深みに 繋 が り 、そ れ が 聞
き 手の興 味 を 引 き 出し ま す 。そし
て、朗読ではアナウンサー時代に培
った﹁綺麗に話す﹂力よりも、言葉
だけで作品のイメージ を どれだ け
聞き手に膨らませてもらえるかが
-Royal」
(Paris, Chroniques
文学部外国語学科フランス語専攻教授
de Port-Royal, 2006年)
等。
下 弘子 ましも ひろこ
の面白さもさることながら、
ピアニストを断念したシューマ
ンの哀しみがラストに滲む作品。シューマン生誕200周
朗 読を始めたてのころ、
アナウンサー時 代の話し方が抜けず、悩んでいた私に
なお機能する中央集権的システムが形成されていきます。
活動に多忙な日々
!
!
文学部外国語学科
英語専攻主催によ
る
『 講演と朗読ライ
ヴ』
を本学で実施。
原さんの在 学 中の
エピソードを交えつ
つ、
最後には太宰治
作品の朗読を披露
してくれました。
パリのオペラ座が、仏革命の発端となったバスティーユ監
サークルや
高校生のころから放送の世界を
夢見ていた私は、大学入学後、迷わ
ず﹁アナウンスメント研究会﹂の門
を叩きました。大学祭の司会やラ
ジ オ 番 組の制 作 といった サークル
活動のほか、憧れだったFM局のD
J の 仕 事 に も 携 わ り 大 忙 しの 毎
日。そんな中でも、チャペルだけは
欠かさず出席していました。講話
を聞くことが好きで、ゆとりのな
い時でもチャペルの厳かな雰囲気で
心が休まる気持ちがしたのを鮮明
に覚えています。また、昔から好奇
心が旺盛で、自分の直感に素直に
行動し、実現させたいことは自然
と口に出すのが性分でした。少し
19 8 9 年 文学部外国語学科英語専攻卒業
年記念の書き下ろし本。
「自分に素直に読みなさい」と現在の朗読の先生からアドバイスをいただきまし
座右の銘
大分舞鶴高等学校出身。高校時代に所属した放送部の活動をきっかけに読むこ
と・伝えることの楽しさを知る。本学卒業後は株式会社大分放送(OBS)
にアナウ
ンサーとして入社。93年に同社を退職後、放送専門学校に通うためにアメリカ・ボ
ストンへ留学。
その際「朗読」
と出会い、帰国後はフリーアナウンサーとしての活動
の傍ら、太宰治作品の朗読を中心に活躍中。太宰治原作の映画「ヴィヨンの妻
∼桜桃とたんぽぽ∼」
では、
メイキング番組にて原作朗読で参加されました。
p r o f ile
原 きよさん
奥泉光著 : 講談社
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在学中はアナウンスメント研究会での活動のほか、FM福岡にてDJも務めたほどの積極派。
現在は東京を拠点に、武蔵野三鷹ケーブルテレビでのキャスターのお仕事や、
朗読家として各地で公演を行うなど、卒業後もアクティブに活躍されています。
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欲張りだったのかも
︵笑︶
。でもそれ
第 136 回
l' h u m a n i s m e d e P o r t
音楽好きな真下教授がロマン派のなかでも特に好きな
原さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「言葉で出逢う人と人」http://www.kizzna.fm/program/id-202
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が自分にとって多くの好機をもた
こんにちは 先 輩
『 シューマンの指』
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「自分に素直に」が基本。
人の心を打つ朗読のため
日々学ぶ姿勢を忘れない。
D
J
神話へ―聖史劇における
大学生の前での講話や朗読はとても緊張したと
いう原さん。
「この講座では、朗読に触れてもらう
だけでなく、
これまで私が経験したことをお話し
し、
そこから将来の夢や目標へのヒントを何か感
じ取ってもらえたら嬉しいです」。
原 きよさん
フリーアナウンサー、朗読家
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17 世紀のフランス語辞典 。真下教授が
17 世紀フランス文学・演劇を研究する
きっかけになったジャン・ラシーヌ『アンド
ロマック』を読み解くために購入した。
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た。仕事も私生活も自分らしさを大切にすることが私のモットーです。