インドネシア・ジャカルタ並びにベトナム・ハノイ及びホーチミンにおける大量高 速輸送機関(MRT)導入 株式会社 三菱総合研究所 2012年2月 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 対象路線: ジャカルタ南北線 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 2 Source:PT MRT Jakarta 対象路線:ハノイ市都市鉄道1号線・2号線 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 3 対象路線:ホーチミン市都市鉄道1号線 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 4 リファレンスシナリオの設定 各国の交通政策マスタープランに、いずれの路線も位置づけられている。 • インドネシア国NAMAでは、運輸部門において“低排出型交通モードへの転 換”に言及がある。 政策面 しかし、 資金面 (収益性)MRT新規導入は多額の投資を要し、一般的に収益性が低いとされる。 (資金調達)円借款供与が決定しており、ホスト国資金のみでは困難である。 技術面 MRT新規導入には、先進国による技術協力が不可欠である。 よって、 本件におけるリファレンスシナリオとしては、円借款や技術協力のない場合を想定する。 すなわち、現在の状況が継続しMRTが無いとする、Buisiness-As-Usual(BAU)シナリオをリ ファレンスシナリオとして採用するのが妥当である。 5 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. バウンダリの設定 バウンダリの設定方法として、下記の3つの考え方がある。 • オプション 1: A ・・・ MRT運行区間の交通のみを対象とする。 • オプション 2: A+B ・・・ オプション1に出発地/目的地と乗降駅を結ぶ交通を加えて対象とする。 • オプション 3: A+B+C・・・ オプション2に近隣道路交通量への影響を加えて対象とする。 出発地 乗車駅 (A) MRT MRTで発生する交通量 降車駅 到着地 オプション 1 (B) 「出発地から駅へ」/「駅から到着地」の交通で発生する交通量(端末需要) オプション 2 近隣道路 (C) 近隣道路交通量への影響(誘発需要) オプション 3 ※本件では、オプション1を適用し試算を行った。 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 6 方法論の基本的な考え方 リファレンスシナリオ: MRTがない バス・バイク・車等による代替交通が想定される。 MRT A駅 MRT B駅 人・Km × 人・kmCO2原単位 [PKM] [tCO2/PKM] (輸送量) バウンダリオプション 1 2つのシナリオにおける排出量の差を削減量とする。 プロジェクトシナリオ : MRTがある MRT B駅 MRT A駅 電力消費量 × 電力CO2原単位 [kWh] [tCO2/kWh] バウンダリオプション 1 7 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. モニタリング手法・計画 モニタリングコスト低減のため、固定値またはデフォルト値を用いる選択肢を用意 * Parameter Method to measure Frequency Measurement? RE 総輸送量(人・Km) 交通系ICカードシステムに基づくOD表 随時 実測 RE 駅間距離 路線図等にから把握 運行開始時1回 固定値 RE モーダルシェア (1) 既存パーソントリップ調査 運行開始時1回 固定値 (2) 乗降客アンケート調査 運行開始時1回 実測 (3) 交通量調査結果 運行開始時1回 実測 RE 燃料種別CO2原単位 IPCC公表値等から把握 運行開始時1回 デフォルト値 RE 平均燃費 (1) 既存調査 運行開始時1回 固定値 (2) 燃料消費量・走行距離調査 年一回 実測 PE 電力消費量 電力会社からの購買伝票 検針毎(月一回程度) 実測 PE 電力CO2原単位 IEAまたは現地当局公表値から把握 年一回 デフォルト値 * • • RE:リファレンスシナリオの排出量推計のためのパラメータ, PE :プロジェクトシナリオの排出量推計のためのパラメータ 測定・報告: 報告を行う主体としては、ホスト国側のプロジェクト実施者と日本の実施者の双方の協力が 必要である。 検証: プロジェクト実施の事前・事後に実施する必要がある。また検証実施機関の育成が必要である。 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 8 ホーチミン1号線 排出削減ポテンシャルの評価 ホーチミン1号線 MRTで発生する交通量のみ対象とする(バウンダリオプション1) Items Value Remarks ベースライン排出量 総利用者数 620,000 人/日 現地実施主体(ホーチミン市人民委員会 都市 鉄道管理局:MAUR)による2020年推計値 輸送量(人・Km) 7,262,612 PKM/日 上記データ及び、2015年予測値の駅間OD表 (出典: 日本工営 2010)より推計 推計対象 2020年 輸送量(人・Km)ベースのモーダル シェア バイク 89.9%, 車 2.8%, バス 7.3% MRT運行距離 19.7 km 駅数 14駅 2020年予測値 (出典: JICA HOUTRANS調査 報告書)より推計 プロジェクト排出量 MRTの消費量電力量 46,078 MWh/year 系統電力CO2原単位 0.409 tCO2/MWh 2,339 MWh/km/year * 19.7 km 出典: IEA ※HOUTRANS調査・・・「ベトナム国ホーチミン都市交通調査」(実施:2002~2004) ベースライン排出量 135,925 t-CO2/year プロジェクト排出量 21,440 t-CO2/year 114,485 t-CO2/year 排出削減量 9 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. ハノイ1号線 排出削減ポテンシャルの評価 ハノイ1号線 MRTで発生する交通量のみ対象とする(バウンダリオプション1) Items Value Remarks ベースライン排出量 総利用者数 543,772 人/日 JICA HAIMUD調査を元にした、現地実施主体(ベ トナム鉄道総公社:VNR)による2030年推計値 輸送量(人・Km) 5,499,158 PKM/日 2030年予測値の駅間OD表(出典:同上)より推計 推計対象(年) 2030 輸送量(人・Km)ベースのモーダルシェ ア バイク 50.9%, 車 27.1%, バス 21.9% MRT運行距離 28.0 km 駅数 16 駅 2020年予測値(出典:JICA HAIMUD調査報告書) より推計 プロジェクト排出量 MRTの消費量電力量 65,492 MWh/year 2,339 MWh/km/year * 28.0 km 系統電力CO2原単位 0.409 tCO2/MWh 出典: IEA ※HAIMUD調査・・・「ハノイ市におけるUMRTの建設と一体となった都市開発整備計画調査」(実施:2009~2010) Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. ベースライン排出量 144,246 t-CO2/year プロジェクト排出量 30,473 t-CO2/year 排出削減量 113,772 t-CO2/year 10 ハノイ2号線 排出削減ポテンシャルの評価 ハノイ2号線 MRTで発生する交通量のみ対象とする(バウンダリオプション1) Items Value Remarks ベースライン排出量 総利用者数 535,000 人/日 出典: JETRO 「ベトナムインフラマップ」(2011)等 輸送量(人・Km) 5,151,141 PKM/日 JICA HAIMUD調査報告書における各駅利用 者数予測(2020)より推計 推計対象(年) 2020 輸送量(人・Km)ベースのモーダルシェ ア バイク 50.9%, 車 27.1%, Bus 21.9% MRT運行距離 27.7 km 駅数 16 駅 2020年予測値(出典:JICA HAIMUD調査報告 書)より推計 プロジェクト排出量 MRTの消費量電力量 64,790MWh/year 系統電力CO2原単位 0.409 tCO2/MWh 2,339 MWh/km/year * 27.7 km 出典:IEA ※HAIMUD調査・・・「ハノイ市におけるUMRTの建設と一体となった都市開発整備計画調査」(実施:2009~2010) ベースライン排出量 135,117 t-CO2/year プロジェクト排出量 30,147 t-CO2/year 排出削減量 104,970 t-CO2/year 11 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. ジャカルタ南北線 排出削減ポテンシャルの評価 ジャカルタ南北線 MRTで発生する交通量のみ対象とする(バウンダリオプション1) Items Value Remarks ベースライン排出量 総利用者数 629,900 人/日 輸送量(人・Km) 4,903,193 PKM/日 推計対象 2037年 輸送量(人・Km)ベースのモーダルシェア 現地実施主体(MRT Jackarta)による推計値 バイク 52.5%, 車 23.3%, バス 24.2% MRT運行距離 23.3 km 駅数 21 駅 2010年実測値(JICA Jabodetabek都市交通政 策統合プロジェクト予備調査結果としてインド工営 より提供) プロジェクト排出量 MRTの消費量電力量 46,078 MWh/year 2,339 MWh/km/year * 23.3 km 系統電力CO2原単位 0.757 tCO2/MWh 出典: IEA Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. ベースライン排出量 154,380 t-CO2/year プロジェクト排出量 46,511 t-CO2/year 排出削減量 107,869 t-CO2/year 12 持続可能な発展への貢献 MRT新規導入によって起こる自動車から鉄道へのモーダルシフトにより、以下に述べる ような好影響が期待できる。 1. 渋滞緩和 移動時間や走行経費、交通事故率の改善による経済的損失の防止 2. 大気汚染対策 生活環境の改善による健康面での損失の防止 3. 増加する交通需要への対応 都市部の人口急増等の問題に対応した持続可能な都市開発への貢献 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 13 今後の展開 二国間メカニズムをMRTプロジェクトに適用するにあたっては引き続き検討が必要である。 交通量調査の必要性 既存の交通量調査結果のデータを用いてデータの利用可能性を検証したが、一部データは入 手不可能または未更新であるため追加調査が必要である。 他のバウンダリオプションでの検討 本件ではバウンダリオプション1に基づいた削減量試算を行ったが、他のバウンダリオプションについ ては更なる検討が必要である。 バウンダリオプション2, 3により広がる対象をどのように推計するかを検討し、各オプションの削減 量試算値の妥当性を確認する必要がある。 MRVの詳細設計 MRTプロジェクトにおける算定・報告義務をどのような機関に課すべきか、検証はどのような機関 が実施するのが良いかといった点について具体的に検討を行う必要がある。 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 14
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