共重合ポリカーボネート系ポリウレタンの凝集構造と力学物性 1 大学院院生産科学・物質工学専攻、2 工学部材料工学科 野中祥照 1、江頭 満 2、椎葉哲朗 2、小椎尾謙 2、古川睦久 1 Email: [email protected], Phone&Fax: 095-819-2651 1. 緒言 ポリウレタンエラストマー(PUE)の原料として汎用されているポリカーボネート(PC)系ポ リオールは耐熱性や耐加水分解性等に優れるものの、原料であるポリオールが高い結晶性を示す、低 温特性に劣るといった問題がある。PC 系ポリオールの強い結晶性は、主鎖に不規則性を導入するこ とにより抑制することができると考えられる。本研究では、主鎖への不規則性の導入により結晶性を 緩和させた、繰り返し単位内のメチレン炭素数が C6 および C4 の共重合組成比の異なる新規のランダ ム共重合 PC 系ポリオールを用いて PUE の合成を行い、共重合組成比が凝集構造と物性に与える影響 を評価することを目的とする。 2. 実験 原料として、ポリ(テトラメチレン-co-ヘキサメチレンカー 1.3 ルメタンジイソシアネート(MDI、日本ポリウレタン工業(株)製)、 1.2 1.1 K=[NCO]/[OH]=3.05、 2.05 として数分間攪拌混合し、プレポリ 100 (JIS-A) うに加え攪拌混合し、110℃の遠心成形器に注型して 1 時間、脱 Hardness 1,4-ブタンジオール(BD)を用いた。PUE シートは、配合比を マーを得た後、BD を NCO INDEX=[NCO]pre/[OH]=1.05 となるよ 型後 100℃で 24 時間鎖延長反応させて得た。得られた PUE につ 的粘弾性測定、引張試験による応力-ひずみ関係の測定を行った。 3. 結果と考察 図 1 に、PC 系 PUE の密度、硬度、膨潤度、Tg、 2.5 1.5 -10 共重合組成比の増加に伴いカーボネート基濃度が増大し、カーボ (℃) Tg の配合比 K=3.05、2.05 の試料において、密度、硬度、Tg および ネ―ト基中の分極したカルボニル基間の相互作用が増大したため (℃) ∆Tg リオール成分であるソフトセグメント含量が K=3.05 よりも多い ためである。一方、膨潤度は、カーボネート基濃度の増加に伴い、 重合組成比の増加とともに減少した。すべての試料において、ソ フトセグメントに由来する Tg が-20∼-10℃付近にみられ、∆Tg は C4 共重合組成比と配合比の増加に伴い減少した。また、ハードセ グメントの融解に基づく吸熱ピークが 200℃付近にみられ、C4 共 重合組成比の増加に伴い高温側にシフトした。 これらの結果より、 30 20 20 Young’s modulus (MPa) ソフトセグメント鎖とベンゼンとの親和性が低下するため、C4 共 -20 -30 40 と考えられる。さらに、これらの物性値の C4 共重合組成比依存 性は、K=2.05 の試料が顕著であったが、これは K=2.05 の方がポ 80 3.5 ∆Tg およびヤング率の C4 共重合組成比依存性を示す。PC 系 PUE ヤング率は C4 共重合組成比の増加に伴い増加した。これは、C4 90 70 4.5 Degree of swelling いて、示差走査熱量(DSC)測定、硬度・密度測定、膨潤試験、動 K=2.05 K=3.05 (g/cm3) 50/50、70/30、90/10、Mn=2000、旭化成(株)製)、4,4’-ジフェニ Density ボネート)グリコール(4602、4652、4672、4692、C4/C6=0/100、 10 0 0 20 40 60 80 100 C4/C4+C6 (%) C4 共重合組成比と配合比の増加に伴い相分離が進行することが Figure 1. C4 composition dependence of 明らかとなった。 properties of PC based PUEs. 以上の結果より、C6 に C4 を 50 および 70%共重合させることにより PC 系ポリオールの結晶性の 抑制が可能であった。また、これらのポリオールから得られた PUE は C4 共重合組成比の増加に伴い カーボネ―ト基濃度が増加し、分子鎖間の凝集力が増大するために柔軟性に劣るものの、力学物性に 優れることが明らかとなった。
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