アセットマネジメントに対する水コン協の取り組み - 全国上下水道

水坤
寄稿
■1.はじめに
アセットマネジメントに対する
水コン協の取り組み
池田信己
技術・研修委員会委員長/オリジナル設計㈱ 道事業とアセットマネジメント」
2010 年6月:下水道におけるストックマネジメン
我が国における上下水道施設のストックは、約
ト手法の構築に向けた基礎調査に関する(財)下水
120 兆円に達しており、今後これらの膨大な資産
道新技術推進機構との共同研究(米EPAで推奨の
を適切・効率的に管理・運営することが、事業の
AM の基本プロセスの研究)
持続において大変重要な課題となって来ている。
2012 年4月:「持続可能な下水道をめざして」の
アセットマネジメント(以下 AM と略す)の現
パンフレット発行 行法令上の事業主体は、水道においては、主に、
2012 年9月:関西支部 夏期講座 「持続可能な
事業管理者、下水道では首長等であり、コンサル
下水道を目指して」他2篇
タントは、種々の形態で、水道事業体や下水道部
2012 年、2013 年:下水道展にて AM パネルの展示
局等の AM(事業)支援業務を行うことになる。
及び説明
以下に水コン協としての AM に関しての(1)
2013 年度:下水道分野における ISO55001 適用ガ
水コン協としての取り組み事例(研究・啓発活動)
イドライン検討委員会(国)に参画
(2)水コン協会員会社のAM関連業務への取り組
以上のように、基礎となる海外の AM マニュア
み(3)これからの AM への取り組み姿勢につい
ルの研究、講演会、ワークショップ、パネルディ
て、を記述する。
スカッションの開催、パンフレット作成、下水道
展展示などの幅広い取り組みを行っている。なお、
■2.水コン協としての取り組み事例
(研究・啓発活動)
最近の主な取り組み事例を列挙する。
2006 年:IIMM(International Infrastructure
Management MANUAL)の翻訳
これらの活動に関して、技術・研修委員会の中に
ある AM 小委員会によるところが大きい。
■3.水コン協各社の AM 関連業務の取り組み
AM 関連業務の領域は広いが(1)指針・手引
(IIMM は、イギリス、アメリカ、南アフリカ、ニ
き策定等への参画(2)AM を実践する仕組みづ
ュージーランド、オーストラリアの各国が協力し
くり等のアドバイザリ業務(3)更新需要の把握、
て作成した、LCC最小化したサービスを地域社会
財政計画の立案等(4)地方公営企業会計移行支
に提供するためのもの)
援業務 (5)データベース構築業務に分けて説明
2007 年1月:第 14 回パネルディスカッション する。
「上下水道におけるアセットマネジメント」
2008 年2月:第2回 ワークショップ 「下水道
(1)指針・手引策定等への参画
事業とアセットマネジメント」
水コン協受託業務(支援業務)
2010 年1月:第3回 ワークショップ 「上下水
2009 年6月:下水道長寿命化支援制度に関する
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手引き(案)の改訂
② 下水道事業における長寿命化計画の策定業務
2011 年9月:下水道施設のストックマネジメン
下水道長寿命化支援制度に関する手引き(案)
ト手法の手引き(案)の策定
(国土交通省 H21.6)に則り、業務を行っている。
2012年~2014年:下水道維持管理指針(下水協)
管渠施設は、布設替えや更生工法の判断、処理場・
の改定
ポンプ場施設は、機器ごとの交換や主に更新需要
2013 年6月:下水道管路施設の点検・調査マニ
の年次計画立案を行い、一年間の財政シーリング
ュアル(下水協)の策定
枠に応じて改築更新計画を立案している。耐震化
会員会社支援業務
は整合性をとるものの、別途業務となっている。
2011 年7月:水道事業におけるアセットマネジ
2013 年9月には、「ストックマネジメント手法
メント(資産管理)に関する手引き
を踏まえた下水道長寿命化計画策定に関する手引
2013 年9月:ストックマネジメント手法を踏ま
き(案)」が発刊されたが、今までは、下水道施設
えた下水道長寿命化計画策定に関する手引き
の一部分で長寿命化計画が策定されていたが、今
(案)
後、施設全体または事業全体を見ながら、改築、
2013 年6月:簡易支援ツールを使用したアセッ
更新計画を立案することになった。また、長寿命
トマネジメントの実施マニュアル(水道)
化計画の拡張として、目標設定を行い、リスクを
等
踏まえたストックマネジメント策定業務の受託も
始まっている。
(2)AM を実践する仕組みづくり等のアドバイ
ザリ業務
(4)地方公営企業会計移行支援業務(簡易水道・
下水道の一部)
一部の会社では、AM を実践する仕組みづくり
として、導入戦略、AM 組織の提案、目標やリス
AM を導入する目的の一つに、経営の健全化が
クの考え方、更新需要の把握方法、AM システム
考えられる。
の導入、職員の意識改革方策などを、先進事例を
企業会計に移行することにより、資産の状況や
踏まえて、レポートにまとめる業務を受託してい
年間の会計収支が明確となり、将来の改築・修繕
る。
計画を踏まえた経営判断ができるようになるた
あくまでも、導入検討の段階であり、今後、実
め、本業務は AM を行う上で、移行していない事
際の AM を実践して、検証することで、精度が高
業体にとっては、必要な業務と考えられる。
まっていくと思われる。
導入準備から資産データの整理、資産評価、法
その他にも、AM 業務と切り離して、自治体や
適用基本方針の検討、事務手続き支援システム構
事業体の経営診断、
経営計画業務も少数であるが、
築、維持業務まで、幅広く支援している。
受託している。
(5)データベース構築業務
(3)更新需要の把握、財政計画の立案等
データベース構築は AM を行う上で、必須項目
① 水道事業の AM 策定業務
であり、できるだけ電子化されていることがのぞ
水道事業の AM として、その手引きまたは簡易
ましい。水道台帳、下水道台帳、設備台帳、資産
支援版に則り、これからの水道事業体の更新需要
台帳、運転管理台帳、保守・点検台帳などの作成・
と財政計画の関係を明らかにし、収益的収支、資
電子化業務を受託している。
本的収支の見通しの検討、水道料金の改定の必要
様々な属性データ(位置情報、地質、事業所排
性の検討等を支援する業務を受託している。
なお、
水等)を入れ込むニーズにも対応が可能となって
更新需要の中に、施設の耐震化需要も入れ込むこ
来ている。今後は、システム化を行い AM 支援に
とになっている。
役立てることが課題である。
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■4.これからの AM への取り組み姿勢について
(主に筆者の私的意見)
(1)官民連携や民営化の動きの中で
術グループ)3では4つのガイドライン(上水道
管路、上水道施設、下水道管路、下水道施設)の
うち、上水道管についてのガイドラインを作成中
である。今後、これらのガイドライン作成にあた
今後、上下水道事業に携さわる事業体や自治体
り、AM 小委員会を中心として水コン協メンバー
の職員が大幅に減少するに伴い、水コンサルタン
も積極的に協力するつもりである。
トも事業運営(マネジメント)により参画してい
また、ISO50001要求事項は認証業務であること
くことが考えられる。
から、一自治体や一包括民間委託業者を対象に、
指定管理者制度や包括民間委託については、維
その認証の試行が始まっており、JIS 化に進めば、
持管理の範囲であり、運転管理・保守点検・小規
コンサルタントも自治体の認証業務の支援や外部
模修繕等に限られ、ダウンサイジング計画や長寿
審査の一員、運営業者(SPC)の一員となるなど
命化計画に伴う、改築・更新事業は含まれていな
の今後各方面で業務が生まれるのではないかと期
い。それを含めた委託となると、例えば、有力な
待している。また、
(1)で記述した事業スキーム
のは、
コンセッション方式の事業スキームとなる。
にも影響することが考えられる。
コンサルタントもSPCの一員として事業運営に参
加することもできるが、いまだ、資金調達方法、
会計手法、法人税対策など課題も多い。しかし、
■5.おわりに
事業の様々なリスクを感知することができるコン
いままでは、AM 定義については各分野・組織
サルタントが、これからの、ダウンサイジングを
体でまちまちであり、その範囲(活動や手法・1
含めた改築・更新費の抑制、コストとのバランス
施設か事業体か)についても不明確であった。前
等について、提案ができる立場でもあり、運営業
述のように、2013 年度中に ISO5000X シリーズの
務について、民民連携を視野にいれて、研究を深
規格が発効予定であり、アセット、アセットマネ
めていく必要がある。
ジメント、アセットマネジメントシステム、アセ
ットポートフォリオの定義等も明確になる。
(2)国際標準化とコンサルタント業務
水コン協は、国際標準化を意識しながら、これ
インフラ全体に適用される AM 規格 ISO5500X
までの蓄積を活かして多様性がある AM の様々な
シリーズの規格は、今年度中に発効予定である。
側面での関与、及び上下水道界の AM の普及に貢
また、これと並行して、TC224WG6 の TG(技
献していきたいと考えている。
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