インド・南アジアにおけるアスベストをめぐる議論 - Clydebank Asbestos

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PL-1-09 Tushar Kant Joshi (抄録のみ・英文あり)
インド・南アジアにおけるアスベストをめぐる議論
TKジョシ1、MAアンサリ2、ブーバ・アトパル3
1 所長・プロジェクト・ディレクター、2 研究助手、3 インダストリアル・ハイジニスト
ロクナヤク病院労働・環境保健センター[インド]
抄録:
はじめに
先進経済諸国におけるアスベストの使用は1980年頃から減少しているが、南アジア地域で
はその使用が強引に促進されてきている。インドは、世界第9位の生産国で、また、世界第6位
の使用国でもあり、アスベスト製品を製造する14の大企業と600以上の小規模企業がある。イン
ドで採掘されるアスベストの約89%は、ニューデリー近郊のラジャスタン州で産出されている。イ
ンド産アスベストには、南部のアンドラプラデシュ州で産出されるクリソタイル、ラジャスタン州の
トレモライト、カルナタカ州のアンソフィライトなどがある。
最近の状況
中央公害防止委員会(CPCB)は、その汚染の可能性に基づき、アスベスト関連施設、アスベ
スト使用装置をレッド・カテゴリーに分類してきた。CPCBが委託した最近の研究によれば、イン
ドの未組織の部門におけるアスベストのレベルが18.2f/ccであることが明らかになった。最低平
均値は2f/ccで、最も厳しい制限値0.1f/cc―この値であっても1,000人中5人に肺がん、1,000人
中2人に石綿肺を引き起こす可能性がある―をはるかに上回っていた。安全衛生対策の驚くべ
き欠如が、このいまわしい状況を倍加させている。
インドは、70%のクリソタイルをカナダから得ている。カナダは、ニューデリーにあるアスベスト
情報センターがクリソタイル・アスベストの使用を宣伝するのを、援助してきた。アスベスト・セメン
ト製品製造業者たちは、2002年に、クリソタイルの使用は安全であると主張して電撃的キャンペ
ーンを開始し、WHOもILOもどちらも管理使用を提唱していると断言した。同センターは、インド
における、クリソタイル使用の結果として発症した中皮腫のいかなる事例をも否定する。ILOによ
れば、西ヨーロッパ、スカンジナビア、北アメリカ、日本、オーストラリアだけで、毎年2万件のアス
ベスト関連肺がんと1万件の中皮腫が発症しているが、開発途上国では曝露のリスクははるか
に高いとしている。それらの国々では、したがってアスベストは時限爆弾であり、今後20∼30年
のあいだにおけるアスベスト関連の疾患や死亡の爆発的な増加を引き起こす準備をしているよ
うに思われる。
結論および提案
インドでは、中皮腫の中央登録システムもなく、この疾患を正しく診断できる訓練された病理
学者も少なく、労働安全衛生対策、とりわけアスベスト曝露についての労働衛生アセスメントも
ないため、前途多難である。予防原則を適用して、オーストラリアやヨーロッパで実施されてい
るように、全ての種類のアスベストの使用を禁止すれば、職場やコミュニティで数百万の労働
者・住民を守ることができる可能性がある。インド規格協会(Bureau of Indian Standards)がかな
り厳しい規格を提案しているが、インドでそれに匹敵する安全衛生基準が確立されるには何十
年かかるだろう。
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