第469号 - 富山県

家
469号
畜
衛
生
情
東 部 地 域 畜 産 経 営 技 術 推 進 指 導 協 議 会
富 山 県 東 部 家 畜 保 健 衛 生 所
報
2008.6.10
☆養鶏場の緊急消毒
································
1 ☆ 各地で放牧が始まりました
···························
4
☆韓 国の 高 病原 性鳥 イン フ ルエ ンザ 発 生
································
2
☆平成20年度市町村畜産担当職員名
簿
☆防疫情報
···························
5
································
3 ☆催し
···························
6
における問題点
☆家畜衛生メモ<夏期対策>
養鶏場の緊急消毒
4 月から 5 月にかけて秋田県と北海道でハクチョウから相次いで高病原性鳥イ
ンフルエンザウイルス(H5N1 亜型)が検出されたことを受け、養鶏場で緊急の
消毒作業が行われました。消毒は家畜伝染病予防法に基づくもので、県内 27 カ所
の養鶏場に計 935 袋の消石灰が配布され、鶏舎と敷地の周囲に散布されました。
消石灰には、野鳥の糞便に含まれる病原体に対する消毒効果とともに、ネズミ等
の野生動物に忌避効果があります。
各農場では普段からネットを張り野鳥の侵入防止に万全を期し、農場へ入場す
る車両や物品の消毒を実施するなど衛生対策に気を配っていますが、「野鳥は常
時飛来するので、危機感を感じている。基本的な防疫をしっかりとしていくしか
ない」と散布作業に取り組んでいました。
1
6
韓国の高病原性鳥インフルエンザ発生における問題点
日本国内においては、秋田県や北海道でのハクチョウ等からの高病原性インフルエンザ(以下HPA
Iと略す)ウイルスの検出やそれに関連する情報が連日マスコミで報じられているのに対し、お隣の韓
国におけるHPAI発生の状況はやや影に隠れている印象がありますが、実際には韓国では5月12日
現在で6道、3広域市においてHPAI確認事例37例、同疑い例(検査中)3例の発生が確認されて
おり、それに伴い 5,332,000 羽(4.21 現在)の殺処分が行われる予定になっています。
現在韓国当局は国を挙げての防疫対応に努めていますが、韓国全土を覆い尽くさんばかりのHPAI
の脅威は当分の間とどまりそうもありません。
ところで、なぜこれほどまでに韓国でHPAIがまん延してしまったのか?そこで韓国のマスコミ報
道が伝えるHPAI拡大に関わるいくつかの問題点について紹介します。
その1「防疫網の破綻」
韓国当局はHPAI発生時、500m以内は「汚染地域」として鶏等の家きん類はすべて殺処分し、3km
以内「危険地域」は全面移動禁止、10km 以内「警戒地域」は統制官の指導の下、移動を許可するなど厳格に
統制することとしています。しかし、実際の現場の管理はずさんで、例えば今回の発生で最初に感染が
確認された金堤市(4/2 確認)では、発生農場から 1.7km しか離れていない「危険地域」内の農場から食用
カモ 600 羽余りが違法に搬出され、近隣の農場や飲食店に販売していたとのことで、販売した業者は警
察の調査で「HPAI発生後3回も防疫エリアを出入りしたが、一度も制裁を受けなかった」と答えた
そうです。
その2「市場取引が感染を拡大」
韓国では生きた家きんが市場で取引されるが、そこにも感染拡大の鍵がありました。ソウル市広津区
役所内の施設で飼われていたキジや鶏がHPAIに感染・死亡したのは、その 10 日程前に京畿道城南市
にある市場で購入したキジがHPAIに感染していたことが原因であると推定されています。また江原
道春川市の発生農家では市場で鶏のヒナとカモを購入していましたが、販売した農家は飼育している家
きんが大量死しているのを隠して出荷し、後になって発生を申告していたとのことです。これらはいず
れもHPAI発生時の国の保障が十分でないため、感染したものでも売ってしまった方が得だという自
己中心的な発想によるものであったと報道されています。
その3「甘い判断が招いた対応の遅れ」
前述のソウル市広津の事例では、市場で家きんが販売禁止となった前日にキジ2羽を購入して区役所
内の飼育施設で飼い始めましたが、購入4日目に死亡、しかし区役所側はHPAIの可能性を疑わず、
その後七面鳥1羽が死亡しても自然死と受け止め、次いで鶏やキンケイが連続死するようになってよう
やく検疫当局に通報したそうです。結局この件ではHPAIが疑われる事が発生してから検疫当局に通
報するまでに約1週間以上が経過しており、役所の対応の遅れが指摘されています。
韓国のHPAI発生に学ぶべきこととは?
以上のように韓国におけるHPAIの発生・拡大には関係者の自己利益優先の姿勢と不適切な判断及
び職務の怠慢に寄る可能性が大きく、人災とも言える側面があることが指摘されています。日本国内に
おいてもいつHPAIの発生があるかも分からない状況にある現在、韓国の発生で問題となったような
対応で被害を拡大させないよう私たち関係者が十分肝に銘じていくことが最も重要なことではないでし
ょうか。
(検査課 長坂課長)
2
家畜衛生メモ<夏期対策>
梅雨の季節となりました。気象台の予報では、今年は平年並みの暑さか、やや暑い。降雨量は平
年並みということですが、気温や湿度の上昇は、細菌や病害虫の繁殖にも適した環境となりますので、
早めに対策をとって疾病の発生防止に努めてください。
乳用牛
暑熱ストレスによる抗病性・生産性の低下を防ぐため、より積極的に「快適な牛舎環境作り」
と「適正な飼料給与」に心がけて暑熱期を乗り切りましょう。
1.快適な牛舎環境作り
1)牛舎全体の風の流れを点検し、効率よく換気扇や送風機を運転しましょう。
2)寒冷紗などにより牛舎内への直射日光の直達を防ぎましょう。
3)牛床の清掃と乾燥に努め、暑熱ストレスによる乳房炎を防ぎましょう。
2.適正な飼料給与
1)夏は特に飼料が腐敗しやすいため、飼槽やウォーターカップを清潔に保つよう注意しまし
ょう。
2)高温時にはミネラルやビタミンの必要量が増加します。気温が 22∼26℃で 10%、26℃以
上で 15∼20%を目安にミネラルやビタミンを増量しましょう。
3)給餌回数を増やしたり嗜好性の良い粗飼料を給与しましょう。また、粗飼料を短く切って
採食に伴う熱産生量を低減させたり、涼しい時間帯に給与するなどして採食量が減らないよう
工夫しましょう。
4)採食量の減少を補うためにエネルギー含量の高い飼料を組み合わせましょう。
(防疫課
高瀬主任)
肉用牛
気温の上昇に伴い、体温が上昇し、食欲の減退がみられます。上記のような快適な牛舎環境作り
に心がけてください。また、飲水量が増加しますので、常時きれいな水が十分飲めるようにしてお
きましょう。飲水量の不足は尿量を減少させ、尿石症の原因ともなりますので、特に肥育牛では飲
水量が不足しないように注意しましょう。
(環境課
前田獣医師)
豚
夏場を乗り切るために母豚・育成豚のシェイプアップとボリュームアップを!
夏期は、一般的に繁殖成績が低下しますが、これを乗り越えるには、母豚に体力がなくてはなり
ません。そのために母豚は、太りすぎていても痩せすぎていてもいけないのです。下記表からも分
かるとおり、初回交配時の母豚の体重や背脂肪厚の状態がその後の繁殖成績に大きく影響すると言
われており、ボディーコンディションの適切な調整によ
り、繁殖能力を最大限に発揮することができます。ボデ
表
初回交配時の母豚の状態と成績
背脂肪を測定し、18mm程度であるかを確認するか、寛
交配時
体重
(kg)
交配時 P2
点背脂肪
(mm)
骨突起を触診し、なんとなく触知できる程度が適正な状
117
14.6
7.1
1∼5 産合
計
51.0
態です。適切な状態を維持するには、季節によって給餌
126
15.8
9.8
57.3
量を調節するなど一度点検してみてください。
136
17.7
10.3
56.9
146
157
20.0
22.4
10.5
10.5
59.8
51.7
166
25.3
9.9
51.3
ィーコンディションは、リンメーター等の機械を使って
次に、夏期に向けて育成豚を種豚へ繰り入れる方も
多いと思いますが、初回種付けは7カ月齢以上で体重
130 ㎏以上が望ましいです。育成時の4カ月齢以降は、
生存産子数
初産
種豚用飼料に切り替え、115 ㎏以上になれば制限給餌を行うなど、不要な脂肪を蓄積しないように
しましょう。
(防疫課
3
森岡係長)
鶏
鶏には汗腺がなく、発汗による体温調節ができないため、夏季の高温は強いストレスとなります。
熱中症による死亡、産卵率や卵質の低下、増体量の減少等を防ぐためにも、換気や屋根への散水を
行い、鶏舎内の温度・湿度を下げるようにしましょう。また、過密収容を避ける、早朝や夜間等の
涼しい時間帯に飼料給与する、採食量の低下に対し高タンパク飼料を与えたり、飼料にミネラルや
ビタミン C を添加したりする等の対策も必要です。
夏はロイコチトゾーン病の発生が危惧される時期でもあります。貧血、緑色便、産卵率低下等の
症状が見られ、重症例では喀血、死亡することがあります。対策としては、媒介者であるニワトリ
ヌカカを減らすための殺虫剤散布や、鶏への不活化ワクチンの接種等を行います。
(防疫課
彌榮獣医師)
環境保全
<ハエの種類と発生源>
種類
畜舎
たい肥
牛・馬
豚
鶏
イエバエ
大発生
大発生
大発生
サシバエ
大発生
大発生
動物死体
大発生
厨芥
大発生
数多く発生
ヒメイエバエ
発生
大発生
クロバエ類
発生
キンバエ類
発生
大発生
発生
ニクバエ類
発生
大発生
発生
発生
畜舎では、ふん便が常に存在し、発生源となります。こまめに適切にふん便を処理して、ハエの発生
を極力抑え、殺虫・殺蛆剤による駆除を必ず行ってください。
(環境課
保田)
○各地で放牧が始まりました
城前牧場放牧
5 月 23 日 に 立 山 町 城 前 で 放 牧 式 が 開 催 さ れ
ま し た 。式 に は 立 山 町 の 舟 橋 町 長 や 県 農 業 技 術
課 紺 主 幹 を は じ め 、J A ア ル プ ス 、同 牧 場 管 理
組 合 の 関 係 者 が 約 20 人 出 席 し ま し た 。 放 牧 事
前の衛生検査を終えた妊娠している繁殖和牛
が 、合 計 8 頭 放 牧 さ れ 、標 高 約 500m 、約 45ha
ののどかな山腹で夏を過ごします。
カウベルト放牧
5 月 22 日に滑川市千鳥でカウベルト放
牧が開始され2頭の繁殖和牛が首にカウベ
ルトをつけ、放牧されました。また 5 月 30
日には、黒部市大原台でも2頭の牛が放牧
されました。
6月には、黒部市阿古屋野地区や魚
津市などでの放牧が予定されています。
4
平成 20 年度 市長村畜産担当職員名簿
市町村名
課
富山市
名
(敬称略)
課長名
担 当 者 名
備
考
農業水産課
(参事)
中橋 敏春
園芸畜産係 主任
門田 真典
TEL 076-443-2083
FAX 076-443-2185
大沢野
農林商工課
総合行政センター
高見 行雄
農業振興係長
里見 伸一
主査
加藤 貞博
TEL 076-467-5815
FAX 076-468-2642
大山
農林商工課
総合行政センター
(参事)
村塚 英幸
農業振興係長
五十嵐 健治
主事
亀山 直規
TEL 076-483-2593
FAX 076-483-8820
八尾
農林商工課
総合行政センター
吉本 栄和生
農業振興係長
斉藤 幹雄
主任
山口 拓志
TEL 076-454-3117
FAX 076-454-3118
婦中
農林商工課
総合行政センター
元尾 隆
山田
産業建設課
総合行政センター
平井 貞夫
産業係長
中澤 栄三
主査
役川 真理子
TEL 076-457-2004
FAX 076-457-9011
細入
産業建設課
総合行政センター
大下 勝
主幹
谷井 政人
係長
山本 忠久
TEL 076-485-9002
FAX 076-485-9011
魚津市
農業水産課
新浜 義弦
主幹
谷口 一人
滑川市
農林課
新村 剛
主幹
上坂 精治
主事
早川 勇
TEL 076-475-2111
FAX 076-476-0249
黒部市
農業水産課
米陀 峰信
農産普及係長
高野 晋
主事
富川 篤
TEL 0765-54-2111
FAX 0765-65-9121
舟橋村
生活環境課
笠田 恵雄
主事
林 輝
上市町
産業課
酒井 春夫
課長代理
黒田 茂語
主事
成瀬 徳寿
TEL 076-472-1111
FAX 076-472-1115
立山町
農林課
城前 正道
農政係長
林 敬博
主事
新山 真一
TEL 076-462-9973
FAX 076-463-6611
入善町
農水商工課
寺崎 登
農政係 主事
上田 久志
TEL 0765-72-1100
FAX 0765-74-2108
朝日町
産業課
大井 幸司
農業水産振興班 主査 主事
谷口 保則
長井 信吾
TEL 0765-83-1100
FAX 0765-83-1109
TEL 076-465-2116
FAX 076-465-6160
副主幹・農業振興係長
吉野 敦
TEL 0765-23-1034
FAX 0765-23-1053
TEL 076-464-1121
FAX 076-464-1066
5
防
全国の主な家畜伝染病の発生
疫
情
報
なし
管内の主な家畜伝染性疾病の発生
病
名
牛コロナウイルス病
牛ロタウイルス病
牛ロタウイルスと大腸菌の混合感染
豚レンサ球菌症
畜
種
発生月日
4 月 28 日
4 月 30 日∼5 月 14 日
5月9日
5 月 30 日
牛
牛
牛
豚
戸数
1
1
1
1
頭数
13
4
2
1
○催し
和牛子牛共励会
5 月 28 日に金沢の北陸三県和牛子牛市場で子牛共励会が
開催されました。優等賞一席は柏篤さんの「はつみ07」雌
(252kg)
、優等賞は長谷佳典さんの「安六郎」去勢(353kg)
でした。
市場の取引では最高価格が、64 万 3 千円(去勢)
、最低価
格が 9 万8千円(雌)で平均 42 万円台と取引価格は横ばい
でした。
東部地域畜産経営技術推進指導協議会総会
開催される
5 月 19 日、本協議会の第 26 回通常総会並びに家
畜保健衛生対策会議が当所において開催されまし
た。
通常総会では、中橋協議会長(富山市農林水産部
参事 ・農業水 産課長)の 挨拶の後 、議事に 入り全 て
の議案が原案どおり承認されました。
また通常総会後に開催された家畜保健衛生対策
会議では、市町村、関係団体、診療獣医師など 30
名が出席し、高病原性鳥インフルエンザやヨーネ病
などの家畜伝染病の防疫対策、畜産物の安全性確保対策などについて検討が行われ、特に高病
原性鳥インフルエンザの防疫対応においては、市町村や関係団体の協力を得て具体的なシミュ
レーションの基に取り組んでいくことが協議されました。
(指導課
尾﨑係長)
編集後記
いつの間にかウグイスのさえずりが聞かれなくなり、カッコウの鳴き声が聞こえるようになりました。
関東では、梅雨入りしたとのこと。梅の実が熟し、色鮮やかなあじさいが咲く季節ですが、飼料の高騰、
おが屑の不足と畜産農家の皆さんの悲鳴が聞こえてきます。夏場にむけての準備にあれこれと大変だと思
いますが、心も体もかびたり、腐ったり、病気にかかったりしないよう、家畜も人も明るく過ごすことが
できるように心掛けたいですね。
発行所 〒939-3548
富山県東部家畜保健衛生所
電 話 (076)479-1106
FAX (076)479-1140
富山市水橋金尾新46
http://www.pref.toyama.jp/branches/1687/1687.htm
編集者
6
保田 仁美