INFORMATION - ジュンク堂

世界の本屋さん
vol.32
ベトナム・ハノイ
チャンティエン書店
し た。 外 国 人、 研 究 者 風 の 読 者 が 多 く、
国 際 色 を 感 じ た。 二 階 の 壁 面 に 大 き く
ホー・チ・ミンの五大スローガンが掲げ
られていた。
一、人を愛しなさい
二、勉強を効率よくしなさい
三、よい規則に従いましょう
四、身体をきれいに保ちましょう
五、人には親切にし、嘘はつかないこと、
そして勇敢に闘いましょう。
三 階 の コ ミ ッ ク 売 場 は 楽 し さ 一 杯 で、
こども達の天国であった。﹃ドラえもん﹄
が全点平積にされ、一点三十冊∼五十冊
の大量陳列に驚いてしまった。一階中央
にレーニンの言葉が掲げられていた。﹁本
がないと知識がつかない。本はコミュニ
ストを作る大切な道具である﹂。
ノセ事務所
能勢
仁
ベトナムの首都ハノイは、仏領インド
シナ時代の色彩を色濃く残している街で
ある。政治・文化の都として、南のホー
チミン市︵旧サイゴン︶と共にベトナム
を代表している。
街一番の書店としてチャンティエン書
店がある。市内目抜き通りチャンティエ
ン通りの中央部、五階建ての堂々たる総
合大型書店である。この店にはエレベー
ターはない。一階ベトナム書籍、二階外
国書売場、三階コミック、参考書、おも
ちゃ、四階倉庫、五階事務室のフロアー
構成である。
二階洋書売場が圧巻である。フランス
書の多いことは当然で、クセジュ文庫の
白表紙が印象的であった。英露中韓書籍
に交じって日本語もあるが、少ない気が
(表紙題字・陳舜臣)
8月
打 ち あ げ 花 火 が、 い せ い よ く、 八 月
の 夜 空 に と び あ が っ て、 高 い 高 い と こ
ろ で、﹁ パ ン、 パ ー ン ﹂ と は じ け て は、
白 い 星 の 雨 を ま き ち ら し ま し た。 そ の
世界の本屋さん
科
月
タ
書
1
佐々
涼子
2
著書を語る
○ ﹁三月一一日の忘れ物﹂
﹁書標﹂歳時記
会
科
学
コ ン ピ ュ ー
学
学
医
書標・書評
﹃食べること考えること﹄ほか
特集
サバイバル!
然
かたち
今月のおすすめ
社
自
人 文 科 学
文 学 ・ 文 芸
術
文 庫 ・ 新 書
芸
用
書
実
地 図 ・ 旅 行 書
童
書
語 学 ・ 辞 典
児
文芸書の棚より①
読者から
トーク・レポート
インフォメーション
4
8 32
本屋うらばなし
﹁ジブリ日和﹂
※表示価格はすべて税抜き価格です。
−1−
星が、しずかに谷の上にふってきます。
あ ら ゆ る 小 さ い 動 物 が、 そ の 星 の 雨 の
ほうに鼻をもちあげて、
﹁ばんざあい﹂
と さ け び ま し た。 ま あ、 な ん と い う
すばらしさでしたろう。
トーベ・ヤンソン著
﹃たのしいムーミン一家﹄︵講談社︶より
24 23 21 19 17 14
6
10
25 23 22 20 18 16
31 30 28 26
508
著書を語る
○
︱︱
二〇一三年四月、フェイスブックに一通のメッセージが届い
と、彼は最後の最後になって、
﹁実は、こんなものがあるんです。
げようとする。なんだ、世間話かと、私は腰を浮かせた。する
﹁⋮⋮そうですか、お忙しいんですね﹂と、彼は話を切り上
佐々
涼子
ていた。﹁早川書房の編集者です。お会いしてお話しませんか。
﹃三月一一日の忘れ物﹄
早川書房の一階に、アガサ・クリスティから名を取った、﹃ク
ご興味があったら⋮⋮﹂と、私の前に二冊の小冊子を出した。
早川書房がノンフィクションを書いている私に何の用だろう
車や家屋を押し流していく写真が表紙に使われていた。目が離
を下ろした。﹁これ⋮⋮、津波?﹂。黒い水がしぶきを上げて、
表紙の写真が目に飛び込んでくる。私は思わず浮かしていた腰
リスティ﹄という喫茶店があります。そこでお待ちしておりま
か、と首をひねった。早川といえば、SFや推理小説というイ
﹁そうです。これは日本製紙の工場が、津波で壊滅的な状況
せなかった。
す﹂と、ある。
メージがある。まさか私にSFを書けという依頼でもあるまい。
だ。彼は言う。﹁早川でも、今後は日本人作家の書いたノンフィ
りで客はぽつり、ぽつりと座っている。待っていたのは若い男
クリスティは、昭和の香りがする古い喫茶店だった。昼下が
避難。連絡先もわからず記事の確認ができない。そして、記事
た女性はフランス人の配偶者とともに、放射能を恐れて海外へ
で仕事をする私にも影響を与えた。インタビューに答えてくれ
よみがえる。当時私は雑誌のライターをしていた。震災は東京
それを聞いた瞬間、二〇一一年の東日本大震災当時の記憶が
に遭いながらもわずか半年で復興した記録です﹂
﹁はて﹂、しばしメッセージを見つめた。それでも会ってみよう
かと思ったのは、喫茶店の名が洒落ていて好奇心をそそったか
クションを出したいと思っております。つきましては今後、ぜ
﹁佐々さん、ご存じでしたか? 石巻に大きな紙の工場があっ
を担当していたベテラン編集者は言うのである。
らだ。私は名推理作家に呼び出されたのである。
ひ弊社でも書いていただければと思いまして⋮⋮。今何を書い
を減らして対応しなければならないかも﹂
て、そこが被災して紙がないって大騒ぎですよ。うちもページ
ていらっしゃいますか?﹂私は当時、取り掛かっていたふたつ
窓の外を見やる。春の柔らかい雨が神田の街を濡らしていた。
の企画の話をした。
−2−
508
知った。あまりに迂闊ではないか。紙にこれだけお世話になっ
私は、それを聞いて、紙が東北で造られていることを初めて
にかく石巻に連れて行ってくださいませんか?﹂
﹁とにかく行ってみないと、書けるかどうかわからない。と
﹁この工場のことを書いていただけませんか?﹂編集者が聞く。
石巻は、桜の季節だった。私は日和山の上から街を眺める。
て、仕事をしているのに、私は自分が誰に支えられているか知
山では満開の桜が、ひらひらと花びらを散らしている。その遠
らなかったのだ。バナナがフィリピンで採れることも、サーモ
ンがノルウェーで獲れることも、サトウキビが沖縄で採れるこ
景に見えるのは、街が津波でなくなってしまった南浜地区。
前で人が亡くなる経験をした従業員のひとりはこう言った。﹁必
工場に入り、事務所の一角でテープを回す。震災当時、目の
とも知っている。しかし、私は紙が東北、石巻で造られている
ことを知らなかった。いや、それどころか、紙がどこで造られ
ているかなど考えたこともなかったのだ。
その時、私は書かなければならない、遺さなければならない
ず後世の人に伝えてほしい。百年遺るものを書いてほしい﹂と。
と思った。その日から約一年、五十名に及ぶ膨大なインタビュー
震災は、日ごろ知らなかった様々なことを、明らかにしてみ
と、現地を歩く取材が始まる。
せた。あの日、私はそれを心に刻んでおこうと思ったはずだ。
忘れまいと思ったはずだ。しかし、計画停電が終わり、いつの
私は大きな物語に捕えられてしまったのである。
−3−
間にか街には煌々と電気が灯り、店には当たり前のように商品
が並び始めると、私は日々の暮らしにまぎれ、壊滅的な被害に
私たち被災していない者の多くは、あの日に忘れ物をしてき
あった製紙工場のことなどすっかり忘れてしまっていた。
た。とても大切な何かを、そっくりあの日に置いてきた。置い
それがテーブルの上にある。私は、あの日にした忘れ物を取
てきたまま、忘れ去っていた。
ページをめくると、そこには生々しい従業員たちの手記が並
りに来たような感覚に襲われていた。
﹁当時、倉田工場長は、この記録は必ずや後世に役立つもの
んでいる。目の前の編集者は言う。
だから、資料を残しておくようにと従業員に命じたそうです。
﹃こんなに大変な時にそんなことをしている場合か﹄と、ずい
そんな思いをして、残した資料なのか。
ぶん言われたようですが⋮⋮﹂
『紙つなげ !
彼らが本の紙を造っている』
早川書房・1,500 円(税別)
ある。
えなくなる状態=﹁食の物語の分断﹂で
を呼ぶ﹁奥さん﹂の響きも何とも。
な 一 線 を 思 い 浮 か べ る と、 永 瀬 が﹁ 私 ﹂
びを、幼少期の記憶から、あるいはフー
誰もが感じるであろう食べることの喜
藤原辰史著 共和国・二四〇〇円︵税別︶
発周辺の食料生産のみに集中することな
現代の食べ物をめぐる問題点を、福島原
を、 私 た ち は 表 現 で き て い る だ ろ う か。
喜びと食料汚染の狭間に生きるジレンマ
が、安全を注視するときの言葉に、食の
う問題が以前にも増して重要になった
ます。魑魅魍魎が怖さとユーモアを共に
思わぬ登場人物に惑わされる夢もあり
飛ぶ旅。
り、眺め、目を凝らす。鳥になって空も
はパリの大聖堂へも飛びます。屋根に乗
夜ごとに行き先を変え、奈良へ、さらに
博 多 の 寺 か ら 始 ま っ た 旅・ 夢 行 き は、
ドコートから、農業思想から、そしてド
く、その問題点を含んだ上で食べ物を考
以後、食をめぐる安全とい
イツや日本の歴史から考えたものが本書
抱えて通り過ぎる可笑しさがたまりま
また3・
である。おそらく、この本の著者は食べ
える視点がこの本には散りばめられてい
せん。
﹃食べること考えること﹄
ることが大好きだ。だからこそ、食べる
る。明日へ伝える食の物語をついえさせ
が爪痕や足跡を残すように、人は今も昔
ふたりで読むシーンは特に印象的。誰も
職人たちが瓦に書いた﹁へラ書き﹂を
無 意 識 や 昨 夜 の 思 い が 邪 魔 を し て、
ことが﹁機能不全﹂に陥った現在を、歴
ないために、この本を薦める。 ︵持木︶
﹃屋根屋﹄
史的に考察し、根源的喜びである食べる
ことの可能性を探るのである。
昨今のグルメ番組、もしくは美しい盛
と見えてくる。常に舌の上でおいしさを
みれば、現代の食に対する姿勢がおのず
主 の 主 婦 は 頭 上 の 仕 事 を 思 う 昼 下 が り。
カタリという瓦の音を聞きながら、依頼
屋 根 屋 が ひ と り 雨 漏 り を 直 す カ タ リ、
講談社・一六〇〇円︵税別︶
の風景に見えてきます。
この本を読むと、身近で起こりそうな愛
ル も こ ん な 夢 を 見 て い た の で し ょ う か。
装幀は毛利一枝さん。表紙のシャガー
夢うつつ。目覚めた最後に残る侘しさ
もどこかに人生を刻むことを知ります。
感じる瞬間のみをとらえ、具材を栽培/
差し入れがてら身の上話をしているうち
村田喜代子著
生産する過程やその食を培ってきた日
に、ふたりは旅の約束をしてしまいます。
りつけのカラー写真を強調する雑誌を
常生活の社会関係をことごとく消し去っ
﹁夢は人生と共にありますけん﹂
そして、恋をしましょう。
を 頼 り に、 世 界 の 屋 根 の 旅 を 楽 し ん で。
妻を亡くした愛妻家永瀬の朴訥な言葉
も味わい尽くしてください。
てしまっている。食べ物を口に入れると
逢瀬はなんと夢の中。
る日常と、屋根屋・永瀬のために用意す
夫や高校生の息子の姿を通して描かれ
ころを何度も見せつけ、食における刹那
る食事に込める丹精。超えてしまいそう
の快感だけを焦点化する視点は、食をめ
ぐる一連の過程を忘却させる。著者が憂
︵と︶
いているのは、そのような食の循環が見
−4−
12
﹃じぶんリセット
小山薫堂著
つまらない大人にならないために
︵ 歳の世渡り術シリーズ︶
﹄
河出書房新社・一二〇〇円︵税別︶
し か し、 こ れ が 案 外 う ま く い か な い。
い て、﹁ も し も ⋮⋮﹂ が 発 展 し て い か な
ない。ジョン・ケージはそのソローを受
物への変身をソローが媒介したに過ぎ
﹃ ウ ォ ー ル デ ン ﹄ は、 ま さ に 植 物 の 書
つ︶ではない。
いのだ。自分がいかに日常の枠の中にと
け、キノコだけでなくすべての音を収集
自分の中の﹁あたり前﹂が凝り固まって
らわれているか、思い知らされる。
﹁あたり前﹂に甘んじた、つまらない﹁大
な﹁あたり前﹂を想像していただろうか。
そしてロラン・バルトの日記は、彼らの
本の裏側に姿を隠そうとしたソンタグ、
する。
十 四 歳 だ っ た 時、﹁ 大 人 ﹂ と は ど ん な 存
死後書物へと姿を変え、カフカの中長編
自分が十四歳だったとき、現在のよう
在だったか。そして、自分はどんな﹁大
人﹂になってはいないだろうか。本書は
ち ょ っ と 考 え て み て ほ し い。 自 分 が、
人﹂になりたかったか。
ナボコフは﹁本のなかの︿私﹀は本の
の殆どは、死後出版されたものである。
﹁ も し も、 ○ ○ だ っ た ら ⋮⋮﹂ そ の 考
発想法を身につける練習をするのだ。
ワクワクした気持ちで生きていくための
たり前﹂を﹁面白い﹂に変え、世の中を
る﹂ことを、更には﹁身体性を備えた豊
﹁書物はかならず終わりのあるモノであ
焚書による書物の消失。それらの風景は、
骸。大震災が直撃した集落での本の不在。
空爆後の図書館の瓦礫の中の書物の
﹃書物変身譚
琥珀のアーカイヴ﹄
今福龍太著 新潮社・三二〇〇円︵税別︶
動かすのは、祈りにも似た書物の意思な
ら始まる書物の長い長い変身の歴史を
閉じ込めた琥珀︵=鉱物化した樹液︶か
り、 人 類 が 誕 生 す る 遥 か 以 前 に 羽 虫 を
樹木がしるした年輪こそ書物の原初であ
遡 れ ば、 生 命 連 鎖 の 円 環 的 な 時 間 を
なかでは死なない﹂と書き、レヴィ=ス
え 方 自 体 は、 全 然 難 し い も の で は な い。
か な 有 機 的 存 在 で あ る ﹂ と い う 確 信 を、
のだ。
︵ロ︶
著者が本書で掲げる﹁もしも⋮⋮﹂は、﹁も
今福龍太の胸に刻印する。そこから今福
す生の彷徨、迷い、揺らぎ、交差、錯誤、
読んで、考えてみてほしい。
中 学 生 を 対 象 に し て い る が、﹁ 大 人 ﹂ も
著者は、そんな日常をリセットしてみ
ないか、と言い、︿﹁もしも、○○だった
しも、コンビニがなくなったら⋮⋮﹂﹁家
は、 書 物 が か ぎ り な い 変 身 能 力 を 宿 し、
失敗を、樹木の変容態である紙ならぬ電
ら⋮⋮﹂という仮定をいろいろな場面に
元になるとしたら⋮⋮﹂﹁自分がエレベー
歴史を通じてそのことを表現し続けてき
れるだろうか
︵フ︶
子ディスプレイ上のデジタルに、担いき
その途上、アナログが必然的に作り出
言う感じを持たない﹂と語った。
トロースは﹁私が自分の本を書くのだと
ターだったら⋮⋮﹂などなど。とにかく
たことを、追跡していく。
当 て は め て み る こ と ﹀ を す す め る。﹁ あ
なんでもいいらしい。大切なのは、そこ
書物は、決して人間主体の作物︵さくぶ
変 身 の、 表 現 の 主 体 は、 書 物 で あ る。
から、それまでの日常になかった、新し
いアイデアが生まれることもあるという
ことだ。
!?
−5−
14
二〇一四年二月、関東甲信地方は記録
的な大雪に見舞われた。甲府は交通網が
寸断されて﹁陸の孤島﹂となり、
食糧不足、
ライフラインのストップと、異常事態を
豪雪への対応に習熟した日本海地帯な
伝えるニュースが続々と流れてくる。
から転がり落ちたとき、私は﹁自然﹂に
どう対峙していくのだろうか?
道具を使わずに旅をする方法﹄
﹃ナチュラル・ナビゲーション
︵紀伊國屋書店・トリスタン・グーリー著・
図もコンパスもGPSも使わずに方角を
ナチュラル・ナビゲーションとは、地
知る技法である。かつて人類が生きてい
税別二〇〇〇円︶
ならもっとわずかの積雪でも麻痺してし
らこれほどの混乱は生じなかっただろ
ま う。 自 衛 隊 や ボ ラ ン テ ィ ア が 出 動 し、
単なる歴史のひとこまとか、サバイバル
く た め の 実 践 的 な 道 具 だ っ た も の だ が、
う、と言われる。逆に言えば、東京近郊
コンビニチェーンがヘリを飛ばし、深刻
水、食料、エネルギー︵火︶、家屋︵シェ
さして複雑な知識が必要なわけではない。
は、原理としては中学校の理科の応用で、
形、水たまり等から方向を探り出す道筋
技術と片づけていいものではないと著者
な 場 合 は 外 国 の 援 助 も あ る だ ろ う か ら、
ルター︶⋮⋮。人が生命を維持する最低
ただしマニュアル通りの観察で正解が出
は言う。それは現代にも通じる﹁芸術的技
限の条件は、私たちの見えないところで
るとは限らない。感覚を総動員して自然
住民が飢餓に陥るような事態にはならな
生産され流通している。仮にそれが失わ
を 読 み 解 く と こ ろ に 醍 醐 味 が あ る の だ。
いだろう。それにしても、と思う。この
れ た と き、 ど う や っ て 生 き て い く の か。
ときには古来の知恵を借りることもある
法﹂なのだ。太陽や月や星、風、雲、樹木の
私は何も知らず、何もできない。赤子も
脆さは何なのか。
同然である。災害を口実にサバイバルを
た、大海原のうねりを表現した海図には
仰天した︶。歴史に思いを馳せ、昔の人々
︵マーシャル諸島の人々が木ぎれで作っ
の身体感覚を想像するのにも楽しい本。
語るのは不謹慎かもしれない。生半可な
には役に立たない。それでも、どうして
技術を身につけたところで、たぶん実際
も想像してしまう。社会という揺りかご
−6−
る、ドングリでクッキーを焼く、草の茎
の角で釣り針を作る、粘土から土器を作
ピオン﹂である。石器ナイフを作る、鹿
導までしたという﹁火おこし世界チャン
リカ・インディアンの長老に請われて指
式で火種をおこすのにわずか数秒、アメ
践的な内容だ。なにしろ著者はキリモミ
冗談のようなタイトルだが、かなり実
著・税別八〇〇円︶
︵山と溪谷社︵ヤマケイ文庫︶・関根秀樹
﹃縄文人になる! 縄文式生活技術教本﹄
んとある。
ている。なので、﹁自宅﹂という章もちゃ
ための情報、というコンセプトで作られ
さに地球上のあらゆる場所で生き延びる
に極地まで行く人は少ないと思うが、ま
砂漠、極地、水上、熱帯雨林へ。さすが
準備、技術と道具を学び、実践編で高山、
ラー写真も使い放題。基礎編で心と体の
ルジオグラフィックのお金のかかったカ
素 人 に は 無 理 そ う な も の も ︶。 ナ シ ョ ナ
術はほとんど収録されている︵なかには
方角を知る方法など、基礎的な知識と技
たら何にぶつかり、何がわかるのか。こ
そういう﹁自明の前提﹂をないことにし
ていけるとも思っていない。なら試しに、
ることは知っているが、それなしに生き
なさそうだ。人はお金に振り回されてい
というメッセージの発信、ではどうやら
る﹁地球規模の環境破壊と搾取への批判﹂
この本の主眼は、そもそもの動機であ
歯磨き粉や石鹸、紙も手作りする。
料 は 自 然 採 集、 栽 培、 交 換、 廃 棄 食 品。
とり、調理する。移動手段は自転車。食
レーラーハウス。自作のストーブで暖を
れ は 正 し く 実 験 の 記 録 な の で あ る。﹁ お
金はちょっと愛に似ている。誰もが一生
追い求めつづけるわりに、その正体を真
に理解する人は少ない。﹂
この実験で証明したいのは、お金がな
くても﹁生き延びられること﹂ではなく、
うかは、彼の報告の逐一を読んでいただ
た、と彼は書く。その言葉に頷けるかど
−7−
や樹皮から糸を作り布を織る⋮⋮。その
工程とコツが写真入りで順を追って説明
されるので、文明の利器がまったくない
三重県に、できる限り縄文時代の道具
状況での生活がリアルに想像できる。
だけで二十年間暮らした人がいた。本書
のカバー写真は、通称﹁縄文さん﹂と呼
﹃ ぼくはお金を使わずに生きることにした﹄
やってみてこれ以上ない幸福感を感じ
﹁ 豊 か に 暮 ら せ る こ と ﹂ で あ り、 実 際 に
︵紀 伊 國 屋 書 店・ マ ー ク・ ボ イ ル 著・ 税
ばれるその人の勇姿である。
﹃世 界 の ど こ で も 生 き 残 る 完 全 サ バ イ バ
いう江戸の美意識︵?︶を補助線として
てこたあないが貧乏臭いのはお断り﹂と
引いてみたい誘惑に駆られる。
くしかない。私としては、﹁貧乏はどうっ
ずに生活する実験をする﹂と宣言し、世
二十九歳の青年が﹁一年間お金を使わ
界中から取材が殺到した。住居は古いト
別一七〇〇円︶
網羅的なサバイバル本。時計と太陽で
二四〇〇円︶
マ イ ケ ル・S・ ス ウ ィ ー ニ ー 著・ 税 別
ル術
自分を守る・家族を守る﹄
︵日 経 ナ シ ョ ナ ル ジ オ グ ラ フ ィ ッ ク 社・
『ぼくはお金を使わずに
生きることにした』
ル タ ー ジ ュ。 ス ー パ ー で パ ッ ク 入 り で
世界各国の屠畜を広汎に取材したルポ
別八五七円︶
︵角川書店︵角川文庫︶・内澤旬子著・税
﹃世界屠畜紀行﹄
ありなんという感じでおかしい。
ン猟師たちがそろって口が悪いのもさも
キャラ立ちもマンガならではで、ベテラ
一目瞭然のわかりやすさだ。登場人物の
き鳥⋮⋮かなり凄いのも食べます︶など、
の唐揚げ、カモのロースト、カラスの焼
ちんと扱われることもない。﹂
ちんと扱わなければ、世界から自分がき
ているのかはわからない。だが世界をき
い と 思 っ た か ら だ。︵ ⋮⋮︶ う ま く で き
ちゃんとケモノを殺してちゃんと食べた
人は食うために動物を殺す。誰もが知っ
リア帰りの老人は、日本がどうなっても
さまざまな猟の手ほどきを受けた。シベ
著者は幼い頃、近所のおじいちゃんに
で も あ る 著 者 が 逃 げ る わ け に い か な い。
い る。 だ が 言 葉 の プ ロ︵ 作 家、 編 集 者 ︶
しく、そこはあえて語らないハンターも
フェアでありたいという思いは説明が難
ズルをしたくない、食われる生き物に
売っている肉は、かつて命を持っていた。
ている事実だが、その現場は意識されな
自分は一人で生きていける、と口癖のよ
荒川弘の人気マンガ﹃銀の匙﹄が扱っ
疑いもなくハードで危険な冒険を成し遂
げながら、誘惑に勝てず廃屋に無断で泊
うに言っていたそうである。
い。あるいは忌避される。
た酪農の世界、またこれから紹介するよ
まったり、お供えのミカンとアメを失敬
し た り と、 容 易 に 批 判 さ れ そ う な 話 を、
わざわざ彼は書く。ぎりぎりまで自分を
追い込んだ状況で、何がフェアで何がズ
ルなのかを根本から問い直す意図ともと
﹃狩猟文学マスターピース﹄
れるが⋮⋮深読みかもしれない。
﹃狩猟サバイバル﹄
岡山の現役猟師、兼マンガ家による狩
はできる限り現地調達していたが、こん
までも岩魚や山菜、ヘビ、カエルと食料
実践する服部文祥が狩猟を始めた。それ
めた︵とりわけ稲見一良の﹁密猟志願﹂︶。
ソロジーの中で、これは粒ぞろいで楽し
猟をめぐる十一編。玉石混淆が常のアン
宮沢賢治、星野道夫、ナンセンなど狩
税別二六〇〇円︶
︵みすず書房︵大人の本棚︶
・服部文祥編・
猟実録日誌。空気銃で鳥やウサギを、罠
ど は 銃 を 担 い で シ カ を 狩 る。﹁ 人 と し て
最小限の装備で﹁サバイバル登山﹂を
︵みすず書房・服部文祥著・税別二四〇〇円︶
猟でイノシシ、シカを獲る。狩りのロケー
−8−
うな狩猟に関する本が、このところ増え
ている︵ハンターの減少は深刻化してい
るのに︶。アプローチはそれぞれだが、﹁命
を食べる﹂というテーマへの関心の広が
りは、この本︵親本の刊行は二〇〇七年︶
がきっかけだったように思う。
﹃山賊ダイアリー︵1︶﹄
︵講談社︵イブニングKC︶・岡本健太郎
著・ 税 別 五 四 三 ∼ 五 六 二 円・ 第 四 巻 ま
ション、動物の捌き方、料理法︵ウサギ
で既刊︶
『狩猟サバイバル』
う 矛 盾 に 罪 を 感 じ な い 者 は い な い。 だ
者を救う﹂││命のために命を奪うとい
奪った側が死ぬ番になったときに、その
得 た と い う。﹁ 獲 物 の 命 を 奪 う 経 験 は、
ルンの文章に、救済されたような感覚を
編者はイタリアの作家リゴーニ・ステ
生に絶望しての自死とも噂された。本書
撼させる。無知、無謀、自暴自棄⋮⋮人
したいと願った。事件はアメリカ中を震
な自然の中で、誰の助けも借りずに暮ら
社会に、両親に嫌悪を抱いていた。苛酷
二 度 と 家 に 帰 ら な か っ た。 彼 は 文 明 に、
由はこう語られる。⋮⋮人生とはいえな
中国やインドの古代思想。森に入った理
頻繁に引用されるギリシア・ラテン文学、
うな文明批判と、美しい自然描写の対比。
が、このとき二十八歳である。呪詛のよ
ぜか老成した隠遁者のイメージがある
自足生活を開始したのは一八四五年。な
限界まできりつめてみて、もし人生がつ
いものはすべて壊滅させ、生活を最低の
ま ら な い も の な ら、 か ま う こ と は な い、
は、綿密な取材で青年の心の軌跡を辿る
登山家でもある著者は、クリスとよく
そ れ を そ っ く り 世 間 に 公 表 し て や ろ う。
ノンフィクションである。
似た若き日の体験を語る。クリスは確か
そしてもし人生が厳粛なものなら、身を
からせめて、他人に殺してもらうのでは
を 目 前 に し た と き、 自 分 の 番 が 来 た に
にいくつかのミスを犯したが、自分が生
な く、 自 分 で 殺 す。 そ の 体 験 は 己 が 死
過ぎないと受け入れられる予感を与え
き残り、彼が命を落としたという事実は、
は色濃い。熱烈な賛美だけでなく、辛辣
﹃森の生活
ウォールデン︵上・下︶﹄
︵岩波書店︵岩波文庫︶・H・D・ソロー
紹 介 し た 書 籍 は、 池 袋 本 店 一 階 エ レ ベ ー タ
前 と 福 岡 店 三 階 人 文 フ ロ ア に て、 八 月 十 日
∼九月九日までフェア展開中です。
−9−
る、と。
もってそれを体験しよう。
な批判を浴びている点でも共通してい
今回紹介した本の多くに、ソローの影
ほとんど偶然にしかすぎない。自殺の衝
すべき運命という謎めいた神秘には、心
動 に は 駆 ら れ て い な か っ た。﹁ た だ、 死
を揺さぶられた。死の間際までそっと近
継者たちをとりまく熱量の高さは、それ
る。夢想家と呼ばれることもある。事の
が私たちの﹁痛いところ﹂を突いている
是非はどうあれ、連綿と続くソローの後
そ れ は 死 の 願 望 と は 違 う。﹁ 荒 野 へ ﹂、
づいていき、崖っぷちから覗きこまずに
このシンプルな書名は、読了後に狂おし
はいられなかった。﹂
﹃荒野へ﹄
ことを物語っている。 ︵白水社・渋谷︶
青 年 の 遺 体 が 発 見 さ れ た。 死 因 は 餓 死。
ソローが湖のほとりで二年余りの自給
著・税別上巻七八〇円・下巻八四〇円︶
*愛 書 家 の 楽 園・ 特 集﹁ サ バ イ バ ル!﹂ で ご
い情熱を帯びてくる。
恵まれた境遇に育ち頭脳明晰なクリス
一九九二年、アラスカの荒野で一人の
は、 大 学 卒 業 と 同 時 に 放 浪 生 活 を 始 め、
ワー著・税別六六七円︶
︵集英社︵集英社文庫︶・ジョン・クラカ
『荒野へ』
世に存在しているものすべてが何らかの
でしょう。しかし、周りを見渡せばこの
意識をして暮らしている人もそういない
かたち、ということについて普段から
一読を。
やすい入門書です。まずは肩慣らしにご
様々なかたちが俯瞰できるたいへん読み
デザインのかたちとこれからご紹介する
根源的なかたち
かたちをしていますし、かたちあればこ
そそれをそれだと認識できるわけであっ
それではいよいよ少しディープなかた
﹃かたちの不思議
正方形﹄
︵平 凡 社・ ブ ル ー ノ・ ム ナ ー リ 著・ 阿 部
しょう。
ちの世界に足を踏み入れることに致しま
て、これは当たり前のことですが意外と
今回、そんな身近だけれど深く考えた
忘れられがちなことでもあります。
ことはないかたちについてフェアを企
画。あらゆるかたちのおおもととなる根
ル・コルビュジエの建築、漢字、ピタ
ゴラスの定理の証明、魔法陣、畳、黄金
雅世訳・税別一七〇〇円︶
比、チェス、岩塩、人相学、詩⋮⋮。四
源的なかたちから、文化のなかのかたち、
りだすかたち。様々な角度から、めくる
角に関わるものなら古今東西何でも︵本
自然界でのかたち、コンピューターで創
めくかたちの世界へご案内致します。そ
うかたちが人々にどのような意味合いを
当に何でも︶収録する本書。四角、とい
れでは、参りましょう。
﹃形の美とは何か﹄
与え受容されてきたのか、その歴史も自
し、形の美、パターンや模様の造形、自
たちを﹁自然の形﹂、﹁人工の形﹂に大別
に最初におすすめしたいのがこちら。か
総体的にかたちのことを概観するため
に 無 力 化 し て し ま う の で あ る。﹂ と い う
為がもつ横暴さや表層性を、いとも簡単
永遠に転がされながら、転がすという行
じ形で座り続けているからだ。正方形は、
度転がされても、いつも一辺の上に、同
方形は悟りの数である。なぜならば、何
ず か ら 紐 解 か れ ま す。 個 人 的 に は、﹁ 正
︵N H K ブ ッ ク ス・ 三 井 秀 樹 著・ 税 別
然の形を数理的にとらえるフラクタル理
九二〇円︶
論、日本文化のかたち、今後のアートや
− 10 −
﹁ こ れ は、 よ む ほ ん で は あ り ま せ ん。﹂
﹃まるまるまるのほん﹄
はて、では一体どんな本なのでしょう?
ように思われますが、そんな現代を遡れ
中心に向かって巻きつく螺旋で表現され
こちらをわくわくさせるような軽快な文
ブルーノ・セルヴィの言葉がお気に入り。
ていました。筆者はこの連続した線に生
章に誘われて、絵本のまるをおしたりこ
俊太郎訳・税別一三〇〇円︶
の流れそのものを見、そんな線に誘引さ
すったり。更には本をゆすって、たてて
︵ポ プ ラ 社・ エ ル ヴ ェ・ テ ュ レ 作・ 谷 川
れる先述の動作が線の変化に追随して変
みると⋮⋮? なんと ! 絵本のまるがう
ば線はうねうねと自由に﹁散歩﹂し、現
遷 し て い く さ ま を 解 き 明 か し ま す。 線、
ごきだす ! あたかも生きているような
シリーズ続編として﹃かたちの不思議
円形﹄﹃かたちの不思議
三角形﹄︵平凡
社・ブルーノ・ムナーリ著・阿部雅世訳・
という単純なひとつの概念をここまで壮
まると遊ぶ新感覚絵本。読み聞かせに最
代では点で表わされる部分はぐるぐると
税別各一七〇〇円︶も。
大な文化論にまで昇華させてしまう著者
適。谷川俊太郎訳というのもたまりませ
ん。 続 編﹃ い ろ い ろ い ろ の ほ ん ﹄︵ ポ プ
ら っ し ゃ る そ の 線 と は 一 味 違 う の で す。
線、 と 言 っ て も 今 頭 に 思 い 描 い て い
晋訳・税別二七五〇円︶
コントラストは異端の象徴とされ悪魔と
なまったく違う模様の様相。その強烈な
海を渡ると、それはとてもエキゾチック
本人に愛されてきた縞模様ですが、遥か
るってご存知でしたか? 昔から粋な日
− 11 −
の研鑽に脱帽せずにはいられません。
ラ社・エルヴェ・テュレ作・谷川俊太郎
もともと発話と歌の区別について研究を
関 連 付 け ら れ て い た と い う の で す か ら、
なかたちが溢れていますが、中でも今回
人が生み出した文化の中にも多種多様
文化がつくるかたち
訳・税別一三〇〇円︶も必見。
﹃縞のミステリー﹄
進めていた著者が、﹁歩くこと、織ること、
ところ変わればなんとやら。そんな縞の
日本には二七〇種類もの縞の名前があ
︵光人社・竹原あき子著・税別二二〇〇円︶
観 察 す る こ と、 歌 う こ と、 物 語 る こ と、
﹃ラインズ
線の文化史﹄
︵左 右 社・ テ ィ ム・ イ ン ゴ ル ド 著・ 工 藤
描くこと、書くこと﹂これらは全てなん
ミステリーを巡る旅に誘います。
う方にはこちらはいかがでしょう。
あまり小難しいのはちょっと⋮⋮とい
らかのラインに沿って進行していると思
い当たり、この一冊書き上げたというの
ですから。線、と言えば点と点を結んだ
ものとされ、連結という意味合いが強い
『まるまるまるのほん』
『かたちの不思議
正方形』
たちばかりの修了試験﹂が用意されてい
よう。最終回の第六十三回はもちろん﹁か
に、さながら生モノの講義を受けている
考えあぐね、捻出された授業の草案だけ
広闊な世界で、学生に何をどう教えるか﹂
来のいわゆる美術史よりは余程守備範囲
レ流の表象芸術系学科﹂を設計すべく﹁旧
新学科創設の役を担わされた高山が、
﹁オ
政で文学部総崩れの中生き残りのための
る﹁超人﹂高山宏。トップダウン教育行
化史など様々な領域で該博な知識を有す
された本書。著者は美術、映画、文学、文
に連載されたものを一冊にまとめ、刊行
東 京 大 学 出 版 会 の 月 刊P R 誌﹁U P ﹂
︵羽鳥書店・高山宏著・税別二八〇〇円︶
﹃かたち三昧﹄
の形﹂など、ただいま十号まで刊行中。
にも﹁2脳がつくる形﹂や﹁8 女の形・男
碁の世界から触れてみるのもまた一興。他
認識力のメカニズムについて、奥深い囲
だまだ機械には負けない人間のかたちの
コンピューターには難しいわけですね。ま
に変化するということで、これはなかなか
まり、囲碁におけるかたちの価値は相対的
かを読み、判断しなければなりません。つ
め ぐる周囲の石の関係がどう変化するの
碁で適切な手を打つためには、その手を
が、囲碁ではそうは問屋がおろさない。囲
ターが勝利したことが話 題 となりました
論が実に秀逸。チェスや将棋でコンピュー
象 徴 するゲームとして囲碁をとりあげた
わるかたち論の特 集 号。中でもかたちを
ターンや絵本の認識論といった遊びに纏
誌﹂
。﹁5 形 を 遊 ぶ ﹂は 折 り 紙 の 幾 何 学 パ
まれた夢の様な論集シリーズ﹁形の文化
つ日本語ならではの味わい方が満載です。
と感ずる次第。様々な書体、表記様式を持
な 丸 み を 帯 び た 流 れ る 太 細 の 線 に あ り、
筆で書く日本語の美しさとはあの女性的
長年書道を習っている私としても確かに、
ことができる、という﹁行書先習論﹂は
ところで、はじめて楷書の典雅さに至る
を習わす風習はおかしい。行書に徹した
せる行書が自然なのであって、先に楷書
すいのだから習字では紙の上に筆を走ら
中でも、筆は直線より曲線の方が引きや
ただ三本の平行線を引いただけにあらず。
専門誌﹁墨﹂
︵芸術新聞社︶に連載したエッ
言わずと知れた巨匠外山滋比古が書道
︵河出文庫・外山滋比古著・税別六六〇円︶
﹃日本語のかたち﹄
側に広がる豊潤なかたちの数々。うつくし
水彩画で描かれているのは、ことばの裏
んな色やかたちをしているだろう﹂美しい
﹁もしも話すことばが目に見えたらど
︵ 講談社・おーなり由子著・税別一二〇〇円︶
﹃ことばのかたち﹄
がこちら。
− 12 −
は美術とことばの世界へご案内。
ますので、居眠り厳禁でございます。
セイを一冊にまとめた本書。
﹁三﹂という
続いてかたちの世界にどっぷりはまっ
字 の 持 つ、 何 と も 調 和 の と れ た 美 し さ、
てきた方におすすめしたい論集シリーズ
全てにおいてかたちに関する特集が組
﹃形の文化誌5
形を遊ぶ﹄
︵工作舎・杉浦康平他著・税別二二〇〇円︶
『ことばのかたち』
がら、その詩は綺 麗 事 だけではない現実
恋 人 がささやく 愛 の 言 葉。絵本でありな
いことば、誰かを傷つけるようなことば、
︵創 元 社・ セ ド リ ッ ク・ ポ レ 著・ 税 別
﹃世界で一番美しい樹皮図鑑﹄
と見る素地を固めていただいたところで、
税別二八〇〇円︶を開いて自然をかたち
マ は 実 は 皮 膚 に で き る 波 紋 だ っ た︵
の?という疑問から、シマウマのシマシ
カメの甲羅はどうやって大きくなる
別一八〇〇円︶
︶
世界を静謐に語ります。大人の方も是非。
いのはこの﹁字体﹂に関わりがあるので
他 人 の 書 い た﹁ ツ ﹂﹁ シ ﹂ が 判 読 し づ ら
の 文 字 の 概 念 を﹁ 字 体 ﹂ と 呼 び ま す が、
に 書 か れ た 物 理 的 な 文 字 を﹁ 字 形 ﹂、 そ
いと思ったご経験ありませんか? 実際
﹁ツ﹂と﹁シ﹂。よく似ていて紛らわし
︵三省堂・佐藤栄作著・税別一六〇〇円︶
作られた装丁からは、ほのかに木の香り
いう徹底ぶり。細部までこだわり抜いて
クラの天然の樹皮があしらわれていると
でデザインされた表紙の一部にはヤマザ
かな色彩とかたちの繚乱。パッチワーク
ジをめくる度に溜息がもれるような鮮や
を掲載。樹皮とは、かくも美しきか。ペー
二二〇種四〇〇枚の樹皮写真とエッセイ
二十五ヵ国以上を訪ね歩いて撮影した
木に対して心から敬意を寄せる筆者が
九〇〇〇円︶
報を可視化したものをネットワークビ
は⋮⋮? ネットワーク上に飛び交う情
り ま す が、 で は 目 に 見 え な い も の に
目に見えるものにはすべてかたちがあ
︵ビ ー・ エ ヌ・ エ ヌ 新 社・ マ ニ ュ エ ル・
﹃ビジュアル・コンプレキシティ﹄
いながら生物のかたちについて学べます。
た口調でわかりやすく解説。くすくす笑
という驚きの事実までコミカルにくだけ
﹃見えない文字と見える文字﹄
す。そんな文字のかたちの認識に関する
が漂います。
ただけます。
十分耐えうる最先端技術の世界をご覧い
に用いられるものですが芸術的鑑賞にも
のような美しさ。本来は分析、解析の為
ネットのリンクの可視化は、まるで銀河
の や り と り を 図 に す る と? イ ン タ ー
た、まるで画集のような一冊。Eメール
う、本書は様々な情報のかたちを収録し
ジ ュ ア ラ イ ゼ ー シ ョ ン と 言 い ま す。そ
リマ著・税別三八〇〇円︶
コンピューターで創るかたち
あれこれを丸文字やギャル文字といった
﹃波紋と螺旋とフィボナッチ﹄
︵M&J梅田店
南雲︶
− 13 −
!?
懐かしいトピックも交えて解説します。
自然がつくるかたち
人間が誕生する遥か昔から存在し、進
化を続けてきた自然の生き物たち。そこ
は 絢 爛 た る か た ち の 宝 庫 で も あ り ま す。
まずはこちら、地球は球、ミツバチの巣は
六角形、オクラは多角形で台風は渦。自然
が収録された大図鑑﹃自然がつくるかた
︵学 研 メ デ ィ カ ル 秀 潤 社・ 近 藤 滋 著・ 税
界にあふれる様々なモノ、現象のかたち
ち大図鑑﹄
︵PHP研究所・高木隆司監修・
『世界で一番美しい
樹皮図鑑』
は、電子書籍特有の持ち運びの手軽さや
い 込 ま れ て い る。 そ の 一 端 を 担 う 著 者
し、アメリカでも書店は軒並み閉店に追
て、それに伴う紙の本の売り上げが低迷
る。近年、電子書籍の急速に普及によっ
場責任者による﹁読書の未来﹂の話であ
本書は、アマゾン社のキンドル開発現
らしく生きていくのか、ドラマティック
がいかにマイノリティを乗り越え、自分
がらせ。恋人へのカミングアウト。彼ら
と友人による反対。周囲からの軽蔑や嫌
る者まで、様々な人物が登場する。家族
め、性別に囚われない第三の性を主張す
性別が異なるトランスジェンダーをはじ
タビューをした短編集である。体と心の
い。本書は、LGBTの若者六人にイン
暮らしやすい社会かと言うとそうではな
る。しかし、彼らが全く差別を受けない
す言葉︶の話題が多く取り上げられてい
ダーの頭文字をとった、性的少数者を指
ル、心と体の性別不一致トランスジェン
ズビアン・ゲイ、両性愛のバイセクシャ
昨今、日本でもLGBT︵同性愛のレ
して自主講座﹁公害原論﹂を十五年間主
立たないが、生きるために必要な学問と
者である。東大において、出世の役には
ついて常に被害者の側に立ち続けた研究
いる。
ながっていることが本書の題名となって
が多く、それが著者の故郷の福島にもつ
ンアメリカと取材先での出会いは悲しみ
溢れさせている。中東、アフリカ、ラテ
先の写真が添えられており、より情緒を
うでもある。小見出しのそれぞれに取材
イの要素が強い文章であり、紀行文のよ
を時系列ではなくテーマ別にしたエッセ
社 会 科 学
辞書機能などの魅力を語るが、一方で本
な人生の一部始終が、彼ら自身の写真と
ジェイソン・マーコスキー著
本は死なない
の表紙の消失や、良著が見過ごされる危
共に赤裸々に明かされている。
新泉社
各二八〇〇円︵税別︶
考えながら読んで欲しい本。
害に第三者はない﹂という著者の言葉を
である。フクシマ原発事故後の現在、﹁公
な媒体で掲載された著作をまとめたもの
提起し続けた。本書は単行本以外の様々
宰することで公害問題を知らしめ、問題
宇井純は水俣病を始め、日本の公害に
藤林
泰・宮内泰介・友澤悠季編
宇井純セレクション①②③
二五〇〇円︵税別︶
テン・ブックス
険性が高くなることなど、デメリットも
一五〇〇円︵税別︶
世界はフラットに
もの悲しくて
ポプラ社
多く指摘する。本は死なない。しかし本
は今までの読者の知的欲求を満たすも
のではなく、暮らしを彩る室内装飾品と
して生き残っていくだろう、と予言して
いる。
藤原章生著
り、毎日新聞の海外特派員を経て現在は
一六〇〇円︵税別︶
編集委員になった著者が、海外での取材
講談社
カラフルなぼくら
開高健ノンフィクション賞作家でもあ
スーザン・クークリン著
− 14 −
社会科学
ユニオンズは史上初となる、終身雇用球
立行政法人のこと。昨今ではアベノミク
小幡
績著
GPIFとは、年金積立金管理運用独
でぱっと見、軽い雰囲気の本なのかと思
れた脚注も芸が細かく、小説仕立てなの
むという凄いストーリーだ。随所に配さ
はじめとする年俸制の他球団に戦いを挑
団で、選手の給料は年功序列制。巨人を
スの一環として日本株の購入が話題とな
GPIF 世界最大の機関投資家
り注目されている。本書はこの機関の運
一六〇〇円︵税別︶
いきや、結構読み応えのある一冊である。
起業のリアル
いるが、もっと関心を持ってほしいのは
持つアパレル専門店︶として確固たる存
大きくないものの、SPA︵生産機能を
なし。本気のものづくりで、規模はまだ
さ ﹂。 仕 入 れ は す べ て 現 金、 返 品 は 一 切
高 品 質 な の に 四 九 〇 〇 円 と い う﹁ 安
ふつう鎌倉シャツと呼ばれることが多い。
の や 代 表 的 商 品 で あ る シ ャ ツ の こ と は、
わ っ て く る。 登 場 す る の は L I N E や
情熱をみな持ち合わせているのがよく伝
く、一見スマートなのだが、やはり熱い
代のような荒っぽさや行儀の悪さはな
か、鋭く切り込んでいく内容だ。上の世
の中どのように頭角をあらわしてきたの
ル崩壊を体験した世代で、そういう背景
一九八〇年前後に生まれ、思春期にバブ
人 に イ ン タ ビ ュ ー。 彼 ら の 多 く は
著者が今活躍中のベンチャー社長十六
田原総一朗著
本来のオーナーである国民であることが
在感を見せている。本書では鎌倉シャツ
ユーグレナなど、各メディアで日頃目に
メーカーズシャツ鎌倉の、会社そのも
丸木伊参著
鎌倉シャツ
魂のものづくり
夜間飛行
用委員を今年四月まで務めていた経済学
者による制度の解説と改革の提言書。
一般人にとっては何をしているのかわ
からないまま、一三〇兆円もの年金の積
立 金 を 運 用 し て い る。 海 外 で は 政 府 系
﹁ 年後失業﹂に備えるために
いま読んでおきたい話
の 躍 進 の 秘 密 に 迫 る。 業 種 は 異 な る が、
する企業ばかり。全体として、グローバ
一六〇〇円︵税別︶
東洋経済新報社
− 15 −
ファンドとみなされ、動向が注目されて
城 繁幸著
著者は﹃若者はなぜ3年
で辞めるのか?﹄
︵光文社新書︶などで有
いま注目を集める飲食店﹁俺のイタリア
ル思考やソーシャルインパクトといった
行間からにじみ出ている。
名な、人事のプロフェッショナル。プロ
なるほどと唸らされた。
ン ﹂ と 共 通 す る 点 が 多 い と の 指 摘 に は、
一五〇〇円︵税別︶
プレジデント社
キーワードがみてとれた。
野球セ・リーグの弱小球団を連合が買収
わかりやすく解説した内容となっている。
日本経済新聞出版社
一五〇〇円︵税別︶
し、連合ユニオンズが誕生という架空の
10
設定で、日本社会における雇用の問題を
社会科学
テクニウム
コンピュータ
テクノロジーはどこへ向かうのか?
ケヴィン・ケリー著
テクニウムとは、複数のテクノロジー
服部
桂訳
が複雑に絡み合い形成した文化やシステ
ム 全 体 を 意 味 す る 著 者 の 造 語。 著 者 は
﹃ ホ ー ル・ ア ー ス・ レ ビ ュ ー﹄ の 編 集 者
を経て、﹃ WIRED
﹄の創刊編集長も務め
た。テクノロジーの良さを享受したいと
思う一方、必要最小限にとどめたいと葛
四五〇〇円︵税別︶
藤する著者がその本質を探る。
みすず書房
LLVM/Clang
実践活用ハンドブック
絵で見てわかる
には、その内部構造を詳しく知る必要が
小田圭二他著
システムパフォーマンスの
仕組み
は Mac OS ・
など
LLVM/Clang
X iOS
に採用されている、最近流行のコンパイ
いった基礎的な理論と、現場でしか学べ
出村成和著
ラ。 こ れ ま で デ フ ァ ク ト ス タ ン ダ ー ド
ない実務に活かせるノウハウの両方を一
二五八〇円︵税別︶
Bluetooth
から仕様、アプリケーションの開発まで、
発 し た﹁ Wibree
﹂という技術を採用し
の課題だっ
たことで、従来の Bluetooth
た低消費電力化に成功した。成立の背景
バージョン
の一部としてリリースさ
4.0
れた短距離無線通信規格。 Nokia
社が開
︵ LowEnergy
︶
は
BluetoothLE
鄭
立著
入門
Bluetooth LE
翔泳社
効率的に学びたい方に。
像や、システムアーキテクチャについて
冊で学べる構成。パフォーマンスの全体
あ る。 本 書 は ア ル ゴ リ ズ ム や 計 算 量 と
システムのパフォーマンスを維持する
だ っ た GCC
よりもファイル実行が高速
になることもあり、置き換えが進んでい
の内部構造の
Clang
る。本書はコンパイラの基礎的な技術に
触れつつ、 LLVM
や
二五〇〇円︵税別︶
理解を深める内容。 Clang
独自の機能に
ついても解説している。
ソシム
シェルスクリプト
高速開発手法入門
のスクリプトを用いて
bash
上田隆一・後藤大地著 USP研究所監修
本書は
築 す る、﹁ ユ ニ ケ ー ジ 開 発 手 法 ﹂ を 推 進
これからの無線センサネットワークの注
を短時間に開発する手法を解説し
CMS
た書籍。著者は、コマンドとシェルスク
するUSP研究所の元研究者。簡潔で軽
リプトの組み合わせによりシステムを構
量なシステムを構築するためのノウハウ
二〇〇〇円︵税別︶
目技術が学べる。
秀和システム
が披露されている。
KADOKAWA 二六〇〇円︵税別︶
− 16 −
コンピュータ
信じられない現実の大図鑑
ドーリング・キンダースリー編著
なっている。飛行機事故の報道でも同じ
だ。年間に起こる飛行機事故の発生件数
増田まもる監訳
らい増えているか? 宇宙・地球・生命・
たらどれくらい? 世界の人口はどれく
木星の大きさは? 地球上の水は集め
を考えると、ただでさえ少ない飛行機事
性は明らかに低くなっている。にも関わ
故の後に、また同様の事故が起きる可能
らずわれわれは、心理的に、飛行機に乗
自 然 科 学
世界はデタラメ
ることを躊躇してしまうだろう。
ンの言葉を巡る、最新の複雑系・カオス
コロを振らない﹂というアインシュタイ
ム性についてである。有名な﹁神はサイ
それまでの﹁流れ﹂に関わらず、表か裏
か 裏 か と い う の が そ れ だ。 確 率 的 に は、
表が出たコインの一〇〇回目の目は、表
られる思考実験がある。九十九回連続で
麻雀における流れ論の文脈でよく用い
のなかに地球が一三二〇個分入ったイラ
するとビー玉のサイズしかないし、木星
よって、ひと目で理解できる。
や数値を大胆にビジュアル化することに
やテキストだけではピンとこないデータ
ストで答えてくれる新感覚の図鑑。数字
先端技術の疑問にユニークな発想とイラ
原題の﹃ダイスワールド﹄が示すよう
理論の分かりやすい入門書にもなってい
が出る確率は常に二分の一だ。コインは
ストで太陽系で最大の惑星である木星の
に、本書が取り扱うのは、世界のランダ
る。類書も多いテーマではあるが、理系
記憶を持たないからである。しかし経験
巨大さに驚かされる。いわゆるトリビア
二二〇〇円︵税別︶
東京書籍
二八〇〇円︵税別︶
− 17 −
地球上の水は、地球を野球のボールと
的な専門用語をほとんど使わずに、身近
的には、一〇〇回目にも表が出る可能性
表が出るコインと遭遇することは稀だか
は 高 い と 言 わ ざ る を 得 な い。 な ぜ な ら、
ら、これはもう、コイン自体が表が出る
な題材で広汎なトピックを扱っている点
われわれは、ある地域において、ある
ように偏った代物であるか、表と裏の出
において、本書のリーダビリティはとて
職種の人間が犯した凶悪な犯罪を知る
る確率は半分半分と保証する人物が嘘吐
満載で、大人も子どもも楽しめる一冊。
と、その地域の、その職種の人間を警戒
きである確率の方が、はるかに高く思わ
われわれの人生において九十九回連続で
するようにできている。その犯人が逮捕
も高い。印象的な挿話をふたつ。
されたにも関わらずだ。しかし、これは
れるからである。
NTT出版
は教えてくれる。
こうした実用的︵?︶な知識も、本書
明らかなバイアスである。実際には、そ
地域に生息している可能性はすでに低く
間が、事件の犯人と同じ職種であり同じ
うした犯罪行為に手を染めようとする人
自然科学
で実践した際に劇的な変化を示すこと
越える実践実技があり、日々の業務の中
ションに基づいたケアの技法。一五〇を
感 情・ 言 語 に よ る 包 括 的 コ ミ ュ ニ ケ ー
活用できる一冊。
トサイズなので、現場や実務教育の中で
から症例検討まで含まれている。ポケッ
ジカルアセスメント、栄養アセスメント
能を取得する必要がある。本書は、フィ
フィジカルアセスメントなどの知識や技
書
から﹁魔法のような﹂と言われることも
学
あるが、誰でも学ぶことが出来る実用性
医
摂食障害という生き方
イタリア精神医療の人類学
プシコナウティカ
三二〇〇円︵税別︶
の高い技術なのである。ケアを行う人が
を迎えるその日まで尊厳を持つ﹁人らし
南江堂
その病態と治療
く﹂ケアが出来ることを願わずにはいら
ケアの対象者に対し、その人が最期の日
薬物で治療できず、既成のガイドライ
瀧井正人著
ンに沿う通り一遍の治療で治る病でもな
一九七八年に公布された世界初の精神
松嶋
健著
れない。
科病院廃絶法・一八〇号法により、精神
ことではなく、病むことも含めて人が生
二〇〇〇円︵税別︶
きるということそのものを中心に据えた
療の場を病院から地域へ移行したという
病院を廃絶したイタリア。それは単に医
薬剤師・薬学生のための
フィジカルアセスメント
ハンドブック
つある中で、薬剤師もチームの一員とし
近年、チーム医療の体系が重視されつ
度やシステムを不可避的に踏み越えてし
を辿り、いま何が行われているのか。制
者たち、共存する社会はどのような経過
精神保健サービスの現場は、そして当事
ということである。地域は、精神医療は、
て臨床の場に参加することが期待されて
まう﹁生﹂に立脚された精神医療の人類
大井一弥・白川晶一編集
医薬品適正使用のために
医学書院
い摂食障害。この難治な摂食障害の治療
に卓越した心療内科医の著者が実践して
い る﹁ 行 動 制 限 を 用 い た 認 知 行 動 療 法 ﹂
の全貌を記したのが本書である。臨床場
面 で の 苦 悩・ 苦 闘 を 経 て、 現 在 の 治 療
THE
に 至 る ま で を 著 者 の 治 療 経 験 や、 具 体
的な手法・留意点だけでなく映画﹁
いる。薬の専門家として医薬品の適正使
学は展開され、やがて新たな社会性の始
﹂になぞらえる
LORD OF THE RINGS
等、わかりやすく解説している。
用や副作用を早期発見し、積極的に助言
三二〇〇円︵税別︶
ユマニチュード入門
していく必要がある。また、医療の現場
中外医学社
本田美和子、イヴ・ジネスト、
五八〇〇円︵税別︶
ロゼット・マレスコッティ著
世界思想社
まりを告げる。航海は続いてゆくのだ。
宅医療へ介入するにもバイタルサインや
が病院から在宅へ移行していく中で、在
ユマニチュード︵ Humanitude
︶とは、
﹁人間らしさ﹂という意味を含み、知覚・
− 18 −
医学書
人 文 科 学
アンチ・モラリア
江川隆男著
月の裏側
は幼少時、父から浮世絵をもらって以来
社会人類学の巨人レヴィ=ストロース
クロード・レヴィ=ストロース著
遠き日本に憧れを持ち続けて来たと言
江川隆男の四冊目の著作が刊行され
た。冒頭にあるように、本書は哲学をめ
う。その百年に及ぶ生涯の中で度々発表
順造との対談を収めた一冊。縦横無尽に
ぐる思考に久しく欠けていた無仮説の原
展開される見識はしかし西洋から見た日
した日本に関する短文八つと、訳者川田
結論部分は僅かに七頁であるが、この
本への郷愁にくるまれており、我々の古
理についての書物であり、まったくの総
結論に達するまでに著者は八年もの年月
合の書物である。
を要している。一字一字に込められた濃
代のうちに知っておきたい
折れない心の作り方
ここ最近、十代からの○○という大人
水島広子著
にも有難い入門書をよく見かけるが、そ
二〇〇〇円︵税別︶
きよき日本への郷愁にも似る。
中央公論新社
密な思考を心ゆくまで味わいたい一冊。
三五〇〇円︵税別︶
反転授業
反転授業とは、簡単に言えば、基本的
J・バークマン、A・サムズ著
ただし、成果を出すには、オンラインな
のあり方として可能性を期待されている。
な学習は宿題として授業前に行い、授業
森 鷗 外 が 短 編 小 説﹁ か の よ う に ﹂ で
ど の 事 前 学 習 教 材 の 充 実 が 必 要 で あ る。
は応用力の育成に当てる教育方法である。
指 摘 し た よ う に、 本 書 は 近 代 以 後 ド イ
課題は多いが、日本でも高次能力学習型
ルヘルム期ドイツの正枢密顧問官でも
本書はベルリン大学神学部教授でヴィ
アドルフ・フォン・ハルナック著
キリスト教の本質
河出書房新社
の中でもおすすめしたいのがこの本。大
人でも子どもでも〝生きづらい〟と感じ
る時、人生の見方を少し変えるだけで楽
になれることがある。そんな心のつくり
方をシンプルに教えてくれる、大人にも
ぜひ読んでもらいたい一冊。
一二〇〇円︵税別︶
ツ神学史を理解する上で欠かせない一
の新しい学びの形として注目されている。
この方法は米国で起こり、次世代の教育
冊 で あ り、 か つ、 当 時 の 神 学 が 担 っ て
あったハルナックの﹃キリスト教の本質﹄
いた社会的機能を知る上でも重要なも
オデッセイコミュニケーションズ
一五〇〇円︵税別︶
の翻訳である。
四〇〇〇円︵税別︶
のである。
春秋社
− 19 −
10
紀伊國屋書店
人文科学
運命も絡む、信仰に守られた魂の旅の物
物語。朝鮮から連行された人々の過酷な
中嶋
隆著
島原の乱から始まる隠れキリシタンの
泉節。︱︱いや待て、そいついったい何
メージを喚起させるその言霊はまさに奥
にリズムよく紡ぎだされ、どんどんとイ
る人物の自叙伝。軽快な語り口で講談調
奥泉
光著
江戸時代から現代までを駆け抜けたあ
東京自叙伝
語でもある。文章が説明口調になること
歳やねんと思ったあなた、そうなのです。
はぐれ雀
もなく、過剰にキリシタンを擁護するで
文学・文芸
もなく、淡々と主人公たちの人生の遍歴
もの。
﹁ある人物﹂、それはなんと﹃東京﹄その
悟浄出立
これは万城目学の最高傑作である !
を辿る。その語り口が、何かを信じるこ
万城目学著
との強さを切々と教えてくれる。
東京の地霊が次から次へといろんな
人間に憑依し︵時にはネズミにも憑依す
はあくまで飄々としており、人を殺して
そのものを映し出す。そのキャラクター
一四〇〇円︵税別︶
る ︶、 幕 末 の 動 乱、 戦 争、 オ ウ ム 事 件、
十一年前、娘を殺された主人公。今度
もしょうがない、こっちが死んでもしょ
福島原発事故など、その時代時代の東京
は離婚した元妻が殺された。別れた妻は、
うがない、と風に流される風船のように
あっけらかんとしたその様は、史実にこ
死刑について調べ上げ、本を出版しよう
だわり、リアリティを求める小説作法に
としていたのだという。
東野圭吾著
虚ろな十字架
小学館
中 国 古 典 に 題 を と り、﹃ 西 遊 記 ﹄ の 沙
悟浄など、脇役たちの目線から作品を語
る。物語の一場面を切り取った短編であ
るだけに、この人の目線で﹃西遊記﹄が、
出来栄えだ。今までの万城目ワールドの
﹃三国志﹄が読んでみたい ! と思わせる
テ イ ス ト も 残 し つ つ、 頑 張 れ ! 我 ら 凡
一三〇〇円︵税別︶
人 ! と励まされる気がする。
新潮社
被害者遺族、加害者家族、それを取り
対し、小説とは虚構であり、つまるとこ
ろ何でもアリだというほのかな意地と
巻く人々の過去と現在が交差し、思いが
推理小説の枠を越え、犯罪と刑罰、そ
矜持が見えると感じるのはファンの欲
けない展開を紡いでいく。
れに対する社会の認識という重いテーマ
一八〇〇円︵税別︶
目か。
集英社
を扱いながらも、物語に一気に引き込ま
一五〇〇円︵税別︶
れる。東野圭吾の魅力、全開の一冊 !
光文社
− 20 −
文学 ・ 文芸
文庫・新書
本が多すぎる
週刊文春の名物連載をまとめた文庫オ
酒井順子著
ドキュメント豪雨災害
そのとき人は何を見るか
各地で豪雨にみまわれている。一か月の
異常気象と言われていた現象は、いまや
八八〇円︵税別︶
れでいて鋭く指摘されている。
文春文庫
﹁国名・地名﹂の秘密
平均降雨量を超えるような雨が数日で集
集中豪雨やゲリラ豪雨など、以前なら
稲泉
連著
八幡和郎著
海外のニュースやスポー
ツ中継を見ているとき、映画を見ている
世界史が面白くなる
とき、国名や地名を聞いて﹁あれ?﹂と
中 的 に 降 り、 浸 水 や 水 没、 河 川 の 氾 濫、
か遠い場所まで連れていってくれるの
﹁ 一 人 で た だ 頁 を め く る だ け で、 ど こ
連合王国﹂なのになぜイギリスっていう
﹁グレートブリテン及び北アイルランド
いの? だいたいイギリスの正式名称は
グランド代表ってイギリスの代表じゃな
例えばサッカーを見ているとき。イン
一〇〇名近い犠牲者を発生させた大水害
九 月、 紀 伊 半 島 を 襲 っ た 台 風 十 二 号 は
土砂災害の報道も記憶に新しい。
風により、伊豆大島で発生した恐ろしい
年秋、十月という遅い時期に通過した台
土砂崩れ、土石流などを引き起こす。昨
そう異常なものではないだろう。今夏も
思うことはないだろうか。
が、本。︵中略︶それは実に平等な娯楽﹂
の? ﹁イギリス﹂って何語? と、イギ
リジナルのエッセイ集。本屋として嬉し
﹁ 本 は ま た、 別 の 本 を 連 れ て き て く れ
リスだけでもこんなに疑問がわき上がっ
意 で は な い ⋮⋮ と 書 か れ て い る が、
現 地 で 呼 ば れ て い る 名 前 と 違 う の か?
か? 日本で呼ばれている名称は、なぜ
国名や地名はなぜその名前になったの
に、丹念な取材から紀伊半島大水害を伝
砂ダム﹂ができた奈良県十津川村を中心
きかった那智勝浦町と、山が崩れて﹁土
ゼロメートル地帯を多く抱える東京に対
に話が及び、特に東京湾より地盤の低い
− 21 −
い以下の言葉と共に幕を開ける。
ま す。︵ 中 略 ︶ 芋 づ る 式 に 読 み た い 本 が
となった。本書は、中でも最も被害の大
二〇〇五年から二〇一三年までのたっぷ
える。
二〇一一年、東日本大震災と同じ年の
現れる時の嬉しさよ。﹂︵まえがきより︶
てくるのである。
り八年分、どこから読んでも﹁お、この
いずれの場合も、そこには歴史的な由来
本を読んで感想を書いたりするのは得
本はおもしろそうだ﹂とすぐ手に入れた
がある。
本書は、世界史をより深く知るツール
また、これら山間地の事例から都市部
くなる本が満載。
としての国名や地名の秘密を教えてく
七八〇円︵税別︶
それだけではなく、本の紹介を通じて、
岩波新書
現代日本における﹁幸福ということ﹂
﹁老
八三〇円︵税別︶
しても、大きく警鐘を鳴らしている。
洋泉社歴史新書
れる。
と女であること﹂についてさらりと、そ
いるということ﹂﹁親子であること﹂﹁男
文庫・新書
芸
術
名人
梅 佳代著
写真家・梅佳代がWEB上の対談にお
ヒッキー・カンクーントルネード
いて、﹁人物はあまり何回も︵同じ人を︶
岩井秀人著
数年前の正月に﹁チャゲアスのにせも
撮らない。撮らせてくださいとは言いづ
という旨の発言をしていてびっくりした
の﹂という演劇を観に行った。脚本はこ
覚えがある。それではどうして、あそこ
ら い。 気 ま ず く な っ て し ま う の が 怖 い ﹂
自身も俳優として活動する岩井氏の舞
まで多くの人の笑顔が彼女の写真には
の本の著者、劇団﹁ハイバイ﹂を主宰す
台は、自己の体験が私小説のように色濃
映 っ て い る の か。 も の す ご い 一 発 勝 負、
る岩井氏であったと思う。
先生の新刊が出ると聞くと、背すじ
番組のコメンテーターをつとめているこ
くあらわれる作風が特徴で、時にはTV
奇想の発見
ある美術史家の回想
が ピ ン と 伸 び る よ う な 感 覚 に な る。﹃ 奇
惟雄著
想の系譜﹄
︵ちくま学芸文庫︶や﹃ギョッ
瞬間を私達は写真集で見ているのではな
い に 行 く 連 載 を ま と め た も の で あ る が、
いのか。今回の写真集には特に、多くの
何と言っても写真だけでなく、梅佳代が
ともあったと思うが、正月の舞台では役
ない第一人者となった
然り。
書いた文章は必読だ。名人に対する情報
とする江戸の絵画﹄︵羽鳥書店︶で又兵衛、
は初の自伝であるが、若き日の加古里子
﹁じゃあママは? ママは?﹂﹁じゃあ
の 取 捨 選 択 が 凄 い。﹁ サ ー フ ィ ン を き っ
人々の笑顔が映っている。日本全国の﹁名
氏との出会いや銀座でのプライス夫妻と
よ? こ れ か ら ず っ と? ね え、 ず っ
どうすればいいの? どうすればいいの
か け に め が ね か ら コ ン タ ク ト に ﹂﹁ 車 に
者たちの﹁気まずい空気﹂﹁乾いた笑い﹂
の初対面等、日本の美術界の大事件が穏
と?﹂等クエスチョンマークを多用した
びっちり﹂等。小学二年生が作ったカレー
乗 る と 柴 田 恭 平 み た い で す ﹂﹁ 口 ぐ せ は
国芳、若冲や白隠などを多くの人々にひ
や か に サ ラ リ と 描 か れ て い て、 何 だ か
台詞の切迫感は、ひきこもりの家庭が舞
の具のような偏った情報は、彼女が人に
人﹂と呼ばれる、一芸に秀でた人々に会
ほっとする。絵本作家・加古里子氏のだ
台となる本作において、演劇でも際立っ
会う中で会得してきた﹁人が発するかが
がとにかく耳に残った。今回、この本が
るまちゃんが集めるぼうしや、からすの
た﹁気まずさ﹂の尾を残し、目が離せな
やき﹂なのだろう。私達が彼女の写真に
初の小説となるとのことだが、小説でも
パンやさんに登場する沢山のパンが描か
い小説となっている。ひとつひとつの場
氏。今回の著書
れたページを、室町時代のお伽草子絵の
面を、ページを、頭にじゅっと焼きつけ
ろめ、日本美術史界では欠くことのでき
先 生 の 愛 情 に 満 ち た 文 章 は 必 読。
伝統を引く﹁もの尽くし﹂として紹介す
静山社
二七〇〇円︵税別︶
る、
一四〇〇円︵税別︶
魅せられる原因がそこにある。
河出書房新社
させるかのような一冊である。
二二〇〇円︵税別︶
柔らかいこの筆致が歴史を切り開いた。
新潮社
− 22 −
芸術
放浪哲学
り合わせの先で彼が得たものは何か、あ
なたの目で見極めて欲しい。
SBクリエイティブ
一五〇〇円︵税別︶
のスパイス料理
SPICE CAFE
日々のおかずと、とっておきカレー
伊藤一城著
ニッポン周遊記
何てことはないような地味な町にだっ
池内
紀著
て 必 ず 歴 史 が あ り、 そ こ を 住 処 と す る
人々の物語がある。産業の盛衰、天災や
戦の数々で変わることを余儀なくされる
町 の 姿。 自 分 が 住 む 所 な ら い ざ 知 ら ず、
旅先のなに気ない風景から変遷の残り香
紀行文を書くとどうなるか。その好例が
万キロの
実
用
書
地図・旅行書
年かけて130カ国
自転車ひとり旅
感じる。暑くなると食欲が落ちてしまい
本作である。著者の池内氏は、もはや言
では逆に、その種の嗅覚に優れた人が
がちだが、そんな時こそしっかり食べて
を嗅ぎ分けるのは容易ではない。
七月に行われたツール・ド・フランス
夏バテしないようにしたいもの。この本
年々夏の暑さが厳しくなっている様に
の熱狂が、まだ記憶に新しい方も多いだ
中西大輔著
ろう。選手達が使用するロードバイクも
都市の習俗を発見していく。わざわざ観
わずもがなのドイツ文学者だ。小説の舞
光地に行かずとも、侘しい地方都市にで
台考察さながらに、旅することで、地方
著者・伊藤シェフのお店は、東京スカ
に紹介されているスパイスたっぷりの料
イツリーの足もとにある。元はアパート
そうであるが、街中を走るシティサイク
等の自転車は、自分の足でペダルを漕ぎ、
理で元気になろう。
風を直に感じることができる。そういっ
と も な っ て い る。 三 年 半 か け て 世 界
二四〇〇円︵税別︶
も濃密な異郷の時間は流れているようだ。
四十八ヶ国を巡ったシェフの料理は、ス
青土社
の建物をセルフリノベーションした
取り憑かれた一人。キャンプ用具一式を
パイスを使うことで素材を生かし美味し
﹂は東京の伝統が息づく
SPICE CAFE
下町にあって、新しい文化との交流地点
積み込み、赤道四周分の距離を走破した
さを引き出す調理法で、思いのほかシン
﹁
というのだから並々ならない。決して楽
アノニマ・スタジオ
一八〇〇円︵税別︶
プル。ぜひ挑戦してみて下さい。
と い っ た 正 の 感 情 だ け で は 済 ま さ れ ず、
とは言えないその旅路で、彼が求めたも
本書の著者も、そんな自転車の魅力に
味があると言えよう。
た点において、列車や自動車にはない妙
ルやツーリング用に特化したランドナー
15
哀惜や落胆、怒りなども多く付き纏う巡
− 23 −
11
のは人や自然との出会いだ。喜びや感動
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
オノマトペラペラ
マンガで日本語の擬音語・擬態語
読売新聞英字新聞部監修
と広がる。擬音語・擬態語のもつ描写力
をマンガや英語を通してみることで、改
一八〇〇円︵税別︶
めてその魅力を見つけることができる
だろう。
東京堂出版
日本風物詩
ステュウット・ヴァーナム︲ アットキン著
日本語が世界を平和にする
これだけの理由
著者は長い間カナダで日本語を教えて
金谷武洋著
きた経験から、日本語のすばらしさを英
語と比較して述べている。例えば、英語
は主語や目的語をはっきりさせる言語だ
I see Mt
と い わ れ て い る。﹁ 富 士 山 が 見 え る ﹂ と
いう自然の描写も英訳すると﹁
﹂となる。広島平和公園の慰霊碑の
Fuji
﹁安らかに眠ってください
過ちは繰り
返しませぬから﹂という碑銘も主語を明
日本には豊かで多様な文化がある。日
示 し な い こ と で、﹁ 誰 の 過 ち か ﹂ が は っ
本の文化風土には、海外から訪れた人々
本書はそんな日本文化について数々の書
きりしないほうがよいと主張する。これ
水野良太郎編
物を執筆している著者によって、英日対
英字新聞﹁ The Japan News
﹂連載の
﹁ ONOMATO
︲ PERA
︲ PERA
﹂を書
籍化したものである。日本語は世界にあ
訳で説明されている。
を 惹 き つ け る 不 思 議 な 力 が あ る そ う だ。
る言語のなかでもオノマトペ、つまり擬
日本人には当たり前だが外国人が疑問
また、日英の比較言語の参考にもなる。
るからだと。
は﹁敵﹂と﹁味方﹂の共存という形をと
音語・擬態語が多い言語である。そのた
め日常的にも擬音語・擬態語を使って会
に思う事柄を、厳選された美しい写真と
英語を習得するのにあたって、まず母語
話をしたり文章を書いたりする。本書は、
外国人だけでなく、日本文化をもっと
を習得するほうが、相手に伝わるニュア
︹日本語︶の構造を理解したうえで英語
ともに説明している。
知りたい日本人にもおすすめだ。聞いた
この日本語のコミュニケーションに欠か
ことがあり想像はできるが、説明を求め
せない擬音語・擬態語を、マンガを使っ
て日本語と英語で意味を紹介してくれて
からだ。ただ暗記を中心とした学校英文
ンスをより正確に把握することができる
飛鳥新社
一二〇〇円︵税別︶
の素晴らしさを再認識できる本。
法よりもはるかに効率的である。日本語
られると詳しく正確にはできないであろ
IBCパブリッシング
一八〇〇円︵税別︶
特にお勧めの一冊。
日 本 文 化 を 英 語 で 紹 介 す る 本 の 中 で、
う事柄が多数あるからだ。
いる。
擬音語・擬態語の書籍や辞典のなかで
英語訳がついているものは数が少ない
の で、 日 本 語 を 学 習 し て い る 外 国 人 や、
日本語教師にも役に立つ。また英語から
日本語へ翻訳する場合、擬音語・擬態語
を効果的に使うと文章の表現力がぐっ
− 24 −
語学・辞典
児
童
書
絵本
窓ぎわのトットちゃん
1・2巻セット
黒柳徹子文
いわさきちひろ絵
これまで読みものとして広く皆様に
知 ら れ て い た﹃ 窓 ぎ わ の ト ッ ト ち ゃ ん ﹄
ですが、この度絵本となって新たに刊行
虫 が 苦 手 な よ り さ ん た ち 六 人 家 族 は、
よりさんが黒いイガイガの虫﹁きびしん﹂
と再会したことで、ふたたび虫たちの不
引き込まれました。続編が翻訳されるこ
二四〇〇円︵税別︶
とを期待しています。
東京創元社
ガマ
思議な世界へと誘われることになりま
す。季節の移り変わりの美しさや、虫た
豊田正義著
ガマは自然にできた洞窟のこと。戦争
ちと家族のやりとりから感じる生命の力
中、そのガマに避難した人々の多くが命
強さに胸を打たれます。この作品だけで
も楽しむことは出来ますが、前作と併せ
講談社
一三〇〇円︵税別︶
えらぬ人生がありました。
はたくさんの尊い命を失った人たちのか
品を掘り続ける人たちがいます。そこに
を失いました。戦後、何十年も遺骨と遺
一六〇〇円︵税別︶
て読まれることをおすすめします。
理論社
アーデン城の宝物
E・ネズビット作
未来のだるまちゃんへ
生したのか、その半生と絵本へかける強
絵本作家かこさとしがどの様にして誕
− 25 −
されました。トットちゃんと同じ、小学
校低学年から読めます。新原稿﹁みんな
井
ドレッドのアーデン姉弟。ご先祖様がお
かこさとし著
城のどこかに隠したという宝物を探して
古城に住むことになったエルフリダとエ
崖 の 上 の お ば さ ん の 家 か ら 一 転 し て、
朱美・永島憲江訳
いっしょだよ﹂も掲載、いわさきちひろ
三〇〇〇円︵税別︶
の絵もたくさん収録され、魅力いっぱい
です。
講談社
には、尊敬してやまない子どもたちへの
えて愛され続けている数々の絵本の裏側
深い観察眼と、未来を生き抜いていく希
く深い決意に胸が打たれます。世代を越
ワープと出会います。モルディワープの
望が込められていました。一冊一冊に込
いた二人は、アーデン家の紋章にも刻ま
おのりえん作
秋山あゆ子絵
二 十 四 節 気 の﹁ 芒 種︵ 六 月 六 日 頃 ︶﹂
力を借りて過去の時代をさかのぼってい
め ら れ た 想 い や エ ピ ソ ー ド を 知 る 度 に、
れていた不思議な白いモグラ・モルディ
か ら﹁ 白 露︵ 九 月 八 日 頃 ︶﹂ ま で の 七 つ
は少し違う宝物を手に入れることになり
くうち、姉弟は最初に想像していた物と
虫のお知らせ
の節に、ひとつの家族が体験した虫たち
一四五〇円︵税別︶
との物語。同作者による﹃虫のいどころ
文藝春秋
改めて絵本の奥深さに気付かされます。
と最後に残ったいくつかの謎までとても
ます。物語らしい読みごたえのあるお話
人 の い ど こ ろ ﹄︵ 理 論 社・ 税 別
一五〇〇円︶の続編です。
児童書
マンは生涯にわたりこの作品に手を加え
作品は彼の代表作なのですが、ホイット
マンはアメリカを代表する詩人で、この
れている詩集の一つ。目を細くして孫を
晴とは少し雰囲気の違うこの作品も愛さ
な愛で詩を詠っていて、いつもの金子光
孫の誕生の喜びがつまっています。大き
は初版からの訳本となっています。最終
文芸書の棚より
版とは違う新たな魅力が楽しめるのでは
愛おしく見ている光晴おじいちゃんが目
緑眩い季節になりました。太陽の光を
ないでしょうか。外見の鮮やかな緑から
ていて、最終版はなんと五倍にもなった
浴びて緑が気持ちよさそうに光っている
は想像できない熱いホイットマンの想い
に浮かぶようです。
ところをみると、暑さの中でも清々しい
とのことです。これまでの訳本はその最
気持ちになります。そんな元気な緑が爽
を読んでみてください。
終版からのものだったのですが、この本
やかなこの季節に、緑の本を開いて、文
緑本三冊目は山口瞳の﹃キマジメ人生
相 談 室 ﹄︵ 河 出 書 房 新 社・ 税 別 一 六 〇 〇
円︶。緑もきれいですが、なんといっても、
装丁に描かれている、この柳原良平さん
の詩人、金子光晴の﹃詩集
若葉のうた﹄
︵勁草書房・税別二五〇〇円︶。この装丁
れてはなりません。緑本二冊目は、反骨
そして詩集といえば、日本の詩人も忘
しょうか。そこには悩んでいて苦しいの
ありますが、なぜこんなに興味深いので
悩みって笑えないくらい大変なこととか
ま す。 人 生 相 談 も の は よ く あ り ま す が、
書名通りに真剣に人生相談に回答してい
のイラストに心奪われます。中を開くと、
は黄緑と水色の絣の着物のようななんと
は自分だけじゃないということを改めて
− 26 −
芸の森の世界に浸かってみるのはいかが
でしょうか。緑の衣を纏った本からも緑
を感じて清々しい気持ちで本を楽しむの
も一興だと思います。そこで緑色の本を
紹介したいと思います。お好きな緑本を
探してみてください。
まず緑本一冊目。ウォルト・ホイット
装丁が上品さ漂い、このシリーズには一
も若葉という言葉が似合う爽やかな一
これも楽しい一冊になっています。人の
冊に一つの色がついているのですが、こ
冊。そんな爽やかさを纏った詩集には初
の大人の本棚シリーズです。シンプルな
の本には鮮やかな緑が用いられていて手
『草の葉 初版』
元に是非置いておきたい一冊。ホイット
マ ン の﹃ 草 の 葉
初 版 ﹄︵ み す ず 書 房・
税 別 二 八 〇 〇 円 ︶。 こ の 本 は み す ず 書 房
『キマジメ人生相談室』
❶
かない新たな視点からの回答を読むこと
リカ随一の短編の名手と呼ばれるキロー
刊 行 会・ 税 別 三 四 〇 〇 円 ︶。 ラ テ ン ア メ
オ ラ シ オ・ キ ロ ー ガ﹃ 野 性 の 蜜 ﹄︵ 国 書
い満足感たっぷり。書店の裏側だったり、
一冊でご飯が何杯でもいけてしまうくら
本が好きで、本屋が好きな人ならこの本
は、 そ の 名 の 通 り、 本 屋 の こ と だ ら け。
包まれた厚さ二センチにも及ぶこの本
で、自分の中にはなかった考え方が入っ
立ち読みの研究だったり、これを読んだ
外国文学からもう一冊。緑本五冊目は、
てくるということが人生相談というもの
ガの短編が三十篇も入っています。装丁
思い知らされ、また、自分では考えもつ
を興味深くさせているのではないでしょ
らきっと本屋がもっと楽しくそして愛お
は 個 人 的 に、﹁ 青 木 ま り こ 現 象 ﹂ の 記 事
にはくすんだ深い緑の密林が描かれてい
が気になりました。﹁青木まりこ現象﹂っ
うか。悩んだときや元気のないときに読
ころ。物語は死が扱われているものが多
て?と思った方、是非本を開いてみてく
しく見えてくること間違いなしです。私
く、﹁ 死 の 作 家 ﹂ と も 呼 ば れ る こ と が 多
ださい。
ま す が、 そ れ は 正 に 物 語 に 描 か れ る キ
緑本四冊目は、目の惹く装丁をしたブ
いのも頷けます。どこまでも死が匂う濃
ローガ独特の世界感そのままといったと
ノワ・デュトゥールトゥルの﹃幼女と煙
厚な緑を味わうならこの一冊。
むのがおすすめです。
草﹄︵早川書房・税別一六〇〇円︶。仮面
この一冊、伊達ではありません。サミュ
敵なのです。そして、そんな不穏さ漂う
うものの、青緑の背景の色がなんとも素
文学史を知っていくとますます文学を読
本文学史﹄
︵中公新書・税別七四〇円︶を。
緑本六冊目は、その中から奥野健男﹃日
深 緑 が ト レ ー ド マ ー ク の 中 公 新 書 で す。
ま た 緑 の 本 で 忘 れ て は な ら な い の が、
− 27 −
のようなものを手にした白いワンピース
エル・ベケットに見出され、ミラン・ク
みたくなるのです。そんな文学に親しむ
の女の子と、横に煙草がある不穏さが漂
ンデラが絶賛する著者の問題作とのこ
と、緑色の本で文芸書を選んでみまし
︵新潟店・文芸担当︶
芸の世界を愉しんでみてください。
たでしょうか。緑をひらいて緑と共に文
たが、お気に入りの緑本は見つかりまし
『本屋の雑誌
別冊本の雑誌 17』
れると思います。中には文豪たちの顔写
そ し て 緑 本 七 冊 目 は、﹃ 本 屋 の 雑 誌
﹄︵ 本 の 雑 誌 社・ 税 別
別冊本の雑誌
一 九 八 〇 円 ︶。 明 る い 緑 冴 え た カ バ ー に
17
真も掲載されていて、充実の一冊です。
ためにこの一冊はやさしく寄り添ってく
と。これだけでもう手にとってしまうこ
とでしょう。
『幼女と煙草』
本 の 帯 に﹁ 珠 玉 の 短 篇 小 説 を 読 ん で い る よ う な、 映
だ す。 松 田 氏 が﹁ 映 画 の 一 場 面 を 見 て い る よ う ﹂ と 評
ち は 血 肉 を 持 っ て 行 間 か ら 立 ち 上 が り、 呼 吸 し、 動 き
石田
柳子
画 の 一 場 面 を 見 て い る よ う な、 人 間 エ ッ セ イ の 白 眉 ﹂
されたゆえんだと思われる。
﹃カテリーナの旅支度﹄
と い う 松 田 哲 夫 氏 の 推 薦 の 言 葉 が あ る。 つ い 先 ほ ど 読
著 者・ 内 田 洋 子 氏 は 三 十 余 年 を イ タ リ ア で 暮 ら し た
私 は﹁ レ ン ザ ブ ロ ー﹂ に 掲 載 さ れ た 作 品 は 読 め な い。
ザ ブ ロ ー﹂ が 初 出 で あ る。I T 機 器 が ま っ た く ダ メ な
と こ ろ で 二 十 篇 中 の 八 篇 は 集 英 社W E B 文 芸﹁ レ ン
方 ら し い。 副 題 は﹁ イ タ リ ア 二 十 の 追 想 ﹂。﹁ そ の 土 地
素 敵 に 装 丁 さ れ た 紙 の 本 と な り、 手 触 り を も 楽 し み つ
み終えた私は、まったくその通りですね、と呟く。
に暮らして﹂と﹁街が連れてきたもの﹂の二部構成で、
つ読めることがほんとうに嬉しい。
︵六十九歳・無職︶
そ れ ぞ れ 十 篇 の エ ッ セ イ か ら 成 っ て い る。 一 篇 は 十 五
ペ ー ジ 前 後。 普 通 の エ ッ セ イ よ り 少 々 長 め だ が、 人 間
*﹃カ テ リ ー ナ の 旅 支 度 ﹄︵ 集 英 社・ 内 田 洋 子 著・ 税 別
一六〇〇円︶
を描くにはこれくらいの長さが必要ということだろう。
イ タ リ ア で の 生 活 が 長 い 文 筆 家 と い え ば、 そ の 体 験
を見事な小説に結晶させて逝かれた須賀敦子氏を思い
出 す。 彼 女 の エ ッ セ イ の 中 に﹁ 文 章 は 作 る も の ﹂ だ と
書 か れ て い た の を 憶 え て い る が、 こ の 著 者 の そ れ も 正
し く 丁 寧 に 作 り 込 ま れ て お り、 各 篇 に 登 場 す る 人 物 た
− 28 −
論じている。いわく﹁江戸に現われたキングコング﹂
﹁大
河村
揚一
久々に寝食惜しんで読んだ。
仏廻国﹂、荻野茂二の個人映画、藤田まことのお父さん
﹃戦前日本SF映画創世記﹄
一 九 五 四 年 の﹁ ゴ ジ ラ ﹂ 以 前 の 日 本 に お け るS F 映
呪 術、 不 思 議 な 話 は 枚 挙 に い と ま が な い が、 著 者 は そ
からず昔から歌舞伎や文楽や落語の世界で忍術や妖術、
ほ ぼ 皆 無、 そ の 点 は ま さ に 快 挙 と い え る。 日 本 は 少 な
F 映画について紹介した類書は私も知る限り単独では
を ひ も と い て み せ る。 著 者 が 言 う 様 に 戦 前 の 日 本 のS
を含んだ映画作品という意味で映画創世記からの流れ
来 て し ま う だ ろ う が、 こ こ で は 著 者 の い う 科 学 的 要 素
S F 映 画 を 定 義 す る と、 そ れ だ け で、 一 冊 の 本 が 出
た だ そ れ だ け 残 っ て い る か ら と 喜 ぶ べ き か、 な げ く べ
は現存せず、一本はシリーズの半分しか残っていない。
し か 邦 画 は 残 っ て い な い と の 事。 書 い た 映 画 名 も 二 本
年 代 の 三.八%、 一 〇 年 代 に い た っ て は 〇.二% の 作 品
一九四〇年代の二九.八%、三〇年代の一〇.七%、二〇
だ の を 思 い 出 す。 た だ 一 方 で フ ィ ル ム セ ン タ ー い わ く
本屋をめぐって押川春浪や海野十三の本を買って読ん
昔、 横 田 順 彌 の﹃ 日 本S F こ て ん 古 典 ﹄ を 読 ん で、 古
そ う で 是 非 見 た い と 思 わ せ る 筆 致 が と て も い い。 そ の
が 出 て い る﹁ 怪 電 波 殺 人 光 線 ﹂ と ど れ を と っ て も 面 白
れらを科学的な視点にあたらない点を指摘して紙面を
き か ⋮⋮。 で も﹁ ゴ ジ ラ ﹂ 以 前 に ま だ 見 ぬ 豊 か な 映 画
画の歴史をつづった評論集。
さかずに純粋な空想科学の世界を本流とした作品を丹
の世界があった事だけはわかる一冊だった。
樹著・税別二五〇〇円︶
*﹃戦 前 日 本S F 映 画 創 世 記 ﹄︵ 河 出 書 房 新 社・ 高 槻 真
︵四十六歳・サラリーマン︶
念 に 集 め て﹁ ゴ ジ ラ ﹂ ま で の 潮 流 を 問 い て 見 せ る。 最
初に言葉ありきとは誰が言った言葉だったか概念がな
いところに作品があらわれない本質をとらえて徐々に
SF 映画がつくられていく歴史的過程を楽しみながら
− 29 −
人が心を動かされる本当の言葉は、い
思い続けることで、人は本質に近づくこ
い る 現 代、﹁ 自 分 は わ か っ て い な い ﹂ と
物事の本質を知る︶ことが難しくなって
と書きましょう。言葉と直接出会う︵=
わ ゆ る 文 学 と 呼 ば れ る も の に で は な く、
とができます。さらに言えば、書けなく
それを失うことはないのです。
ごく普通の人の言葉にあります。文学者
ても書こうと本気で生きている時、人は
ート
は﹁愛なんて、こっぱずかしくて語れな
最 も 書 い て い る と 言 っ て も よ い の で す。
レポ
い﹂と言います。でも、無名の普通の女
悩み抜いたその悩みが満ちるとき、おの
ーク
性だったブッシュ孝子は、二十八歳で亡
ト
くなる前に﹁愛を語ることができないこ
ずと言葉は現れるのです。
で 考 え て き た こ と と 真 剣 に 向 き 合 え ば、
持って、自分のために書く。自分が今ま
の文章になるかもしれないという覚悟を
ましょう。この文章が、自分が書く最後
握っているそれを、掌をひらいて見てみ
自分の中に持っていますから、手の中に
自分の魂を照らす言葉を、人間は必ず
他の誰かから与えられることもあります
美 を 知 っ て い る の で す。 知 識 や 教 養 は、
な い 人 は い ま せ ん、 つ ま り、 人 は み な、
かったと思い返している。悲しみを知ら
人 は 最 も、 そ の 人 と 出 会 え た こ と を よ
人 を 喪 っ た ら 悲 し い け れ ど、 そ の 時 に、
こ と は、 悪 い こ と で は な い。 た と え ば、
とさえ読んだ、と書いています。悲しむ
り﹁愛しみ﹂でもある、古語では﹁美し﹂
みである、だから、悲しみは慈しみであ
柳宗悦は、悲しみを慰めるものは悲し
あるのです。
書く義務も
葉も受けて
人たちの言
ち は、 そ の
できる私た
書くことの
に宿ります。
学は、自らの手で書くことのできない魂
住んだことから生まれました。本物の文
︵敬称略︶
六月十六日︵月︶
︻難波店︼
とは知っている。けれども、愛を知った。
本当の言葉との関係を作り上げることが
が、悲しみや苦しみは私たち自身の物で
ともできない人々の魂が彼女の中に移り
石牟礼道子の文学は、水俣病で話すこ
若松英輔︵批評家・思想家︶
想いを詩に遺しました。
できます。真剣に開こうと思わなければ、
あり、そこから最も豊かなものが生まれ
だからどうしても愛を書きたい﹂という
しみを書く﹄
﹃悲しみを読む
愛
人間の身体が食べ物がないと飢えてし
言 葉 の 扉 が 開 か れ る こ と は あ り ま せ ん。
る の で す。 だ か ら、 書 け な く て も 書 く、
まうように、人間の魂は、よい言葉がな
しかし、自転車の乗り方を覚えた人がそ
苦しければ苦しいと、悲しければ悲しい
ければ飢えてしまうものです。
れを忘れることがないように、一旦、言
一六〇〇円︶
*﹃井筒俊彦
言語の根源と哲学の発生﹄
︵河出書房新社KAWADE道の手帖・
安 藤 礼 二・ 若 松 英 輔 責 任 編 集・ 税 別
葉との関係を作ることができれば、生涯
− 30 −
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N FF O
O RR M
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A TT II O
ON
N
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定休日については、お手数をおかけしますが弊社 HP または直接各店までお問い合わせ下さい。
− 31 −
本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも
☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、
しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。
四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、
掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお
http://www.junkudo.co.jp/
QR コード
︵緒︶
ではなくなったことに、異常
こるゲリラ豪雨が珍しいもの
た。こういった突然湧いて起
が続き、地面は池のようだっ
の雷雨。一時間ほど豪雨と雷
たけなわというところで突然
いるうちに祭りが始まり、宴
だったが、かろうじて曇って
た。 曇 り の ち 雨 の 天 気 予 報
先日、近所で夏祭りがあっ
PC ・スマートフォンから
い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て
ありがとうございます。本誌定期購読料は
以下の通りです。
定期購読料
年間一二三〇円︵送料込︶
現金書留もしくは八十二円切手十五枚で
お申し込み先
│
ジュンク堂書店ジュンク特急便係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
五九五六 六一〇〇
五九五六 六一二〇
〇三
│
編集後記
│
住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。
〒
│
〇三
FAX TEL
返しいたしませんのでご了承下さい。
│
ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
│
│
│
を感じる。
− 32 −
☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。
〒
1710022
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
ラピュタ好きの兄と、二人で台詞の掛け
を 再 現 で き る ま で に な っ た の で し た。
一人で﹃トトロ﹄を﹃天空の城ラピュタ﹄
を児童文学からとったものがたくさんあ
﹃ 借 り ぐ ら し の ア リ エ ッ テ ィ﹄ な ど 題 材
りますが、﹃ゲド戦記﹄﹃ハウルの動く城﹄
幼い頃、風邪を引いて横になっている
発行している小冊子﹃熱風﹄に出会えた
かったのが、そのスタジオジブリが毎月
と い う 訳 で、 書 店 員 に な っ て う れ し
火の悪魔﹄徳間書店から、それぞれ出版
ち ﹄ 岩 波 少 年 文 庫、﹃ 魔 法 使 い ハ ウ ル と
﹃ゲド戦記﹄岩波書店、﹃床下の小人た
ひこの夏読んでみませんか。
﹁ジブリ日和﹂
しかないとき、テレビの前に布団を敷い
ことです。大宮髙島屋店でもひっそりと
ります。お読みになった方もいらっしゃ
て寝ても良い、という我が家のルールが
無料配布していますが、置くとあっとい
ると思いますが、その原作がまた大変す
ありました。そういう時に必ず観ていた
されています。映画と違った展開や結末
合いをして遊んだのも懐かしい思い出
のが、スタジオジブリ制作の﹃となりの
う間になくなってしまいます。知ってい
の祖母と思っていました。
は一心同体。かんたのおばあちゃんは私
に乗ったことか。もはやメイちゃんと私
す。もし運良く店頭でみつけたら、ぜひ
ファンなら垂涎ものの内容が山盛りで
宮 崎 駿 監 督 の 最 近 の 動 向 な ど、 ジ ブ リ
原作翻訳にからんだ話、引退宣言をした
建築家藤森照信氏のエッセイや、映画の
先か映画が先か、あなたならどちらにし
から新訳版も発売になりました。原作が
が、今年六月に新潮文庫と角川文庫など
もともと岩波少年文庫から出ていました
マ ー ニ ー﹄、 こ ち ら も 原 作 が あ り ま す。
七 月 に 公 開 と な り ま し た﹃ 思 い 出 の
ばらしい。昔に読んだ方もまだの方もぜ
トトロ﹄であり、少し大きくなってから
に驚き、感動すること間違いなしです。
ラピュタの主人公の、パズーとシータ
そこには、映画制作の裏話はもちろん、
る人は待っているのですね。
は私の友達、二人を助けてくれる空賊の
653- 6500013 0021
︵嶋︶
ますか。
さて、ジブリ作品にはオリジナルもあ
手に取ってみてください。
は ほ ぼ 全 て の 台 詞 を 覚 え、 観 な く て も
一〇〇一
五二一二
│
│
ド ー ラ が 大 好 き で し た。 と う と う、 私
と一緒にいったい何回空を飛び、猫バス
は﹃天空の城ラピュタ﹄でした。トトロ
です。
TEL TEL
二〇一四年八月五日発行
﹁書
﹂ 第 号
ほんのしるべ
頒価五十円︵本体四十六円︶
標
編集・発行人
工
藤
恭
孝
神戸市中央区三宮町一の六の十八
︵〇七八︶三九二
発 行 所
㈱ジュンク堂書店 〒
印 刷 所
︵〇七八︶五七五
㈱七
旺
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〒 神戸市長田区一番町二丁目一
429