JBIC2OO5 2004年度の業務概況 - 国際協力銀行

JBIC2OO5
2004 年度の業務概況
■
z ―概況 .......................................................6
■
x ―財務の状況 ..............................................8
■
c ―国際金融等業務の実績 ............................13
■
v ―海外経済協力業務の実績 .........................18
■
b ―付加価値の創造と情報発信 ......................24
2004 年度の業務概況―■― 5
1 ―概況
1 ―出融資・保証業務
2004 年度の出融資・保証承諾額は、前年度比 0.4 %増
また、わが国のエネルギー・鉱物資源の安定確保や供
の 1 兆 9,189 億円となり、アジア通貨危機対応の支援が終
給多角化支援を目的として、アゼルバイジャンのアゼリ・
了した 2000 年度以降、ほぼ同規模で推移しています。
チラグ・グナシリ
(ACG)油田開発事業やチリ銅鉱山拡張
2005 年 3 月末時点の出融資残高は前年度比 3 %減の 19
事業等、資源開発案件向け融資が、3,622 億円(投資金
兆 9,954 億円となる一方、近年、保証機能の活用を積極的
融:3,037 億円、輸入金融:585 億円)
と同 32 %を占めま
に進めていることもあり、保証残高は同比 21 %増加の
した。
保証機能においては、アジア債券市場育成イニシアテ
9,035 億円となりました。
ィブに基づく、日系企業が発行するタイ
・バーツ建て社債
■―国際金融等業務
に対する保証や韓国の債券担保証券に対する保証に加
日本の貿易・投資活動や国際金融秩序の安定を支援
えて、民間金融機関の海外シンジケートローンに対する保
する「国際金融等業務」の 2004 年度出融資・保証承諾
証等、民間金融機関の補完および開発途上国への民
額は、前年度比 15%減の1 兆 1,203 億円となりました。
間資金の動員を促進すべく、2,160 億円の保証を供与し
主な特徴としては、日本企業の海外事業展開・参画を
ました。
支援する一般投資案件向け融資が、前年度比 50 %増
地球温暖化対策、アジアにおけるエネルギー効率化へ
の 4,131 億円となり、国際金融等業務承諾額の 37 %を
の取組みを支援するべく、当行発足後、同業務では初
占めました。
これは、中近東・中南米諸国を中心にプロジ
めてとなる、ESCO・再生可能エネルギー事業向け投資ファ
ェクト・ファイナンスの手法を活用した案件や事業参画型
ンド、日本温暖化ガス削減基金および日本カーボンファイ
の大型インフラ案件が増加したことによります。
ナンス
(株)向けの計 3 件、22 億円の出資を行いました。
地域別・金融目的別承諾額
(単位:百万円)
金融目的
地域
国際金融等業務
輸出金融 輸入金融 投資金融
出資
海外経済協力業務
事業開発等
保証
小計
金融
アジア
東アジア
東南アジア
南アジア
中央アジア・コーカサス
大洋州
ヨーロッパ
中東欧・ロシア
西ヨーロッパ
中東
アフリカ
円借款
海外投融資
総合計
小計
(貸付・出資)
構成比
構成比
構成比
31,327
31,586
187,027
―
6,540
23,420
279,900
25%
624,983
―
624,983
78%
904,883
47%
―
―
93,617
―
6,540
12,060
112,217
10%
85,875
―
85,875
11%
198,092
10%
23,381
31,586
73,898
―
―
11,360
140,224
13%
334,389
―
334,389
42%
474,613
25%
―
―
529
―
―
―
529
0%
172,442
―
172,442
22%
172,971
9%
7,946
―
18,983
―
―
―
26,930
2%
32,277
―
32,277
4%
59,207
3%
76,527
4%
―
15,429
61,098
―
―
―
76,527
7%
―
―
―
22,101
―
65,903
―
―
―
88,005
8%
47,838
―
47,838
―
6%
135,843
7%
22,101
―
59,443
―
―
―
81,545
7%
47,838
―
47,838
6%
129,383
7%
―
―
6,460
―
―
―
6,460
1%
―
―
―
6,460
0%
58,724
9,862
232,016
―
5,400
3,600
309,602
28%
98,732
―
98,732
12%
―
408,334
21%
0%
821
411
―
―
―
―
1,232
0%
5,732
―
5,732
1%
6,964
サハラ以北
821
―
―
―
―
―
821
0%
5,732
―
5,732
1%
6,553
0%
サハラ以南
―
411
―
―
―
―
411
0%
―
―
―
411
0%
1,720
1,217
170,769
―
―
188,975
362,681
32%
21,320
―
21,320
384,001
20%
―
1,217
20,384
―
―
132,707
154,308
14%
―
―
―
1,720
―
150,385
―
―
56,268
208,373
19%
21,320
―
21,320
―
2,361
0%
―
―
―
215,995 1,120,308
100%
798,605
―
798,605
米州
北米
中南米
その他
合計
118
―
―
2,243
―
114,811
58,505
716,814
2,243
11,940
6―■― 2004 年度の業務概況
―
3%
―
3%
―
154,308
8%
229,693
12%
2,361
0%
100% 1,918,913 100%
■―海外経済協力業務
政府開発援助( ODA )のうち主に円借款を担当する
次貧困削減支援借款等、2 年ぶりにプログラム型円借款
を承諾しました。
「海外経済協力業務」
の 2004 年度出融資承諾額は、多
環境案件、貧困対策案件ともに年々増加しており、環
様化する開発ニーズへ の対応を踏まえて、前年度比
境案件を 24 件(円借款承諾額の 60 %)
、貧困対策案件
36 %増の 7,986 億円となりました。
を 13 件(同 22 %)
承諾しました。
地域別の承諾額は、引き続きアジアが中心(78 %)
で
分野として 2004 年度に追加導入された
「平和の構築支
96 カ国目の供与国として、ウクライナ向けに新規に承諾
援」
を、スリランカ向け 3 案件に初めて適用しました。また、
しました。主要国に対する融資承諾額としては、インド向
日本の優れた技術やノウハウを活用し、
「顔の見える援
け 1,345 億円、インドネシア向け 1,148 億円、
トルコ向け
助」
を促進するために 2003 年度に導入された本邦技術
987 億円、中国向け 859 億円でした。また、開発途上国
活用条件(STEP)適用案件は、ベトナム向け港湾開発事
の制度・政策環境の改善を目的として、ベトナム向け第 3
業等 4 件、833 億円を承諾しました。
■―わが国の資源安定確保
2005 年 2 月の京都議定書発効を踏まえ、温室効果ガス
世界最大の鉄鉱石供給会社であるブラジルのリオドセ社
削減事業の実施促進、日本企業の排出権獲得への支援を
をはじめ、中南米、中央アジア諸国の計 4 政府金融機関・資
目的に、中南米、中東欧諸国を中心に計 7 政府・政府機関
源会社との間で業務協力協定を締結しました。
および地域国際機関と業務協力協定を締結したほか、国連
■―国際機関との連携
世界銀行、ADBとの共同調査「東アジアのインフラ整備
■―スマトラ沖大地震・インド洋津波被害等への対応
に向けた新たな枠組み」を実施したほか、米州開発銀行
インドネシア、
スリランカ、
モルディブにおいて、災害直後から
(IDB)
、ADBと共に「開発援助と地域公共財に関する東京
世界銀行、
アジア開発銀行(ADB)等と共にニーズ調査を主
フォーラム」を開催するなど、国内外への情報発信・知的連
導しました。引き続き、復旧・復興計画の策定や復興支援の
携を強化しました。
供与等につき、各国政府と協議・検討中です。
また、2005 年
また、2003 年 12 月に策定された「日本・ASEAN 行動計
1 月に開催された国連防災世界会議(於:神戸)において、
画」に基づき、メコン地域への海外投資促進のため、国連
地方自治体の防災知見を活かした国際協力に関するシン
貿易開発会議(UNCTAD)
と共に、カンボジア政府およびラ
ポジウムを開催しました。
オス政府に対し、投資環境整備・改善にかかる具体的な政
策を提言しました。
■―中堅・中小企業向け支援
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
2 ―業務連携と情報提供活動
環境計画金融イニシアティブ
(UNEP FI)
に参画しました。
業地
務域
概別
況
円借款の供与条件のうち、優先条件の適用可能対象
すが、2004 年度はアジア以外の国向けの承諾が増加し、
■―地球規模問題への対応
業2
務0
概0
況4
年
度
の
世界遺産の保護を通じた貧困削減の実現を図るためユ
群馬県太田市商工会議所との協力による「太田−国際
ネスコ世界遺産センターと、アフリカ地域の経済開発に効果
銀ものづくり支援懇談会」の設置等、地方製造業の海外進
的に取り組むことを目的にアフリカ開発銀行と、それぞれ業
出に関する投融資相談や情報提供を強化しました。
務協力協定を締結しました。
2004 年度の業務概況―■―7
2 ―財務の状況
1 ―出融資実績の概要
は、国際金融等業務では 1 兆 287 億円、海外経済協力業
当行の 2004 年度(2004 年 4 月 1 日から2005 年 3 月 31
務では 6,621 億円でした。
日)出融資実績(当行業務として行う貸付と出資の実行額)
【出融資事業計画および実績推移】
(単位:億円)
2001 年度
2002 年度
2003 年度
2004 年度
(平成 13 年度)
(平成 14 年度)
(平成 15 年度)
(平成 16 年度)
当初計画
国際金融等業務
海外経済協力業務
実績
当初計画
実績
当初計画
実績
当初計画
実績
輸出
2,280
1,866
2,310
1,213
2,620
2,185
2,460
1,655
輸入・投資
6,070
8,229
7,040
7,556
6,700
7,354
6,830
7,170
事業開発等金融
4,950
2,937
2,090
2,720
2,050
1,755
2,050
1,462
出資
100
−
60
−
30
−
60
1
小計
13,400
13,031
11,500
11,489
11,400
11,294
11,400
10,287
8,600
6,559
7,570
5,959
7,370
6,296
6,970
6,597
100
18
30
7
30
3
30
24
小計
8,700
6,576
7,600
5,966
7,400
6,299
7,000
6,621
合計
22,100
19,608
19,100
17,455
18,800
17,593
18,400
16,909
円借款
海外投融資
2 ―決算の概要
■―経理の特徴
(1)区分経理
(3)財務諸表の作成
当行は国際協力銀行法第 41 条に基づき、国際金融等
当行は国際協力銀行法第 40 条に基づき、半期ごとに財
業務にかかる国際金融等勘定と海外経済協力業務にかか
務諸表を作成して財務大臣に届け出るとともに官報に公告
る海外経済協力勘定とを区分して経理を行っています。
しています。毎年度の財務諸表は決算報告書とともに政
府に提出され、会計検査院の検査を経て国会に提出され
(2)会計処理基準
当行の会計処理は、
「国際協力銀行法」
「特殊法人等会
計処理基準(1987 年 10 月 2 日財政制度審議会公企業会
計小委員会報告)
」および関連法規等に基づいて行ってい
ます。
8―■― 2004 年度の業務概況
ます。
業2
務0
概0
況4
年
度
の
■―損益の状況
(1)国際金融等勘定
(2)海外経済協力勘定
2004 年度の国際金融等勘定における利益金は、658 億
2004 年度の海外経済協力勘定の利益金は、258 億円で
円でした。同利益金は、国際協力銀行法第 44 条第 1 項お
した。同利益金は、国際協力銀行法第 44 条第 2 項の規定
よび国際協力銀行法施行令(平成 11 年政令第 266 号)第
により、
その全額を海外経済協力勘定積立金として積み立
7 条の規定に基づいて、
その 2 分の 1 にあたる329 億円を国
てています。
業地
務域
概別
況
際金融等勘定準備金として積み立て、残りの 329 億円を同
法第 44 条第 5 項の規定により国庫納付しています。
【損益推移】
国際金融等勘定
(単位:百万円)
利益金
2002 年度
2003 年度
2004 年度
(平成 14 年度)
(平成 15 年度)
(平成 16 年度)
88,212
60,492
75,352
65,780
一般勘定準備金繰入額
44,105
30,246
37,676
32,890
国庫納付額
49,541(注1)
30,246
37,676
32,890
44,105
30,246
37,676
32,890
―
―
―
98,423
△ 260,052
64,823
25,834
98,423
△ 260,052
64,823
25,834
うち一般勘定国庫納付額
うち特別勘定国庫納付額
海外経済協力勘定
2001 年度
(平成 13 年度)
利益金
(注2)
(積立金積立額)
(注2)
5,436(注1)
(注 1)国際金融等勘定では、1970 年 4 月のインドネシア債権国会議の合意に基づいて策定された同国に対する債務救済措置の実施に関する業務について「国際協力銀行法
による貸付金の利息の特例等に関する法律(昭和 46 年法律第 45 号)
」に基づき、
「特別勘定」を設けて経理し、特別勘定の利益金は国際協力銀行法による貸付金の
利息の特例等に関する法律第 4 条第 2 項の規定による特別勘定の利益金の処分の特例に関する政令(昭和 46 年政令第 123 号)第 1 項の規定により、
その全額を国
際金融等勘定特別勘定積立金として積み立ててきました。
しかしながら、2001 年 9 月に国際協力銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律第 4 条第 2 項の規定による特別勘定の利益金の処分の特例に関する政令を
廃止する政令(平成 13 年政令第 283 号)が制定・施行されたことに伴い、特別勘定の利益金の国際金融等勘定特別勘定積立金への積み立ては終了し、2001 年度の
利益金と同積立金額の合計額である54 億 36 百万円を、2001 年 9 月に国庫納付しました。
(注 2)利益金および積立金積立額の欄の△は、
それぞれ損失金および積立金の取崩額を表します。
■―資産・負債の状況
2004 年度末において、国際金融等勘定では、総資産は 9
当行は、国際協力銀行法第 46 条に基づき、国際金融等
兆 7,795 億円、借入金等は 7 兆 938 億円、資本合計は 1 兆
勘定の借入金等を資本金と準備金の合計額の 10 倍以内
7,275 億円、海外経済協力勘定では、総資産は 11 兆 2,451
に、海外経済協力勘定の借入金等を資本金と積立金の合
億円、借入金等は 4 兆 2,255 億円、資本合計は 7 兆 26 億
計額の 3 倍以内に制限していますが、2004 年度末における
円となっており、両勘定合計では総資産は 21 兆 246 億円、
借入金等は、同借入制限を大きく下回って、国際金融等勘
借入金等は 11 兆 3,192 億円、資本合計は 8 兆 7,301 億円
定において約 4.3 倍、海外経済協力勘定において 0.6 倍に
となっています。
抑えられています。
2004 年度の業務概況―■―9
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
【貸借対照表主要科目推移】
国際金融等勘定
(単位:億円)
2001 年度末
2002 年度末
2003 年度末
2004 年度末
(平成 13 年度末)
(平成 14 年度末)
(平成 15 年度末)
(平成 16 年度末)
116,087
107,000
101,434
97,795
105,577
97,607
90,870
84,998
11
11
―
1
5,556
6,305
7,457
9,035
借入金及び債券
91,852
82,503
76,433
70,938
資本合計
16,379
16,543
16,994
17,275
総資産
うち貸付金残高
出資金残高
支払承諾見返残高
(注)
資本合計/総資産
海外経済協力勘定
14.11 %
総資産
16.75 %
17.66 %
113,098
111,817
112,009
112,451
うち貸付金残高
110,244
112,341
113,257
113,405
出資金残高
1,538
1,541
1,533
1,551
借入金及び債券
47,248
46,367
43,909
42,255
資本合計
65,660
65,250
67,901
70,026
資本合計/総資産
両勘定合計
15.46 %
58.06 %
総資産
うち貸付金残高
出資金残高
支払承諾見返残高
(注)
借入金及び債券
資本合計
資本合計/総資産
58.35 %
60.62 %
62.27 %
229,184
218,817
213,443
210,246
215,821
209,948
204,126
198,403
1,550
1,553
1,533
1,552
5,556
6,305
7,457
9,035
139,100
128,870
120,342
113,192
82,039
81,793
84,896
87,301
35.80 %
37.38 %
39.77 %
41.52 %
(注)支払承諾見返残高は保証業務の残高です。
■―民間会計基準に準拠した財務諸表および行政コスト計
算財務書類について
2001 年 6 月に財政制度等審議会財政制度分科会法
案して算出する行政コスト、すなわち、特殊法人等の業務
にかかる当該年度における国民負担を集約表示するもので
す(詳細は P.144 参照)。
制・公企業会計部会公企業会計小委員会において、特殊
また当行は、行政コスト計算書の基礎となる民間会計基
法人等に対し民間企業と同様の会計処理による財務諸表
準に準拠した財務諸表について 2001 年 3 月期より公表し
の作成と行政コスト計算書の開示を求める報告書が提示さ
ており、2002 年 9 月中間期からは、年度の財務諸表に加え、
れたことを踏まえ、当行は、2000 年度より前述の国際協力
中間財務諸表も作成・公表しています。また、
これらの財務
銀行法第 40 条に基づき作成した財務諸表(以下、
「法定財
諸表については、自主的に中央青山監査法人から監査証
務諸表」
という)
とは別に、行政コスト計算財務書類を作成
明を取得しています。民間会計基準準拠財務諸表を作成
し、公表しています。
「行政コスト計算財務書類」は、民間
するにあたっては、当行は従来より作成している法定財務諸
の会計基準に準拠して作成する民間企業仮定貸借対照
表に会計上の修正を加える必要がありますが、両者の主要
表、民間企業仮定損益計算書、キャッシュ・フロー計算書お
な会計の相違は、貸倒引当金の計上方法、退職給付引当
よび行政コスト計算書等からなります。行政コスト計算書は
金の計上、外貨建て取引および金融商品の会計処理変更
民間会計基準による民間企業仮定損益計算書上の費用
に関する点です。民間会計基準準拠財務諸表における貸
(収益は控除)に政府出資等の国にとっての機会費用を勘
倒引当金の算出にあたっては、当行は、金融検査マニュア
10―■― 2004 年度の業務概況
ルに則した資産自己査定を踏まえ、
リスク管理債権額を把握
するとともに、
これに整合的な引当を行っています(詳細は
なお、
これらについては、当行に備え置いてあるほか、本年
業2
務0
概0
況4
年
度
の
次報告書およびホームページに掲載して公表しています。
P.145 参照)。
【民間会計基準準拠財務諸表の損益推移】
(単位:百万円)
2001 年度
2002 年度
2003 年度
2004 年度
(平成 13 年度)
(平成 14 年度)
(平成 15 年度)
(平成 16 年度)
国際金融等勘定
当期純利益
121,225
88,232
46,453
16,343
海外経済協力勘定(注)
当期純利益
140,550
△ 583,284
161,457
114,079
(注)当期純利益の欄の△は、当期純損失を表します。
【民間会計基準準拠財務諸表の貸借対照表主要科目推移】
国際金融等勘定
2001 年度末
2002 年度末
2003 年度末
2004 年度末
(平成 13 年度末)
(平成 14 年度末)
(平成 15 年度末)
(平成 16 年度末)
120,449
107,172
101,462
98,273
うち有価証券
15
―
―
1
貸出金 110,030
97,387
87,277
84,466
5,747
6,290
7,249
8,993
借用金及び債券
91,373
81,710
75,633
71,105
資本合計
15,603
16,044
16,207
15,993
総資産
支払承諾見返(注)
資本合計/総資産
海外経済協力勘定
12.95 %
総資産
14.97 %
15.97 %
16.27 %
110,280
105,776
106,935
108,257
うち有価証券
1,226
1,229
1,205
1,198
貸出金 110,243
104,255
105,785
107,407
借用金及び債券
47,248
46,367
43,909
42,254
資本合計
62,777
59,135
62,752
65,759
資本合計/総資産
両勘定合計
(単位:億円)
56.93 %
総資産
うち有価証券
貸出金 支払承諾見返
(注)
借用金及び債券
資本合計
資本合計/総資産
55.91 %
58.68 %
60.74 %
230,729
212,948
208,397
206,530
1,242
1,229
1,205
1,199
220,274
201,643
193,062
191,874
5,747
6,290
7,249
8,993
138,621
128,077
119,542
113,359
78,380
75,180
78,959
81,753
33.97 %
35.30 %
37.89 %
39.58 %
(注)支払承諾見返残高は保証業務の残高です。
3 ―資金調達
当行はその活動に必要な資金を、財政融資資金借入金、
政府保証債、政府出資金、政府交付金等の多様な手段に
よって調達しています。また 2001 年度からは、新たな資金
調達として財投機関債の国内資本市場での発行を行って
います。
当行の融資業務は長期融資であることから、融資期間に
応じた長期の資金調達を実施しています。
財政融資資金、政府保証債発行にかかる政府保証、政
2004 年度の業務概況―■―11
業地
務域
概別
況
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
府出資金および政府交付金については、国の予算(一般
近年の資金調達実績および 2005 年度の資金調達計画は
会計予算および特別会計予算)の一環として国会に提出さ
下の表の通りです。
れ、
当行の収入支出予算とともに国会の承認を得ています。
【資金調達の実績と予算】
(単位:億円)
2001 年度実績
(平成 13 年度)
国際金融等勘定
2003 年度実績
2004 年度実績
2005 年度予算
(平成 16 年度) (平成 17 年度)
政府からの借入金
5,495
2,200
2,885
3,216
3,831
政府保証外債
1,190
610
1,373
2,406
2,675
財投機関債
1,000
2,000
2,400
2,400
2,600
回収金等によるその他自己資金
5,346
6,679
4,636
2,265
2,194
13,031
11,489
11,294
10,287
11,300
4,226
4,340
2,945
3,689
4,470
△ 495
△ 565
1,051
766
386
2,845
2,191
2,003
1,866
1,744
−
−
300
300
300
小計
海外経済協力勘定
2002 年度実績
(平成 14 年度) (平成 15 年度)
政府からの借入金
回収金等によるその他自己資金
政府一般会計からの出資金
国庫補助金等(政府交付金)
小計
6,576
5,966
6,299
6,621
6,900
合計
19,608
17,455
17,593
16,909
18,200
■―政府保証外債
■―財投機関債
当行は国際金融等業務の所要資金の一部を国際資本
当行は、財政投融資制度改革の趣旨を踏まえ、当行自身
市場における政府保証外債の発行によって調達していま
の信用力に依拠した資金調達を行うべく、2001 年度から国
す。2004 年度末現在の政府保証外債の残高は 1 兆 1,145
内資本市場において、政府保証の付かない債券(財投機
億円、国際金融等勘定の借入金残高(借入金および債券
関債)
を発行しています。2004 年度には 2,400 億円の財投
の合計)の 16%となっています。当行の融資は原則として
機関債を発行し、2005 年度においては、2,600 億円の発行
円建てで実行しますが、国際金融等業務においては、政策
を計画しています。本債券により調達した資金は、国際金融
効果を発揮するために必要な場合には外貨建て融資を実
等勘定における円建て融資のための所要資金に充当して
施しており、政府保証外債によって調達した外貨は、
かかる
います。
外貨建て融資の原資に充当しています。
2005 年度においては、2,675 億円(25 億米ドル相当)の
政府保証外債の発行を計画しています。
当行の財投機関債の格付は以下の通りとなっており、
い
ずれも日本国政府と同じ格付となっています(2005 年 3 月
末日現在)。
当 行 の政 府 保 証 外 債は、格 付 機 関より日 本 国 政 府
と同 格の格付を取得しており
( 2005 年 3 月末日現在、
Moody's:
A2(注 2)
Moody's:Aaa(注 1)、Standard & Poor's:AA ―)、
また預金取扱
Standard & Poor's:
AA ―
金融機関の自己資本比率算出にかかるリスクウェート
(いわ
格付投資情報センター
(R&I):
AAA
ゆるリスクウェート)
がゼロの資産として扱われているなど、国
日本格付研究所(JCR):
AAA
際資本市場の投資家に対して優良な投資機会を提供して
います。
(注 1)外貨建ておよびユーロ円建て債務格付。
(注 2)自国通貨建て債務格付。
12―■― 2004 年度の業務概況
3 ―国際金融等業務の実績
当行は、国際金融等業務における出融資および保証に
額ベースでは前年度比 1.2 %減の 1,148 億円となりました。
ついて、
その公益的な役割とともに、当行の機能や特色を、
このうち、開発途上国の現地企業・現地金融機関リスク・テ
民業補完の観点から活かすことが不可欠と考えています。
イクによる与信は 647 億円となり、輸出金融全体の 56 %を
とりわけ開発途上国におけるプロジェクトについては、民間
占めています。
金融機関にとってリスクの評価、負担が困難なため、当行が
投資金融の承諾額は、前年度比 2 %減の 7,168 億円と
リスクを引き受け、軽減することによって初めて実現可能と
なりました。日本のエネルギー・鉱物資源の安定確保や供
なる場合があります。具体的には、日本企業の海外における
給多角化支援を目的として、アゼルバイジャンのアゼリ・チラ
ビジネス機会の創出・確保に向けて、保証機能を活用しつ
グ・グナシリ
( ACG )油田開発事業やチリ銅鉱山拡張事業
つ、
プロジェクト・ファイナンスやストラクチャード・ファイナンスに
等、資源向けの投資金融は 3,037 億円となりました。一般
よる与信や現地企業リスク・テイクを積極的に行うとともに、
投資については、
アラブ首長国連邦向け発電・淡水化事業、
公的機関として外国政府や国際機関等との間で有する関
メキシコ向け大型 IPP 事業等、事業参画型の大型インフラ
係も活用しているところです。
案件への融資を中心に、前年度比 50 %増の 4,131 億円と
当行は、
こうした国際金融等業務においてわが国の輸出
なりました。プロジェクト・ファイナンスやストラクチャード・ファイ
入、海外における経済活動の促進、国際金融秩序の安定
ナンス案件および現地企業リスク・テイク案件は 3,629 億円
への貢献を通じて、一層豊かな社会の構築に寄与すべきで
となり、投資金融全体の 51 %を占めています。
あると認識しています。
事業開発等金融は、3 件、119 億円でした。
また、
アジア債券市場育成イニシアティブに基づく、日系企
■―出融資概況
業が発行するタイ
・バーツ建て社債に対する保証や、韓国の
2004 年度の国際金融等融資業務における出融資および
保証実績は、
承諾額が前年度比 15 %減の 1 兆 1,203 億円、
【出融資保証実績】
実行額は、同 4 %減の 1 兆 3,159 億円でした。また、回収額
2003 年度
2004 年度
(平成 15 年度)
(平成 16 年度)
は前年度比 12 %減の 1 兆 5,084 億円で、年度末の出融資
保証残高は、同 4 %減の 9 兆 4,034 億円となりました。近年、
(単位:百万円)
承諾額
保証機能の活用を積極的に進めていることもあり、出融資残
高は、前年度比 7 %減の 8 兆 4,999 億円となったのに対し、
保証残高は、
同 21% 増の 9,035 億円となりました。
この結果、
増減率
輸出金融
116,208
114,811
△ 1.2%
輸入金融
133,364
58,505
△ 56.1%
投資金融
729,383
716,814
△ 1.7%
事業開発等金融
104,136
11,940
△ 88.5 %
―
2,243
皆増
出資
国際金融等業務においては、過去 5 年間で出融資残高は、
保証
240,881
215,995
△ 10.
3%
18 %減となる一方、保証残高は 2 倍以上(112 %増)
となり
合計
1,323,971
1,120,308
△ 15.4%
出融資
1,129,405
1,028,745
△ 8.9%
保証
241,801
287,176
18.8%
合計
1,371,206
1,315,922
△ 4.0%
出融資
1,597,256
1,393,398
△ 12.8%
保証
113,702
115,031
1.2%
合計
1,710,958
1,508,429
△ 11.8%
出融資
9,086,993
8,499,897
△ 6.5%
(年度末) 保証
745,734
903,483
21.2%
合計
9,832,727
9,403,380
△ 4.4%
ました。
また、出融資・保証承諾額に占める保証承諾額の割
実行額
合も、過去 5 年間で 10 %から19 %まで増加しました。
金融目的別承諾額で見ると、輸出金融は、中東向けの案
件を中心に件数ベースでは、前年度を上回ったものの、承諾
回収額
残高
2004 年度の業務概況―■―13
業2
務0
概0
況4
年
度
の
業地
務域
概別
況
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
債券担保証券に対する保証に加え、民間金融機関の補完
選定するよう努めています。
および開発途上国への民間金融機関の海外シンジケートロ
日本企業が当行の F/ S の活用を通じ、プロジェクト実施
ーンに対する保証を含め、2,160 億円の保証を行いました。
主体に対し、企画、提案を行うことで日本企業の受注拡大
当行発足後、国際金融等業務において初めてとなる、ア
に結びつくことが期待されます。当行は、今後も引き続き日
ジア地域を主な投資対象とするESCO・再生可能エネルギ
本企業のニーズに対応するべく、優良案件の発掘・形成を
ー事業向け投資ファンド
(FE クリーン・エナジー・ファンド)、
進めて行く予定です。
日本温暖化ガス削減基金および日本カーボンファイナンス
(株)向けの計 3 件、22 億円の出資を行いました。当行は、
地球温暖化対策への取組みも積極的に支援しています。
■― OECD における公的輸出信用の議論への参加
当行は、輸出信用を供与する際の融資条件を、経済協
力開発機構(OECD)の
「公的輸出信用アレンジメント」
に従
■―案件発掘・形成調査業務
って決定しています。本アレンジメントは、公的輸出信用の
当行は、開発途上国で実施される個別プロジェクトの初
秩序ある活用のための枠組みを提供し、公平な競争環境の
期段階において必要なフィージビリティー・スタディー
(F/S)等
実現を目的とするものであり、プラント輸出等に対して公的
の調査を実施し、わが国からのプラント輸出につながる優良
輸出信用が適用される場合の共通のルールとして、わが国
案件の発掘・形成の支援を行っています。本制度は、わが
を含む主要先進国 26カ国で合意しています。
国プラント輸出関連企業の競争力強化を目的としています。
当行は、アレンジメントがわが国からの輸出に対して公正
さらに、開発途上国のプロジェクト実施主体の案件形成能
で、また輸出者間の適正な国際競争の促進に資する共通
力の向上にもつながっています。2004 年度には、電力・エ
の枠組みとなるよう、OECD における議論に積極的に参加
ネルギー関連や環境関連のセクターを中心に 11 件の調査
しています。2004 年 1 月に、改訂アレンジメントが発効した
を実施しました。
後も、引き続きOECD のアレンジメント関連の諸会合に参加
調査案件の選定にあたっては、当行ホームページを通じ
し、環境配慮、贈賄の防止や、適用すべきプレミアムの水
て事前にアンケートを実施し、日本企業から候補プロジェクト
準等の輸出信用を取り巻くさまざまな課題により適切に対応
に関する情報を収集しています。その結果を踏まえ、わが国
できるよう、国際的な共通ルールの策定に積極的に参画し
からの輸出に結びつく可能性を考慮し、適切な調査案件を
ています。
■―カンボジアとラオスに投資環境整備に関する
政策を提言
構・組織の改善等、中長期および短期間(1 年以内)
で
取り組むべき提 言が盛り込まれています 。当 行は、
当行と国連貿易開発会議( UNCTAD )は、2004 年
UNCTADと共に提言の実現に向けて支援をしていき
12 月、カンボジアとラオスに対し
「海外直接投資環境整
ます。これにより両国への日本企業の進出が期待され
備・改善に係る政策提言書」
(通称:Blue Book)
を提出
ます。
しました。この提言書は、2003 年 11 月に当行、UNC-
TA D と国 際 商 工 会 議 所( I C C )が共 同で締 結した
「ASEAN 新メンバー国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、
ベトナム)向け海外直接投資促進協力に係る覚書」
に
基づいて作成されたものです。
同提言書には、両国の海外直接投資を促進するうえ
で必要な関係法令の整備、情報提供機能の強化、機
14―■― 2004 年度の業務概況
ラオスでの
提言書の授与式
■―国際機関や海外の輸出信用機関等との連携
ルクメニスタン国立対外経済関係銀行およびカザフスタン国
当行は、開発途上国における日本企業の事業環境を整
営石油・ガス会社と業務協力協定を締結しました。これらの
備する観点から、国際機関や海外の輸出信用機関(Export
協定は、お互いの業務戦略についての情報共有や当該国
Credit Agency:ECA)等とさまざまな形で連携し、協調関係
における法規制に関する情報交換等の連携を通じ、わが国
を強化しています。
との貿易拡大、
わが国からの投資促進を目的にしています。
2003 年 12 月に、「日・ASEAN 特別首脳会議」で採択さ
さらに、わが国の資源の安定確保に向け、資源開発に関す
れた「日本・ASEAN 行動計画」では
「JBICとASEAN 輸出
る情報交換等を行うことを目的に、世界最大の鉄鉱石供給
信用当局との間の貿易金融面における情報交換、ネットワ
会社であるブラジルのリオドセ社と業務協力協定を締結しま
ークづくりおよび協力を継続する」
ことが記されています。具
した。
体的には、当行は、アジア地域の ECA 間の連携促進を目
的として毎年開催されている
「アジア ECAフォーラム」
に第 1
回会合以来、2004 年 5 月に北京で開催された第 10 回会
■―わが国民間金融機関・地方自治体等との連携強化
関係を強化しています。例えば、民間金融機関においても
主導的な役割を果たしています。
出融資案件の環境配慮に対する関心が高まっていることを
また、2004 年 5 月には、国連環境計画金融イニシアティ
受け、当行と協調融資を行う民間金融機関との間で
「環境
に参加し、
「金融団体による環境及び持続可
ブ
(UNEP FI)
審査にかかる協定書」
を締結し、当行の環境審査に関する
能な開発に関する国連環境計画宣言」
に署名しました
(208
ノウハウの共有を図っています(P.26 参照)。
の署名機関:2004 年末現在)。UNEP FI は、環境配慮およ
また、近年は、地元の中堅・中小企業の海外事業展開
び持続可能な開発と金融機関の活動との連携を目指すイ
を積極的に支援する地方自治体が増えています。そうした
ニシアティブで、金融機関の環境配慮、企業の社会的責任
地方自治体や地方銀行、商工会議所の勉強会に、当行
や温暖化対策への貢献等、幅広い分野での情報・意見交
から講師を派遣し、海外投融資に関する情報を積極的に
換が行われます。UNEP FI は、2005 年 1 月にアジア太平洋
提供しています(P.17 参照)。さらに、当行の海外駐在員事
タスクフォースを立ち上げ、この地域での活動を本格化しつ
務所を通じて、わが国の中堅・中小企業と現地政府等との
つあります。地域タスクフォースとしては、北米、ラテンアメリ
対話の機会を設け、企業経営のグローバル化を支援して
カ、中東欧、アフリカに次ぐもので、地域のニーズにあった形
います。
当行は、融資や出資といった通常の資金提供に加え、民
当行は、アジア太平洋タスクフォースのもとに設けられたアウ
間金融機関では対応が難しい海外におけるポリティカル・リ
トリーチグループのチェアとして、地域内金融機関等と共に
(注)
スクの一部引き受け
(ポリティカル・リスク・デファーラル)
と
積極的な貢献を目指しています。また当行は、開発途上国
いった手法を用い、
日本企業の海外進出を支援しています。
における多数のプロジェクトの遂行にあたって当行が培って
加えて、海外現地法人における直接の資金調達を希望す
きた環境配慮に関する経験やノウハウを、他の政府系金融
る企業に対しては、地場金融機関の活用等についてアドバ
機関・民間金融機関・国際機関とも共有できるよう、さまざま
イスを行っています。
な場において情報発信に努めており、UNEP FI への参加
もこのような取組みの一例です(P.26 参照)。
ト
さらに 2004 年度に当行は、アゼルバイジャン国際銀行、
業地
務域
概別
況
管業
理務
体運
制営
と
当行は、民間金融機関と情報を共有・補完し、業務協力
合に至るまで毎年参加し、
長年の経験や業務実績を活かし、
で UNEP FI の活動を推進する役割が期待されています。
業2
務0
概0
況4
年
度
の
今後とも当行は、民間金融機関を補完し、その国際金融
を奨励する立場から、政策金融機関ならではの機能を一層
拡充していきます。
(注)ポリティカル・リスク・デファーラルとは、現地政府による外貨交換・送金規制を唯一、直接の原因とする当行への元本・利息等の不払いが生じた際に、
その規制が解除される
まで借入人に対して期限の利益の損失を求めず、保証人による保証履行を猶予するものです。
2004 年度の業務概況―■―15
の国
業際
務協
内力
容銀
行
■―中堅・中小企業のグローバリゼーションを支援
の海外事業に対する長期安定資金の融資に積極的に取り
今日、わが国の中堅・中小企業の優れた技術力は、国
組んでおり、融資件数も増加傾向にあります。近年、当行の
内外で高く評価されており、開発途上国もこのような企業の
融資を活用する中堅・中小企業の進出先としては中国やタ
投資誘致に力を入れています。他方、中堅・中小企業の側
イが多くなっており、今後の進出先としてはベトナムやインド
も、経済のグローバル化に伴い、国内の事業活動のみなら
が注目されています。
ず、海外での生産・販売も見据えた事業活動を行うことが重
当行は、融資案件に関する現地事業の F/S や海外におけ
要になっており、積極的な海外事業展開を図る企業が増え
るポリティカル・リスクの引き受け等、民間金融機関だけでは
ています。しかし、中堅・中小企業は大企業に比べ、海外
対応が難しい機能を補完しているほか、これまでの長年にわ
事業に必要な資金調達、情報入手、人材等で制約を抱え
たる業務を通じた諸外国政府との緊密な関係や海外駐在
ているのが実情です。こうした状況を踏まえ、当行は、
「融
員事務所のネットワークを活かして、中堅・中小企業の現地
資」
、
「情報提供」
、
「
(相手国政府への働きかけを通じた)問
でのスムーズな事業運営や問題解決をサポートしています。
題解決」の 3 つの機能を用いて、中堅・中小企業のグロー
なお、2004 年度より、当行では、取引のある中堅・中小企
バリゼーションを支援しています。
まず、当行では、民間金融機関との協調により、自動
車・デジタル家電等の製造業を中心とした中堅・中小企業
■―深まる商工会議所との連携
業のご要望に応え、
「中堅・中小企業懇談会」
を東京と大阪
で開催し、海外進出企業間の交流や海外事業に関する経
験や教訓の共有できるネットワークづくりに取り組んでいます。
懇談会の具体的な活動は、
( 1 )海外取引全般に関
群馬県「太田―国際銀ものづくり支援懇談会」の
する相談、
(2)講演会やセミナーの開催および講師の派
設立に協力
遣、
(3)
メールマガジンやホームページによる情報提供、
国内の有力な自動車・電機メーカーとその部品メーカ
(4)海外投資環境ミッションのサポート、等です。
ーが集結する群馬県太田市では、多くの中堅・中小企
関係者からは、
「JBIC は、海外取引について豊富な
業が米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)へ進出して
ノウハウを持っており、専門家の意見が聞ける良い機会
います。
当行は、
これまでも同地域の企業に融資を行い、
であり、地元太田に居ながら融資の相談ができ、海外の
海外進出を支援してきました。
さらに、2004 年 4 月から
生の情報が得られるメリットは大きい。これからは、海外
は、
「貿易・海外投資に関する移動相談室」
を定期的に
進出をより身近に考えられます」と大きな期待が寄せら
開催しています。
れています。
こうしたなか、同年 10 月に、群馬県太田商工会議所
を事務局とする
「太田―国際銀ものづくり支援懇談会」
当行では、今後、他地域でもご要望があれば、
さまざま
な支援を検討していきます。
が設立されました。当行が、商工会議所の組織的な枠
組みに協力し、企業の海外進出を支援するのは、初め
てのケースです。
懇談会には、製造業を中心に太田商工会議所の会
員企業約 50 社が参加しています。当行は、すでに海外
進出している企業、
もしくは海外進出を考えている企業
に、投融資の相談やタイムリーな情報提供を行うことに
より、中堅・中小企業のグローバルな事業展開を支援し
ていきます。
16―■― 2004 年度の業務概況
「太田―国際銀ものづくり支援懇談会」の設立総会
■―海外取引に関する相談・情報提供
講師を派遣し、情報を提供しています。2004 年には、46 件
当行は、貿易取引や海外進出のために必要な設備投資
のセミナーに講師を派遣しました。2004 年 10 月には、群馬
資金を融資するとともに、海外事情、投資環境に関する情
県太田市商工会議所を事務局として、
「太田―国際銀もの
報の提供、貿易・海外投資の手続きや手順、長期資金の
づくり支援懇談会」
が設立されました。
調達方法等に関する相談にも、本店、大阪支店をはじめ、
海外駐在員事務所でも積極的に応じています。
当行は、最新の海外ビジネス環境に関する情報を提供す
の投資環境をまとめた冊子を発行しています。これらの内容
治体や商工会議所とも連携し、札幌、仙台、栃木、群馬、
は、各国の情勢にあわせて随時更新しています。また、当
千葉、名古屋等に当行の職員が出張し、貿易・海外投資
行が、日本の製造業を対象に毎年行っている
「わが国製造
手続きや長期資金の調達方法等の相談に応じる
「貿易・海
業企業の海外事業展開に関する調査報告−海外直接投
外投資に関する移動相談室」
を開催しています。移動相談
資アンケート」の結果については、国内をはじめ、海外にお
室では、海外投資を検討する企業に対して事業計画上の
いて投資セミナーを開催し、日本企業や現地政府関係者に
アドバイスを行うなど、きめ細かな対応に努めています。2004
説明しています。当行では、国内をはじめ、海外においても
年度に開催した移動相談室は、全国で 60 回を数え、参加
貿易・海外投資に関する各種セミナーを開催し、情報提供
企業も近年増加しています。1953 年に始まった名古屋での
を行っています。
当行は、地方自治体、商工会議所や地方銀行等が開催
こうした当行の支援業務や活動内容、海外投資環境の最
(注)
新情報は、隔月配信のメールマガジンでも発信しています。
する諸外国の投資環境をテーマにした講演会やセミナーに
■―インドネシアで貿易・投資政策に関する
公開セミナー開催
2004 年 9 月、当行はジャカルタでインドネシア大学経
済社会研究所と
「インドネシアの貿易・投資政策に関す
ている生産・物流ネットワークを活用すれば、地場産業
にとっても技術やノウハウの吸収を通じて飛躍の機会が
生まれ、製造業の発展につながる、との認識が共有さ
れました。
る公開セミナー」
を共催しました。セミナーには、同研究
インドネシアにおける投資環境の改善は、同国の経済
所モハマド・イクサン所長(当時)
に加え、パネリストとして
発展だけでなく日本企業の海外事業展開につながりま
インドネシア戦略国際問題研究所マリ・パンゲスツ氏(当
す。貿易・投資問題を研究している専門家による議論を
時。現貿易相)等が参加したほか、ビジネス界、国際機
中心に据えた今回のセミナーは、同国の投資環境の改
関等から約 100 名が出席しました。
善を検 討し
インドネシアは、アジア通貨危機から立ち直り、現在、
ていくうえで
より中長期的な発展のための政策を模索しています。
貴 重な情 報
投資環境の改善は、インドネシアが持続的な経済成長
交 換 の場と
を実現するための最優先の政策課題となっています。
なりました。
今回のセミナーでは、慶應義塾大学経済学部木村
教授の発表やパネルディスカッションを通じ、インドネシア
が豊富な資源を活かすだけでなく、東アジアに形成され
業地
務域
概別
況
るために、中国やインド、ASEAN、インドシナ、中・東欧諸国
国内では、東京の本店および大阪支店に加え、地方自
移動相談室は、2004 年度に通算 500 回を迎えました。
業2
務0
概0
況4
年
度
の
貿易・投資
政策セミナー
(注)
メールマガジンの配信を希望される方は、当行中堅・中小企業支援室(電話:03-5218-3579、
メールアドレス[email protected])宛にご連絡ください。
2004 年度の業務概況―■―17
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
4 ―海外経済協力業務の実績
当行は、円借款業務の基本的方向をはじめ、重点を置く
トルコ、ルーマニア等、アジア以外の国への承諾額が増加
べき分野や地域等を示した
「海外経済協力業務実施方針」
しました。承諾額が大きかった国は、インド1,345 億円、インド
(以下、
「実施方針」
という)
に基づいて、円借款業務を効果
ネシア 1,148 億円、
トルコ 987 億円、中国 859 億円でした。
的かつ効率的に実施しています(実施方針の全文は、
また、初めてウクライナ向けに円借款を承諾した結果、円借
P.185 参照)。
款を供与した国の数は累計 96カ国となりました。
承諾額の部門別の割合は、
トルコ向け地下鉄案件等の
■―海外経済協力業務実施方針
大型案件が多かったことから、運輸部門が、前年度 23 %か
当行は、2002 年 4 月から2005 年 3 月までの海外経済協
ら38 %に増加しました。これに続き、電力・ガス部門が 24%、
力業務実施方針の評価を実施し、評価報告書を作成しまし
社会的サービス部門が 23 %となっています。また、2 年ぶり
た。本評価にあたって、
「海外経済協力業務実施方針にか
にプログラム型円借款(注 1 )をベトナムとインドネシア向けに承
かる外部有識者評価委員会」
を設置し、2004 年 10 月から
諾し、開発途上国における制度・政策環境の改善を支援し
2005 年 1 月まで 3 回にわたり、外部有識者の方々に議論い
ました。
ただきました。その成果物として、「海外経済協力業務実施
実施方針で重点分野としている貧困対策ならびに環境
方針にかかる外部有識者委員会意見書」をまとめていただ
に関する案件も年々増加しています。貧困対策案件は、イ
いています。
ンドの上下水道事業等 13 件を承諾し、全承諾額に占める
評価結果ならびに意見書、またパブリック・コメントを参考
割合は 22 %になりました。環境案件は、インドネシア地熱発
にし、2005 年 4 月から 3 年間を対象とする新実施方針を、
電事業やインド植林事業等 24 件を承諾し、同 60 %となりま
2005 年 4 月に公表しました。
した。
わが国の優れた技術やノウハウを活かし、開発途上国へ
■―出融資概況
の技術移転を通じてわが国の
「顔の見える援助」
を促進す
海外経済協力業務の出融資実績は、2004 年度の円借
(注 2)
るために導入された本邦技術活用条件(STEP)
の 2004
款の承諾額が前年度比 36 %増の 7,986 億円となりました。
年度の承諾実績は、ベトナムのカイメップ・チーバイ国際港
円借款および海外投融資の実行額は、同 5 %増の 6,621
開発事業等 4 件 833 億円、全承諾額に占める割合は、
億円、回収額は同 0.1 %減の 5,153 億円、残高は、同
10 %
(前年度 6 %)
に増加しました。また、中央アジア向け初
0.1 %増の 11 兆 4,955 億円でした。
の STEPをウズベキスタンの鉄道建設事業に適用しました。
承諾額を地域別に見ると、アジアが 78 %を占めましたが、
■―平和構築への貢献
【出融資実績】
(単位:百万円)
2003 年度
2004 年度
(平成 15 年度)
(平成 16 年度)
増減率
承諾額(注)
587,667
798,605
35.9 %
実行額
629,861
662,113
5.1 %
回収額
515,782
515,339
△ 0.1 %
11,478,992
11,495,544
0.1 %
残高(年度末)
2004 年度から、
「平和の構築支援(平和構築対象国お
よび周辺国において復興等に資する案件)」
については、
譲許性の高い供与条件(優先条件)
が適用されることにな
りました。これを受け、2004 年度にスリランカ向けに供与し
(注)
2003、2004 年度の海外投融資の承諾は無し。
(注 1)開発途上国の経済の開発・安定に寄与することを主な目的として、
プロジェクト形態ではない案件に供与される資金援助のことです。
(注 2)本邦技術活用条件(STEP)
とは、
わが国の優れた技術やノウハウを活用し、開発途上国への技術移転を通じてわが国の「顔の見える援助」を促進するため、2002 年 3 月
に創設され、同年 7 月から適用された新しい円借款の貸付条件です。これにより、
わが国の優れた技術が活用できる分野について円借款を供与する場合には、通常の円借
款の貸付条件よりも優遇した条件が適用されます。また、当行は、STEP 適用対象プロジェクトの調達手続きの促進と公平性や透明性の確保のため、調達実施支援調
査(Special Assistance for Procurement Management)
をコンサルタント等を雇用して実施しています。
18―■― 2004 年度の業務概況
業2
務0
概0
況4
年
度
の
た円借款 3 件に、
「平和の構築支援」優遇金利が適用され
■―評価の充実
ました。
◆事前から事後までの一貫した評価体制の確立
イラクでは、国連開発計画(UNDP)
と共同で、電力セクタ
当行は、1975 年度以来、円借款事業の事後評価を実施
ーの復興に関するマスタープラン策定のための事前調査を
してきました。2001 年度からは、事業の実施前にその成果
実施しました。また、イラク政府および他ドナー等との協議を
目標をより定量的な指標を用いて設定する
「事業事前評価
重ねつつ、国際協力機構(JICA)
とも連携してイラクの復興
表」
をすべての事業について公表し、事業の実施前から実
に向けた円借款の案件形成に取り組みました。
施後に及ぶ一貫した評価体制を確立しました。さらに、これ
らの評価体制をより充実させるため、円借款の貸付契約締
■―防災支援
結後 5 年目に、事業計画の妥当性・有効性等を検証する
2004 年 12 月のスマトラ沖大地震・インド洋津波被害に迅
「中間レビュー」
と、事業完成後 7 年目に、有効性・インパク
速に対応するため、当行は、世界銀行、アジア開発銀行等
ト・持続性等を検証する
「事後モニタリング」
の導入を進めて
の国際機関と連携し、インドネシア、スリランカおよびモルディ
います。事後評価から得られた教訓および提言は、新規事
ブの 3カ国で、被害状況の把握と復興支援に対するニーズ
業の事前評価に活かされています。
についての合同調査を実施しました。本調査結果を踏まえ、
2004 年度には、45 件の「事業事前評価表」
を公表しまし
復旧・復興計画の策定や復興支援等につき、各国政府と
た。事後評価については、前年度に事後評価を行ったす
協議しています。
べての結果(個別 52 件、テーマ別 6 件)
を、
「円借款事業評
また、2005 年 1 月、神戸で開催された国連防災世界会
価報告書 2004」
として発行するとともに、当行ホームページ
議において、当行は、わが国の防災に関する知見を活かし
に掲載して公表しました。同報告書には、当行の評価業務
た国際協力に関するシンポジウムを開催しました
( P.23 参
のさまざまな取組みも紹介されています。
照)。
◆個別評価に4 段階評価を導入
事後評価は、経済協力開発機構( OECD )開発援助委
員会( DAC )の設定した国際評価基準に基づき、妥当性、
効率性、有効性、インパクト、持続性の観点から、外部の評
価専門家が分析・検証しています。また、すべての評価結
果について、開発途上国の有識者から「第三者意見」を取
得し、公表しています。さらに、評価結果を客観的かつ分か
りやすくするため、2004 年度から新たに、個別事業の評価
「非常に満足」、B
「満足」、C
「おおむね満
結果について、A
足」
、D
「不満足」の 4 段階評価(レーティング)
を試行的に導
入しました。その結果、52 件の 4 段階評価の内訳は、A 20
2005 年 1 月の国連防災世界会議において当行が主催したシンポジウムの模様
件(38 %)
、B 20 件(38 %)
、C 10 件(20 %)
、D 2 件(4 %)
となりました。
評価内容から、多くの事業で当初想定されていた効果が
発現しており、電力供給(産業活性化、農村の電化)
によっ
て 2,459 万人、安全な水の供給によって 605 万人、洪水制
御・砂防等防災施設によって 487 万人、電話(IT 化の基盤
2004 年度の業務概況―■―19
業地
務域
概別
況
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
整備)
によって 290 万人、灌漑整備によって 59 万人、
と多く
多様な分野の外部有識者からなる「円借款事後評価フィー
の人々に裨益していることが明らかになりました。
ドバック委員会」を設け、円借款事業にフィードバックすべき
また、
「海外経済協力業務実施方針」に掲げられている貧
内容とその方法について多角的な検討を行っています。
困削減や経済成長といった重点分野等を踏まえた特定の
テーマに基づいてテーマ別評価も実施しています。2004 年
度は、
「農民参加による貧困削減の有効性」、
「経済成長と
貧困削減へのインフラの貢献」等、6 件の評価を行いました。
■―開発政策・事業支援調査(SADEP)
当行は、円借款等による開発支援をより効果的なものと
し、持続可能な開発を実現するためには、開発途上国にお
けるガバナンス(注)の改善等、政策面を考慮する必要があると
◆円借款事業の質的向上に活かされる評価結果
当行は、事後評価から得られたすべての教訓や提言を、
の認識から、開発政策・事業支援調査(SADEP)
を行い、開
発途上国の政策等につき提言を行っています。
開発途上国の政府関係者、事業実施機関、受益住民や援
2003 年度から取り組んでいた世界銀行、
アジア開発銀行
助機関等と幅広く共有することにより、開発途上国の政策
との初の共同調査「東アジアのインフラ整備に向けた新たな
や新規事業へのフィードバックを図っています。2004 年度に
枠組み」については、調査結果を発表する東京シンポジウム
公表したすべての評価結果について、事業実施機関や受
を 2005 年 3 月に開催しました。
益住民へのフィードバックを行いました。
また、
「カラチ再生シナリオ」調査を実施し、パキスタンの商
また、円借款事業の質の向上には、当行だけでなく、開発
業・港湾都市カラチの再生の方向性を検討しました。本調
途上国自身の幅広い層が評価への関与を深めていくこと
査では参加型アプローチが採用され、
カラチにて開発ニー
が重要です。2004 年度は、
タイ、
インドネシア、
フィリピン、
チュ
ズの把握から調査結果のフィードバックに至るまで、現地政
ニジアの 4 カ国で合同評価を行い、評価結果を当該国と共
府の政策担当者、
コンサルタント、学界等のステークホルダー
有するとともに、評価方法に関する技術移転を図りました。
ま
と意見交換を行いました。調査の成果を発表した 2004 年
た、国際協力機構( JICA )
と連携して、開発途上国の政府
8 月のワークショップでは、カラチおよびその周辺地域の長
職員を日本に招き、評価研修を開催するなど、開発途上国
期開発ビジョンを提示し、
それを実現するための都市・産業
自身による評価の推進や能力向上を支援しています。
さら
開発および社会開発のプロジェクト候補を提案しました。
に、事後評価のフィードバックをより一層改善・強化するため、
■―有償資金協力促進調査(SAF)
円借款事業の案件形成から完成後のフォローアップまで、
さまざまな段階のニーズに応え、円滑かつ効果的な実施を
図るため、当行は、有償資金協力促進調査(SAF)
を実施し
ています。
SAFとは、
プロジェクトサイクル(P.82 参照)
に沿って、開発
途上国による円借款事業の案件形成の支援、当行が資金
協力の対象とした案件の円滑な実施、援助効果の促進もし
くは調達の公平性・透明性の確保、
および円借款事業への
知見・情報の蓄積を図ることを目的に実施される調査業務
です。具体的には、案件形成促進調査(SAPROF)
、案件実
フィリピン国家灌漑庁職員を対象に事後評価の結果をフィードバック
(注)
ガバナンスとは、公正かつ透明な行政、経済活動等が行われている状況のことをいいます。円借款が直接関係するガバナンス改善としては、主として事業実施機関の実施
能力の改善を念頭に置いています。
20―■― 2004 年度の業務概況
施支援調査(SAPI)
、援助効果促進調査(SAPS)
、調達実
施支援調査等があります。
2004 年度は 62 件の SAFを実施しました。また、SAFを通
じ、下水道、保健、運輸、廃棄物、電力等の各セクターにお
■―国際機関・他国援助機関との連携
当行は、開発途上国向け支援に関する効果向上のため、
国際機関や他国援助機関と連携しながら円借款業務を展
開しています。
ける政策、制度改善、組織強化、事業の運営維持管理の
2004 年度は、当行がチームリーダーを務める経済協力開
改善に貢献しています。このなかには、スマトラ沖大地震・イ
発機構( OECD )開発援助委員会( DAC )の貧困ネットワー
ンド洋津波発生後の復興支援をはじめ、イラク復興支援、ス
ク
(POVNET)
インフラタスクチームにおいて、
ドイツ復興金融
リランカ和平支援が含まれています。タイ、中国、ベトナム、
公庫( KfW )、フランス開発庁( AFD )、米国国際開発庁
スリランカ、マケドニア等においては、調査のなかで提言の
( USAID )、英国国際開発省( DFID )等と、インフラ支援が
実行も支援しました。
また、わが国の国民参加による開かれた円借款を促進す
るため提案型調査および発掘型案件形成調査を実施して
経済成長を通じた貧困削減に資するものとなるために、援
管業
理務
体運
制営
と
てきました。
また、国際機関や各国援助機関は、援助の開発効果と
に基づき、円借款事業に役立つ知見や情報の蓄積を図る
効率性の向上を目指し、DACを中心に援助手続きの調和
ものです。これに対し、発掘型案件形成調査は、同じく提
化に取り組んでいます。2005 年 2 月にパリで開催された
「援
案に基づき、将来の具体的な案件を発掘・形成することが
助効果向上のためのハイレベルフォーラム」
の公共財政管理
目的です。2004 年度には、提案型調査および発掘型案件
および調達に関するセッションにおいて、当行はベトナム、イ
調査の公示を、年 1 回から2 回に増やしました。さらに調査
ンドネシア、フィリピン等における調和化の取組みについて説
のテーマを国ごとに具体的に設定して提案を募集したことに
明しました。また、世界銀行、アジア開発銀行と共同で冊子
より、円借款事業との関連性がより明確となりました。2004
「東アジアにおける援助効果向上」
を作成し、アジア支援か
査 9 件です。
業地
務域
概別
況
助機関として心得るべき、そして実践すべき原則を協議し
います。提案型調査は、わが国国内の団体等からの提案
年度の契約件数は、提案型調査 6 件、発掘型案件形成調
業2
務0
概0
況4
年
度
の
ら得られた教訓・提言等の共有を図りました。
2004 年度には、アフリカ支援において、アフリカ開発銀行
これら2004 年度に実施した SAF には、わが国の大学(9
と連携を図るべく、業務協力協定を締結しました。また、ユ
件)
、NGO
(4 件)
、地方自治体(5 件)
が参加しています。当
ネスコ世界遺産センターとも業務協力協定を締結し、双方が
行は国民参加を得ながら、わが国の知見とノウハウを活かし
有する情報やネットワークを活用し、世界遺産保護とそれを
た支援を促進しています。
通じた貧困削減を目指していきます。例えば、
トルコの地下
鉄事業において、事業地付近の文化財保護を同センターと
連携して進めています(P.54 参照)。
また、2002 年 9 月にヨハネスブルグで開催された「持続可
能な開発に関する世界首脳会議」において発表された「
『き
れいな水を人々へ』イニシアティブ」を受け、当行は USAID
との間の水分野における連携を推進しています。2004 年度
にはフィリピンにおける協力を進めるべく、当行とUSAID の
間で覚書を交わしました。
スリランカ提案型調査にて現場のニーズを確認
2004 年度の業務概況―■―21
の国
業際
務協
内力
容銀
行
■―国際協力機構(JICA)
との連携
当行は、ODAをより効率的・効果的に実施するため、現
も、より包括的で効果の高い協力を得られる点で大きなメリ
ットがあります。
地 ODAタスクフォース(注 1 )等を通じたプロジェクト策定、準備
の段階から協議に加え、案件形成、事業実施および完成後
の維持管理等の各段階で、国際協力機構( JICA )
との連
■―大学・地方自治体・NGOとの連携
当行は、わが国の経験・知見の活用や、国民参加の業
務運営を一層推進するため、海外経済協力業務のさまざま
携を図っています。
2004 年 3 月、連携 F/S(注 2)の拡充、連携専門家の採択
等、連携制度の改善に関するわが国政府の決定を受け、
な側面において、大学や地方自治体、NGO 等と連携して
います。
当行とJICA はさらなる連携強化に取り組んでいます。2004
当行は 2004 年度に新たに、山口大学、早稲田大学、一
年度に円借款を供与したベトナムのカイメップ・チーバイ国際
橋大学、京都大学、名古屋大学、広島大学の 6 大学と業務
港開発事業では、港湾管理制度の改善のためのプロジェク
協力協定を締結しました。また、人材育成事業や、事後評価
ト方式技術協力(注3)が実施されることになりました。
にかかる調査等を複数の大学に委託し、大学の持つ知見・
このように、当行とJICAとの連携は、有償・無償の資金
ノウハウを円借款業務に積極的に活用しています。これら調
協力および技術協力の有機的な連携を図るとするわが国
査の実施は、大学における教育・研究の促進や深化にも貢
の ODA 大綱に基づくものであり、また開発途上国にとって
献しています。さらに 2004 年度から、ODA に高い関心を持
2004 年度におけるJICAとの連携事例
つ大学院生を対象に、円借款の現場における実務・実習を
ODA 現地タスク
アジア主要国をはじめ、当行駐在員事務所のあ
通じて、ODA についての理解を深める機会を提供すること
フォース
る国を中心に、33カ国のタスクフォースにJICA
を目的としたインターンシップ制度を導入し、協力協定締結先
と共に参加。
円借款事業の
策定・準備段階
2004 年度に円借款を供与した 49 事業のうち、
J I C A の 開 発 調 査が 行われたものは 1 0 件
(20.4 %)。
連携 F/Sは、
インドネシア、
スリランカ等における
事業実施・監理段階
の大学から学生を受け入れました。
また当行は、円借款事業のプロジェクトサイクルの各段階
において、わが国の団体と連携し、それぞれが持つ経験と
調査 6 件を採択。
知見を積極的に活用しています。例えば、中国の人材育成
連携 D/D
事業の案件形成段階では、富山医科薬科大学が当行の現
は、
インドネシア港湾改修等の 2 件
(注 4)
を採択。
円借款事業に対する必要な技術指導のため長
期・短期の連携専門家 15 名の派遣を採択。
ベトナム港湾セクターの円借款事業に関連し、
港湾管理制度の改善のためのプロジェクト方式
地調査に参加しました。さらに、わが国の大学での中国から
の研修生の受け入れや、わが国からの専門家派遣が本事
業の実施段階で行われることとなっており、活発な人材交流
技術協力の実施を採択。
が期待されます(P.35 参照)。また、インドの仏跡観光整備や
完成後の事後監理
現地社会情勢の変動や維持管理等の観点から
下水整備事業の案件形成段階においては、それぞれ、奈
段階
追加支援が必要となったが、円借款による追加
支援が困難なインドネシア電力セクターの円借
款事業に対し、
リハビリ無償資金協力を供与。
円借款に関する
JICAと連携してセミナーを6 件開催(公的資金
研修セミナー
協力、ODAプロジェクト評価、環境改善・公害対
良県の
「道の駅」関係者や岡山県の専門家の協力を得て、
「道の駅」の取組みや、公衆衛生に関するわが国の経験・知
見を提供しました(P.45、46 参照)
。
策融資、灌漑・水管理、公的債務管理能力強
化、
タイ・地方農村・地場産業振興)。
(注 1)現地 ODAタスクフォースとは、在外公館をはじめ当行や JICA 等が一体となって、被援助国の開発計画やマクロ経済情勢の分析、援助政策の協議等の活動を行うことを
いいます。
(注 2)連携 F/S(フィージビリティー・スタディー)
とは、円借款事業の実施を前提に、経済面、社会面、技術面、環境面等の観点から事業の実施可能性を検討するための調査を
JICAが実施するものです。
(注 3)
プロジェクト方式技術協力とは、
(1)研修員の受入、
(2)専門家の派遣、
(3)機材の供与、を有機的に組み合わせ、技術協力の立案から実施・評価まで一貫して計画的か
つ総合的にJICAが運営・実施するものです。
(注 4)
連携 D/D
(Detailed Design)
とは、円借款事業の実施を前提に、事業の詳細設計をJICAが実施するものです。
22―■― 2004 年度の業務概況
このほか、当行は、地方自治体や NGOとの情報交換を
行い、連携の基盤の強化を図っています。2004 年度には、
また、当行は、優れた経験・知見を持つわが国の団体との
連携機会を増やすことを目的に、円借款事業の視察を内容
「NGO ― JBIC 定期協議会」
を、3 回開催しました。本協議会
とする国民参加型援助促進セミナーを開催しています。第 3
の議事録、配布資料は協議会のホームページ
( http://www.
回を迎えた 2004 年度は、NGO、民間企業、大学等の 19 団
jbic.go.jp/japanese/ngo_jbic/index.html)
に掲載し、ご意見
体が参加し、
「水質環境モニタリング」
「貧困削減のための住
やご質問も受け付けています。2004 年 5 月には、さまざまな
民支援」の 2 つのテーマにそって、ベトナムの円借款事業の
パートナーとの連携を具体化するための取組みの一環とし
現場を視察し、ベトナム政府関係者や各事業地域の住民と
て、
「円借款連携セミナー」
を開催しました。
も意見交換を行いました。
■―わが国のノウハウを活かし、途上国との架け橋
に国連防災世界会議に参加
阪神・淡路大震災から10 年目にあたる2005 年 1 月、
NPO 法人島原普賢会は、当行が主催した
「国民参
れました。当行は
「日本の防災ノウハウ 途上国との架
を後世に伝えていく防災センターの設立や防災教育の
け橋に―地方自治体の防災知見を生かした国際協力
重要性、国内外の火山地域とのネットワークの強化等を
―」のテーマで公開シンポジウムを開催するとともに、ブ
訴えました。
質疑応答では、防災対策に支援を行う際には、政府
当行は、これまでわが国の地方自治体が持つ災害
によるイニシアティブだけでなく、地方自治体やコミュニ
復興、防災対策に関する豊富な知見を活用し、開発途
ティ、個人との連携を図る総合的なアプローチが必要で
上国における災害復興、防災対策をハード・ソフト両面
あること、また、防災と復興にかかる経験、知見を国際
にわたって支援してきています。
的に共有することが重要であるとの意見も出ました。
公開シンポジウムでは、円借款の支援により防災対
同会議の開催に際して、わが国政府は、
「防災協力
策に取り組む開発途上国の政府関係者や、災害復興
イニシアティブ」
を発表し、ODA を活用した防災分野に
の経験を持つ兵庫県神戸市や長崎県島原市の関係
おけるわが国の取組み強化の方針を明らかにしました。
者がパネリストとして参加し、プレゼンテーションを行うと
当行は、同方針を踏まえ、今後もわが国の地方自治体
ともに、開発途上国の災害復興、防災支援のあり方に
をはじめ、国際機関とも連携して、災害予防・復旧・復
ついて議論しました。
興を支援していきます。
パネリストから、阪神・淡路大震災の経験を持つ兵庫
県が JBICと連携しながらトルコに復旧・復興支援を行っ
ている事例等について説明がありました。フィリピン政府
関係者からは、ピナツボ火山災害に対し、円借款の支
援のもと、泥流災害等を防ぐ堤防(メガダイク)の建設や
道路や橋梁等のインフラの復旧事業が行われている点
を報告するとともに、同じ火山噴火の経験を持つ島原
た、との発言がありました。
管業
理務
体運
制営
と
を訪れ、現地住民に雲仙普賢岳の災害被害の経験を
説明しました。本シンポジウムにおいては、災害の教訓
市の知見や情報等を共有することは大変意義があっ
業地
務域
概別
況
加型セミナー」への参加を通じて、ピナツボ火山被災地
兵庫県神戸市において
「国連防災世界会議」
が開催さ
ースの出展を行いました。
業2
務0
概0
況4
年
度
の
泥流の氾濫を防ぐメガダイクと呼ばれる堤防を建設
(フィリピン・ピナツボ火山災害緊急復旧事業)
2004 年度の業務概況―■―23
の国
業際
務協
内力
容銀
行
5 ―付加価値の創造と情報発信
1 ―環境への取組み
当行は、国際経済・社会の持続可能な発展を目指し、当
行業務における環境社会配慮の徹底を図るとともに、環境
保全・改善プロジェクトを積極的に支援しています。
化防止対策に貢献していきます。
「京都議定書」発効に先立って、当行は世界銀行が設立
した
「炭素基金
(Prototype Carbon Fund:PCF)
」
に、設立当
国際金融等業務と海外経済協力業務のいずれにおいて
初の 2000 年から出資参画しています。PCF は、各国の政
も、個々の出融資プロジェクトについて、借入国またはプロ
府、政府機関、企業から集めた出資金をもとに温室効果ガ
ジェクト実施主体により適切な環境社会配慮が行われてい
スを削減するプロジェクトを支援し、そこから得られた削減効
ることを確認しています。
果を排出権として出資者に還元するものです。当行は、
また、開発途上国の環境改善をはじめ、地球温暖化対
PCF の対象案件の選定、ポートフォリオの監理等、方針の
策やエネルギー問題等の地球規模問題にも、当行が持つ
決定や運営に深く関与しています。また、PCF が初めて排
専門的知見や情報を提供して積極的に取り組んでいます。
出権をもたらしたチリの小水力発電プロジェクトから、わが国
(注 2 )
の政策金融機関として初めて、排出権を獲得しました。
■―地球温暖化対策への取組み
これらの業務を通じて得た経験やノウハウを活かし、
当行は、
◆京都メカニズムの活用を積極的に支援
民間金融機関等と共同で、アジア初の
「日本温暖化ガス削
わが国政府は、
「京都議定書」の発効を受け、2005 年 3
減基金
(JGRF)
」
を設立しました
(P.26 参照)。
月に
「京都議定書目標達成計画」
(2005 年 4 月 28 日閣議
決定)
を決定し、わが国に課せられた温室効果ガス削減目
◆国際的なネットワークを構築
標(基準年 1990 年比 6% 減)の達成に向け、京都メカニズ
当行は、開発途上国政府や世界銀行、アジア開発銀行
ム(注 1)を活用する方針をかかげました。当行は、わが国の政
等の国際機関と連携して、京都メカニズムに関するセミナー
策金融機関として、京都メカニズムを活用した削減目標の
を開催し、開発途上国の理解促進や具体的な案件形成に
達成をはじめ、開発途上国の持続可能な発展、地球温暖
向けた体制整備を支援しています。有望な CDM 事業が見
2004 年度に締結・合意した業務協力協定等
込まれるアジア、中南米をはじめ、JI 市場として注目されて
いる中東欧でのセミナーでは、当行によるCDM や
締結日
締結・合意先
JI 事業への融資の可能性を説明するとともに、
2004 年 4 月
地球温暖化ガス削減・吸収プロジェクトのためのメキシコ国家委員会
2004 年 7 月
中米経済統合銀行
2004 年 11 月
チリ国家環境委員会、
チリ外務省、
チリ工業連盟
2004 年 12 月
世界銀行
2004 年 12 月
ブルガリア共和国政府(JIにおける協力合意の共同声明)
「気候変動枠組条約第 10 回締約国会議
2005 年 3 月
モロッコ国土整備・水利・環境省
(COP10)
」では、わが国政府と共に参加し、当行
2005 年 3 月
ベトナム天然資源環境省
2005 年 3 月
ルーマニア環境・水利省
各国政府関係者や日系企業間と京都メカニズム
活用に関する情報交換の場を提供しました。
2004 年 12 月にブエノスアイレスで開催された
(注 1)京都メカニズムとは、温室効果ガスの排出を抑制するため、国外で実施した削減効果を自国の削減数値目標に加算し、排出権の国際取引ができるようにした制度です。具
体的には、
「クリーン開発メカニズム」
(CDM: Clean Development Mechanism)
、
「共同実施」
(JI: Joint Implementation)
、
「排出量取引」
(ET: Emissions Trading)
の 3つの手法があります。CDMとは、先進国と開発途上国が共同で排出削減プロジェクトを実施し、
その削減分を投資国(先進国)が自国の数値目標達成に利用できる
制度です。JIとは、先進国同士が共同で排出削減プロジェクトを実施し、
その削減分を投資国が自国の目標達成に利用できる制度です。ETとは、自国の削減目標達成の
ため、先進国同士が排出量の取得・移転(取引)
を行うものです。
(注 2)獲得した排出権は、第三者機関に認証されたものです。今回認証された排出削減量を日本の削減目標達成に用いるにはCDM 理事会によってクレジットが発行される必
要があり、
そのための所定の手続きが行われる予定です。
24―■― 2004 年度の業務概況
の取組みや JGRF の枠組みを紹介しました。
きを進めており、円借款の支援による初の CDM の実現を目
また、2004 年度には、前述の表に掲げた通り、世界銀行、
業2
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概0
況4
年
度
の
指しています。加えて、再生可能エネルギーである地熱を利
開発途上国の政府機関等と業務協力協定締結等を行って
用して発電を行う、インドネシアのラヘンドン地熱発電所拡張
おり、京都メカニズムに関する情報提供・意見交換や、CDM
事業やウルブル地熱発電所建設事業(P.39 参照)
について
や JI 事業の実現に向けた相互の活動への参加促進を図って
も、温室効果ガスの削減にもつながることから、インドネシア
います。
政府と協議のうえ、当行は CDM の適用に向けた手続きに
業地
務域
概別
況
着手しています。
◆これまでの経験、ノウハウを活かして
管業
理務
体運
制営
と
当行は、わが国の政策金融機関として、さまざまな金融メ
ニュー、海外駐在員事務所を通じた海外ネットワーク、国際
機関や開発途上国政府との緊密な関係を活かし、京都メ
カニズムの効果的な活用を支援していきます。
例えば、日本企業が CDM や JI 事業に機械設備等を輸
の国
業際
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内力
容銀
行
出する場合は輸出金融で支援します。また、日本企業が出
資者として海外で CDM や JI 事業を実施する場合には、投
エジプト:ザファラーナ風力発電所(既設分)
資金融での支援となりますが、この場合には優遇条件を適
■―環境ガイドラインと環境社会配慮
用する制度も整備しています。
2004 年度は、中国山西省の炭鉱メタンガスプロジェクトに
当行は、地域住民の参加促進と対話の重視、積極的な
対して事業開発等金融を供与しました(P.34 参照)。本プロ
情報公開を特徴とする
「環境社会配慮確認のための国際
ジェクトは、CDM 事業として中国政府も期待しており、わが
協力銀行ガイドライン」
( 以下、環境ガイドライン)
を、2003 年
国による排出権の買取りが予定されています。
10 月に施行しており、これに基づきプロジェクトに対して適
また、2003 年度に円借款を供与したエジプトのザファラー
切な環境社会配慮確認を行っています。
ナ風力発電事業については、CDM の適用を目指した手続
さらに、当行は、環境ガイドラインが遵守されるよう、当行の
CDM や JI 事業を通じた排出権獲得の総合的支援
事務協力
開発途上国政府・政府機関
事業開発等金融
国
際
協
力
銀
行
民
間
金
融
機
関
円借款
開発途上国による
CDM/JI事業
排出権獲得
投資金融
日系企業関与CDM/JI事業
輸出金融
事業参画
機器供給
わ
が
国
企
業
開
排出権獲得予約 発
費
協融参加
排出権獲得
情報提供・リスク補完
出資・案件発掘支援
日本温暖化ガス削減基金
出資
2004 年度の業務概況―■―25
投融資担当部署から独立した第三者が、現地住民等から
UNEP FI では、UNEPと世界各地の金融機関がパートナー
の申立てを受け付ける異議申立手続を、2003 年 10 月より
シップを結び、経済発展と環境保護の両立や持続的発展
施行しています。
について情報交換等を行い、金融機関のさまざまな業務に
異議申立があった場合、公募を経て任命された環境ガイド
環境配慮を取り入れていくことを目指しています。当行は、
ライン担当審査役(以下、審査役)
が、独立・中立的な立場か
UNEP FI への参加を通じ、アジアを中心とする開発途上国
ら調査を行い、
その結果を総裁に報告するとともに、
当事者間
の環境改善の取組みに関する経験とノウハウを、世界の参
のコミュニケーションを促しながら問題解決を図っていきます。
加金融機関と共有していきます。
その活動の透明性を確保するため、
異議申立の受付状況や
また、民間金融機関の環境への関心が国際的に高まっ
審査役の報告書、
投融資部門の意見書等、
異議申立のプロ
ていることを受け、当行は民間金融機関と
「環境審査にか
セスは、
当行のホームページに掲載して公表しています。
かる協定書」
を締結しています。同協定のもとで、当行が民
間金融機関と協調して融資を行うプロジェクトについて、当
■―環境コミュニケーション
行が実施した環境審査のノウハウや情報を民間金融機関
◆さまざまなステークホルダーとパートナーシップを構築
2004 年 5 月、当行は、国連環境計画(UNEP) の
「環
(注 1)
境と持続可能な発展に関する金融声明」
に署名し、国連環
境計画金融イニシアティブ( UNEP FI )に参加しました。
と共有していきます。2005 年 3 月末現在、18 の金融機関
(注 2)
と環境審査にかかる協定書を締結しています。
さらに当行は、現在融資の検討を行っている
( 2005 年 7
月現在)、サハリン II フェーズ 2 プロジェクトに関し、ステーク
■―アジア初の「日本温暖化ガス削減基金」を設立
JGRF に転売する枠組みになっています。京都メカニズ
わが国の温暖化ガス削減目標達成と、
ムの手法であるCDM や JI 事業は、海外事業に伴うリス
国際経済社会の持続可能な発展のために
クや京都メカニズムという新しい制度に起因する不確
当行は、京都メカニズムを活用した温暖化ガス削減
実性等、
さまざまなリスクが存在します。そこで、JGRF が
に向けた取組みの一環として、電力会社、商社、製鉄、
JCFを通じてさまざまなプロジェクトに分散投資することに
電機、自動車等、民間企業および日本政策投資銀行
より、
リスク分散を図ることができます。
と共同で、2004 年 12 月、アジア初の温暖化ガス削減
JGRF は、排出権の購入にとどまらず、購入予定の排
基金である「日本温暖化ガス削減基金」
( Japan GHG
出権が京都議定書上有効なクレジットと認定される手続
Reduction Fund: JGRF)を設立しました。JGRF は、開
きに必要な費用を負担し、
プロジェクト形成段階でアドバ
発途上国や東欧諸国等で実施される温暖化ガス削減
イスを行うなど、開発段階から関与していきます。
プロジェクトから生じる排出権をクレジットの形で購入し、
当行は、JGRF への支援だけでなく、
さまざまな融資ツ
それを出資者間で分配することを目的としています。基
ールによるファイナンス機能、開発途上国との密接な関
金の総額は 1 億 4,150 万米ドルに達しました。JGRF の
係、
さまざまな関係者とのネットワーク、世界銀行の炭素
「日
設立に先立ち、JGRF への大口出資者と当行は、
基金への出資を通じたノウハウ等を活かし、
わが国の温
本カーボンファイナンス株 式 会 社 」
( Japan Carbon
暖化ガス削減目標の達成と国際経済・社会の持続可
Finance, Ltd.: JCF)を設立しました。
能な発展に貢献していきます。
事業スキームは、JCF がまずクレジットを購入し、
その後
(注 1)国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)とは、1972 年にストックホルム国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」および「環境国際
行動計画」を実行に移すための機関として、同年の国連総会会議に基づき設立された機関です。
(注 2)環境審査にかかる協定書を締結している民間金融機関については、当行のホームページ
(http://www.jbic.go.jp/japanese/environ/)
をご参照ください。
26―■― 2004 年度の業務概況
ホルダーの方々からの環境関連の意見を幅広く伺い、今後
害対策の責任者を招聘し、わが国の環境改善・公害対策
の当行の環境審査の参考にするために、
「サハリン2フェ
や当行の環境社会配慮確認や地球温暖化対策への取組
ーズ 2 に関する環境関連フォーラム」
を、2004 年 10 月より開
みについて理解を深めてもらうものです。
催しています。本フォーラムは 2004 年度に、東京と札幌に
また、
当行は環境教育を、
学校教育から市民の啓蒙活動、
おいて計 6 回開催され、その内容を当行のホームページに
企業活動等までを含む非常に幅広い概念と捉えて取り組ん
掲載して公表するとともに、事業の実施主体にフィードバッ
でいます。2004 年度は、バンコクにてタイ環境教育ワークシ
クしています。
ョップを開催し、日本とタイとの環境分野でのパートナーシッ
また、当行の環境への取組みを広く理解してもらえるよう、
2002 年度より毎年、
「環境報告書」
を発行しています。
業地
務域
概別
況
プの強化に努めました。
当行は、環境保全に関する調査も行っています。2004 年
度は、世 界 銀 行 等
■―知的協力・セミナー
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況4
年
度
の
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制営
と
と共に、タイの廃棄
当行は、開発途上国における環境改善・保全への取組
みを支援する各種取組みを行っています。
物についての現状
や今後の課題に関
2004 年 8 月には、
「環境改善・公害対策融資セミナー」
を
する調査結果をまと
と連携し、開催しました。本セミナーは、
国際協力機構
(JICA)
めた報 告 書を共 同
開発途上国の政府機関・地方行政機関の環境対策や公
発行しました。
環境改善・公害対策融資セミナー
■―タイ環境教育ワークショップを開催
がめプラン(注 2)」の取組みです。成功要因は何か、行政
環境教育のノウハウを共有し、
の関わり方はどの程度か、などタイ側から具体的な質問
パートナーシップを強化
が数多く出され、関心の高さがうかがわれました。この
当 行は、タイ国 天 然 資 源 環 境 省 環 境 質 促 進 局
ほか、児童がごみを正しく管理・学習することを目的に、
(DEQP)
と共催のもと、タイ環境ワークショップ
「持続可能
「ごみリサイクル銀行(注 3 )」
を設立したパタヤ第 7 市立学
な開発のための環境教育∼地域・行政・学校のパート
校や、住民のイニシアティブにより環境保全活動が盛ん
ナーシップ 特にごみ問題を例として∼」
を 2004 年 8 月
に行われている現場を視察しました。
に、バンコクで開催しました。
持続可能な社会の実現に向け、タイ、日本からの参
このワークショップは、環境教育に関心の高いタイで
加者がお互いの活動を紹介し、ノウハウを共有すること
日本の環境教育の事例を紹介し、環境教育におけるパ
で、環境教育への理解を一層深める機会となりました。
ートナーシップを図ることを目的としたものです。タイ政
府・自治体、地域コミュニティー、学校、NGO、日本人
学校関係者をはじめ、日本からは環境省、JICA、環境
問題に取り組んでいる水俣市と伊万里市の関係者等、
約 130 名が参加しました。
発表のなかで特に関心を集めたのは、水俣市の
「ご
み減量女性連絡会議
」
と伊万里市の
「伊万里はち
(注 1 )
資源ごみのリサイク
ル活動を行うタイの
小学生たち
(注 1)
「ごみ減量女性連絡会議」では、
スーパーでの食品トレイの廃止への働きかけ等、
ごみ減量に対する取組みを行っています。
(注 2)
「伊万里はちがめプラン」とは、市内で発生する生ごみを有機堆肥にして活用する取組みのことです。
(注 3)
「ごみリサイクル銀行」とは、
タイの各地で実施されているリサイクル活動で、資源ごみの回収に協力することでポイントを貯め、文房具等に交換できるシステムです。
2004 年度の業務概況―■―27
の国
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内力
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行
2 ―社会開発への取組み
開発途上国には、
多様かつ広範な支援ニーズがあります。
貧困層の生計向上を図るとともに、灌漑用水が蚊の発生源
当行は、海外経済協力業務実施方針を踏まえ、開発途上
となりマラリア感染が拡大することを防ぐために、マラリア予
国の貧困削減、ジェンダー間の格差是正、人材育成、保健
防対策を行うなどして貧困層の生活の向上を支援します。
医療、住民参加、マイクロファイナンス等、社会開発への取
組みを強化しています。
また、当行は、2004 年 7 月にバンコクで開催された第 15
回国際エイズ会議に、外務省、国際協力機構(JICA)
と共
具体的には、個々のプロジェクトの案件形成段階から、対
に参加し、円借款によるインフラ整備のなかでの HIV/AIDS
象となる地域の特性や社会開発の側面を考慮して、ソフト
予防活動について紹介しました。カンボジアの
「シハヌークヴ
面、ハード面の支援を組み合わせることで、事業効果がより
ィル港緊急リハビリ事業」
をはじめとして、労働者向けに
大きくなるような仕組みを整えています。例えば、2004 年度
HIV/AIDS 対策に関する予防・啓発活動を行っています。
に円借款を供与したインドのラジャスタン州小規模灌漑改善
大規模インフラ整備事業の場合には、経済の発展とともに
事業では、貧困層に事業効果がより行き渡るようなシステム
人の流れの活性化が見込まれるため、労働者および周辺
を導入しています。灌漑施設の維持管理を行う水利組合
地域住民を対象に予防活動を行っています。
に、貧困層向けの貯蓄・貸付を支援する仕組みを導入し、
■―ジェンダー視点を入れた取組みを強化
2000 年 9 月の国連ミレニアム・サミットで、ジェンダーの
円借款事業でのジェンダーへの取組みについて説明し
ました。
平等と女性の地位向上がミレニアム開発目標にかかげ
女性の参加を確保するなど、ジェンダーの視点を入れ
られました。わが国の ODA 大綱でも、男女共同参画の
た取組みとして、2004 年度に円借款を供与したインドの
視点が重視されています。開発途上国では、女性が就
バンガロール上下水道整備事業( II-1 )では、バンガロ
業機会や教育・保健医療サービス等へのアクセスを制
ール都市圏の上下水道施設の整備、実施機関の経営
限されやすく、貧困層には女性が多く含まれます。男女
改善、広報活動支援に加え、貧困層が多く住み衛生環
が共に開発へ積極的に参画し、女性が開発による受益
境が劣悪なスラム地域への上下水供給を行います。そ
を確保できるよう配慮するとともに、女性の地位向上に
の際、事業の効果および持続性を確保するため、NGO
向けた取組みも必要となります。当行は、こうした国際
の支援を得つつスラム地域の女性が上下水道管理委
目標や政策等を踏まえ、海外経済協力実施方針のな
員会に参加し、地域の上下水道施設整備の計画・実
かで、業務運営にあたって配慮すべき事項に
「環境社
施・維持管理段階での意思決定に参加する仕組みを
会配慮・男女共同参画」
をかかげ、ジェンダー視点を入
導 入しました。ま
れた取組みを強化しています。
た、地 域 住 民に
2004 年度の活動としては、関連部署にジェンダー担
対し衛生教育・ジ
当者を置いて体制強化を図るとともに、カナダ国際開発
ェンダー啓発教育
庁(CIDA)の協力を得て、ジェンダーに関する知識の拡
等を行います。
充に努めました。また、2004 年 7 月に開催された NGO-
JBIC 定期協議会や、2005 年 3 月に国連本部で開催さ
れた第 49 回婦人の地位委員会(北京+ 10 会合)で、
28―■― 2004 年度の業務概況
農業開発計画づくりに女性も参加
(タイ農地改革地区総合農業開発事業)
業2
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概0
況4
年
度
の
3 ―研究・ネットワーク活動
当行では、開発金融研究所(JBICI)
を中心に、業務に関
連した調査・研究を行っています。その成果は、各種出版
物の発刊・セミナー等の開催を通じて広く外部に対して発信
■―研究交流活動
◆ GDN‐Japan の中核的な機能を果たす
当行は、グローバル・ディベロップメント・ネットワーク
(GDN)
しています。また、国内外の関係諸機関・研究機関とのネッ
の日本ネットワーク
( GDN-Japan )の中核的な機関としての
トワーク構築にも努めています。
役割を担っています。GDNとは、開発関連の研究者と実務
者との情報交換、知識の共有化、共同研究活動等を通じ
■―調査・研究活動
て調査と政策の間の橋渡しを行うと同時に、開発途上国研
◆調査・研究の有効活用
究者の能力向上を図ることを目的とする世界的なネットワー
当行では、国際金融、海外直接投資、開発援助に関す
クです。当行では、GDN-Japan のホームページ(注)を運営し
る調査・研究を行っています。また、より高度で視野の広い
ているほか、GDN の年次会合で全体会合や分科会を開催
研究成果を得るため、内外の研究者との連携強化を積極
したり、日本国際開発賞プロジェクト部門の最終選考委員
的に図るとともに、共同研究も行っています。調査・研究の
を務めたりするなどの貢献を行っています。
成果は、プロジェクトの実施や融資の判断材料になるほか、
開発途上国に対しての政策提言等にも有効活用されてい
ます。研究報告は、研究発表論文としても提供され、国際
機関や大学等、国内外の関係機関との情報交換の場でも
活用されています。
◆調査・研究内容の発信 当行は、調査・研究成果を、
「開発金融研究所報」
「リサ
ーチペーパー」
「JBICI Review」等の出版物として広く外部
に提供するとともに、ホームページにも随時掲載しています。
2005 年 1 月、
セネガルで開催された第 6 回 GDN 年次会合
また経済協力関連データ等をまとめたハンドブック
「国際協力
便覧」
を毎年発行しています。
◆第 2 回 JBIC 大学院生論文コンテストを開催
当行は、国際協力における研究と実務の架け橋を目指し
て、大学院生を対象とした大学院生論文コンテストを実施し
ています。2 回目となる2004 年度は、当行業務に関連する
8 つの分野の課題につき、調査・分析を行ったうえで、その
克服に向けた諸施策を提言する論文を募集しました。本論
文コンテストを通じ、わが国の対外経済政策・経済協力分野
に関心を持つ大学院生の研究を奨励し、この分野の人材
育成に貢献するとともに、当行業務への国民の知見や意見
出版物の一例
業地
務域
概別
況
の反映を図ります。
(注)GDN-Japan ホームページ : http://www.gdn-japan.jbic.go.jp/
2004 年度の業務概況―■―29
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〈2004 年度の研究セミナー等の開催例〉
「日本と中南
●第 6 回 日本・ラ米諸国経済交流シンポジウム
米諸国-グローバルパートナーシップ」当行・米州開発銀行
の共催(於:東京/ 2004 年 5 月)
●「カラチ活性化シナリオ」
ワークショップ当行主催(於: パキ
スタン・カラチ市/ 2004 年 8 月)
●「開発援助と地域公共財に関する東京フォーラム」当行・
米州開発銀行・アジア開発銀行の共催(於:東京/ 2004
年 10 月)
●海外投資セミナー
「わが国製造業企業の海外事業展開:
JBIC セミナー参加者
今後の展望と課題」当行主催
(於:東京/ 2004 年 11 月)
「東アジアにおける相互依
● GDN 第 6 回年次会合セッション
存と経済協力」当行・GDN 東アジアネットワーク共催(於:
ダカール/ 2005 年 1 月)
◆公的資金協力セミナー
当行の海外経済協力業務上のパートナーである各国の
省庁、政府機関等の中堅幹部職員を招聘し、円借款関連
●「東アジアのインフラ整備に向けた新たな枠組み」東京シ
業務の習熟、および ODA 政策等わが国経済協力の総合
ンポジウム
(第 4 回 JBIC シンポジウム)当行・アジア開発銀
的な理解促進を図るため、国際協力機構(JICA)の協力の
行・世界銀行の共催(於:東京/ 2005 年 3 月)
もと実施しているセミナーです。1977 年度より開催しており、
これまでの研修対象者累計は約 600 名となっています。
■―開発途上国等向け研修活動
資金協力のみならず、知的協力を通じた人材育成を行う
◆連携セミナー
ことは、効率的で円滑な業務を行うためにも必要です。当
当行は、開発途上国の開発政策において共通の課題と
行は、開発途上国等を対象に、国際金融や開発に関する
なるテーマについて、JICAと連携して研修セミナーを行って
ノウハウを提供するとともに、当行の業務内容や役割、わが
います。これらのセミナーは、円借款を活用するための具体
国の社会・経済・産業等についての理解を深めてもらうた
的なノウハウを学び、効果的な実践につなげることを目的と
め、さまざまな研修活動を行っています。
しているため、開発途上国のプロジェクト担当者を対象にし
ています。
◆ JBICセミナー
当行の国際金融等業務上のパートナーである各国の省
2004 年度は、環境改善・公害対策融資セミナー、ODA プ
ロジェクト評価セミナー、公的債務管理能力強化セミナー、
庁、中央銀行、金融機関等の中堅幹部職員を招聘し、当
灌漑・水管理セミナー、タイ観光開発のための産業村マネジ
行の役割や業務内容、わが国の社会、経済、産業等につ
メント能力向上研修の 5 つのセミナーを実施しました。
いて知識を深めてもらい、各国の開発政策の基盤となる制
度や政策づくりの一助としてもらうためのセミナーです。1976
年度より開催しており、これまでの研修対象者累計は約
370 名となっています。
30―■― 2004 年度の業務概況
業2
務0
概0
況4
年
度
の
■―国際機関と連携し、国内外への情報発信・知的協力を強化
◆初の 3 機関共同調査「東アジアのインフラ整備に向けた新たな枠組み」の結果報告
1997 年のアジア通貨危機以降、東アジアの多くの国
めに、開発途上国政府が多数の関係者の利害を適切
では、経済状況は回復していますが、
インフラ投資が、依
に調整し
(w)
、
かつ公平・明確なルールのもとでインフラ
然として低い水準に留まっています。そのため、電力、運
サービスの提供者が良いパフォーマンスを目指せるような
輸、水供給等の分野でインフラ需要が高いにも関わらず、
管理を行う
(e)
ことが不可欠となるというフレームワーク
供給が不足するという
「インフラ・ギャップ」と呼ばれる問
です。
この新たな枠組みの下、調査報告書では、
インフラ
題が生じており、中長期的な経済成長や貧困削減の阻
整備に関わる、開発途上国政府、民間投資家、市民社
害要因となっています。
このような状況を踏まえ、東アジア
会等に向け、12 の政策的提言を行いました。
のインフラ整備のあり方を提示するため、
当行、
世界銀行、
今回の調査結果を踏まえ、当行は、国際金融等業務
アジア開発銀行の 3 機関は共同調査「東アジアのインフ
と海外経済協力業務を有機的に活用し、融資・保証等
ラ整備に向けた新たな枠組み」
を実施し、2005 年 3 月に
の金融支援、民間資金導入のための政策・制度の改革
へ の知 的 貢 献
東京でシンポジウムを開催し、調査結果を報告しました。
今回の共同調査では、q すべての人々が裨益する
等を通じて、東
開発、w 関係主体間の相互調整、e 説明責任とリスク
アジアにおける
管理の 3 つのコンセプトに基づくフレームワークを提唱し
インフラ整 備に
ています。具体的には、経済成長を実現し、
その成長の
対する支援を行
果実をより多くの人々が享受することをインフラ整備の目
っていきます。
標とし
(q)、
インフラ整備の目標を効果的に達成するた
3 機関共催の東京シンポジウム
◆地域間協力のパートナーシップの強化を目指して、
「開発援助と地域公共財に関する東京フォーラム」を開催
当行は 2004 年 10 月、米州開発銀行(IDB)
、
アジア開
行われたテーマ別セッションでは、地域公共財の供給に
と共に「開発援助と地域公共財に関す
発銀行( ADB )
おけるさまざまな課題に関する事例が紹介され、
ベストプ
る東京フォーラム」を当行本店にて開催しました。このフ
ラクティスや教訓が共有されました。当行からは、地域協
ォーラムでは、
アジア、
ラテンアメリカ諸国の政府・開発機
力への具体的な取組みとして、円借款で支援している
関の関係者や研究者等約 70 名が出席し、国境を越えた
メコン地域開発を取り上げ、第 2 メコン国際架橋事業の
「地域公共財」の供給に関し、戦略、優先順位、資金調
資金供与方法における工夫、事業実施段階で直面した
達、計画実施後の検証や評価といった諸問題について
活発な意見交換を行いました。
課題等について発表を行いました。
地域公共財の供給を通じた地域協力を成功させるた
「地域公共財」とは、国際河川や環境、金融システム
めには、長い時間とさまざまな努力が必要となりますが、
等の国境を越えて経済社会的に共有する公共財を表す
今回のフォーラムでは、
アジアおよびラテンアメリカにおけ
言葉です。
とくに開発援助においては、従来の国別アプ
る経済・社会開発を進めていくうえでの経験や教訓を、
ローチを補完するものとして、
これら地域公共財を対象と
地域を超えて共有していくことが重要であることが認識さ
した地域プロジェクトが年々増加しています。
れました。今回のフォーラムでの議論を踏まえ、当行は、
オープニングセッションでは、当行、財務省、IDB なら
びに ADBより、地域公共財の重要性や各機関による支
IDB や ADBとの連携をさらに深め、地域間協力を目的
としたパートナーシップを強化していきます。
援戦略・支援実績について説明がなされました。続いて
2004 年度の業務概況―■―31
業地
務域
概別
況
管業
理務
体運
制営
と
の国
業際
務協
内力
容銀
行
4 ―広報活動
当行では、国内外の多くの方に当行の活動を理解して
記念して毎年開催される
「国際協力フェスティバル」
(2004 年
いただくため、積極的に情報提供および情報発信を行って
10 月、東京)、ならびに
「ワン・ワールド・フェスティバル」
(2005
います。
年 2 月、大阪)
に参加し、当行の開発途上国での取組みを
紹介したパネル展示や、アフガニスタンで復興支援に携わっ
■―情報提供
た当行職員によるミニセミナー等を行いました。このほか、地
本店の「JBIC 広報センター」にて、当行の各種パンフレッ
方自治体や国際協力機構(JICA)
とも連携し、全国各地で
ト、年次報告書等を一般の方々に提供しています。また、
開催される国際協力に関するイベントに参加し、当行の取組
「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」
の施行に伴う文書の開示請求も広報センターで取り扱って
います。
広報誌「JBIC TODAY」
を隔月で発刊し、当行の業務実
みに対する国民理解の促進を図りました。
当行は、学生向けの開発教育にも取り組んでおり、出張
講義や当行を訪問する修学旅行生との学習会等を通じて、
開発途上国の現状と当行の取組みについて説明を行って
績や最近の取組み等を紹介しています。さらに、当行の業
います。また、海外
務を紹介する各種パンフレットの内容を随時更新していま
駐 在 員 事 務 所に
す。2004 年度には、当行の業務内容について事例を用い
おいても、日本人
て分かりやすく紹介するパンフレット
「国際協力銀行の役割
学 校 の 生 徒を対
と機能」や、日本と開発途上国の関係や円借款について
象にした円借款事
解説した
「円借款と私たち∼平和で豊かな地球社会をめざ
業の視察、開発教
して」
を発行しました。
育プログラム等を
実施しています。
大阪で開催された「ワン・ワールド・フェスティバル」
■―国内外における情報発信
当行は、大阪支店・海外駐在員事務所でも積極的な広
報活動を行っています。
大阪支店では、西日本地域の企業が海外事業を展開す
広報誌「JBIC TODAY」と各種パンフレット
るうえでの各種支援を行っています。融資に関するご相談
また、ホームページでは、当行の業務内容・実績や財務状
のほか、関西をはじめ、広島、福岡等において、貿易投資
況を公表し、融資等のご案内、各種刊行物の紹介、投資
商談会出展、投資セミナー開催や、円借款実務情報の提
家の方々への情報や環境への取組み等について、最新情
供、国際協力に関するイベントでの NGO や市民の皆様へ
報を掲載しています。
の情報発信も行っています。
sホームページアドレス http://www.jbic.go.jp/
また、海外駐在員事務所においても、当行の役割・機能
および現状について現地語パンフレットやホームページ等を
■―国際協力への理解促進
通じて、情報提供を行っています。バンコク、マニラ駐在員
当行は、外務省の実施する
「ODA 民間モニター制度」へ
事務所では、円借款プロジェクトの位置と事業内容がひと
の協力を通じて、国民の皆様の円借款案件に対する理解
目でわかるよう、分かりやすく地図にした
「ODAローンプロジ
促進を図っています。また、10 月 6 日の
「国際協力の日」
を
ェクトマップ」
を発行しています。
32―■― 2004 年度の業務概況